フネ「かっとなってしまった・・・」
自分を気持ちを落ち着かせようと考えて磯野フネは、呟いた
場所は磯野家の台所
時間は深夜2時
フネの右手には深紅が滴る包丁
足元にはフネの夫である波平がいた
いた、というよりは死んでいた
そうフネが刺したのである
なぜ、こんなことになってしまったのか・・・
フネは高鳴る心臓を抑えて、回想してみる
8: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 01:32:41 ID:FcXX514EYM
日に日に増していく夫の暴力
時には花瓶や灰皿で叩かれることもあった
タラオ失踪から半年がすぎた9月5日
波平の暴力は続いていた
9: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 01:34:30 ID:Qg/d6utHWk
その日は素手だけで飽き足らず、波平は花瓶を投げてきた
痛みと共に散らばる破片
それを拾うサザエ・・・
フネは堪えていた
この人も辛いのだ
長男と孫、娘の婿まで失ったのだから
10: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 01:36:34 ID:Qg/d6utHWk
そう思うことで必死に堪えていた
そんな中
その日にまた失踪した
次はサザエである
また見つからない
これで4人目である
当初7人いた家族はすでに半数以下、3人となっていた
11: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 01:38:32 ID:Qg/d6utHWk
家族が減っても波平の暴力は減らない
むしろ増えていった
家庭内暴力を目の当たりにし、泣きわめく娘
酒に溺れる夫
限界を感じはじめていた
12: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 01:39:35 ID:Qg/d6utHWk
フネ「そう、あなたの暴力が、あなたを殺したのよ」
震える声がそう響く丑三つ時である
13: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 04:28:03 ID:r517UsUXT6
つCCCC
14: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 07:40:00 ID:Kkh511QEhI
そして半年前、3月5日、ついにワカメが失踪した
15: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 07:52:45 ID:V0Q8UCTJaM
(´;ω;)っC
16: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 07:53:12 ID:dhwnfalxmU
フネ「辛かったわ。家族がどんどんいなくなってゆく・・・。でも、あなたの愛が私だけに向くかもしれないという希望が少しありました・・・でもあなたは暴力をやめなかった・・・」
話しかけても死人は話さない
17: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 07:55:09 ID:U7KJ6HZvos
どんどん酷くなる波平の暴力
あんなに優しかった、不器用だけど愛に溢れた波平はどこに消えた・・・
あの人はもう・・・波平ではないのだ
18: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 07:56:57 ID:dhwnfalxmU
そんなことを考えるようになってきた
そう考えることで、波平から、愛する夫から暴力を受けている悲しみを薄れさせようとしたのだ
だが、悲しみも痛みも増してゆく
19: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 08:00:47 ID:U7KJ6HZvos
このままでは私は殺される・・・
フネはそう思いはじめていた
殺される・・・
あの人に
夫ではない化け物に・・・
20: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 08:02:00 ID:U7KJ6HZvos
そう・・・殺さなければ殺される・・・
なら、殺しましょう
フネはそう考えた
21: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 08:04:50 ID:dhwnfalxmU
そして実行した
波平は深夜、必ず水を飲みに起きる
深夜ならば、物音がしても近所に気づかれないだろう
それに力で劣るフネが波平を狙うならば奇襲でなければならない
22: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 08:08:10 ID:dhwnfalxmU
フネ「あなたがわるい・・・」
つぶやきながら波平の背中に銀色の刃を突き立てる
溢れる鮮血
声にならない悲鳴
波平が力尽きるのにあまり時間は要しなかった
23: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 08:11:37 ID:dhwnfalxmU
そして現在にいたる
24: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 08:14:30 ID:dhwnfalxmU
フネ「あなたが悪いのよ・・・」
返事はなかった
フネ「私を愛してくれないから・・・」
返事はなかった
フネ「愛してくれていれば、何も起きなかった」
返事はなかった
フネ「私・・・ひとりになっちゃったじゃない・・・」
もうじきに朝がくる
25: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 08:16:24 ID:U7KJ6HZvos
朝がくれば
全てが光に晒される
・・・そうだ
フネ「・・・とにかく埋めなければ」
26: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 08:21:32 ID:U7KJ6HZvos
埋める場所はどこが良いか・・・
庭ではすぐばれる・・・いや
むしろ近くの方がばれないかもしれない
ただ、庭ではダメだ
波平の盆栽
その下に埋めるのが安全だろうか
そうしよう
フネが思考を巡らせ、答えを出した
27: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 08:25:49 ID:U7KJ6HZvos
誰も見ていない事を確認し、作業を開始する
スコップで地面を掘っていく
全てを忘れるために無心で
ただ無心で
28: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 08:28:07 ID:dhwnfalxmU
掘っていると、何かが出てきた
骨・・・?
フネは拾いあげてみる
フネ「これは・・・骨?」
29: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 08:31:31 ID:U7KJ6HZvos
フネ「きゃー!」
悲鳴をあげてしまう
が、すぐに我にかえり声を抑える
この悲鳴、恐怖や驚愕ではない
そう・・・
いうなれば記憶の出現
30: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 08:33:33 ID:U7KJ6HZvos
記憶の出現により、様々な感情が入り混じり悲鳴となったのだ
フネ「・・・思い出した・・・」
そう言いながらより深く掘るフネ
どんどん骨が出て来る
人間5人分ほどの骨が埋まっていた
31: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 08:35:06 ID:U7KJ6HZvos
フネ「私がやりました」
まるで犯罪を自供する犯罪者の様な口ぶりでフネはいった
いや、ような、ではない
フネは犯罪者なのだ
32: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 08:37:41 ID:dhwnfalxmU
カツオが失踪したあの日
あの日はフネと波平がふたりで食事に行く予定だった・・・
しかし、カツオが皆で行きたいと提案し、結局家族みんなで行くことになったのである
33: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 08:44:50 ID:dhwnfalxmU
そこまでは仕方ないと思っていた
しかし、食事から帰宅した時のカツオの台詞で我を忘れたのだ
カツオ「父さんも母さんと二人の食事じゃあつまらないでしょww」
悪気があったワケじゃないカツオ
それはわかっていた
だが、我を忘れていたのだ
気が付けば血まみれのカツオが足元にいて
フネの右手には包丁が
フネ「埋めなければ」
そして埋めた
34: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 08:46:26 ID:dhwnfalxmU
同時にフネが埋めたものがある
記憶である
記憶を埋めて忘れさった
35: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 08:48:44 ID:dhwnfalxmU
カツオが死んだ
愛する長男が死ねば夫の愛が私に向けられると思っていた
しかし、夫が私にむけたものは愛ではなく、拳や花瓶などの暴力だった
36: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 08:50:49 ID:dhwnfalxmU
誤算だった
私は愛してもらいたいが故にカツオを殺したのに・・・
フネは何度も嘆いた
そして、さらに誤算が生じた
37: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 08:53:03 ID:dhwnfalxmU
マスオ「カツオくんは殺されたのかもしれない」
と言い出した
警察は家出だ、と考え捜索していたのにマスオは言い出した
警察が家出だと考えたのはカツオの荷物が家から消えていたからである
その荷物はフネが処分したのだが・・・
38: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 08:55:33 ID:U7KJ6HZvos
マスオは独自に捜査しはじめた
フネは記憶を埋めていたのだが、少しずつ真相に近づいてゆくマスオに掘り返されてしまう
フネ「・・・ばれてしまう・・・」
危惧したフネは再度、犯罪を犯した
溢れる鮮血と光る銀色
また、足元に死体がころがった
39: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 08:56:12 ID:dhwnfalxmU
また、フネは呟く
フネ「・・・とにかく埋めなければ」
40: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 08:56:53 ID:dhwnfalxmU
また記憶とともに埋めた
盆栽の下に
41: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 09:00:57 ID:dhwnfalxmU
庭で遊んでいて偶然、盆栽の下の秘密を発見したタラオ
波平の愛を受けているサザエ
つづいてこの二人も
地中の秘密とした
もう、フネは殺すことに罪悪感を感じなくなってきていた
フネ「・・・嫌なモノは・・・とにかく埋めなければ」
42: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 09:04:15 ID:dhwnfalxmU
そして磯野家は3人になった
波平、フネ、ワカメである
3人になっても波平の暴力は依然として続いていた
43: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 09:05:54 ID:U7KJ6HZvos
むしろ、暴力は酷くなっていた
もう磯野家に愛なんて存在しない
44: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 09:08:59 ID:dhwnfalxmU
そんな中、ワカメが失踪した
そう、フネの仕業である
ワカメは言ってはならぬ事を言った
ワカメ「もう、私たちの家族に愛なんてないわね。私はこの家が嫌。お父さんもお母さんも、いらない」
フネ「なら、私も、ワカメなんていらないよ」
銀色を突き立てる
地中に秘密を増やした
45: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 11:41:18 ID:QWoUZ5elQQ
そして二人になった磯野家
夫の愛が私だけに向くのを信じていた
現実は違った
波平はフネへの暴力をやめなかった
46: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 11:43:16 ID:KYyA7Wj2II
あの頃の波平もフネもいなかった
二人とも老けこんでいた
もう・・・
47: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 11:43:49 ID:KYyA7Wj2II
殺すしかない
フネは決断した
48: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 11:44:35 ID:QWoUZ5elQQ
そして実行
現在にいたる
49: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 11:47:29 ID:KYyA7Wj2II
フネ「私が・・・家族を・・・」
全てを思い出したフネ
罪悪感に苛まれる
しかし、解決方法は知っている
50: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 11:47:54 ID:QWoUZ5elQQ
フネ「・・・とにかく埋めなければ」
51: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 11:49:43 ID:QWoUZ5elQQ
事実も秘密も記憶も地中にねむっている
朝日が昇りはじめた
朝日が照らすのは優しい完璧なお母さんではなく
醜いやつれた老婆だけだった・・・
フネ「・・・とにかく埋めなければ」完
52: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 18:24:37 ID:MfNDOKyzas
もしや波平はカツオをやった犯人がフネだって最初から知ってたのか……?
ともかく乙でした〜
53: 名無しさん@読者の声:2011/11/2(水) 18:57:12 ID:K0T55gKhrY
面白かった(´^ω^)
とりあえず乙
っ旦
54: 1:2011/11/2(水) 21:06:04 ID:7bD31EfLls
解釈は自由ですぜ・・・
55: 名無しさん@読者の声:2011/11/3(木) 07:49:56 ID:cPyZimQKa.
面白かった!
乙
56: 名無しさん@読者の声:2011/11/29(火) 12:36:50 ID:x0q3HRi1qM
1さんいないかな?
面白かったので保管庫希望です><
57: 真・スレッドストッパー:停止
停止しますた。ニヤリ・・・( ̄ー ̄)
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