1スレ
少年「ボクが世界を変えてみせる」
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10
2スレ
カロル「ボクが世界を変えてみせる」
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10
―――あらすじ―――
それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました
しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました
そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです
戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました
布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました
それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします
2: あらすじが全然浮かばなかったんで適当です! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:12:26 ID:N4jwCkModw
〜〜〜1スレ(教団編)のあらすじ〜〜〜
さてさて、ここからは最近のお話
とある森にホビット族と人間の間に生まれた一人の少年がおりました
彼の名はカロル
ホビット族の母(マリー)と飼い犬(マルク)、二人と一匹で森に暮らしています
彼は恵まれない環境に生まれながらも快活に育ち、差別的な人間に対しても好意を持って接するなど好奇心溢れる性格の持ち主でした
そんな彼の分岐点となったのは一人の人間との出会い
隠れ棲んでいた森をこっそりと抜け、変装して人間の村に入ったのが全ての始まりでした
出会った相手は教団の布教者で最も位の低いとされる女性の宣教師
彼女もまた布教者としてホビットを貶める人間の一人でした
しかしカロル親子に襲い掛かる非情な差別を目の当たりにした事で、やはり教団の活動は間違っていると確信
マリーから打ち明けられた真実を聞いた宣教師は教団の布教そのものがデタラメであった事も知りました
この時から宣教師はカロル親子を助け、ホビットへの差別を無くそうと誓います
しかし教団や村人、謎の旅人が差し向ける魔の手によって親子と宣教師は引き離されてしまいます
あらゆる策略や野心に阻まれた3人の行く先ははたしてどこへ向かっているのでしょうか
救いのない世界に幸せを求める少年の物語が始まります
3: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:14:26 ID:c.I12gaZzE
〜〜〜2スレ(王国編)のあらすじ〜〜〜
教団に捕らえられた親子と宣教師は司祭の罠にはまり、カロルが癒しの力を持っていた事が暴かれました
その事実は長年眠らせていた司祭と神官(アントリア)の陰謀を加速させます
優しい言葉で宥められ、豪華なもてなしを受けていく内に親子は教団を信用してしまいます
そして計画を終えたら差別を無くす活動をするという約束で協力する事にしました
……計画の内容は枯れた伝説の大樹に癒しの力を注いで蘇らせるというもの
しかし計画の裏には恐ろしい真実が隠されていたのです
アントリアの策略によって計画は順調に進み、用済みになった親子と宣教師は始末されそうになりましたが……
事態は思わぬ方向へ二転三転し、王国、教団、ヘマトバザール(ホビットを拷問して見世物にする組織)、ホビット族、四つ巴の大きな争いに発展していきました
憎しみと争いの果てに人とホビットは多くの犠牲を払います
どちらかが滅びるまで血を流し続けるのが果たして正しいのか、興奮した両者には分からなくなってしまいました
明らかにされる真実とはなんなのか
大樹とホビット、人の歴史を紐解く教団の野望とは
人とホビットは互いを許し、共存する事が出来るのでしょうか
そして全てを乗り越えた先に本当の幸せが訪れるのか……
答えは未だに出ておりません
ただ微かに……陰から光る希望の兆しが新たな運命を予感させます
…………………
4: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:17:03 ID:c.I12gaZzE
―――大聖堂(礼拝堂)―――
ゾロゾロ ゾロゾロ
ミシング「はいはい!みんな整列したー?そろそろ始めちゃうよー!」
ピシッ
ミシング「うんうん!よくできました!」
宣教師「いやいや、あなたも整列しなさい。
なにどさくさ紛れに一人だけ前に出てるんですか?」
ミシング「ぷくー!ケチー!」プクゥ
宣教師「まぁかわいい。ほら、気が済んだら並びなさい」シッシッ
ミシング「ちぇー!ミシングちゃん、副会長なのに!」スタスタ
宣教師「そんな役職作ってませんよ」
ミシング「はい、並んだよー!」ピシッ
宣教師「コホンッ……ではおはようございます」ペコリ
教徒's「おはようございます!!!!」
宣教師「」ビクッ
ミシング「どしたのー?」
宣教師「いえ、皆さん元気な発声をなさるので……」
ミシング「いい加減慣れなよー?自分で決めたんでしょう?『基本はあいさつ!』って?」
宣教師「そ、そうですね…。では気を取り直して、もう一度……おはようございます!」ペコリ
教徒's「おはようございます!!!!!!!」ペコリ
宣教師「」ビクッ
ミシング「……ダメダメだねー」シラー
5: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:18:44 ID:N4jwCkModw
宣教師「本日は遠路遥々お越しくださり、まことにありがとうございます」ペコリ
パチパチ パチパチ
宣教師「……皆さんは人とホビットの和睦が成立してから1年の時が経ったのをご存知でしょうか?」
シーン
宣教師「現在では私達もこれまでの活動を改め、布教内容をホビットとの融和を説く物に変えています」
宣教師「布教に励む皆さんのたゆまぬ努力と熱心な説得が実を結び、少しずつではありますが以前ほどの差別は減ってきたように思います」
宣教師「ですがいくつか気掛かりな事がありまして……。
それは私が前司祭様より引き継いだ各地の孤児院……」
宣教師「出来る限り時間を作って巡るようにしていますが…不可解な事にどの院でもホビットの姿をあまり見かけません」
宣教師「気になったので探らせてみたところ、どうもホビットの受け入れを拒否…。
もしくは明らかな嫌がらせ行為などをして出ていくように仕向けているとか?」
ザワッ
宣教師「私の手元に調査結果を詳細に記した報告書がありますので、その中からいくつか読み上げていきましょうか」カサッ
院長's「えっ」
6: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:20:20 ID:N4jwCkModw
宣教師「たとえばそうですね…?
同じ人間の子には一日三食しっかり与えるのに対し、ホビットの子たちには水一杯しか与えない。
それも入浴後の残り湯を冷ました物だとか」ペラッ
ザワザワ ザワザワ
宣教師「えぇ…と、これもまた驚きですね?
『教団がお前らを許してもみんなはお前らを許さない』と正座させて説教した上で人間の子たちに一人ずつホビットの嫌いなところを言わせる。
ホビットの子たちが正座したまま目の前で罵倒されるのを見て、院の職員たちは酒を飲んで高笑いしている、と。
そもそもこんな方々がなぜ孤児院に務めようと思ったのか、甚だ疑問ですね?」
院長1「……!」プイッ
宣教師「他には子供たちが集団でホビットの黄色い瞳をからかい、泣かせていたのを見てみぬフリ」
院長2「」ビクッ
宣教師「神父が連れてきた行き場のないホビットの幼子を後でこっそり追い出すなど……。
まだまだありますがキリがないので割愛させていただきます」
院長's「」ホッ
宣教師「皆さんはこのような報告を受けて、どのようにお考えですか?」
シーン
宣教師「今日集まっていただいたのは主に各地の孤児院の関係者なのですが、なんとも思いませんか?」
ザワザワ ザワザワ
宣教師「私に言わせれば…なにをやってるんですか、と。その一言に尽きます」
7: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:22:06 ID:N4jwCkModw
宣教師「改めて伺いますが…あなた達はなにをやってるんですか?」
ザワザワ ザワザワ
ミシング「はーい!大司祭教祖法王様ー!」
宣教師「なんでしょう?」
ミシング「あれれ?ツッコまないの?」
宣教師「えぇ、和ませる気はありませんので」
ミシング「…探らせたってどうやって調べたんですかー?」
宣教師「知人のホビットを多数募り、各院に潜入させました。
先ほどの報告は彼らから送られてきた手紙による物です」
ミシング「信用ないねー」
宣教師「信用を得たければ信頼に足る行いをすればいい。違いますか?」
ミシング「違わないけどさー。なんかあたしは好きじゃないなー?そーゆーの?」
宣教師「……事実、ここに集められた方々は報告に該当していた院の関係者です。
とりあえず説明を求めてみましょうか。なにか言い分のある方は挙手を?」
ミシング「はーい!あたしはそんな事してないでーす!」
宣教師「知ってます。あなた呼んでもないのに勝手に来たんでしょう?」
ミシング「ふぅ〜!疑惑が晴れた!じゃあ次の人ー?正直にどーぞ!許してもらえるかもよ?」
宣教師「(なんであなたが仕切るんですか…)」ムスッ
8: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:24:46 ID:c.I12gaZzE
職員1「は、はい!」
宣教師「どうぞ」
職員1「わ、私は院長がそんな悪質な事をやっていたなんて知らなかったんです!」
院長1「はぁ!?なに言ってんだよ!?」
宣教師「あなたの発言は許可してませんよ。勝手に喋らないように?」
院長1「し、しかし……!」
宣教師「悪質な行為とは主にどんな事でした?」
職員1「え…と、院長が腹いせに孤児を殴っていた時に止めに入ったホビットを気に入らないと追い出しました!」
宣教師「……いくつか報告に上がってましたね。
中には孤児そのものを虐待している院もあると…その件は後で追及するつもりでしたが」
院長1「ち、違います!誤解です!」アセアセ
宣教師「ところであなた、知らないとおっしゃったにも関わらず、なぜその場面について話せるのですか?」
職員1「え…!?」
ミシング「(あたまわるいなー)」
職員1「そ、それはそのぅ」マゴマゴ
院長1「こ、こいつです!こいつがやってたんです!私はなんにも知りません!」
職員1「はぁ!?てめっふざけんなよ!?」
ミシング「あららのら?ケンカしちゃったねー?」
ギャーギャー
宣教師「…もういいです」
職員1&院長1「え?」
9: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:29:13 ID:N4jwCkModw
宣教師「話は変わりますが…私は誰もが平等に幸福を授かれる権利があると思っています」
宣教師「それは生い立ちや境遇に関わらず…種族や人種にも問われない唯一の権利」
宣教師「僅かでも恵まれた環境にいる者が自分より、ほんの少し恵まれない者に分け与えるだけでいいのです」
宣教師「たとえば着る物すら無く裸一貫で寒さに震える人を見かけたらどうします?」
院長1「?」
宣教師「衣服を何着も持っているのなら、その内の一着を差し上げられませんか?」
職員1「……」
宣教師「あなた方の身近にいる人が深く心を傷付けて落ち込んでいたら?」
ミシング「…あたしだったら話を聞いて慰めるかなー」
宣教師「そうですね。声をかけてあげるだけでも励みになると思いますよ?」
ザワザワ ザワザワ
宣教師「物でなくてもいいのですよ。
互いを助け、互いを大事にしていければ私達の生きる場所は少しずつ豊かになるでしょう」
宣教師「勝手ながら…生まれ変わった私達、教団はその理念に基づいているものだと思っていました」
職員2「か、簡単に言いますけど…大変なんですよ、こっちだって!」
院長2「そうですよ!人の孤児でさえ、溢れ返りそうなのにホビットまで受け入れてたら……」
院長3「子供達がそこいら走り回って汚すから掃除しても綺麗にならないし、夜中とかに色々思い出して泣き出す子もあやさなきゃだし……忙しいんですよ、寝る時間もない!」
宣教師「……だから虐待したり追い出したり門前払いするのですか?」
シーン
宣教師「それで心が晴れると言うのでしたら、どうぞ立ち去ってください?」ニコッ
10: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:32:32 ID:N4jwCkModw
オロオロ オロオロ
宣教師「私もあなた方の気持ちが少しだけ理解出来ます。
人には好き嫌いがあり、どうしても感情に流される場合もあるでしょうね?」
院長4「そ、そうですよ!我々もしかたな………」
宣教師「私はあなた方のように卑劣で陰湿で粗暴で傲慢な人が大嫌いです?」ジロッ
院長4「は…!?」
宣教師「もし私が感情に流されて衝動的に動く性格であったなら……今すぐあなた方を全員、憲兵団に突き出しているところでした?」
職員4「そ、そんなことで憲兵が……」
宣教師「では問答無用であなた方を失脚させましょうか?
こんな事の為に協賛金が使われていると知れば賛同者の方々もお怒りになるでしょうし?」
院長5「こ、困りますよぉ…。生活の保障がなくなってしまいます…!」
宣教師「困るのでしたら、なぜ私にこんな事を言わせるんですか?」
職員5「す、すみませんでしたぁ!許してください!」アセアセ
宣教師「口先だけで謝っても許しませんよ。だいたい私に謝られても被害を被っているのは子供たちですから」
職員6「も、もうしません!絶対に!」
宣教師「"もう"じゃないんですよ?"もう"じゃ?
あなた方がしてきた虐待はすでに子供たちの記憶に残っているのですから?」
院長6「なんでもしますから!」
宣教師「なんにもしなくていいんですよ。ただ普通に子供たちに接してあげればいいんです?」
ミシング「(……うーん、さすが宣教師!あのアントリア神官を言い負かしただけあるわ!ちょっと言い方キツいけど!)」ウンウン
11: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:34:32 ID:N4jwCkModw
宣教師「正当な言い分があれば相応の判断を考慮するつもりでしたが…どなたも見事に保身を重視していますね。反省が見られません?」
ミシング「じゃあ全員、憲兵に突き出しちゃえば?」
ヒィィィィィイイイ
宣教師「……そうですね、これまで助けを求める事も出来ず、辛く苦しい時間に耐えてきた子供たちの気持ちを思えば……それがいいのかもしれません?」ジロッ
院長1「おねおねねお願いししします!それだけは勘弁してください!?」
宣教師「…性的虐待を加え、酒や煙草を覚えさせている院もあると聞きました」
院長7「」ビクッ
宣教師「その子たちがこれから生きていく上で……何回、その記憶に苦しめられるのか」
ミシング「さいっ…てー!!誰よ、そいつ!?」ムカッ
宣教師「私は聖職者として己を恥じています。
たった数十枚の手紙を見ただけで……決して抱いてはならない感情を覚えました」
宣教師「わざわざ口には出しませんが……察していただけますよね?」
院長's「」ガクガクブルブル
宣教師「……はぁ、ではあなた方に結論を言い渡します」
12: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:35:56 ID:N4jwCkModw
宣教師「性的虐待と暴力に関わっていた者は自首しなさい。
ちなみに逃亡を図っても無駄ですよ。この部屋の外で憲兵の方々に待機していただいてますから」
ヒィィィィィイイイ
宣教師「それ以外の比較的軽い嫌がらせを行っていた者は今まで通りで結構です」
ホッ ホッ ホッ
宣教師「今回に限り、ですがね。お忘れなきようお願い致します」
ザワッ
宣教師「言い分は分かりますよ?人手も不足していますし、やはり疲れも溜まるでしょう…?」
宣教師「あくまで私の理想は極論であって……誰しも目指す先が同じとは限らない事も承知しています」
宣教師「ですが世の中には様々な事情があって苦しんでいる人たちがいるのも確かで……。
この団体はそういった方々を支援し、志を同じくする人々の施しや賛同頂いた富裕層の協賛金で成り立っています。
せっかく善意を寄せてくださっても私達がこの有り様では助け合ってるとは言えません?」
宣教師「もう一度、よく考えてみてはいかがでしょうか。
初心に帰って……自分たちが支えている子供たちと向き合ってみてください」
教徒's「……」
院長's「……」
宣教師「話は以上です。門前に馬車を付けておきましたので各々、道草せずに持ち場へ戻るように」
ミシング「はーい!じゃあどうしょうもないろくでなしさん達は憲兵さんとお話するよー!?」パッパッ
13: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:42:04 ID:N4jwCkModw
―――大聖堂(広間)―――
宣教師「はぁ…」
ミシング「お疲れ!良かったじゃーん?」
宣教師「……」
ミシング「どしたの?」
宣教師「私には荷が重いですよ…」
ミシング「そー?よくやってると思うよ?」
宣教師「…どうでしょうね。
相変わらずホビットを蔑視する人はいますし、孤児院の問題も無くなりませんし、里親もなかなか現れませんし……」
ミシング「まだ始まったばっかでしょー?」
宣教師「予算もカツカツですよ……各孤児院への分配、布教者に保障する路銀、教典も無料配布にしましたから」
ミシング「援助してくれる富裕層も少ないもんねー。お布施も撤廃しちゃったから資金力も下がるし」
宣教師「国から助成金が出ているとはいえ、司祭様はどうやってやりくりしてたのでしょう…。
やはり持ち前の倹約術でなんとかしてたんですかね」
ミシング「…勧誘して入団料とか取ったり、よく分かんないお札とか売ったりしてたみたいよー?宣教師もそうすれば?」
宣教師「しませんよ。信者の方々には生活があるんですから無駄なお金を使わせたくありません」
ミシング「じゃあがんばるしかないよねー」
宣教師「はぁ……そもそも王子が私に教団を引き継げなどと命じるから」ブツブツ
ミシング「王子は差別を完全に無くしたがってるから宣教師が適任だって判断したんじゃない?」
宣教師「……はぁ」
14: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:44:00 ID:c.I12gaZzE
〜〜〜回想(王宮)〜〜〜
ヒメ「わざわざ来てもらって悪いな。まぁ楽にしろよ」
宣教師「いえ、この前は楽しい一時をありがとうございました。ルーボイ君たちも喜んでいましたよ?」
ヒメ「そ、そうか!ま、まぁ王族であるオレがわざわざもてなしてやったんだから当然だな!」デレデレ
宣教師「(相変わらず分かりやすい子ですね)」
ヒメ「な、なんだよ?その目は?」ジトー
宣教師「なんでもありませんよ?」ニコッ
ヒメ「…まぁいいや!それで今日、お前を呼んだのはさ。この間言ってた土地の件なんだけど……」
宣教師「もう見つけてくださったんですか?」
ヒメ「いや…一々新しい土地を用意するより元からある土地を再利用した方がいいかと思って」
宣教師「と、言いますと?」
ヒメ「教団で管理してた孤児院が結構残ってるからさ、そこ使えよ?」
宣教師「えぇっ!?」
ヒメ「なんだよ?不服なのか?全体で言えば城一つ分の土地が手に入るんだぞ?」
宣教師「た、確かに教会では手狭だと言いましたが……」
ヒメ「あぁ、そうそう。教団で使ってた各地の教会も使わせてやるよ!」
宣教師「全国の教会まで!?いやいや、私一人ではそんなに手広く管理できませんよ!?」
ヒメ「人手も要るだろうから現教団の教徒たちにも協力させていいぞ!」
宣教師「……!そ、それって…!?」
15: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:45:28 ID:c.I12gaZzE
ヒメ「手っ取り早く言うとだな、お前が教団の長になって役目を引き継げ」
宣教師「無理ですよ!?私のような一宣教師が……」
ヒメ「オレは身分には左右されない。庶民でも有能な奴はいるし、貴族はもっぱらバカばっかりだ」
宣教師「わ、私だって別に……」
ヒメ「お前は正義感が強いし、物事を正しく見極めようとする努力も惜しまない。
大抵の奴はお前を偽善者と罵るだろうけど……それを苦にしない強さを持ってるじゃないか?」
宣教師「買い被り過ぎですよ…」
ヒメ「そうか?僕はお前以外に適任者はいないと思ってるぞ?」
宣教師「だとしたら宛が外れていますよ。ありがたい話ですがお断り……」
ヒメ「この前の会、楽しかったよな」
宣教師「? は、はい。とても……」
ヒメ「お前らご馳走を腹一杯食ったっけ?」
宣教師「」ギクッ
ヒメ「あれだけの料理を振る舞うのにいくら使ったかなー?あとで大臣に計算させなきゃ?」
宣教師「…ひ、引き受けます」
ヒメ「は?なに?」
宣教師「…教団を引き継ぎますよ!!!」ガアーッ
ヒメ「!?」ビクッ
宣教師「それでいいんでしょう!?」
ヒメ「う、うん、いいよ?」ビクビク
16: 名無しさん@読者の声:2014/11/16(日) 20:55:36 ID:pEIpXRf4gU
おおお…!まさかの完結編とは!
支援支援支援支援!
17: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 21:52:50 ID:Qd7LFFvBs.
>>16
読者スレを覗いたら大変嬉しい感想を頂いたもので……書こう!と決意しました!
主人公なのにカロルはまだ当分出さない予定ですがw
今回もまた無駄に長くなりそうですがお付き合い頂けたら幸いです!
感謝感謝感謝感謝!
18: 名無しさん@読者の声:2014/11/16(日) 23:37:34 ID:mQBJgoVWMo
読者スレの571でしたら、わたしですが…w
まさか続編出してくれるとはwktkが止まりません!
宣教師さんはたくさんの困難にぶつかりそうですね…w
19: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/17(月) 12:46:48 ID:zZ0LLNhnzs
>>18
あなたでしたか!遅れてしまいましたが感想ありがとうございました!
おかげさまで創作意欲が再燃致しましたw
宣教師は現在進行形で苦労中ですねw
まだまだ頑張ってもらうつもりですw
20: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/17(月) 21:28:03 ID:4HN.k5LX7c
―――辺境の孤児院―――
宣教師「あぁ…やっと帰ってこれました」クタクタ
ミシング「二週間ぶりだっけ?」
宣教師「えぇ…一新した教典の原本、約30冊の内容を吟味して採用、不採用を分けてみたり…」
宣教師「その合間に各院の綻びを探らせたり……。
実際の場で布教者たちの教えがどのように行われているか確認して指導に当たったり……」
宣教師「それらの活動を見て気付いた不備に対策を練って文書にまとめたり……」
宣教師「幹部の皆さんと幾度も協議して膨大な予算案を検討したり……」
宣教師「協賛金を募る為、各地に足を運んで富豪や王都の貴族と食事の場を設けて交渉したり……」ブツブツ
ミシング「よしよし!がんばったねー!とりあえず入っちゃおっか!」ナデナデ
宣教師「……そうですね」ガチャッ
21: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/17(月) 21:29:25 ID:Y7BaV1vgDU
宣教師「ただいま帰りました!」
シーン
宣教師「…あれ?」
ミシング「きゃー!きゃー!誰もいない!これは事件の匂いがするよー!」
宣教師「……どこかへ出掛けてるんですかね?」
ミシング「えー?子供たちだけで?」
宣教師「ルーボイくん!ナラ!ラムくん!いないんですか!」スタスタ
シーン
ミシング「……?他の子たちもいないっぽいね?」
宣教師「…あなたは一階を探してみてください。私は二階を見てきます」タンタン
ミシング「あいあいさー!かくれんぼなら負けないぞー!」スタスタ
22: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/17(月) 21:31:14 ID:4HN.k5LX7c
宣教師「いましたか?」
ミシング「書斎にもいないし大きい家具の中とか庭まで探してみたけど……ちょっと見つかんないねー」
宣教師「まさかとは思いますが……私達の目を盗んで森に遊びに行ったのでは」
ミシング「おてんばだねー!夕飯までに帰ってくればいいけどー?」
宣教師「探しに行かないと…!」
ミシング「…え?帰り待ってればいいじゃん?」
宣教師「こんな暗い時間に子供たちだけで森を彷徨かせるのは危ないでしょう!」ガチャッ
ミシング「心配しすぎじゃなーい?
あの子たちだって奥までは行かないだろうし、この辺に危険な獣もいないんだから……」
宣教師「何かあってからでは遅いんですよ…!あなたは留守番お願いします!」ダッ
ミシング「…行っちゃった」
ミシング「(宣教師ってばカロルくんがいなくなってから変わったなぁ。ゆとりが無くなってる……)」
ミシング「あーあ……ミシングちゃん、せっかく色々準備してたのにぃ〜お子ちゃま達もなにしてんのかなぁ?」
23: 名無しさん@読者の声:2014/11/17(月) 21:32:45 ID:Yvo8yJ8Q8A
連載された初めの頃から毎日見てましたがまさか続きがくるとは!!!
これで辛いことも乗り越えられそうです!
24: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/17(月) 21:33:46 ID:Y7BaV1vgDU
―――森―――
ヒュールルルー
ルーボイ「……あれ、どっちだったっけな」スタスタ
ナラ「ルーボイ…まよったの?」
孤児1「えー!」
孤児2「ルーボイ兄ちゃんダッセー!」
ルーボイ「うるせぇ!?迷ってなんかねーやい!?」
ナラ「おそら、まっくら……かえんないと…」
ルーボイ「分かってるよ…!だから今、帰ってんだろ!?」
孤児1「おなかすいたー」
孤児2「ねむたーい」
ルーボイ「あぁもっ!うるせぇな!?」
グルルルルル グルルルルル
ナラ「」ビクッ
ルーボイ「……ん?」クルッ
25: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/17(月) 21:35:18 ID:Y7BaV1vgDU
野犬1「」グルルルルル
野犬2「」グルルルルル
野犬3「」グルルルルル
孤児1「あー!ワンワンだー!」キャッキャッ
孤児2「ワンワン!ワンワン!」キャッキャッ
ナラ「だ、ダメ!あぶないよ!」ガシッ
ルーボイ「な、なんだよ!文句あんのか!?」
野犬3「」ギロッ
ルーボイ「ひぃっ!」ブルッ
バウッバウッ バウッバウッ
孤児1「ワンワン……」シュン
孤児2「ナラ姉ちゃん、こわいよー…」ダキッ
ナラ「だ、だいじょぶ…だよ?」サスサス
ルーボイ「そ、そうだぞ!俺が守ってやっからな!」アセアセ
バウッバウッ バウッバウッ
ルーボイ「(こ、こんなやつら…!マルクに比べりゃチビだし!ビビってねーし!)」ブルブル
野犬3「がうっ!」バッ
ルーボイ「うおおお!!」バッ
26: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/17(月) 21:37:00 ID:Y7BaV1vgDU
―――辺境の孤児院―――
グツグツ コトコト
ミシング「みんなまだかにゃー。カボチャのスープが煮えちゃうよ」カチャカチャ
ガチャッ
ミシング「んにゃ?」
ラム「ただいま」
ホビット1「遅くなってごめん!買ってきましたよ!」
ミシング「あ、四人ともおかえりー!こんな時間まで何してたのー?待ちくたびれちゃったじゃーん!」
ホビット2「だって……また町の人間が絡んできたり、買い物してても並んでるのに順番無視してきたり…」
ホビット3「予約してたステーキ肉も無いとか言われて…」
ミシング「…そっかー。ミラルドの町も布教を進めてるけど…難しいねー」
ラム「…それよりみんなは?」キョロキョロ
ミシング「どっか遊びに行っちゃったみたい?」
ラム「え?まだ帰ってないの?」
ミシング「あれれ?ラムくん知ってる感じ?」
ラム「うん…。ルーボイがお昼にみんなを連れて森に行ったけど……?」
ホビット1「キレイなお花畑があるから、そこに行こうって言ってたよね?」
ホビット2「そうそう」
ミシング「お昼って…もう夕方じゃん。ホントに迷子だったりして?」
ラム「僕らで探しに行こうか?」
ミシング「うーん…いーよ?宣教師が探しに行ったし!わたしたちは準備しよ!」
ラム「準備ってルーボイたちが…よく見たらなんにも飾り付けしてないね?」キョロキョロ
ホビット1「帰ってからやるつもりだったんでしょう!僕たちでやりますか!」
ホビット2「そうしよう!」
ホビット3「宣教師さんが帰ってくる前に準備しないと!」
ミシング「そゆことー!わたしは買ってきた食材、調理しちゃうから飾り付け頼んだよー!」
27: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/17(月) 21:41:39 ID:Y7BaV1vgDU
―――森―――
スタスタ スタスタ
ルーボイ「いぢぢ……」ズキズキ
ナラ「ルーボイ……へいき?」
ルーボイ「へっちゃらだっつの!あいつら俺にビビって逃げてったぜ!」ニシシ
孤児1「こわいよー!かえりたい!」グスッ
孤児2「ねー!かえれるの!?」グスッ
ナラ「うん…かえれるよ?がんばってあるこーね?」ナデリ
ルーボイ「いってぇ〜…あいつら、スゲー咬むんだもんな…?」ズキズキ
宣教師「あなた達!?」タタタッ
ルーボイ「あ、宣教師様!」
宣教師「やっと見つけましたよ!」ザッ
孤児1「いんちょー!!」バッ
孤児2「えーん!ワンワンこわかったのー!」バッ
宣教師「えぇ、えぇ、もう大丈夫ですからね?」ダキッ
ルーボイ「宣教師様!もう帰ってきたのかよ!?」
宣教師「帰ってきたのかよ…じゃないでしょう!!」ガァーッ
ルーボイ&ナラ「」ビクッ
宣教師「こんな時間まで子供だけで出歩くなんて何を考えてるんですか!?」
ナラ「ご、ごめんなさい」シュン
ルーボイ「……!」グッ
28: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/17(月) 21:45:32 ID:4HN.k5LX7c
宣教師「言い出しっぺは誰です!?」
孤児1「ルーボイおにいちゃんだよー」
宣教師「ルーボイくん…ダメでしょう!広い森で迷ったり獣に襲われたりしたらどうするんですか!?」
孤児1「ワンワンがね、こわかったのー」
孤児2「ルーボイ兄ちゃん、迷子になったよー」
宣教師「それ見たことですか!」
ナラ「せ、せんきょうしさま!ちがうの!ルーボイは……」
ルーボイ「いいよ、ナラ!」
ナラ「でも……」
宣教師「…な、何かあるんですか?理由があるのでしたら、ちゃんと説明してくださらないと…」
孤児1「あのねーもりにおは……」
ルーボイ「わー!!ごめん、宣教師様!俺がみんなを無理やり誘ったんだ!」ペコッ
宣教師「……?」
ルーボイ「ほんとにごめん!みんなもごめんな!」
孤児2「いいよー」
ナラ「わたしもとめなかったから…」
宣教師「ふふ…キミが素直に謝るなんて…どういう風の吹き回しですか?」ニコッ
ルーボイ「悪いことしたら謝る!じょーしきだし!」エッヘン
宣教師「クスッ…帰りましょうか?」
孤児1&2「かえろー!!」
29: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/17(月) 21:47:58 ID:Y7BaV1vgDU
―――辺境の孤児院―――
ガチャッ
宣教師「遅くなってすみません、子供たちが見つかり……」
ミシング「いっせーのーせ!!」
宣教師「」ビクッ
ミシング&ラム&ホビット1、2、3「お誕生日!!おめでとう!!!!」
宣教師「……!?」
ルーボイ「おめでとう!宣教師様!」パチパチ
ナラ「おめでとう!」パチパチ
孤児1、2「おめでとー!!」パチパチ
宣教師「え?え?」チンプンカンプン
ミシング「みんなで準備してたんだよー?宣教師のお誕生日会!」
宣教師「わ、私の誕生日…?」
ミシング「まぁ1週間くらい過ぎちゃったけどねー!宣教師ったら忙しいんだもん!」
宣教師「こ、この飾りは皆さんで…?」
ホビット1「さっき急いでやったんです!」
ホビット2「折紙を輪っかにして繋げたり、お花の形にしてみたり……安い飾り付けですけど」
ホビット3「画用紙を糊で繋げてみんなのメッセージを壁掛けしたんですよ!」
【(祝)22才!おめでとう☆】
【おつかれさま!いつもありがとう!】
【いんちょーだいすき!またあそぼね!】
【宣教師様はホビットの希望!】
宣教師「(ひ、一人一人が手書きのメッセージを……)」ポカン
宣教師「」ウルウル
30: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/17(月) 21:52:09 ID:Y7BaV1vgDU
宣教師「(よく見たらテーブルに料理が並んでる…)」
ズラァァァ
ミシング「ふふーん!ミシングちゃんの手料理だよー?へそくりはたいて奮発したんだからー!?」
ルーボイ「あ!ステーキは!?」
ホビット1「ステーキ肉…売ってもらえなくて…クラクネスのステーキなら……」
ルーボイ「えー!?川魚かよ!?」
ミシング「リンゴのジュースと白菜のシチューもあるよー!
あまーいふかし芋もあるし豪華絢爛ってやつだよねー!」
孤児1「ジュース!ジュース!」
孤児2「おイモー!」
ルーボイ「ステーキ食いたかったのに!」
ミシング「サプライズもあるんだなーこれが?」ニヤリ
ルーボイ「サプライズ?」
ナラ「…せんきょうしさま」
全員「え?」チラッ
宣教師「っ…!っ…!」ポロポロ
全員「!?」ビクビクゥッ
31: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/17(月) 21:53:34 ID:4HN.k5LX7c
宣教師「ずび…ずいまぜん…!わらひ……ひぐっ」ポロポロ
ミシング「……」ニコッ
孤児1「いんちょ?イタイタイなの?」
孤児2「いたいのいたいの飛んでけー!」ナデナデ
宣教師「っ…!へぇ…きでずよ…?」ニコッ
ルーボイ「なっきむっし!なっきむっし!」ワイワイ
ナラ「ふふ!なきむしー!」ワイワイ
宣教師「き、キミたちが…泣かせ……あぅぅ!」ポロポロ
ラム「あはは!いつまで泣いてるのさ?ご馳走が冷めるよ?」クスクス
宣教師「こんな…こんな嬉しくて…泣き止めなんて……ひどい仕打ちにも程があります!」
ミシング「じゃあ泣き虫はほっといて席に着いちゃおっか!」
ガタッ ガタッ ガタッ ガタッ
宣教師「ぞんなぁ…!ひどすぎます…!」ポロポロ
32: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/17(月) 21:58:15 ID:Y7BaV1vgDU
宣教師「うぅ…ひんっ…!」グズグズ
ラム「泣きすぎ……」シラー
宣教師「止まらないんですもん!しょうがないでしょう!?」ポロポロ
ミシング「はーい!サプライズの特製ケーキだよー!」トンッ
ホビット1「ささ!火を吹き消して!」
ホビット2「蝋燭は一本しかないですが…22本あると思って!」
宣教師「……!ふぅーっ!」
シュッ
ワーワー! オメデトー!
宣教師「うあああん…!!」ブワァッ
ルーボイ「まだ泣くのかよ!?」
ナラ「ルーボイ…あれ!」チョンチョン
ルーボイ「あ、そうだ!」ゴソゴソ
宣教師「まだ…なにか?」グズグズ
ルーボイ「へへっ!この為に森に行ったんだぜ!」ゴソゴソ
33: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/17(月) 22:02:44 ID:Y7BaV1vgDU
ルーボイ「くらえ!」バッ
宣教師「ひっ…!……は、花?」キョトン
孤児1「ルーボイおにいちゃんとみんなでとってきたのー!」
孤児2「カリアムのお花!」
宣教師「……!」ハッ
ナラ「ここにかえってきたとき…かびんにいけてたカリアムのはな、かれてておちこんでたよね?」
ルーボイ「へへーん!プレゼントなんだぜ!」
宣教師「(出会った当初にカロル君がくださった花……留守にしてる間に枯れてしまったんですよね…)」ズーン
ミシング「黙っちゃってどうしたのー?」ウリウリ
宣教師「あ、いえ…嬉しいです!ありがとうございます!」
ラム「ふふ…喜んでもらえて良かったね?みんな?」
ホビット3「うんうん!こっちまで嬉しくなりますよ!」
ルーボイ「じゃあ食おうぜ!」
ミシング「はいはい!いっぱいおかわりしちゃっていいからねー!」
孤児1「ジュース!ジュース!」
ラム「はいはい、入れてあげるからグラス貸して?」
ナラ「ミシングさん…ケーキじょうず!」
ミシング「でしょでしょー!?」
ワイワイ ワイワイ
宣教師「(どうしましょう…今日は人生最高の日です…!)」ジーン
34: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/17(月) 22:06:03 ID:4HN.k5LX7c
〜〜〜〜〜〜
ミシング「みんな寝ちゃったねー!がんばって準備したから疲れたのかにゃー?」ジャブジャブ
宣教師「そうですね…。私なんてまだちょっと泣きそうです…」カチャカチャ
ミシング「あはは!洗い物やっとくから宣教師も寝ていいよー?疲れ溜まってんでしょー?」ジャブジャブ
宣教師「…あんなに活力を頂いてしまったら疲れなんて吹っ飛びますよ」
ミシング「だねー!あの子たちがやりたいって言い出したんだよ?」
宣教師「そうなんですか?」
ミシング「うん、3ヶ月くらい前かなー。ルーボイくんのお誕生日会したでしょ?
終わった後にルーボイくんとナラちゃんとラムくんがわたしのとこ来て宣教師様の誕生日はいつ?って聞いてきたの」ジャブジャブ
宣教師「…そんなに前から?」
ミシング「なんだかんだ忙しい合間を縫って子供たちの誕生日会開いてるじゃん?
恩返ししたかったんだと思うよ?」キュッキュッ
宣教師「恩返しなんて…むしろ感謝するのは私の方ですよ」
ミシング「ラムくんの時なんか祝ってもらった本人がびっくりしててリアクション取れなくてさ!
代わりにホビットの3人が『誕生日を祝ってもらえるなんて初めてだー』って大喜びしてたじゃん?」
宣教師「そうでしたね…。あの後、共用の寝室で普段はクールなラム君が枕に顔を埋めて泣いていたとナラから聞きました」
ミシング「ナラちゃんもだけどねー!『今まで祝ってくれる人なんていなかった』って大泣きしてたもんねー」カチャカチャ
宣教師「あの子もまた…実の親に捨てられ、教団でも仲間はずれにされ…苦労してきましたからね」
ミシング「昔はどもっちゃって人と喋れなかったんだっけ?わたしが初めて会った時もたどたどしく聞こえたし?」
宣教師「今ではハキハキと喋るようになって成長が感じられます…。みんな大きくなっていきますよね」
ミシング「うんうん!ルーボイくんも成長したよー?最近はチビちゃん達を泣かせなくなったし!」
宣教師「そうですね…。彼が一番、成長したかもしれません」
ミシング「みーんな順調に育って…嬉しいけどさびしいなーなんて」
宣教師「えぇ…ですが寂しさを上回る喜びを感じられます」
ミシング「ねー…」ジャブジャブ
35: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/17(月) 22:09:34 ID:Y7BaV1vgDU
ミシング「あのさ…」
宣教師「はい?」
ミシング「こないだの慈善活動家の訪問でさ、孤児1くんを家族に迎えたいっていう夫婦がいたんだけど」
宣教師「……里親が現れましたか!」パァァ
ミシング「本人にはまだ言ってないんだよね」
宣教師「? なぜです?」
ミシング「いいのかな」
宣教師「喜ばしい知らせではありませんか?」
ミシング「…たぶん嫌がるよ?」
宣教師「え?」
ミシング「あの子だけじゃなくて…みんな。これから先、里親が現れても受け入れられないんじゃないかな」
宣教師「ど、どうして…?自分だけの家族が出来ますし…」
ミシング「里親を欲しがる子ってさ、あんまり今の環境に満足してない子だと思うんだよね」
宣教師「は、はぁ…」
ミシング「宣教師は優しいもん。みんな知らない人と暮らすより…ここに残りたがるよ。絶対に?」
宣教師「……ですが今の私は身動きが取れませんし、ほとんど留守にしてますし」
ミシング「…あの夫婦には他の孤児院、紹介しといたから」
宣教師「……!?」
ミシング「ここは幸せすぎるんだよ。すごくいい事だけど…孤児院としては良くないかもね」
宣教師「ミシング…」
ミシング「だからさ、無理に別れさせて悲しませるより、わたし達で面倒見よ?」
宣教師「……で、ですが」オロオロ
36: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/17(月) 22:11:18 ID:4HN.k5LX7c
ミシング「みんな集めて話してた孤児院問題さ。確かに良くないよ?
でもね、ああいう孤児院の方が里親に引き渡しやすいと思う」
宣教師「…何が言いたいんです?」
ミシング「あれはやりすぎだけど…ちょっと不自由な形での運営も視野に入れないと、いつか里親を拒む孤児で溢れるよ?」
宣教師「はぁ…」
ミシング「王国の圧政で田舎町とか村の生活水準が低下してた頃に盗賊と孤児が溢れたでしょう?
あの頃からまだ1年しか経ってないんだよ?」
宣教師「…なんと言われようと虐待や差別を認める気はありません」
ミシング「……そっかー。聖職者の鑑だね、宣教師は」
宣教師「あなたの口から、そんな言葉が出たのは意外でしたよ…」
ミシング「ミシングちゃんも色々考えてんだよー?」
宣教師「……」
ミシング「軽蔑しちゃった?」ニコッ
宣教師「……いえ、私の留守中に子供たちを見てきたあなただからこそ…心配になるのでしょう?」
ミシング「まぁ、ね…。ゴメンね、ハッピーな日に変な話しちゃって」キュッキュッ
宣教師「…いつもありがとうございます」
ミシング「?」カチャッ
宣教師「今日の幸福があったのはあなたがここを守ってくれているから…感謝せずにはいられませんよ?」ニコッ
ミシング「…ここはわたしに任せて宣教師はやりたい事しなよ?
あんたの理想は…わたし達の理想でもあるんだから?」ニコッ
宣教師「…全ての方に幸福を…必ず実現してみせます」
37: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/17(月) 22:18:11 ID:Y7BaV1vgDU
>>23
な、なんということでしょう!?
最初の頃といえばもう2年前ですよ!?
そんなに前から読んでいただけていたなんてもう言葉に出来ない嬉しさです!!
むしろ自分の方が励まされました!
これで辛いリアルも乗り越えていけそうです!!
ありがとうございます!
38: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/18(火) 22:17:49 ID:YSi2nOfsJM
―――西の国(王宮)―――
モクモク モクモク
女王「ふぁ〜………」トロォン
側近「お楽しみの最中、恐縮です」スッ
女王「アハァン……そなたに取り寄せてもらった神の草……悪くはないぞよ?」フゥゥゥ
側近「それは良うございました。王国産のハニーベリー…お気に召していただけましたか?」
女王「〜〜…たまらぬ香りよなぁ…?
ハニーベリーなる煙に満たされておれば…妾を潤す数多の快楽が霞むわ、霞む?」トロォン
側近「(あぁ…!あぁ…!陛下が……陛下が私を…私だけに労いの言葉をかけてくださっている…!)」ゾクゾク
女王「この王宮をハニーベリーの甘美に満たしたい?
このファルージャの為に再度、取り寄せておくれな?」ニヤァァァ
側近「ははぁっ!!陛下の為とあらば身命をも賭す所存!!」ザッ
ファルージャ「はんっ…?大げさじゃのう…?して、何用かしら?」
側近「はっ!本日のスイーツを御用意致しました。入れ!」サッ
ザッザッ
美男's「」ズラァァァ
ファルージャ「フゥ〜…!」キラキラ
側近「どれでも好きにお召し上がりくださいませ」スッ
ファルージャ「はぁん?これは迷わせる品揃えじゃな?どうしたものやら…?」ジロジロ
39: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/18(火) 22:19:41 ID:YSi2nOfsJM
ファルージャ「では……そなた?」ビッ
美男1「はっ!」スッ
側近「名と階級を!」
美男1「名はウィキッド!階級は平民にございます!」
ファルージャ「ウィキッドか…良い名よ?」
美男1「ありがとうございます!」
ファルージャ「はぁぁ…側近?」
側近「はっ!衛兵共よ!そやつを取り押さえよ!」
ザザッ ガシッ ガシッ
美男1「え!?な、なにを!?」ジタバタ
ファルージャ「妾は階級を申せと命じたな?」
美男1「で、ですから…」
ファルージャ「平民は階級ではあるまいに?
花の名を申せと言われ、゙雑草゙と答える愚者がおるのかえ?」クスクス
美男1「そん…な……」
ファルージャ「処刑せよ?妾の口には合わぬ?」
ズルズル
美男1「い、イヤだぁぁ!!命ばかりはぁぁ!?」ズルズル
バタンッ
ファルージャ「クスス……次?」ニコリ
40: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/18(火) 22:21:20 ID:7ZmvR.FKR.
美男2「私は名門騎士族の出。フィライクと申します」
ファルージャ「ほう?騎士を名乗るだけの事はある?精悍な顔付きではないか?」
美男2「恐悦至極にござる」
ファルージャ「妾の正面に立つ事を許しましょう?おいでなさい?」
美男2「はっ!」スッ
ファルージャ「…口を開いてごらんな」
美男2「」カパッ
ファルージャ「そぉうそう……舌を伸ばして?」
美男2「」ベーッ
ファルージャ「まずは味見……んちゅっ」パクッ
美男2「」ビクビクッ
ジュルッ ニュチッ ジリュリュ クチャッ ジュルルル
ファルージャ「…フゥ。まずまずの味」タラーン
美男2「」ピクピク
ファルージャ「なんと……意識が飛んでしもうたわ?側近?」
側近「はっ!」
ファルージャ「惰弱は要らぬ?」
側近「衛兵共!」
ザザッ ガシッ ズルズル
ファルージャ「次はそなたにしましょうか?」ビッ
美男3「」ビクッ
41: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/18(火) 22:24:07 ID:7ZmvR.FKR.
〜〜〜〜〜〜
ファルージャ「フゥ〜…」ツヤツヤ
側近「ご満足なされましたか」
ファルージャ「……何ゆえ妾の渇きは癒されぬ?」
側近「は?」
ファルージャ「…惰弱な性では事足りぬと言うのじゃ?」
側近「さ、左様で……」
ファルージャ「この憂いを晴らすような愉快な話が舞い込んではこないものか…?」
ガチャッ
官吏「失礼致します」
側近「…何か?」
官吏「陛下にお目通し願いたいと申す者が城を訪ねて参りました」
側近「…何者だ?」
官吏「東の王国よりの使者と……」
側近「王国だと?巡礼で起こった内乱の詫びか?」
官吏「はてさて…お付きも連れず一人でしたし、みすぼらしいが恰幅のよい殿方で」
側近「…怪しいな。追い返せ」
官吏「ではそのように」
ファルージャ「お待ちなさいな?」
官吏「は?」
ファルージャ「お招きしなさい?客人として丁重にネェ?」ニコッ
官吏&側近「」ドッキュン
側近&官吏「(陛下が私に微笑みかけてくださった…!)」ドキドキ
ファルージャ「」ニヤニヤ
側近「は、はようお招きせんかい!?」
官吏「はいよろこんで!!」ダッ
42: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/18(火) 22:27:49 ID:7ZmvR.FKR.
ファルージャ「よくぞ参られた?
そなたが神の教えを尊ぶ穢れなき民、王国の使者かえ?」
大臣「とうに失脚させられた身ですがねぇ〜。
それにしても世にも名高い美の化身と謳われる女王陛下の御前に立てるなど身に余る光栄……ぐふふ、ふひひ、ブヒヒヒヒ」
側近「貴様……」イラッ
ファルージャ「クスス…王国の殿方は世辞がうまくていらっしゃいますのネェ?」
大臣「ぶほほほ!いやはや世辞などではございませんぞ!実にお美しい!
その豊満な胸に顔を埋め、艶めかしく滴る汗をべろんべろん舐めて差し上げたい…!」ハァハァ
側近「貴様ぁぁ!!」ブチィッ
ファルージャ「クスス!左様か、それはそれは……」クツクツ
側近「へ、陛下!ご命令を!」
ファルージャ「よいではないか?愉快、愉快!」クツクツ
側近「し、しかし!」
大臣「まぁまぁまぁ?そう邪険にしないでくださいよぉ?
わたくしもねぇ、何も土産物を持たずに来た訳じゃございませんから?」
ファルージャ「ほぉ?土産物とな?」
大臣「ぐふふ!えぇ、女王陛下には何よりの手土産を持参致しましたぞぉ?」ニシシ
ファルージャ「フゥン?それは楽しみじゃな?」
43: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/18(火) 22:33:16 ID:7ZmvR.FKR.
大臣「〜〜〜という訳ですよ?」
ファルージャ「それは…まことかえ…!」
大臣「まこともまこと!わたくしの口から偽りは出てきませんよぉ〜!」
ファルージャ「癒しの力……永遠の命……王国にかような秘宝が眠っておったとは……!」
側近「…馬鹿馬鹿しい。そんな話が信じられるか」
大臣「では貴方は信じなければよろしい?
わたくしは陛下に信じていただければ、それでよいのですからねぇ?」ニタニタ
側近「き、貴様…やはり処刑台に…!」
ファルージャ「キャハハハハ!!!」ケラケラ
側近「」ビクッ
大臣「」ニヤリ
44: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/18(火) 22:35:04 ID:7ZmvR.FKR.
ファルージャ「なんともはや……これ以上に妾を魅了する土産は他にあるまいぞ!!」キラキラ
側近「陛下!?」
ファルージャ「気に入ったぞ、そなた!望みを言うがいい!いかなる要求も認めようではないか!?」キラキラ
大臣「ぐふふ!よろしければ一晩を共に……」
側近「なにぃ!?」
大臣「と、言いたいところですが……何よりの望みは滅びいく王国を我が目に焼き付けたい……それだけです」
ファルージャ「フゥ〜!王国を攻め滅ぼせと言うのか?」
側近「しかし…王国は各国との平和協定を結ぶ架け橋となった国……こちらが兵を差し向ければ6国の軍と争わなければなりません」
ファルージャ「フゥン……我が西の国が世界最大の武力国家とはいえ、あまり現実的な話ではないのう?」
大臣「ぶほほほ!なにをおっしゃる?簡単ではございませんか!」
側近「はぁ?」
大臣「先に永遠の命を手に入れたらよろしい!
不死の力を持ってすれば100国の軍も恐るるに足らず!そうでしょう!?」
側近「そのような事が可能なのか!?」
大臣「ブヒヒヒヒ!これを陛下に差し上げましょう」つ【地図】【人相描き】
ファルージャ「それは?」
大臣「大樹の地図と癒しの力を持つホビットの人相描きにございます」
ファルージャ「…手際のよいこと?側近、持って参れ?」ニヤリ
側近「はっ!」パシッ タタタッ
45: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/18(火) 22:45:41 ID:YSi2nOfsJM
ファルージャ「はぁん…?これが癒しの力を…?」ピラッ
大臣「元はわたくしの買い付けた奴隷だったのですがねぇ…。小賢しい事に王子と手を組み、反乱を起こしたのですよ」
ファルージャ「…フゥ!なんと愛らしい顔立ち…?
妾のそばに仕えさせ、昼夜の境も無く愛でてやりたくなる?」
側近「へ、陛下……」
ファルージャ「妾の美には劣るが…クスス?」ニヤニヤ
大臣「言っておきますが癒しの力を持つホビットはオスですぞぉ?」
ファルージャ「なんと…!男に生まれながら、これ程に愛らしいのか…!?」
大臣「えぇ、わたくしも最初はメスだと思って買ったんですがねぇ…。とんだ詐欺ですよぉ…」ブツクサ
ファルージャ「…クスス!一度でよいから…こういう愛らしい男を嬲ってみたかったんじゃ…?」
側近「陛下…?」オロオロ
ファルージャ「側近よ、三銃士を呼べ?」
側近「はっ…」
46: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/18(火) 22:49:40 ID:YSi2nOfsJM
ザザッ
将軍「」ザッ
魔導師「」ザッ
女装家「」ザッ
ファルージャ「よくぞ揃ってくれた?妾の愛しき従者たちよ?」
将軍「我ら三銃士!陛下のお望みとあらば何処へなりと推参致す所存!」
魔導師「ご機嫌麗しゅう、陛下?本日も誠にお美しい?」
女装家「我らは陛下のご命令にのみ従う駒。なんなりとご命令ください」
ファルージャ「良い心構えネェ?」スラリ
将軍「(ナマ足…!女王陛下のナマ足ぃ…!)」ジュルリ
魔導師「……!」ジーッ
女装家「(オネェ様ぁぁ)」ハァハァ
47: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/18(火) 22:51:43 ID:7ZmvR.FKR.
大臣「あのお三方は?」ボソボソ
側近「あの方々は陛下に忠誠を誓いし我が国の英雄、三銃士だ」ボソボソ
大臣「はぁ…銀製の甲冑に身を包む武人と物々しく全身を覆うローブの方はなんとなく分かりまするが……。
あの寸法の合わないフリルドレスを身に纏い、明らかな金髪のカツラを被った厳つい御仁はなんなんですかぁ?」シゲシゲ
側近「あのお方は女装家のシャルウィン様だ。元は名だたる宝石商だったのだが……陛下の美しさに憧れるあまり、女装家に転職したらしい。
主に美容顧問官として健康管理と体型維持、肌のケアを担当しており、陛下の御身に全身マッサージを施すなど羨ましすぎる権限の持ち主なのだ」ボソボソ
大臣「それって英雄…なんですかねぇ〜?」
側近「甲冑を装備しているお方はカカドゥーラ将軍、我が国の軍事を指揮する最強の武人だ」ボソボソ
大臣「んぅ〜…なるほど」
側近「不気味なローブのお方は大魔導師パカラゥロ様だ」ボソボソ
大臣「魔導師…?」
側近「あぁ、黒魔術に精通しており、両の掌から摩訶不思議な術を繰り出す…なんとも信じがたいお方だ」ボソボソ
大臣「なんだかインチキ臭いですねぇ〜?ホントにできるんですかぁ?」ジロジロ
魔導師「」ギロッ
大臣「おや?聞こえてしまったかな?」ニタニタ
魔導師「…なんなら体験してみるかい?」
大臣「ぐふふ…いいんですか?赤っ恥かいても知りませんぞ?」ニタニタ
魔導師「陛下……許可を頂けますかな」
ファルージャ「…好きにするがいい?」ニヤリ
魔導師「んふふ…んふ……許可が降りたぞ?」モミモミ
大臣「ぶほほほ!どうぞお好きに?」ニタニタ
側近「お、おい…あまりパカラゥロ様を刺激するな…!殺されるぞ…!?」
大臣「癒しの力のような術がこの世に二つとあるのなら見てみたいものですなぁ?
ま、どうせインチキでしょうから…そのからくりを暴いてやりますかねぇ?」ニタニタ
魔導師「んふふふふ…」モミモミ
48: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/18(火) 22:56:36 ID:7ZmvR.FKR.
魔導師「さて、これからその身に起こる不幸……受け入れる覚悟は出来たかい?」モミモミ
大臣「気色悪いですなぁ…」
側近「揉み手を作って丹念に掌を擦り合わせているだろう?」
大臣「はい?あぁ、そういえば?」
側近「…あの手が開かれた時、恐ろしい魔術を放たれるんだ」
大臣「はぁ〜いぃ〜?」
魔導師「さてさて、さてさて、さてさてと」パッ
大臣「」ドキッ
魔導師「……」スッ
大臣「(両手を眼前に…?だ、だが何も……)」
魔導師「」グワシッ
大臣「なっ…ぶぐっ!ふおお!ぶぁぁ!」モガモガ
魔導師「口から直接、邪悪な念を流し込み…卑しく欲深な豚の魂を食い尽くす…」ガッ
大臣「ぶぐっ!むが!ふごぉぉ………っ」クラッ
大臣「」バタッ
魔導師「もがき苦しむサマもいい…?
だが憎らしい相手には…もがく事すら許されぬ苦しみを与えたいものだねぇ……」クックッ
大臣「(体が…言うことを……)」バクンバクン
大臣「っ……!っ……!」バクンバクン
大臣「ぶほあぁっ!?」ブバァッ
側近「ひっ」
大臣「」ピクピク
魔導師「これが世にも恐ろしい黒魔術の真髄……味わっていただけたかな?」
49: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/18(火) 22:58:50 ID:7ZmvR.FKR.
大臣「」ピクピク
ファルージャ「フゥ〜…いつ見ても惚れ惚れするのう?そなたの摩訶不思議な術は?」
魔導師「お誉めに預かり光栄にございます。
この豚は助かりませんがよろしいか?」
ファルージャ「構わぬ。もう用はない」
将軍「陛下!そろそろ我らを呼び寄せた理由を伺わせていただけませぬか!」
女装家「アタシ達、三銃士が揃い踏みだなんてただ事じゃなさそうよねぇ?」
ファルージャ「おぉ、そうじゃった、そうじゃった?
貴殿らに頼みたい重要な話があるのだった?」ニヤリ
女装家「はっ!」
将軍「なんなりと!」
魔導師「……」
ファルージャ「はぁん…可愛い奴らよ…?では言うぞ…?」
50: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/18(火) 23:01:26 ID:7ZmvR.FKR.
ファルージャ「〜〜〜という訳じゃ?」
将軍「永遠の命…?」
女装家「……」ポカーン
魔導師「んふふふ……」ニヤニヤ
ファルージャ「そなたらは妾に必要な物がなにか分かるかえ?」
将軍「そ、それは…やはりお世継ぎかと」
女装家「いいや!オネェ様に必要なのは完成された美を超えた更なる美よぉ!」
魔導師「……」ニヤニヤ
ファルージャ「いずれも正しい?確かに妾は美を手放せぬあまり、子を孕むという大事を拒んでおった?」
女装家「あーん!妊娠などなされては体型が崩れてしまいますものぉん!」
ファルージャ「しかし…永遠の命を手に入れたらば世継ぎなど不要じゃ?
妾は不朽の美を手に入れ、西の国の女帝として君臨出来る?」
将軍「おぉ!それはめでたい!」
女装家「陛下の美が永久に保たれるなんて……ステキ!」キラキラ
魔導師「……」ニヤニヤ
ファルージャ「クスス……誰でも構わぬ?妾の前に永遠の命と癒しの力を持って参れ?」
将軍「ヌハハハハ!たやすいこと!このカカドゥーラが成し遂げましょうぞ!」
女装家「いいや!アタシが陛下に永遠の美を約束してみせる!」
魔導師「……」
ファルージャ「フゥ〜…頼もしき子らよ?成功した暁にはそなたらの望む褒美を取らせようぞ?」
三銃士「」ピクッ
ファルージャ「では…しかと頼んだぞ?」
将軍「ははぁっ!」ザッ
女装家「はっ!」ザッ
魔導師「」ザッ
51: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/18(火) 23:03:44 ID:YSi2nOfsJM
―――宮殿(回廊)―――
将軍「ムフフ……」スタスタ
女装家「なにニヤついてんのよぅ?気持ち悪いわねぃ?」スタスタ
将軍「なにをぅ!?」
女装家「なによぅ!?」
魔導師「褒美……」ボソッ
将軍「」ピクッ
女装家「」ピクッ
魔導師「…んふふ、図星だね?」
将軍「ふん…」
女装家「アタシはぁ〜陛下に永遠の命をお裾分けしてもらおうかなぁ〜なんて」
将軍「ゲスめ…!陛下と同等の望みを求めるか…!」
女装家「いいじゃなぁい?アタシも陛下のように美しくありたいのよぅ?」キャピキャピ
将軍「貴殿は鏡を見たことがないのか…?」
魔導師「将軍は何を望むんだい?」
将軍「ムフフ…厚かましくも畏れ多い願いだが……我輩の顔面を踏みつけ、罵倒していただきたいと……」
女装家「それでよくアタシをゲス呼ばわり出来たわねぃ…?」ドンビキ
魔導師「悪くはないね」
将軍「話が分かるな?」ニヤリ
女装家「はぁ〜やだやだ。で、そういうアンタはどうなのよぅ?」
魔導師「…癒しの力」
女装家「あぁ〜それも確かに魅力的よねぃ?どんな傷や病も癒せちゃうなんて夢みたい?」
魔導師「んふふ…欲しいなぁ。是非とも…物にしたい魔術だ」
将軍「…確かに貴殿がそのような術を心得れば我が軍の武力に加え、完全な回復……鬼に金棒ではないか!」
女装家「そんなんどうでもいいけどぉ〜」
魔導師「んふふふふ…欲しいなぁ…」ニヤニヤ
52: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/19(水) 19:40:09 ID:aMQyUdLMrI
―――王国(議場)―――
政務官「では前期の消費と利益を踏まえ、来期の予算案はこのように検討する、と」
高官1「うむ。しかし前期は出費ばかりで見返りが少なかったですな」
高官2「然り。バックヤードを閉鎖した結果、大規模な資金源を失いましたからな」
高官3「新たにホビットを迎えて国家を形成するとありますが……そんな余裕があるのですか?」
高官4「すでにホビットが人里に住もうとする動きもありまするな?その居住区と職の保障も予算で賄うので?」
政務官「…以前から進めていた交易も差し支えなく進めている。利鞘に目を向けるのはそれからでもよろしいのでは?」
高官1「うーむ…しかしそれではホビットを迎えた分の負担は?」
政務官「仮にホビットを国民とした場合、我が国の人口推移は大幅な拡大が期待出来るだろう。
人口が多ければ多い程、国は活気立ち、目標の幅も広がる」
高官3「しかし巡礼以降、国力は著しく低下しておりまするしな…。それだけの土台が現在あるのか…?」
政務官「土台を作るのは民であり、その土台をいかにして最大限まで活かせるかが我々の職務だ」
高官4「そ、そりゃそうなんですけどね?何て言うのかな〜…」ポリポリ
政務官「人の数だけ労働力は増し、人の数だけ新たな可能性を見いだせる。
特に他種族のホビットともなれば文化も違う。人では捉えられない観点から文明の視野を広げてくれるかもしれないな?」
高官2「…これまでの歴史から考えると、あまり良いとは言えなさそうですが」
政務官「歴史とは常に変わるものだ。
これまでの民意を修正していくには国を預かる我々の意思がしかと定まっていなければならない。
そして我々の使命は国王の意思の下にあるという事もまた重要な事実だ」
53: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/19(水) 19:42:15 ID:aMQyUdLMrI
政務官「国王がホビットとの融和を糧に更なる飛躍を望むと仰るのなら…我々、役人の仕事はそれらを可能にした国作りに努めること」
高官1「は、はぁ…」
政務官「現段階での損失は謂わば投資だ?
愛すべき国家がより繁栄を遂げられるよう、国の綻びを取り除いて再生する活動資金と考えようじゃないか?」
政務官「これからは王政認可の下、余所との商いが展開可能になる事で商家は人手を求めるだろう。
各地に溢れる難民は確実に減り、職の充実による経済効果も見込める」
政務官「手付かずにしていた田舎町などは特にそうだ?
有り余る資源に利用法を見いだせず無意味にもて余してきた訳だが……。
聞くところによると鉄鋼や鉱石資源の採掘が可能な鉱山や未開拓の山々、森林が多くあるらしい?」
政務官「田舎の隅々まで憲兵団の支部を設立し、治安の維持を厳重に強化した上で王都への繋ぎとなる領主を立てれば円滑に意思の疎通が図れるじゃないか?」
政務官「それらの有効資源確保に人員を当てれば難民問題はほぼ解決し、働き手が増える事で納税率は格段に上昇する?」
高官1「おぉ…!」
高官2「な、なるほど!?」
高官3「た、確かに…それなら財政難を防げる!」
政務官「援助もせずに奪うだけ奪い、搾取するのでは下銭な賊と変わらない。
国というのは民と共にあるべきだ。
我々は民の暮らしと安全を約束する。民は国の利益や必要資源を産み出す。
それでこそ国家と言えるのではないだろうか?」
高官's「おぉっ」ザワッ
政務官「この形が最も健全だと私は思う。
そしていずれは現在の損失を遥かに上回る利益が巡ってくる事だろう」
高官's「おぉぉっ!!!」
54: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/19(水) 19:44:51 ID:brIb.FAqgM
政務官「…沈黙を貫いていらっしゃいますが国王はいかが思われる?」
ヒメ「…いいんじゃないか?」シラー
政務官「ではこの方向で進めさせていただきます」
ヒメ「あぁ、あと……お前らの好きな納税義務は当然、ホビットにも課すから心配するな」
高官's「」オロオロ
ヒメ「人口の増加に伴い、様々な問題が産まれるだろうが……。
お前たちの仕事はそういった変化に対する良し悪しの判断だ?」
高官's「はっ!」
ヒメ「新たな職種を増やすとすれば民にしてみても未知の領域だろうな。
お前たちの職務にはそういった発展途上の部分に対する積極的な支援も含まれてる。
身分だ階級だと贅沢を貪る怠け者には務まらないものと思えよ?」
高官's「」ゴクリ
ヒメ「余にある権利は物事の最終判断とお前たちの提案していく政策に是非を下す決定権のみ。
……あくまで民を活かし、育てていけるかはお前たちにかかっている事を忘れるな?」
高官's「」ゴクリ
ヒメ「欲に駆られた今までのやり方を貫けると思うな?
お前たち自身が真剣に取り組み、民と一丸にならねば欲しい見返りは望めぬものと心得よ?」
高官's「ははぁっ!!!!」
ヒメ「以上だ」
政務官「はっ!」
ヒメ「……」
政務官「(やはりヒメ様は聡明だ。このお方と共に歩めば……王国の繁栄は間違いない!)」
55: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/19(水) 19:46:44 ID:aMQyUdLMrI
政務官「見事に引き締めてくださいましたな。役人たちの顔付きも変わりましたぞ」
ヒメ「ん…うん、まぁな?」
政務官「…どうかなされたか?」
ヒメ「……いや、なんでもない」
政務官「はぁ…?」
コンコン コンコン
政務官「入れ」
団長「失礼」ガチャッ
政務官「おぉ、団長殿か。城を離れて久しかったが帰っておられたか」
団長「政務官殿も一緒でござったか?」
ヒメ「団長!」
団長「ヒメ様!」
ヒメ「名前で呼ぶな!それよりあいつの捜索は…?」
団長「…かたじけない。鋭意捜索中ですが未だ影さえ掴めておりません」
ヒメ「……!」
団長「支部設立に伴い、手配書を回して参りましたので目撃情報もじきに集まるかと」
ヒメ「分かった…。お前に任せるよ」
団長「…はっ!」
ヒメ「じゃあ政務官、あとは頼む。僕は自室にいるから」
政務官「承りました」
団長「(ヒメ様……)」
56: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/19(水) 19:49:21 ID:brIb.FAqgM
団長「…早く見つけてやらんとな」
政務官「ああ、ところで……前大臣の行方を知らないか?」
団長「む?追放した後の足取りは知らんが…あの豚がどうかしたのか?」
政務官「巡礼での出来事が国外に漏れたようでな」
団長「……!癒しの力と大樹の事もか!?」
政務官「あぁ…ある国から、その話について伺いたいと申し出があった」
団長「いったいどこの国なのだ…!?」
政務官「西の国だ」
団長「……!?"魔性のファルージャ"か…!」
政務官「やはり知っていたか?」
団長「世界情勢に気を配る我々、役人がファルージャを知らん訳がなかろう!?」
政務官「…確かに西の女帝ファルージャは有名だな。
妾の身でありながら夫である皇帝を殺害し、第1夫人から第11夫人までことごとく始末した挙げ句に次期皇帝になるであろう皇子達を皆殺しにした悪魔のような女だ」
団長「うむ…何より恐ろしいのはそれらの行為を全て知っていながら西の役人共が黙認している事だ…!」
政務官「凄まじい程に妖艶で…男のみならず女までも虜にしてしまう色香の持ち主らしい?」
団長「しかし国一つ支配する程の蠱惑さとは……いささか信じがたいな」
政務官「その気になれば世界全土を魅了出来るとさえ囁かれている…。
だからこそ平和条約も結ばず、同盟にも加入せず悠々と国を成せるのだろう」
団長「……まさに最悪の相手に目を付けられたな…!」
政務官「ヒメ様にはまだ報告していないが…私がなんとか穏便に取り計らってみよう」
団長「……」
政務官「もしもアントリアが思い描いたような永遠の国などを創らせれば…ファルージャは間違いなく世界を掌握しようと動き出すぞ?」
団長「…それだけはなんとしても避けねばならんな」
57: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/19(水) 19:54:22 ID:brIb.FAqgM
政務官「ところでヒメ様が探させている友人だが……」
団長「む?小童なら未だ捜索中だが……」
政務官「そうか。発見したらどうする気だ?」
団長「無論、彼も我が国に迎え入れる!」
政務官「…出来れば発見したら即座に始末してもらいたい」
団長「なにぃ!?」
政務官「癒しの力を持っている彼が消えてくれれば…ファルージャがいくら探りを入れようと徒労に終わるだろう?」
団長「正気か、貴様…!?彼のおかげで我々はこうして…!」
政務官「きれいごとで済ませられるような問題なら私もそうしたい。
だが時には非情さを求められるのが政だ……」
団長「黙れ!ワシは認めんぞ!?」
政務官「……」
団長「貴様!ヒメ様の理想を聞いて心を入れ替えたのではなかったのか!?」
政務官「そのつもりだ。ヒメ様ならば…この国を豊かにしてくださる」
団長「だったら何故ヒメ様から大切な友人を奪おうとするのだ!?」
政務官「国の為だ」
団長「ふざけるなぁ!?歪みきった我が国を変えてくれた恩人を始末するのが国の為か!?」
58: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/19(水) 19:56:16 ID:aMQyUdLMrI
政務官「まぁ聞け?たとえ西の国を説得出来たとしても癒しの力がある限り、利用しようと企む輩は内にも外にも現れる?
確かに彼は我が国を変えてくれたかもしれないが…今となっては争いの火種でしかない?」
団長「……!貴様はヒメ様の前でも同じ事が言えるのか!?」
政務官「…始末した後は隠せばいい。これまで通り、探してるが見つからないと……それで十分だ」
団長「この薄情者がぁ!?」ダンッ
政務官「……誰かに聞かれても困る。声を抑えろ」
団長「知るかぁ!!ホビットは今まで我々、人間の身勝手に付き合わされ、苦心してきたのだぁ!?
彼はそんな境遇を嘆いて……たった一人で道を切り開き、多くの仲間を得たんじゃないか!!」
政務官「ふん…その仲間に黙って姿を消した訳だが」
団長「何かの間違いだ!理由があるに決まってる!」
政務官「ならそう思ってればいい?」
団長「やっと…!やっとホビットは解放されたんだぞ…!?
それを貴様は…またも裏切り、踏みにじろうと言うのか!?」
政務官「ホビット族は受け入れる。癒しの力が邪魔だと言ってるだけだ」
団長「同じ事だ!彼を裏切るのに変わりはなかろう!?」
政務官「…熱い男だ?」
団長「愚かだと罵られても構わん…!たとえ西の国と戦争する事になろうと……彼を殺させはせんぞ!!」
政務官「……」
団長「彼の捜索はワシが一任されておる!貴様がなんと言おうがワシは彼を王国に迎え入れるぞ!?」
政務官「…好きにしろ」
団長「失礼する!」ダンッ
政務官「……」
ガチャッ バタァンッ!
政務官「……!」ギリッ
59: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/19(水) 19:58:25 ID:aMQyUdLMrI
政務官「ふん…忠義面しているが…元を正せば奴も私もホビット族を差別してきた側だ」スッ カサッ
政務官「まるで正義はこちらにあり…とでも言いたげな口振りだったな」ピッピッ
政務官「」シュボッ
政務官「」スパー
コンコン コンコン
政務官「入れ」
役人1「はっ!失礼します!」スタスタ
政務官「どうだった?」
役人1「政務官のご命令通り、捜索隊を結成しましたが……」
政務官「使えそうなのか?」
役人1「腕は確かかと……しかしよろしいのですか?陛下や団長殿に黙って兵を動かすなど…?」
政務官「問題ない」スパー
役人1「はぁ…ではこちらで取得した情報を元に捜索隊を動かしていきます」
政務官「分かっているとは思うが……」
役人1「はっ!癒しの力を見つけたら……その場で!」
政務官「ならいい?お前は聞き分けがよくて助かる?」
役人1「…しかし、もし陛下に知れれば……」
政務官「知られたくなければ急いだ方がいいだろうな。近衛のようにダラダラやっていると間延びするぞ?」
役人1「……」
政務官「高官の席を一つ空けておく」
役人1「」ピクッ
政務官「私は有能な人間しか認めない。椅子取り合戦は熾烈だぞ」
役人1「……!」
政務官「…有能であると証明出来る人間は出世が速いのだよ。分かるか?」スパー
役人1「お任せを…!すぐに癒しの力を始末します!」
政務官「あぁ、君には期待しているよ」ジュッ
60: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/19(水) 20:00:56 ID:brIb.FAqgM
―――王室―――
ヒメ「……」カキカキ
コンコン コンコン
ヒメ「入っていいぞ」パタンッ
団長「失礼、王子…ではなく国王」
ヒメ「…好きに呼べよ。堅苦しいのは嫌いだ」ジトー
団長「おぉ…!ではヒメ様!」
ヒメ「名前で呼ぶな」プイッ
団長「」ガクッ
ヒメ「で、なんの用だ?」
団長「おや、急かされるとは…もしや何かなされてましたか?」
ヒメ「あぁ…邪魔された?」ジロッ
団長「へ?あ、いや、かたじけない…」オロオロ
ヒメ「なんてな?返事を書いてただけだよ?」ニコッ
団長「は?」
ヒメ「これだよ?」スッ
団長「これは…?」パシッ
ヒメ「あいつらから届いた手紙だ。全部、アルバムに保管してる」
団長「あぁ!なるほど?孤児院の?」ペラッ
ヒメ「元気にしてるってさ?この前は全員で初めて海に行ったらしいぞ?」ニコニコ
団長「はっはっは…彼らとやり取りしておられたのですか?」パラパラ
ヒメ「…ともだちは大事にしないとな?あいつとの約束だ?」ニコニコ
団長「……」
61: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/19(水) 20:05:16 ID:aMQyUdLMrI
ヒメ「」カキカキ
団長「何枚も…?」
ヒメ「ルーボイ達と宣教師、4人分の返事だからな。毎回分厚くなるよ」カキカキ
団長「……!」ホロリ
ヒメ「」カキカキ
団長「(やはり…言うべきではないか。政務官の提案を話せば…ヒメ様は即刻、処分を下されるに違いない)」
団長「(悔しいが政務官の政治手腕は確かだ。奴がいなければ現在、進めている外交は見直されてしまうだろう…)」
団長「(…きれいごとで政は成せん、か。嫌でも痛感させられる……)」ググッ
ヒメ「」ジーッ
団長「…ワシの顔になにか?」
ヒメ「働き過ぎじゃないのか…?
激務の合間に時間を取ってあいつを探してくれてるのはありがたいけど……無理はするなよ?」
団長「な、何をおっしゃいますか!?ワシは疲れてなど……」
ヒメ「……じゃあなんで泣いてんだよ?」ボソッ
団長「む?」ピトッ
団長「え…?」ハッ
ヒメ「気付いてなかったのか?やっぱり疲れてるんじゃ……」
団長「と、とんでもない!ヒメ様も日夜、政に励んでおられるのですからワシなどは……」
ヒメ「……」
団長「あっ…も、申し訳ない!国王…でしたな?」アセアセ
ヒメ「好きに呼べって言ったろ?それに僕の名前は役職じゃない?」
団長「さ、先ほどと言ってる事が違いませぬか?」
ヒメ「いいよ。お前だけは許してやる」
団長「……?」
ヒメ「お前は僕が最も信頼を置く家臣だ。だから許してやる」
団長「ひ、ヒメ…さま…!」プルプル
62: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/19(水) 20:10:31 ID:aMQyUdLMrI
ヒメ「…ごめんな。こんな事でしか労ってやれないけど…すごく感謝してるんだぞ?」
団長「こ、こんな事なんて滅相も…!ワシには…もったいのうございます…!」グシグシ
ヒメ「……落ち着いたら、ちゃんと休暇も取らせるから。家族に会えなくて辛いだろ?」
団長「うぅ…!か、感無量にござる…!
貴方様のお気遣いくださり……それだけでワシは力がみなぎりまするぞ!」ズズッ
ヒメ「おかしな奴だな…?もっと欲張ってもいいんだぞ?なんなら捜索も中止していいし……」
団長「なりません!」
ヒメ「……?」
団長「貴方様にとってかけがえのない友人を離ればなれになど…このワシがさせませんぞ!!」
ヒメ「でも…それは……僕のわがままだ。
一部の人間からは無駄に人員を割いて国力低下を煽ってるとも囁かれてる…」シュン
団長「陰口など言わせておけばいいのです!!
我々の主である限り、貴方にはわがままを言う権利があるのです!!」
ヒメ「……」
団長「ヒメ様こそ!もっと欲張られてはいかがか!?」
ヒメ「え…?」
63: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/19(水) 20:12:20 ID:brIb.FAqgM
団長「そうして手紙でのやり取りを続けている間も……本当は会いたくて仕方がないのでしょう!?」
ヒメ「……!」グッ
団長「我々は国を預かる責任者である前に…一人の人間なのです!
全てを国に捧げる必要などござらん!民も役人も国王も一丸となって支え合うのが国家というもの!
時には立場を忘れ、羽目を外したっていいんです!!」
ヒメ「う、うるさいな!そうもいかないから……」カッ
団長「思い出してみなされ!今、ワシが言った事は…かつての貴方がおっしゃった事ですぞ!?」
ヒメ「」ピクッ
団長「…責任に縛られ、自由を諦めるくらいなら身分などいらないと…おっしゃったではありませんか?」
ヒメ「……」
団長「いいのですよ…。わがままで…?」
ヒメ「…まだ早い」
団長「は?」
ヒメ「僕はまだ…あいつに約束した国作りを出来てない」
団長「……!」
ヒメ「わがままを言うのはきちんと約束を果たしてからだ。
そうしないと…あいつに一生会えないかもしれないじゃないか」
団長「……くっ!」ギリッ
ヒメ「…でも一つだけならいいかもな」
団長「!」
ヒメ「必ずあの親子を見つけて…僕に会わせてくれ?またあいつと他愛なく笑って話したいんだ?」ニコッ
団長「…お約束致します!このワシが絶対に見つけてみせますぞ!!」
64: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/19(水) 20:17:01 ID:aMQyUdLMrI
ヒメ「よし…」
団長「書き終えましたか?」
ヒメ「まぁな。悪いけど配達所に送ってもらっていいか?」スッ
団長「お安いご用です!」パシッ
ヒメ「…あ、そうだ」
団長「? なにか?」
ヒメ「いや、お前…なんか用があって来たんじゃないのか?」
団長「」ハッ
『癒しの力を始末してもらいたい』
団長「……!」
ヒメ「……?」
団長「いえ!何もございません!ただ久しぶりに戻って参りましたのでヒメ様のお顔を拝見したく!」
ヒメ「は…?」ススー
団長「ど、どうなさいました?」
ヒメ「い、いや…なんか言い回しが気持ち悪かったから…?」ドンビキ
団長「っ!?」ガーン
65: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/20(木) 20:41:38 ID:zZ0LLNhnzs
―――王国(西の領土)―――
山賊1「しけてんなぁ…マジで一文無しかよ」
カロル「」ピョンピョン
山賊2「いつまで跳ねんだ!ジャラジャラ言わねぇのにうっとうしんだよ!」
カロル「飛べって言うから…?」スタッ
頭目「ガキぃ…おめぇ、なんでこんな山奥に入った?」
カロル「えっと…食べ物、探しに来たんです」マゴマゴ
頭目「けっ…山はよ、山賊のモンだ?おめぇ、税金払わずに入ったよな?」
カロル「ぜ…きん?」キョトン
山賊1「金でも食料でも女でもいいから払えや!」
山賊2「さもなきゃ町でかっぱらいでもさせるか?」
カロル「ご、ごめんなさい!ボク…なんにも分かんなくて……」
山賊1「んだとぉ!?」
頭目「よせよせ、それよか俺に考えがある」
山賊2「なんすか?考えって?」
頭目「こいつ綺麗なツラしてると思わねぇか?」
山賊1「確かに…最初メスと間違えましたぜ」
山賊2「……」ゴクリ
カロル「(あれ…?前にもこんなことあったような気がする?)」
頭目「どっかの変態に売ればいいんだよ!」
山賊1「おお!なるほど!」
カロル「やっぱり!?」ガーン
山賊2「いやいや、頭、俺たちで食っちゃうってのも……」
頭目「は?」
山賊1「おめぇそっちなの?」
カロル「……?」キョトン
66: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/20(木) 20:43:28 ID:zZ0LLNhnzs
〜〜〜想像(カロル)〜〜〜
グツグツ グツグツ
山賊1「お、煮えてきた、煮えてきた。頭!ホビットのスープが出来ましたぜ!」
山賊2「犬の丸焼きも出来ましたぜ!」
頭目「よーし、食うか!」
ガツガツ ムシャムシャ
…………………
カロル「……!」ブルッ
マルク「くぅん?」
山賊2「これぐらい綺麗ならイケますって!」
山賊1「うーん、それもそうか」
頭目「最近、溜まってるしなぁ…」
カロル「マルク!逃げるよ!?」ダッ
マルク「あんっ!」ダッ
山賊1「あ!待て!」
頭目「取っ捕まえろぉ!!」
山賊2「たりめぇよ!!」ダッ
ダダダーッ
67: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/20(木) 20:44:43 ID:zZ0LLNhnzs
〜〜〜〜〜〜
カロル「はぁ……危なかったね、マルク?」
マルク「わんっ!」
カロル「…キノコしか取れなかったよ。足りるかな?」
マルク「うぅ〜…」
カロル「ごめん…。マルクもお腹空いてるでしょ?」
マルク「」ブンブン
カロル「無理しなくていいのに…?そういえばマルクはなんでみんなと行かなかったの?」
マルク「?」
カロル「ボクといるよりみんなといた方がよかったと思うな?」
マルク「クゥーン」スリスリ
カロル「…ボク一人じゃマルクにひもじい思いさせちゃうもの。そんなのやだよ」
マルク「わぅんっ」シッポフリフリ
カロル「それでもいいの?」
マルク「あんっ!」コクリ
カロル「ふふ…変なの?」ニコッ
マルク「」ペロペロ
カロル「あはは!もう…マルクったら」ニコニコ
マルク「わん?」キョロキョロ
カロル「うん。もう追ってきてないよ?戻ろっか!」
68: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/20(木) 20:46:32 ID:0fd8NEJ9sQ
―――山小屋―――
ガチャッ
カロル「ただいまー!」
マルク「わうんっ」
母「…おかえりなさい。食べ物採ってこれた?」
カロル「あ…えと…キノコしかなくて…」
母「キノコが採れたの?すごいじゃない!」
カロル「えへへ…ちょびっとだけど」テレテレ
母「…ごめんなさいね。本当はあたしが……」
カロル「ううん、いいの!外で遊ぶついでだから!ね、マルク?」
マルク「あんっ!」
母「…人間に会わなかった?」
カロル「平気だよ!誰とも会ってないから!」
母「そう…じゃあご飯にしましょうか。キノコ貸して?」
カロル「はい?」スッ
69: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/20(木) 20:48:17 ID:0fd8NEJ9sQ
キノコ料理「」プスプス
カロル「わぁー!真っ黒けでおいしそー!」パァァ
母「そう?よかったわ?」ニコッ
マルク「……」ゼツボウ
母「マルクも体大きいんだから食べなきゃダメよ?あたし達に遠慮しないで?」
マルク「あうぅ〜ん…」シュン
カロル「」モグモグ
母「どう?」
カロル「おいしーよ!」ニパッ
母「…王都で食べたのはもっとおいしかったでしょう?」
カロル「ううん?ボクね、お母さまが作るの全部好き!」
母「……!」ジーン
カロル「お母さまが作ってくれるから毎日ご馳走なんだ?」ニコニコ
母「…ありがとう。作った甲斐があるわ?」
カロル「マルクも食べなよ?お腹ペコペコでしょ?」
マルク「……」パクッ
マルク「!?」ゲキマズ
母「やっぱりおいしくなかった…?」ハラハラ
カロル「そんなことないよ!ね?」
マルク「あ、あんっ!」シッポフリフリ
カロル「ほら!おいしーって?」
母「そう…?」ニコッ
70: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/20(木) 20:51:28 ID:0fd8NEJ9sQ
カロル「お母さまー!一緒に寝ていい?」
母「毎日一緒に寝てるでしょう?」クスッ
カロル「うん!マルクもおいでよ!」
マルク「わふーん!」バッ
母「甘えんぼさんね?」クスクス
カロル「甘えんぼでいいもん!ねー?」ギュッ
マルク「わぅんっ」スリスリ
母「あらあら…?」ニコッ
71: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/20(木) 21:00:11 ID:0fd8NEJ9sQ
マルク「」スヤスヤ
カロル「ねぇねぇ、お母さま」グイッ
母「なぁに?坊や?」
カロル「…明日はいっぱい食べ物取ってくるからね!」
母「いいのよ。坊やとマルクの分だけあれば…」
カロル「お母さまにもお腹いっぱい食べさせたいの!」
母「うふふ…二人がお腹いっぱいならあたしもお腹いっぱいよ?」
カロル「そんなのダメ!今日はボクが食べたから明日はお母さまが食べてね?」
母「坊やが食べないならあたしも食べないわよ…?」
カロル「えー!やだよ、そんなの!」
母「…昔みたいにあたしが取りに行けたらいいんだけど」
カロル「いいよ。ボクがいるもの?」
母「…ごめんなさい。あたしが人間を嫌がるから」
カロル「気にしなくていいってば?」
母「あれからどれくらい経ったのかしらね…」
カロル「…わかんない」
母「あたしのせいでごめんね…。ホントならみんなと幸せになれたのに…」
カロル「言ったでしょ?ボクが決めたんだって!」
母「…不幸な昔に逆戻りさせちゃったわね」
カロル「不幸じゃないもん!」
母「あたしは幸せよ?でも…坊やの幸せはこんな形じゃない筈よ」
カロル「ボクはお母さまと一緒がいいの!」
母「…優しい坊やに無理させて母親失格ね」シュン
72: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/20(木) 21:10:35 ID:zZ0LLNhnzs
カロル「お母さま、お母さま」グイグイ
母「なぁに?」
カロル「ボクを見てよ?」
母「…いつも見てるでしょう?」
カロル「じゃあいつもツラそうに見える?」
母「…あたしに気を遣ってるかもしれないじゃない?」
カロル「…ボク、お母さまにウソつかないよ?」
母「…知ってるわ?あなたは優しい子だから」
カロル「ボクね、お母さまがいると安心するんだ?」
母「あたしもよ?」
カロル「遊びに行く時、お母さまに『いってらっしゃい』って言われないと落ち着かない…」
母「……?」
カロル「帰ってきて『おかえりなさい』って言ってくれるのがお母さまじゃなかったらやだ…」
母「……」
カロル「お母さまが作ってくれる真っ黒けなご飯、食べれなくなったら悲しい…」
母「……」
カロル「どんな幸せよりもお母さまと一緒がいいんだもの?」
母「……!」ウルッ
カロル「…不幸になったって平気だよ?
お母さまがそばにいてくれたら何回でも幸せになれるもの?」ニコッ
母「〜〜〜!」ウルウル
カロル「おやすみなさい?」
母「……ゔん、おやすみなさい?」グスッ
73: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/21(金) 21:51:41 ID:3wYAsB3RjM
―――山林(畑)―――
カロル「マルク、ちょっぴり重たいけど我慢してね?」ブチッ
マルク「あん!」ガッチリ
カロル「じゃあ篭に入れるよ?」ポイッ
マルク「わんっ!」
カロル「よかったー!こんな所に果物が成ってて」ブチッ ポイッ
老ホビット「ん…おい、ボウズ!儂の畑で何をしとる!?」スタスタ
カロル「え?」クルッ
マルク「わう?」
老ホビット「儂が丹精込めて育てたハグの実に何をしとると言うとるんじゃ!」
カロル「この果物…おじいさまのなの?」
老ホビット「そうじゃ!この泥棒め!」
カロル「ご、ごめんなさい!返します!」ガサゴソ
老ホビット「もいだ後じゃ遅いわ!?」
カロル「あう……」シュン
老ホビット「あ〜あ!なにしてくれとんじゃか?せっかくの実が台無しじゃ!」
カロル「……」ズーン
老ホビット「見て分からんか?どれもまだ熟しておらんじゃろうに?」
カロル「は、はい…」
老ホビット「こいつが立派に実るにはな、あと4ヶ月かかるんじゃ!老体にむち打ち世話してきたっちゅうのに」
カロル「あ…その……」
老ホビット「あぁ!?言い逃れなんぞさせんぞ!?」
カロル「」パシッ
老ホビット「ボウズ!まだ実をもぐ気か!?子供じゃからと大目に見とれば調子に……」
74: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/21(金) 21:53:15 ID:3wYAsB3RjM
フワッ
老ホビット「……あ!?」
カロル「これで食べられますか?」スッ
老ホビット「ぼ、ボウズ…何をした?青い実が……一瞬で熟成してしまったじゃないか!?」
カロル「おじいさまの実を取ったお詫びに全部実らせてあげるね?」パシッ
フワッ フワッ フワッ フワッ
老ホビット「お、おぉ…!?おぉぉ……!?」ワナワナ
カロル「取った実も返しますね?ごめんなさい?」スッ
老ホビット「い、いや…そんなことより一体どうやって?」
カロル「……ナイショです?」
老ホビット「…も、もしよかったら他の作物も頼めんか?礼にいくらか分けてやるぞ?」
カロル「ホント!?」
老ホビット「あ、あぁ!世話なしに実るならそれ以上にいい事はない!」
カロル「やったー!マルク!今日は篭が重たくなるよ?」
マルク「わふーん!!」
老ホビット「…こっちじゃ。来てくれ!」スタスタ
カロル「はーい!」スタスタ
75: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/21(金) 21:57:15 ID:lBZMgJx./k
老ホビット「やあ助かったわい!ボウズのおかげでどっさり実が成った!」
カロル「ホントにいいんですか!こんなにたくさん!?」
老ホビット「あぁ、いいんじゃよ!新しい芽が出たら、また頼むかもしれんしなぁ!」
カロル「えへへ!ボクの袋いっぱいになっちゃった!マルクの篭もぎっしり?」ズシッ
マルク「う〜…あんっ!」プルプル
老ホビット「ボウズはここで暮らしとるのか?」
カロル「はい、お母さまとマルクと三人で!」
老ホビット「ふーむ…片親か。苦労しとるんじゃのう?」
カロル「ううん!お母さまはおいしいご飯作ってくれるし、マルクが山菜集めるの手伝ってくれるからちっとも大変じゃないです!」
老ホビット「はぁ…幼いのに気丈じゃなぁ。しかし風呂や寝床はどうしとるんじゃ?」
カロル「使ってなさそうな小屋があったからそこに住んでます!」
老ホビット「そうか…」
カロル「はい!」
老ホビット「…この辺は山賊や獰猛な獣も少なからずおるしな。ボウズもあまり動き回ると危険じゃぞ?」
カロル「へぇ…でもボクにはマルクがいますから。ね?」ナデナデ
マルク「うぉんっ!」エッヘン
老ホビット「むぅ…確かに体も大きく、逞しい犬じゃが…それでも精々、ボウズの背丈くらいじゃしなぁ。
グリズリー等に襲われたら一溜まりもないぞ?」
カロル「マルクは鼻がいいんです。大きい獣が近くにいたら教えてくれるもんね?」ナデナデ
マルク「わふん」ルンルン
老ホビット「ほう…そこまで鼻が効くのか。利口じゃのう?」
マルク「あうーん!」テレテレ
カロル「昨日は夢中で山賊の人間に見つかっちゃったけどね?」ナデナデ
老ホビット「なんじゃと?すでに出くわしておったのか?よく助かったなぁ?」
カロル「なんとか走って逃げたけど…もう少しで食べられちゃうとこでした!」テヘッ
老ホビット「お、おぉ…!それはよかっ……ん!?」
76: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/21(金) 21:59:53 ID:lBZMgJx./k
老ホビット「ち、近頃の山賊はホビットを食うのか…。儂も用心しないとな」ブルッ
カロル「怖いですよね。ボクもびっくりしました!」
老ホビット「本当にのう…」
カロル「そういえばおじいさまは一人なの?」
老ホビット「儂か?ほほ……一人じゃよ」
カロル「へぇ!一人でこんなにたくさんの畑を世話するなんてスゴいですね!」
老ホビット「まぁ…の」
カロル「?」
老ホビット「ここはな、儂のふるさとなんじゃよ」
カロル「え……」
老ホビット「この山は元々ホビット族の物じゃったが…60年前に理不尽な侵略を受けて滅ぼされた」
カロル「王国の人間たち…?」
老ホビット「いや、王国だけではない。ここはどうやら王国と他国の国境だったらしくてのう。
この山を越えさせまいと互いに競り合い、儂らは争いに巻き込まれた形じゃ」
カロル「……」
老ホビット「幸いにも火を放たれなかったので畑や家屋は今も無事じゃがな」
カロル「…ふるさとにあった思い出をおじいさまが守ってるんだね」
老ホビット「そんないいもんじゃないぞ?
家屋のほとんどは山賊の寝床になっちまっとるし、作物も獣に荒らされるわ、山賊に掠め取られるわ……」ブツブツ
カロル「あはは…?ぼ、ボクも勝手に住んじゃって…ごめんなさい?」
老ホビット「何を言う!ボウズは儂の恩人じゃ!ずっといてくれて構わんぞ?」
カロル「ホント!?」パァァ
老ホビット「おう、本当じゃとも!こんなに言葉を交わしたのは久しぶりじゃ…可愛い孫が出来たようで嬉しいわい!」ニコッ
カロル「えへへ…!」テレテレ
マルク「あんっ!」シッポフリフリ
77: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/21(金) 22:08:13 ID:3wYAsB3RjM
老ホビット「それに…同族の顔を拝めたのは久しぶりじゃ…。人間の差別が過激になってからは数を減らしたと言うしのう…」
カロル「……」
老ホビット「ボウズも人里から逃げてきたクチか?」
カロル「…そうかも」
老ホビット「ふぅ……やはり人間とホビットは分かり合えんか。これでも90年前にはまだ交流があったりもしたんじゃがなぁ」
カロル「…90年前?おじいさまはいくつなの?」
老ホビット「む?117歳じゃよ?」
カロル「117歳!?」
老ホビット「ホビット族は寿命が長いんじゃよ。儂のじいちゃんなど140歳を過ぎても畑仕事をしとったぞ?」
カロル「へぇ…!すごーい!」
老ホビット「…まぁ儂はそんなに長生き出来んじゃろうな。こんな山奥に何十年も一人でいたんじゃから…」
カロル「…寂しくないの?」
老ホビット「寂しいとも…。すごく寂しい…」
カロル「……」
老ホビット「湿っぽくてすまんの…。年を取ると感情が押さえられなくなってくるんじゃ」
カロル「ううん…おじいさまは山から出ようと思わないの?」
老ホビット「思わんよ。人間と相容れる訳もなし、同族の集落もここのように滅ぼされたじゃろうし…辛い旅になるだけじゃ」
カロル「……そう」
老ホビット「山賊にいびられながらも生活はやっていけてる。それで十分じゃ」
カロル「……」
老ホビット「日の沈まぬ内に帰りなさい。収穫した作物を見ればボウズの母さんも喜ぶぞ?」ニコッ
カロル「…ありがとうございました」ペコリ
マルク「わぅ…!」プルプル
78: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/21(金) 22:12:05 ID:lBZMgJx./k
―――山小屋―――
母「こ、これ全部……坊やとマルクだけで採ってきたの!?」ズッシリ
カロル「う、うん!そうだよ!」アセアセ
マルク「はっ!はっ!」シッポフリフリ
母「見たこともない野菜……果物までたくさんあるのね…。あら、これ…?」マジマジ
カロル「……?」
母「ハグの実ね…。懐かしいわ?」
カロル「知ってるの?」
母「えぇ、お母さんが昔住んでた集落でも作られてたのよ?
ホビットしか栽培法を知らないから人間の住む場所じゃ取れない実なんですって?」
カロル「そうなんだ…」
母「この山にもホビットが住んでたのかしらね…」シミジミ
カロル「……」
母「これは調理しないでそのまま食べられるの。甘くて瑞々しいから坊やとマルクのおやつにするといいわ?」
カロル「はーい!」
マルク「わぅ…」ホッ
79: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/22(土) 21:27:50 ID:BI5nI7D34A
―――山林(畑)―――
カロル「おじいさまー」タッタッ
マルク「」タッタッ
老ホビット「おぉ、よう来たな!今日も食料探しか?」
カロル「ううん!遊びに来たの!」
老ホビット「遊びに?儂みたいな老いぼれを相手してもつまらんじゃろうに?」
カロル「そんなことないよ。またお話聞きたいもの!」
老ホビット「……そうか!」パァァ
カロル「あ、そうだ!ボクたちも何か手伝わせてください?
この前、いっぱいもらっちゃったからお礼します!」
老ホビット「ほほほ!では土は耕しちまったから…種まきをしてみるか?」
カロル「やってみたーい!」
マルク「あぉんっ!」シッポフリフリ
80: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/22(土) 21:35:04 ID:QFizjqWWJ6
カロル「ん…ん…」タシタシ
老ホビット「終わったか?」
カロル「あ…えと…」アセアセ
老ホビット「あぁあぁ、そんなに土を固めてはいかん。種が窮屈じゃと嫌がっておるぞ?」
カロル「あうぅ…」シュン
老ホビット「ほほほ…まあ初めてじゃしな。種一つ植えるのも意外と大変じゃろ?」
カロル「はい…。腕と腰がクタクタになっちゃいました」
老ホビット「もう昼になるしのう。それくらいでいいぞ?」
カロル「でも…種、いっぱい残ってる…」カサッ
老ホビット「急ぐ訳でもなし?ゆっくりやったらいいんじゃ?それより儂の家で飯でも食ってかんか?」
カロル「え…でも……」
老ホビット「ボウズが手伝ってくれたおかげで作業がだいぶ捗ったからのう!」
カロル「そ、そんな…お礼したかっただけで……」
老ホビット「礼には礼をじゃ!大切なことじゃぞ?」ニカッ
カロル「……!じゃあお母さまも呼んでいいですか?」
老ホビット「もちろんじゃ!ボウズの親にも礼を言いたかったからな!」
カロル「じゃあ呼んできますね!」
老ホビット「おう、待っとるぞ!」
81: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/22(土) 21:36:49 ID:QFizjqWWJ6
―――老ホビットの家―――
母「すみません、あたしまで招いていただいて…」
老ホビット「構わんよ!賑やかでいいわい!」トンットンッ
母「この頃、妙にたくさん食べ物を集めてくると思ったら…そういうことだったのね?」
カロル「えへへ…お母さまに言ったら叱られると思って?」
母「叱らないけど…ちょっと貰いすぎじゃないかしら?」
老ホビット「いいんじゃよ!儂が好きでやっとるんじゃから!」トンットンッ
カロル「だって…お母さまにもちゃんと食べてもらいたくて……」
母「気にしなくていいのよ?あなたが食べれたらいいんだから……」
老ホビット「いやいや、それはいかんぞ?いくら子供の為とは言え、親がしっかりしていないと始まらん!」クルッ
カロル「そうだよ。お母さまったら、ここに来てからスゴく痩せちゃったもの?」
母「太ってるよりいいでしょう?」ニッ
カロル「ううん!ちゃんと食べないとダメ!ボク、お母さまがお腹ブクブクでもぜんぜん気にしないよ?」
母「そ、それは…あたしが嫌かも…?」
老ホビット「ほほほ!なんでもいいが今日は儂が目一杯ごちそうしてやるからな!腹一杯食って精を付けろ!」
カロル「やったー!」バンザーイ
マルク「わふーん!」シッポフリフリ
母「ふふ…あたしがご飯作る時よりはしゃいじゃって?」
カロル「えー!そんなことないよ!」
マルク「」ドキンッ
82: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/22(土) 21:37:35 ID:BI5nI7D34A
老ホビット「そぅら、出来たぞ!遠慮せず食べなさい!熱い内にな?」コトッ コトッ
カロル「わー!わー!お母さま!お肉だよ!お肉!」グイグイ
母「そうね!鴨肉かしら?」
マルク「はっ!はっ!」ジュルリ
老ホビット「山の尾根に小さな湖があってな。その畔に水鳥の群れが住んどるんじゃよ。
塩漬けしたものを軽く火で炙っただけじゃが中々うまいんじゃぞ?」
カロル「へぇ…!」キラキラ
母「いいんですか?貴重なお肉をあたし達なんかに……」
マルク「うぅ〜…!」ジュルジュル
老ホビット「これこれ!がっつかんでも誰も取りゃせんよ?
ん?あぁ、いいんじゃよ!ボウズのおかげで今のところ飯には困らんしな!」
母「えっ!まさか…!?」ジロッ
カロル「……!」ギクッ
母「力を使ったの…!?」
カロル「だ、だから言ったじゃない…?叱られると思ったからって…?」アセアセ
母「叱らないわよ?」ニコッ
カロル「……?」
母「…お爺さんの為に使ったんでしょ?優しい子ね?」ナデナデ
カロル「う、うん…!」テレッ
母「でもあたしにナイショだったのはちょっぴりショックかも……」シュン
カロル「」ドキンッ
母「坊やはお母さんを信用してないのね…」
カロル「ち、ちが…ちがうよぉ!?そうじゃなくって…!」アセアセ
母「じゃあもうあたしにナイショで力を使わないって約束出来る?」
カロル「で、できるよ!お母さまに隠し事なんてしないもん!」
母「…許してあげる?」ニコッ
カロル「」ホッ
83: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/22(土) 21:39:04 ID:QFizjqWWJ6
カロル「おいひいへ?おはあひゃま!」モグモグ
母「食べながら喋るなんて行儀悪いわよ?」
老ホビット「こんな山奥じゃ!行儀なんぞ誰も咎めんよ!のう?」
マルク「」ガツガツ
母「クスッ…それもそうですわね?」
老ホビット「楽しいのう…。はぁ…そばに誰かがいるとこんなに楽しいんじゃな……」シミジミ
カロル「?」モグモグ
老ホビット「もう長いこと、ここで暮らしとるが…何もかもつまらんかったわい」
母「……」
老ホビット「ふるさとの畑を耕しているのも今となっては義務感でやっとるだけじゃしな…。
歳を取ると段々、体の節々が傷んで辛いのじゃ…」
マルク「」ガツガツ
老ホビット「…何よりこのだだっ広い土地に一人でボーッとしていると……凄く寂しいのじゃよ」
カロル「……」シュン
老ホビット「誰かと囲んで飯を食うなぞ何十年ぶりか……。
会話をするだけで楽しい。飯を振る舞うのにもやる気が湧く…。今日は楽しい…」
母「…もしよかったら、また坊や達と遊びに来てもいいですか?」
老ホビット「も、もちろんじゃとも!いつでも来てくれ!」
カロル「じゃあボクとマルクで毎日、おじいさまの畑を手伝おっか!」
マルク「わんっ!」
老ホビット「……!」ジワァ
老ホビット「うっ…くぅぅ…!」グスッ
84: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/22(土) 21:42:47 ID:QFizjqWWJ6
老ホビット「ボウズは小柄なのによく食うのう?」
母「そうなんですよ。坊やは昔から食べるのが好きで……」
カロル「らっへ!おいひいんひゃもの!」モグモグ
マルク「」ゲプッ
老ホビット「ほほほ!まだまだおかわりはたんとあるからのう!」
バァンッ!!
全員「」ビクッ
山賊1「おぅい!じいさん!今日も山賊税の徴収に来てやったぜ!」ズカズカ
山賊2「てめぇの畑から作物が無くなってたなぁ!俺らに黙って、なに勝手な事してんだぁ!?」ズカズカ
頭「とりあえず小屋ん中にある食料、全部かっさらうぞ?」ズカズカ
老ホビット「ま、待たんか!先日、納めたばかりじゃろうが!?」ガタッ
山賊1「知りまっしぇ〜ん!」ガサガサ
山賊2「お!なんだ、じいさんだけじゃねぇのか?」
母「」ガタガタブルブル
カロル「…お、お母さま」サスサス
マルク「ぐぅるるるるる…」フシューフシュー
頭「じいさんの娘と孫か?」
老ホビット「い、いや……」
85: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/22(土) 21:43:12 ID:QFizjqWWJ6
山賊1「うまそうなの食ってんじゃーん?えぇ?」ジロジロ
母「ひっ…!」
山賊2「メスとガキか…。メスは俺たちで頂いて…ガキはどっかに売っちまうか!?」ニヤリ
カロル「」ブルッ
山賊2「さっきから顔を附せてやがんな…。人と話す時は目を合わせるって教わらなかったか?」ガシッ グイッ
母「きゃっ!」ググッ
老ホビット「な、何をするんじゃ!乱暴はよさんか!」
カロル「お母さまになにするのさ!?」バッ
山賊2「お!このガキ…生意気だな?」
山賊1「軽くシメちゃうか!」
カロル「お母さまを離してよ!?」
頭「ん!こいつ……こないだのガキじゃねぇか!?」
山賊1「あぁ!本当だ!?」
山賊2「へへ…!あん時のかわいこちゃんか!」ジュルリ
カロル「……!」キッ
マルク「あんっ!あんっ!」
頭「おう、そうだ!間違いねぇ!犬もいるぜ!」
山賊1「へっへっ!この前は逃がしちまったが今度はそうはいかねぇぞ?」
山賊2「へへ…!親子まとめて可愛がってやるよ…!色んな意味でなぁ!」ハァハァ
老ホビット「や、やめろ!ボウズたちは関係ないじゃろ!食料ならくれてやるから帰ってくれ!」
山賊1「うるせぇ!」ドンッ
老ホビット「ぎゃっ」ガタンッ
カロル「おじいさま!?」ダッ
86: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/22(土) 21:44:22 ID:BI5nI7D34A
カロル「大丈夫ですか…?」サスサス
老ホビット「うぐぅ…こ、腰が痛むわい…!」プルプル
カロル「…なんでこんな事するの?ボクたちが何をしたって言うのさ!?」
頭「あぁ?」
カロル「あぁじゃ分かんないよ!ちゃんと答えて!」
頭「こ、この…!?」イラッ
バッ ドフッ ドタッ
頭「あ!?」クルッ
山賊2「こ、このクソ犬!なにしやがる!」ジタバタ
マルク「うぉんっ!うぉんっ!」ガブッ
山賊2「いってぇ!?」
山賊1「ざけやがって!」ドカッ
マルク「ぎゃんっ!」ドタッ
母「」オロオロ
頭「お、おめぇら何遊んでんだ!」
老ホビット「おお!?」
頭「あぁ!?うるせぇぞ、じじ……」
老ホビット「すごいのう!ボウズ!」
カロル「ごめんなさい、ボクのせいで……」
老ホビット「バカ言え!悪いのはこいつらじゃ!」
頭「じ、じじい…立てんのか?」
老ホビット「ほほほ!驚いたか、山賊め!ボウズは魔法が使えるんじゃぞ!」
頭「ま、魔法だぁ…!?」
87: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/22(土) 21:47:51 ID:BI5nI7D34A
頭「魔法なんかあるわきゃねえだろ!デタラメこいてっと承知しねぇぞ!?」
カロル「…謝ってよ?突き飛ばすからおじいさまがケガしたじゃない?」
頭「あぁ!?てめぇ調子乗ってんじゃ……」
カロル「謝ってよ…!」ウルッ
頭「お、おぉ?おめぇ…泣きそうになってねぇか?」
カロル「分かんないんだもん…。誰かを傷付けてるのに……どうしてなんとも思わないの?」ウルウル
頭「はぁ…!?」
カロル「もうやめてよ…。お母さまがまた人間を嫌いになっちゃうよ…」グシッ
母「……!」ズキンッ
頭「わっけわかんねぇっ…な!!」ブンッ
カロル「うあっ!?」ガンッ
老ホビット「ボウズ!?」
カロル「いたっ…い……」ダラァ
頭「へっ!魔法だかなんだかしらねぇが…逆らうなら容赦しねぇぞ?」
山賊2「か、頭!あんまり傷付けっと、いざヤる時に萎えますぜ!?」
頭「ヤらねぇよ!?この変態野郎が!?」
母「ぼ、坊やになにする気なの…!?」ゾワァッ
88: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/22(土) 21:51:50 ID:BI5nI7D34A
カロル「はぁ…痛かった?」スクッ
頭「えっ」
カロル「急にぶたないでよ?」サスサス
山賊1「か、かしら?い、今…確かに殴りましたよね?」オロオロ
頭「あ、あぁ…しかもこん棒でな…?」オロオロ
山賊2「めっちゃ血ぃ出てますけど……」オロオロ
頭「お、おう…ピンピンしてんな…?」オロオロ
カロル「」ジッ
頭「ひぃっ!?」ビクッ
カロル「出てってよ!まだボクたちをいじめるんなら許さないからね!」
頭「(な、なんだ、こいつ…?本当になんともねぇのか!?大の男だってヘタすりゃ死ぬぐらいの威力だぞ…!?)」
カロル「おいで?マルクも蹴られて痛かったでしょ?」
マルク「クゥン……」ヨロヨロ
カロル「癒してあげるね?……はい!」ピトッ
フワッ
マルク「わんっ!!」ピョンッ
頭&山賊1、2「……!?」ビクビクビクゥッ
カロル「…謝んないなら早く出てって!」キッ
頭「ひぃっ!?こいつぜってぇおかしい!?なんかおかしい!?」ダダッ
山賊1「あ!?かしら!?置いてかないでくださいよぉ!?」ダダッ
山賊2「く、くっそぅ!?覚えてろよ!?」ダダッ
ダダダダダッ
89: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/23(日) 21:40:12 ID:UavECGF.sw
カロル「…大丈夫?痛いところないですか?」サスサス
老ホビット「ほほほ!ボウズのおかげでちっとも痛くないわい!」シャキッ
カロル「よかったぁ…」ホッ
マルク「わんっ!」ピョンピョン
カロル「うん、マルクも元気になってよかったね?」ダキッ
マルク「くぅーん!」スリスリ
カロル「よしよし?お母さまもケガしてない?」ナデナデ
母「ありがとう。あたしは大丈夫よ?」ニコッ
老ホビット「…すまなんだな。儂が食事になど招かなければ……」シュン
母「お爺さんのせいなんかじゃありません?」
カロル「そうだよ!ボクとマルクがあの人間たちに会っちゃったから……迷惑かけてごめんなさい」ペコリ
マルク「あぅー…」シュン
老ホビット「な、何を言うか!ボウズ達のせいではないんじゃ!」アセアセ
母「うーん…とりあえずお片付けしましょうか?あの人達が荒らすから散らかってるわ?」キョロキョロ
老ホビット「あぁ!大丈夫じゃ!儂がやるから君たちは帰りなさい!また来るやもしれん!」
母「そうもいきません?ご馳走になってタダで帰るなんて……」
カロル「それに山賊が来たらおじいさま一人だと危ないよ?」
老ホビット「…それはそうじゃが」
90: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/23(日) 21:40:38 ID:YvuzyYVhZU
母「あ、そうですわ?あたし達の小屋に来たらいいんじゃないかしら?」
カロル「そうだね!おじいさまの持ち物、一緒に運ぶからそうしようよ?」
老ホビット「だ、ダメじゃ…それは出来ん」
母「どうしてですの?ここはもう山賊に暴かれてますし……」
老ホビット「儂が残らんとこの家を守る者がおらん…」
母「…何か思い入れがあるんですか?」
老ホビット「あるとも…。この家は儂が妻と息子夫婦と5人で暮らしとった思い出深い場所じゃ」
母「……」
老ホビット「60年前に西国の防衛拠点として占拠され、皆殺しにされてしもうた忌まわしい場所でもあるが…」
カロル「……」シュン
老ホビット「少なくとも家族が眠る地はここなんじゃ。儂は生涯、ここを守り続けたい」
母「…しかたないですわね」
老ホビット「すまんの…。せっかくの好意を無下にしてしまい……」
母「いえ…でも身に危険が迫るといけませんから何かあったらいつでもあたし達に相談してください?」
カロル「ボクもお母さまもマルクもおじいさまの味方だからね!」
マルク「はっはっ!」シッポフリフリ
老ホビット「ほほほ!それは心強いのう!」
91: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/23(日) 21:43:37 ID:YvuzyYVhZU
〜〜〜夜〜〜〜
―――山小屋―――
カロル「」スヤスヤ
マルク「」スヤスヤ
母「……」
『お母さまがまた人間を嫌いになっちゃうよ…』
母「(やっぱり……坊やは今でも…)」
母「」チラッ
カロル「んぅ…むにゃむにゃ…せん…きょうしさまー…」ニヘラッ
母「(毎晩、坊やの寝言はあの人達の事ばかり……)」
母「(……なんであたし、あんなこと言っちゃったのかしら)」
母「(今思うとまともじゃなかったって…自分でも分かる)」
母「(確かにあたしは人間が嫌いだけど、宣教師様達を嫌ってた訳じゃないのに……)」
母「(目を覚ますまで、なんでこんなに時間がかかってしまったの…?
坊やを不幸にしてるって気付いていたじゃない……)」ギュゥッ
カロル「…むにゃむにゃ」スヤスヤ
母「…ごめんね、坊や?」ナデリ
カロル「うぅ…ん」スヤスヤ
母「…本当にごめん。自分勝手なお母さんで」ナデナデ
92: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/23(日) 21:47:08 ID:YvuzyYVhZU
―――山麓の町(酒場)―――
ワイワイガヤガヤ
頭目「」ゴブゴブ
店主「ダンナ、飲み過ぎたよ。そろそろ帰ったら?」
頭目「ぶはーっ!るっせぇんだよ!?飲まねぇでいられっか!?」ダンッ
店主「今日はいつにもまして荒れてるじゃないか。何かあったの?」
頭目「あぁん!?何かなきゃ飲んじゃいけねぇのかよ!?」
山賊1「頭はなぁ!ホビットに煮え湯を飲まされてカンカンなんだよ!」
店主「ホビット?」
頭目「そうだよ!薄汚い野良ホビットの分際で逆らいやがってよ!」
店主「…ホビットと言えば最近、憲兵団や教団から手配書が回ってきてるね」
頭目「てはいしょだぁ〜!?」
山賊2「あれじゃねぇすか?壁に貼ってある?」
頭目「んあ〜?」チラッ
店主「なんでも懸賞金が懸かってるらしいよ。しかも金貨1000枚、笑っちゃう額だよね」
山賊1「金貨1000枚ぃぃ!?」
山賊2「家が建つぜ!?」
頭目「はぁ〜?そんなんで大金が……」ジーッ
93: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/23(日) 21:48:17 ID:UavECGF.sw
頭目「」カランッ
山賊1「…ん?頭?どうかしたんすか?」
頭目「お、オヤジ…人相描きは見えんだが…飲み過ぎたのか字が分からねぇんだ。代わりに読んでくれねぇか?」
山賊2「なに見栄張ってんすか。俺たちゃ元々、字なんか読めないでしょうが?」
頭目「るせぇな!?いいから読めってんだよ!?」
店主「…下記の内容に当てはまるホビットを見つけた者には褒美として金貨1000枚与える。
名はカロル、身長140前後、年齢(捜索開始時)14歳、犬を飼っている。
母親の名はマリー、身長150前後、年齢不詳(巨乳)
発見時にはお近くの王国兵、もしくは憲兵、教団員までお知らせ下さい。
ご協力よろしくお願いいたします…だとさ」
頭目「そ、そうか?ふーん?へー?そうかそうか?」シドロモドロ
店主「狙ってんの?多分ムリだよ?王国と教団が結託して大人数を動員して探させてるけど、捜索開始から1年間、足跡も掴めてないから?」
山賊1「あん?この人相描き……」ジーッ
山賊2「これってあのガキじゃ……」
頭目「あ!?な、なぁんかアレだな!今日は星がキラキラしてんだなぁ!?」ドギマギ
山賊1「は?」
山賊2「ここカウンターっすよ?窓際じゃあるまいし、星なんか見えないっしょ?」
店主「やっぱり飲み過ぎだよ。帰んなって」
頭目「う、ううるせぇな!帰るよ!帰りゃいいんだろ!?」
山賊1、2「?」
94: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/23(日) 21:53:48 ID:UavECGF.sw
―――山道―――
頭目「へへ…まっさかなぁ…そうか、そうかぁ…?」フラッフラッ
山賊1「大丈夫すか?」
頭目「…だぁらよ?あのガキは銭、銭!んで世の中も銭だ?つまり銭なんだよぉ!?ガハハハハハ!!!」ゲラゲラ
山賊1「悪酔いしてんな」
山賊2「千鳥足だし、さっさと寝かせっか」
頭目「あぁ!?バカか!?だぁらあのガキは金貨1000枚なんだよぉ!?」
山賊1「なに言ってっか分かる?」
山賊2「知らん。枯れ井戸の底にまだ水が残ってたから酔い醒ましに飲ませんべ?」
山賊1「ぎゃはは!あんな泥まみれの水飲んだら腹下すぜ?」
頭目「ちぃっ!バカ共が…!」フラッフラッ
ドンッ
頭目「お!てめぇ誰の肩にぶつかってんだぁ!?」ギロッ
兵士「」ギョロッ
山賊1、2「っ!?」ビクッ
兵士「…会いたかったぜぇ?相棒?」
頭目「あ、あいぼ?あぁにってんだぁ!?うぅん!?」
兵士「ふふ、照れるなよ?」ポンッ
頭目「はなしゃがれ!?」バッ
山賊1「てめぇ!俺らにケンカ売ってんのか!?」
兵士「酒場で見てたんだよ。お前らが壁のチラシとにらめっこしてんのをなぁ…?」
山賊2「なぁにぃ…!?」
頭目「ふ、ふざけんない!?ありゃ俺様の獲物だ!横からしゃしゃり出んな!?」
兵士「なるほどな、予想的中ときたか?」バッ
ゾロゾロ ゾロゾロ
山賊1、2&頭目「ひっ!?」
95: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/23(日) 21:56:48 ID:YvuzyYVhZU
兵士「俺は王国に雇われた傭兵部隊の隊長、マドラスってンだ?
短い付き合いになるが、以後よろしくな?」ニヤリ
山賊1「な、なんだよぉ!なんなんだよぉ!?大勢で囲んでどうする気だぁ!?」
マドラス「決まってんだろう?懸賞金の居場所を教えてもらうのさ?」
頭目「……お、俺様が先に見つけたんだぞぉ!!てめぇらになんか教えるかよぉ!?」
山賊1「え!?懸賞金知ってんすか!?」
山賊2「どこ!?どこ!?」
頭目「うるっせぇな!おめぇらはなんで分かってねんだよ!?」
マドラス「選ばせてやるよ?」
山賊1「は?何を?」
マドラス「」クイッ
ヒュオンッ ザシュッ
山賊2「ぐばむはぁっ!?」ズシャッ
頭目「……うお!?」ザッ
兵士2「クックク!」ジャリッ
兵士3「」シャキンッ
山賊1「な、な〜!?」
マドラス「懸賞金の居場所を吐くか、死ぬか…だ?」ニタァァ
96: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/23(日) 21:59:53 ID:YvuzyYVhZU
兵士2「」チャッ
兵士3「」ヒュンッヒュンッ
兵士4「」ジロジロ
頭目「っ…!」ゴクリ
山賊1「か、かしらぁ〜…」ブルブル
マドラス「3秒以内に答えろ。3、2……」
頭目「わ、わかった!言う!言うからよ!」アセアセ
マドラス「1、0…時間切れだ?」
兵士4「ぬんっ!」ヒュオンッ
山賊1「げはぁっ!?」ザシュッ
ズシャッ
頭目「い、言うって!?」
マドラス「3、2……」
頭目「〜〜!?」
マドラス「いぃち〜…ぜぇ〜…?」
頭目「あ、案内する!その方が分かりやすいだろ!?」
マドラス「よし、案内しろ?」
頭目「(た、助かったぁ……)」ホッ
97: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/24(月) 21:52:53 ID:j5u3Ryt06o
〜〜〜朝〜〜〜
―――老ホビットの家―――
カロル「おじいさまー!遊びに来ましたー!」コンコン
シーン
カロル「おじいさまー?」コンコン
母「…留守なのかしら?」
マルク「」クンクン
カロル「でも…畑にいなかったよ?」
母「きっと水鳥を狩りに出かけてるのよ?
あたし達に振る舞って無くなっちゃったから?」
マルク「わんっ!わんっ!」
カロル「……?どうしたの?」
マルク「」クンクン
カロル「…おじいさまの匂いがするの?」
マルク「あんっ!」
母「え?じゃあ寝てるのかしら…?」
カロル「そっちの小窓から声かけてみよっか?」
母「なに言ってるの!そんなことしたら失礼よ?」
カロル「そうなの?」シュン
母「畑仕事で疲れてるでしょうから、そっとしといてあげましょ?」
カロル「じゃあちょこっと覗いてみるだけ!それならいいでしょ?」
母「…起こさないようになさいね?」
カロル「はーい」ソーッ
カロル「」ピョンッピョンッ
カロル「…ん!」ガッ ググッ
カロル「(…届かないや)」ガーン
98: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/24(月) 21:54:59 ID:ss79KI2Bic
カロル「マルク、背中に乗っていい?」
マルク「わんっ!」スッ
カロル「ごめんね!よいしょっ」ヨジヨジ
母「覗くだけにしてね?勝手に入ったらダメよ?」
カロル「……うわぁっ!?」ズルンッ
マルク「あぅん?」
母「きゃっ!?」
カロル「あつっ!」ドタッ
母「だ、大丈夫?頭打たなかった?」ハラハラ
カロル「……!ま、マルク!もう一回!」スクッ
マルク「わんっ!」スッ
カロル「ありがとう!」ヨジヨジ
母「あ、危ないわよ!落っこちたばっかりでしょう!?」ハラハラ
カロル「」ガバッ ググッ
母「あっ!ちょっ…!?ぼ、坊や!?入ったらダメって……」アセアセ
シュタンッ タタタッ
母「な、なにかあったの?」
マルク「わんっ!」コクッ
99: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/24(月) 21:56:33 ID:ss79KI2Bic
ガチャッ
マルク「あんっ!」タタタッ
母「坊や!なにしてるの?勝手によそのお家に上がり込むなんて…!」スタスタ
カロル「……!」ピトッ
母「え?きゃああああ!?」ガクンッ
老ホビット「」
母「し、死んで…る?」ブルブル
マルク「クゥゥン……」シュン
母「…な、なんなの……なんで……」ガクガク
カロル「…もっと早く来てたら…助けられたかも……」スッ
母「…と、とにかく一旦帰りましょ!ここは危ないわ!」
カロル「……」グッ
母「坊や?どうしたの?早く……」
カロル「…ダメ。このままにしたらかわいそうだよ」
母「で、でも…!?」
カロル「お世話になったのに…まだちゃんとお礼してないもん。そんなのダメだよ」
母「……そ、そうね。ごめんなさい、あたし…気が動転して……」
カロル「…マルク、おじいさまをおぶって歩ける?」
マルク「うぉんっ!」コクッ
100: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/24(月) 21:59:50 ID:ss79KI2Bic
―――山林(畑)―――
パッパッ タシタシ
カロル「…おやすみなさい、おじいさま」ギュッ
母「……」ギュッ
カロル「…」ボソッ
母「え…?」
カロル「…なんでもないよ」
母「……」
カロル「……」
母「帰りましょうか」スクッ
カロル「……」
母「坊や……」
マルク「クゥン…」ペロッ
カロル「……」
母「辛いけど…初めてじゃないでしょう?」
カロル「…初めてじゃないね。たくさんあった」
母「……」
カロル「ボクに関わった人がたくさんいなくなったよね」
母「なっ…なに言ってるの?それはあなたのせいじゃ……」
カロル「…ホントにそうなの?」
母「当たり前じゃない。坊やが何をしたって言うの?」
カロル「何もしないよ…。何もしないけど…」
母「そうよ。自分を責めてどうするの?」
カロル「…ボクがホビットで癒しの力を持ってるから……」グッ
母「っ…!」
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