鬼「お前は俺を怖がらないのか?」
少女「どうして?」
鬼「だって、ほら……俺こんなんだし」
少女「?見た目なんてほぼ人間だよ?ちょっと頭にいらないあるけどね」
鬼「……ありがとな」
少女「ううん」
101: 名無しさん@読者の声:2012/7/23(月) 14:06:07 ID:2TFT4mDCRU
女友「少女ちゃん聞いてる?」
少女「え、…何だっけ?」
女友「もう!だからここの近くに新しいお店出来たから行かない?」
女友2「食べ放題あるんだー!少女も行くよね?」
少女「……」
女友2「少女?」
少女「ごめん!私今日用事あるから!本当にごめん!」
女友「なら仕方ないかー、また今度行こうね」
102: 名無しさん@読者の声:2012/7/23(月) 14:17:42 ID:2TFT4mDCRU
少女(あれからまた行ってないや…)
少女(何だか怖いし)
少女(でも会いたいな)
少女(少しだけなら、大丈夫だよね)スタスタ
103: 名無しさん@読者の声:2012/7/23(月) 14:53:00 ID:0CncDXXLC.
少女「鬼さん……いる?」ヒョコ
少女「あれ?」
少女(巫女さんの所に行ったのかなー)キョロキョロ
少女「待っててみよ」
少女「いつもならいるはずなのに……」
巫女「なにしてる」
少女「うああああ!?」
巫女「色気がない悲鳴だな」
少女「い、いいいいつからそそそこに!」
巫女「ついさっきだ」
104: 名無しさん@読者の声:2012/7/23(月) 14:57:07 ID:yNzGmcFMN2
少女「そいえば…!」バッ
巫女「ん?」
少女「鬼さん、知らない?」
巫女「……さあ」
少女「そっか、どこ行っちゃったんだろう」
巫女「気になるか?」
少女「うん、大切なお友達だから…でも私が勝手に思ってるだけなんだけどね」
巫女「……少女、少し昔話をしよう」
少女「…?」
巫女「聞き流してくれても構わない」
105: 名無しさん@読者の声:2012/7/26(木) 08:59:41 ID:cG3pS4Wp8I
紫煙
106: 名無しさん@読者の声:2012/7/26(木) 11:38:21 ID:hsxByxJUlA
人里離れた場所に小さな村があった。
小さな村ではあったが、住人全員仲良く暮らしており、争いも起こることはなかった。
その村の子供たちが、ある日海岸へ行ったときだった。岩場の影に村では見かけない顔を見た。
一人の子供が言った。
「そんなところで何をしているの?」
相手は小さな声で言った。
「なにもしていないよ」
また違う子供が言った。
「一緒に遊ぼう」
相手は嬉しそうに目を細め、笑って頷いた。
107: 名無しさん@読者の声:2012/7/26(木) 11:41:25 ID:2ggFDejXpI
それから村の子供たちは内緒で海岸に行っては、その相手と遊んだ。
日に日に相手に似た容姿が現れるようになった。
名前を聞いていなかった子供たちは、思いきって聞いてみることにした。
相手はただ一言「おに」と答えた。
そして、遅くまで遊んでは「また明日」と言って帰っていく。
いつも遅く村に帰る子供たちに、親は「いつもなにしてるんだい?」と、訊ねる。
遅くと言っても、今で言ったらまだ5時前だが……。
子供たちは首を振り何度も「ないしょ」と言っては、黙りしてしまう。
親は不審に思ったんだろうな。
108: 名無しさん@読者の声:2012/7/26(木) 11:44:08 ID:2ggFDejXpI
次の日になり、また遊びに行く子供たちの後をつけることにした親。
海岸は、村から結構場所が離れていた。子供たちにとったら楽々に進める道でも、親にとったら厳しいもんだ。
その日は諦めて、親は素直に家に帰った。
また何日かすると、親はまた後を着けた。今回は帰ることはなかった。
海岸につき、子供たちはいつものように遊び始める。
泳いだり、貝殻を集めたり、走り回ったり。
そして、一人の子供が「おに」と呼んだ瞬間、親の表情が強張る。
その村は鬼が災いとされていたんだ。鬼は人間に化け、人間を喰い、力を得る。
確かにそうなんだが、鬼だってそうそう人間を食べたりしないさ。
さて、話を戻そうか……。
鬼と遊ぶ子供を見て、その親は何を思ったんだろうね?
109: 名無しさん@読者の声:2012/7/26(木) 11:46:27 ID:hsxByxJUlA
またその次の日だ。
いつものように遊びに行こうとした子供を親は閉じ込めた。
「鬼に会ったらいかん!喰われちまう!」
子供もまだ幼かったわけで、鬼のことなんて、何にも知らなかった。
そして、その言葉を聞いた子供たちは泣きじゃくった。ずっと泣きながら「出して」と、何度も何度も叫んだ。
そして、一人の子供が小さな穴を見つけた。そこを抜け、外に出た子供たちは海岸へ走っていった。
海岸に辿り着いた子供が見た光景は、大人たちが鬼を捕まえている場面。
今で言ったら鬼ごっこみたいなもんだろうか。
昔は鬼かけっこと言って、人間役が鬼役を追いかけた。
しかし鬼が人間を喰うというのが、いまだに残っていて、その真逆の"鬼ごっこ"になったんだよ。
……また話が逸れたな。
110: 名無しさん@読者の声:2012/7/26(木) 18:27:08 ID:V1xdh5jVhQ
争いがない村だったもんだから、その光景に子供たちは腰を抜かし、逃げることも出来なかった。
子供たちに気付いた後をつけていた親は、子供たちを強く抱き締め、見せないようにした。
それからどれくらいの時間が経ったのだろうか、もう何も聞こえなくなり、何事もなかったかのように、子供たちの手を引いて村へと帰っていった。
鬼が出たということで、村人はその村を出ていくことにした。
まだどこにいるかもしれないからね。
子供たちは何も出来なかった自分たちを責めながらも、その村を出ていった。
……まあ村人の勘は当たっていて、何日かして鬼が海岸にやってきた。
しかし誰もいない。
鬼は殺され、村人は出ていったから。
だけども、その生き延びた鬼は何も知らなかった。
111: 名無しさん@読者の声:2012/7/26(木) 18:41:24 ID:0YbkPN9Fys
鬼は海岸を探し回った。
どこかで遊んでいるんじゃないか、と。
しかし見つけたのは波打ち際に倒れている、殺された鬼の山。
その鬼は嘆いた。
そして、泣き叫んだ。
「どうして」そう思っただろう。
しかし子供たちが言った「また明日」を信じていた。
ずっとずっと待っていたんだ。
だけど、来るはずもなく鬼はひとりぼっちで生きていった。
それでも鬼は信じていたんだ「また明日」と言った子供たちを。
そして月日は流れ、遊んだ海岸も無くなり、村も無くなった。そこは森となり、鬼はそこでひっそりと暮らし始めた。
何百年もして、鬼の前に子供が現れた。
その子供は昔の遊んだ子供と同じ「また明日」と言って、いつも去っていく。
鬼はその言葉が怖く、しかしそれとは逆に嬉しいという感情が出来た。
112: 名無しさん@読者の声:2012/7/26(木) 19:02:07 ID:.bMWHj9yPU
何百年もすれば、鬼の本来の力も薄れる。
だから、人を喰わなければならない。
しかしそれをしたくない鬼は自分が死ぬということを選択した。
馬鹿だろう?
『大切な人を殺めるくらいなら、いっそ死んでしまった方が楽だろうな』
そう言ったんだ。
昔のこと思うなら、喰ってしまうのが妥当だとは思わないか?
……恨んでるのかと思ったら、そんなことはなかった。
――どうして、鬼に生まれて来たんだろうな。
113: 名無しさん@読者の声:2012/7/26(木) 20:55:52 ID:odDgfJ6YoQ
なんか切なくなってきた。
つCCCCC
114: 名無しさん@読者の声:2012/7/27(金) 10:11:50 ID:/B3b3dmmu6
話終わった巫女の表情は、悲しそうに、眉を下げて微笑んだ。
目に涙を浮かべ、じっと凝視する少女に巫女は「この話は、これで終わり」と立ち上がり、背を向ける。
まだ納得のいかない少女は、その背に言葉を掛けた。
「……その鬼は、今どうしてるの?」
どうやら、察した少女に巫女は首を横に振り「教えられない」と繰り返すばかり。
少女は背中に飛び掛かり、抱きついてわんわん泣いた。
「ヒントだけあげるよ」
ようやく観念したかのように、巫女静かに「上に向かって走れ」と呟き、少女の手に触れる。
「早く行け」
その手が離されたと、同時に少女は走り出した。
115: 名無しさん@読者の声:2012/7/27(金) 10:34:27 ID:wEeg6djuqA
少女の走る背中を見ながら、巫女はため息。
「なんだかなー」と何度も呟いて、その場に座り込む。
「……鬼もずるいよな、あんな可愛い少女に懐かれちゃって」
「僕と交換してくれないかなー……なんて、」
「本当に死ぬのかな?そしたら、僕はもうオムライスとか何にも作んなくて、楽になるや」
あはは、と笑った巫女の目から温かい雫が溢れた。口ではなんとでも言えるけど、やっぱり嘘はつけないのか、そう自身に語りかける。
……お願い、お願いだから、
「――っ、鬼、死なないでくれ……」
顔を両手で覆い、嘆いた。約束を守れなかったあの日と同じように。
116: 名無しさん@読者の声:2012/7/27(金) 10:46:50 ID:wEeg6djuqA
ただ上に向かい、ひたすら走る少女。途中葉や枝に肌を引っ掻け、痛々しい傷が出来ても足を止めることはなかった。
目的地なんてわからないけど、だけどただ走るだけ。それしか出来ることがない。
でももしかしたら、鬼さんを守れるかもしれないと、どこか自信のある自分もいた。
ようやく森を抜ける、ここは、どこだろう?
足を止めた。
神社……?一瞬思考が停止したが、すぐに動き出す。
鬼さんはここにいるかもしれない。
確証はなかったけれど、なんとなくいる気がした少女は、止めた足を再び動かして走り出した。
117: 名無しさん@読者の声:2012/7/27(金) 11:10:20 ID:w6dNu/OzNI
もうそろそろ終わりが見えてきました!
一旦更新は止めて、夜また再開させますので今日から明日までで完結させたいとおもいます。
支援くれた方々!ありがとうごさいます!
118: 名無しさん@読者の声:2012/7/27(金) 21:52:43 ID:mp/oc/co2M
目の前に見覚えのある姿が見える。良かった、と一安心して、無意識に名前を呼ぶが返事がない。
「鬼、さん?」
「!!なんでここに……」
さっき名前を呼んだのは全く聞こえてなかったらしく、驚きを隠せない顔をしていた。
そして、その手には鋭く光を放つ刃物が握られている。少女は思わず飛び付いた。
「やめてやめてやめてやめて!!!」
顔を背中に顔を埋めて、精一杯叫ぶ。
黙ったままの鬼に、再び大声で言葉を投げ掛ける。
「死なないで……、お願い!」
まだ鬼は黙ったままだった。
119: 名無しさん@読者の声:2012/7/27(金) 23:07:25 ID:PLwJoUXEi.
「……少女」
優しく囁く初めての名に、そっと頭に乗せられた暖かい手。
少女が声を殺しながら、泣いた。鬼は見切ったように小さく笑い、そのままの優しい声で続ける。
「相変わらず泣き虫なんだなぁ……」
「でも、俺なんかに泣かないでくれよ」
「泣いて、なっ、い」
「嘘も下手なんだな」
体が離され、向き合う形になると、片手で強く抱き締められ「ありがとう」と言われ少女はどんな顔をして良いかわからず、ただ頷く。
120: 名無しさん@読者の声:2012/7/28(土) 01:16:55 ID:ecnXYtqA6E
額に柔らかい感触。
少女はすぐにわかった。
口付けされたのだと。
そして、引き離される。
「待っ…!」
手を伸ばす。
「さようなら」
伸ばした手を掴んでくれることはなかった。
全然届かない。
目の前で見た光景は、鬼が少女に向けた優しい微笑みのまま、自身に刃を深く突き刺し、力尽きる鬼の姿。
――また明日、
その言葉は叶わぬものになってしまった。
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