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私は私
[8] -25 -50 

1: ◆R.iBuJXktQ:2011/9/22(木) 23:41:14 ID:sZFT6sQ9z2
注意

このスレには捕食、虐殺、首跳ねのようなグロ成分が含まれています。

直接的な表現は極力減らしていますが、苦手な人はすぐに戻ってください。



53:
◆MEIDO...W.:2011/10/15(土) 21:16:07 ID:jvRom5VLAQ
>>52
ありがとうございます



いつもの時間に店を閉め、いつものようにルーシーの家にお邪魔する。そして、いつものように夕食の準備を手伝って、いつものようにイスに座って夕食の完成を待つ。いつものように美味しそうな料理が出てくる。しかし、いつものように美味しくいただけなかった。

私の右手の小指が青く、そして粘り気のある液体に戻っているのが目に入った。しかも、だんだん他の指まで元に戻っている。

「ル、ルーシー……私、どうしても家でやらないといけないことを思い出したの。だから、ちょっと帰るね」

「えっ?そう……」

ルーシーは不思議そうな顔をしてこちらを見ているが、今は見てほしくない。親指まで青くなり始めた。

「あ、ちょっと待って!」

立ち上がって、帰ろうとしたときにいきなり大声で話しかけないでもらいたい。かなりびっくりしてしまった。

「夕食、家で食べてください。お腹空いちゃうから」

「あ、ああ。皿ごと持って行っても良い?」

「どうぞ」

私はメインディッシュの魚が乗った皿にパンも乗せて、左手で皿を持ち上げた。

「それじゃ、また明日」

「さようなら」

右手で扉を開けて、ルーシーの家から脱出した。

54:
◆MEIDO...W.:2011/10/15(土) 21:17:04 ID:trx0HkZN.I
家に帰って、まずはドアに鍵をかける。夕食をテーブルに置いて、もう一度落ち着いて、手を見てみる。やはり、青い。私の右手が完全に元に戻っている。左手もだんだん戻り始めた。それどころか、形の維持が出来なくなってきた。身につけているものを手がまだ使えるうちに脱いで、急いで寝室に移動する。

これは何かの病気だろうか。考えている間も体は戻っていく。手だけではなく足も戻り始めたので、今はベットに横になっている。戻った所は自由に操れるが、擬態が出来なくなっているようだ。考えていると、あることを思い出したので、ベットから起き上がって、床を張って窓まで移動する。
55:
◆MEIDO...W.:2011/10/15(土) 22:46:52 ID:5V2pnSlcCU
「やっぱり……今日は新月だ……」

月は魔物の魔力に影響を与えるらしく、月が見えない新月には一斉に弱体化すると聞いたことがある。つまりは、私のこれは病気でも何でもなく、新月に夜もののようだ。

原因がわかって安心したので、ベットに戻って寝ようとしたが、完全に手足を失ったので、床を這うことが出来なくなってしまった。カーテンを触腕で閉めた後、自分の体を乗せてベットまで移動した。
56:
◆MEIDO...W.:2011/10/15(土) 22:47:35 ID:YepzLr4ZbA
朝起きて、真っ先に体を元に戻す。本当に戻れるのかと少し不安だったが、なんとか戻ることが出来た。これからは新月の日をあらかじめ知っておく必要があるだろう。

昨日食べなかった夕食を食べ終えて、服を着ていないことに気づいた。服を着て、皿を持って、ルーシーの家に向かった。

57:
◆MEIDO...W.:2011/10/16(日) 17:29:55 ID:ScZrKHOJSw
以前来た少女がまたやってきた。やはり、私は少女の入店を見ていない。初めから店の中にいたかのように、商品を閲覧している。ジッと見つめていた所為か目があった。少女は微笑んできたが、私はなんとなく目をそらした。しばらくして、少女は何も持たずに、私の下にやってきた。

「魔法鉱石ってありますか?」

「ありますよ。ちょっと待っててください」

私は倉庫で在庫の確認をしているルーシーに知らせるためにその場を離れた。

58:
◆MEIDO...W.:2011/10/16(日) 17:31:00 ID:IdEq0R574.
「すごいですよあの子!すごく良い人です!すごい金持ちですよ!」

あの少女は倉庫で眠っていたペリドット五個とマラカイト五個の計十個、合計五十六万を買っていった。おかげでルーシーは大喜びで騒いでいる。

「ああ、明日早速町に……いや、王都まで行かないとダメかな?」

それだけではなく、少女は魔法鉱石の中で最も高いクリスタルを仕入れれば、全て買うと言ってのけた。さすがにこればかりは急に買わないとなったら困るようで、契約書を書いてもらったようだ。それがさらにルーシーを喜ばせた。

「ミシェルさん!しばらく店番お願いします!私は今から王都に行ってきます!一週間以内には戻りますから!」

ルーシーは革袋に必要な物を詰め、店を飛び出していった。

59:
◆MEIDO...W.:2011/10/16(日) 17:31:51 ID:IdEq0R574.
ルーシーはあの少女――契約書を勝手に見たら、プリマリアと言うらしい――をすっかり信じているようだが、私はなかなか信用出来ない。あんな少女が何故大金を持っているのだろうか。仮に大金持ちだとしても、近くに大金持ちが住んでいるなんて聞いたことがない。わざわざ遠くからこんな田舎に来る意味もわからない。

それだけでなく、あの少女はやはり不気味だ。二回目会ってなんとなく理由がわかった。まるで死体が動いているように、生気を全く感じられないのだ。それだけでなく、なんとなく血のにおいがする。仮に人間だとしても、まともな人間ではないだろう。
60:
◆MEIDO...W.:2011/10/17(月) 17:15:10 ID:IFKL1janvs
ルーシーがいないという事は、私が食事を作らないとならないのか。はっきり言うと、私は切るしか出来ない。火というものが本能的にダメなのだ。

生で食べようかと買ってきた肉をちょっとかじってみたが、不味い。昔の私は良くこんなものが食べられていたなと思う。

このままやってても食べられそうにないので、料理をしてみることにした。
61:
◆MEIDO...W.:2011/10/17(月) 17:15:53 ID:UrTy.eU.y.
まず、火打ち石で火をつけることに手こずる。次に、火を恐れながらも、肉を焼く。肉を焼いている間に野菜を切るが、最後まで切れておらず繋がっていた。それらを分離するのに集中しすぎて、肉を焦がす。時間をかけて、私は炭とサラダを作り上げた。なんとなく食事が嫌になりそうだ。
62:
◆MEIDO...W.:2011/10/17(月) 17:16:20 ID:UrTy.eU.y.
ここ五日の成長は火打ち石で簡単に火をつけられるようになった事と、野菜をちゃんと切れるようになった事だ。魚でも肉でもタイミングがわからず、少なからず焦がしてしまう。それに、ルーシーのように多彩なものを作れるわけではないから、ほとんど同じ味だ。流石に飽きてきた。明日にでも戻ってきてくれるとありがたいのだが。

63: 名無しさん@読者の声:2011/10/17(月) 23:03:23 ID:BxAnhJXVdM
期待
64:
◆MEIDO...W.:2011/10/18(火) 09:27:31 ID:7eieR24plI
>>63
ありがとうございます。



朝、店に行くと店の前に馬車が止まっていた。何事かと思ったが、ルーシーが帰ってきたらしい。

「ああ、ミシェルさん。馬車に積んであるもの運ぶの手伝ってくれませんか?」

馬車を見てみると、座るところがないくらいに、物が詰まっていた。全部商品となるものだろう。

「こんなに買うお金がどこに……」

「聞きたいですか?」

「当然」

「運び終わったら教えます。はい、これ」

剣を五本渡された。一番初めに運んだものも剣五本だったが、これはかなり重い。多分素材が違うのだろう。全部運ぶとなるとかなり時間がかかるだろう。
65:
◆MEIDO...W.:2011/10/18(火) 09:28:05 ID:z/P1S2BebI
商品を全部運び終えたのは昼過ぎだった。倉庫に入りきらず、何個かそのまま店に並べることになった。

「お疲れ様です」

「早く教えてよ」

ルーシーはペリドットとマラカイトの売上金しか持って行かなかった筈なのに、それの倍以上あるだろう商品と馬車一台を買ってきた。いったいルーシーに何が起こったのだろうか。

「王都についてまず、クリスタルを五個買ったんです。お金は五万ほどしか残っていました。お土産を買っていこうと、王都をうろついていたら、カジノを見つけたんです。一万払ってやってみたら大当たりで。あれだけ買ってもお釣りが来るほどのお金が手には入ったわけです」

なんという強運だろうか。悪事に手を出したのかと、少し心配だったが、安心した。
66:
◆MEIDO...W.:2011/10/18(火) 23:46:15 ID:qjNS3bDJUo
「後、これを。お土産です」

ルーシーは赤い石がついたネックレスを差し出した。見た感じだとかなり高そうに見える。

「良いの?」

「ええ」

「ありがとう」

まさかこんな物をくれるなんて思っても見なかった。早速つけてみることにしよう。
67:
◆MEIDO...W.:2011/10/18(火) 23:46:23 ID:qjNS3bDJUo
「似合う……?」

「とっても」

誉められてなんとなく恥ずかしい。最近、プリマリアとか言う少女が来たり、擬態出来なくなったりとそれなりに嫌なことが続いていたから、なお嬉しい。

「あれ?ルーシーもつけてるの?」

ルーシーの首にもネックレスがかかっていたことに気づいた。色も同じ赤だった。

「お揃いのです。それにこれすごいんですよ」

ルーシーが石を握って、手を離すと、何かに引っ張られるかのように石が動いた。

「魔力をちょっと加えると、そっちにくっつこうとするんです。そっちでも同じです」

そんな物があるのかと、まじまじと自分の首に下がっている赤い石を見た。

「その石の名前は夫婦石。大切な人にあげるものです。その……」

ああなるほど。そう言う意味が込められているのか。赤い石から目を離して、ルーシーの顔を見てみると、少し頬が赤かった。

「これからも私と一緒にいてくれますか?」

ルーシーは言い切って、すぐに俯いてしまった。見ていると、なんとも可愛らしい。

「えっと……告白?」

「……そうです」

普段と比べると随分小さな声だったので、聞き逃しそうだった。まさか、同性から告白されるとは。私としては是非その思いに答えてあげたい。

「ルーシー……あなたの思い受け止める」

ルーシーにハグをして、優しく髪をなでながら、そう言った。顔は見えないが、ホッとしているのではないだろうか。

「でもね、これだけは聞いて。私にはあなたが想像しないような秘密があるの。今は話せないけど、それでも良い?」

「……はい」

「ありがとう」

ルーシーを強く抱きしめてから、離れた。すぐにルーシーは後ろを向いてしまったが、ルーシーの顔はまだ少し赤かった。
68:
◆MEIDO...W.:2011/10/19(水) 09:29:16 ID:kkv4gh8dE.
ルーシーに告白されたのはいつだろうか。もう、かなり時間が経った気がする。未だに、私の正体を話せていない。やはり、なかなか勇気が出ない。

話しても、受け入れられなかったら、私は居場所を失ってしまう。損得の問題ではないが、損の部分があまりにも大きすぎる。

しかし、最近、ルーシーが私の方を見て何かを考えているのを良く見る。ルーシーの為にもそろそろ話べきなのだろう。
69:
◆MEIDO...W.:2011/10/19(水) 09:29:38 ID:dvdpxsOS7k
「ルーシー……今日家に帰ったら話すよ……」

言ってしまった。もう後戻りは出来ない。私の中に勇気も無ければ後悔もない。あるのはこれから起こるであろう事への不安だけだった。

「……わかりました」

ルーシーは覚悟を決めたような顔で返答してきた。それを見て、少しだけ手が震えた。

その日はお互い店を閉めるまで話すことはなかった。
70:
◆MEIDO...W.:2011/10/19(水) 09:29:59 ID:kkv4gh8dE.
相手がいるのに会話のない食事というのはなんとも味気ない。しかし、これから大切な話をするのに何を話したらいいのだろうか。日常会話をするにも、いきなり天気の話をするわけにもいかないだろう。

そんなこんな考えているうちに、全て食べ終えてしまった。
71:
◆MEIDO...W.:2011/10/19(水) 09:30:51 ID:dvdpxsOS7k
「ルーシー、良く聞いて……」

テーブルの向かい側に座るルーシーは険しい表情をしていた。

「私は……」

後少しという所で言葉が出なくなった。次の言葉で全てを失うかもしれないという恐怖が言葉を止めている様にも感じた。

「私は……人間じゃない……」

一瞬、そんな感情をねじ伏せて、言葉を外に出してみると、何か吹っ切れたように感じた。ルーシーは声には出さなかったが、驚きがそのまま顔に現れていた。

「私はスライムなの……」

椅子から立ち上がり、ルーシーから私の全身が見える位置まで下がり、服を全部脱いだ。そして、少しずつ体の色を私の本来の色に戻していく。

72:
◆MEIDO...W.:2011/10/19(水) 09:30:58 ID:kkv4gh8dE.
体全体が半透明の青色に戻った。ルーシーは私の体を見ているだけで、何も言ってくれない。私はどうしたらいいんだろうか。

「私の生殺与奪の権はルーシーが持っているから、好きなように言ってほしい」

「確かに私の予想の斜め上を行ってましたね……」

ルーシーは険しい表情からうっすら優しさを感じ取れるような表情をしていた。

「種族が違ってもミシェルさんはミシェルさんじゃないですか。私は嫌悪感なんかより、むしろ知的好奇心みたいなものを感じますよ」

その言葉で、張りつめていた緊張の糸が切れたのか、足に力が入らなくなり、床に膝をついてしまった。さらに、涙まで溢れてきた。スライムには涙を流さないのかもしれないが、実際に目から水が出てるから涙だ。

「えっ!わ、私なんか変なこと言いました?」

「ただ嬉しくて……」

涙を拭くときにチラリとルーシーがホッとしている顔が見えたが、吹き終わったときには普段の顔をして、手を差し伸べてくれた。

「これからもよろしくお願いします」

「もちろん!」

私はしっかり手を握りしめ、立ち上がり、二人で笑った。

これからも私は私でいることが出来るようだ。
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