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少年「ボクが世界を変えてみせる」
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1: 名無しさん@読者の声:2012/12/23(日) 21:21:41 ID:apUuk9iOiY
むかしむかしのことです。
世界は深い緑が生い茂り、深い青が寄り添うように流れる清らかな一つの円でした。
穢れを知らず、怒りも悲しみもなく、渇くことのない喜びが波立てる大地は
争いを寡黙に、繋がりをおおらかにしました。


745: ◆WEmWDvOgzo:2013/7/10(水) 20:58:06 ID:PQJ03F4Riw
カロル「ボクね。宣教師さまを許してってお願いしたかったんだ?」

神父「あぁ。それは前にも聞いたが…」

カロル「それからお母さまとマルクと3人で一緒に帰るんだ!」

神父「ふむふむ」

カロル「あと見張りのお兄さんにおやすみをあげてってお願いしようと思ってたの」

神父「む?なぜだ?」

カロル「お母さんのお見舞いに行きたいんだけど、おやすみが貰えないから行けなくて困ってるって聞いたんだ」

神父「それは確かに不憫だがお前が気にする事でもあるまい?」

カロル「えー。そうかな?」

神父「それはそうだろう?」

カロル「うーん…でも困ってるって聞いたよ?」

神父「そんなものは本人の問題だ。そっとしてやるのが普通だろう」

カロル「でも自分でなんとかできなかったらどうするの?」

神父「知らんわ!こちらには関係なかろう!」

カロル「それならどうしておじさまはボクの頼みを聞いてくれるの?」

神父「はぁ?」

カロル「それっておじさまが優しい人間だからだと思うんだ。
だから関係ないボクを放っておけないんじゃないかな?」ニコッ

神父「なっ…!な、な、なな…!」カァァ
746: ◆WEmWDvOgzo:2013/7/10(水) 21:08:18 ID:PQJ03F4Riw
神父「オホンッ…で、それが望みだったのか?」

カロル「ううん、他にもあったよ?」

神父「ずいぶん多いな…」

カロル「パッチくんを探してほしくて…」

神父「…逃げた子供か」

カロル「うん。どこに行っちゃったんだろ…」シュン

神父「……」

カロル「ちゃんと生きてる筈だよ?でも帰ってこないから…」

神父「…そうか」

カロル「うん…」

カロル「あとね。村にお医者さまを呼べたらいいなって…」

神父「……!」

カロル「みんな苦しそうで…無事な人間たちも悲しそうだったから」

神父「(こ、この小僧…)」
747: ◆WEmWDvOgzo:2013/7/10(水) 21:15:00 ID:Iq/2yn3AyA
―――回想(神父)―――
司祭「ほう…。そのような事になっておったか」

神父「はっ…。あのままでは村は崩壊の危機に瀕するかと思われます!」

司祭「何を言うとる?既に崩壊しとろうが?」

神父「は?いや、しかし…徐々に修正していけば元通りとはいかずとも息を吹き返せるのでは…」

司祭「ほほほ。それもまた一つの道じゃろうな?」

神父「は…?と、言われますと?」

司祭「まずは王国に報告して出方を見るとしよう」

神父「そ、そんなことを知らせれば…!」

司祭「まぁ…どう転ぼうと主が定められた道じゃよ」

神父「だ、黙っているという訳にはいかないのですか?」

司祭「黙ってなんとする?」

神父「は…?」

司祭「黙っていたとして万が一、王国に知られたらどうする?」

神父「そ、それは…」

司祭「そうなれば責めを負うのは我々じゃ。
謂れの無い罪を問われるのであれば何もかも話してしまった方がよい」

神父「……」
748: ◆WEmWDvOgzo:2013/7/10(水) 21:16:09 ID:PQJ03F4Riw
司祭「そう気を落とすでない。
お前にも、いずれまた別の布教地を任せてやろう。なにも急ぐ必要はない」

神父「い、いえ、そういう訳では…」

司祭「そんなことよりも、そのホビットが癒しの力を使ったというのは確かか?」

神父「そ、そんなこと…ですと…!?」

司祭「なんじゃ?」

神父「はっ…い、いえ…」

司祭「ふむ。それでホビットは癒しの力を使ったのか?」

神父「は、はい……」

司祭「ほっほっほ!そうか…それは実に許しがたい…!」ニヤリ

神父「……」

……………………
749: ◆WEmWDvOgzo:2013/7/10(水) 21:17:49 ID:Iq/2yn3AyA
「ま……さま…?おじさま…?」

神父「」ハッ

カロル「おじさまー?」コンコン コンコン

神父「す、すまん…。少しボウッとしていた」

カロル「大丈夫ですか?」

神父「うむ…」

カロル「急に声がしなくなったから心配したんだよ?」

神父「あぁ…すまんな」

カロル「平気。ボクは気にしてないよ!」

神父「…とりあえず約束通り、絵は届けてやる。
扉を開けるが逃げ出そうなどと思うなよ?」

カロル「はーい!」

神父「…」ガチャッ

神父「む?なんだ、これは?」ガチャッガチャッ

カロル「どうしたの?」

神父「鍵は回した筈なのだが扉が開かんのだ」

カロル「え……」

神父「一体どうなっているんだ?」ガチャッガチャッ

「その扉は特別でのう」

神父「」ビクッ

司祭「扉に備え付けられた鍵の他に…わしが持つ、この鍵を差し込まねばならんのじゃよ?」ジャラジャラ

神父「しさ……ぃ…さま…!?」

司祭「時に神父よ…。貴様、そこで何をしておるんじゃ?」

アリアス「…立ち入りを禁じていた訳ではないけれど、無断で扉を開けるのはまずいんじゃないかしら?」

神父「……!?」
750: ◆WEmWDvOgzo:2013/7/21(日) 13:46:55 ID:klXJlN7p4w
司祭「何をしとると聞いておろうに。さっさと答えんか」

神父「そ、それは…」

アリアス「まさか逃がそうとしていたの?」

神父「ち、違います!断じて!」

司祭「では何をしておったんじゃ?」

神父「む、村で起こった出来事にどこまで関わっていたのか…聞き出そうと思いましてな」

司祭「なんじゃ。まだこだわっておったのか?その話はもう済んだじゃろうが?」

神父「は、はぁ…」

司祭「…まことにそれだけか?」

神父「……」

司祭「話を聞くだけであれば扉を開く必要はあるまい?」

神父「失礼致しました!こうなれば恥を忍んで申し上げます!」

司祭「?」

神父「小僧とその母親を連れていた道中、ある物を預けておりまして、それを回収しに来たのです!」

司祭「ある物?なんじゃ、それは?」

神父「え、絵です!絵を預けたのです!」

司祭「絵?なにゆえにそのような物を預けたのじゃ?」

神父「あ、いや…」

カロル「違うよ!絵じゃなくて絵本でしょ?」

神父「そ、そうだ!そうだった!
布教をする際に子供らの目を引くようにと絵本を用意したのですが小僧が読みたいと言うので、つい渡してしまいましてな…。
あは、あはは。あはははは!」

司祭「ほう?まぁそういうことなら構わぬが、一言わしに断りを入れてくれんか?」

神父「はっ!大変失礼致しました!」フカブカ

司祭「ふむ…。鍵を開けてやろう。しばし待つがいい」

神父「はっ!ありがとうございます!」
751: ◆WEmWDvOgzo:2013/7/21(日) 13:48:58 ID:klXJlN7p4w
司祭「」ガチャッ

司祭「ほれ、開いたぞ?」

神父「失礼します!」スタスタ

カロル「袋の中に入ってるよ?」

神父「うむ、これか?」パシッ

カロル「うん」

神父「」ガサゴソ

神父「あぁ、あったあった。これだな?」つ【絵本】

カロル「おじさま…」コショコショ

神父「分かってる…。本の間に挟んでおいた…」コショコショ

カロル「うん、ありがとう…!」ニコリ

アリアス「待ちなさい」

神父「はっ…!?」ドキッ

アリアス「その袋は没収よ。囚人に荷はいらないでしょう?」

司祭「ふむ。それもそうじゃな」

神父「あ、はっ…。か、かしこまりました」つ【袋】

司祭「……」パシッ

カロル「あっ」

司祭「」ガサゴソ

司祭「ほっほっほ。これはこれは」ニヤリ

アリアス「なにか?」

司祭「見よ。見事にガラクタばかりじゃわい?」スッ

アリアス「…飴の入った小袋に古ぼけた万年筆。数枚の紙、汚れた頭巾とカツラ…ですか。ふふ」クスクス

司祭「持たせておいても問題はなさそうじゃが…万一の事を考えて取り上げておこうかの」

神父「……」

カロル「」シュン
752: ◆WEmWDvOgzo:2013/7/21(日) 13:52:59 ID:kcUjvD4cU2
―――大聖堂(応接間)―――
神父「では私はこれで…」

司祭「まぁ待て。お前にも用があるのじゃ」

神父「は?」

司祭「悪いが宣教師に付いていてもらえんか?」

神父「それははたまた…なぜ?」

司祭「村での布教活動も無くなった今となっては、あやつもする事がなく、時間をもて余しておるじゃろう。
奴の持ち場が決まるまでの間、お前の仕事を手伝わせてやってくれ」

神父「は、はぁ」

アリアス「余計な動きをされると面倒だから、よく見ていて」

神父「…余計な動き?」キョトン

アリアス「仮にもあの娘はホビットと通じていたのよ?」

神父「あ、あぁ…そうでしたな」

司祭「頼んだぞ」

神父「はっ!お任せください!」

神父「(ついでに絵を渡してやるか)」
753: ◆WEmWDvOgzo:2013/7/21(日) 17:15:03 ID:i6iF4FIEZA
―――大聖堂(広間)―――
ジョー「いやー。出てこられてよかったな!」

宣教師「ありがとうございます」モグ

ジョー「久々の牢外の飯はどうだ?」

宣教師「昨日もいただきました」モグモグ

ジョー「…なんだ、そっけないな」

宣教師「そういえば見張りの仕事はいいのですか?」

ジョー「あぁ、いいよ。別に逃げられたりしないだろ」

宣教師「知りませんよ…?」

ジョー「平気だって。これでも長いこと見張りをやってきたんだ。俺の勘は外れないよ」

宣教師「(今まで見た限り、あまりあてにならない気がしますが…)」モグモグ

ジョー「あんたの方はどうなんだ?見たとこ、やる事も無さそうだが」

宣教師「そうですね。布教も止まったままですし、司祭様の許しが降りたら村へ行こうと思っています」

ジョー「ふーん。村、か」

宣教師「なにか…?」

ジョー「いや、いいんじゃないか?」
754: ◆WEmWDvOgzo:2013/7/21(日) 17:27:56 ID:rrB8Fet0jk
ジョー「この菜飯うまいな!」ガツガツ

宣教師「…ジョーさんはどうされるのですか?」

ジョー「ん?」ゴックン

宣教師「…本当に行かないのですか?」

ジョー「あぁ、見舞いか?」

宣教師「はい…」

ジョー「あれ、嘘だぜ。ぜーんぶな」

宣教師「……へ?」

ジョー「ダガに頼まれてアリアスが仕組んだんだってよ。昨日の夜に言われたよ」

宣教師「な、なんですか、それ…!」

ジョー「あんたに嫌がらせしたかったんだと。ガキじゃあるまいし、暇な連中だぜ」

宣教師「……!」ワナワナ

ジョー「だからいいんだよ。こうなったらヤケになって馬車馬みたいに働くだけだ」

宣教師「そ、そんな事の為に…私は……か、体を…奪われそうに…!」ワナワナ

ジョー「へ?」

宣教師「許せません!!」ガタッ

ジョー「…おーい、どうした?」

宣教師「アリアス様に一言言ってきます!」

ジョー「行っても相手にされないと思うぞ?」

宣教師「くっ…!」ギリッ

ジョー「それにアリアス様はあんたのかわいがってたホビットの件で司祭様とランデブーだ。邪魔すんとどやされちまうぞ?」

宣教師「ですが…納得出来ません!」

ジョー「惨めだけど諦めるしかねぇよ。上の気まぐれに付き合わされんのも、下のお役目ってやつさ」

宣教師「く…ぐぐ…!」ギリギリ

ジョー「今回の事でそれがよーく分かったよ。下にいる以上じたばたしてもしょうがねぇってな」

宣教師「なんというか…吹っ切れてますね?」
755: ◆WEmWDvOgzo:2013/7/21(日) 17:36:17 ID:rrB8Fet0jk
ジョー「母さんに何もねぇって分かったし、胸のつかえも取れたからな。吹っ切れなきゃしょうがねぇだろ?」

宣教師「はぁ…」

ジョー「こうして出てきてるって事はあんたも色々と吹っ切れたのか?」

宣教師「私ですか?」

ジョー「あぁ、牢屋じゃホビットの話しかしなかったクセにこうやって世間話してんだぜ?」

宣教師「言われてみれば…そうかもしれませんね」

ジョー「このままいけばおとがめ無しだ。最初からそうしときゃよかったんだよ」

宣教師「そうですね…」

ジョー「…ほんとにそう思ってるか?」

宣教師「……」

ジョー「見たとこ、奴らを信じたい気持ちと信じられない気持ちでにらめっこしてるようにも見えるけどな?」

宣教師「何が言いたいのですか…?」

ジョー「ま、いいんだけどな」

宣教師「ジョーさんこそ、何か隠していませんか?」

ジョー「……?」

宣教師「わざわざ私などを食事に誘って…何か言いたい事があるのでは?」

ジョー「別に。単なる暇潰しだよ」

宣教師「でしたら私などではなく、トトさんを誘えば…」

ジョー「ははは。野郎と飯食ったってむさ苦しいだけだ」

宣教師「…私と食事をしたところで場が華やかになる訳でもないでしょう」

ジョー「大丈夫だよ。華は無くても飯はうまいから」

宣教師「…それはよかったですね」イラッ
756: ◆WEmWDvOgzo:2013/7/21(日) 17:38:35 ID:i6iF4FIEZA
宣教師「本当に何もないのですね?」ジト

ジョー「疑り深い奴だな。なにもないって言ってるだろ?」

宣教師「…そうですか」

ジョー「それより解放されてみて居心地はどうなんだ?」

宣教師「あまり良くはないですよ。話しかけられる相手もいませんし」

ジョー「そりゃそうだろうな。あんな事があった後じゃ誰も寄り付かねぇよ」

宣教師「こうして普通にお話してくださるのもジョーさんだけです」

ジョー「なんだよ。人のこと散々疑っといて?」

宣教師「すみません」シュン

ジョー「いや、別に怒ってないって」

宣教師「……」

ジョー「ま、無視されるのも今のうちだけさ。んな気ぃ落とすなよ?」

宣教師「はい…」

ジョー「俺でよけりゃいつでも話し相手になってやるから。な?」

宣教師「ありがとうございます…」グスンッ

ジョー「…あんた意外とおセンチなんだな」
757: 名無しさん@読者の声:2013/7/21(日) 17:39:16 ID:onMP.eW80k
やった更新待ってた!
758: ◆WEmWDvOgzo:2013/7/21(日) 17:59:00 ID:i6iF4FIEZA
宣教師「このスープ、牢でも頂きましたね」ズズ

ジョー「言ったろ?司祭様のお情けでまともな飯を出してたんだよ」

宣教師「なるほど…」

「おい」

宣教師「?」クルッ

神父「こんなとこにおったのか」

ジョー「お!神父さんじゃねぇか。どうしたんだ?」

神父「見張りの分際でその口の聞き方はなんだ!」

ジョー「いいじゃねぇか。たいして変わんねぇよ。
あんたも俺も上に手綱引かれて畦道を走らされる馬車馬だ」

神父「なんだと!?」

ジョー「お互い貰えるニンジンは小さなもんだろ?」ニヤニヤ

神父「貴様と一緒にするな!!」

宣教師「どうなされたのですか?」

神父「司祭様に貴様を世話するように言われてな。これから私の下で働いてもらう事になった」

宣教師「神父様の下で…ですか?」

神父「まぁいわゆる教育係だな。邪教に通じていた小娘を面倒見る気にはなれんが、こうなったからにはコキ使わせてもらうぞ」

宣教師「」ムッ

ジョー「神父さんの下でか…。あんたも苦労が絶えねぇな」

神父「それはどういう意味だ!?」
759: ◆WEmWDvOgzo:2013/7/21(日) 18:04:04 ID:i6iF4FIEZA
宣教師「分かりました」スクッ

ジョー「おいおい、いいのか?まだ食い終わってないだろ?」

宣教師「えぇ、コキ使ってくださるようですので、存分に使われてきます」

神父「いい心がけだ。だがまだ食べていていいぞ。
手伝ってもらう前に渡したいものがあるのでな」

宣教師「?」

神父「」カサッ

宣教師「紙…?」

ジョー「まさか恋文でも書いてきたんじゃないだろうな?」ニヤニヤ

宣教師「えっ」

神父「そんな物を仕事前に渡すバカがいるか!?」

宣教師「」カァァ

神父「貴様も本気にするなっ!!」

ジョー「まぁこんなおっさんに恋文渡されてもな」

宣教師「お気持ちは嬉しいのですが…」

神父「貴様らいい加減にせんと本気で怒るぞ…!」ワナワナ
760: ◆WEmWDvOgzo:2013/7/21(日) 18:07:56 ID:rrB8Fet0jk
神父「ほれ、さっさと受けとれ!」つ【絵】

宣教師「これは…絵ですか?」

ジョー「どれどれ?」ヒョイッ

宣教師「あ、ちょっとジョーさん!」バッ

ジョー「へー!よく描けてるな!神父さんが描いたのか?」

神父「いや、これはホビットが描いたものだ」

ジョー「……は?」

宣教師「いいから返してください!」パシッ

ジョー「おっと」

神父「貴様に渡してほしいと頼まれたんでな」

宣教師「……」

ジョー「あのボウズは応接間の奥に閉じ込めてあるんだろ?
なんであんたに頼み事ができるんだ?」

神父「そんな事はどうでもよかろうが!」

ジョー「いや、どうでもよくないだろ」

神父「…どうでもいいと言ったらどうでもいいのだ!」

宣教師「(…これは私やルーボイ君、パッチ君を描いたもの…)」

ジョー「……」チラッ

宣教師「…カロ…ルくん」ギュッ

ジョー「はっ!やっぱりまだ吹っ切れてねぇんじゃねーか?」

宣教師「そ、そんな事はありません!」アセアセ
761: ◆WEmWDvOgzo:2013/7/21(日) 18:12:53 ID:rrB8Fet0jk
神父「なにぃ?貴様、また邪教に手を染めようとしているのか?」

宣教師「い、いえ…!」

ジョー「おいおい、そんな言い方はないんじゃないか?あんたもホビットの頼みを聞いちまったんだ」

神父「何が言いたい!?」

ジョー「ホビットに関わるのが邪教に通じるっていうなら、あんたも立派な邪教徒じゃねぇのか?」

神父「ば、バカを言うな!私はだな…!」

ジョー「あんたはどうなんだ?」

宣教師「え…」

ジョー「本当にいいのか?」

宣教師「…ジョーさんはホビットを憎んでいたのではないのですか?」

ジョー「…経験は人を変えるんだよ」

宣教師「……」

ジョー「もう一度聞くぜ。あんたはどうしたいんだ?」

宣教師「私は、もう彼らの事など…」

神父「わ、私も奴らを庇おうなどと思っとらんぞ!」

ジョー「あんだけ頑なだったのにどうしちまったんだ?」

宣教師「それは…」

神父「こいつは奴に騙されていたのだ!」

ジョー「?」

神父「奴らは癒しの力など存在しないと言っていた。しかし小僧は実際に我々の目の前で使ってみせたのだ!」

ジョー「…そういえば左目の布が取れてるな?」

神父「その通り!この傷は奴の力で塞がったものであり、癒しの力の存在を証明する確固たる印だ!」

ジョー「まさしく目印ってわけだ?」ニヤリ

神父「……!」カァァ

神父「そ、そういうつもりで言ったのではない!」

宣教師「……」
762: ◆WEmWDvOgzo:2013/7/21(日) 18:20:54 ID:i6iF4FIEZA
ジョー「それなんだけどな。裏があるかもしれないぞ?」

神父「はぁ?」

宣教師「どういう…ことですか?」

ジョー「あんまり大きな声じゃ言えないが昨日の夜に司祭様がアリアス様と話してたのを聞いたんだ」

神父「な、何を聞いたと言うのだ?」

ジョー「…癒しの力を持ってるのは、あんたが可愛がってたボウズだけだ」

宣教師「……?」

ジョー「うまく言えないが、そもそも癒しの力を持つホビットなんていなかったらしい」

神父「バカを言え!現にあの小僧は癒しの力を使ったぞ!」

ジョー「だから言ってるだろ?あいつ以外のホビットは使えないって」

宣教師「では…カロルくん達は嘘をついていたのではなくて…気付いていなかっただけ、ということですか?」

ジョー「ん?そうなのか?」

神父「なぜそうなる?」

宣教師「気付いていなかったのであれば、今までの発言も全て辻褄が合います」

宣教師「彼のお母様が『ホビットに癒しの力なんてない』とおっしゃられたことも、彼が直前まで力の存在を否定していたことも…」

神父「な、なるほどな!」

ジョー「ほんとに分かってんのか?」ジロジロ

神父「と、とと当然だ!!」シドロモドロ
763: ◆WEmWDvOgzo:2013/7/21(日) 18:26:50 ID:rrB8Fet0jk
ジョー「…そうすると気になるのは、なんで司祭様がボウズに癒しの力があると踏んだのか、だな」

神父「それは簡単だ。私が報告したのだ」

ジョー「えぇっ!?」

宣教師「彼が力を使うところを見たのですか!?」

神父「直接確認した訳ではないが二回ほど、それらしき場面があったんでな」

宣教師「そのような曖昧な報告で司祭様が確信なされたのですか…?」

神父「間違いなく使ったかと確認されたので、つい…間違いないと」

宣教師「あなたという人は……」

神父「だ、だがそうとしか思えん出来事があったのだ!」

ワイワイガヤガヤ

宣教師「神父様、声を抑えてください…」

神父「うっ」

ジョー「ここじゃ出入りが激しすぎるな。人目に付くし、聞かれてたって不思議じゃない」

宣教師「そうですね。一度場所を……」

シスター「神父様!」

3人「」ビクッ

シスター「礼拝堂で子供達が教えを待ちわびてますよっ!」ピシャリッ

神父「す、すまん。今行く…!」ガタッ

シスター「もうっ!早く準備してくださいね!」プンスカ

神父「分かっとる!貴様も来い!」

宣教師「わかりました」スクッ

ジョー「俺も持ち場に戻るとするか」スッ

シスター「先に行ってますからね!」スタスタ

宣教師「続きはまた後で」

ジョー「地下にいるよ。お務めに励んでな」

宣教師「はい」ニコリ
764: ◆WEmWDvOgzo:2013/7/21(日) 18:45:24 ID:i6iF4FIEZA
>>757
ありがとうございます!
そう言っていただけると、とても励みになります。
現状、あまり頻繁に更新出来そうにないのですが出来る限りお待たせしないように努力致しますので暖かい目で見守っていただけたら幸いですm(__)m
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