1スレ
少年「ボクが世界を変えてみせる」
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10
2スレ
カロル「ボクが世界を変えてみせる」
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10
―――あらすじ―――
それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました
しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました
そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです
戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました
布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました
それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします
857: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:19:28 ID:Xpa/i5jyug
ネバル「貴族の方々が怒ってまして…我々、役人に圧力をかけてきたです?」
ヒメ「貴族が…?」
ネバル「先日、失脚したお二方が貴族全体に呼び掛けたみたいで…貴族を無下に扱う国王のやり方を非難すると?」
ヒメ「ふーん。それだけか?」
ネバル「え?それだけって…いいですだか?」
ヒメ「あぁ。さしたる問題でもない。無視を決め込め?」
ネバル「で、でも国の予算の半分近くは貴族の財で賄われていて……」アセアセ
ヒメ「大丈夫だ。奴らの扱いもパーティーに出席してだいぶ分かってきた」
ネバル「……?」
ヒメ「爵位を売買出来る制度を廃止する。これで奴らは納得する筈だ」
ネバル「そ、そんな事で…?」
ヒメ「あいつらは自尊心の塊だからな。自分が誰よりも優れてると勘違いしてる。
だが爵位を金で買える制度は貴族の特別さを薄らがせる。あいつらにしてみれば気に入らないだろ?」
ネバル「…そういうものです?」オロオロ
ヒメ「貴族という地位に価値が高まり、自尊心を満たせればいいのさ。
あとはその地位に見合うだけの働きを課してやるだけだ。
それが出来なければ爵位を下げ、働きが認められれば上がっていく。
貴族制度を新たにし、奴らの競争心を利用すれば勝手に働いてくれるだろ。自分の地位を守る為にもな?」
ネバル「は、はぁ…」
ヒメ「やる気のない奴は淘汰される。そろそろあいつらにも責任を持たせないとな?」
ネバル「……」
ヒメ「まぁこれも議会に通して話し合ってもらうから決議は先になるけど…それまでは適当にあしらっておいていいぞ?」
ネバル「わ、分かったです…」シュン
団長「(なんと早い成長を見せるものだ…。即位なされて未だ2年ほどだというのに?)」
858: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:21:16 ID:H6OizUfNzE
ヒメ「話は終わりか?」
ネバル「あ、いや…あの……」モゴモゴ
ヒメ「なんだ、はっきりしろ?」
ネバル「り、リルラ様と何かあったですか?」オドオド
ヒメ「…何かって?」
ネバル「も、揉めてるように見えなくもなくて…」モゴモゴ
ヒメ「何もないさ。あったとしても、おまえが心配しなくていい」
ネバル「で、でも…リルラ様…変な噂があるです」
ヒメ「噂?」
ネバル「庭師のヘレンさんに聞いたですけど…夜中に発光植物の手入れをしてると時折、地下に続く回廊からリルラ様が出てくるのを見る事があると」
ヒメ「なんだと…?」
団長「おかしな話だな?地下には牢屋と宝物庫があるだけだ?
回廊の近辺には使用人達の宿舎しかあるまいに?」
ネバル「関係あるかは分からないですが…前に議会が閉廷した後も軍長を召集して個室で話してたみたいです」
ヒメ「ふーん…」
団長「着々となんらかの準備を進めている訳か…」
ネバル「何もないといいですだが…」
団長「探らせますか?」
ヒメ「あぁ、そうしてみてくれ?」
団長「承知しました」
ネバル「……」モジモジ
ヒメ「ご苦労だったな。下がっていいぞ?」
ネバル「は、はいです…」キュッ
ヒメ「…そんなに不安そうにするな?きっと何もないさ?」ニコッ
ネバル「……」
859: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:24:28 ID:Xpa/i5jyug
ネバル「さ、最後にいいですだか?」
ヒメ「まだあるのか?」
ネバル「へ、陛下は貴族が嫌いですか…?」
ヒメ「? 逆にあんな連中、好きになれるか?」
ネバル「す、好き嫌いはよくない!…っておっ父によく叱られたです。
おいら達が口にしている物は全部、限りある命から頂いたありがたい物だから…感謝して残さず食べなさい、と」モジモジ
ヒメ「いい教えだな。で、それがなんだ?」
ネバル「出過ぎたマネだと分かってるですけど…言わせてくださいです」
ヒメ「……」
ネバル「国民が第一、それは間違ってないです。
でも陛下に付き従って働いてる役人達も…大事な国民だと思うです」モジモジ
ヒメ「……」
ネバル「陛下は貴族の方々が庶民を見下すのを叱ってくれるです。すごく嬉しいです!」
ヒメ「何が言いたいのかまとめろ?」
ネバル「…貴族を好き嫌いする陛下は、庶民を見下す貴族と少しだけ似てる…です。
ひょっとしたらリルラ様との仲も…そういう食い違いがあるかもです」モゴモゴ
ヒメ「……」
ネバル「……」
団長「……」
ネバル「(な、何もおっしゃってくれない…!や、やっぱり怒らせちゃったです…!?)」オソルオソル
ヒメ「…ん、分かった。下がっていい」
ネバル「え?」
ヒメ「聞こえなかったか?下がっていいと言ったんだ?」ジロッ
ネバル「は、はははいぃぃぃ!!!」ダッ
ガチャッ バタンッ!
860: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:26:52 ID:H6OizUfNzE
団長「随分な言われようでしたな?」
ヒメ「…あいつの発言、どう感じた?」
団長「陛下に対してなんたる無礼!ただちに首を跳ね、見せしめに城門前に飾ってくれよう!!」
ヒメ「……」
団長「…とでも申すべきなのでしょうが正直、ワシはあの青年に見込みがあると感じました」
ヒメ「そうか」
団長「下心のない意見、立場を顧みぬ勇気、そしてなにより…本気で陛下を想い、まっすぐな気持ちで向き合おうとしている」
団長「投票で役人の座を勝ち得たそうですが…なるほどまさしく庶民の代表に相応しい?」
ヒメ「おまえもそう思うか」
団長「…どことなくあなたのご友人を思わせる人柄ですな?」
ヒメ「まぁ、あいつほど能天気じゃないけどな」
団長「…陛下は先の発言をどのように感じられたので?」
ヒメ「…そうだな」
団長「……」
ヒメ「僕には足りない物が多すぎる。はたしてこの器に収まり切るのか…ちょっと心配だ」
団長「陛下の器はこれから更に広がりますとも。また新たな成長の兆しが見えましたな?」ニコッ
ヒメ「あぁ…」
団長「ではリルラの不審な行動について調査を進めてまいりましょう」
ヒメ「…待て」
団長「は…?」
ヒメ「他に調査してもらいたい事がある。頼めるか?」
団長「…無論にござる。何なりとお申し付けくだされ?」
861: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:30:06 ID:H6OizUfNzE
―――王国軍の砦―――
フィクサー「これはこれはルフィアス団長。わざわざ明朝に我が居城まで足を運ばれるとは珍しい事もあったものだ?」
団長「突然の訪問にも関わらず応じていただき、恐れ入ります。貴殿に一つ確認したい事がございましてな」
フィクサー「確認?」
団長「ここ最近、軍備を整えておられるとか?」
フィクサー「えぇ、いかにも?」
団長「これはどういった事態に備えてのものか尋ねたい?」
フィクサー「他国による不法侵入、または不当な侵略行為に対する制裁措置、及び国内に起きるであろう多様な問題への配慮、と言いましょうか」
団長「では決して西の国に向けたものではないと?」
フィクサー「そうですね。ある一点に捉えた考えは致しておりません」
団長「なるほど…」
フィクサー「とは言うものの…いつ何が起きるとも限りません。此度に備わった武力の矛先が西の国となる可能性も無いとは言い切れないでしょうね」
団長「しかしそれは仕掛けられた場合であろう?」
フィクサー「西の国の出方次第と考えております」
団長「?」
フィクサー「もしもあちらに争う意思があると見受ければ…我々、軍部を取り仕切る人間は国の守護者として相応の働きを民に示さねばなりません」
団長「むぅ…それは全くその通りだが?」
フィクサー「我々は現制度におきまして、その指揮権をリルラ政務官に預けております」
団長「…政務官の指示いかんによっては侵攻も辞さないということか?」
フィクサー「そうする場合には政務官の方から陛下の許諾を得ていただく必要がございますがね」
団長「では陛下の意思が確固たるものであれば問題が拡大化する心配はないのだな?」
フィクサー「断言はしかねます」
団長「なぜだ?」
フィクサー「降りかかる火の粉は払い、燃えいずる火の気は鎮めねばなりますまい?
軍部の長には…独自に自衛を働かせる権限がございますのでね?」
862: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:32:56 ID:H6OizUfNzE
フィクサー「確認は以上でよろしいか?」
団長「うむ…フィクサー殿は確かに優秀な軍師だ」
フィクサー「? 光栄にございます…?」
団長「だが君が勝ち取ってきた名誉は所詮、盤上の競技に過ぎない」
フィクサー「……」
団長「戦争とは始めれば二度とやり直せない事実だ。認識を誤ってはならん」
フィクサー「お言葉ですが…戦争においての無知はお互い様でしょう?」
団長「まぁそうだが…あくまで忠告として受け止めてほしい」
フィクサー「承りました。肝に銘じておきましょう」
団長「…では」ガタッ
フィクサー「…ルフィアス殿、僭越ながら、わたしからも一つ忠告が?」
団長「なんだ?」
フィクサー「貴方とわたしでは役職が異なる。
次回から、こういった無用な圧力は越権行為と見なし、報告に上げさせていただくので…くれぐれも慎重に?」
団長「…今のやりとりの何が越権行為だと言うのだ?」ギロッ
フィクサー「不快に思われたなら謝罪しましょう。しかし…わたしは時間の消費を何より嫌っておりましてね」
団長「ほう?ワシとの話は無駄な時間だったか?」ピキィッ
フィクサー「そうは申しておりませんが…なにぶん事前の伺いもなく訪れてくださったもので本日の予定を大幅に押してしまったのですよ」
団長「ふん…。それは悪いことをしたな?」
フィクサー「いえ、次回からお願いします?」
団長「……失礼した」ガチャッ
バタンッ
863: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:34:53 ID:Xpa/i5jyug
副官「失礼します。南の領土より参られたルウェーク領主殿とドレッド軍長が総軍長の不在に痺れを切らしておりますが…」
フィクサー「そうか」ガタッ
副官「ところで…先ほどルフィアス団長がお越しになられたそうですが一体、何用で?」
フィクサー「雑音を散らされた…。聞く耳を持つのも一苦労だな」
副官「熱い御仁であると伺っておりますが、まさしくその通りでしたか?」
フィクサー「加齢臭にまみれた子守り好きな情熱家といったところか。古参であるだけに扱いに困る人物だ」
副官「ぷっ…くく!総軍長殿も口が過ぎるのでは…?」ニヤニヤ
フィクサー「あの手の輩は易々と指揮下に収まりそうにないな。
その日が来たら真っ先に死地へ突撃させてやるか…」トントン
副官「くく…聞かなかったことにしておきましょうかね」ニヤニヤ
フィクサー「…兵の訓練は進んでいるか?」
副官「えぇ、えぇ、そりゃもうメキメキと?」
フィクサー「…なら、そろそろか。国境付近の貿易商団連にそれとなく流せ」
副官「東の辺境ミラルド…でしたっけな?しかしよろしいので?どなたかの指示を待たずに実行してしまっても?」
フィクサー「この程度の問題で頭を悩ませる無能な役人の意見が必要か?」
副官「おやおや、今日は耳が遠いようだ?」ホジホジ
フィクサー「…喰わせ者め?」ニヤッ
副官「その商団連筆頭金主であるルウェーク卿をお待たせしてしまってますし急がれた方がよろしいのでは?」ニヤニヤ
フィクサー「そうだな。行くぞ…」スタスタ
副官「えぇ、えぇ、お供しますとも」スタスタ
864: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:37:06 ID:H6OizUfNzE
―――ミラルドの町(孤児院)―――
ミシング「はーい!ちゅうもーく!」
全員「???」
ミシング「いきなりだけど道徳のお勉強をしまーす!」
ルーボイ「えー!?勉強〜!?」ブーブー
ミシング「はい、ブー垂れない!それじゃ問題、ここに7個のチョコレートがあります!
でも子供たちは8人!このままでは1人だけ食べられません!
さて、8人で仲良くおやつを分けるにはどうしたらいいでしょーか?」ジャジャン
母「いい問題ですわね?」ニコニコ
ミシング「でしょでしょー!もうすんごい考えたんですからー?」
ルーボイ「よーし!んじゃどうするか決めよーぜ?」
孤児1「はーい!」
ルーボイ「おっ!なんか思い付いたか!」
孤児1「たべたーい!」
ルーボイ「」ガクンッ
ラム「ルーボイが食べなければいいんじゃない?そしたら7人で1個ずつ分けれるから?(論破)」
ルーボイ「はぁ!?なんで俺だけなんだよぉ!?」ガァーッ
ラム「譲る事と我慢する事、道徳的な二つの答えが出たよ?やったね、ルーボイ!」グッジョブ
ルーボイ「なんにもやってねぇよ!俺ばっか損じゃんか!?」
ラム「へー…損得で考えるんだ?君もまだまだだね?」クスッ
ルーボイ「うるせぇ!屁理屈言うなし!?俺だけ食えないなんてやだからな!?」プンスカ
カロル「うん。みんなで食べた方がおいしいもんね!」ニコニコ
ホビット2「そうですよ!平等に分けましょう!」
ルーボイ「へへーん!どうだ、バーカ!みんなもそうだってよ?」ドヤァッ
ラム「ま、なんでもいいけど早く決めてよね?」プイッ
ルーボイ「くっ…ムカつく!」イライラ
865: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:38:52 ID:Xpa/i5jyug
ナラ「はんぶんこ…するのは?」
ルーボイ「そしたら半分こしたヤツが少なくなんじゃん」
ホビット2「じゃあみんなのをちょこっとずつ分けましょう!」
ルーボイ「7個のおやつを一口ずつだと…なんかそいつだけいっぱい食ってねーか?」
ラム「さっきから聞いてるとセコいよね、君って?誰の方が多いとか少ないとか…?」シラー
ルーボイ「う、うるせぇな!?ふこーへいはダメだから言ってんだよ!?」
ホビット3「じゃあルーボイさんも案を出してくださいよー?」
ルーボイ「ん?うーん…じゃんけん!」
ズルッ バタバタ
ルーボイ「なんでずっこけんだし!?」ビックリ
ホビット3「そ、それだと結局、負けた子が食べれなくて不公平じゃないですかー!」
ルーボイ「勝負だからいいんだよ!」
ホビット2「そんな理不尽な……」ハァッ
866: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:39:53 ID:H6OizUfNzE
カロル「ねぇねぇ、ミシングさんとお母さまとマルクもいるから11人で分けようよ!」
ルーボイ「なんでだよ!?増えたら、もっとめんどくせーだろ!?」
カロル「でもみんなで食べた方がおいしいよ?」ニコッ
ルーボイ「そういうことじゃねーっつの!?」
母「ふふ。あたし達は平気だからみんなで分けてちょうだい?」クスクス
ミシング「そうそう!子供たちに食べてほしくて買ったんだからさ!」ニコニコ
カロル「マルクはいいの?」
マルク「わんっわんっ!」コクコク
カロル「そっか!ありがとう?」ナデリ
ルーボイ「(わんっしか言ってねーだろ)」シラー
孤児1「はやくたべたいー!」
孤児2「ぼくもー!」
ルーボイ「だーかーら!みんなでどうやって分けるか決めんだろ!?」
ナラ「あ、そうだ!」ピコン
ルーボイ「ん?なんだよ?」
ナラ「チョコレートだから、とかして、かためたら8つにできるよ?」
ルーボイ「おっ!そっか!そうすりゃこーへいだぜ!」
カロル「ナラすごーい!」パチパチ
孤児1「ナラねーちゃん、あたまいいー!」キャッキャッ
ラム「じゃあ解決だね。ミシングさん、どう?」
ミシング「100点満点!花丸あげちゃう!」グッジョブ
母「料理をする女の子ならではの発想ね。とてもいい答えよ?」ニコッ
ナラ「えへへ…」テレッ
867: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:41:31 ID:Xpa/i5jyug
ミシング「でもね、このお勉強で一番大事なのは答えよりもみんなで話し合って考えることなの!」
ルーボイ「はぁ?なんでだよ、答え出なきゃ意味ねーじゃん!」
ミシング「どうしたら平等になるか、その答えを出すには8人、全員の意思を尊重して考えなきゃいけません!
誰か一人でも納得しなかったり、ズルしちゃったら全部ダメになっちゃうもんね!」
ホビット2「たしかにそうですね!」
ミシング「でしょー?で、あたしの独断と偏見で答え合わせしちゃうとね?
まずみんなの意見を聞こうとしたルーボイくん!大正解!」
ルーボイ「へへ!」テレッ
ミシング「でもじゃんけんはないよねー。あと怒りすぎ。ケチ臭い。とりあえず80点かにゃー」
ルーボイ「」ズルッ
ミシング「お次におチビちゃんたち!正直でよろしい!100点!」
孤児1、2「わーい!100てーん!」キャッキャッ
ミシング「ナラちゃんも積極的に意見を出したし優しさ抜群だったよねー!100点!」
ナラ「そ、そう…かな?」テレッ
ミシング「ホビットの二人も間違ってる事は間違ってるって言えたよね!
それって勇気がいることだよ?というわけで100点!」
ホビット2、3「……!」モジモジ
ミシング「カロルくん、ちょっと意見はズレてたけど他の人にも気配りが出来てたね!
自分たちだけじゃなくて、そこにいるみんなで分けようっていう発想はあなたらしくて良かったよん?100点!」
カロル「やったー!」バンザイ
ミシング「ラムくんもいいボケだったよー!100点!」
ラム「やったー」ボーヨミ
ルーボイ「やったーじゃねーっつの!」プンスカ
ミシング「とにかくみんなよく出来ました!お勉強はおしまい!仲良くおやつを食べましょー!」
ワーイワーイ!
母「ふふ。道徳心を学んで深め合える良いお勉強でしたわね?」ニコニコ
ミシング「ま、まぁー…?あははのは!」アセアセ
ミシング「(本当はおやつ1個買い忘れちゃっただけなんだけど…てへっ)」ペロッ
868: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:56:34 ID:H6OizUfNzE
〜〜〜夜〜〜〜
―――共用部屋―――
ミシング「じゃあ灯り消すよー!」
ハーイ!!
フッ シュッ………
ミシング「夜更かししてたらお仕置きオバケのお夜食にしちゃうからねー?じゃ、おやすみ〜!」
バタンッ
ルーボイ「お、おぉぉオバケなんていねーし!オバケなんていねーし!」ガクガクブルブル
孤児1「オバケこわーい…」ブルブル
孤児2「ママー…」
ラム「なにが怖いんだろうね?触れもしないし、精々脅かすだけでしょ?無視すればいいじゃん?」
ナラ「…そういうことじゃないとおもう」
孤児1「…こわいもん」
カロル「オバケがいたら、ともだちになりたいね?」ワクワク
ラム「それもどうなの…?」
ルーボイ「なかよくなんかなれねーよ!死んでんだぞ!」
カロル「? どうして?」
ルーボイ「はぁ?こ、怖いだろ!死んでるヤツが出てきたら!」
ナラ「やっぱりこわいんだ?」
ルーボイ「こ、ここ怖くねーし!?」
869: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:58:31 ID:Xpa/i5jyug
カロル「オバケだって生きてたんでしょ?どうして死んじゃったら怖くなるの?」
ルーボイ「はぁ…!?お、おどかしたりすんからだろ!」ブルッ
カロル「いたずら好きなんだよ。一緒に遊んだら楽しそうじゃない?」ニコニコ
ルーボイ「ふ、不思議な力で物を動かしたりすんだぞ!?」
カロル「気付いてほしいんじゃないかな。誰にも見えないのって寂しいもんね?」ニコニコ
ルーボイ「こ、子供を食べるんだぞ!」
カロル「へ?オバケなのにお腹空くの?」キョトン
ルーボイ「し、知らねーよ!」
カロル「じゃあ食べないんじゃない?」ニコニコ
ルーボイ「なんでそんなオバケの味方すんだよ!?」
カロル「…だってボクがオバケになったら、きっと同じことしちゃうもの」
ルーボイ「はぁ…!?」
カロル「見えなくても触れなくても、ここにいるよって知っててほしいんだ?」
ルーボイ「意味わかんねーし…」ブツブツ
カロル「それに…ボクがオバケになっても、みんなに嫌われたくないな。
生きてた時みたいに仲良くしてほしいって思うよ?」
ルーボイ「無理だっつの。見えねぇし触れねぇんだから?」
870: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 23:02:29 ID:H6OizUfNzE
カロル「ふふ。じゃあさ、ここにいるみんながオバケになっても、またこうやってお話しよ?」ニコニコ
全員「?」キョトン
カロル「おんなじオバケなら、きっと見えるし触れるよ。
それなら生きてる人を脅かさなくても寂しくならないもんね?」ニコニコ
ルーボイ「っ…こえー話すんなよ!」
ラム「そう?僕は賛成だけど?」
ナラ「わたしも…しんじゃっても…みんながいてくれたら、それでいい…かな」ニコッ
ルーボイ「し、死ぬとかやめろよ。こえーな…」
孤児1「いんちょーもママもミシングねえさんもオバケになるの?」
カロル「うん。みんな、そばにいてくれるよ」ニコッ
孤児1「えへへ〜…」ニマァァ
孤児2「ぼく、オバケでいいやー…」ウトウト
ルーボイ「なんでオバケが怖い話からオバケになる話になってんだよ…」
カロル「えへへ…わかんない?」ニコニコ
ルーボイ「なんだ、そりゃ」
ラム「僕らはここしか居場所がないしね。オバケになって住み着くのもありかもよ?」
ナラ「ずーっといっしょがいいよ」ニコニコ
カロル「ねー」ニコニコ
ルーボイ「全然わかんねぇ…」
871: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 23:04:21 ID:H6OizUfNzE
ガチャッ
布のオバケ「」ヌラリ
全員「!?」バッ
布のオバケ「寝ない子だれだー!がおー!?」バサッ
ルーボイ「ギャアアアアア!!!!?」ビクビクビクゥッ
布のオバケ「寝ない子は食べ散らかしてやるー!」ドタバタ
ワァーワァーキャーキャー!
ラム「…白い布なんか被ってなにしてんの?ミシング姉さん?」
布のオバケ「っ…」ギクッ
カロル「ミシングさん…なの?」オソルオソル
布のオバケ「ちがいまーす。お仕置きオバケでーす」ルンタカタッタ
ルーボイ「おどかすんじゃねぇよ!?」ガバッ
布のオバケ「寝ない子はお尻ぺんぺんの刑に処すのだー!がおー!」ガシッ
ルーボイ「ぎゃあー!やめろよー!?」アワアワ
孤児1「ルーボイ兄ちゃん!?」
ルーボイ「うわー!?バカ!やめろ!みんなにケツ見えちゃうだろー!?」ジタバタ
ナラ「っ〜〜〜!」カァァ
布のオバケ「いっくよー!?」ブンッ
バシンッバシンッ
イテェェェェェェ!! ゴメンナサーイ!!
アハハハハハハ!
872: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 23:06:25 ID:Xpa/i5jyug
布のオバケ「はい。お尻が真っ赤にならないように寝ましょうね!ではさらばじゃ!」タタタッ
ルーボイ「なんで俺だけ…」ヒリヒリ
ズルッ ドタッ
ラム「あ、こけた」
ミシング「やーん!裾踏んじゃったー!」ムクッ
孤児1「ミシングねえちゃんだー!」
孤児2「オバケじゃなーい!」
ミシング「げげっ!バレちゃった!とにかくみんな寝るの!分かった?」
ハーイ
ミシング「はい、よいお返事!おやすみ〜!」ガチャッ
バタンッ
ナラ「ねよっか?」
ラム「そうだね。今度は本気で叱られそうだし…」
ルーボイ「ケツいてぇ…」シクシク
孤児1「おやすみなさーい」モゾモゾ
孤児2「んぅ〜…ねむーい」ゴロン
カロル「…おやすみなさい」
シーン
カロル「(今日のおやつみたいにみんなで仲良く分け合えたら、あの旅で会ったみんなも悲しまなくて済んだのかな…)」
カロル「(…ここはなくしたくないなぁ…。みんなといたい…。ずっと)」ウトウト
カロル「(こんな日が続きますように……)」スヤスヤ
873: 名無しさん@読者の声:2015/7/24(金) 01:15:04 ID:twoOi/uGe.
ミシングさんマジで惚れました結婚してください。
CCCC!
874: 支援ありがとうございます! ◆WEmWDvOgzo:2015/7/24(金) 22:59:30 ID:ADKExpv6rc
>>873
ミシング「やーん!なにそれー!本気にしちゃうじゃーん!やめてよ、もーう!?」バシバシッ
宣教師「ですから何故、私をバシバシ叩くんですか…!」イライラ
ミシング「あたしっていつもスレ終盤になるとモテ期到来なんだよねー!
後からジワジワきちゃうタイプだったりして?」キャピッ
宣教師「はいはい、よかったですね!あなたも団長さんも読者の方に好かれてて!私なんて未だに名前すらもらえないのに…」ブツブツ
ミシング「キャハハハ!宣教師ってば準主人公なのに名前ないんだもんね!なんでだろうねー?」ケラケラ
宣教師「知りませんよ!!私と話すより勇気を出して告白してくださった873さんにお返事を返したらどうですか!?」
ミシング「いいよー!結婚しちゃおっ!」アッケラカン
宣教師「(か、軽い…)」ガーン
ミシング「なーんちゃって!あたし年上のダンディーなおじさまじゃなきゃダメなんだー?そーゆーわけでごめんなさい!」ペコッ
宣教師「(そ、そういえばミシングは趣味が偏ってましたっけ)」
ミシング「年上好きの私より年下趣味で少年大好きな宣教師の方が可能性あるかもよー!じゃ、バイバイ!」ダダダッ
宣教師「だ、誰が少年大好きですか!?待ちなさい!?」ダダダッ
ワァーワァーギャーギャー
ミシング「ごめんごめん、ゆるしてー……あ、言い忘れちゃうとこだった!支援ありがとね!」フリフリ
宣教師「あなたという人はいつもいつも……ハッ!す、すみません。
これからもあたたかい目で見守っていただけたら幸いです」ペコリ
『※このやりとりは本編とは無関係です』
875: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:20:39 ID:kGLpDrdDWs
〜〜〜数日後〜〜〜
―――城(王立図書館)―――
ヒメ「」ペラッ
ヒメ「…」パタンッ
学者「お探しの物はございましたか?」
ヒメ「…歴史書はこれで全部か?」
学者「陛下が未読の物は全てご用意させていただきました」
ヒメ「…ふーん。そうか」
学者「お探しの資料がないのでしたら国内の書を管理する機関にお問い合わせしましょうか?」
ヒメ「うん。頼む」
学者「かしこまりました…」
ヒメ「すまないな」スクッ
学者「いえ…あっ!?何をなさって…!?」ビクッ
ヒメ「ん?」スッ
学者「へ、陛下自ら書棚に戻さずとも我々がしまいますので!?」アタフタ
ヒメ「子供扱いはよせ。自分で出来る事は自分でする」スッ
学者「そ、そうではなく国王陛下にそんな事をさせては我々がお叱りを受けまするので!?」アタフタ
ヒメ「……」ジロッ
学者「は…!?」
ヒメ「国王ともあろう者が自分で読んだ本の始末もろくにせず、散らかし放題で家臣任せにする品性のねじ曲がったお坊っちゃんであると囁かれても…僕に何もさせないのか?」ムスッ
学者「い、いえ…そのような…?」ブルッ
ヒメ「じゃあ咎めるな」スッ
学者「……」ポカーン
ヒメ「よし…これで全部だな。あ、巻数順に並べたけどよかったか?」スッ
学者「は、はい…問題ありません」オロオロ
876: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:23:08 ID:rR12EivkCY
ヒメ「ところで…ここに置いてある文献はどこにも出回ってない代物なんだよな?」
学者「は、はい!他にない貴重な書物ですので原本を厳重に保管しております!」
ヒメ「そうか…」
学者「そ、それが何か…?」
ヒメ「…ここの書物の写しを作成させる事は可能か?」
学者「は、はぁ…可能ですが全ての物を書き写していくとなると…広い作業場と豊富な人材、主に紙やインク等の大量の資材もそうですし、何より膨大な時間を要するかと?」
ヒメ「ふーん。ならおまえを責任者に任命するから書物の写しを作成してくれ。
必要経費は国が負担するし、なるべく広くて活動的な場所を用意させる。
人材は各斡旋所に募集を掛けて、教団にも一部の難民、ホビットに掛け合うよう協力要請を出すから」ペラペラ
学者「お、おおお待ちください!?」
ヒメ「…なんだ?」
学者「なぜ突然、そのような考えに踏み切ったのですか!?」
ヒメ「これだけ貴重で内容の厚い書物をここに眠らせておくのはもったいないだろ。写しを大量に作って全国に配布するべきだ」
学者「はいぃぃい!!?」
ヒメ「ここには医学書も学術書もあるし、政治・経済・宗教・偉人伝と豊富な種類の教養が備わってる。
これだけの実用性ある書物が世に出れば必ず人々の役に立つ筈だ」
学者「し、しかし世界に一冊しかない貴重な書物を写して、しかも衆人環視の目に晒すなど恐れ多い…!?」
ヒメ「世界に一冊しかないのと書物の価値は関係ないだろ。大事なのは内容だ」
学者「で、ですが…」
ヒメ「読まれない本に価値なんかない。多くの人の目に触れて初めて価値が見いだされるんだ」
学者「くっ……」
ヒメ「文化は皆で共有してこそ成り立つものだ。
ここに置き続けて読めなくなるより広く行き渡らせた方が筆者も喜ばしいと思うけどな?」
学者「か、かしこまりました…」
ヒメ「じゃあ任せたぞ?」スタスタ
学者「(噂には聞いていたが、なるほど変わったお方だ…。先代は城内の管理どころか単独行動さえ取らなかったが…)」マジマジ
877: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:25:33 ID:rR12EivkCY
―――公務室―――
ヒメ「……」ペラッ
ヒメ「(この国の歴史のほとんどが闇に葬られ、空白の章を残している。
きっと"終わらない争い"の事実を隠し通す為に関連する史実はまとめて処分して改竄させられたんだろうな…)」
ヒメ「(まるで…その時代を生きた人達はいなかったかのように)」シュン
ヒメ「(…文化を保持していくのも僕らの大切な役目だ。
王国が未来を生きていく為にも……今を生きる人達の存在を証明しておかないと)」
ヒメ「(ネバルの言う事は最もだな。僕はなんでも決め付けすぎる。
国を守っていくには…過去、現在、未来を隅々まで見渡せる広い眼が必要だ)」
ヒメ「(王という重い立場を引き受けた以上は国民達に『こんな時代に生まれなきゃよかった』なんて…絶対に言わせたくない)」グッ
コンコン コンコン
ヒメ「入れ」ペラッ
団長「失礼します!陛下!」ガチャッ
ヒメ「早かったな」パタンッ
団長「ハッハッ!これでも馬術には覚えがござるので!」
ヒメ「武においても王国随一、剣においては天下一、馬を走らせても超一流か?
これで知に長けていれば言うこと無しなんだけどな?」ジトッ
団長「(…す、素直にお褒めにはなられないのですな)」ガクッ
ヒメ「ま、それでも僕にはもったいないくらい誇れる配下だ?」ニコッ
団長「へ、陛下ぁぁ…!」ウルウル
ヒメ「あぁ、泣くなよ?おまえの泣き顔を見ると心底うんざりするから?」シラー
団長「(やはり最後は落とされるのか…!?)」ガーン
878: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:28:26 ID:XBpzw2ybEc
団長「陛下に頼まれた通り、軍部の長に問い合わせてまいりましたぞ!」
ヒメ「フィクサーだったっけな?僕はあまり関わりがないけど…政務官と繋がりが深いんだろ?」
団長「はっ…おそらく政務官の目論みに加担しているものと思われます」
ヒメ「ふーん…他にもいるのか?」
団長「今のところ城内には際立って不審な動きを見せる者はおりません」
ヒメ「そうか…」
団長「陛下の方に奴からの接触はございましたか?」
ヒメ「いや、あいつはしばらく王都を離れてるから大丈夫だ」
団長「では…地下に探りを入れてみますか?」
ヒメ「そうだな…。内輪揉めもいい加減煙たいし、そろそろ決着を着けるか」
団長「ははっ!!」
879: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:31:01 ID:XBpzw2ybEc
〜〜〜夕方〜〜〜
―――城(地下牢獄)―――
カツンカツン カツンカツン
アントリア「……?」
見張り1「こ、こちらになります。暗いのでお足元にお気をつけくださいませ…」ビクビク
ヒメ「ケホッ…こんな所だったのか。いやに埃臭いし、狭苦しくて不気味だな?身体が全く受け付けないぞ…!」ムズムズ
団長「罪人の檻なのですから当然にござる。なるべく長居は無用ですな」
アントリア「おや、これは珍しい来客だ…?」
ヒメ「ふん…二度と会う事はないと思ってたけどな?」ジロッ
アントリア「国王自ら罪人の食事を運びに来てくれたのかな。なんと慈悲深い?」
ヒメ「……」
団長「こやつ…!陛下に対してなんたる無礼…!」
アントリア「クックッ…いいものだね。反応が返ってくるというのは?
もう長いこと言葉を発してこなかったが…やはり会話は心が躍るものだよ」クスクス
ヒメ「白々しい芝居はやめろ。腹黒い道化師が?」ジロッ
アントリア「…なんとも手厳しい?」
ヒメ「(こいつ…!)」ギリッ
880: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:32:29 ID:rR12EivkCY
団長「貴様、性懲りもなく、またよからぬ企てを謀っておるな!?」カッ
アントリア「企て…なんの事だろうか?」
団長「調べは付いているのだぞ。コソコソと政務官に接触しおって…!」
アントリア「ハハハ…言い掛かりはよさないか?
このような地下に封じ込められた身に今さら何が出来ると言うのだね?」クスクス
団長「しらばっくれると承知せんぞ!?」ズイッ
アントリア「…よく見たまえよ?」ジャラッ
団長「……!?」
アントリア「か細く萎びた四肢に繋がれた重く冷たい鉛の枷…柔く脆い首に括られた分厚い荒縄……」ギシッ
アントリア「一切の挙動も許されぬ状況下で手厚く保護され、強制的に生かされる哀れな老人の気持ちなど…。
若さに溢れ、眩いばかりの栄光に照らされた国王陛下は考えた事すらないだろう…?」
ヒメ「考える気にもならないな?おまえのしてきた事を思えば…まだまだ生ぬるい!」キッ
アントリア「残酷だねぇ…。君のお父上はいくらか情を残しておられたが…?」
ヒメ「おまえが父上を語るな!?」ガッ
アントリア「おぉこわい?今にも喉元を貫かれそうだ?」クスッ
ヒメ「…そうやってやり過ごす気なら、それでいいさ?
こっちもおまえになんか最初から何も期待してない?」
アントリア「ふふ…」ニヤリ
881: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:35:03 ID:XBpzw2ybEc
団長「おい、隣の独房を解放しろ」
見張り1「は、はい!只今!」ジャラッ
アントリア「……?」
カチャカチャ パキンッ
見張り1「で、では…開けます!」ガッ
ギィィィィィイイイ
アントリア「(あの部屋は……)」
初老の女「」ダラァァァァン
団長「ふん、ベルを鳴らして叩き起こせ」
見張り1「はっ!」ガンッガンッ
初老の女「ん……うぅ」ヨロッ
ヒメ「団長、ランタンの灯りをそいつに向けろ」
団長「はっ!」パッ
サァァァァァァァ
初老の女「ひぃっ!?まぶしっ……」キュッ
ヒメ「(やつれたな…。髪が真っ白に変色して抜け落ちた毛が床に散乱してる…。
骨の突っ張った皮一枚の身体…肩幅も狭まって囚人服の襟がずり落ちてる…。まるで生きる亡者だ)」
初老の女「だ…れ?ひぃぃ……し、し、しけ…い?し、ししし死にたくなあいぃぃぃぃ…!!」ガタガタ
団長「騒ぐな!貴様に聞きたい事がある!?」
初老の女「ひゃっ…ひゃっ!ウヒャアアアア!!いやだぁあああ!!」ジャラジャラ
団長「ちっ…これではラチがあかん!」イラッ
882: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:36:11 ID:XBpzw2ybEc
ヒメ「アリアス!」
初老の女(アリアス)「」ビクッ
ヒメ「ここから出たいか?」
アリアス「あ、あぁうっ…あふぅぅうう!!」コクコクコクコク
ヒメ「それなら僕らの質問に偽る事なく答えろ」
アリアス「あた…し…出してぇ…!」ウルッ
ヒメ「アントリアはここで誰と何を話していた?」
アリアス「だじでょぉぉお!!!」ガシャンガシャン
ヒメ「答えられないのか!?」
アリアス「ダセェェエエエエイイィィアアアヤァァァイ!!!!」ガシャンガシャン
ヒメ「……」
団長「こ、これでは話になりませんな…」アセアセ
アントリア「クックッ…気は済んだかな?」ニヤニヤ
団長「黙れぃっ!!」カッ
ヒメ「…拘束を解いてやれ」
団長「は!?」
見張り1「よ、よろしいのですか!?激しく暴れてますが…!?」
ヒメ「多少はもがくだろうが死人同然の中年女だ。何もできないさ」
見張り1「わ、分かりました…」
アントリア「……?」
883: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:37:38 ID:rR12EivkCY
〜〜〜夜〜〜〜
―――王宮(広間)―――
バクバク ガツガツ ムシャムシャ
給仕1「……」アゼン
給仕2「うわぁ……」ドンビキ
給仕3「うっ…」ウプッ
アリアス「ぐふぅ…!ウゥゥゥ…!」ギロッ
団長「そ、そうがっつかんでも誰も奪いはせん?」アセアセ
アリアス「ぶっ…ングッングッ」ジュルルルル
ヒメ「追加を寄越せ?」
給仕1「は、はい!只今お持ちします!!」ガラガラ
給仕2「た、食べ終えたお皿を下げさせていただきますね…?」ビクビク
アリアス「グァアアア!!」シャッ
給仕2「いっ…!?」サッ
団長「こ、こら!?引っ掻くな!?食器を片付けようとしただけだ!?」
アリアス「ふぅ…!ふぅ…!」ワナワナ
ヒメ「構わないから空の皿に料理を重ねろ」
給仕3「か、かしこまりました…」ビクビク
ヒメ「今日から、この女の身の回りに付いて世話してやってくれ」
侍女1「は、はい…」
侍女2「分かりました…」オロオロ
侍女3「お任せください!」シャキッ
884: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:41:04 ID:rR12EivkCY
―――宮廷(大浴場)―――
ザァァァァァアアア
侍女1「お、お身体を洗わせていただきますぅ…」スッ
アリアス「……」ボーッ
侍女2「わ、私たちだけで大丈夫でしょうか…?」ビクビク
侍女3「手早く済ませて浴槽に放り込んじゃいましょ…?何されるか分かったもんじゃない…!」ブルブル
ゴシゴシ シャワシャワ
アリアス「あっく…!」ズキンッ
侍女1「ひっ!?」サッ
侍女2「い、痛かったですか!?」
侍女3「構わないから続けるわよ!」ゴシゴシ
アリアス「うぅぅぅ……」ボーッ
侍女1「……!」
侍女2「へ、平気そうですね。続けましょうか」
侍女3「すごいアカ?泡がまっ茶色じゃない。汚いわね?なんで私たちがこんな女の世話なんか…!」ブツクサ
アリアス「」ボーッ
885: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:44:14 ID:rR12EivkCY
―――客間―――
アリアス「あぁぁぁうぅぅぅ〜〜………」ファサッ
侍女1「ほ、本当にいいのでしょうかぁ?拘束も無しに寝かせてしまってぇ……」
侍女2「食事中もさんざん暴れた上に嘔吐するまで食べてたって聞くし怖いわ?」ブルブル
侍女3「…あぁやだやだ!汚ならしい!」
ジワァァァァァァァ
侍女1「え?毛布が湿って……」
侍女2「くさっ!」
侍女3「ま、まさか漏らしたの!?」
アリアス「えぅぅううわぁぁあ」モゾモゾ
侍女1「あぁ!だ、大丈夫ですかぁ?すぐに替えの毛布と寝間着をご用意しますからねぇ?」バサッ
侍女2「ベッドもびしょびしょ…別の部屋を用意しないと…」
侍女3「はぁ〜!やだやだ!陛下の頼みじゃなかったら、とてもじゃないけど出来ないわよ!こんな汚い"おばさん"の世話なんて!?」
アリアス「おば……さん?」ピクッ
侍女1「はーい、一旦ベッドから出ましょうねぇ!自分で立てますかぁ?」ガシッ
侍女2「非力な私たちが掴んでも折れそうな身体だし慎重に支えないと…」ガシッ
侍女3「あたしは嫌よ!あんな地下で2年間も埃被ってた"お漏らしババア"なんかバッチくて触れやしない!?」
アリアス「ば、ば…あ」ピクッピクッ
侍女1「そう言わずに手伝ってくださいよぉ」
侍女2「そうですよ。私たちだって我慢してるんですから?」
侍女3「じゃあもうそのまま小水まみれのベッドに寝かしときなさいよ!臭いしベタつくし気持ち悪いのよ!」
侍女1「そんなことしたら陛下に叱られますぅ」
侍女2「それにこれは私たちの評価を上げる絶好の機会だっておっしゃったのは貴女じゃないですか?」
侍女3「そ、そりゃね?普段の陛下は隙がないし、ろくにお世話もさせてもらえないから…お近付きになるには良い機会だと言いましたけれど…」モジモジ
侍女1「(要するに玉の輿狙いでしょ)」シラー
侍女2「(陛下があんたなんかに振り向く訳ないじゃないのよ。身の程知らず…)」シラー
886: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:46:10 ID:rR12EivkCY
侍女3「なによ、その目は?」ギロッ
侍女1「い、いえぇ…べつに?」アセアセ
侍女2「なんでも?」
アリアス「……!?」ブチブチィッ
侍女1「ほえ…!?」ビクッ
侍女2「!?」ギョギョッ
侍女3「は?なによ?」
アリアス「…ぇうぐ…!!」ギリッ
侍女1「お、怒ってるぅ!?」パッ
侍女2「こわっ!」パッ
サササッ
侍女3「あ、あんたたち!?」
アリアス「」ジリッジリッ
侍女3「こ、来ないで!叫ぶわよ!?」ズザザッ
アリアス「」ジリッジリッ
侍女3「え、衛兵さ……」
アリアス「」バッ ガシッ
侍女3「ギャーッ!?」ギョギョッ
ギャーギャー ジタバタ
侍女1「た、大変…!衛兵さん達を呼んでくるぅ!」ダッ
侍女2「わ、私も!」ダッ
侍女3「あ、あんたたち!?たすけ……いだぁっ!?噛みつかれたぁ!?」ジタバタ
アリアス「あえんやあいあよ、おうふえあぁ!?」ガブカブ
イヤァァァァァァァ!!
887: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:47:27 ID:XBpzw2ybEc
〜〜〜1週間後〜〜〜
ガチャッ ガラガラ
侍女1「は、はーいぃ…お食事お持ちしましたよぉ?起きてますかぁ?」オソルオソル
アリアス「……」
侍女1「お、おはようございますぅ。置いておきますねぇ」ビクビク
コトッ コトッ
アリアス「……」
侍女1「…で、では失礼しま……」スッ
アリアス「」ツツー
侍女1「え!?」ギョギョッ
アリアス「ふっ…く……」ポロポロ
侍女1「(な、なになに?なに!なんなの!?)」アワアワ
アリアス「っ…なんでも、ないわよ!」グシッ
侍女1「喋ったぁ!?」
アリアス「はぁ…?喋って何が悪いのよ?」ジロッ
侍女1「あ、いやや、べ、べべ別に悪くなんて…!?」アタフタ
アリアス「…いただくわ」スッ
カチャカチャ パクッ モグモグ
侍女1「(さ、昨夜までずっとおかしかったのに…!?)」
アリアス「(あぁ…美味しい)」フッ
侍女1「(あ…意識が戻ったら陛下にお伝えしないと!)」ハッ
888: 名無しさん@読者の声:2015/7/30(木) 22:48:45 ID:6iwqECQfdc
侍女1と2は優しい人みたいだ
889: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:51:02 ID:XBpzw2ybEc
―――王宮(謁見の間)―――
ヒメ「目が覚めたそうだな?」
アリアス「はい。はっきりと」
ヒメ「そうか」
アリアス「まことに感謝申し上げるよりほかございません」ペコッ
ヒメ「気にするな」
アリアス「地下で過ごした2年は地獄そのものでした」
ヒメ「……」
アリアス「ですが陛下の恩情によって、こうして再び地上に戻る機会をいただけて…久しぶりに人間らしい生活を送らせてもらえました」
ヒメ「…どうだった?久しぶりの地上での生活は?」
アリアス「…本心から、本心から……後悔しております」
アリアス「浅ましい欲に駈られ、ノワール司祭の側で見過ごし、自らも犯してきた過ちを……」
アリアス「この一週間、言葉を忘れ、眩しさに目を痛め、身体中から力が失われたように何をするにも不自由致しました。
食器を持つ手がおぼつかなく…身体を清める湯の熱に強張って…与えていただいた柔らかなベッドに横たわって眠ることさえ落ち着きがなく……」プルプル
アリアス「当たり前に出来ていたことが…まるで初めてのように感じられて…!」ググッ
アリアス「これまで普通に思えていたこと全てが…恵まれた物だったのだと気付かされました…。
自分が裁かれた理由も……今なら受け止められます」
ヒメ「そうか…」
890: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:54:20 ID:XBpzw2ybEc
ヒメ「…これからも地上で暮らしたいと思うか?」
アリアス「許されるのであれば…そうさせていただきたいと願います。ですが…私の罪はあまりにも……」
ヒメ「…罪は大きいよ。あれだけ多くの人とホビットを巻き込んでしまったんだから」
アリアス「っ…!」ブルッ
ヒメ「でも…軽い罪だって簡単に許していい訳じゃない。
その逆で重い罪にしたって絶対に許されない訳じゃないんだ」
アリアス「……?」
ヒメ「おまえが本気で許されたいと願うなら…反省を忘れず地上で暮らせ」
アリアス「へ?」
ヒメ「人は厳しい。きっとほとんどの者がおまえを許しはしないだろう」
アリアス「……」ズーン
ヒメ「それでも腐らないで穏やかに、誰も恨まずに生きてくれたら…僕はおまえを許すよ。
たとえ死んでも…おまえが罪に報いてまっとうな人生を送った事を僕が覚えておく?」
アリアス「……!」
ヒメ「もう地下には戻るなよ?国王は罪人の嘘に踊らされた大馬鹿者だったと国民達に囁かれるのは御免だからな?」
アリアス「〜〜〜…はい!!」ウルウル
ヒメ「…心なしか顔色も良くなったな?」ニコッ
アリアス「そうでしょうか…?」グシッ
ヒメ「うん。10歳くらい若返ったんじゃないか?」ニコニコ
アリアス「……!そ、そうでしょうか!?」デレデレ
ヒメ「(まぁ見た目70から60になったくらいの変化だけど)」
アリアス「ふ、ふふ…ふふふ…!」ニヤニヤ
891: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:56:19 ID:XBpzw2ybEc
スタスタ スタスタ
ヒメ「来たか」
アリアス「は?」クルッ
団長「遅くなりまして申し訳ない。連れて参りましたぞ」
衛兵1「ほら、自分で歩け!」グイッ
アントリア「クッ…!老いさらばえた身に容赦なく縄引くとは…君は家臣にどういう教育をしているのだね?」ギシギシ
アリアス「あ、アントリア…!?」
アントリア「やあ、アリアス君。少し見ない間にずいぶん生気を取り戻したじゃないか?」クスッ
アリアス「あんたが…あんな言葉をかけてきたから…!?」ワナワナ
アントリア「ふっ…」
ヒメ「なにかあったのか?」
アリアス「こいつが…地下であたしに語りかけてきたのよ!
あの暗く気味悪い地下で…身体も心も動かせない最低な状況下で…絶望を煽るような言葉を…ずっとずっとしつこく何度も何度も何度も繰り返し繰り返し……」ブツブツ
ヒメ「……」
アリアス「…おかしくならない訳がないじゃない…!
こいつのくぐもった笑い声が今も焼き付いて離れやしない…!!」クシャッ
アントリア「クックッ…」
アリアス「笑うなぁっ!?」キーッ
団長「こいつめ…!?」ギリッ
ヒメ「……」
892: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:59:49 ID:rR12EivkCY
ヒメ「…役者が揃ったな」ボソッ
アリアス「!?」クルッ
政務官「これは…いったい?」ポツン
ヒメ「遠方視察、ご苦労だったな。戻ってきて早々になるが付き合ってもらうぞ?」
アントリア「…リルラ君」ジッ
政務官「な、なぜ貴様が…!?」ハッ
ヒメ「静かにしろ」
政務官「陛下…!」
アントリア「……」
ヒメ「アリアス、おまえに聞きたい」
アリアス「え?」ビクッ
ヒメ「これまでアントリアは地下で政務官と何を話してきた?」
政務官「なっ…なんのことだ!?」アセアセ
団長「知らばっくれても無駄だ!すでに調べは付いておるわ!!」カッ
政務官「だ、黙れ!そんな罪人に何が証明出来る!?」
ヒメ「アリアスは地下でアントリアの隣に閉じ込められてたんだ。当然、会話は聞こえてたよな?」
アリアス「……」
団長「正直に言え!?」ズイッ
アリアス「ひっ」ビクッ
ヒメ「よせ、団長!」
団長「は…!」スッ
ヒメ「…頼む。僕の力になってくれ」ジッ
アリアス「!!!」ポッ
政務官「くっ…!」ギリッ
893: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 23:01:54 ID:rR12EivkCY
政務官「よ、読めたぞ!貴様ら、この女に好条件を持ちかけ、私を貶める証言を言わせる気だろう!?」
団長「何を言う!?陛下が卑劣な手段を用いたとでも言うのか!?」
政務官「こんなものは茶番劇に過ぎない!絶対に認めんぞ!?」
団長「えぇいっ!見苦しい奴め!それ以上しのごの抜かすと叩っ切るぞ!?」
ヒメ「落ち着け!!」
シーン
ヒメ「…アリアスはただ聞いたままの事を話すだけだ。おまえの疑いを晴らすには絶好の機会だろ?」
政務官「そちらが虚偽を促している可能性がある以上、この場においてのやりとりは公平ではない!!」
団長「なにを貴様ぁぁ!?」
ヒメ「アリアスは昨夜まで精神的に衰弱していて会話もままならなかった。それは城の人間全員が証明してくれる」
政務官「だ、だが…!」アセアセ
ヒメ「今のアリアスは絶対に嘘はつかない」
政務官「なぜそう言い切れる!?」
ヒメ「過去の罪を懺悔して心を入れ換えたからだ!」
アリアス「」キュンッ
政務官「そんなのは何の意味も成さん!罪人の言葉など信じられるか!!」
アリアス「(陛下………)」ドキドキ
ヒメ「アリアス!おまえは真実を知ってるんだろ!包み隠さず全てを話せ!?」
アリアス「…い、いいわよ。私の知ってる限りでよければ話してあげても?」テレッ
政務官「なに…!?」ギロッ
アントリア「……」ジッ
ヒメ「アリアス…!」パァァ
894: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 23:06:59 ID:XBpzw2ybEc
アリアス「アントリアはその男より前に大臣と会っていたわ」
団長「大臣…!?あの豚か!?」
アリアス「えぇ、そうよ」
政務官「あ、アントリア…どういう事だ!?」ジッ
アントリア「……」
アリアス「…話の内容はほとんど理解してないけれど、ある指示を促していたのは覚えてるわ」
ヒメ「それは?」
アリアス「永遠の命にまつわる癒しの力と伝説の大樹の情報を…西の女王に聞かせてやれ、と」
ザワッ
アリアス「その後、何度かそこの政務官と会っていたのはぼんやり覚えてるけれど…。
それについては正直、話せる事はないわ。あの時にはもう…私は正気でなかったから」
ヒメ「十分だ。よく打ち明けてくれたな。助かったよ?」ニコッ
アリアス「!!!」ドッキュン
政務官「き…さま…!い、今の話は本当か…!?」ワナワナ
アントリア「…あぁ、そうそう。そうだった。思い出したよ?」
政務官「……!?」
アントリア「このままでは領地と財産を没収され、果ては追放されてしまうと…憔悴しきった大臣から助言を頼まれたものでね?」ニヤリ
団長「またしても…!」ギリッ
ヒメ「僕らは全員、こいつに踊らされてたようだな」
政務官「おのれぇぇええ!!」ガッ
アントリア「ぐっ…!」ギシッ
ヒメ「団長、止めろ!」
団長「やめんか、貴様ら!?」バッ
政務官「離せぃ!!殺してやる!?こいつは……」ジタバタ
団長「こらえろ!陛下のご命令に従えんのか!?」ガッチリ
アントリア「まったく困ったものだ?」ゴホッゴホッ
895: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 23:11:15 ID:rR12EivkCY
ヒメ「よくもまぁ懲りないよな?」シラー
アントリア「……」
ヒメ「カロルを始末させようとしたのも、西の国とこじれさせたのも…復讐を狙っての事か?」
アントリア「…クックッ!復讐?そんな生易しいものではないよ?」ニヤニヤ
ヒメ「?」
アントリア「君たちは無知で無力で無価値な無能そのもの…。
烏合の衆が依り集まって治世の真似事をしてみたところで…この国は滅びを待つばかりだ。ならば滅んでしまえばいい」
政務官「なんだとぉ!?」ジタバタ
団長「くっ…!」ガッ
アントリア「僕は君たちに一度、敗北を喫した。それは認めてやってもいいが…あんな勝利は言うなれば偶然だ?」
アントリア「たまたま君たちに都合のよい出来事が重なっただけであって…知恵も采配も何もかも全て僕が上回っていた?」
ヒメ「相変わらずくだらない奴だな?」
アントリア「認めたまえよ?全てを失い、誰一人味方さえ居なくても…僕の才知は君たちの遥か上を行くと証明されたのだ?」
アントリア「もう西の国との衝突は免れまい?君たちは敗北したのだよ。この僕に!?」ニタァァァァ
政務官「ぐっ…く…!?」
団長「っ……たったそれだけの理由で…こんな事態を招いたと言うのか!?」ギリギリ
アリアス「な、なんて…おぞましい……!?」ゾクッ
アントリア「さぁ閉じ込めるなり殺すなりどうとでもするがいいさ!間抜けな敗北者諸君!?」
団長「陛下!ここはワシに…!」
ヒメ「ふん…」
896: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 23:15:07 ID:rR12EivkCY
団長「陛下!ご命令を!?」
ヒメ「殺したところでこいつの思うつぼだ」
団長「し、しかしそれではまたいつ何をしでかすか…!?」
ヒメ「…西の国と王国をぶつけて滅ぼすのが目的だったんだろ?」
アントリア「そうさ。出来れば最期まで見届けたかったがね」
ヒメ「なら…この勝負、おまえの敗けだ?」
アントリア「…なに?」ピクッ
ヒメ「王国はこれからも続いていく。おまえの起こした些末な問題など苦にせずな?」
アントリア「どうやって…!?」
ヒメ「それはこれから考えていくさ?そうだろ、政務官!」
政務官「は…!?」ビクッ
団長「も、もしやリルラまでも許されようとなさって…!?」
ヒメ「…甘いのは分かってるよ。けど今は一人も欠けていられないだろ?」
団長「し、しかしですな!?」
ヒメ「しかし、しかし、うるさいな!決めるのは僕だ!?」ムキーッ
政務官「よ、よろしいのですか…!?」
ヒメ「…頼る相手を間違えただけで国を良くしたかった気持ちは変わらないんだろ?」
政務官「…は、はい。陛下のお側に仕え、王国の繁栄に尽力したいと願っております」
ヒメ「なら、もう一人で先走るな!頼るべき王はここにいる!」
政務官「陛下……」
ヒメ「子供だろうと経験が浅かろうと関係ない!おまえの君主は僕だ!」
政務官「……!」
ヒメ「もしそれでも頼りないと感じるなら…おまえら役人が団結して僕を素晴らしい国王に盛り立てろ!?」
政務官「……ははーっ!!!」ザッ
団長「ははーっ!!」ザッ
897: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 23:18:11 ID:XBpzw2ybEc
アントリア「ハハハハハハ!!!」
団長「む…?何がおかしい!?」ギロッ
アントリア「まったく成長しないものだ…?」クスクス
ヒメ「成長してないのはおまえだ。いつまでも同じ事を繰り返してみじめにならないのか?」
アントリア「クックッ…みじめな末路を辿る君たちに言われる筋合いはないよ?」
ヒメ「おまえの思い描く予想なんて軽く覆してみせるさ?」
アントリア「君では無理だと思うがね?」
ヒメ「僕一人の力じゃない。全員の力で解決してやる!」
アントリア「皆で造り上げる国家か…。君が最初に掲げた政策だったね」
ヒメ「…そうさ。必ず実行に移してみせる!」
アントリア「…いいだろう。楽しみにしているよ。君たちがどこまでやれるのかをね?」ニヤニヤ
ヒメ「…おまえが負けたらどうする?」
アントリア「……?」
ヒメ「もしこの問題を解決したら僕の命令を一つ聞いてもらうぞ?」
アントリア「…国王が罪人に何を命じると言うのだね?」
ヒメ「…空白の歴史を埋めてもらう」
政務官「……!」ハッ
アントリア「……!…なるほど、君もそういった物に関心を持てる程度には視野が広まったか?」ニヤリ
団長「な、なんだ!空白の歴史とは?」
政務官「おそらく70年前に起こった終わらない争い…その抹消された歴史を蘇らせようとなさっているのだろう…!」
団長「終わらない争い…!?」
政務官「その時代を生きた人間の中でも…ラーダ家の者は特に関わりが深かった筈だ」
898: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 23:20:55 ID:rR12EivkCY
ヒメ「腐ってもノワール司祭とおまえは元歴史学の権威だったんだろ?
ならこれくらいの頼みは快く引き受けてくれるよな?」
アントリア「…もちろんだとも?」
ヒメ「誓ったな?」
アントリア「口約束でいいのかね?」
ヒメ「これはおまえが仕掛けた勝負だ。決着がどうあれ勝敗は潔く認めてもらうぞ!」
アントリア「…クックッ!」
団長「貴様、なにがおかしい!?」
アントリア「…やはり成長が見られない。だが…それでこそ、なのかもしれないね?」ニヤリ
ヒメ「なに言ってるんだ、おまえは…?」キョトン
アントリア「せいぜい無意味なあがきを続けてくれたまえ。
地上から断末魔の悲鳴が上がるのを…地の底で聞き耳たてながら待っていてあげよう?」ニヤニヤ
ヒメ「…それまでにおまえの寿命が尽きなければいいけどな?」フンッ
アントリア「クックッ…減らず口ばかり達者だね」ニヤニヤ
ヒメ「衛兵!そいつを地下に戻せ!」
衛兵1「はっ!来い!」グイッ
アントリア「っ…!扱いが乱暴じゃないか…!?」ギシッ
衛兵2「この者はいかがなさいますか?」
アリアス「えっ」ビクッ
ヒメ「そいつは今日から晴れて自由の身だ。住居が見つかるまで客間に宿泊させてやれ」
衛兵2「ははっ!」
団長「まことによろしいので…?」コショコショ
ヒメ「約束は守るさ。それが出来ない奴は罪人よりも罪深い」
団長「…承知しました」
アリアス「あぁぁ…!陛下ぁぁ……」ウットリ
899: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 23:22:57 ID:XBpzw2ybEc
政務官「…大変申し訳ございませんでした」
団長「まったくだ!貴様、なぜあんな奴に助言など求めた!?」
政務官「……」
団長「はっきりせんか!?」
政務官「昔から…そうだったのだ」ボソッ
団長「あぁ!?なんだ、聞こえんぞ!?」
政務官「私の家柄は爵位が低く…役人となった後も様々な隔たりに悩まされた」
団長「だからどうした!」
政務官「奴しか頼れなかった…。ラーダの名を冠するアントリアの力を借りなければ…意見はおろか発言の一つも認めてもらえなかったのだ!」ダンッ
団長「!?」
政務官「…まさか奴の支配を逃れてさえも容易く操られてしまう程、自分という物を確立出来ていなかったとは…!」ググッ
ヒメ「もういい。さっさと切り替えろ」
政務官「……!」
ヒメ「こんな所で突っ立ってたって何も解決しないだろ?」
政務官「…はっ!」ウルッ
900: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 23:25:00 ID:XBpzw2ybEc
団長「ではワシも力になれるよう奮闘するとしますかな…」スッ
ヒメ「あぁ団長、ご苦労だった。おまえはしばらく休んでいいぞ?」
団長「は!?」ギョギョッ
ヒメ「休暇をやるから、たまには家族と過ごせ」
団長「な、なりませぬ!この恐ろしい状況下でワシだけが……」アタフタ
ヒメ「だってなぁ…?」ポリポリ
団長「な、なんだと言うのです!?」
ヒメ「西の国との問題は頭を使う事になるし…そうなるとあんまり役に立たないじゃん?」
団長「んなっ!?」ガーン
政務官「ここはひとまず我々に任せておけ」ポンッ
『あんまり役に立たないじゃん』
『あんまり役に立たないじゃん……』
『あんまり役に立たないじゃん……………』
団長「そん……な…バカな………」ズーン
ヒメ「じゃあ政務官、行くか!団長、とりあえず1ヶ月、ゆっくり静養しろよ?」スタスタ
政務官「よかったな。ではまた後程…」スタスタ
団長「……」
スタスタ スタスタ…………
団長「」ガクッ
団長「なぜワシばかり、こんな仕打ちをぉぉ…!」シクシク
団長「うおおおおお!!!!」ダンッ
ダンッダンッ ダンッダンッ
901: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 23:32:16 ID:XBpzw2ybEc
>>888
優しい人に介護させた方がアリアスを改心させるのも違和感ないかなーと思って意地悪な侍女は一人だけにしましたw
感想ありがとうございます!
ところで容量が1000に達しそうなのですが…もしかして1000を越えると書けないんですかね?
次スレ立てた方がいいんでしょうか?
902: 名無しさん@読者の声:2015/7/30(木) 23:39:43 ID:6iwqECQfdc
1000を越えると書けなくなりますので、次スレをたてるのが良いと思いますよ
すごく面白いから、次スレがたったら絶対に読みます!!
903: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/31(金) 08:26:20 ID:L1eSiQSdPw
>>902
ご親切にありがとうございます!
かれこれ次で4スレ目になってしまいますが、それでもお付き合いいただけるなんてものすごく嬉しいですw
ではこのスレは保管庫依頼して次回の更新と同時にスレを立てさせていただきますね!
ここまで読んでくださってありがとうございました!
904: 名無しさん@読者の声:2015/8/6(木) 15:27:44 ID:f00VG4nklY
次スレも見るよ!C
905: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/7(金) 22:23:26 ID:ZFPiUvN3BQ
>>904
ありがとうございます!
おかげさまでモチベーションがMAXに達してますw
次スレで完結させてみせます!
906: 真・スレッドストッパー:停止
停止しますた。ニヤリ・・・( ̄ー ̄)
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