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魔王「何で女の子が一人もいないんだよ!」
[8] -25 -50 

1:🎏 :2011/9/14(水) 23:03:02 ID:8OHTIHnybw
初めてSSを書かせていただきます。
ギャグ物にしようと思ってまして、そのせいで世界観を無視した発言や行動が多くなると思います。
あと、最終的にはスレタイ詐欺のような展開になるかもしれません。今のところ、そのように予定しています。
以上のような感じで書き進めていこうと思ってます。
問題ないという方は、よければ最後までお付き合いください。
よろしくおねがいします。

※長いため、携帯から読むと途中から読めなくなる可能性があります。読めなくなった場合、こちらから読んでみてください→>>887-891


847:🎏 :2011/11/26(土) 02:13:19 ID:UOzzvGRKcw
魔法タイプと分析していた側近は即座に間合いを詰める。
剣士と魔法使い、それぞれの適切な戦闘場所は明確である。
魔法使いは遠距離からの攻撃、剣士は接近戦で真価を発揮するわけである。
ゆえに、一気に近付きさえすれば、魔法使いは実力を発揮できなくなるのだ。

間合いを詰めても目前の男は反応を示さない。
俺のスピードについてこれない……そう結論付けた側近は一気に勝負に出る。

生半可な攻撃では先ほどの回復魔法で一気に回復されてしまう。つまり、一撃で勝負を決めなくてはならない。
そんな意気込みの側近が剣を突きだした場所……それは、魔王の喉元だった。
848:🎏 :2011/11/26(土) 02:14:17 ID:UOzzvGRKcw
(勝った!)

そう確信した側近だったが、結果は彼が望んだものではなかった。
突きが魔王の喉元に直撃した瞬間、剣先から刃が崩れてしまったのだ。

それは幼いころに弱者から奪ったなまくらではなく、奪った金品で職人に依頼して手に入れた優れた剣だった。
それに自身の魔力を込めて突いたのだ。生身が裂けぬはずもない。
だとすれば、答えはひとつしかなかった。

「……硬化魔法か!」

「うわあ、怖っ!すごい突きだね……あそこがぶるってなったわ」

魔王の硬化魔法によって、剣をゴミにされてしまった側近。
それでも、接近戦に勝機を見出してる以上、そこで退くわけにはいかなかった。
849:🎏 :2011/11/26(土) 02:15:08 ID:UOzzvGRKcw
「はああああ!!」

剣を失ったとはいえ、攻撃手段が断たれたわけではない。
自らの拳へと武器を切り替えて、強烈な打撃を次々と叩きこむ。
しかし魔王の硬化魔法の前では意味を成さない。逆に殴った拳を痛める始末である。

「ふっふーwwwこの体の前じゃ意味ないよ―www」

ちっ!と舌打ちした側近だったが、硬化魔法に終始する魔王を見てあることを閃いた。
強烈な打撃で攻め続けていたが、突然バックステップで間合いを取った。
そして即座に強大な攻撃魔法を放ったのだ。

(身体能力では俺の方が上なんだ!)

(この急な動きでは奴も対応しきれまい!)

(硬化魔法で防げるのは斬撃や打撃……物理的攻撃だ!)

(硬化魔法をかけたまま、何が起こったかもわからないまま魔法で死ぬがいい!)
850:🎏 :2011/11/26(土) 02:16:02 ID:UOzzvGRKcw
攻撃魔法が魔王に襲いかかる。
側近の読みが正しければ、この素早い切り替えに反応できず、相手を倒せるはずなのだが、結果はまたも思惑とは違うものとなった。

「どっせーい!」

などという掛け声とともに、魔王は強力な防御魔法壁を目の前に展開したのだ。
側近の攻撃魔法は、魔王に届くことなく防御魔法壁に弾かれてしまった。

思わぬ展開に驚くしかない側近。何故身体能力で劣る奴がこの動きに反応を……
それを考え始めてから、答えにたどり着くまで、そんなに時間はかからなかった。

反応できなかったんじゃない、反応しなかったのだ。
身体能力は同等かそれ以上で、しかし防御系統の魔法で事足りるため動かなかったのだ。
851:🎏 :2011/11/26(土) 02:17:00 ID:UOzzvGRKcw
しかし何故そんなことをする必要があるのか、側近にはわからなかった。
その答えは魔王自らがこう言ったことで判明するのだった。

「……これでお前の攻撃は通用しないってわかったでしょ?だからさ、頼むから降参してよ」

そう、それらは魔王なりの実力を示す行動だったのだ。そして、それと同時に魔王は降伏するよう言いだした。

「……ああ?お前が俺に勝ちたいんなら、ぶっ殺せば済む話だろ。ボケてる暇があったら真面目に戦え!」

「ボケてないよ!俺はお前が何となく頭良さそうだからこう頼んでるんだよ!傷つけあわないで済むならその方がいいじゃん!」

側近から言わせれば甘いとしか言いようのない戯言だった。
それを魔界で、戦闘の最中に言われたとなると、側近としてはキレるしかなかった。
852:🎏 :2011/11/26(土) 02:17:47 ID:UOzzvGRKcw
側近「傷つけあわないで済むならその方がいいだと?」

魔王「イエス!」

側近「寝ぼけたこと言ってんじゃねえよ、この腐れ童貞が!!」

魔王「どどどど童貞ちゃうわ!」

側近「そんなクソみたいに甘い考えが魔界で通用するわけないだろ!」

側近「てめえだって人型なら、魔界の底辺のあり様知ってんだろ!?」

魔王「知ってるよ!だから俺は立ちあがったんだもん!」

側近「俺だってそうだ!弱かったら、あんなクソみたいな扱いされても仕方ないんだ!」

側近「だが、強くなれば逆にクソみたいに扱うのが許されるんだよ!」

側近「強者は誰かに媚びる必要も頼む必要もないんだ!一方的に奪うことが許されるんだよ!」

側近「てめえも魔王を目指す一人なら、強者らしく振る舞え!命を奪うことにためらうな!」
853:🎏 :2011/11/26(土) 02:18:53 ID:UOzzvGRKcw
魔王「ためらうよ!命を奪うってことは、その奪う相手とそいつにかかわる全ての方の人生を狂わせることなんだよ!」

魔王「大切な誰かを奪われる悲しみや、苦しみはわかるでしょう!?」

魔王「それは誰かに強いていいものではないんだ!簡単な気持ちで奪ってはならないものなんだ!」

魔王「確かに魔界は強い者が全てって風潮があるし、だからこそ俺も弱い人型ながらも、家族を失った悲しみを乗り越えて強くなったんだ!」

魔王「だけど、強くなったからって、従来の魔物達のように奪わなきゃならないってわけでもないよ!」

側近「馬鹿かお前は!奪って、殺して、高みを目指さないと、今までの不幸分を取り戻すほど幸せにはなれない!」

魔王「幸せは、本来誰かの幸せを意図的に壊して作り上げるものじゃない!」

魔王「俺の幸せだって、お前の命を犠牲にして成り立たせちゃ駄目なんだよ!」

側近「甘い……甘いんだよ!仮に俺が賛同して降参し、お前が魔王となったとしても!」

側近「魔界に巣食う魔物達はお前の甘い考えなど認めない!魔界の悪意は必ずお前の前に立ちはだかるぞ!」

魔王「知ってるよ!だから俺は……魔界を変えるために魔王を目指したんだ!」

側近「魔界を……変える?」
854:🎏 :2011/11/26(土) 02:19:34 ID:UOzzvGRKcw
魔王「強い者は誰かを傷つけるんじゃなくて、誰かを守るべきなんだ」

魔王「俺達は確かに苦しんだよ。苦しんで、ここまで大きくなった。強くなった」

魔王「だけど、ここで俺達がまた奪う側になってしまったら、この悪循環は永久に続くよ!」

魔王「この悲しみや憎しみは次の世代に繋げるべきではない!」

魔王「今!俺達がその流れを断ち切る時だよ!」

魔王「そのために立ち上がれるのは、苦しみを知ってる強い者だ!」

魔王「つまり、俺やお前のことだよ!」

魔王「自分だけが幸せになるんじゃなくて、魔界の皆が、世界中が幸せになるために、俺達は今立ち上がるべきなんだ!」

側近「……それじゃ俺達が報われないだろ」
855:🎏 :2011/11/26(土) 02:20:26 ID:UOzzvGRKcw
側近「ガキの頃は強い者に虐げられ苦しみ、絶望を味わって」

側近「その強い奴らと並んだら、今度は誰かのために働けって?」

側近「じゃあ俺達は何なんだよ!?俺達の幸せはどこにあるんだ!?」

側近「それに、それを魔界が許すと思うか!?」

側近「個人の幸せしか考えてない連中相手に、誰かの幸せを謳って、それで納得すると思うか!?」

側近「その悪意に邪魔された時、苦しむのはそれを目指す者、つまりお前なんだぞ!」

側近「ここまで苦しんできた俺達が、目の前の幸せを放り捨てて、苦しみの道を進む必要なんてないだろ!」

側近「そんな道を選んで、お前は耐えられるのかよ!?」
856:🎏 :2011/11/26(土) 02:21:37 ID:UOzzvGRKcw
魔王「……幸せって、一人から成る物じゃないんだよ、きっと」

側近「……」

魔王「お互い境遇は似てるんだと思う。俺も幼い頃に母さんと父さん亡くして、それで悲しくって」

魔王「母さん達殺した連中がいる人型の集落にいたくなくて、出てったんだ」

魔王「でも、子どもに旅は厳しくって、今どこにいるかもわかんなくて」

魔王「いよいよやばいって時に、人間の子どもに助けられた」

側近「人間の子どもに!?」

魔王「いつの間にか人間界の方に行ってたみたいでさ。……ほら、人型って見た目ほとんど人間だから、人間の子どもも抵抗なかったんだと思うよ」

魔王「食糧わけてもらって、元気が出たら一緒に遊んでもらって、人間界のゲームやらせてもらって」

魔王「たくさんの笑顔を向けてもらった……幸せだったなあ、あの時」

魔王「そして魔界もこうだったら悲しくなくて済むのになって考えた」

魔王「その幸せが魔界にも生まれるようにって、俺は魔王を目指したんだよ」

魔王「この理想の道のりがどんなに険しくったって、その末にあの笑顔が、幸せが待ってるって考えると」

魔王「俺は頑張れるよ。きっと、最後まで歩けると思う」
857:🎏 :2011/11/26(土) 02:22:28 ID:UOzzvGRKcw
側近「……強いんだな」

魔王「弱いよ。散々理想は語ったけど、それが実現できるかわかんないし、辛い道のりなのはわかってんだもん。怖いよ」

魔王「正直、一人じゃくじけそうになる時があるんだ、俺は」

魔王「だから……お前にも協力してほしいなって思ってる」

側近「俺に?」

魔王「お前ってさ、優しいじゃん」

側近「……はあ?脳味噌と目が腐ってんのか?」

魔王「賞味期限はまだ遠いよ!……優しいと思うよ、お前」

魔王「俺の話もちゃんと聞いてくれたし、そのうえで、俺の幸せを気遣ってくれたじゃん」

側近「お前の馬鹿げた理想論に反論せざるを得なかっただけさ」

魔王「自分じゃ認めないんだね……まあいいや」

魔王「誰かのための、誰もが幸せの機会を得られる世界を目指したいんだ、俺は」

魔王「その幸せ候補には、当然ながら俺やお前も入ってる」

魔王「だから……一緒に目指そうよ!その方が俺らにとっても、魔界にとっても、絶対いいよ!」
858:🎏 :2011/11/26(土) 02:23:04 ID:UOzzvGRKcw
側近「……それを達成したいんなら、俺を倒してからにするんだな」

魔王「ええー!?だから俺は傷つけたくないんだって……」

側近「何も殺しを強要しないさ。ただ、俺にも俺の目的があってだな」

魔王「お前って賢そうだからさっきので実力差を察してくれると思ったのに」

側近「俺にも一応プライドはあってだな。それゆえ賢くは生きられないんだよ」

側近「……来い!お前を倒して俺が魔王となる!」

魔王「このわからずや!……こうなったらゲキガンフレアでお前を倒す!……死なないでね」

側近「うおおおお!!」

魔王「ゲキガーン……フレアァァァ!!」



その日、新たな魔王が誕生したのだった。
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