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出会う感情の名は、
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1: 1 ◆b.qRGRPvDc:2011/10/16(日) 19:19:06 ID:f4A63ChN1o
男「あれ?何してたんだっけ?…なんで此処に居たんだっけ?」

住宅街の路地にポツリと立つ青年。見たところ、学生のようだ。

辺りを見渡しても、まるで自分以外の人間が魔法にでも掛けられたかのように姿を見せない。

灰色に染まった空は雨を降らせてパタパタと音を立てながらアスファルトを濡らしていく。

男「うわ!財布の中身散乱してるし!お札が濡れる!」

散乱しているお金を慌てて掻き集め、乱暴に財布に押し込んだ。


359:
◆b.qRGRPvDc:2011/12/8(木) 20:49:10 ID:vWFRRZFXl2
>>357
支援ありがとうございます!
うわわわ、そんな事を言って頂いていいのでしょうか。恐縮です。でも凄く嬉しいです(*´・ω・`*)

納得の行くまで、となるともはや短編小説ではなくなってしまう長さになってしまう予感がするので、自重しつつちゃんと完結させたいと思っています!

弟「お気遣いありがとう」
少女「君は本当に可愛げがないね」
弟「あんたに言われたくない」ベー
女「喧嘩しないのー!」


>>358
支援ありがとうございます!
二人に比べて登場シーンが少ないというのに気に入って頂けるなんて…!きっと姉も喜んでます。枕を抱き締めながらゴロゴロ転がってます。

女「きゃーきゃー」ゴロゴロ
女「どうしようモテ期かも〜!」ゴロゴロ
少女「…止めないのかい?」チラッ
弟「無理です」
360: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/8(木) 21:33:37 ID:w/b1EyjZ5M

何時間も自分を探して走り回ったであろう弟の吐息を背後に感じて、少女は振り返る事もせずに言葉を洩らした。
「まあね」と得意気に弟が笑う。

少女「まだ、何かあるのかい?」

弟「あ、うん。えっと…」

少女に促されて弟は口籠もった。
優しく、優しくと姉が背中を押しているような気がした。

弟「…この前は事情も知らずに突っ掛かってごめん。その……友達に、ならない?」


361: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/8(木) 21:56:47 ID:vWFRRZFXl2

夜風が二人の頬を優しく撫でた。少女の瞳が月明かりに反射してうるうると光る。
振り返る先には弟の姿があった。間違いなく真っ直ぐに少女を見つめている。

少女「ともだち…?君と私がかい?」

弟「うん」

弟は照れ臭そうに眉を寄せて鼻を撫でた。
少女の手が微かに震える。警鐘にも似た鼓動の音が少女の身体中に響いていた。


362: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/8(木) 22:24:58 ID:w/b1EyjZ5M

少女「…馬鹿な事言ってないで早くお家に帰りなよ」

少女のスカートが風に膨らんでくるりと回った。弟に背を向けて手首の鈴を弄ぶ。

弟「あんたは帰らないの?」

少女の黒い髪が弟の心を擽るようにさらさらと風に揺れた。夜風に靡く髪を払う事もせずに少女は答えた。

少女「君は帰るべき場所があるでしょう。早く帰るといいよ」


363: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/8(木) 22:54:15 ID:w/b1EyjZ5M

弟には少女に掛ける言葉が思い当たらなかった。というよりも、まだ子供の弟には少女の言動は理解し難いものばかりで、今にも吹き出してしまいそうだったのだ。

少女「…何だい?」

少女は怪訝な顔で横目に弟を見る。

弟「名前もないし帰る家もないって、あんた野良猫みたいだね」

少女「あんなに媚びた声は出せないし、私の声なんて誰にも聞こえやしないよ」


364: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/8(木) 23:23:36 ID:w/b1EyjZ5M

野良猫の方がよっぽどマシだと言って少女は睫毛を伏せた。
弟の頭はますます困惑し、首を傾げるしかなかったが、伏せられた長い睫毛が寂しいと語り掛けているように思えてならなかった。

弟「どういう意味…?」

ふと、聞き馴れたメロディが弟の耳を突いた。いつも何処からか流れてくるそのメロディは、児童に帰宅を促す為の「夕焼け小焼け」のメロディだった。
公園の時計に目をやると、時刻は午後六時半を示している。


365: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/8(木) 23:43:47 ID:vWFRRZFXl2

弟「うわ、もうこんな時間!?帰らないと!」

弟が身じろぐと鞄の中で筆箱が音を立てて揺れた。そういえば下校の途中だったと、青ざめる。母親にばれたらきっと怒られるに違いない。「こんな時間まで何処で寄り道していたの!」と。

少女「…早く行きな。良い子は帰る時間だよ」

少女に促されて弟はこくこくと頷いた。慌てて坂道を駆け降りる最中、少女に向かって振り返ると声を張った。


366: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/9(金) 00:07:56 ID:w/b1EyjZ5M

弟「よく分かんないけどさ、聞こえるよ。僕にはあんたの声、ちゃんと聞こえてるから!」

またねと手を振って弟が走りだす。少女は何も答えなかった。

少女「……」

答えなかったが、走り去る弟の背中に小さく手を振ってみせた。夕焼け小焼けのメロディに乗せて小さくなってゆく弟の背中をぼんやりと一人、見送った。


367:
◆b.qRGRPvDc:2011/12/9(金) 00:18:32 ID:w/b1EyjZ5M
今日は此処までとさせて頂きます。

余談ですが、夕焼け小焼けのメロディは全国的に放送されているみたいですね。地域によって時間帯にばらつきはあるようですが、夏期は凡そ17時、冬期は16時頃から流れるそうです。
私の住む地域も夕方になると何処からともなく夕焼け小焼けが流れてきます。何となく、胸が締め付けられるような切なさを感じる私ですw

私が言いたかったのはそんな事ではなく、上記の事から>>364は有り得ないという事です。間違った認識をさせてしまうような事を書いて申し訳ありませんでした(´・ω・`)
368: 名無しさん@読者の声:2011/12/9(金) 01:38:54 ID:cW/o/4ljMA
夕焼け小焼け懐かしいwうちの地域も鳴ってた気がする
弟可愛い紫煙
369: 名無しさん@読者の声:2011/12/9(金) 08:23:08 ID:LrqHLtn3N6
真面目だなww
1さんのキャラ好きだわっC
370: 名無しさん@読者の声:2011/12/10(土) 00:32:34 ID:fkBVTflO66
(`・ω・´)つC
371:
◆b.qRGRPvDc:2011/12/10(土) 18:08:35 ID:qcDttONIGI
>>368
支援ありがとうございます!
夕焼け小焼けが鳴ると帰らないといけないという幼い頃のイメージの所為か、あれが聞こえると本当に切なくなります。丁度空が夕日に染まる頃だから余計にそう感じるのかもしれませんが(´・ω・`)

女「そうなの、弟くん可愛いの。368さん分かってる〜!」
弟「ちょっと姉ちゃん黙って」


>>369
支援ありがとうございます!
す、す、すすすす…!?いや、あの、全国的に流れているという事だったので、もし夕焼け小焼けが聞こえてきた時に「もう18時半!?」という勘違いをさせてしまってはいけないと思いまして、はい(*´・ω・`*)
実物の私を見たらきっと真面目とは言って頂けないでしょうねw

少女「こんなSSに影響力があるとは到底思えないけどね」
弟「激しく同意」


>>370
支援ありがとうございます!
やはり支援して頂けると嬉しいものですね。Cの記号を見るとテンションが上がります。周りに変に思われるかもしれないので表面上は無表情で画面を凝視しつつ、心の中で小さいおっさんが激しく踊っていますw

少女「私達ではテンションが低すぎて表せられないらしいよ」
弟「どうせ可愛げのない子供ですよ」
372: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/10(土) 20:52:16 ID:yvEPXiu.Rw



チリン、チリンと鈴の音が鳴り響いている。辺りを見渡しても真っ暗で何も見えず、自分が何処に居るのかも分からない。ああ、またあの夢かと弟はうなだれた。

背後からの鈴の音に振り返ると、やはり其処には笑みを浮かべる姉の姿があった。どうせまた姉は離れて行くのだと、歩み寄る事さえ諦めていた。
少女が姉の手を取る。前に見た夢と同じように。


373: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/10(土) 21:24:09 ID:qcDttONIGI

弟「なんであんたが出てくるの?何処に行くつもりなんだよ」

少女は答える事なく姉の手を引いて歩きだすのだろう。そう思っていた弟の予想に反して、少女は歩みを止めて弟に振り返った。

少女「──────」

弟「え?何…」

微かに動く少女の唇からその言葉を読み取ろうとするが、読唇術の心得などない弟は、ただ目を凝らすしかなかった。


374: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/10(土) 21:41:14 ID:yvEPXiu.Rw

弟が薄らと目を開けると、其処にはいつも通りの見慣れた白い天井が見えた。やはり、夢だったのだ。

弟「はぁー……」

分かってはいたが、弟の口からは自然と長い溜息が洩れた。背中にじんわりと掻いた汗がパジャマを肌に張り付けている。
どんよりとした嫌な気持ちを引き剥がすように、体を起こして窓に視線を流した。

弟「…ちゃんと帰ったのかな、あの子」

まだ覚めやらぬ朧気な意識の中、艶めかしく風に揺れる少女の黒髪を思い浮かべていた。


375: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/10(土) 22:02:28 ID:yvEPXiu.Rw



男「女ちゃん、少し休んだら?」

女「ん、もうちょっとだけ」

姉はベッドから体を起こし、横に置かれたキャンバスに何かを描いていた。隣で心配そうにしている男を余所に、真剣な眼差しで鉛筆を滑らせている。

女「あっ…」

姉の手から逃れるようにして鉛筆がコロコロと転げ落ちた。すぐに拾い上げようとした姉の指先は小刻みに震え、鉛筆は音を立てて転がるだけだった。


376: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/10(土) 22:33:15 ID:qcDttONIGI

男「女ちゃん…?」

訝しげに様子を伺う男に姉は笑顔て振り返った。震える手を押さえ、困ったように眉を寄せて。

女「最近ね、手に力が入らない時があるの」

男「え…?」

表情を強張らせる男とは対照的に、姉は笑みを浮かべたまま手の平に視線を移した。
震えが治まったのを確認すると、ひょいと鉛筆を拾い上げる。


377: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/10(土) 22:52:25 ID:qcDttONIGI

女「その内描けなくなっちゃうかもしれないから…だから、」

お願い、と悪戯な笑顔を見せた姉の肩を、男の腕がそっと抱き寄せた。痩せて小さくなった姉の華奢な体は男の腕の中に容易に収まった。

男「大丈夫だよ。大丈夫、大丈夫だから…」

何度も繰り返し、男は言った。心地好い低音が姉の耳を撫でる。姉は縫い付けたように弧を描いていた唇をゆっくりと解き、揺れる瞳を閉じた。


378: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/10(土) 23:11:15 ID:yvEPXiu.Rw

女「……突き放せなくて、ごめんね」

力なく寄り掛かる姉の髪の香りが男の鼻を擽った。いとおしそうにその髪に頬を擦り寄せると、穏やかな優しい声色で囁くように言った。

男「女ちゃんに来るなって言われても来るよ、俺は」

女「男くん…」

ドクン、と姉の心臓が大袈裟に音を立てた。それに応えるように男の心臓もドクン、と高鳴る。
姉は表情を綻ばせ、熱が帯びた瞳で男を見つめた。

女「ありがとう」


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