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歪世界トレイン
[8] -25 -50 

1:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/4/30(日) 20:25:16 ID:4iSJ1d7xp2

乗客Yx1

戸野 千織(トノ チオリ)

目が覚めたらそこは、走る列車の中だった



31:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/3(水) 20:45:35 ID:spmolqlGjY

車掌「・・・まったく」

口元の血をぬぐい、ゆっくりと立ちあがる

帽子がとれたその姿は、意外にも千織たちとほぼ同年代の若い青年だった

車掌「無賃乗車の分際で、よく吠える」

恭太「なんだと・・・!?」

車掌「この列車に乗ったからには、この列車の規律を守って頂こう。君は大声出して列車内を徘徊するという迷惑行為をしていたので、閉じ込めたまでのこと」

千織(車掌さん・・・!?)

今までの丁寧な口調とは打って変わり、鋭い口調になっている

32:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/3(水) 20:50:42 ID:spmolqlGjY

恭太「へっ、あんなロック、力づくで壊してやったし!」

恭太「つーか、俺たちをどこへ連れて行くつもりなんだ!今すぐ降ろしやがれ!!」

車掌「・・・」

千織「沖くん、待って・・・!」

恭太「ちおちゃん、安心して。降りさえすれば、俺んち電話して、車出してもらうから」

恭太「聞こえてんのかお前!!さっさと列車を止めやがれ!!」

車掌「・・・わかりました」

プシューッッ!!

千織「ひゃっ」

恭太「うわっ」

33:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/3(水) 20:55:53 ID:spmolqlGjY

大きな音を立て、列車が止まった。ドアが開く

千織「・・・!」

車掌「どうぞ」

恭太「お、おう・・・」

あっけなく止まったので、少し動揺したが、すぐさま千織の手をつかむ

恭太「ちおちゃん、行くよ!」

千織「まっ待って」

ギリギリのところで制止する

千織「車掌さん、あの」

車掌「・・・なんでしょう」

34:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/3(水) 21:01:18 ID:spmolqlGjY

千織「おっ、遅くなりましたけど、この間は送って頂いてありがとうございました!」

車掌「・・・」

恭太「え!?送ってもらったってなに!?」

千織「沖くんが、失礼をしてすみませんでした」 ペコリ

車掌「・・・」

恭太「え、ちょっと待って、どゆこと?知り合いだったの?」

千織「ううん、そういうわけじゃ・・・」

車掌「降りるならさっさと降りてください。いい迷惑です」

恭太「な、なんだよ、かんじわる・・・。ちおちゃん、行こう!」

恭太が手を引くと、2人は列車を飛び出した

外は暗黒だった

35:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/3(水) 21:15:02 ID:spmolqlGjY

黒猫「――いいの?逃がしちゃって」 クスクス

座席の上で、1匹の黒猫が毛づくろいする

車掌「どういう意味」

黒猫「人間なんて、貴重な”燃料”になるじゃないか。みすみす放すなんてもったいない」

黒猫「大体さあ、人間がこんなとこで降りたら、魚人あたりに喰われるのが関の山だよねー」

車掌「知ったことか。全く、客だと思って丁重に扱ってやったらこのザマだ」

不服そうに血が滲んだ口元をぬぐう

黒猫「あらー殴られちゃったの?珍しいね」 クスクス

車掌「ほっとけ」

プシューッと音を立てると、列車は再び走り出した

36:🎏 名無しさん@読者の声:2017/5/4(木) 22:29:10 ID:lH5VhHYhaA
支援
37:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/4(木) 23:20:48 ID:spmolqlGjY
>>36
ヒエッ、初支援ありがとうございます…!
嬉しいです頑張って毎日更新するのでよろしくお願いします//
38:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/4(木) 23:25:53 ID:spmolqlGjY

恭太「――まいったなぁ」

河川敷に座り、スマホを操作する

恭太「ここ、全然電波とんでねーじゃん。しっかりしろよクソ●トバンク」

千織「私も繋がらないや」

恭太「ていうかさ、何で俺たちこんなとこに来ちゃったんだ?全然覚えてないんだけど」

千織「・・・」

どうやら恭太には、以前の千織と同様、ここに来る直前の記憶がないらしい

千織(今度は、私覚えてる・・・。あの男の子にチョコをあげたら、ここに来てしまった・・・)

恭太「とりあえず、どっかの家に電話借りようか」

と、その時

目の前の河川から、ばしゃんと大きな音がした

39:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/4(木) 23:31:03 ID:spmolqlGjY

???「あー、はらへったな・・・・」

何かが、川の中から這い上がってくる

千織「・・・!」

恭太「な、なんだよあれ・・・」

暗がりではっきりとはみえないが、人の形ではないことはわかる

いや、手足のようなシルエットはみえる

???「・・・」

それは、こちらに気づいたのか、じっと見つめてきた

40:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/4(木) 23:35:21 ID:spmolqlGjY

千織「お、沖くん、」

そでをつかむ。嫌な予感がする

凝視すると、それの姿が把握できた

全長2mほどの大きな魚に、手足が生えている


恭太「―逃げるぞ!!」 ダッ

千織「きゃっ」

危機を察知し、恭太は千織の手をつかみ逆方向へ走り出した

同時に、魚人も無言でダッシュを切り追いかけはじめる

41:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/4(木) 23:40:50 ID:spmolqlGjY

恭太「なっ、なんだよあの化け物っ・・・」

千織「沖くん、列車に戻ろう!」

恭太「もう出発してる!無理だ!」

暗い土手を、無我夢中で走る

あの化け物がどこまで追ってきているのか、確認する余裕もない

魚人「はい、追いついた」

「!?」

突如、背後から肩をつかまれ、千織は地面に尻もちをついた

42:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/4(木) 23:46:20 ID:spmolqlGjY

恭太「ちおちゃん!!」

魚人がニタニタと笑い、千織の首ねっこをつかむ

恭太「てっ、てめぇ!ちおちゃんをはなせ!!」

叫ぶが、ガタガタと足が震えている

魚人「まさか人間を見つけるなんてなぁ・・・。幸運だぜ」

千織「沖くん、逃げて!!」

次の瞬間

ドゴッ!!

恭太「う、」

千織「!!」

恭太は腹に拳を入れられ、バタリと地面に崩れおちた

43:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/5(金) 20:46:40 ID:ufTVIcJVgc

―――――


千織「――ん・・・」

目を覚ますと、そこは薄暗い部屋の中だった

千織「・・・!?」

身体の自由がきかない

手足が縄で拘束され、口にはテープが貼られている

千織「んっ、んっ」

必死にもがくが、一向に縄がほどける気配はない

千織(沖くんは・・・!?)

44:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/5(金) 20:49:32 ID:ufTVIcJVgc

まわりを見回すが、恭太の姿はない

ダンボールがそこら中に積まれている

すると

ギイイイィ・・・

千織「!」

部屋の扉が開いた

45:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/5(金) 20:53:08 ID:ufTVIcJVgc

入ってきたのは、魚人と、

千織(車掌さん・・・!?)

あの、車掌だった

魚人「あ、起きてるじゃねーか」

ニタニタと笑いながら近づき、千織の顎をつかむ

魚人「てめぇは女だからなぁ・・・。高値で売ってやるぜ」

千織「・・・!」

46:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/5(金) 20:56:33 ID:ufTVIcJVgc

魚人「オレの荷物は、これと、これと、この奴隷だ」

2つのダンボール箱と千織を指さす

魚人「ミヤコ駅まで運んでくれ。くれぐれも人間だからって食ってくれるなよ」 ケラケラ

車掌「かしこまりました」 ペコリ

車掌が会釈すると、魚人は部屋を出て行った

千織「んーっ、んーっ」

車掌もそれに続こうとするのを、必死で止める

47:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/5(金) 21:03:20 ID:ufTVIcJVgc

千織「んー!んんーっ!」

車掌「・・・」 ハァ

小さくため息をつき、千織の方へ振り返る

車掌「君を助けることはできない。君はこの貨物車両に積まれた『荷物』だ」

千織「んーっ!んーっ!!」

車掌「これからは、魚人の奴隷として生きていくことだ」

バタン

慈悲もなく、車掌は出て行った

48:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/5(金) 23:53:30 ID:spmolqlGjY

魚人「いやー、にしても、人間なんて珍しいモン見つけるなんて超ついてるわぁ。そう思わねえ?」

列車内をご機嫌で歩く

車掌「そうですね」

魚人「しかも2人だぜ2人!たまに人間が迷い込んでも誰かにとられちまうからなぁ」

車掌「運ぶのは1人だけでよろしいのですか?」

魚人「あぁ、男の方は今晩の夕飯だ。母ちゃんに蒸し餃子にしてもらうんだあ〜楽しみだぜ」

車掌「そうですか」

49:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/6(土) 00:00:11 ID:spmolqlGjY

ゴトン、ゴトン・・・

音を立て、列車が走りはじめる

千織が閉じ込められているのは、最も後続の貨物車両だった

千織(どうすれば・・・)

千織(どうすれば、いいんだろう・・・)

どうやら自分は、どこかで奴隷として売られてしまうらしい

千織(沖くんは、無事なのかな・・・)

そのとき

「にゃ〜〜ご」

千織「!」

1匹の黒猫が、部屋の隅から姿を現した

50:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/6(土) 00:03:26 ID:spmolqlGjY

千織(ね、ねこ・・・?なんでこんな所に・・・)

黒猫は千織に歩み寄ると、ペロリと千織の頬をなめた

千織(かわいい・・・)

千織「んー、んー」

黒猫「にゃー」

千織「んー」

黒猫「助かる方法、教えてあげようか」

千織「!?」 ビクッ

千織(しゃしゃしゃ喋った・・・!?!?)

思わず身をのけぞり、猫から距離をとる

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