「出来、たー……!」
オフィス用の椅子を限界まで倒してのけ反ると、背骨と腰の辺りからばきぼきと嫌な音が鳴った。
うん。リアルだ。
ひとりで納得しながら腕を伸ばしていると、窓口に立っていた結さんが振り返る。
「お疲れ様、今日のノルマは終わりよ」
「死んでるのにドライアイになりそうですよ」
「私だって死んでから書類仕事する羽目になるとは思わなかったわよ」
お腹は空かない、でも眠れる。
肉体はないはずなのに、仕事をすれば疲れるし、物に触れることもできる。
死後の世界というものは、全くおかしな場所だった。
171: ひととせ ◆EOQ3BRAmq.:2012/1/9(月) 11:46:59 ID:c.gYySYfy6
「すみませんねえ、ここでお願いしたら、孫の顔を見に行けると聞いたものだから」
「現世に行かれる方ですか?」
「ええ、お願いしますね」
記入用紙を取り出しながら、柔らかな物腰にほっと安心する。
この調子なら何か失礼があったとしても、気にしないで貰えそうだ。
俺は少し肩の力を抜いて、ペンと用紙を差し出した。
「では、太枠の中に必要事項を記入してください」
お婆さんが書類に書き込みを始める。
俺はそこでこっそりと一息吐いた。
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