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チーム:ロック座談会【映画館】
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1: 名無しですが何か?:2012/3/4(日) 14:12:43 ID:1lvOPQUkic
お題【映画館】

下記の順番でお願いします。

シーナ ◆BM.ewXvGdw
カールスモーキー志藤 ◆eHb.UoolfY
ベーシー ◆UAbyVc9eBE



27: ベーシー ◆UAbyVc9eBE:2012/3/19(月) 21:25:27 ID:bi58r09Mik
上映場に入って客席を見る。薄暗い室内に、今日の客は5、6人しかいない。目を凝らすとすぐに彼女を見つけることができた。

彼女はこの映画館が閉館することを知っているのだろうか?疑問を抱きながら挨拶をする。
「こんにちは」
「こんにちは、今日は遅かったですね」
「すいません、ちょっと所用があったもので」
「今日は来ないのかと思って、泣きそうだったんですよ」
うふふと微笑んで彼女はそう言う。最初に会った時と同じシャンプーの香り。

もう一言彼女に話し掛けようとしたところで、開演のブザーがなる。しょうがない、話は映画の後にしよう。

今日の映画はスタンド・バイ・ミー。
この映画館が無くなったときに、彼女のそばにあるのはなんだ?
28: シーナ ◆BM.ewXvGdw:2012/3/20(火) 21:57:24 ID:RGhT0WXoMQ
スクリーンの子供達がキラキラ輝いて見える。

子供は純粋で残酷だ。
どちらも今の俺は持っていない。
昔は持っていただろう。
いつの間に失くしてしまったのか。

大人になるってそういうことなのか。

子供達が纏う輝きは昔俺が失くしたそれらの欠片かもしれない。
普段はゴミのように見えても、ふとした瞬間光を受けてキラキラと輝く。
まるで、失ってしまったものがいかに大切なものだったのかを教えるように…


エンドロールが流れ場内が明るくなる。
隣に座る彼女はその瞳をキラキラと輝かせ微笑みを浮かべたままスクリーンを見つめていた。


「私この映画好きなんです」

劇場を出ながら彼女は満足気に笑った。
いつもの様に劇場外のベンチに座ろうとすると「ちょっとすみません」と離れていく。
トイレだろう、と1人でベンチに座りポケットに入れていた携帯電話を取り出すと、メールを知らせるランプが点滅している。
開いてみると職場の同僚だった。

「こないだはダメだったから、来週こそ空けとくように!みんなで海見にドライブ行くよ」

寒い中わざわざ海に行かなくても、と思ったが、みんなの中に自分が入っていることに嬉しくなる。
そのまま返信画面に切り替え「行きます」と送信する。
送信完了の画面になった時に目の前に人の気配を感じて顔を上げると、いつかの少年だった。

「来週は来ないの?ここはあと1ヶ月なのに?」

俺を責めるでもない、悲しそうに俺を見下ろしていた。

「…」

何も言うことが出来ない俺に少年は溜め息を吐いた。

「ごめん、責めているわけじゃないよ。うん、お兄さんにはもともとムリな話だったかもしれない」
29: カールスモーキー志藤 ◆eHb.UoolfY:2012/3/21(水) 15:09:49 ID:of7xHQJUJs
「というか、お姉さんを助けてあげることなんて誰にも出来ないのかもしれない」

少年は悲しそうな目をしている。

「お兄さんを責めるわけじゃないよ」

彼は繰り返した。

俺はやはり、何も言うことは出来なかった。

「じゃ、もう僕は行くけど…情けないお兄さんに、一つヒントをあげるよ」

ヒント?

俺は顔を上げる。


「この映画館は、お姉さん自身でもあるんだ」


「じゃ、僕は行くよ」

俺は少年の背中を見送りながら、彼の言葉の真意を図っていた。

年端も行かぬ子供に似合わず、抽象的なヒントを出したものだ。

暫く俺が思考を巡らせていると、スカートの裾を揺らしながら『映画館自身』が戻ってきた。
30: ベーシー ◆UAbyVc9eBE:2012/3/22(木) 11:01:51 ID:0mns1JLGBw

彼女はスタンドバイミーを口ずさみながら歩いてきて、やがて俺に気がついた
「もしかして待たせちゃいましたか?」
「いや、大丈夫ですよ。人と話していましたし」と答えた後に、特に話題も見つからないので尋ねながらベンチに座る「あの映画って何年前の映画でしたっけ?」

「うーん、確か四半世紀くらい前の公開だったと思いますよ」彼女もベンチに座りながら言う。相変わらず映画には詳しい。「そう考えると、おもしろいですよね。私達が生まれた頃に作られた物語を、今の私達が楽しんでいる」
「そうですね。……映画を作ったときは、こんなに長く見られること想像してたのかな?」
「案外、作った側が1番びっくりしてるかもしれませんね」彼女はそう微笑みながら言ったあと、呟いた「この映画館は、こんなに長く続くこと、想像してたのかな?」―――


取り留めのない話をずっと続ける。時計の長針が一周してもなお、お互いにベンチから動かない。大事な所に触れてない事を2人ともわかってる。


―――「映画館で、上映の始まるブザーがなった時が好きなんです。その瞬間、みんな黙って、スクリーンを見つめて、劇場が同じ空気になる。映画館はこのために存在してるんじゃないかって思います」明るく彼女は言う。彼女はこの映画館が閉館になることは知っているのだろうか?
「……映画館ってなんなんですかね?」あなたにとって、と俺は言った。質問が不躾だったろうか?
聞いてみたかった。あなたにとってここはなんですか?『映画館自身』にとって、この映画館とはなんですか?
31: シーナ ◆BM.ewXvGdw:2012/3/22(木) 18:58:06 ID:VB9rD13Hm2
彼女は笑顔のまま俺を見つめる。

「映画館は私の家です。そこで流れる映画は私の家族です」

俺は首を傾げる。彼女の言葉が意味することがわからなかった。
そんな俺を見て彼女は余計に笑う。

「ふふっ、きっと宮本さんにはわからないわ」

「わからないです。どういうことですか?」

「嫌よ、教えない」

彼女はクスクスと笑う。その声が俺の耳の中で延々と響き渡る。


耳障りだ…

彼女はこんな風に笑う人だったか。
こんな意地悪な…


俺は眉間に皺を寄せる。本当は耳も塞ぎたい。目を瞑る。
再び目を開けると彼女と目が合う。

「ふふっ宮本さん酷い顔してる」

俺はどんな顔をしているんだろう。笑えていない、それは確かだ。

「私わかってるのよ、みんなが思ってる以上に。それなのにいつも私は蚊帳の外…」

彼女は笑みを浮かべたままだ。

「私わかってるの」

いきなり俺を真顔でジッと見つめ、ふっと再び笑みを溢す。

「宮本さん、もう来ないでしょ?ここに」

来週は来ないが、再来週はまだ何も考えてなかった。いや、来るつもりだった。

しかし彼女の言葉を否定できない。
何も言わない俺に彼女は優しく微笑むままだ。

「宮本さん、最後に1つ…」

彼女は俺の耳に口を近付ける。

「私、幸せですよ」
32: カールスモーキー ◆eHb.UoolfY:2012/3/23(金) 20:04:35 ID:Py7EM1gCxo
俺は、漸く気づいた。

どうして彼女の笑う声一つが、あんなに俺の心を抉ったのか。

「…宮本さん?」

心配そうに覗き込む目線。

「…蚊帳の外にいるのは、俺の方だ」

彼女に聞こえないように呟いた、つもりだった。


俺は、漸く気づいた。

どうしてあんな得体の知れない少年の言葉に、話だけでも聞こうという気になったのか。

どうして彼女と会える時間制限に目を背けるように、ああもあっさりとメールを返せたのか。


どうしてここで出逢った日から、毎日彼女のことがあんなに気にかかったのか―


彼女のことをよく知っているわけでもない。

他人に話せば、実に陳腐なお話に聞こえるだろう。

だが、それでも。

「行きましょう!!こんな良い天気に、外に出ないのも勿体ない!!」

「え、えっ!?」

強引に手を取る俺。驚く彼女。


(全ては君次第、か…!!)
33: ベーシー ◆UAbyVc9eBE:2012/3/24(土) 09:20:40 ID:dfutephwdY
――映画館を出ていく2人を見送る、といっても2人とも気付いてないだろうが。若さとはいいな、などと思うのはもう歳だろうか。

「やっと動いたや。まったく世話が焼けるんだから」ふと横に現れた少年がこぼす。栗色の髪の毛がお祖父さん、あいつにそっくりだ。
「これで2人は幸せに成れると思うかい?」
「そんなの知らないよ、館長さん」年端も行かぬ少年にそんな事わかるわけないでしょ、と少年は言う。そして、でも、と続ける。「なんとかなるんじゃない?あのお兄さんもお人よしみたいだし。……それに、この映画館もう閉館なんでしょ?もう信じるしかないじゃん」
「ははは、ごめんな」口を尖らせる少年の言葉を笑って受けとめる。
「まったくもう。2人が上手く行かなかったらどうするつもりだったのさ?」
「…どうしたろうな?上手く行くと最初から信じていたから、そんな事は考えてなかったよ。それに、たった1人のために閉館を先伸ばしにするのもおかしな話だしな」
「まったくもう」

「それより、君はこれからどうするんだい?」
「うーん、僕は幽霊だからね。ちょっと不安だけど、もう2人も映画館も動き始めたし、現世に未練のなくなった幽霊は、後は消えるだけかな」笑いながら言う。あいつが『映画館をやろう』と言ったときを思い出した。冗談とも本気ともつかないの言い方が、あいつそっくりだ。――
34: シーナ ◆BM.ewXvGdw:2012/3/24(土) 14:58:01 ID:xZgsXzpN3.
「宮本さんっ、待っ、て」

彼女は息を切らして俺を制止する。
映画館を飛び出して商店街のアーケード通りを抜けた。
所々破れている幌の屋根は頭上になく、清々しい青空が広がっている。

俺も息を切らせ、彼女の手を離し振り返る。
彼女はその細い肩を上下させ呼吸を落ち着かせている。

しばし無言が続き、お互いの呼吸が落ち着いた頃彼女は眩しそうに空を見上げた。

「すごい、明るい…。綺麗な、青空」

いつもそこにある空を見上げてさも愛おしそうに微笑む。

「あの「宮本さん」

俺の言葉を掻き消して、彼女は空を見上げていた笑顔のままに俺を見る。

「ありがとう、ありがとう…」

俺の手を握り彼女は涙を溢した。
35: カールスモーキー志藤 ◆eHb.UoolfY:2012/3/24(土) 15:24:57 ID:ZqGF8bvdXA

あの映画館の建っていた場所には、今はショッピングセンターがある。

閑古鳥の鳴いていたこの道にも、多少の買い物客が見られるようになった。

「…ねえ、宮本さん」

「君も宮本さんだろう」

まだ慣れなくって、と彼女はクスクス笑う。


彼女の想い出も、家族を失った悲しみも、決して消えるものではない。

そして、消してしまうべきものでもないと俺は思う。

それは胸の中に大切に抱え、それでいて立ち止まらず前へ進むべきものなのだろう。

俺にはそんな体験がないので、安易に言い切って良いものではないのかもしれないが。


その一歩を踏み出すきっかけは、例えば一本の映画。


「あ、これ、憶えてます?あの映画館で見た、」

レンタルビデオ屋の先で、彼女が何かを指差している。

目線をその指先へやると、「店員のお薦め」なんてポップが付いたDVDが置かれていた。

俺は、思わず目を細める。

―彼女の横には、俺が立っている。

「線路の先には、何があるんでしょうね…」

俺は彼女の顔を見た。

彼女は、パッケージの四人の少年たちに笑いかけている。

〜Fin〜

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