前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
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―――あらすじ―――
人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。
母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。
しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。
幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。
928: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/29(金) 19:51:17 ID:vWnFtiNco.
宣教師「それで?十年前に見つけた癒しの力はどうしたんです?」
アントリア「君は淡々と聞くのだね!?」
宣教師「聞いてほしいのでしょう?」
アントリア「はぁ…!?」
宣教師「築き上げた物が崩落してしまった、そんなあなたが縋ろうとしているのはなけなしの自尊心。
かつての栄光と多大なる人々に影響を与えた自分の存在を『僕って凄いだろ?』と語りたいのですよね?」
アントリア「な、なんだとぉ!?僕がそんなちっぽけな人間に……」
宣教師「見えますよ。少なくとも今は?」
アントリア「…ぼ、僕は……」ガチガチ
アントリア「わぁぁ…ああああ!!?」ガクガク
宣教師「大丈夫ですか?ほら、どうぞ勝ち誇ってきた頃を思い出して語ってください?
その安い自尊心まで砕けてしまったら…とても自我を保てないでしょう?」
アントリア「ひげぇぇきのぉぉまちぃぃい……!」
カロル「ちょ、ちょっと様子が……癒してあげた方がいいかな?」
宣教師「必要ありません。この方にはもったいないですから」
アントリア「悲劇の町だ!そこで癒しの力が存在すると分かった!!」
宣教師「!?」ピクッ
アントリア「よぉく知っているだろう!?なんせあの町は……君の生まれ故郷なのだからなぁ!?」
カロル「せ、宣教師さまの…!?」
信者's「え…あの娘が悲劇の町の…少女?」ザワッ
アントリア「君たち二人はいつ出会った…?」
宣教師「はい?それはまぁ…3ヶ月程前に布教していた村で…ですよね?」
カロル「う、うん…」
アントリア「それが間違いなんだ!出会ってるんだよ…!10年前からすでに!?」
宣教師「え?わ、私とカロルくんが!?」
カロル「そ、そうだっけ?その頃はボク…まだお母さまとおじいさまと三人で旅してたけど…」
929: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/29(金) 19:54:47 ID:nDd6VU8Z3.
アントリア「あれは10年前、耄碌した老人が戦争の話を町人に語った事から始まった悲劇……それがコトの真相だぁ!?」
宣教師「…カロルくん、小さい頃に人間の町に入ったことはありますか?」
カロル「う、うん。一回だけ…おじいさまには内緒で」
宣教師「た、たとえばそこで…誰かとお話とか…しましたか?」
カロル「……」
宣教師「そ、そうですよね?会ってないですよね?」
カロル「ビスケット…」
宣教師「」ピクッ
カロル「…お母さんが焼いてくれたビスケット、おいしいよって…分けてくれた」
宣教師「(あ、あ……なにか…頭痛が…!)」ズキッ
『サクッ…わぁ!おいしいね。これ、なんていうの?』
宣教師「(あ、あれ…?あれ!?)」ズキズキ
アントリア「お花を摘みに行ってる間に町が消えてた!?ではなぜ花を摘む為だけにわざわざ町を出た!?」
『町の外にね、お花があるんだ?黄色と白のかわいいお花!』
宣教師「(あ…あ…お、朧気に…思い出せそうな……)」
930: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/29(金) 19:56:19 ID:vWnFtiNco.
『一緒に摘みに行かない?』
『ボクとお母さまは明日、また旅しなきゃいけないから……会えなくなるんだ』
宣教師「(そ、そうだ…!たしかこの後……)」
『おい、なにやってんだ!そいつホビットだろ!』
宣教師「(お兄ちゃんが…来て……)」
『なんかこそこそしてておかしいと思ったんだ?』
『兵士さん、こいつが妹にちょっかい出してるんです!』
『見たとこ野良のホビットか。法律で野良ホビットは極力、教団に引き渡すようになってる。嬢ちゃん、そいつから離れなさい』
宣教師「(税の徴収に来た王国兵を呼んで…あの子を連れていこうとした…)」
『離してよ!ボクらはともだちだよ!』
『抵抗するな!』
ガッ ドカッ
『うくっ…ぐすっ……うえええん!』
『はっは!泣いても誰も同情せんよ!』
『ん?なんだ、嬢ちゃん?』
『なに?かわいそうだと?』
『はっは!かわいそうってのは……』
バキッ ガッ ドカッ
『こういうことか?はっは!』
宣教師「(結局、彼はそのまま連れていかれた……)」
『あんな奴、忘れろ。いなくていいんだ、最初から』
宣教師「(…前に見た夢はこの時の記憶?お兄ちゃんが同じように言ってた……)」
宣教師「(あの時の少年が……カロルくん?)」
931: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/29(金) 20:01:15 ID:vWnFtiNco.
宣教師「そうだ…私は彼を忘れられなくて…次の日、もしかしたらと町の外に出た……」
アントリア「思い出したか!?」
カロル「…あんまり覚えてないけど、宣教師さま…だったの?」
宣教師「き、君は町で兵士に乱暴されませんでしたか?」
カロル「え…どうだったかな。そういうこと、よくあったから…」ウーン
宣教師「私の記憶では…あの子は兵士に連れていかれて……それっきり」
アントリア「…実際は連れていかれてない」
宣教師「……」
アントリア「傷を負った子供だ。動けまいと判断し、目を離していたらあっさり逃げられたそうだ」
カロル「あ!そうだ!町を出る時、お母さまと待ち合わせしてたから、走って逃げたよ?」ピカーン
宣教師「や、やはり…君が…」
アントリア「それを聞いて癒しの力の存在を確信したノワールは自ら悲劇の町へ赴いてみたが…すでに町には君しかいなかった」
宣教師「……!」
カロル「ボクと宣教師さまってずーっと前に会ってたんだ…!嬉しい!」パァァ
アントリア「喜んでいていいのか!?」
カロル「へ?」
アントリア「彼女が君と関わったばかりに…癒しの力があると分かってしまった!
つまりだ!この女が君と関わらなければ僕もノワールも諦めていたかもしれない!?」
アントリア「なぁ、そうだろう!?こいつのせいで癒しの力が狙われ続けるんだ!こいつが君の運命を狂わせたのだよ!?」
宣教師「……」シュン
カロル「アントリアさん」
アントリア「ふっふっハハハハハハ!なんだね!?」
カロル「人のせいにしちゃダメだよ!宣教師さまは関係ないじゃない!」
アントリア「はぁ!?だ、だがね!?この女が……」
カロル「ボクは宣教師さまと出会えて幸せだもの。
癒しの力を狙われてひどい目に遭っても…宣教師さまにもらった幸せの方が大きいよ!」
宣教師「……!」ジーン
932: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/29(金) 20:07:28 ID:nDd6VU8Z3.
アントリア「ぬっ…あああ!!黙っれ!!」
カロル「……」
アントリア「はぁ…はぁ…お前らのようなお人好しに負けたのかと思うと…震えが止まらんよ!」ワナワナ
アントリア「なぜだ!なぜ僕じゃない!完璧だったじゃないか!何もかもが!?」
アントリア「計画も完璧!君らを確実に追い詰めた筈だ!?」
宣教師「…今の彼の言葉を聞けば敗因は明白ですよ」
アントリア「なにぃ!?」
宣教師「絆を大切にするか、しないかの差です」
アントリア「絆ぁ!?」
宣教師「平気で人を騙し、平気で人を裏切るあなたと…純粋に人を信じ、裏切られても絆を捨てなかったカロルくんでは大きな差があります……」
アントリア「若輩者が偉そうに…!」ギリッ
宣教師「いざとなって利害を伴わず助けてくれる仲間があなたにはいますか?」
アントリア「く…く…!?」
宣教師「あなたは長年の友人だった司祭様にすら黙って…影で悪事を働いていた」
アントリア「ノワールは!正直過ぎた!奴も所詮は愚かな戦争孤児だ!
本気で夢を叶えたいと望むなら!進んで手を汚して当然なんだよ!」
宣教師「…あの方も私に言わせれば十分、悪人でしたよ。
しかしあなたのように誰も信じず、人を手駒としか見れない程、腐ってはいませんでしたが」
アントリア「なにが悪い!?最終的には皆、幸せにしてやるつもりだった!その為に動かしてやったんだ!」
アントリア「頭の悪い正直者は誰かに使われない限り、無駄に人生を使いきるだけじゃないか!
僕はそんな愚図共を有効利用してやったまでだ!」
宣教師「結果としてこうなってしまいましたけどね?」
アントリア「……!?」
933: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/29(金) 20:09:49 ID:nDd6VU8Z3.
宣教師「彼が深めた多くの絆は今、確かな力となってあなたの前に立ちはだかっています。
この強力な絆に抗う術が今のあなたにありますか?」
アントリア「……」ガクガク
団長「……」
ミシング「あははっ!イイこと言う〜?」
信者's「」ジロジロ
教徒's「」ヒソヒソ
宣教師「私を含め、ここにいる皆があなたに踊らされてホビットを差別してきました…」
宣教師「ですが、そのホビットによって私達は目を覚まし…今こうしてあなたを追い詰めている」
宣教師「…絆なくして人は人を愛せない。絆を踏みにじってきたあなたを救おうとする人間は…ここには一人としていませんよ」
宣教師「罪を受け入れ、償いなさい!それがあなたに課せられた唯一の使命です!!」
アントリア「……し、し、し…うわあああああ!!!」ガクッ
カロル「……」
アントリア「お前なんかに…!僕の…40年を費やした計画がぁ……クソォォォォォ!!!?」ダンッ
団長「うむ!これで分かったな?ワシらはこれまで操られるがまま、憎しみに支配されてきた!
だがそれは作為的なものであってワシらの意思ではない!」
団長「これからやり直そうじゃないか!ホビットにぶつけてきた憎しみを捨て……共に歩める道を築こう!」
ミシング「はいはーい!あたしもおじさまに大さんせー!!」
オォォォォォォ!!!!
団長「…貴様だけは許さん?覚悟しておくんだな?」ガシッ
アントリア「くそっ…ぅあああああ!!!」
カロル「…宣教師さま」
宣教師「分かってますよ。まだ終わりではありません」
カロル「うん!ラムくんの憎しみもなくさなきゃ!」
934: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/29(金) 20:13:51 ID:vWnFtiNco.
ミシング「だーれだ?」ピトッ
宣教師「うわっ!え?え?」アワアワ
ミシング「惜しいっ!正解は大親友のミシングちゃんでしたー!」パッ
宣教師「ミシング!?あなたも来てたんですか!?」
ミシング「あれ?ルーボイくん達から聞かなかった?」
宣教師「あ…確かシスターのお姉さんも協力してくれてると?」
ミシング「あはは!お姉さんなんて照れるなー!ま、そゆこと!あなたが危ないって言うから心配してたんだよー?」
カロル「……」
ミシング「あ、君、君!お名前は?」
カロル「カロルって言います!はじめまして…えっと」ペコリ
ミシング「ふっふーん!美人シスターのミシングお姉さんだよん?
カロルくん、宣教師と仲良しなんだってー?」
カロル「うん!はじめてのともだちなの!」
ミシング「そっか、そっかー?お姉さん、妬けちゃうなー?」
宣教師「あのー…ミシング?積もる話もあるでしょうが……」
ミシング「っていうか、かわいい!頬っぺたツンツンしちゃお?」ツンツン
カロル「やっ!ちょっ!やめて!」プニプニ
ミシング「きゃー!嫌がり方に母性くすぐられちゃう!」ツンツンツンツン
宣教師「……!」イライラ
935: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/29(金) 20:15:45 ID:vWnFtiNco.
宣教師「……ミシング!!」ガァーッ
ミシング「あひょっ!?」ビクッ
宣教師「まったく!カロルくん、こんな痴女はほっといて行きましょう!」スタスタ
カロル「う、うん。ミシングさん、またね?」フリフリ
ミシング「あれれ?どこいくの?」
カロル「うん。ちょっとね」
団長「おい、君たち!」
宣教師「あ、団長さん。指定した通りに皆を集めてくださってありがとうございました。おかげさまでアントリア神官の悪事を暴けました」
団長「苦労したがな…。それより王子は?」
宣教師「後から来ますよ。団長さん達は神官の拘束と残りの兵の阻止に励むようにとの事でした」
団長「そうか。では王子の事は頼んだぞ!」
ミシング「おじさま!」ヒョコッ
団長「」ビクッ
ミシング「あたしもお手伝いしまーす!」
団長「あ、あぁ…よろしく頼む」
カロル「宣教師さま!」
宣教師「えぇ!」
タタタッ……
ミシング「…あの子、明るくなったなぁ」
団長「……?」
ミシング「ふふ。なんでもないです」
団長「実はな。王子もそうだった」
ミシング「王子様が?」
団長「あぁ、あの方も…よい出会いに恵まれた」
ミシング「絆…ですかね?」ニコッ
団長「うむ。かけがえのない絆だ…」ニコッ
936: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/30(土) 21:46:08 ID:50l4o5eNes
――――――
ラム「しつこいなぁ…。なんでそんなにがんばるワケ?」
ヒメ「お前を助けてやる為さ!」
ラム「…はぁ?」
ルーボイ「…あいつらが助ける助けるって聞かねぇんだよ!だからアントリアを先にしたんだ!」
ラム「助けるって…邪魔しないでくれた方が助かるんだけど?」
ナラ「しんかん…とめたら、さべつ…ほんとに、なくなる!」
ラム「あぁ、そう…」シラー
マルク「わんっ!わうん!」
ラム「ごめん、全然分かんない」
マルク「あうん」ガーン
ヒメ「おい!おまえらは下がってろ!ケガしてるだろ?」ザッ
ルーボイ「へへっ!お前だって腕、血ぃ出てんじゃねーか!」
ナラ「やくそくしたんだもん…。さんにんで、ひきとめるの!」
マルク「はうっ!?」ガガーン
ラム「もうどうでもいいんだけどなぁ…。差別とか」ボソッ
ラム「(あれ?そういえば…なんの為に…こんなこと……)」
ラム「うーん…どうでもいいや」ボーッ
937: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/30(土) 21:48:39 ID:50l4o5eNes
ラム「剣、抜かないの?」ブラブラ
ヒメ「…オレたちの役目は時間稼ぎだ。攻撃はしない!」
ラム「ふーん…」シュッ
ヒメ「おっと」サッ
ラム「……うまく避けるね?なんかやってんの?」
ヒメ「簡単な護身術さ。おまえにも今度、教えてやろうか?」
ラム「…馴れ馴れしいなぁ」スッ
ラム「(んー…いつもだったら…イラつくんだけどなぁ)」ボーッ
ヒメ「おい、下がったぞ?」
ルーボイ「逃がさねぇかんな!」バッ
ナラ「うしろは…まかせて?」バッ
マルク「くぅーん」イジイジ
ラム「(いい子ぶってる奴らが変にヤル気出して邪魔する…。こういうの…イラつくのになぁ)」ダッ
ナラ「」ビクッ
ルーボイ「ナラ!」ダッ
バッ ガシッ
938: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/30(土) 21:49:36 ID:zCiLP5rgZc
ナラ「…なに!するの!」ジタバタ
ラム「時間稼ぎでも構わないよ。僕には時間があるんだから」グイッ
ルーボイ「ナラの髪引っ張んな!」ガシッ
ラム「邪魔」ビュバッ
ルーボイ「うあっ!」ザシュッ
ラム「髪の毛、切られたら悲しい?女の子だもんね?」ガシッ グイッ
ナラ「あぃぃ…ったい!」ブチブチ
ヒメ「この…!」ダッ
マルク「わんっ!」バッ
ラム「邪魔だってば」ヒュッ シャッ
ザシュッ スパッ
ヒメ「いっ!」ピシュッ
マルク「キャンッ!」ブシュッ
ラム「…攻撃してみる?」グイッ
ヒメ「…しない!手を離せ!」キッ
ラム「あっそ」バッ ズバッ
バサッ バサバサ
ナラ「……!」ハラリ
ルーボイ「あぁー!?」
ヒメ「お、おまえ…!最低だぞ!?」
939: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/30(土) 21:51:51 ID:zCiLP5rgZc
ラム「前髪パッツンパッツンになっちゃったね。悲しい?」
ナラ「……!か、かなしくない!」キッ
ラム「うーん」ズシッ
クシャッ クシャクシャ
ナラ「」ズキッ
ラム「どう?悲しい?」ジッ
ナラ「かなじく…ない」ウルウル
ヒメ「女の子の毛を刈って踏みにじるなんて…おまえ最低だ!」カッ
ルーボイ「くっそー!やっぱりぶん殴ってやる!」
ナラ「まって!」
ルーボイ「ナラ…?」
ナラ「いいよ。わたしのかみ…じかんかせぎになってるから、いい」
ヒメ「じ、時間稼ぎって……」
ナラ「わたしがかみをのばしても、よろこんでくれる、おとこのこ…いないもん。だから、いいよ?」ニコッ
ヒメ「…な、ナラ」
ラム「へぇ…悲しくないんだ。君も…」ピタッ
ナラ「……?」
ルーボイ「そんなことねぇよ!お前が女の子らしくした方が喜ぶ男だっているんだぞ!」
ナラ「え…?」ドキンッ
ヒメ「な、なんだよ?急に愛の告白するのか?」アセアセ
ルーボイ「は、はぁ!?ちげーよ!そういうんじゃねーし!?」アタフタ
ラム「?」チラッ
ルーボイ「いや、ちげーから!ぜんぜん好きとかねーから!」アタフタ
ラム「この子がいなくなったら悲しい?」ギランッ
ナラ「」ビクッ
ルーボイ「!?」ビクッ
940: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/30(土) 21:54:11 ID:50l4o5eNes
ルーボイ「うおおお!」ガバッ
ナラ「きゃっ!」ドサッ
ヒメ「て、手も繋がない内から押し倒すなんてはしたない!み、淫らだ!爛れた関係だ!」カァァ
ルーボイ「うるせぇ!見てわかんねーのかよ!ナラが攻撃されないようにしてんだよ!」ギュッ
ナラ「る、ルーボイ…おもい…よ?」ドキドキ
ヒメ「だ、だからって…そういうのはちゃんと順序を守って…こ、告白…して…その…。
徐々に手を繋いだり、広場で一緒にイチゴのアイスキャンディー食べたり…お、お揃いの飾り物を贈ったり…うわあ!なに言ってるんだ、オレ……」モジモジ
ルーボイ「ウブかよ……」シラー
ナラ「」ドキドキ
ラム「…君らって感情が豊富だね?なんだか……見ていてふしぎだよ」
ルーボイ「はぁ!?お前だっていきなりキレたりすんじゃねーか!?」
ラム「うーん…それがさ。ないんだ、今のところ」
ルーボイ「ないって…?」
ラム「つまんないって言うのかな。さっきバラバラにされて再生した時なんかは…すごく苦しくて…たくさんの感情が沸いて…」
ルーボイ「バラバラ?」
ラム「なんだろ。どうでもよくなってきた…」ボーッ
ルーボイ「じゃ、じゃあ!」パッ
ナラ「やっと…どいて、くれた」ポッ
ラム「」シュッ スパッ
ルーボイ「ぎゃ!な、なに…すんだよ?」プシュッ
ラム「復讐はやめないよ。やることはやっておきたいから」ペロッ
ルーボイ「いっ…てぇな〜!どうでもいいんならいいじゃんか?」タラァー
ラム「うえ〜…まっず」ペッペッ
ルーボイ「じゃあ血なんか舐めるなよ!?」ズキズキ
ラム「味は感じる…。でもイヤじゃない。まずいんだけどなぁ」
ルーボイ「(なんだ、こいつ)」
941: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/30(土) 21:56:10 ID:50l4o5eNes
ナラ「…ルーボイ、へいき?」オロオロ
ルーボイ「ぜんぜん平気だし!
変態のおっさんに殴られたり大火傷したりして何度も死にかけてっから、こんぐらいへっちゃらだよ!」エッヘン
ラム「…感情なんてなくても目的があれば生きていける。時間は永遠で達成できるまでの道のりは膨大だ」ブツブツ
ラム「仲間なんていない。誰の為でもないけど、これを続けないと…目的がないと…」ブツブツ
ナラ「…ねぇ、ラムくん、へん…」
ルーボイ「…どうしたんだろうな」
ヒメ「や、やっぱりお付き合いするからにはお互いを大事にしないといけないし!
なんかこう…簡単に触れ合うのはふしだらだ…。まずは文通から始めるのが……」ブツブツ
ルーボイ「まだ言ってるのかよ!?目ぇ覚ませ!バカ王子!」
ヒメ「えあっ!?」ビクッ
942: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/30(土) 21:57:35 ID:zCiLP5rgZc
宣教師「」タタタッ
カロル「」タタタッ
マルク「…わんっ!」
カロル「マルク!平気だった?ケガしてない?」ダキッ
マルク「クゥン!」スリスリ
宣教師「ま、間に合いましたね!」
ルーボイ「宣教師様!」パァァ
ナラ「よかった…!」
ヒメ「遅かったな!そっちはうまくいったのか?」
宣教師「えぇ!皆さん、目を覚ましてくれました!」
カロル「みんなの傷も癒してあげるね?」スッ
フワッ フワッ フワッ
ラム「あ〜あ…また弱らせなきゃ」ボーッ
カロル「ラムくん!もう大丈夫だよ!みんなで帰ろう?」ニコッ
ラム「……」ボーッ
宣教師「様子がおかしいですね…」
ルーボイ「なんか途中からおかしいんだよ?」
ナラ「かんじょうが…ないって」
宣教師「感情が?」
ラム「」シュッ
ズンッ
カロル「っ…!」ブシュッ
943: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/30(土) 22:02:44 ID:zCiLP5rgZc
ルーボイ「あぁ!?なにしてんだよ、お前!?」ダッ
カロル「みんなは先に戻ってて!!」
ナラ「か、カロル…」
宣教師「そうですね…。これはホビットの二人の問題です」
ルーボイ「…こいつらの?」
ナラ「…わたしたち、なんにもできないの?」
宣教師「…立ち入ってはならない領域という物もあるのです。私達は先に戻りましょう」
ルーボイ「どうすんだよ!カロルが殺されたらどうすんだよ!?」ガシッ
宣教師「…大丈夫。彼は友達を残して死んだりしません」
ナラ「……ルーボイ、もどろ?」
ルーボイ「ナラまで何言ってんだよ!」
ナラ「ラムくん…わたしにかなしい?ってきいた」
宣教師「そ、その髪はどうしたんですか…!」ハッ
ヒメ「ラムがやったんだよ。しかも落ちた髪を踏みつけた。最低な奴だ」
ナラ「ちが…うよ。さいていじゃないの…。ラムくんはきっと…わからなくなってるだけ」
ヒメ「……?」
ナラ「かんじょうがうすくなって…きもちをおもいだせないんだよ」
宣教師「だからキミを悲しませて…感情を確かめようとした、と?」
ナラ「わかんない…。でも…このままだと、おもいだせなくなるのかも」
宣教師「(先ほどの腕や足の残骸を見る限り…力を使いすぎた為に無気力になっているのかもしれませんね)」
ヒメ「だが現に刺されてるんだ。あのまま二人きりにしておくと……」
宣教師「いざとなれば彼は傷を癒せます。むしろ私達がいて刺激してしまう方が悪影響かもしれません」
ルーボイ「…ちぇっ!俺たち、なんにもしてねーじゃん」
宣教師「そんなことはありません。キミたちが時間を作ってくれたからこそ、二人で話し合う時間が出来たのですから」
マルク「クゥン…」タッタッ
宣教師「さ、行きましょう。団長さん達のお手伝いもしなくてはいけませんから」スタスタ
944: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/30(土) 22:04:45 ID:zCiLP5rgZc
カロル「あ、はは……い、痛いよ、ラムくん?」ダラァー
ラム「そう…」ボーッ
カロル「どうし…ちゃったの?元気…ないよ?」プルプル
ラム「疲れないんだ。走っても動いても」グリィッ
カロル「そう…なのっ…?うっ…!」グチュッ
ラム「……」グリグリ
カロル「あぐっ…つあっ!い、いた…!ちょ、ちょっとだけ…抜いてくれない?」
ラム「やだ。治すから」グリグリ
カロル「あうっ!じゃ、じゃあグリグリだけ!おねがい!グリグリだけやめて!?」グチュッグチュッ
ラム「やめないよ」グリグリ
カロル「い、いったいよぉ〜!おねがい!」グチュッ
ラム「…イヤなら怒れば?」ピタッ
カロル「はぁぁ…痛いや…。でもちょっぴり楽になったよ…?えへへ?」ニコッ
ラム「……」グリィッ
カロル「いあっ!いたぁ!?」ビクンッ
ラム「…君も感情がないのかい?」ピタッ
カロル「か、感情…?」ヒクヒク
ラム「……」
カロル「感情はあるよ?笑ったり泣いたり、怒ったり悲しんだりするよ?」ニコニコ
ラム「お腹刺されても怒らない」ズボッ
カロル「うっ…うあ!や、やっと…抜いてくれた?」ブシュッ
945: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/30(土) 22:06:13 ID:50l4o5eNes
ラム「僕は君の顔を見るだけでイラつく…んだけどなぁ?なんでかなぁ?」ウーン
カロル「ふふ…なんでだろうね?」フワッ
ラム「あ、治した」
カロル「うん、治したよ。痛いもの?」ニコニコ
ラム「刺さないと」グッ
カロル「刺さなくていいよ!?」アタフタ
ラム「ダメだよ。君にも復讐するんだから」ジッ
カロル「ふ、復讐?」
ラム「だって君は僕から仲間を奪ったじゃないか」
カロル「う、奪ったんじゃなくて…みんなで仲直りしようって言ったんだよ?」
ラム「そうだったっけ。どうでもいいや」シュッ
カロル「あぐぅ!ま、また…!?」ズンッ
ラム「死ねばいいよ。君が死んでくれたら、一つ復讐が終わるから」
カロル「ら、ラムくんが…落ち着くなら、それでも…いいよ?このまま…話そう?」ニコッ
ラム「…話す必要ある?喋ってるだけだよ?」
カロル「え…?そう…なの?」ズキズキ
ラム「ただなんとなく喋ってる。なんにも思ってない。君が死んでも…たぶん、なんにも感じない」グリィッ
カロル「いっ…た…!」ビクンッ
946: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/30(土) 22:07:44 ID:50l4o5eNes
ラム「…君は感じる?」ジーッ
カロル「うっく…か、感じるよ?」ダラァ
ラム「……」
カロル「ラムくんが笑ってくれたら嬉しい。怒ってたら怖い…。
悲しんでたらツラいし、悩んでたらボクも一緒に悩みたい?」
ラム「……」
カロル「キミは大切なともだちだから…ボクはキミを大切にしたいんだ?」
ラム「イラつかないなぁ…。おかしいなぁ…」
カロル「ラムくんは感情を無くしたりしてないよ?」
ラム「?」
カロル「たくさん動いたから疲れてるんだよ?ゆっくり休んで疲れを取ろう?」
ラム「…疲れてない。疲れない。生きてる心地がしない」
カロル「……」
ラム「体が疲れないのは便利だよ。でも違和感だらけなんだ。なにも思わないのに…何かがムズムズするんだ」
カロル「それはラムくんが感じてる不安じゃないかな?
なんで?なんで?って思うのも…感情が動いてるからでしょ?」
ラム「……」
カロル「体の傷を治しても…心が弱っていくんだよ。キミの心は不安でたまらないはずだよ?」
ラム「」グリィッ
カロル「んきゃっ!?い、いたいってば!?」ガクッ
ラム「あ、今イラッときた」ハッ
カロル「よ、よかったね…?」ヒクヒク
947: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/30(土) 22:09:52 ID:50l4o5eNes
ラム「君にはどうしたって伝わらないさ。僕は苦しかったんだ」
カロル「うん…。分かるよ?苦しかったよね?」
ラム「裏切られたら、お腹がキュッてして…息苦しいくらい胸が締め付けられる」
カロル「そうだね…」
ラム「君が誰よりも僕に近い筈なのに…君が誰よりも僕の邪魔をする」
カロル「うん。ごめんなさい」
ラム「でもいいんだ。なんにもいらない。なんにもない僕には裏切られる相手もいない」
カロル「…シープくんもバンパさんもキミを裏切ったりしないよ?」
ラム「あの二人は死んだ」
カロル「……」
ラム「バンパが切られたってシープが言ってた」
カロル「会ったの…?」
ラム「会ったよ。シープは…僕が殺したから」
カロル「……!」
ラム「裏切ったクセに助けてとか都合よく言うから…イライラしたんだ」
カロル「シープくんもバンパさんも…ずっとラムくんを心配してたよ?
話し合いが終わったら、みんなで探しに行こうって言ってたんだよ?」
ラム「そう。どうでもいいや」
カロル「ラムくん…!」ガシッ
ラム「…なんにも思わない。やっぱり僕は……」
カロル「あるよ!感情ある!ラムくんは感情が無くなったって思い込んで逃げてるだけだよ!」ユサユサ
948: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/30(土) 22:22:52 ID:zCiLP5rgZc
ラム「…そんなに動いて痛くないの?」グラグラ
カロル「傷口が開いて痛いよ!痛くても…キミを助けたい!」ユサユサ
ラム「助ける?どうして?僕は助かってるよ?」グラグラ
カロル「ウソだよ!逃げちゃダメ!」ユサユサ
ラム「なんにも思わないし、なんにも感じない。疲れないし、元気にもならない」ブラブラ
カロル「そんなことない!勘違いだよ!」ユサユサ
ラム「復讐する理由もわからない。復讐したかった気がする。
それが生きる目的で…感情があったら僕は君を殺してる」グラグラ
カロル「うっ…!い、いたぁ…」ズキッ
ラム「だから言ったのに」ボーッ
カロル「気にしないで…!キミの話、全部聞くよ…?」タラァ
ラム「生きる目的もわからなくなった。あの感情が思い出せないんだ」
カロル「思い出せないんじゃない!思い出したくないんだ!だから…だから…」
ラム「ねぇ、カロルくん…僕は生きてるのかな?」
カロル「生きてるよ!だから…これからも生きていかなきゃ!」
ラム「…永遠の命をもらったのに…生きてる気がしないよ」ボーッ
カロル「ちゃんと生きてるよ!」
ラム「君を殺したら…殺したかった気持ち、思い出せるかな…」
カロル「ボクを殺したいなら殺してもいいよ!キミの生きる理由になるんなら、ボクを殺す為に生きればいいじゃない!」
ラム「…」チャキッ
カロル「い、い…いいよ!もう力は使わない!ボクを殺してよ!」
ラム「」ヒュッ
ドスッ
949: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/30(土) 22:25:02 ID:zCiLP5rgZc
カロル「……!」
ラム「いっ…たぁ…」グチュッ
カロル「な、なん…で!ボクは…うっ…ここにいるでしょ?」ゴフッ
ラム「……」ズボッ
ラム「」シュウウウウウ
ラム「ふぅ…」
カロル「……」
ラム「…痛みは感じる。でも虚しさの方が感じる」
カロル「やめなよ…。自分を傷付けるの」
ラム「殺してって懇願してくるような奴に言われたくない」
カロル「…言われたくないって思えるんじゃない…。イヤなことはイヤって言えるでしょ?」
ラム「……」
カロル「すぐ治る体に頼ってムチャするから…心が疲れてるんだよ…?」
ラム「……」
カロル「」クラッ
ラム「……」
カロル「あはは…血、出しすぎちゃったかな」ドロォ
ラム「力で治せばいいよ」
カロル「いいの?そんなことしたらボク死なないよ?」
ラム「君の方が僕よりムチャしてるよ。なのに君はなんともない。
裏切られた直後に信じるなんて僕にはできない。傷付けられた相手を許すなんてできない」
カロル「……」
ラム「なんにもないって言ったけど、なんにもないのも悪くないかもよ。
なんにもないから苦しまないし、なんにもないから余計な感情に支配されない」
カロル「ほら、やっぱり忘れたいんでしょ?」
ラム「かもね」
950: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/30(土) 22:28:44 ID:zCiLP5rgZc
ラム「シープが息絶える寸前まで泣きながら許しを乞う姿は…吐き気がした。
みじめでバカバカしいんだけど…同時に内心、許したくなった自分にも吐き気がした」
ラム「でも手遅れだった。僕は君と違って誰かを癒す力はないから。
ただ苦痛に耐えながら治るのを待つだけの力じゃ瀕死のシープを助けられない」
ラム「旅人に裏切られた時も…甘い言葉にあっさり騙された。
あの屈辱感は忘れられない筈だった。だけどもう他人事みたい」
ラム「両親を村から追い出したアルの連中も…ここが終わったら殺すつもりだった。それすらどうでもよくなった」
ラム「君を見つけたら真っ先に殺すって決めてた。でもどんどん薄れてく」
カロル「……」
ラム「…僕はどうすればよかったんだろう。憎くて憎くてたまらなくて…復讐がしたかっただけなのに…」
ラム「神なんて信じてないけど…もしいるんだとしたら、なんで僕から復讐さえ取り上げるのかな。
空っぽの心と死ねない体で復讐もできないまま、僕はボーッと生きていくのかな」ボーッ
カロル「……しっかりして?さっきはイラッとしたんでしょ?大丈夫だよ…!」
ラム「…もうほっといて」
カロル「ほっとけないよ!」
ラム「どうでもいい…どうでもいい…」クタァ
カロル「……!」カッ
951: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/30(土) 22:36:52 ID:zCiLP5rgZc
カロル「どうでもよくなんかないよ!」パシンッ
ラム「いたっ…!」ヒリヒリ
カロル「立って!」グイッ
ラム「…やめて。もういいって」ダラーン
カロル「ラムくんはズルいよ!自分ばっかり復讐とか憎しみに囚われてさ!
たくさんの人間とホビットが死んだのに!どうでもいいなんてダメだよ!」ググッ
ラム「……」カチンッ
カロル「最初は裏切られてきたのかもしれないけど…途中からただの分からず屋だったもん!」
ラム「腕…痛いんだけど…」イラッ
カロル「なら起きてよ!ボクだって血が止まらなくて苦しいんだからね!」グイッグイッ
ラム「癒せばいいだろ…」
カロル「イヤだ!ボクはラムくんみたいに力に甘えない!」
ラム「は…?」
カロル「忘れちゃったからいいやとか!感情ないからどうでもいいやとか!
自分のしてきたことが怖くなって逃げてるなんてラムくんらしくないよ!!」
ラム「はぁ!?」イライラ
カロル「ほら!怒ってる!感情あるんだよ!」
ラム「怒ってないけど!?」スクッ
カロル「立てるんじゃない!なんで座り込んだりするの!そんなに慰められるのがイヤだった!?」
ラム「疲れないからね!立てるよ!」
カロル「ひどい!ボクはホントに心配してたのに!?」
ラム「大きなお世話だね!誰も君に心配してほしいなんて言ってない!」
952: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/30(土) 22:45:18 ID:zCiLP5rgZc
カロル「意地っ張り!」
ラム「君がね!」
カロル「う…分からず屋!」
ラム「君がね!」
カロル「あう…う……」
ラム「君がね!」
カロル「うわーん!なんにも言ってないじゃない!」シクシク
ラム「(……!いつもそうだ!気付いたらこいつのペースに……)」ギリッ
ラム「ぼ、僕は君みたいに感情をさらけ出す性格じゃないんだよ!」
カロル「……!」
ラム「なんでもきれいごとで済ませて…そういうところが嫌いなんだ!」
カロル「……」フラッ
バタッ
ラム「カロルくん!?」ガバッ
カロル「っ……!」ドロォ
ラム「…なにしてるのさ!力を使えばいいだろ!?」
カロル「ボクが…死んでも…っ…悲しくないでしょ?」ゴボッ
ラム「…か、悲しくないね!君なんか大嫌いだ!殺してやりたくてしょうがなかったよ!」
カロル「そ…か…」シュン
953: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/30(土) 22:47:00 ID:50l4o5eNes
カロル「…また…一緒に笑いたかったな…」
ラム「え……」
カロル「初めて会った時…ラムくん、ボクが抱き締めたら…泣いてたね…?」クスクス
カロル「たったこれだけでおかしいねって…照れ臭そうに言って…」
ラム「…昔のことだよ」
カロル「初めて同じホビットに会えて…わくわくしたんだ…」
ラム「うん…。僕もびっくりした。人間と仲良くできる同族なんて知らなかったから」
カロル「…ボクはあの時からずっと、ともだちだと思ってるよ?もちろん、今も?」ニコッ
カロル「うっ…えほっ!えほっ!」ゴフッ
ラム「カロルくん!?」バッ
カロル「仲直り…したかった…」ハァッハァッ
ラム「力を使いなよ!まだ間に合うんじゃないの!?」
カロル「……」フッ
ラム「〜〜〜!」ワナワナ
ラム「と、ともだちっ…だよ!」
954: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/30(土) 22:52:40 ID:50l4o5eNes
ラム「僕もともだちだと思ってる!でも言えなかったんだ!」
ラム「言ったら…何がしたいのか分からなくなると思って!」ジワッ
ラム「人間に復讐しないと…父さんと母さんが死んでしまった意味も無くなる気がして!」ポロッ
ラム「だけど…誰も僕には付いてきてくれなかった!」ブワッ
ラム「みんな復讐より、普通に暮らしたいって…そればっかりだった!」ポロポロ
ラム「…それでも復讐は諦められないんだ!だってそうだろう!?」ポロポロ
ラム「騙されて奪われて裏切られて…ひとりぼっちになって…そんな…そんなのイヤだったんだよ!」ポロポロ
ラム「同族にも…っ!見放されて…」グシッ
ラム「だから…ふあっ!うえっ…羨ましかった!僕より…みんなに慕われる君が!」ポロポロ
ラム「…復讐しか見れない僕と違って…ひぐっ…君は…君は…みんなに…理解されてたから…」ポロポロ
ラム「うぅ…ふえっ!本当は僕だって…こんな生き方、したくなかった…!」ポロポロ
ラム「だから…甘い言葉に…ひんっ…希望があると思って…騙されてきたんだよ…うえっ!」ポロポロ
ラム「ずずっ…はぁっ…普通に暮らしたかったよ…!もっと父さんたちに愛されたかった!迎えに来てくれる約束、守ってほしかった!」ポロポロ
ラム「ともだちも欲しいし、かけっことか…かくれんぼに…混ぜてほしかった!」ポロポロ
ラム「うっ…うあっ…ふぅ!僕だって子供なんだよ…!
復讐なんて…背負いきれないよ…うっ…あぁぁぁぁん!!」ビエーン
955: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/30(土) 22:57:29 ID:zCiLP5rgZc
ラム「言った…だろ!君みたいな…ともだち…ぅぐっ!ほし…かったって!」ガシッ
カロル「……」
ラム「しな…死なないでよ!死なないで!君までいなくなったら、僕はホントにひとりぼっちじゃないか!」ユサユサ
ラム「ともだちだよ!ともだちは…ともだちを裏切らないって…っ…ひっ…言ったじゃないかぁぁ!!」ユサユサ
カロル「裏切らないよ?」パチッ
ラム「わぁぁぁん…ぁぁ………!?」ビクッ
カロル「ともだちだもの!」ニコッ
ラム「ぐすっ…き…君……いつから…」グシグシ
カロル「ラムくんがともだちって言ってくれた時から?」ニコニコ
ラム「も、もしかして…!」ハッ
カロル「…!」ウインク
ラム「っ……!ず、ズルいのは君じゃないか!」ゴシゴシ
カロル「…ごめんね、こんなに泣くと思ってなかったから」オドオド
ラム「……!」カァァ
カロル「ホントの気持ち…聞けて嬉しかったよ?」ダキッ
ラム「」ビクッ
カロル「あの時と同じだね?こうして…二人で気持ちをぶつけた後に仲直りしたでしょ?」ギュッ
ラム「……ひっ」ポロッ
カロル「もう大丈夫だからね?ボクはキミを裏切らないよ?
差別も無くなって普通に暮らせる日が来るから……」ポンポン
ラム「うえっ…ぇっ…ふえぇぇん…!」ギュッ
カロル「ルーボイくんたちとも仲直りしようね?ボクが一緒に謝るから怖がらなくていいよ?」ポンポン
ラム「うんっ…うんっ!」コクコク
カロル「……泣き止んでからにしよっか?」
ラム「ひっ…い…癒しの力で…止めてよ!」グズッ
カロル「え…それはちょっとできないかも?」オロオロ
956: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/31(日) 20:16:05 ID:2Wm5GCo/Zk
―――客席最後列―――
カロル「みんなー!」スタスタ
マルク「あんっ!」ハッハッ
宣教師「あ、戻ってきましたか!」
ルーボイ「おせーぞ!待たせんなよな!」プンスカ
ヒメ「よく言うな?おまえが一番、心配してたのに?」
ナラ「あいつへいきかな…へいきかなって…ずっといってたよね?」
ミシング「ルーボイくんは照れ屋さんなのかにゃー?えいっえいっ」ツンツン
ルーボイ「うるせぇ!」プンスカ
団長「お、小童よ!戻ってきたか?
狂った兵達を気絶させて向こうに集めておいたのだが正気に戻してやってくれないか!」スタスタ
カロル「はーい!ちょっと待っててね?」
宣教師「ん…?」ジーッ
カロル「よかった…みんないるね?」
ラム「」コソコソ
カロル「ほら、隠れないで?ボクの背中じゃちっちゃくて、すぐ見つかっちゃうよ?」クスクス
ラム「う、うん…?」オドオド
宣教師「……説得できたんですね?」ニコッ
カロル「ラムくんからみんなに言いたいことあるって?」ニコッ
ラム「……」オドオド
957: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/31(日) 20:18:00 ID:2Wm5GCo/Zk
ゾロゾロ ゾロゾロ
ラム「ぜ、全員…集めなくても……」オドオド
カロル「何人いるかじゃないよ?ラムくんの気持ちを素直に言えば…分かってくれる?」
ラム「で、でも怖いよ…。それに緊張して……」ブルッ
カロル「」パシッ
ラム「……!」ギュッ
カロル「ボクがいるよ?」ニコッ
ラム「……手、繋いだままでいい?」オドオド
カロル「うん。いいよ?離さない?」ニコニコ
ラム「……」ギュッ
ルーボイ「早くしろよな!」
ラム「」ビクッ
信者's「」ジロジロ
ラム「……!」ブルッ
教徒's「」ヒソヒソ
ラム「あ…う……」ブルブル
ゴチンッ!
ルーボイ「いてっ!?なにすんだよ!?」クルッ
ヒメ「バカ!バカ!おまえ、ほんとバカ!空気読めバカ!」プンスカ
ナラ「いまのよくない!」キッ
ルーボイ「う……ご、ごめん」シュン
宣教師「キミも私達も今、彼がどういう想いで、この場に立つ決心をしたのか…考え、理解し、話を聞いてあげましょうね?」ナデリ
ルーボイ「……はい」
ラム「……」
カロル「…ね?みんなキミの敵じゃないでしょ?」ニコニコ
ラム「う、うん…」コクッ
958: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/31(日) 20:19:52 ID:2Wm5GCo/Zk
ラム「……」チラッ
カロル「…大丈夫!」ニコニコ
ラム「ぼ、僕は…人間を許せなかった。
だから…復讐したくて…カロルくんを利用したり、同族と力を合わせて戦った…」オドオド
ラム「今も…人間を許せるかって言われたら…許せない」
ラム「だけど…復讐に走れば走るほど、みんなが僕から離れてく…」
ラム「不安でたまらなくて…途中から復讐する理由も分からなくなってたんだ」
ラム「でもそう思った時には…もう僕の周りには誰もいなくて…止まることができなかった」
ラム「その時になって初めて後悔したんだ!
あの時、ああすれば…こうしてればって…そればっかり浮かんできて!」
ラム「考えるのをやめたかったんだと思う!
何も考えない、感じない…それが一番、楽だったから!」
ラム「復讐に生きよう!復讐に生きようって言い聞かして…無意識に心を壊そうとしてたんだ!」
ラム「僕の独りよがりな…どうしようもない!
本当にどうしようもないワガママだったけど!」
ラム「そんな僕を…見捨てなかった、ともだちがいる」ジッ
カロル「えへへ」テレテレ
ラム「何度もひどい言葉をぶつけた!何度も人間なんか信じるなって言った!
何度も拒絶して、何度も何度も困らせた!」
ラム「…僕はたぶん間違ってなかった。
でも…間違いを正しさに変える勇気が無かったんだ」
ラム「カロルくんのしたことはすごいと思う。普通だったら絶対ムリだよ」
ラム「人間のともだちを作って、僕らが差別を受けてるって知ってもらって…。
その人間たちがカロルくんに協力して、必死に助けようとしてる」
959: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/31(日) 20:22:45 ID:2Wm5GCo/Zk
ラム「僕なんかじゃ…ともだちを作る時点で挫折するよ」
カロル「そんなことない?」ギュッ
ラム「ううん。君はすごいよ。一人の人間と分かり合えるまでに何人に差別される?
理不尽なことが何回降りかかる?よっぽど心が強くないと挫けてしまうよ…」
宣教師「(…本当にその通りです)」ウンウン
カロル「ちがうよ?すごいのは信じてくれた人たちだよ!」
ラム「え?」
カロル「だって…ボクたちを信じると今度は同じ人間から差別される。
ただ仲良くしたいだけなのに…分かってもらえなくなるんだ」
カロル「それでも宣教師さまはボクを信じてくれた!
それに差別を無くそうとしてくれたんだよ!」
宣教師「わ、私…?」ビクッ
カロル「宣教師さまのおかげでルーボイくんとパッチくんっていう大切なともだちができた!」
ルーボイ「ま、まぁな!」エッヘン
カロル「宣教師さまが大聖堂に囚われていなかったらナラにも出会えなかった!」
ナラ「……!」ポッ
カロル「王都に連れてこられた時もツラいことがいっぱいあったけど、宣教師さまと歩いてたら王子さまに会えた!」
ヒメ「それはこじつけじゃないか!?」
カロル「…最初はボクを嫌ってた団長さんも宣教師さまが説得してくれたんだよね?」
団長「あぁ!王子の心が晴れたのを見るまでは信用出来なかったがな?」フフッ
カロル「…ね?ボクの力なんてちっぽけでしょ?」
ラム「……」
960: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/31(日) 20:26:42 ID:YmcwGKzrMY
カロル「ここにいるみんなが僕に関わって大事な物を無くしてる…」
カロル「それでもボクを信じて一緒に戦ってくれる」
カロル「もちろん間違ってることは間違ってるって言われるよ?」
カロル「でもそれはボクを嫌ってるんじゃなくて…ともだちだから言ってくれるんだ?」
カロル「ボクが頑張ってこれたのはみんながいてくれたから…」
カロル「きれいごとや偽善に聞こえるかもしれないけど、ホントなんだ?」
ラム「……」
カロル「数えきれない出会いがある、このまっさらな世界にはたくさんの希望が溢れてるよ?」
カロル「不幸せでも信じる心を持ってたら、ボクらの見る世界はキラキラする?」
ラム「…君の言うことは前向きなだけで中身がスカスカ?」
カロル「う……」ガーン
ラム「でも素敵だと思う?」ニコッ
カロル「…ありがとう!」パァァ
ラム「そうだね。一方的に信じても…一方的に裏切られる時だってある」
ラム「だから僕たちは分かり合えるように…お互いに理解する努力をしなきゃいけないんだ」クスッ
ラム「僕もがんばるよ。君みたいにはできないかもしれないけど信じてみる」
カロル「…ラムくん、すっかり元気になったね?」ニコニコ
961: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/31(日) 20:29:33 ID:2Wm5GCo/Zk
ラム「カロルくん、もう離していいよ」パッ
カロル「…うん!」パッ
ラム「」スタスタ ピタッ
ラム「ごめんなさい!」ペコッ
シーン
ラム「今さら謝って済む訳がないのは分かってます!だから…せめて僕に償う時間をください!」
ラム「罪を受け入れて反省します…。人間の皆さんが許してくれるまで何年でも!」
ラム「だから…お願いします!償わせてください!」
ザワザワ ザワザワ
信者's「」ジロジロ
教徒's「」ヒソヒソ
ラム「……!」グッ
カロル「ボクも!」スタスタ
ザワッ
カロル「人間と戦うって決めたのはボクです!ラムくんを許せないなら、ボクも一緒に償います!」ペコッ
ラム「か、カロルくん!君は僕に言われてしかたなく……」アタフタ
宣教師「そうはいきませんよ!」ザッ
カロル&ラム「えっ」
宣教師「今回の騒動が起こった原因は教団の陰謀の他に人間がホビットにツラく当たってきたからです!」
宣教師「キミたち二人が罪に問われると言うのなら、ホビットへの差別を促すような布教活動をしてきた私にも罪があります!」
カロル「宣教師さま…!」キラキラ
962: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/31(日) 20:31:31 ID:2Wm5GCo/Zk
ラム「…な、なんで…悪いのは僕……」オロオロ
ルーボイ「じゃあ俺もー!」ハイハーイ
ナラ「わたしも!」スッ
マルク「わんわん!」ピョンッ
ヒメ「オレもホビットを排他的に扱ってきた人間の王子だ!責任は免れないな!」スッ
団長「ならば当然、王子に仕えるワシにも責めが及ぶ!」スッ
ミシング「あたしも布教しちゃったから罪人だねー?
檻に入れられる前に結婚したかったなー…なんちゃって?」テヘペロ
ラム「…ど、どうして…僕なんかに…」
カロル「…もう知ってるじゃない?」
ラム「な、なにを?」オロオロ
カロル「ともだちでしょ?ボクたちみんな!」
ラム「……!」ウルッ
宣教師「皆さんはまだ許せませんか?」クルッ
団長「どうなのだ!?」カッ
パチパチ パチパチ
信者's「」パチパチ
教徒's「」パチパチ
近衛兵's「」パチパチ
ラム「……!」パァァ
カロル「…ふふ!一人じゃどうにもならないことっていっぱいあるけど、ああやって気持ちが伝わると…嬉しくてたまらないよね?」ニコッ
ラム「うん…!」
963: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/31(日) 20:34:49 ID:2Wm5GCo/Zk
宣教師「ラムくん」スッ
ラム「せ、宣教師…さん」タジッ
宣教師「償う必要なんてありません。ここにいる私達は…皆、キミと同じくらい道を踏み外してきたのですから?」
宣教師「過去の罪と、どう向き合うかはこれからの生き方次第。
今は思い悩むのはよして、共に歩む道を見つけられた喜びに感謝し、分かち合いましょう?」ニコッ
ラム「ひっ…ひぐっ…」グスンッ
宣教師「え、あ、いや、その…すみません!すみません!でも泣かせるような事、言いましたっけ!?」ビクッ
ラム「うっ…ふえっ!ち、ちが……」グシグシ
宣教師「?」
ラム「す…すごく…安心して…ずずっ」
宣教師「ふふふ、鼻出てますよ?」つ【ハンカチ】
ラム「あり…がと…ずずっ!」ズビー
ルーボイ「へへ!お前って泣き虫だったんだな!」
ナラ「そういうの…いわないの!」
ラム「あ…あの…ハンカチ…」オロオロ
宣教師「あ、そのままで大丈夫ですよ?」スッ ゴソゴソ
ルーボイ「うえっ!きったねー!」
ナラ「ルーボイ!」
宣教師「汚くなどありませんよ。
ちゃんと丁寧に包んでくれてますし、キミのように鼻かんですぐクシャクシャにしたりしませんしね?」
ルーボイ「な、なんだよ!別にクシャクシャでもいいじゃんかよー!」
宣教師「よくありませんよ!
どこに鼻水が付いてるのかよく分かりませんし、受け取る時になんかベタッとしてたんですからね!?」
ヒメ「ははは!庶民は不潔だな?」クスクス
ルーボイ「うるせぇ!文通王子!?」
ヒメ「誰が文通王子だ!?」
ナラ「もう!ふたりとも!?」
964: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/31(日) 20:39:05 ID:2Wm5GCo/Zk
ワイワイギャーギャー
ラム「ははははは…!」ケラケラ
カロル「見てるだけで楽しいよね?」ニコニコ
ラム「うん…楽しい」シュン
カロル「…どうしたの?」
ラム「僕は今まで…なんで信じられなかったんだろ。
こんなに…こんなに簡単に受け入れてもらえるなんて……」ウルッ
カロル「…しょうがないよ?」
ラム「シープとバンパに…謝りたい。僕が意地を張ってしまったから…二人は……」ブルッ
カロル「……」
ラム「会いたいよ…。あの二人にも教えてあげたい…。こんなに楽しい世界があるんだって……」
カロル「そうだね…」
ラム「この戦いが終わっても後悔しない自信があるって言ったのに…バカみたいだ!」ズズッ
カロル「…これからは大事にしないとね?」サスサス
ラム「…するよ!もう絶対に失わない!」ズビッ
カロル「……」サスサス
965: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/31(日) 20:43:12 ID:2Wm5GCo/Zk
パァァァァァァァ……
オォォォォォォォォォオ
宣教師「おや?日の出ですね?」
ルーボイ「おわー!スッゲー!?」
ナラ「キレイ……」ポーッ
マルク「あぉーーん!」
近衛兵1「ははは!犬のクセに日の出と共に叫ぶなんて…まるで鶏だな!」
教徒1「うっ!ま、まぶしいですねぇ…。暗闇に目が慣れすぎたか…!」
団長「昨日の早朝から巡礼が始まり、日の出まで戦ってきた訳か…。長かったな」
ミシング「あーん!ミシングちゃん、動きっぱなしでもう眠たーい…。おじさまのたくましい腕枕が欲しいなー?なー?」チラチラ
ヒメ「言っとくが、こいつ妻子持ちだからな?」
ミシング「え!?そうだったの!?」
団長「…う…おっほん!」
カロル「…ふふ!お日さまも喜んでるよ!仲直りできてよかったねって?」
ラム「うん…!こんな風に迎えられる朝は初めてだよ!」パァァ
カロル「ボクも一晩中、起きてたの初めて!」
ラム「(きっと二度と…悪夢にうなされて起きる日は来ない…)」
966: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 21:03:53 ID:HMvXvjcyOI
―――舞台―――
ゾロゾロ ゾロゾロ
ルーボイ「なんか急に疲れたなぁ…」グータラ
ナラ「…ねむい」ゴシゴシ
ヒメ「…団長、寝室持ってこい」ボケー
団長「部屋ごとでござるか!?」ガーン
カロル「…ちょっと行ってくるね?」
ラム「どこに?」
カロル「お母さまを迎えに行ってくるの!」スタスタ
宣教師「そうですか。お気をつけて?」ニコッ
カロル「またね!」ダダーッ
宣教師「えぇ、また後ほど…」
ラム「……」
ダダダダダダダッ
宣教師「…朝まで動き倒して疲れてるでしょうに」
ラム「やっぱりマザコンだよね。カロルくんって?」
宣教師「…フォローできません」
967: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 21:05:02 ID:8oOAyDp4lU
団長「とりあえず君らも今日は休みなさい。
舞台の裏にあるテントと他国の方々に用意しておいた客人用のテントがあるぞ」
宣教師「帰らないのですか?」
団長「政務官と大臣は一足先に王都に戻り、壊滅状況を調べると共に攻めてきたであろう国を確かめ、交渉に赴くそうだ。
発端となったアントリアやアリアスも連行し、交渉材料に使うと話していた」
宣教師「王都はすでに…」
団長「王都に残っていた人間には悪いがどうにもなるまい」
宣教師「救えない話ですね…。果実は処分してくださるのでしょうか?」
団長「無論だ。あんな物があっては人の野心に火を灯すばかりだからな」
宣教師「それを聞いて安心しました」
団長「ワシらはこれから舞台の撤去や椅子の片付けをせねばならん。
教団の大人たちには死体の埋葬と供養を頼んだ。帰るのは、その作業が終わり次第だな」
宣教師「では私もお手伝いします。ラムくんは子供たちと休んでいていいですよ?」
ラム「カロルくんはいいのかい?」
宣教師「ふふ…あの親子は二人きりの方がいいんですよ?」ニコッ
ラム「……それもそうだね?」クスッ
968: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 21:07:14 ID:HMvXvjcyOI
宣教師「ん?あれは……」スタスタ
ミシング「えーん!えーん!聞いてよー!あたしってば弄ばれたのー!?」グスンッ
マルク「クゥン…」ペロッ
ミシング「あーん!あたしを慰めてくれるのはワンちゃんだけだよー!」ダキッ
マルク「」スリスリ
宣教師「…あなたも油を売ってないで手伝いなさい?」
ミシング「あぁー!宣教師!聞いてよー!」
宣教師「聞きません。ほら、行きますよ」ガシッ
ミシング「うえーん!冷たくなーい!?」
宣教師「相変わらずですね?ホントいろんな意味で?」
ミシング「宣教師が変わったんでしょー?聞いたよ?
ありとあらゆる男を誘惑して虜にしまくってたらしいじゃーん?」ニヤリ
宣教師「だ、誰から聞いたんですか!そんな出任せ!」
ミシング「えー…と、大臣とか教徒の人が言ってたよ!
神父と牢屋の見張りを誘惑したり、大臣とベッドですごかったって!」
宣教師「〜〜〜!や、やはり…あの毛無し豚(※大臣)だけは許せませんね…!」ワナワナ
ミシング「ねー?ねー?そんなにすごかったの?」
宣教師「お黙りなさい!?」ガァーッ
ミシング「」ビクッ
マルク「」ビクッ
宣教師「またそんなデタラメを鵜呑みにしたら…あなたを大臣に紹介しますからね!?」
ミシング「ひっ!絶対やだ!」
宣教師「まったく!たまったものではありませんよ!」イライラ
ミシング「ごめん、ごめーん!怒んないでよー?」スタスタ
マルク「あう?」キョトン
969: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 21:10:22 ID:8oOAyDp4lU
―――平原(荷車の仮置き場)―――
サァァァァァ サァァァァァ
母「風が吹くばかりで…なにも聴こえない…」ポツン
母「坊や…帰ってこない」
母「(今頃どうなってるのかしら…)」
母「(もしかしたら…同族も坊やも死……)」ゾォッ
母「あ、あぁはぁぁ…はぁはぁ」バックンバックン
母「いや…いや…いやぁぁぁ…」ガクッ
母「(それだけは考えないようにって思ってたのに…!)」ハァッハァッ
母「(あぁ…あたしのせい…あたしのせいで…あたしが戦うように言ってしまったから……)」アワアワ
母「(母親なのに…守るって誓ったのに…!)」ガタガタ
ガチャッ ギィィィ
母「きゃっ!まぶしい…!」ビクッ
カロル「お母さま!」ニコッ
母「坊や…!?」ハッ
カロル「ずっと待たせてごめんなさい…。もう心配ないからね!」ニコニコ
母「ぼう…や…!」ウルッ
カロル「ねぇ、お母さま!」ストッ
母「……?」ウルウル
カロル「ギュってして!」タタタッ
母「えっ」
カロル「」バッ ダキッ
母「きゃっ!?」ドサッ
970: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 21:11:55 ID:8oOAyDp4lU
カロル「えへへ!お母さま、大好き!」スリスリ
母「あらあら、会うなり甘えん坊さんね…?」グスッ
カロル「あ…そ、そうだよね。もう…あんまり甘えない方がいいよね…」シュン
母「あーら…じゃあ、お返しっ?」ガバッ
カロル「ひゃっ!?」ドサッ
母「お母さんが甘えちゃうんだから!」スリスリ
カロル「……あはは!」パァァ
母「帰ってきてくれてありがとう!わたしのかわいい坊や?」ギュッ
カロル「どういたしまして!」ギュッ
971: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 21:13:14 ID:8oOAyDp4lU
母「……!」ポロポロ
カロル「あ…れ?お、お母さま?」パチクリ
母「よかった…!坊やが無事で…本当によかったわぁ…!!」ポロポロ
カロル「……」
母「ごめんなさいね!戦わせたりして…!」ギュゥッ
カロル「心配かけちゃってごめんね?」ギュッ
母「ずっと…ずっと待ってたのよ?あなたがケガなく無事に帰ってくるのを…!」ポロポロ
カロル「うん、ありがとう」ナデナデ
母「…うぅぅ!よかったぁ…!」グシグシ
カロル「ふふふ。よかった!元気そうで?」
母「え…?」
カロル「お母さまが元気でいてくれるのがボクの幸せだもの?」ニコニコ
母「…坊や」ブワッ
母「坊やぁぁぁぁあ……」ポロポロ
カロル「えへへ…お母さまにたくさん甘えたかったのに…逆になっちゃった?」クスクス
母「あぁぁ…ぁぁぁん…!」スリスリ
972: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 21:14:35 ID:HMvXvjcyOI
母「…そ、それってつまり……和解したの?」
カロル「うん。仲直りしたの!もう誰もいじめたりしてこないよ?」ニコニコ
母「どうやって…?」
カロル「みんなで協力したんだ!もう差別しないって教団の人間たちも約束してくれたよ!」
母「……!」
カロル「お母さま?」
母「あ、ごめんなさい…。まさか本当に実現させるなんて…」
カロル「えへへ…ボクもあんまり実感できてないや。ホントは夢だったりして?」テレッ
母「……」ボーッ
『そう…ビスケット、もらったの?良かったわねぇ。お菓子なんてなかなか食べられないもの』
『そういう人間もいるのよね…。みんながみんな…あたし達を拒む訳じゃない』
『…だから憎しみに囚われてはいけないわ?あたし達にはあたし達の幸福がある』
『お父様は人間を敵として見てるけど…坊やにはそうなってほしくないの』
『…あたしと夫が結ばれたように。あなたはあなたの望む生き方をしなさい』
『お母さんも今のままでいる気はないから…二人で落ち着いて暮らせる場所を必ず見つけてみせるわ?』
『……この旅を終えてゆっくりする時間ができたら、自分のやりたい事を探してみて?』
『坊やが選んだことなら、お母さんは絶対に反対しない。だから一番したいことを常に考えておいて?』
『…うふふ。難しかった?』
『そうね。簡単なことじゃないわ?』
『でも目的は必要よ?何かを目指して進むと……どんな苦難にも負けない力を養えるの?』
『望む幸福は…坊やの目指した先にある?』
973: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 21:17:50 ID:HMvXvjcyOI
母「ふ…ふふ……ダメね、あたしって……」ブルッ
カロル「え?」
母「…あれだけ坊やにきれいごとを押し付けて最後は醜い復讐に走ったんだもの」ガクガク
母「しかも自分の手を汚さずに…最も汚いやり方で……」ワナワナ
カロル「…お母さま?」
母「うふ…ふ…ふふっ…ふふふ……」
母「アハハハハハハハ!!!!」ケラケラ
カロル「……!」ビクッ
母「アーッハッハッハッハッハッ!!!ハハハハハ!!!!」
母「アハハハ!アハ!アハハハハハ!」
カロル「大丈夫…大丈夫だから…帰ろう?みんなで…?」アセアセ
アハハハハ アハハハハ アハハハハ
974: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 21:21:13 ID:8oOAyDp4lU
………半年後………
―――辺境の孤児院―――
宣教師「」ズズッ
宣教師「……」コトンッ
ミシング「…なーに黄昏ちゃってんの!」ポンッ
宣教師「人の頭に手を置かない!」ピシャリッ
ミシング「ごめんごめん。あ、紅茶おいしそ!あたしもー!」スッ
宣教師「…淹れてきますから待ってなさい」スクッ
ミシング「にしし!悪いねー?」クスクス
宣教師「」カチャッ トポポポ
ミシング「とりあえず今、預かってる入居者をリストにまとめといたから後で目通しておいてね?」ピラッ
宣教師「ご苦労様です。はい?」コトンッ
ミシング「うーん!イイ香り?おやつがあったら、もっといいのに?」スンスン
宣教師「はいはい、お茶請けにどうぞ」カチャッ
ミシング「そうそう!やっぱりコレじゃないと?院長様のお手製ビスケット!」ルンルン
宣教師「院長、ですか。まだ慣れませんね」カタッ
ミシング「あむっ…まぁねー?まだ預かってる子供も少ないし、これからじゃない?」サクッサクッ
宣教師「…そうですね」ズズッ
975: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 21:23:17 ID:8oOAyDp4lU
―――辺境の孤児院(書斎)―――
孤児1「おねーちゃん!これ!」つ【絵本】
ナラ「いいよ?」パシッ
孤児1「わーい!」キャッキャッ
ナラ「むかしむかしあるところに……」ペラッ
孤児1「」ワクワク
ナラ「とてもわるいホビットが……っ」
孤児1「どうしたの?おねーちゃん?」
ナラ「ほかのに…しよっか?」ニコッ
孤児1「えー?やだやだ!それがいいのー!」
ナラ「これ…よくないの。うそがかいてあるの。ほかのにしよ?」
孤児1「やーだー!!!」ギャンギャン
宣教師「その通りですよ?」パッ
ナラ「あっ…いんちょうさま…」
孤児1「やだやだやだー!」ジダンダ
宣教師「…まだこんな物が残っていたなんて」マジマジ
ナラ「せんきょうしさまだったころの…?」
宣教師「えぇ、前に使っていた教会をそのまま孤児院にしてしまいましたから…昔の私物が残っていたようです。
処分しておきますから、何か別の絵本を読んであげてください?」
ナラ「うん…」
宣教師「」ガチャッ
バタンッ
ナラ「…カロル」ボソッ
孤児1「やーだー!やだやだやーだー!」ジタバタ
976: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 21:24:47 ID:HMvXvjcyOI
―――辺境の孤児院(庭)―――
ルーボイ「っしゃー!俺の勝ちー!」
孤児2「ずるいよ!おっきーんだから手加減してよ!」プンプン
ルーボイ「お前が足遅いのが悪いんだろー!べーっだ!」ベロベロバー
孤児2「うわーん!」ビエー
ルーボイ「あ、な、泣くなよ!泣いたってダメなんだぞ!」アタフタ
ミシング「あちゃー!ルーボイくんったら、また泣かしちゃったの!」スタスタ
ルーボイ「ち、ちげーよ!こいつ、かけっこ負けたからって泣いてんだよ!」
ミシング「はいはい、よしよしよしー!頑張ったんだから泣かないの〜?
勝っても負けても恨みっこなしでしょー?」ダキッ
孤児2「わぁぁん!」ギュッ
ミシング「ルーボイくんもお兄ちゃんなんだから勝ち負けくらい譲ってあげたらー?」ナデナデ
ルーボイ「やだ!男と男の真剣勝負なんだからな!」
ミシング「ちっちゃい子を相手にムキになんないの?はいはい、ミシングお姉ちゃんと遊ぼっか?」ポンポン
孤児2「ゔん…」グスッ
ミシング「あ、そだ!ルーボイくんはお勉強の時間じゃない?院長が呼んでたよー?」
ルーボイ「うえー!やりたくねー!」
ミシング「あはは!後で愚痴聞いたげるからいってらっしゃい?」ニコッ
ルーボイ「ちぇっ…」トボトボ
977: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 21:27:11 ID:8oOAyDp4lU
―――ミラルドの町―――
ごろつき1「ゲヒャヒャヒャヒャ!」ドカッ
ホビット1「ぎゃっ」ズダァンッ
ごろつき2「な〜にホビットが当たり前みてぇなツラして歩いてやがんだぁ?」ズシッ
ホビット2「いっ!」ジャリィッ
ホビット3「だ、誰か!どなたか助けてください!」
シーン
スタスタ スタスタ
ごろつき1「うるぁっ!」ブンッ
ホビット3「うあっ」バキッ
ごろつき2「だぁれも助けやしねぇよ!みぃんな素通りじゃねぇか!バーカ?」ニヤニヤ
ホビット1「わ、わたしたちは……和解したのではなかったのですか!」ピクピク
ごろつき1「知るか!教団が布教を撤回しただけだろうが?」
ごろつき2「王国のバカ王子が差別をやめさせるとかぁ決めたらしいがよ。
どうせあいつら王都以外は知らん顔すんだから関係ねぇよなぁ?」ニヤニヤ
「その辺にしたら?」
ごろつき1「ぅん?」クルッ
ごろつき2「なんだ、おめぇ?こいつらの仲間か!」ズイッ
ラム「種族で言えば、そうなるかな」
978: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 21:28:23 ID:HMvXvjcyOI
ごろつき1「ゲヒャヒャ!てめぇも痛めつけてやるか!」
ごろつき2「おぉ!?こいつホビットのクセに野菜かごを持ってやがるぞ?」
ごろつき1「ちっ!誰だぁ?こんなションベンくせーのに大事な大事な食料を売りやがったバカ商人は?」キョロキョロ
ラム「君らは行っていいよ?」
ホビット1「は、はい!」ダッ
ホビット2「あ、ありがとうございました!」ダッ
ホビット3「ひええっ!」ダッ
ごろつき1「ああ?待ちやがれ!」
ラム「おじさんが待ちなよ?」
ごろつき1「あ!?」
ラム「…もう人間とホビットは和解したんだよ?人里に住むのも認められてる?」
ごろつき1「知るかぁ!?チビでナヨナヨしたてめぇらを見ると殴りたくなんだよぉ!?」
ラム「はぁ…お前らみたいなのがいるから種族間が縺れるんだよ。いい加減、気付いたら?」ジトー
ごろつき2「てんめぇ〜!!」ギリギリ
ごろつき1「ぶちのめしてやる!」ダッ
バキッ ガッ ドスッ ボコッ
979: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 21:29:45 ID:8oOAyDp4lU
ラム「う……ぐぅ…」ヨロヨロ
ラム「(せっかく買った野菜が……)」チラッ
スタスタ スタスタ
ラム「(…ほんとヘドの出る種族だよ。こんなにたくさん人が歩いてても…誰も止めようとしない)」ゼェゼェ
ホビット1「あ、あの…」
ラム「……?あぁ、さっきの?」
ホビット1「あ、ありがとう…助けてくれて…」
ラム「いいよ、気にしないで……」
ホビット1「だ、大丈夫?ひどいケガ……」
ラム「少し休めば治るから心配しないで…。
それより家に帰ったら?またあいつらにいじめられるよ?」
ホビット1「…わ、わたしたちは町を出ると決めました」
ラム「え…?」
ホビット1「ホビットと人間が和解したと聞いて活気溢れる町での生活を夢見ましたが…やはりわたしたちの居場所はここにはないようです」
ラム「……」
ホビット1「もしよかったら一緒に来ませんか?」
ラム「…僕はいいよ。帰る場所があるから」
ホビット1「そうですか…」シュン
ラム「……」
ホビット1「では…わたしはこれで…」スッ
ラム「待ちなよ」
ホビット1「はい?」クルッ
ラム「君らにうってつけの場所があるんだけど来てみない?」
ホビット1「わたし…たちに?」キョトン
980: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 21:32:35 ID:8oOAyDp4lU
―――辺境の孤児院―――
宣教師「はい、銅貨20枚分の林檎を4つ買いました。
銀貨一枚を支払った場合、お釣りはいくらになるでしょう?」
ルーボイ「えっと…き、金貨100枚?」
宣教師「支払った額より多いじゃないですか!?」
ガチャッ
ラム「ただいま…」ボロッ
宣教師「あ、おかえりな……そ、そのケガはどうしたんですか!?」
ルーボイ「わー!ラム、お前ケンカしたのか!?」
ラム「…院長、また3人くらい増えても平気?」
宣教師「え?にゅ、入居者ですか?それは構いませんが……」
ラム「だってさ?入ってきなよ?」
ホビット1「ど、どうも…」オズオズ
ホビット2「に、人間…!」ビクビク
ホビット3「ひぃぃ…」ガクガク
ラム「この人は他の人間とは違うから大丈夫さ?」
宣教師「……ようこそ、名も無き孤児院へ?」ニコッ
981: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 21:36:54 ID:HMvXvjcyOI
〜〜〜〜〜〜
宣教師「なるほど…町に馴染めなかったんですか。辛かったでしょうね…。
それにしてもラムくん、キミは勇敢ですね。感心しました!」ニコニコ
ラム「別に……」プイッ
宣教師「ふふ…」ニコニコ
ホビット1「あ、あいつら…酷いんです!」
宣教師「……」
ホビット2「わたしたちがホビットだからって暴力を振るったり、買い物すると相場より高く売り付けようとしたり、安い賃金で働かせたり!」
ホビット3「…どいつもこいつも蔑んだ目で見てきて耐えられない!」
宣教師「…愚かな人達ですね。この辺りが大聖堂のお膝元だったのもあるのでしょうが……」
ホビット1「悔しくて…!」ウルウル
宣教師「…ご安心ください?今日から私達があなた方を守ります?」
ホビット2「本当ですか…!」
宣教師「えぇ、お三方がちゃんと生活できる環境の整った場所を探しますから…。
それまでここにいてくださって構いませんよ?」ニコッ
ホビット3「あぁ!まるで聖母だ!なんて素晴らしい人!」グシッ
宣教師「せ、聖母…?ま、まぁとりあえず今日のところは暖かい湯に浸かって体を流されてはいかがでしょう?
もう少ししたら夕食を出しますから、今日の痛みと疲れを癒してくださいね…?」ニコニコ
ホビット1&2&3「はいっ!!」
ラム「……」クスッ
982: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 21:39:07 ID:8oOAyDp4lU
孤児1「いんちょー!だっこー?」バッ
宣教師「はーい、いいですよー?」ダッコ
孤児1「わーい!」ギュッ
宣教師「(ここに来て約4ヶ月になりますか…。徐々に人数も増えてきましたし、そろそろ教会では手狭になってきましたね…)」ユサユサ
孤児1「…ママはね、だっこしてくれないんだ」ボソッ
宣教師「」ズキンッ
宣教師「…お母さんに会えなくて寂しいですか?」シュン
孤児1「いんちょーがいるからさびしくない!」ニパァッ
宣教師「」キュンッ
宣教師「それは…よかった」ニコッ
孤児1「うーん…」ゴシゴシ
宣教師「さ、もう寝ましょうね?部屋まで連れていってあげますから?」ポンポン
孤児1「やーだー…」ムニャムニャ
宣教師「はいはい、行きますよ?」スタスタ
983: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 21:40:37 ID:8oOAyDp4lU
―――辺境の孤児院(共同部屋)―――
ナラ「…どうしてるかな」フカフカ
ルーボイ「ん…なにが?」ゴロゴロ
ナラ「カロル……」
ルーボイ「……しらねー」ピタッ
ラム「…お母さんを迎えに行ったきり、戻ってこなかったね」ゴロン
ナラ「おうじさまが…さがさせたけど、みつからなかった」
ルーボイ「しらねーよ!」ムスッ
ラム「…ズルいよ。僕には人間を信じてって言ったクセに…自分だけお母さんと消えちゃうなんてさ」
ナラ「うっ…うっ…」グスンッ
ルーボイ「もういいよ!あんなやつ!」
ラム「……」
ルーボイ「宣教師様の前であいつのこと話すなよ?」
ナラ「う…んっ」グスッ
ラム「分かってるよ…」
ガチャッ
ルーボイ&ナラ&ラム「」ビクッ
ミシング「みんなー!ちゃんと寝てるー?夜更かしする悪い子はくすぐりの刑だぞー?」コッソリ
ルーボイ&ナラ&ラム「」ドキドキ
ミシング「うんうん、よく眠ってる?おやすみ〜?」ニコッ
バタンッ
ルーボイ&ナラ&ラム「」ホッ
984: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 21:42:30 ID:8oOAyDp4lU
――――――
ミシング「…おチビちゃんたち寝たふりしてたよー。
お子ちゃまってバレバレのウソ付くからかわいいんだよね」
宣教師「灯りは消しておきましたから、じきに眠りますよ」
ミシング「みーんな心配してたよー?院長様が寂しがってるんじゃないかって?」
宣教師「……」
ミシング「なんでいなくなっちゃったんだろーね、あの親子?」
宣教師「…私に聞かれても分かりませんよ」
ミシング「そういえば王国から手紙が来てたよ。使者を寄越すから久しぶりに遊びに来いって?」
宣教師「ありがたいですが、ここを留守にはできませんしね…」
ミシング「あたしが留守番しとくから、ルーボイくん達と行ってきなよ?」
宣教師「いいのですか?」
ミシング「たまには思い切り息抜きしなきゃ?」
宣教師「…そうですね。あの子たちも王子に会いたがっていましたし」
ミシング「返事はいらないってさ?来週には迎えの馬車が来るらしいから?」
宣教師「…分かりました」
ミシング「じゃ、あたしも寝るね?おやすみ〜?」ガチャッ
宣教師「えぇ、おやすみなさい」
バタンッ
宣教師「(…カロルくん、お母様)」
宣教師「あの時…私が付いていけば……」グッ
985: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 21:44:28 ID:8oOAyDp4lU
………一週間後………
―――城(食堂)―――
給仕1「」カチャカチャ
給仕2「」トクトク
ズラァァァァァァ
ヒメ「よーし!全員の席に料理が並んだな?団長!」
団長「ははっ!では不肖、ワシめが乾杯の音頭を取らせていただきまする!
えー…この度は皆、遠い地から足を運んでいただき、あー…おかげでこうして懐かしい顔ぶれと、このように盛大な会を開けた事を感謝すると共に……」
ヒメ「話が長い!かんぱーい!」スッ
カンパーイ!
団長「そんな…!?」ガビーン
ヒメ「んっ…んっ…ぷはー!やっぱりイチゴは生搾りに限るな!」ゲフッ
団長「げ、ゲップするなどはしたのうございますぞ!」
ヒメ「それにしても…よく来てくれたな!ゆっくりしていけよ?」
宣教師「ご招待いただき、ありがとうございます」ペコリ
ルーボイ「つかお前が王様になっちゃうなんてなー」パクッ
ヒメ「まだ王子だけどな。実質的な采配はリルラ政務官に任せきりだよ」カチャカチャ
ナラ「…げんきそうでよかった?」ニコッ
ヒメ「大変だったけどな。色々と……」パクッ
宣教師「アントリアが王都を攻め滅ぼさせてると話していたのはハッタリだったのでしょう?」ズズッ
団長「正確にはアントリアが交渉を迫っていたのは事実だが、他国はあまり本気にしていなかったらしい」
ヒメ「勝手に交渉が成立したと思い込んで意気揚々と大樹に向かってたのさ。あの悪徳神官はな」モグモグ
宣教師「…間抜けな話ですね」ゴクッ
ヒメ「自国でさんざんラーダの圧力をひけらかしてきた分、他国にまで自分の力が通用すると傲ってたんだろ?」ゴックン
986: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 21:46:30 ID:8oOAyDp4lU
ヒメ「それよりおまえらはどうなんだ?ちゃんと孤児院をやっていけてるのか?」
宣教師「問題なく…。ですが人数が増えそうなので、まとまった土地が必要ですね」
ヒメ「そうか。じゃあ大臣に頼んどくよ」
宣教師「だ、大臣…!?」ゾワァッ
団長「大臣は大臣でも、あの豚ではないぞ?
あれはすでに領地と資産を没収し、裸一貫で追放しておいたからな」ズルズル
ラム「…あの神官はどうなったのさ?」ムシャッ
団長「奴とアリアスは禁固刑だ。一生、牢外には出さん」チュルリッ
ラム「ふーん…」ゴクゴク
ルーボイ「うんめぇ!ナラ!ステーキだぞ、ステーキ!」ウマウマ
ナラ「…パスタもおいしい!」パァァ
ヒメ「今の内に食っとけよ?庶民は味わえない料理ばっかりだからな!ハハハ!」
ルーボイ「うるせー!自慢すんな!全然ふつーだし!はぐっはふっうまっ」ムッシャムッシャ
ナラ「いじきたない…」シラー
987: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 21:48:25 ID:8oOAyDp4lU
ラム「ところで差別をやめさせるって言ってたけど、全然無くなってないよ?」
ヒメ「え…そ、そうなのか?教団の方で布教の訂正はしてあるんじゃ…?」
宣教師「すでに感覚として染み付いてる為、順応できないのだと思います」
ヒメ「…そ、そうか。でもあと少しの辛抱だ!」
宣教師「なにか対策を練ってらっしゃるのですか?」
ヒメ「あぁ、ホビットを国民として扱う法案を提示してるんだ。
これからは人間の法律を適用させて差別する人間を罰する事にした!」
団長「ワシも憲兵団の団長として民衆にホビットとの融和を勧めておる。
田舎町や細かな村々にも憲兵団の支部を設立し、精力的に活動していくつもりだ!」
宣教師「そうですか。きちんと考えてくださっていたようで安心しました」ニコッ
ヒメ「当たり前だ!あいつの為にも…約束を果たさないと……」
シーン
ルーボイ「あいつの話なんかすんなよ!俺たちに黙って勝手にいなくなった奴だぞ!」
ナラ「そんないいかたないよ!」
ルーボイ「だってそうじゃんか!」
宣教師「……」シュン
988: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 21:50:13 ID:HMvXvjcyOI
ヒメ「…ま、まぁ聞いてくれ。あいつは黙って消えるような奴じゃないだろ?」
ルーボイ「どうだかな!んむっ…むしゃっ!」ガツガツ
ヒメ「きっと何かあるんだ…。今は…会えないかもしれない」
ヒメ「でも…あいつがいつでも帰ってこれるようにしておきたいんだよ」
ヒメ「なんでいなくなったかなんて些末な問題だろ?
大事なのは…あいつが無事でいることだ」
ルーボイ「……」カチャッ
ラム「…たしかにね。もったいないよ。せっかく普通に暮らせる環境ができたのに……」
ナラ「あいたい…」
宣教師「……」
ヒメ「…頑張るよ。この国を変えて、あの親子の居場所を作ってやるんだ」
団長「…そうですな」
ルーボイ「ふん!」
宣教師「(カロルくん…お母様……)」
宣教師「(みんながあなた方の帰りを待っていますよ…。早く姿を見せてください…)」
989: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 21:51:27 ID:HMvXvjcyOI
………半年前………
―――平原(荷車の仮置き場)―――
カロル「…手、離しちゃイヤだよ?」ギュッ
母「もうあたしに構わないで…!」バッ
カロル「…お母さま」タジッ
母「つくづく分かったの…!あたしがどんなに醜い心の持ち主か…!」ガクッ
カロル「お母さまはキレイだよ!」
母「気休めはよして!もう疲れたの!
こんな不毛な悩みを抱えて…いつまで自分を責めたらいいのよ!?」ワシャッ
カロル「自分を責める必要なんてないじゃない!どうして悩むのさ!」
母「……」ワシャワシャ
カロル「…帰ろうよ。もう大丈夫だから」
母「そんなに帰りたいなら一人で帰りなさいよ!?」パシンッ
カロル「いたっ…!?」ヒリヒリ
母「……!あ、あぁ…!あぁぁぁ……」ブルブル
カロル「へ、平気だよ!痛くないから気にしないで?」アセアセ
母「あたし…あたし…最低……」ズーン
母「う、うあ…わぁぁぁぁん……」ズシャッ
カロル「おか…さま…」ピクッ
カロル「(…ボクがいない間、なにがあったの?)」
カロル「(そんなに疲れるくらい、悩み続けてたの?)」
カロル「(お母さまの為に戦って…やっとみんなを止めてきたのに…)」
カロル「(…もう、どうしたらいいのか分かんないよ)」シュン
990: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 21:53:21 ID:HMvXvjcyOI
母「うぅえぇぇ…えぇぇん……」グショグショ
カロル「」ピトッ
母「さわらないでっ!」ビシッ
カロル「ごめんなさい…」スッ
カロル「(やっぱり癒しの力でも…心の傷までは癒せないんだ)」
カロル「(この戦いでなんとなく分かった…。たぶんだけど、ボクに癒しの力があるのは人間とホビットの子だから)」
カロル「(人間とホビットが仲良くすれば癒しの力が生まれて…みんなの心を癒してくれるのかもって…そう思った)」
母「もうたくさんよ!こんな汚いあたしなんて…消えてなくなればいい!」ボロッ
カロル「(それでも一番、大切な人を癒せない…)」
『ボクは…誰かを幸せにできないのかな?
不安なんだ。このままだと…お母さまや宣教師さまも不幸にしそうで……。
もう誰とも離れたくない…。
そうじゃないと…きっと変わってしまうもの。
不幸でも…せめて一緒に不幸になれる距離にいたいよ…』
カロル「(そっか…。ボクの答えなんて…決まってたんだ)」ニコッ
991: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 21:57:31 ID:HMvXvjcyOI
母「誰にも顔向けできない!夫にも!お父様にも!力になってくれた…みんなにも!」クシャッ
母「みんなが坊やを幸せにしてあげようと頑張ってるのに……あたしが坊やに憎しみを背負わせたっ…!」ズリッ
母「最低よ…!あたしは…最低の母親よ…!?」ハァハァ
カロル「」ヒシッ
母「さわらないでって…言ってるでしょう!?」バッ
カロル「……」ジーッ
母「〜〜〜!」ガクガク
母「な、なんなの!なんなのよ!?そんな眼で見ないでちょうだい!?」
母「あたしが悪かったの!あの時……なんでああしてしまったのか!」
母「笑えるわよねぇ!?坊やの前ではいいお母さんでいようって…そればっかり考えて、人間を憎まないでなんて言い聞かせたクセに!」
母「最後の最後に出た本音が『もう我慢の限界だから、あたしの代わりに復讐して』よ!?あー笑っちゃう!?」ガシガシ
母「ムリだったのよ!最初から!ホビットのあたしが憎しみを捨てるなんて…できる筈がなかったのよ!?」
母「はは!ははは!アーッハハハハハハハハ!!!!」
カロル「……」ジーッ
母「ははは…は……」ピタッ
母「そんな眼で見るなって言うのが……分からないの!?」バチンッ
母「はぁ…はぁ…イヤでしょ?こんなお母さん…もう終わりね…!」ブルブル
カロル「……嫌わないよ」ジッ
母「っ……!か、帰りなさい!たくさん友達ができたんでしょう!?」
母「もういいじゃない!いつまでお母さんに甘えるつもり!?」
母「あなたが色んな人間に関わるから!騙されてもやめようとしないから!」
母「あたしばっかり悩んで……疲れるのよ!」バチンッ
カロル「っ…ごめ…なさい」ウルッ
母「謝るくらいなら行ってよ!あたしを独りにさせて!?」
カロル「イヤ…だ……」ポロッ
母「分からない子ね!?」バチンッ
992: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 22:02:07 ID:8oOAyDp4lU
カロル「……」ヒリヒリ
母「…お願いだから。分かって?あたし…こんな自分が大嫌いなの…!」ブワァッ
母「昔からそうだった…。フィズスの優しさに救われながら、フィズス以外の人間を心底憎んでて……」ポロポロ
母「でもフィズスにだけは嫌われたくなかったから…気にしてないふりして、性格のいい子を演じてた…?」ポロポロ
母「それが本当のあたし…だいたい、本気で人間に理解を示してたら…」
母「あなたが宣教師さまの教会を訪れた時に…あんな言葉を浴びせかけたりしないでしょう…?」ヘラッ
カロル「…もし、そうだとしても…ボクはお母さまが大好きなの」スタッ
母「来な…いで!?」バチンッ
カロル「っ…お母さまの子でいさせて…?」ヒリヒリ
母「あたしも…あなたが大好きよ!愛してる!愛しすぎるから…ツラいの!」
母「…穢れた心で触れたくないの!だからこのまま消えさせて!お願いよ!?」
カロル「(これはきっとお母さまの思い込みで…この話を聞いても…誰もお母さまを責めないんだろうなー…)」
カロル「(ホントはこのままみんなの所に戻れば…ボク達は幸せになれるのに)」
カロル「(…でもお母さまはボクのいない間、朝になるまでずっと自分を責め続けてたんだ)」
カロル「(少しでも目を離したら…お母さまはホントにいなくなる…)」
カロル「(それだけは絶対にイヤだ…。だったら…もうこうするしか……)」
993: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 22:05:34 ID:HMvXvjcyOI
母「愛しい…愛しいわ…。わたしのかわいい坊や…?」ポロポロ
母「ごめんなさいね…?ダメな……お母さんで!」ポロポロ
カロル「…もう帰ろうなんて言わないよ?」ニコッ
母「うんっ…それで…いいの!坊やは…みんなと幸せに……!」エグッ
カロル「ボクとお母さまだけでいいや?」ニコニコ
母「うっ…ん…うん……え!?」バッ
カロル「みんなに会うのがツラいんだよね?
言葉にはしなくても…責められてるんじゃないかって感じて落ち着かないんでしょ…?」パシッ
母「は、離しっ…」パッ
カロル「離さないよ」ギュッ
母「……ぶつわよ!」キッ
カロル「うん、ぶっていいよ?」ニコニコ
母「」パシンッ
カロル「……スッキリした?」ジッ
母「うっ…うあっう…あぁぁ……」ブルブル
カロル「…ボクがいるよ」ダキッ
母「はっ…はっ…はひっ…はぁぁぁ……」ポロポロ
カロル「ううん…ボクがいるんじゃなくて……ボクにはお母さましかいないもの」ギュゥッ
母「ダメ…よ……みんな…みんなと……しあ、わせに……」ググッ
カロル「…みんなにはみんなの形があるよ。幸せってそういうものでしょう?」ジッ
母「ぼ…や……」ジッ
カロル「ボクとお母さまの幸せが、たまたまこういう形だったんだよ。きっと?」ニコニコ
母「ひ…うぅぅ…うえぇぇぇ……」ボロボロ
カロル「誰にも会わなくていい場所で静かに暮らそうよ。お母さまが望んでたように?」
母「……!」ハッ
母「(坊やが…アントリアにそそのかされた時に…つい出してしまった本音……)」
994: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 22:11:49 ID:HMvXvjcyOI
カロル「先に言っておくね?」
母「ふぇ……?」ポロポロ
カロル「これはお母さまの為に出した答え…。でもお母さまのせいじゃないよ?」
カロル「ボクが決めたことだから…お母さまのせいじゃない?」
母「あ…たしは……最低の……」
カロル「ねぇ、お母さま…」
母「ひんっ…な、なぁに?」ブルッ
カロル「わくわくするね?」
母「ど……して?」
カロル「何も持たないままどこに行くか…何も決めずにまた一から探すんだもの?」
母「せっかく……作った…お友達……お別れ、するの?」グスッ
カロル「……」
母「それで…いいの?」ジッ
カロル「…いいよ。お母さまの為なら…全部捨てられる?」
カロル「前に言ったでしょ?お母さまさえいてくれたら、ホントは何もいらないんだって?」
母「……坊やぁ!」ギュッ
カロル「…あの時は叱られちゃったっけ?でも今なら…分かってくれるよね?」クスッ
カロル「ひっそりといなくなって…こっそりと生きようか?」サスサス
母「坊やぁ…!坊やぁ…!」スリスリ
カロル「(これでいい…。これでいいんだ…)」
カロル「(みんなはボクがいなくても普通に生きていけるけど…お母さまを守ってあげられるのはボクだけだもの)」
カロル「(幸せも不幸せも一緒に…ね。お母さま)」
母「うあぁぁぁぁん…!」グズグズ
カロル「愛してるよ。ボクの愛しいお母さま」ギュッ
………完………
995: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 22:17:22 ID:HMvXvjcyOI
約2年近くかかりましたがなんとか終わりました…。
フワッとしたオチで申し訳ございません!
読んでくださった方々、チラ見してくださった方々、今までありがとうございました!
感謝の気持ちでいっぱいです!
最後に支援スレの178さん、支援ありがとうございました!
投稿してる最中に1000に到達しそうで尻込みしていたのですが、なんとか完結できました!
では失礼しました!
996: 名無しさん@読者の声:2014/9/6(土) 22:37:00 ID:ToJhnXhMu6
2スレにまたがる壮大なSS、超乙でした!
とても好きな話でしたので終わるのが寂しい…。
997: 名無しさん@読者の声:2014/9/6(土) 23:49:54 ID:wqFlLRguKA
毎日このSSを読むことだけは欠かさなかったのに、おわっちゃったかー
本当にお疲れ様でした!
感動をありがとう!
998: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/8(月) 07:49:23 ID:lnJvZYe7OU
>>996
今まで読んでくださってありがとうございました!
すごく励みになりましたし、走り気味でしたがなんだかんだで終わらせる事ができましたw
寂しく思っていただけるなんて胸いっぱいです…!
本当は50レスくらい余ってたら番外編というか残りの伏線や謎の部分を回収したかったのですが、それが出来なかったのが少し心残りです。
もうこのキャラ達を動かす機会はないんだなーと考えると自分でも寂しいですね。
ともあれ完結できたのは素直に嬉しいので悔いはありません!
ご愛読ありがとうございました!
>>997
毎日読んでくださる方がいたとは…ただただ感謝です!
最後はちょっとハイペースだったのですが、それまでの更新はまばらで…お待たせしていたとしたら申し訳ございません。
読み手の皆さんのおかげで頑張る事ができました!
こちらこそ本当にありがとうございました!
999: 名無しさん@読者の声:2014/9/8(月) 17:10:45 ID:Lp0c8AcZNU
超乙です!
保管庫で1スレ目を発見して
現行追っかけて、ついに完結かぁ
終わってしまったのはさみしいなー
1000: 名無しさん@読者の声:2014/9/8(月) 20:48:45 ID:YuZmBXYrqA
完結おめでとうございます
個人的にバッドエンドなのかハッピーエンドなのかわからない感じなのがさみしくもあります。
いつかまたみんなが笑えたらなと願います
1001: 1001:Over 1000 Thread
| ̄| ∧∧
ニニニ(゚Д゚∩コ
|_|⊂ ノ
/ 0
し´
えっ…と、
1001はここかな…と
∧∧ ∧∧
∩゚Д゚≡゚Д゚)| ̄|
`ヽ /)ニニニコ
|_=` |_|
∪ ∪
∧∧ ミ ドスッ
( ) _n_
/ つ 終了|
〜′ /´  ̄|| ̄
∪∪ ||_ε3
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停止しますた。ニヤリ・・・( ̄ー ̄)
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