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私は私
[8] -25 -50 

1: ◆R.iBuJXktQ:2011/9/22(木) 23:41:14 ID:sZFT6sQ9z2
注意

このスレには捕食、虐殺、首跳ねのようなグロ成分が含まれています。

直接的な表現は極力減らしていますが、苦手な人はすぐに戻ってください。



54:
◆MEIDO...W.:2011/10/15(土) 21:17:04 ID:trx0HkZN.I
家に帰って、まずはドアに鍵をかける。夕食をテーブルに置いて、もう一度落ち着いて、手を見てみる。やはり、青い。私の右手が完全に元に戻っている。左手もだんだん戻り始めた。それどころか、形の維持が出来なくなってきた。身につけているものを手がまだ使えるうちに脱いで、急いで寝室に移動する。

これは何かの病気だろうか。考えている間も体は戻っていく。手だけではなく足も戻り始めたので、今はベットに横になっている。戻った所は自由に操れるが、擬態が出来なくなっているようだ。考えていると、あることを思い出したので、ベットから起き上がって、床を張って窓まで移動する。
55:
◆MEIDO...W.:2011/10/15(土) 22:46:52 ID:5V2pnSlcCU
「やっぱり……今日は新月だ……」

月は魔物の魔力に影響を与えるらしく、月が見えない新月には一斉に弱体化すると聞いたことがある。つまりは、私のこれは病気でも何でもなく、新月に夜もののようだ。

原因がわかって安心したので、ベットに戻って寝ようとしたが、完全に手足を失ったので、床を這うことが出来なくなってしまった。カーテンを触腕で閉めた後、自分の体を乗せてベットまで移動した。
56:
◆MEIDO...W.:2011/10/15(土) 22:47:35 ID:YepzLr4ZbA
朝起きて、真っ先に体を元に戻す。本当に戻れるのかと少し不安だったが、なんとか戻ることが出来た。これからは新月の日をあらかじめ知っておく必要があるだろう。

昨日食べなかった夕食を食べ終えて、服を着ていないことに気づいた。服を着て、皿を持って、ルーシーの家に向かった。

57:
◆MEIDO...W.:2011/10/16(日) 17:29:55 ID:ScZrKHOJSw
以前来た少女がまたやってきた。やはり、私は少女の入店を見ていない。初めから店の中にいたかのように、商品を閲覧している。ジッと見つめていた所為か目があった。少女は微笑んできたが、私はなんとなく目をそらした。しばらくして、少女は何も持たずに、私の下にやってきた。

「魔法鉱石ってありますか?」

「ありますよ。ちょっと待っててください」

私は倉庫で在庫の確認をしているルーシーに知らせるためにその場を離れた。

58:
◆MEIDO...W.:2011/10/16(日) 17:31:00 ID:IdEq0R574.
「すごいですよあの子!すごく良い人です!すごい金持ちですよ!」

あの少女は倉庫で眠っていたペリドット五個とマラカイト五個の計十個、合計五十六万を買っていった。おかげでルーシーは大喜びで騒いでいる。

「ああ、明日早速町に……いや、王都まで行かないとダメかな?」

それだけではなく、少女は魔法鉱石の中で最も高いクリスタルを仕入れれば、全て買うと言ってのけた。さすがにこればかりは急に買わないとなったら困るようで、契約書を書いてもらったようだ。それがさらにルーシーを喜ばせた。

「ミシェルさん!しばらく店番お願いします!私は今から王都に行ってきます!一週間以内には戻りますから!」

ルーシーは革袋に必要な物を詰め、店を飛び出していった。

59:
◆MEIDO...W.:2011/10/16(日) 17:31:51 ID:IdEq0R574.
ルーシーはあの少女――契約書を勝手に見たら、プリマリアと言うらしい――をすっかり信じているようだが、私はなかなか信用出来ない。あんな少女が何故大金を持っているのだろうか。仮に大金持ちだとしても、近くに大金持ちが住んでいるなんて聞いたことがない。わざわざ遠くからこんな田舎に来る意味もわからない。

それだけでなく、あの少女はやはり不気味だ。二回目会ってなんとなく理由がわかった。まるで死体が動いているように、生気を全く感じられないのだ。それだけでなく、なんとなく血のにおいがする。仮に人間だとしても、まともな人間ではないだろう。
60:
◆MEIDO...W.:2011/10/17(月) 17:15:10 ID:IFKL1janvs
ルーシーがいないという事は、私が食事を作らないとならないのか。はっきり言うと、私は切るしか出来ない。火というものが本能的にダメなのだ。

生で食べようかと買ってきた肉をちょっとかじってみたが、不味い。昔の私は良くこんなものが食べられていたなと思う。

このままやってても食べられそうにないので、料理をしてみることにした。
61:
◆MEIDO...W.:2011/10/17(月) 17:15:53 ID:UrTy.eU.y.
まず、火打ち石で火をつけることに手こずる。次に、火を恐れながらも、肉を焼く。肉を焼いている間に野菜を切るが、最後まで切れておらず繋がっていた。それらを分離するのに集中しすぎて、肉を焦がす。時間をかけて、私は炭とサラダを作り上げた。なんとなく食事が嫌になりそうだ。
62:
◆MEIDO...W.:2011/10/17(月) 17:16:20 ID:UrTy.eU.y.
ここ五日の成長は火打ち石で簡単に火をつけられるようになった事と、野菜をちゃんと切れるようになった事だ。魚でも肉でもタイミングがわからず、少なからず焦がしてしまう。それに、ルーシーのように多彩なものを作れるわけではないから、ほとんど同じ味だ。流石に飽きてきた。明日にでも戻ってきてくれるとありがたいのだが。

63: 名無しさん@読者の声:2011/10/17(月) 23:03:23 ID:BxAnhJXVdM
期待
64:
◆MEIDO...W.:2011/10/18(火) 09:27:31 ID:7eieR24plI
>>63
ありがとうございます。



朝、店に行くと店の前に馬車が止まっていた。何事かと思ったが、ルーシーが帰ってきたらしい。

「ああ、ミシェルさん。馬車に積んであるもの運ぶの手伝ってくれませんか?」

馬車を見てみると、座るところがないくらいに、物が詰まっていた。全部商品となるものだろう。

「こんなに買うお金がどこに……」

「聞きたいですか?」

「当然」

「運び終わったら教えます。はい、これ」

剣を五本渡された。一番初めに運んだものも剣五本だったが、これはかなり重い。多分素材が違うのだろう。全部運ぶとなるとかなり時間がかかるだろう。
65:
◆MEIDO...W.:2011/10/18(火) 09:28:05 ID:z/P1S2BebI
商品を全部運び終えたのは昼過ぎだった。倉庫に入りきらず、何個かそのまま店に並べることになった。

「お疲れ様です」

「早く教えてよ」

ルーシーはペリドットとマラカイトの売上金しか持って行かなかった筈なのに、それの倍以上あるだろう商品と馬車一台を買ってきた。いったいルーシーに何が起こったのだろうか。

「王都についてまず、クリスタルを五個買ったんです。お金は五万ほどしか残っていました。お土産を買っていこうと、王都をうろついていたら、カジノを見つけたんです。一万払ってやってみたら大当たりで。あれだけ買ってもお釣りが来るほどのお金が手には入ったわけです」

なんという強運だろうか。悪事に手を出したのかと、少し心配だったが、安心した。
66:
◆MEIDO...W.:2011/10/18(火) 23:46:15 ID:qjNS3bDJUo
「後、これを。お土産です」

ルーシーは赤い石がついたネックレスを差し出した。見た感じだとかなり高そうに見える。

「良いの?」

「ええ」

「ありがとう」

まさかこんな物をくれるなんて思っても見なかった。早速つけてみることにしよう。
67:
◆MEIDO...W.:2011/10/18(火) 23:46:23 ID:qjNS3bDJUo
「似合う……?」

「とっても」

誉められてなんとなく恥ずかしい。最近、プリマリアとか言う少女が来たり、擬態出来なくなったりとそれなりに嫌なことが続いていたから、なお嬉しい。

「あれ?ルーシーもつけてるの?」

ルーシーの首にもネックレスがかかっていたことに気づいた。色も同じ赤だった。

「お揃いのです。それにこれすごいんですよ」

ルーシーが石を握って、手を離すと、何かに引っ張られるかのように石が動いた。

「魔力をちょっと加えると、そっちにくっつこうとするんです。そっちでも同じです」

そんな物があるのかと、まじまじと自分の首に下がっている赤い石を見た。

「その石の名前は夫婦石。大切な人にあげるものです。その……」

ああなるほど。そう言う意味が込められているのか。赤い石から目を離して、ルーシーの顔を見てみると、少し頬が赤かった。

「これからも私と一緒にいてくれますか?」

ルーシーは言い切って、すぐに俯いてしまった。見ていると、なんとも可愛らしい。

「えっと……告白?」

「……そうです」

普段と比べると随分小さな声だったので、聞き逃しそうだった。まさか、同性から告白されるとは。私としては是非その思いに答えてあげたい。

「ルーシー……あなたの思い受け止める」

ルーシーにハグをして、優しく髪をなでながら、そう言った。顔は見えないが、ホッとしているのではないだろうか。

「でもね、これだけは聞いて。私にはあなたが想像しないような秘密があるの。今は話せないけど、それでも良い?」

「……はい」

「ありがとう」

ルーシーを強く抱きしめてから、離れた。すぐにルーシーは後ろを向いてしまったが、ルーシーの顔はまだ少し赤かった。
68:
◆MEIDO...W.:2011/10/19(水) 09:29:16 ID:kkv4gh8dE.
ルーシーに告白されたのはいつだろうか。もう、かなり時間が経った気がする。未だに、私の正体を話せていない。やはり、なかなか勇気が出ない。

話しても、受け入れられなかったら、私は居場所を失ってしまう。損得の問題ではないが、損の部分があまりにも大きすぎる。

しかし、最近、ルーシーが私の方を見て何かを考えているのを良く見る。ルーシーの為にもそろそろ話べきなのだろう。
69:
◆MEIDO...W.:2011/10/19(水) 09:29:38 ID:dvdpxsOS7k
「ルーシー……今日家に帰ったら話すよ……」

言ってしまった。もう後戻りは出来ない。私の中に勇気も無ければ後悔もない。あるのはこれから起こるであろう事への不安だけだった。

「……わかりました」

ルーシーは覚悟を決めたような顔で返答してきた。それを見て、少しだけ手が震えた。

その日はお互い店を閉めるまで話すことはなかった。
70:
◆MEIDO...W.:2011/10/19(水) 09:29:59 ID:kkv4gh8dE.
相手がいるのに会話のない食事というのはなんとも味気ない。しかし、これから大切な話をするのに何を話したらいいのだろうか。日常会話をするにも、いきなり天気の話をするわけにもいかないだろう。

そんなこんな考えているうちに、全て食べ終えてしまった。
71:
◆MEIDO...W.:2011/10/19(水) 09:30:51 ID:dvdpxsOS7k
「ルーシー、良く聞いて……」

テーブルの向かい側に座るルーシーは険しい表情をしていた。

「私は……」

後少しという所で言葉が出なくなった。次の言葉で全てを失うかもしれないという恐怖が言葉を止めている様にも感じた。

「私は……人間じゃない……」

一瞬、そんな感情をねじ伏せて、言葉を外に出してみると、何か吹っ切れたように感じた。ルーシーは声には出さなかったが、驚きがそのまま顔に現れていた。

「私はスライムなの……」

椅子から立ち上がり、ルーシーから私の全身が見える位置まで下がり、服を全部脱いだ。そして、少しずつ体の色を私の本来の色に戻していく。

72:
◆MEIDO...W.:2011/10/19(水) 09:30:58 ID:kkv4gh8dE.
体全体が半透明の青色に戻った。ルーシーは私の体を見ているだけで、何も言ってくれない。私はどうしたらいいんだろうか。

「私の生殺与奪の権はルーシーが持っているから、好きなように言ってほしい」

「確かに私の予想の斜め上を行ってましたね……」

ルーシーは険しい表情からうっすら優しさを感じ取れるような表情をしていた。

「種族が違ってもミシェルさんはミシェルさんじゃないですか。私は嫌悪感なんかより、むしろ知的好奇心みたいなものを感じますよ」

その言葉で、張りつめていた緊張の糸が切れたのか、足に力が入らなくなり、床に膝をついてしまった。さらに、涙まで溢れてきた。スライムには涙を流さないのかもしれないが、実際に目から水が出てるから涙だ。

「えっ!わ、私なんか変なこと言いました?」

「ただ嬉しくて……」

涙を拭くときにチラリとルーシーがホッとしている顔が見えたが、吹き終わったときには普段の顔をして、手を差し伸べてくれた。

「これからもよろしくお願いします」

「もちろん!」

私はしっかり手を握りしめ、立ち上がり、二人で笑った。

これからも私は私でいることが出来るようだ。
73:
◆MEIDO...W.:2011/10/19(水) 09:44:08 ID:dvdpxsOS7k
ここまで読んでくださった方がいるかはわかりませんが、一応

「私は私」を読んでいただきありがとうございました。「私は私」は『一応』完結です。

もう一度言いますが、『一応』完結です。

それでは、ありがとうございました。
74: 名無しさん@読者の声:2011/10/19(水) 12:52:22 ID:A44jxRf7zc
面白い
読んでますよーC
75: 名無しさん@読者の声:2011/10/19(水) 17:55:33 ID:Z/5gMg0gNA
続編きぼんぬ
76: 名無しさん@読者の声:2011/10/20(木) 00:25:49 ID:XKnEMUdELw
いつも支援してましたー
乙です!!
私も続編希望。
77: ◆MEIDO...W.:2011/10/20(木) 07:24:21 ID:weA6l9wvtU
>>74
ありがとうございます。

>>75
えっ、なんのことやら←

>>76
ありがとうございます。続編?何それ?美味しいの?←



続編は無いけど、私は私四部始めるよ!

一応sage進行ね!
78: ◆MEIDO...W.:2011/10/20(木) 07:26:12 ID:weA6l9wvtU
「お久しぶりね、皆さん。私の事覚えているかしら?『まともじゃない人間』でわかると良いんだけど。いかがだったかしら、今までの話は?一応はハッピーエンドなのかしらね?まあ、言いたいことは多々あると思うけど、物足りない気がしない?十分なら十分で良いけどね。ここから先に進めば、本当の結末までたどり着けるかもしれないわ。でも、世の中知らない方が良いこともあるわよ。ただ別のハッピーエンドにたどり着くかもしれないかもしれないし、とんでもないエンディングにたどり着くかもしれない。進みたいなら、ご自由に。じゃあ、私はこれで」
79: ◆MEIDO...W.:2011/10/20(木) 07:26:58 ID:weA6l9wvtU
日の出より早くに目が覚めた。雨だからわからないが、時間的には日の出前のはずだ。稀にあることだから、別に気にしないつもりだったのだが、何か嫌な予感がする。寝ている余裕もなさそうなので、さっさと着替えることにした。

日が昇った頃に雨は止んだが、やはり嫌な予感はまだ私の中にあった。それに、何かが足りない。視覚的には変化はないから、おそらく感覚的なものが足りない。
80: ◆MEIDO...W.:2011/10/21(金) 16:20:43 ID:C.YeTEqF1I
ルーシーが家にいなかった。日が昇ってからまだそれほど時間も経っていない。足りないものはスープの匂いだった。この時間にはもう作り始めているはずなのに。

また出かけるとも聞いていない。それに、家の中で僅かに血痕を見つけた。朝から感じていた嫌な予感はこれだったようだ。探そうにも、あまりにもヒントが無さ過ぎる。

そして、会いたくない奴に出会った。
81: ◆MEIDO...W.:2011/10/21(金) 16:21:05 ID:/4TxF8mZnI
「何しているの?」

怪しい場所にまともじゃない怪しい人間を足すと何か。簡単だ。容疑者だ。

「ルーシーはどこだ?」

「さあ?店じゃないのかしら?」

まず優先すべきはルーシーであり、こいつじゃない。言われた通りに店に急いで店に向かった。
82: ◆MEIDO...W.:2011/10/21(金) 16:21:28 ID:/4TxF8mZnI
店には鍵がかかっていた。人差し指を変形させて、強引に鍵を開けて、店に入った。店の中は薄暗くよく見えないが、中央に誰かが椅子に座っているのがわかる。ゆっくり近づいていくと、裸の女性が椅子に縛り付けられながら、うなだれていた。私はその女性を知っている。

「ルーシー……」

急いで縄をほどいて、商品の毛布でくるんで、床に寝かせた。所々に傷があるが、ちゃんと脈はある。
83: ◆MEIDO...W.:2011/10/22(土) 22:03:44 ID:YepzLr4ZbA
「あいつら自白剤まで使ったのね。一般人にまでこんな事をするとはね」

背後から先ほど聞いたばかりの声が聞こえてきた。

「あなたは!」

振り向いて、色々罵声やら何やらを浴びせたかったが、私が続きを言うより早くに口を手で押さえられた。

「今、私に色々言っている場合?このままじゃその子死ぬわよ?もし助かっても、廃人ね」

確かに、ルーシーの目は見開かれていたが、焦点が全くあっていなかった。端から見ても、普通の状態ではない。

「あなたに選択肢を提示してあげる。一つ目、このままこの子のそばにいて、この子が死ぬのを待つ。二つ目、この子を助ける方法を探す。三つ目、この子を置いて帰る」

ふざけた選択肢だ。二番目に決まっている。しかし、喋ろうにも未だに口を塞がれていて、喋ることが出来ない。

「四つ目、この子をこんな目に合わせた奴らを殺しに行く。その間に私がこの子を治療する」

その後、あいつは私の口から手を離した。
84: ◆MEIDO...W.:2011/10/22(土) 22:03:50 ID:5V2pnSlcCU
「……あなたはいったい何なの?何がしたいの?」

提示された選択肢に選択権があるようで無いようなものだ。それにこいつにルーシーを救う術があるというのか。

「私はあいつらが鬱陶しい。あなたはこの子を助けたい。利害の一致ね」

それにこいつの言う「あいつら」とは誰のことなのだろうか。

「で、行くの?行かないの?」

「……行く」

こいつに命令されるのはなんとなく癪だが、私にはルーシーを助ける方法を知らないからしょうがない。
85: ◆MEIDO...W.:2011/10/23(日) 16:20:56 ID:DjGow5sBJA
「敵は国の諜報部の雑魚二人。馬鹿だから、夫婦石持ってたわ。雑魚で馬鹿だけど、そこらの冒険者よりは強いから気をつけなさい」

私の聞き間違いでなければ、こいつは「国」と言った。いったい何者なのだろうか。だが、今はそんなことはどうでも良い。

「本当にルーシーは助かるんでしょ?」

「もちろん。なんなら契約書でも書きましょうか?」

「行ってくる」
86:
◆MEIDO...W.:2011/10/23(日) 16:21:25 ID:ldp/oNwss.
雨上がりというものは好きだ。正確には雨上がりの後の狩りだが。そんな事を考えていたのはいつだっただろうか。狩りも久しくしていない。

人里近くになると色々面倒だが、人里に入られるとさらに面倒になる。奴らが人里に着く前になんとか追いつきたい。

なんと言っても、私の一番好きな狩り条件なのだから。

87: ◆MEIDO...W.:2011/10/24(月) 13:55:56 ID:4Nlnc0808U
馬という生物は速いのは良いのだが、非常に乗りにくい。私がただ乗り慣れていないだけなのかもしれないが、なかなか思うように言うことを聞いてくれない。時たま私を振り落とそうとしてくる。スピードが出ているときに振り落とされたら、核も無事ではないだろう。

夫婦石の引き付けが徐々に弱くなってきた。少しずつ離されているのがわかる。少し荒っぽいが馬には無理やり言うことを聞いてもらおう。
88: ◆MEIDO...W.:2011/10/24(月) 13:57:25 ID:dz7ykgEFtY
馬が振り落とそうとしてくる度に、ほんの少しずつ皮膚を溶かしてやったら、大人しく走ってくれた。曇り空で太陽の位置はわからないが、だいたい昼頃だろう。

人里までに追いつくことは出来なかったが、どうやら人里で休息を取っているようだった。馬を一旦預けて、人里の中を探すことにした。

89: ◆MEIDO...W.:2011/10/24(月) 13:57:41 ID:dz7ykgEFtY
人里の中央付近にある酒場で奴らを見つけた。夫婦石が常に奴らの方に引きつけられるから間違いないだろう。細身の男と髭面のデカい男の二人。二人とも一般的な商人の格好をしていた。

それを確認して店を出ようとしたが、店主に色々言われたので、酒を一杯だけ頼んだ。金は近くにいた奴からくすねた。

90:
◆MEIDO...W.:2011/10/25(火) 22:00:44 ID:s2iZiCbKVc
人里を後にして、王都に続く道で奴らを待っている時に、再び雨が降ってきた。私は雨上がりは好きだが、雨はあまり好きではない。雨音で微かな足音や呼吸音が聞こえなくなってしまって、取り逃がすことがあるからである。

だが、それはただの杞憂だったようだ。馬の足音は雨でも良く聞こえる。馬には恨みはないが犠牲になってもらおう。

91: ◆MEIDO...W.:2011/10/25(火) 22:01:57 ID:negvAIp2jI
奴らの乗った馬がほぼ同時に私の中に入った。スピードは速かったが、なんとかアキレス腱を切り裂けた。

馬はバランスを崩して、奴らを振り落として、倒れた。奴らは何が起こったか分からないような顔をして、地面に倒れている。気づかれないように髭から夫婦石を奪い、持ち物を全て溶かす。奴らは起き上がって、自分達の馬を確認し始めた。

生憎、まだ私の中にいるのだ。さて、そろそろ狩りの始まりだ。
92: ◆MEIDO...W.:2011/10/25(火) 22:03:02 ID:negvAIp2jI
「お困りですか?」

狩りと言っても、私はスライムの状態でこいつらを殺す気はない。私は元に戻る前に少し変化を加えてから、形を変えた。

「いや、馬が……」

私を見て、細身の方の顔みるみる変わっていく。

「どうした……?なっ!」

髭も今の私の姿に驚きを隠しきれなかったようだった。

「何ですか?私の顔に何かついてますか?それとも、見覚えのある顔なんですかね?」

今の私はルーシーだ。自分達で廃人のようにした人間が自分達の前に立っているのだから、驚かない方が難しいだろう。

「くそっ!」

「……俺の杖がねえ!」

奴らは何かを抜こうと、腰のあたりを探すが、何も見つからなかったようだった。私はそれをただクスクス笑いながら見下ろしていた。

「どうしたんですか?そんなに怯えて。私、そんなに酷い顔していますか?」

私はゆっくり近づいていく。細身が懐からナイフを取り出したかと思うと、私の左目と首に刺さっていた。

「あらあら。本当に酷い顔になっちゃいましたよ」

スピードを変えることなく、笑顔を絶やさず、さらに近づいていく。細身は腰を抜かしたようで、立てずに震えていた。

「クソが!」

髭は私の顔に殴りかかってきた。それを少し首を傾けてかわしてから、しっかりと腕を掴む。

「女性に殴りかかってくる精神を疑いますよ」

そのまま思い切り腕を捻った。髭が悲鳴をあげたが、私の知ったことではない。左目のナイフを引き抜いて、髭の右足に深くさしてやった。そして、髭を細身の隣に突き飛ばした。

「覚悟は出来たか?」

私は体の中にしまっておいた剣を取り出した。私がルーシーにもらったあの剣だ。

「そ、そうかわかっ……」

髭が色々言っているが、私には聞こえない。また頭の中で何かが騒いでいる。今回は今まででも最大の音だった。あまりの音量に一瞬意識を失いそうになったが、無理矢理離れていく意識を引き戻した。剣を鞘から抜き、奴らに向けた。

「タヒね」

93: ◆MEIDO...W.:2011/10/26(水) 15:00:37 ID:um8Iuczxw.
後処理は癪だったが、全部溶かしておいた。血は雨が流してくれるだろう。もうここには用はない。さっさと戻るとしよう。
94: ◆MEIDO...W.:2011/10/26(水) 15:03:50 ID:J4YZkVOK3.
「ミシェルさーん」

私がルーシーの家のドアを開けようとしたのより早く、ドアが開いて、ルーシーが飛びついてきた。

「どこ行っていたんですか?心配したじゃないですか」

「えっ……あー……ちょっと社会見学に」

なんとなくルーシーの目を真っ直ぐ見ることが出来なかった。

「そうですか。今度からは私に伝えてから行ってくださいよ」

「あ、そう言えばあいつは?プリマリアは?」

あいつには少しばかり聞きたいことがある。ルーシーが普通に生きているのは嬉しいのだが、少し様子が変だ。

「ああ、奥で寝ていますよ。それにしてもミシェルさんから姉さんに話をしようなんて珍しいですね」

今何と言った。プリマリアが姉と言ったのか。あいつはルーシーに何をしたんだ。

「ルーシー、ちょっとごめん」

抱きついているルーシーを離して、あいつが寝ているという寝室に無理矢理押し入った。
95: ◆MEIDO...W.:2011/10/26(水) 15:04:42 ID:J4YZkVOK3.
「プリマリアァァァ!」

「五月蠅いわね……そんなに大声出さなくても聞こえるわよ。こっちは疲れているの」

ベットから上半身を起こしていたプリマリアの胸ぐらを掴もうとしたが、いつの間にか寝室の壁まで吹っ飛ばされていた。

「ルーシーに何をした!」

「五月蠅いって言ってるのがわからないの?黙りなさい。黙れば話を聞いてあげる」

立ち上がろうとしたとたんに頭上から大量の水が降ってきて、水流に耐えられず床に倒れた。

「くっ……」

今のでよくわかった。私ではこいつに勝てない。だから大人しく黙るとしよう。

「それで良いのよ。何をしたかを教えてあげるわ。私はあの子を助ける為にエリクサーを使ったの。それで今朝起きた事の記憶も消した。そこまでは良かったのよ。どうやらエリクサーの配合をちょっと間違えていたらしくてね。あの子、絶えず魔力を放出する体質になっちゃったのよ。エリクサーを作ったのが私じゃなきゃ、ほっとくんだけど、作ったの私だし。しばらくは魔力供給しないとあっという間に死んじゃうのよね。言っておくけど、あなたが魔力供給したら一瞬で干からびるわよ。赤の他人に魔力供給されるのはあの子も気が引けるだろうから、ちょっと過去を変えさせてもらったわ」
96: ◆MEIDO...W.:2011/10/26(水) 15:05:04 ID:J4YZkVOK3.
こいつの言いたいことは大体わかった。自分の失敗の埋め合わせをしているだけだ。ルーシーを助けたいわけではない。それにしてもこいつは過去を変えたと言ってのけた。確かにルーシーに嘘をついている様子はなかった。

「あなたの考えは大体わかるわ。どうやって?でしょ?ちょっと時間を遡ったのよ。おかげでクリスタル全部使ったけど」

本当にこいつは何者なんだ。エリクサーを作ったり、記憶をけしたり、過去を変えるなど普通ではない。

「まぁ、私はあの子をちゃんと治したら消えるから、安心しなさい。エリクサー作り直すから、しばらくかかるけど」

「……一体あなたは何者なの?」

今まで聞くのに少し抵抗があった言葉が不意に口から漏れた。

「それ、もうあなたの中では答えは出ているんじゃないの?」

この近辺で大量の金を手に入れることが出来て、血のにおいがして、強力な魔法を使える奴は一人しか知らない。

「しばらくの間よろしく頼むわ。ミシェル・アンデルセン」
97: ◆MEIDO...W.:2011/10/26(水) 15:05:27 ID:um8Iuczxw.
私の、ミシェル・アンデルセンの話は中途半端だがここまでとさせてもらう。あの日以降のあいつといた数ヶ月は思い出すと反吐が出そうになる。とても話をする気にはなれない。

簡単に話をするとするならば、大量の血を浴びた。理由?理由は察して欲しい。えっ?今幸せかって?当然。それでは、失礼させてもらう。また会う機会があれば、また話でもしましょう。
98: ◆MEIDO...W.:2011/10/26(水) 15:18:32 ID:um8Iuczxw.
あとがき

武器の貯蔵は十分か?英雄王!さあ!私をフルボッコにしろ!

はい、終わりです。続きません。続かせません。誰がなんと言おうと終わりです。

オチに不満が一杯の方は私をフルボッコにしてストレス発散してください。

一応、私が書いた中で一番長い話です。まあ、更新されそうですが。

まあ、とりあえずここまで読んでいただき、誠にありがとうございました。

もし暇だったら、次作もよろしくお願いします。
99: 名無しさん@読者の声:2011/10/26(水) 17:02:45 ID:k3TXlquVCA
お疲れさまでした、素敵な話ありがとうございました。次回も期待してますよ、めーちゃん。
100:
◆MEIDO...W.:2011/10/26(水) 20:10:24 ID:hDHpJ5nbX.
>>99
ここまで読んでいただきありがとうございました。過度な期待はしないでくださいwww
101: ◆MEIDO...W.:2011/10/30(日) 16:26:24 ID:B9LLUanOto
誰もが忘れ、そろそろ保管庫に送られる頃に裏話的な者を書きに来てみた。

・四部構成と二部構成
>>2-28
>>29-51
>>53-72
>>78-97

本当は二部で終わらせるつもりだったんだけど、とある所でアンケートしたら、バッドエンドが良いとのことで、急遽四部まで書きました。


・バッドエンドでない理由

上で書いたように本来バッドエンドの予定でした。まあ、私がルート分岐をミスりました。意図的に。

ルート分岐シーン>>82

本当の予定ならば、ルーシーがここで死んでます。しかし、書いてるうちにルーシーに愛情的なものがわいちゃって、殺すに殺せませんでした。

ちなみに、バッドエンドルートは最終的にプリマリアとミシェルが森で一緒に暮らす予定でした。経緯は説明しません。ご自由に想像してください。

>>1で書いたような首跳ねシーンなしな理由

バッドエンドルートでプリマリアに首跳ねをされる予定でした。



まあ、この位かな……読むのが遅かった方、たまたま気づいた方、やったねラッキー。

うん。ごめん。冗談。

では、また。
102: ◆MEIDO...W.:2011/10/30(日) 23:35:37 ID:AhKggD5OzY
名前:ミシェル・アンデルセン
二つ名:恐れを知らぬ者
性別:両性(見た目女)
種族:スライム
年齢:不明(見た目22歳)
身長:自由(基本168cm)
スリーサイズ:自在(基本貧)
長所:ほぼ不死身
短所:家事や掃除が苦手
知性:普通
特技:擬態
能力:姿形を自由に変える

容姿:薄い水色のロング、薄い肌色のワンピース、茶色の革靴

特徴:知性を持ったスライム。普通は人間に擬態しているため、スライムと気づく者はいない。

魔法の森近くの村でルーシーという人間の少女と雑貨屋を営んでいる。担当は主に店番と掃除。

ルーシーとはお隣さんどうして、食事はルーシーに賄ってもらっている。一応料理は出来るが、火を使う料理は苦手。

自分で疑問を持ちながら、自分で解決する事が多い。その間は口数が減る。

人を殺そうとすると、何かが頭の中で騒ぐらしい。



ルーシーはない。理由、なんでだろうね。私の中では珍しく設定なしで長く出たキャラだよ。作る気は……あるけど、作らない。だって完結しちゃったからね。
103: 真・スレッドストッパー:停止
停止しますた。ニヤリ・・・( ̄ー ̄)
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