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少年「ボクが世界を変えてみせる」
[8] -25 -50 

1: 名無しさん@読者の声:2012/12/23(日) 21:21:41 ID:apUuk9iOiY
むかしむかしのことです。
世界は深い緑が生い茂り、深い青が寄り添うように流れる清らかな一つの円でした。
穢れを知らず、怒りも悲しみもなく、渇くことのない喜びが波立てる大地は
争いを寡黙に、繋がりをおおらかにしました。


2: 名無しさん@読者の声:2012/12/23(日) 21:22:55 ID:apUuk9iOiY
互いを愛し、慈しむ心を持つ人間は大地と共に生きて言葉の通じぬ獣、目に見えぬものにまで感謝を示し、天に祈りを捧げます。
天上からその様子を見ていた神は人間を生命の最たる種族とし、大地を治めさせようと考えました。
その旨を伝える為、神は使いとしてホビットを大地に送ります。
大地に赴いたホビットは人間達に神の前に立つ一人を選ぶよう告げます。
人間達は悩み、悩みぬいた末に人望があり、勇敢さと正義感を併せ持つ一人の若者に役目を委ねました。


3: 名無しさん@読者の声:2012/12/23(日) 21:23:55 ID:apUuk9iOiY
ホビットは若者を連れて天上へと続く大樹を案内し、
天に住まう神に引き会わせます。
神は若者に人間の長となり、
大地を清らかに保つとともに生命を統一するよう命じました。
若者は与えられた使命を硬く守ると誓い、
引き換えに癒しの力を戴きます。
4: 名無しさん@読者の声:2012/12/23(日) 21:24:47 ID:apUuk9iOiY
神は言いました。
「すべての命に宿る血の一滴に至るまで愛するのです。」
「深く学び、広く知り、好奇心を以て接するのです。」
「大いなる愛が失われぬ限り、力は癒しとなり
魂を覆う深淵の闇を祓うでしょう………」
5: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 21:27:05 ID:apUuk9iOiY
――プロローグ――

宣教師「若者は神の言葉を重く受け止め、
人と大地を愛し、癒し続けました
と、聖書の内容はこのように終わっていますが、
皆さんはお話の続きを知っていますか?」

村の子供1「はい!」

宣教師「どうぞ」

村の子供1「ホビットが癒しの力をボクたちから盗みましたー!」

宣教師「素晴らしい、その通りです。
ホビットは神に選ばれた人間を妬み、
長を殺めた挙げ句にあろうことか力を奪ってしまったのです!
1くん、キミはとても優秀ですね。
神のご加護と一枚のビスケットを与えましょう」つ【ビスケット】

村の子供1「わーい!ビスケットだぁ!」ワーイワーイ

村の子供2「そりゃ知ってるに決まってるよ」コショコショ

村の子供3「毎日だもんね。
恒例のビスケットもすっかり早い者勝ちさ」コショコショ

村の子供2「そうそう、どうせまた同じ事を言うんだ」コショコショ

村の子供3「うん、村の外れにいるホビットの話でしょ」コショコショ

6: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 21:28:44 ID:apUuk9iOiY
宣教師「いいですか。
ホビットというのは非常にずる賢く、罪深き種族です。
村の外れにも忌々しいホビットの親子が住んでいますが
決して心を許してはなりません。いいですね?」

村の子供1「はーい!」

村の子供2「ほらな?」コショコショ

村の子供3「しょうがないよ。
お母さんも子供の頃から聞かされたって言ってたもん」コショコショ

宣教師「そこの二人、返事はどうしました?」

村の子供2&3「あっ…は、はい!」
7: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 21:29:42 ID:apUuk9iOiY
宣教師「……今日はここまで!
返事の良かった1くん、キミにはもう一枚ビスケットを差し上げましょう」つ【ビスケット】

村の子供1「わーい!」ワーイワーイ

村の子供2「あっ!ずるい!」プンスカ

村の子供3「1くんばっかり!」プンスカ

宣教師「黙りなさい、ちゃんとお話を聞かなかった罰です」

村の子供2「ちぇっ!」

宣教師「代わりと言ってはなんですが、キミ達には神のご加護を……」

村の子供3「えー!いらなーい!」

村の子供2「かみのごかごでお腹いっぱいになんないもんな」

宣教師「なっ!あ、ありがたい祈りに対してなんたる冒涜を!
これだから最近の子供は……」ブツクサ
8: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 21:32:28 ID:lvsJdXSM9o
宣教師「最近の子供はねじ曲がっています。
これがゆとり教育の弊害というものなのでしょうか…」スタスタ

村の大人1「おい!待て、このクソガキィ!!」

ワイワイガヤガヤ

宣教師「おや、一体なんの騒ぎでしょう?
人通りの多い市場でトラブルとは珍しい」

村の大人1「おら!捕まえたぞ。
ガキの分際でてこずらせやがって!」グイッ

少年「っ…!」
9: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 21:33:50 ID:apUuk9iOiY
村の大人2「バカなガキだぜ。
とりあえずどうするよ?」

村の大人1「けっ!決まってんだろ。
痛い目見せてやんのよ」

村の大人2「それもそうだなwww」ドッ

少年「うぅ…ごめんなさい…ごめんなさい…」ブルブル
10: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 21:35:59 ID:lvsJdXSM9o
宣教師「これは一体…大人が二人がかりで子供をいたぶるなど…。
神に仕える者として見過ごせませんね」

村娘「あら、宣教師様じゃありませんか。
ごきげんよう」

宣教師「村娘さん、ちょうどよいところに。
これは一体なんの騒ぎですか?」

村娘「…なんでもホビットが村に忍び込んできたそうですよ」

宣教師「な、なんですって!
それは由々しき事態です!」

村娘「うふふ、もう大丈夫ですよ。
村の大人二人が買い物をしていた所を見つけて捕まえたみたい」

宣教師「なるほど、それであの騒ぎに?」

村娘「えぇ、バカな子ですね。
ホビットが人間の村に入って来るなんて」

宣教師「ふむ……」
11: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 21:37:22 ID:apUuk9iOiY
村の大人1「おとなしくしやがれ!」バキッ

少年「うぐっ…」ドサッ

村の大人2「生意気に頭巾まで被って変装するなんてな。
ずる賢いホビットらしいぜ」

村の大人1「二度と村に入って来ねぇように痛め付けなきゃな!」

少年「ヒック…グスッ…ごめんなさい…」

村の大人1「うるせぇ!」バキッ
12: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 21:38:54 ID:apUuk9iOiY
少年「っ……!」ゲホゲホ

村の大人2「ははは!
腹に蹴りくらって悶絶してらwww」

村の大人1「んじゃもう一発おみまいするかwww」ドカッ

少年「っ……!」ギュッ

村の大人3「おい!
お前ら子供になにやってんだ!」

村の大人2「バーカ!こいつはホビットだぜwww」

村の大人3「あぁ…なんだ、ホビットか」

村の大人1「お前もやるか?」

村の大人3「そうだな。
せっかくだしやっとくか」

少年「」ビクッ
13: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 21:45:53 ID:lvsJdXSM9o
バキッ ガッ ドカッ ドスッ

宣教師「………」

村娘「あらま、いくらホビットだからってやりすぎじゃないかしら」

宣教師「……ホビットは罪深き種族。
何をされてもしかたがありません」

村娘「うふふ、それもそうですね?
私達は悪くない。罪を犯したのはホビットなんですもの」

宣教師「………」

村娘「では宣教師様、私は買い物の途中なので失礼します」ペコリ

宣教師「…えぇ。お気をつけて」ペコリ
14: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 21:47:34 ID:apUuk9iOiY
少年「……」グッタリ

村の大人1「ふースッキリしたなぁ」

村の大人3「おかげで手が疲れちまった」

村の大人2「お前らやりすぎだろwww
こいつ死んだんじゃねwww」

村の大人1「死んだところで知ったこっちゃねぇよ」

村の大人2「そりゃそうだwww」

村の大人3「とりあえずこいつを村の外に運ぶぞ。
道にこんなのが転がってちゃ邪魔だ」

宣教師「待ちなさい」
15: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 21:49:32 ID:lvsJdXSM9o
村の大人1「あ?っと。
これはこれは宣教師様」

宣教師「……その少年、私が送り届けましょう」

村の大人3「そっそんな!
わざわざ宣教師様にこのような事をさせられませんよ!」

宣教師「大丈夫です。
汚れ役を買って出るのも神のしもべとして当然のこと。
あなた達は自分の持ち場に戻りなさい」

村の大人1「はぁ…。宣教師様がそう言われるのなら…
では、失礼します。
おい、行くぞ!」スタスタ

村の大人2&3「ちょっ待てよ」スタスタ

宣教師「………」チラッ

少年「……」グッタリ
16: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 21:53:05 ID:apUuk9iOiY
???「ずる賢いホビットめ。
我々の目を盗んで森の奥に集落を作っていたとはな」

???「この世界にお前たちの居場所などない!」

???「あぁ…村が焼けている…」

???「見つけたぞ!殺せ!
一匹たりとも逃すな!」

???「待て!子供に手を出すつもりか!」

???「せめて、お前たちだけでもっ……!」

メラメラ メラメラ
17: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 21:55:15 ID:lvsJdXSM9o
少年「」ガバッ

少年「」ハッ

少年「……ゆ…め…?」

宣教師「目が覚めましたか?」

少年「」ビクッ

宣教師「安心しなさい、何もしませんよ」

少年「……」ブルブル

宣教師「……落ち着きなさい」

少年「…ご、ごめん…なさい」ブルブル

宣教師「…謝らなくてよろしい。
そうだ、ビスケットでもいかがですか?」つ【ビスケット】

少年「……!」パァァ

宣教師「……(分かりやすい)」
18: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 21:58:06 ID:apUuk9iOiY
少年「」サクッサクッ

少年「」パァァ

宣教師「……(ビスケット一枚でこんなに幸せそうに…)」

少年「」ハッ

少年「ごめんなさい…」シュン

宣教師「あっいえ、気にしないでください…」

少年「……」

宣教師「……」

少年「……」

宣教師「……」

宣教師「(き、気まずい…)」
19: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 21:59:19 ID:lvsJdXSM9o
少年「あ、あの…」

宣教師「はいっ」ビクッ

少年「あっ…ごめんなさい…」

宣教師「あっいや、どうしました…?」

少年「その…どうして…ボクを?」

宣教師「えっ」

少年「」ビクッ
20: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 22:05:09 ID:lvsJdXSM9o
宣教師「あっいや、その…どうしてと言われましても」

少年「…小さい頃、おじいさまが言ってました。
神に仕える人間は人一倍、ボクたちを嫌ってるって…」

宣教師「え、えぇ。まぁ…」

少年「……どうして、ですか…?」

宣教師「(い、言えない。
神に仕える身でありながらホビットを哀れに思ったなんて…)」

少年「……?」キョトン

宣教師「」キュンッ

宣教師「えっ」

少年「」ビクッ
21: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 22:10:33 ID:apUuk9iOiY
宣教師「(い、今もしかして私…。
いや、ありえない。何かの間違いに決まってます!
そうですよ、不気味な黄色い眼で見つめられたって)」

少年「」ジーッ

宣教師「」キュンッ
22: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 22:12:11 ID:lvsJdXSM9o
少年「……あっ!」バッ

宣教師「えっ」ビクッ

少年「ごめんなさい!ボク…家に帰らなきゃ!」

宣教師「そ、そうですか。
しかし先ほどのケガが…」ドキドキ
少年「だ、大丈夫です!
……ありがとうございました!」ペコリ

宣教師「い、いえ。そんなお構い無く」ドキドキ

少年「」ダッ ガチャッ バタンッ

宣教師「行ってしまった……」ドキドキ
23: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 22:14:29 ID:apUuk9iOiY
宣教師「それにしても」

宣教師「あれほどのケガを負って短時間で動ける程度に回復するとは」

宣教師「(あれが例の癒しの力……)」

宣教師「(いや、違う。癒しとはもたらす力)」

宣教師「(それにホビットが自己再生できるなんて聞いた事がない)」

宣教師「(あの子は一体……)」

宣教師「まあいいでしょう。
今は明日の分のビスケットを焼かなければ」

宣教師「………あの子にも焼いてあげますかね」
24: 名無しさん@読者の声:2012/12/23(日) 22:34:00 ID:vTG5urokkw
すごくいい 支援
25: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 22:49:58 ID:awL1.A7dcc
>>24さん
支援ありがとうございますm(__)m
正直初めてのSSで手を震わせながら投稿ボタンを押しているような状況ですが
暖かい目で見ていただけると助かります。
今日はここで切っておきます。
おやすみなさい。
26: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:28:03 ID:hTsbsopuA2
――村外れの民家――

少年「」タタタッ

少年「はぁっ…はぁっ…」

少年「」ニコニコ

少年「」ハッ

少年「」ブンブン

少年「……」

少年「」ギュッ

少年「ただいま」ガチャッ
27: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:29:52 ID:hTsbsopuA2
母「おかえりなさい。
ずいぶん遅かったのね?」

少年「うん、ちょっとね」

母「そう」

少年「うん」

母「」ジーッ

少年「な、なに?」

母「どこに行ってたの?」

少年「か、川でマルクと遊んでたんだ。
そしたら夢中になっちゃって。それで……」

母「……あらあら、じゃあ泳いできたのかしら?」

少年「う、うん」プイッ

母「楽しかったでしょうねぇ。
あなたの目も泳ぎ足りないと言ってるわ」クスクス

少年「え……」アセアセ
28: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:31:58 ID:h173FRh8P2
母「まぁ!人間の村へ行ったの?」

少年「……ごめんなさい。お母さま」

母「……人間に見つからなかった?」

少年「」ドキッ

少年「うん、見つかってないよ…」

母「ふふ、また目が泳いでる」

少年「うぅ…」カァァ
29: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:33:01 ID:hTsbsopuA2
母「おいで、わたしのかわいいぼうや」

少年「…うん」ダキッ

母「ふふ…いつまで経っても甘えん坊ね」

少年「……だめ?」ジーッ

母「いいのよ、あなたは私のかわいい息子だもの」ナデナデ

少年「えへへ。うれしい」ニコニコ
30: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:34:22 ID:h173FRh8P2
母「……そう」

母「あなたは私のたった一人の家族」

母「世界で一番愛してるわ。誰よりも」

母「だからこそ、誰よりもあなたを失いたくないのよ」

母「ああ、私のかわいい坊や」ダキッ

少年「お母さま…?」
31: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:37:09 ID:hTsbsopuA2
母「見つかったんでしょう?」

母「人間に、何をされたの?」

少年「っ……!」ギュッ

母「目を閉じても分かるわ」

母「こうして抱き締めていると、分かるの」

母「あなたの胸からポタポタと音がする。
心が涙をこぼしているのが聴こえるわ」
32: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:38:27 ID:h173FRh8P2
少年「」ウルッ

少年「……」ウルウル

少年「う、うぅ…」ポタポタ

少年「わああぁぁん!!」ポタポタ

母「辛かったでしょう。もう大丈夫よ」ナデナデ
33: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:39:58 ID:h173FRh8P2
少年「ヒック…グスッ……」キュッキュッ

母「あらあら、こすっちゃだめよ。
目が傷付いてしまうわ?」

少年「グスッ…ごめんなさい…」

母「いいのよ。それにしてもどうして人間の村へ?」

少年「………」

母「おしえて?」

少年「いやだ……」

母「まぁ…どうして?」キョトン

少年「だって…お母さまを悲しませたくないもの」
34: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:41:32 ID:h173FRh8P2
母「…ふふ、あなたは本当に心優しい子。」

母「でもね、坊や。
あなたがどんなにひどい言葉をぶつけるより」

母「私を嫌いになってしまうより」

母「あなたが独りで抱え込んでしまう方がよっぽど辛いわ」

少年「お母さま……」ウルッ

母「ふふふ。やっぱり嫌われるのもショックかも?」ニコニコ

少年「………」ダキッ
35: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:46:20 ID:h173FRh8P2
母「話す気になってくれた?」ポンポン

少年「うん。実はね…友達が欲しかったの」

母「そう」ニコニコ

少年「悲しく…ないの?」

母「あら、どうして?」

少年「だって……」

母「お友達が欲しいなんて、当たり前のことじゃない。
あなたが誰と仲良くしても私はダメなんて言わないわ」

母「(……そうよね。
私以外知らないんだもの。
マルクは…友達と言っても言葉を交わせない野生の獣。
この子は一緒に笑いながら
たくさん遊べる仲間が欲しかったんだわ。
それでも気を使って、
寂しさを奥底にしまって…。
人間に求めてしまったのね…)」

少年「そっか」ニコニコ

母「そうよ?」ニコニコ
36: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:47:39 ID:hTsbsopuA2
少年「それとね?」

母「うん」ニコニコ

少年「友達が、できたの」ニコッ

母「うんうん」ニコニコ

母「うん……?」

母「えっ」
37: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:49:57 ID:h173FRh8P2
少年「お母さま?」キョトン

母「あっううん、なんでもないのよ。
続けてちょうだい?」アセアセ

少年「うん。それでね。女の人なの」

母「へぇ。女の子と仲良くなったの。
すごいじゃない?」

少年「ううん。大人の人間だよ」

母「えっ」

少年「へ?」キョトン
38: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:52:54 ID:h173FRh8P2
母「あ、あーら…そ、そうなの」

少年「うん。ビスケットくれたんだ!」パァァ

母「そ、そう…?」

少年「おいしかったよ!」ニコニコ

母「よ、よかったわねぇ」ニコニコ


母「(大人の女性と友達なんて、冗談よね…?
もしかして変な趣味の人じゃ…?
ま、まさかねぇ…?
でもこの子が言ってる事だし…)」アセアセ
39: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 10:01:14 ID:h173FRh8P2
――教会――
宣教師「くしゅんっ」

宣教師「……風邪でしょうか?」

宣教師「……まあいいです」

宣教師「ふむ、おいしそうに焼けました」

宣教師「村の子供の分とあの子の分は別に分けておきましょう」

宣教師「ふぁぁ…」

宣教師「夜も更けましたし寝ましょうか」

宣教師「」ハッ

宣教師「……そういえば、あの子の家を知りません」
40: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 10:03:25 ID:hTsbsopuA2
少年「それでねっ!ボクお礼しに行きたいの!」

母「そうねぇ。じゃあ明日、一緒に行きましょうか」

少年「うんっ!」パァァ

母「(うふふ。嬉しそうねぇ。
この子が私以外に感情を向けるなんて初めてだから、なんだか私まで嬉しいわ)」ニコニコ

少年「あっそうだ!
おみやげに庭のカリアムで花束を作ろうかな!」

母「いいわねぇ。
でも今日は遅いから、それは明日にしましょうか?」

少年「あっうん…そうだね。」シュン

母「大丈夫よ、坊や。
明日は逃げたりしないから」

少年「うん!歯磨きしてくるね!」タタッ

母「まぁまぁ。
家の中で走っちゃだめじゃない?」ニコニコ
41: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 10:05:22 ID:h173FRh8P2
少年「おやすみなさい。お母さま」

母「おやすみなさい。かわいい坊や」

少年「ふふっ」ワクワク

母「(あんまり楽しみで寝れないのね。
うふふ。困った子だわ)」ニコニコ

少年「お母さま」ワクワク

母「なぁに?」ニコニコ

少年「早く明日にならないかな?」ワクワク

母「まぁ?」ニコニコ

少年「ボクずっと起きてようかな?」ワクワク

母「夜更かしする悪い子は朝ごはん抜きよ」

少年「はーい…」シュン
42: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 10:07:14 ID:h173FRh8P2
少年「おやすみなさい」ギュッ

母「おやすみなさい」ニコニコ

少年「」ウトウト

少年「」スピー

母「……まだまだ子供ね」クスクス

母「生まれてくれてありがとう。
私のかわいい坊や」

母「……」

母「」スースー
43: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 14:40:14 ID:p9j21mNoUI
オギャァ オギャァ オギャァ オギャァ


???「あなた…見て?」

???「グズッ…ズズッ…ヒック…」ポタポタ

???「もう…ちゃんと見てあげて!」

???「す、すまん…」フキフキ

???「ほら、玉のように愛らしい。
私たちの子供なのよ?」

???「あぁ…言葉を忘れるほどに愛しい。
俺にも抱かせてくれないか?」

???「えぇ、そうしてあげて」スッ

???「おぉ…」ヒシッ
44: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 14:41:25 ID:CA0eW9E7MM
オギャァ オギャァ

???「おっと、泣かせてしまったか?」アセアセ

???「違うわ。きっと喜んでいるのよ」

???「……そうか」

???「……あなた?」

???「この子は、幸せになれるだろうか?」

???「あなた…」

???「……すまない」

???「…大丈夫。幸せになれるわ。
私たちも、この子も…」

オギャァ オギャァ
45: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 14:42:48 ID:CA0eW9E7MM
――――
少年「うぅん……また、夢…」ゴソゴソ

少年「あったかい…夢…」

母「あら、起きたの?」カチャカチャ

少年「うん、おはよう。お母さま」

母「おはよう。朝ごはんが出来てるわよ」

少年「はーい」タタタッ
46: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 14:44:30 ID:p9j21mNoUI
少年「」パクパク

少年「」モグモグ

少年「」ゴクゴク

母「そんなに急いで食べたら詰まらせちゃうわよ?」

少年「だ、だって…」

母「心配しなくても、まだお日様は沈まないわ」クスッ

少年「う、うん!」パクパク

47: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 14:46:54 ID:p9j21mNoUI
少年「ごちそうさま!」

母「おいしかった?」

少年「うん!」

母「そう?ならよかったわ」ニコニコ

少年「ボク、庭に行ってくるね」

母「えぇ。いってらっしゃい」

少年「いってきまーす!」

ガチャッ バタンッ

母「人間の女性でお友達、ねぇ。
どんな方なのかしら?
坊やの言うように優しい方だといいけれど…」
48: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 14:49:06 ID:p9j21mNoUI
少年「〜〜〜」ルンルン

少年「えへへ。いっぱい摘んじゃった。
あの人、喜んでくれるかな?」

旅人「坊や」

少年「」ビクッ

少年「……?」クルッ

旅人「おっと、驚かせてしまったか。
すまないね、君はこの家の子かね?」

少年「う、うん…」

旅人「ははっ!そうか。そうか。
ご両親はいるのかな?」

少年「お母さまがいるよ」

旅人「そうか。ありがとう」ナデナデ

少年「……(悪い人間じゃなさそう)」
49: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 14:50:26 ID:CA0eW9E7MM
コンコン

母「はーい」

母「(誰かしら?私たちの家を訪ねる人なんていない筈なのに…)」

母「………」

コンコン

母「あ、はい。今出ます」ガチャッ
50: ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 14:52:04 ID:p9j21mNoUI
旅人「突然申し訳ないね」

母「いえいえ、お気になさらないでください。
失礼ですが、どなた?」

旅人「旅の者でね、村を探しているんだが心当たりは無いかね?」

母「そうですか。それならこの道を南に抜けると村がありますわ」

旅人「そうか。ありがとう。
では失礼するよ」

母「いえいえ、お気を付けて」

バタン

母「あの人、私の目を見ても驚かなかったわね。
単に気付かなかっただけかしら?」
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名前:
sage:


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