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魔王「何でイチャイチャちゅっちゅできないんだよ!」
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1:🎏 :2012/9/14(金) 23:05:11 ID:4.MWSg5KoU
書きたいことが出来たので、以前書いてたSSの続きを書かせていただきます。
お手数おかけして申し訳ございませんが、知らない方は前作から読んだ方がいいと思います。
一応貼っておきます。前作→http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch3/1316008982/1-10

基本長いので携帯だと読めなくなる可能性があります。また、支援返レスを飛ばして読みたい方もいらっしゃると思います。
それらに該当する方は、本編とわけてまとめたので、こちらから読んでみてください。→>>981-984

注意事項は以上です。何卒よろしくお願い致します。


488:🎏 :2012/10/22(月) 21:47:26 ID:6xWpg1Pyas
女勇者「それで、訊きたいことって何よ?」

側近「まあまずは共存の街に行くぞ。それで本人から直接訊いてくれ」

女勇者「本人?」

側近「行けばわかるよ。移動魔法かけるぞ」シュンッ



側近「着いたな」

女勇者「本当に一瞬だよね、移動魔法って……」

工学人「あ、来てもらえたんですね!」

側近「おう、連れてきたぞ」

女勇者「……訊きたいことがあるのって工学の街の人なの?」

工学人「はい」

女勇者「ということは……訊きたいことってお墓について?」

工学人「いえ……魔力を貯めるというタンクについてです」
489:🎏 :2012/10/22(月) 21:49:02 ID:6xWpg1Pyas
女勇者「……ああ、魔法陣の解明がうまくいった際に、その魔力を溜めとくタンクね」

工学人「それなんですけど、一応設計図を作っていろいろ計算してみたんですよ」

女勇者「うん」

工学人「でも、人間界のどの部品を使おうと、溜める魔力に耐えきれず暴発するような計算になってしまうのです」

女勇者「暴発!?それは困るよ!」

女勇者「そもそもタンクを造ろうっていうのは、魔力を安全に保存するためだもん」

女勇者「異世界への穴の開閉には膨大な魔力がいるらしいって話だよね」

女勇者「魔道師の魔法陣をそのまま用いたり、魔王クラスの魔力があればすぐ用意できるけど……」

女勇者「私達では少しずつ溜めていくしかないよね」

女勇者「でも、むき出しのまま長らく置いてたら維持も難しいかもしれないし、何より危険よ」

側近「何かの拍子で浴びたりしたら……俺達の実力なら死亡は確実だろうな」

女勇者「だからこそタンク案を出したのよ。それが暴発するって話じゃ困るよ!」

工学人「しかし人間界の部品では、膨大な魔力の圧や熱に耐えれず、最終的には壊れて漏らし、悲惨な事故に繋がりますよ」

女勇者「……」
490:🎏 :2012/10/22(月) 21:50:07 ID:6xWpg1Pyas
工学人「女勇者様にはある決断をしていただきたく思い、来てもらったのです」

女勇者「決断……」

工学人「安全のためにタンク案を諦めるか、危険を冒してタンクを造って魔力を溜めるか、どちらかを選んでいただきたいのです」

女勇者「そんな……」

側近「代表はお前だから全てを委ねるが、意見していいなら諦めるべきだと思う」

側近「専門家が計算して壊れると言ってるんだ。魔力を溜めて壊れでもしたら、被害を被るのは共存の街の計画に参加してくれてる民だ」

側近「民の命は何より優先する物……魔王様ならきっとこう言う。もちろん俺達だって同意見のはずだ」

女勇者「……」

側近「……委ねると言ったが、ほとんど強要してるようなもんだな。まあいいか」

側近「女勇者、お前の答えを聞かせてくれ」
491:🎏 :2012/10/22(月) 21:50:55 ID:6xWpg1Pyas
女勇者「……人間界に耐え得るだけの部品がないのなら、魔界ならどうなの?」

側近「魔界……」

女勇者「工学人さんの言い分では人間界の部品類しか考慮してないじゃない」

女勇者「だったら魔界を考慮してみたらどう?突破口があるかもしれないよ」

女勇者「膨大な魔力に耐え得る部品や、それが出来る素材があるかもしれないじゃない!」

工学人「女勇者様……側近様がいるので言いにくいのですが、魔界の文化レベルは正直人間界と比べて大きく劣ります」

工学人「そんな魔界にそのような部品や素材があるとはとても……」

側近「いや、あるにはある……」

工学人「え、あるのですか!?」

女勇者「ほら!決めつけて諦めるんじゃなくて、無駄かもしれなくてもやることが大切なのよ!」

工学人「いや……言ってみるもんですね、ほんと」

女勇者「それで!?その耐え得る部品や素材って何なの!?」

側近「……少し昔話に付き合ってもらう。まだ争いの渦にあった魔界の話だ」
492:🎏 :2012/10/22(月) 21:52:03 ID:6xWpg1Pyas
側近「遠い昔の話だから、俺も聞いただけで詳しくは知らん」

女勇者「いいからいいから。早く話してみてよ!」

側近「……当時はまだ魔界と人間界とで争っている時代だった」

側近「加えて、魔界だけに限っても種族間の争いが頻繁に起こり、魔界に血の流れない日などなかった」

側近「そんな危険な魔界を支配するのは困難を極める。当時の魔王もそれは苦労していたようだ」

側近「実力が全てだった魔界で、いつ自分の栄光を奪われるかわからない……」

側近「そこで当時の魔王は強固な武具を造ることで戦力アップを図った」

女勇者「その武具の素材がそうなんだね!何なの、それは?」

側近「……ゴーレム族の固い体を用いるんだ」

女勇者「……え?」

側近「ゴーレム族を殺し、その体を覆う固い部分を用いて鋼鉄を作製する要領で加工していく」

側近「そうして出来あがった鋼鉄は、通常の物とは比べ物にならない耐久力を誇る」

側近「当時はまだ推測でしかなかったが、当時の魔王は実践して証明してみせた。ゴーレム族の体は頑丈な鋼鉄を造り上げる素材になるとな」
493:🎏 完全なる後付け設定:2012/10/22(月) 21:52:52 ID:6xWpg1Pyas
側近「ゴーレム族は強い種族だが、当時は群れずに個々で過ごしていた。そこを狙われた」

側近「当時の魔王軍は数で押し切り、個々のゴーレム達を次々に狩っていった」

側近「命の危険を感じたゴーレム達は、とある岩山を掘り進め、坑道のような住処を造り上げ、そこに集団で住むようになった」

側近「そうして魔王軍も簡単に手出しは出来なくなったが、十分に殺したから強力な武具の補強は達成でき、それからしばらく権威を守ることとなった」

側近「……あの山には多くのゴーレム達の無念が渦巻いていると言われる」

側近「そんなゴーレム達の無念が渦巻く、ゴーレム族の住処の坑道があるあの岩山をいつしかこう呼ぶようになった」

側近「死霊鉱山ってな」

側近「以上が魔界の誇る強固な素材に関する昔話だ」

側近「どうだ?これでもまだお前はこれに縋って作戦を続けようと言うか?」

女勇者「……いや、言わないよ。ゴーレムさん達を犠牲にするなんて、出来るわけないじゃない」

側近「だろ。悪いがタンクの件は諦めてくれ」

女勇者「でも、それだと魔力を安全に溜めることが出来ない……民に危険が及ぶかもしれない……」

側近「だから、魔王様の遺体を回収する計画から中止する必要がある……」
494:🎏 :2012/10/22(月) 21:53:33 ID:6xWpg1Pyas
ゴーレム「……その必要はありませんよ」

女勇者「ゴーレムさん!?今の聞いてたんですか!?」

ゴーレム「すみません……盗み聞きするつもりはなかったのですが、聞こえてしまったもので」

側近「ゴーレム族の悲しい過去を勝手にばらすような真似をして申し訳ない……」

ゴーレム「いえ、気にしないでください。事実ですから」

側近「……ゴーレム、その必要はないとはどういうことだ?」

ゴーレム「そのままの意味です。ゴーレム族を使って、魔力に耐え得るタンクの部品を製造してください」

側近「ふざけるな!お前達の命を犠牲にして何の意味がある!?」

ゴーレム「側近様、我々の命を使う必要はありません」

側近「……何だと?」

女勇者「え?え?どういうこと?」

ゴーレム「必要なのはこの固い部分です。これを殻とでも言いましょうか。この殻には痛覚神経は通ってません。我々の体を覆って守っているんです」

ゴーレム「この殻を削り落すだけなら、命に別状なく素材だけを取り出せます」
495:🎏 :2012/10/22(月) 21:54:34 ID:6xWpg1Pyas
側近「……いや、それではゴーレム族は固い体を失うことになる!」

側近「その頑丈な体は攻守の要で、ゴーレム族の生命線とも言えるはずだ!それでは自衛能力を失う!」

側近「魔王様の遺体回収は必ず成し遂げなければならないことではない!その計画に、そんな大きな犠牲を払うことはない!」

ゴーレム「……側近様。我々は平和に向けて活動しているのでしょう?なら自衛能力がなくとも大丈夫ですよ」

側近「だが少数でも戦争派は確かに存在している!その戦争派より上の実力がなければ、この先危険だろう!」

ゴーレム「仮に戦争派に襲われても大丈夫ですよ」

側近「何故そう言い切れる!?」

ゴーレム「……側近様は子゙ーレムのことを覚えていますか?」

側近「は?……ああ、一年前の死霊鉱山の騒動の時の子どもか」

ゴーレム「あの子はあの時から志を高く持ち、立派に成長しています」

ゴーレム「将来はゴーレム族を立派に導く長になることでしょう」

ゴーレム「次世代の希望は着々と育っています。それは、あの時龍人さんが子゙ーレムを助け、導いたからです」

ゴーレム「そして、その龍人さんを改心させるきっかけを与えてくれたのは前魔王様です」

ゴーレム「前魔王様が築いた平和で次世代の希望が育っているから、我々は安心して次代に託せます」

ゴーレム「そんな現在を築いた前魔王様に恩返しがしたいのです。前魔王様には是非この世界で眠っていただきたい」

ゴーレム「だから、我々大人のゴーレム族の殻を素材として献上したいのです」

ゴーレム「他の仲間も……共存の街にいる皆や、死霊鉱山にいる皆に確認する必要はありますが、恐らく同じ気持ちです」
496:🎏 工学人「あれ?俺この場にいるんだよな?」:2012/10/22(月) 21:55:31 ID:6xWpg1Pyas
ゴーレム「ですので女勇者さん、計画は続行する方針でお願いします」

女勇者「ゴーレムさん……本当にそれでいいんですか?」

ゴーレム「前魔王様に、この世界に帰ってきてほしい気持ちは一緒です」

ゴーレム「希望が育っている今なら、何の懸念もなく託せます。だからお願いします」

側近「……そこまで言い切られたら、もう何を言っても余計な御世話だな」

女勇者「わかりました!ゴーレムさんの殻を使わせてもらって、タンクを造ることにします!」

女勇者「ゴーレムさんの覚悟は絶対に無駄にはしません!今回の計画、必ず成功させてみせます!」

ゴーレム「ええ、皆で協力して必ず成功させましょうね!」
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