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私を私たらしめるもの
[8] -25 -50 

1: ◆MEIDO...W.:2011/10/23(日) 22:19:54 ID:ScZrKHOJSw
注意

この作品は「私は私」との関係性はほとんどありません。これ単体でも読むことが出来ます。

短いです。


22:
◆MEIDO...W.:2011/11/3(木) 00:35:25 ID:Ou70Vp7aU.
草木も静まり返り、ただ月明かりだけが世界を照らす夜。その静寂を打ち砕く、爆発音が響き渡った。

「早くこい……」

この学園で一番重要な所だと思われる、宝物庫の前で、黒いローブを纏ったプリマリアが野次馬を待っていた。

普通の賊ならば、爆発で無理矢理こじ開けたのなら、急いで宝を盗み、逃げ去る所なのだが、そんな様子は一切ない。

「宝物庫だ!」

「またあいつかもしれん!」

逃げ道を塞ぐように、宝物庫に続く廊下の曲がり角から靴音と騒ぎ声が聞こえてきた。宝物庫は学園の中央部に位置していて、窓もない。完全に逃げ場がなかった。

「動くな!」

一人の男性職員が曲がり角から飛び出ると同時に、杖を構えた。しかし、廊下には人影はなかった。

「バカな!どうやって!」

後から来た教職員も杖を構えたまま探したが、何も見つからなかった。
23:
◆MEIDO...W.:2011/11/3(木) 00:36:06 ID:Ou70Vp7aU.
場所は変わって図書館。プリマリアは黒いローブを深く被り、カウンターの中で何かを探すように漁っていた。

「お探しの品はこれかい?」

図書館の入り口の方から、鍵を持った眼鏡の男性が近づいてきた。

「……」

ここでヒューが現れたことに驚きながら、理由が全くわからなかった。

「そこには何もないよ。大切な物なんてね」

「何故わかった?」

悟られないように声を低くして質問した。

「何故って、有名な手じゃないか。爆発で引きつけて、別の所で盗みを働く。で、どうする?」

プリマリアは唇を強く噛んだ。ヒューのナイフの射程は知らないが、カウンター内なので身動きがとれない。ヒューの不意打ちに気をつけながら、カウンターを乗り越えた。

「それをよこせ」

「断る」

プリマリアが杖を抜くと同時に、予想通りナイフが喉を狙って飛んできた。

「甘い!」

杖でナイフを弾き飛ばして、ヒューに杖を向けようとすると、右肩に鋭い痛みが襲ってきた。プリマリアの右肩に黒いナイフが深く刺さっていた。

「あああああ!」

文字を刻み込む時とはまた別の種類の痛みに一瞬、叫び声をあげてしまったが、すぐに口を閉じた。そして、黒いナイフの柄を掴み、一気に引き抜いた。赤い液体が勢い良く溢れ出してきたが、その傷を応急処置の回復魔法でふさいだ。

「その声……プリマリアなのかい……?」

声はある程度変えることが出来るが、叫び声までは偽る事は出来なかった。
24:
◆MEIDO...W.:2011/11/3(木) 00:37:43 ID:Ou70Vp7aU.
「どうして……」

プリマリアは声を低くすることなく普通に喋り出した。そして、ローブを脱いで、ヒューに顔を見せた。

「どうして引っかからなかったの?どうしてここに来たの?どうして……」

プリマリアは力なく膝をつき、目から涙がこぼれ始めた。

「どうして私だって気づくのよ!」

泣きじゃくりながら、ありったけの声で叫んだ。

「あなたにだけは知られたくはなかった……」

「何故こんなことを……」

ヒューは膝をつくプリマリアをただ眺めるしか出来なかった。

「将来の夢、世界征服。趣味、嘘をつく事と人間観察。私を構成するもの、主に支配欲と強欲。私は……プリマリア・スペンサーっていう人間はこういう奴なのよ!私は本質からして悪なのよ!」

そして、両手で顔を押さえて、さらに泣いた。プリマリアの中にあるものは怒りと悲しみ、そして失望。それも自分に対するものだった。何故こんなにも泣いているのかわからなかった。そして、涙が枯れ果てたのか急に心が落ち着いた。顔を押さえていた手が重力に引っ張られるがまま、落ちた。
25:
◆MEIDO...W.:2011/11/3(木) 00:37:50 ID:2f6ATVrpfk
「ヒュー……私ね、さっき言ったとおりに本当に世界征服を考えているの。だけど、私には力がなかった。だから、その野望は自分でも忘れかけていたわ。でも、あの本のおかげで私は力を手に入れた。今なら私はどんな魔法使いにも負けない力を持ってる」

「ちょっと待ってくれ。君、まるでもうすぐ……」

「いいから聞いて!」

ヒューはプリマリアから何かしらのただならぬ異変を感じていた。だが、プリマリアの言葉が、出掛かっていた言葉を押し返した。

「私が今何が出来るかわかる?その気になれば杖無しに魔法を使い、四属性を操り、時間までとめられる。でも、負けたわ。たった一本のナイフに。悪党って意外とあっけないのね。まあ良いけどね。確かにあの本の通りね。大切な物を失った」

少なからず揺れていたプリマリアの腕が完全に止まった。

「これは偶然なのかい?必然なのかい?」

ヒューはゆっくりとプリマリアに近づいていく。

「私は知らないし、わからない。唯一わかるのは、私の運がとんでもなく悪かったって事。そしてこれからもどうなるかはわからない。ただなんとなくわかるのは、これが最後の会話だって事」

「やっぱり君は……」

「お願い……言わないで……」

プリマリアはただ力なく近づいてくるヒューを見上げるだけだった。

「私は平気で人に嘘をつく。だけど、あなたにだけは嘘をついたことはなかった。私はあなたと向き合う時には、嘘偽りのない本当の私。だから今ここで言わせてもらうわ。嘘の私ではなくて、本当の私が持ってる、本当の気持ちを。ヒュー……いえ、ヒュー・スファード。」

短く、それでも深く息を吸い込んだ。一瞬、視線の隅で、ヒューから何かがこぼれているのを見えた。

「私はあなたが好きでした。ありがとう、そしてさようなら」

そして、プリマリアの時間は止まった。
26:
◆MEIDO...W.:2011/11/3(木) 00:46:47 ID:2f6ATVrpfk
あとがき

どうも、メイドです。

驚異の短さ。お前サボったろと言われても、言い返せない短さ。不満があるなら私をフルボッコにしなさい。

今回のこれは悪を書きたかっただけ。駆け出し?だけどね。

あ、続きませんよ。誰がなんと言おうと続きません。

まあ、とりあえずここまで読んでくださり、誠にありがとうございました。少しでも暇つぶしになっていれば、幸いです。

次回作は鋭意作成中です。では、また。
27: 名無しさん@読者の声:2011/11/3(木) 14:35:30 ID:YcLkyE1L4E
世界の中心、針山さん的展開を期待する
28: ◆MEIDO...W.:2011/11/3(木) 22:10:53 ID:hKOyz/u7wA
>>27
わかんない私涙目www
29: ◆MEIDO...W.:2011/11/3(木) 22:33:52 ID:ZwYLXgVxwU
ちょっと早いけど裏話タイム!

・「私は私」との関係
だいたい五百年位前の話かな?間の話は気が向いたら書きます。

・「私は私」のプリマリア
完全に同一人物です。違いがあるとすれば、魔法の熟練度と悪っぽさ。

・黒の書の一番最初の魔法
「自分を杖とする魔法」です。もし、人によって使える属性が決まっていたら、市販されている杖は全ての魔法を使えるはずだ。という私の考えによるものです。まあ、ド○クエとゼ○の使い魔を混ぜたような世界でのみの話ですがね。

・時間が止まった
時間系魔法の所の術式に傷がついた事によるものです。
30: ◆MEIDO...W.:2011/11/3(木) 22:37:54 ID:ZwYLXgVxwU
名前:プリマリア
二つ名:時間の魔女
性別:女
種族:人間
年齢:不明
身長:159cm
スリーサイズ:まな板
長所:あらゆる魔法を扱う
短所:細かいことが苦手
知性:良い
特技:魔法
能力:時間停止

容姿:淡い赤毛ショートボブ、黒いローブ

現代の特徴:魔法の森と言われる所の奥地に住んでいる魔女。かなり大きめの城を建てている。本名はプリマリア・スペンサー

本人曰わく時間の魔法研究中に起きた事故により、成長が止まった。生まれは五百年ほど前。

時間魔法だけでなく、全ての属性の魔法を使える世界に二人といない凄腕である。

人使いが荒く、サラッと嘘をつくが、慕ってくれる人にはちゃんとした態度で返している。

城には知能の高い魔物などを捕まえてきて、一緒に暮らしている。



過去の特徴:魔法学校の最高学年生。成績は座学が上の中、魔法は下の中。中級魔法はあまり使えない。属性は炎。授業中に他の事をしている確率がかなり高い。

将来の夢は世界征服。平然と嘘をついて、人を騙すことが趣味である。普段はなるべく人当たりの良いように接しているが、本当は悪事を働きたいと思っている。ある日、謎の本を手に入れて、力を手に入れたことで、さらに本性を加速させている。

全身にプリマリアにしか見えない文字が書き込まれている。主に杖なしで魔法を発動させる術式、四属性を操る術式、時間を操る術式である。

図書館の管理をしているヒューに少し気がある。ヒューには一度も嘘をついたことはない。

ヒューの本名はヒュー・スファード



ヒューはモブ扱いだったので設定無し。
31: 真・スレッドストッパー:停止
停止しますた。ニヤリ・・・( ̄ー ̄)
24.46 KBytes

名前:
sage:


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