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魔王「何で女の子が一人もいないんだよ!」
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1: :2011/9/14(水) 23:03:02 ID:8OHTIHnybw
初めてSSを書かせていただきます。
ギャグ物にしようと思ってまして、そのせいで世界観を無視した発言や行動が多くなると思います。
あと、最終的にはスレタイ詐欺のような展開になるかもしれません。今のところ、そのように予定しています。
以上のような感じで書き進めていこうと思ってます。
問題ないという方は、よければ最後までお付き合いください。
よろしくおねがいします。

※長いため、携帯から読むと途中から読めなくなる可能性があります。読めなくなった場合、こちらから読んでみてください→>>887-891


790: :2011/11/23(水) 02:36:52 ID:UOzzvGRKcw
それから数日、側近はハーピーと共に過ごした。
ある程度回復したら城へと戻るつもりだったが、
「怪我人を放ってはいれません!」
という、ハーピーの優しさに押し負けて、結局完治までお世話になることになった。

その間に側近は自分の名を伝え、性格を伝え、何が好きで何が嫌いかを伝えた。
代わりに側近はハーピーの名前を知り、性格を知り、好き嫌いなども知った。

日が進むにつれ、お互いの理解度は目に見えて上がっていったのだった。


側近「じゃあここはハーピーの自宅ってわけだな」

ハーピー「そうなんです!若くして家を持ってるんですよ!立派でしょう?」

側近「クソ狭い家だけどな」

ハーピー「そ、そりゃ魔王城と比べたら狭いですけど……庶民の目線で語ってくださいよ!」

側近「知るかよ。俺はエリートなんだよ」
791: :2011/11/23(水) 02:37:45 ID:UOzzvGRKcw
ハーピー「もう……側近さんのいじわるに慣れてきた自分が怖いですよ」

側近「ハーピーはからかいがいがあるからな。……なあ」

ハーピー「はい?」

側近「最近ちょっと思ってたんだけどよ」

ハーピー「はい」

側近「ハーピー族ってさ、けっこう他種族との交流を嫌う種族じゃん」

ハーピー「……そうですね」

側近「ハーピーもハーピー族と共に生きてんだろ?俺なんか看病して家に置いてて大丈夫なのかよ?」

ハーピー「……皆、そんなに非情じゃないですよ。誰かが困ってる時は助ける、それくらいは許容されますよ」

側近「そんなもんなのか……」

ハーピー「そうですよ。側近さんは気にしすぎです」

ハーピー「……じゃあ私、野菜を貰いに行きますね」

側近「たまには野菜や魚じゃなくて肉が食いてえなあ」

ハーピー「ハーピー族は魔界で狩りができるほど強い種族じゃありません!」

側近「じゃあよそで買えばいいじゃん」

ハーピー「基本は他文化交流禁止の種族です!……じゃあ行ってきます」
792: :2011/11/23(水) 02:39:16 ID:UOzzvGRKcw
ハーピー「〜〜♪」テクテク

「あの子、例の子じゃない?」
「声、大きいよ。聞こえちゃうよ」

ハーピー「っ!」ピタッ

「死にかけてた人型の魔物捕まえて看病してるって」
「人型って、強さにばらつきがある種族よね」
「強い奴で、何かの策略だったらどうするのって話よねー」
「私達ハーピー族は強い種族じゃないからこそ、他種族を拒絶して生きてるのに」
「なんかかっこいい雄みたいだからさ、いやらしいことでも考えたんじゃないの?」
「最悪だね……自分の欲求で皆を危険に晒すなって言ってやりたい」
「これが聞こえてたらいいのにねー」クスクス
「ねー」クスクス

ハーピー「……」
793: :2011/11/23(水) 02:39:57 ID:UOzzvGRKcw
その頃、薬草の森では

ハー子「よいしょ……よいしょ……」

ハー美「ふう……薬草いっぱい採れたね」

ハー子「じゃあそろそろ帰って……きゃあ!」ドンッ

獣人「いってえ!女ぁ、どこ見て歩いてやがる!」

ハー子「す、すみません!」

獣人「……んん?」ギロッ

ハー子「……」オドオド

ハー美「……」ビクビク

獣人「……へぇ」ニヤニヤ

獣人「ぶつかりはするし、俺達の縄張りは荒すし……これはただで許すわけにはいかねえなあ」

ハー子「そ、そんな!この森は誰の物でもないはず……」

獣人「うるせえ!いいのか?俺達獣人族がその気になれば、ハーピー族なんか一捻りだぜ?」

ハー子「っ!」

獣人「それでいいなら、俺は別に構わんがなあ」
794: :2011/11/23(水) 02:40:47 ID:UOzzvGRKcw
ハー美「ど、どうすれば許してもらえますか?」

獣人「へっへっへ……お前ら一族で一番美しい娘を寄越せ。そうすれば許してやるよ」

ハー子「そ、そんなの無理です!」

獣人「てめえらの都合なんか知るかよ!……明日の今頃に、この森に来させろ。たっぷり可愛がってやるからよ」

ハー美「そんな……」

獣人「そういうことだ。楽しみにしてるぜ」

ハー子「ど、どうしよう……どうしよう……!」

ハー美「と、とりあえず戻って長老に相談しよう!」

ハー子「う、うん!」
795: :2011/11/23(水) 02:41:37 ID:UOzzvGRKcw
ハー子「……というわけなんです」

長老「ふむ……我らが獣人族と争ったところで勝ち目はない。言うとおりにした方が良いじゃろう」

ハー美「では、誰を獣人族に差し出すというのですか?」

長老「……ハーピーがいいじゃろう」

ハー子「!」

長老「あれは一族でも一番の座を争うほどの美貌を持っておる」

長老「くわえて、ろくに戦闘もできぬハーピー族でありながら、他種族との交流を望む危険分子じゃ」

長老「この機会に処分するのが一族のためじゃろう。あれに犠牲となってもらおう」

ハー子「わ……わかりました」

長老「待ち合わせは薬草の森じゃったな。では薬草採取の手伝いとでも言って、明日森に行かせればいいの」

ハー美「……は、はい……」
796: :2011/11/23(水) 02:42:37 ID:UOzzvGRKcw
ハーピー「……だから私は言ってやったんです!ニラレバでしょ!って」

側近「いや、そこはレバニラじゃないのか?」

ハー子「あ、あのう……」

ハーピー「あれ?ハー子さんにハー美さん。いらっしゃい」

ハー美「遅くにお邪魔してごめん。……今の、何の話?」

ハーピー「あ……き、気にしないでください///」

側近「……どうも」

ハー子「あ……はい。どうも」

ハーピー「急に来て……何かあったんですか?」

ハー子「あ……えっと、やく……薬草の数が不足してて」

ハー美「明日も薬草の採取が必要になって……よ、よかったら手伝ってくれないかなって」

ハーピー「そういうことでしたか。わかりました、お手伝いしましょう。いつ頃の予定ですか?」

ハー子「ご……午後の……5時頃に……」

ハーピー「ずいぶん遅くから始めるんですね?」

ハー美「あ……わた、私達、ちょっと用事があるから……」

ハーピー「そうですか。私だけでも早めに行って採取しておきましょうか?」

ハー子「い、いや……それは悪いから、5時から一緒にしよう」

ハーピー「わかりました。明日の午後5時に薬草の森に向かえばいいんですね」
797: :2011/11/23(水) 02:43:34 ID:UOzzvGRKcw
ハー子「そ、そういうことだから……お願いね」

ハー美「それじゃ……お邪魔しました」

ハーピー「いえいえ、また明日会いましょう」

ハーピー「……そういうことですので、明日はお留守番頼みますね」

側近「……ああ」

で、深夜

側近(ハーピーは……)

ハーピー「すー……すー……側近さん……」

側近(……寝てるな。よし)



ハー子「どうしよう……どうしよう……」

ハー美「し、仕方ないじゃない!こうでもしないと大変なことになるんだから!」

側近「……何がどう大変なのか、よかったら説明してくれねえか?」

ハー子「ひっ!?」

側近「薬草採取に誘うだけにしちゃあ……心拍音、瞳孔の開き……著しい緊張が感じられたからな」

側近「さあ、どういうことか言ってもらおうか!」
798: :2011/11/23(水) 02:44:39 ID:UOzzvGRKcw
側近「……なるほどな。いわゆる生贄ってやつか」

側近「仲間を騙して犠牲にして、なかなか素敵な種族だな。ハーピー族ってのは」

ハー子「……何よ、いやみったらしい言い方して」

ハー子「は、ハーピー族は強くないのよ!魔界の力におびえて、うまく立ち回って生きるしかないの!」

ハー子「一族が滅びるより一人が犠牲になった方がいいでしょ!」

ハー子「弱い者は強い者に奪われて、それでも生きていかなきゃならないのよ!」

側近「……それは俺だって知ってるさ」

ハー子「だったら口出ししないでよ!よそ者のくせに!」

ハー子「犠牲だって仕方ないじゃない!それが魔界なんだから!仕方ないじゃない!!」

側近「……そうだな、仕方ない」
799: :2011/11/23(水) 02:45:29 ID:UOzzvGRKcw
側近「ただいまーっと」

ハーピー「すー……すー……」

側近「……」

側近(魔界は弱肉強食。弱い者は奪われ、強い者は全てを手に入れる)

側近(そしてハーピー族は弱いんだ。強い者に何を強要されたって、それは仕方ないことなんだ)

側近(だからハーピーが明日犯され、最悪死に至っても、それは仕方のないこと……)

側近(仕方ない、で片づけていいのか?)

側近(もし明日ハーピーが死んだら、今日までの生活は終わりだ……)

側近(それは……)

側近(なんていうか、嫌だな……)
800: :2011/11/23(水) 02:46:13 ID:UOzzvGRKcw
次の日

ハーピー「……じゃあ私は行ってきますね」

側近「ああ」

ハーピー「畑の方の手伝いをして……あ、5時には薬草採取も手伝いますから、遅くなります」

側近「わかってる」

ハーピー「そういうことですので、お留守番は任せますよ!それでは行ってきます!」

側近「……行ったな」

側近「さてと……」
801: :2011/11/23(水) 02:47:06 ID:UOzzvGRKcw
獣人A「あとちょっとでハーピー族の女を犯せるわけかwwwたまらんなあ、おいwww」

獣人B「ハーピー族は美人揃いだからなあwwwその上、基本誰かと交わることはないっていうwww」

獣人C「初物をおいしくいただくわけだなwww」

獣人「最初の一口は俺にくれよ?俺の手柄なんだからよwwww」

獣人A「わかってるってーwww」

側近「……クソみたいな会話してんな。今すぐ黙ってもらいたいな」

獣人「ああ?誰だよ、てめえは?」

側近「俺か?俺は……弱者の味方だよ」
802: 戦闘はカットで:2011/11/23(水) 02:47:54 ID:UOzzvGRKcw
獣人「う……ぐぅ……」

側近「いってぇ……怪我も完治しないまま戦うもんじゃねえな……」

側近「うわ、また血出てきたし……」

側近「回復魔法って覚えた方がいいのかな……」

側近(こいつら……全員生きてるな)

側近(敵を生かしても意味はない……普通ならとどめを刺すべきだ)

側近(でも……)

側近(そんなことしたらハーピーが悲しむかな……)

側近(こいつらが生き残って報復を考えても)

側近(その都度叩き潰してやればいいか)

側近(ハーピーへの説明はどうするかな……あの女共の計画を言っていいものか……)
803: :2011/11/23(水) 02:49:02 ID:UOzzvGRKcw
ハーピー「ハー子さん達、来てるかな?」テクテク

ハーピー「あれ?あれって……側近さん?」

ハーピー「それに……大勢の方が倒れてる……あっ!」

獣人「くそが……一矢報いてやる……」

獣人「傷口に攻撃魔法当てればあるいは……くらえ!」バシューッ

ハーピー「危ない!!」

側近「えっ」

声に反応し、振り返った側近が見た光景。
それは、獣人の中級攻撃魔法を、身を盾にして受け止めるハーピーの姿だった。
爆風で、その白く美しい羽根が無数に舞った。ハーピー自身は、自らの血で口から下を赤く染めた。
間もなくハーピーは後ろに倒れた。その前面は酷い火傷がほとんどを占めていた。
調べなくてもわかる。致命傷だった。
804: :2011/11/23(水) 02:49:47 ID:UOzzvGRKcw
「ハーピー!!」

側近はハーピーの身を案じつつ、獣人の方へ目をやった。次の攻撃に備えてである。
しかし、先の一撃は最後の力を振り絞ったものだったらしく、獣人は既に気絶していた。
それを確認して、側近はハーピーに力強く語りかけた。

側近「ハーピー!!しっかりしろ!!」

ハーピー「だ……大丈夫……でしたか?」

側近「ああ、俺は大丈夫だ!」

ハーピー「そう……よかったです……」

側近「ハーピー!俺には薬草の知識がない!どれをどのように使えばいい!?」

ハーピー「無理……ですよ。薬草じゃ……到底……な、治せない怪我……です……」
805: :2011/11/23(水) 02:50:53 ID:UOzzvGRKcw
ハーピー「わ、私……弱いなりに……お手伝い、できましたよ」

側近「あ?何を言ってるんだ!?」

ハーピー「平和な世界へのお手伝い……命がけですけど……」

側近「平和な世界?何のことだ!?」

ハーピー「魔王様の優しさに……側近さんの強さが重なれば……きっと魔界は変わります」

ハーピー「側近さんは……ここで死ぬべきじゃない……平和な世界のためにも……」

ハーピー「平和な世界を……作り、そこで過ごすべき方です……」

側近「馬鹿!!お前だって、その平和な世界で生きるべき存在だろ!!」

側近「平和な世界には、お前のような優しい奴だって必要なんだよ!!」

側近「それに……俺という個人だって、お前を欲してる!!」

側近「お前が看病してくれた数日間、本当に楽しかったんだ!!」

側近「た、たぶん……俺はお前が好きなんだよ!!」

側近「世界も俺も、お前が消えるのを望んでねえんだよ!!」

側近「だから生きろ!!」
806: :2011/11/23(水) 02:51:34 ID:UOzzvGRKcw
ハーピー「ありがとう……嬉しい言葉です……」

ハーピー「……側近さんは……頼りになって優しくて……」

ハーピー「私も……側近が……好き……好き、だよ……」

ハーピー「……」

側近「……おい?おい!?」

側近「くそ、冗談ではない!!死なせてたまるか!!」

側近「しかし……薬草ではどうしようもない!何か……何か方法は……」

側近「……」

側近「回復魔法か……」
807: :2011/11/23(水) 02:52:22 ID:UOzzvGRKcw
側近はそれまで回復魔法を成功させたことは一度もなかった。
攻撃魔法は各種上級まで極めているものの、回復魔法はそれらと勝手が違う。
魔力を攻撃のそれとは違う性質に変えた上で、放出せねば回復効果は得られない。
しかし側近にはその感覚がつかめてなかった。
そして、失敗を繰り返しているうちに、次のような考えになった。

「そもそも回復魔法が必要になるほど酷くやられるつもりはないし、やられたらその時は死ぬまで」

こうして側近は回復魔法を取得することなく、今日まで生きてきた。
しかし、目の前の麗しい女性は、自分が回復魔法を出さねば死んでしまう。
それだけは阻止したい側近。
彼は挑むしかなかった。成功したことのない、回復魔法に。
808: :2011/11/23(水) 02:52:52 ID:UOzzvGRKcw
かつて見た魔道書、その中の回復魔法に関する数十ページを必死に思い出す。

(魔力を両腕に集中させ、魔力の性質を変化……)

かつてないほどの集中を以て、回復魔法に挑む側近。
そして、確かな手ごたえに自信を深め、両腕の魔力をハーピーへと放った。

「……あれ?苦しくない……火傷、治ってる……」

成功した。側近が放った魔力は、中級回復魔法となって、ハーピーの体を治したのだった。

「側近さん、私……」

ハーピーが言い切る前に、側近は彼女に抱きついた。
見なくとも彼女が赤くなるのが伝わった。それでも側近は抱擁をやめない。
大切な命が散らなかったという事実がただただ嬉しくて、それを制御する術など持たなかった。

「よかった……ハーピー、よかった……!」

こうしてハーピーは一命を取り留めたのだった。
809: :2011/11/23(水) 02:53:41 ID:UOzzvGRKcw
薬草の森から帰り、ハーピーは全てを知った。

側近「……知った上で許すのか?」

ハーピー「はい。私も逆の立場なら、仕方ないと考えるはずですので……」

側近「嘘だ!自分のこと全然わかってないよ!ハーピーなら絶対庇うよ!」

ハーピー「でも、たぶん……自分を守るために」

側近「いーや、ハーピーなら自分より先に誰かを助けようとする!……だからこそ、俺が今生きてるんじゃねえか!」

側近「……そんな危なっかしいハーピーは、今後も俺が守るしかねえよな」

ハーピー「え……」

側近「お互い好き合ってるんだ。付き合い続けようぜ」

ハーピー「あ……///そ、そうですね、お付き合いしてみましょうか?」

側近「敬語」

ハーピー「え?」

側近「森でさ、一回敬語じゃなくて普通に喋ってくれたよな。今後はそっちで話してくれよ」

ハーピー「……いいんですか?」

側近「いいんだよ。むしろそっちのがいい」

ハーピー「……わかった。これからもよろしくね、側近///」
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名前:
sage:


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