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鬼「誰だ」少女「……鬼?」
[8] -25 -50 

1: 名無しさん@読者の声:2012/6/18(月) 20:04:38 ID:r38V7eQ/e2

鬼「お前は俺を怖がらないのか?」

少女「どうして?」

鬼「だって、ほら……俺こんなんだし」

少女「?見た目なんてほぼ人間だよ?ちょっと頭にいらないあるけどね」

鬼「……ありがとな」

少女「ううん」




64: 名無しさん@読者の声:2012/7/9(月) 16:43:22 ID:FTnLo92jok

女1「どうしよっかー?」ニヤニヤ

女2「丁度トイレだしさ、掃除してもらおうよ」ニヤニヤ

女1「いいね、ただ普通に掃除じゃつまらないから………舌でしてもらおうよ」クスクス

少女「!」

女2「ほら早く〜」グイッ

少女「やだ!やだ!いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」ジタバタ

女1「暴れんなよ!」

少女(やだ、やだ、やだ―――…)



―――バシャン


65: 名無しさん@読者の声:2012/7/10(火) 09:13:51 ID:1VeMiRM5eM

女1「なっなに!?」ビッショリ

女2「誰だよ!ふざけんな!!髪ぐしゃぐしゃじゃん」ビッショリ

少女(え、え……でも、今なら逃げられる…!)ダッ

ガチャガチャ ガチャン

女2「あ!」

女1「なんなの、まじ最悪ー!」


少女(た、助かった…)ホッ

少女(でも誰が?)


66: 名無しさん@読者の声:2012/7/10(火) 09:21:52 ID:dgdZ4ogqWk

今更ながら、支援や投票してくれた方々!本当にありがとうございます!そのお陰でランキングに入ることができました。
支援に返事はしてませんが、ニヤニヤしながら喜んで、感謝しています。
更新不定期で申し訳ありませんが、終りまでよろしくおねがいします!
67: 名無しさん@読者の声:2012/7/10(火) 11:10:42 ID:bmCpaf8QFU
マジ支援
68: 名無しさん@読者の声:2012/7/10(火) 11:43:49 ID:tLl2nVhgAk

養護教論「少女さん!平気!?怪我はない?!」ガシッ

少女「え、何で…」

養護教論「内緒って言われたんだけど、少年くんが教えてくれたの」

少女(少年くんが…、もしかしてあの水も?)

少女(でもあそこ女子トイレだし、そんなわけないか)

養護教論「少女さんは教室行ってて、あとは私がなんとかするから、ね?」ニコ

少女「はい」






少年「へくしっ!」ズズッ

男友「風邪か?」

少年「かもなぁ…」ヘラ

男友「てかさっきどこ行ってたんだよ?」

少年「さあ」ヘラヘラ


69: 名無しさん@読者の声:2012/7/12(木) 18:13:55 ID:.bMWHj9yPU



少年「少女さん!一緒に帰ろーう」

男友「あ、お、俺もいい?」

少女「う、うん」コクリ

少女「……あ、えっと」

少年&男友「?」

少女「名前……呼び捨てで良いよ?少年くんは一度呼び捨てにしてたけどね」


少年「少女少女少女少女少女」

少女「!?」


70: 名無しさん@読者の声:2012/7/12(木) 18:16:28 ID:.bMWHj9yPU

男友「俺はまだ慣れないから…少女、ちゃん……で」ボソボソ

少女「うん」ニコ

少年「少女少女少女少女少女」

少女「まだ呼んでるの!?」

少年「なんか仲良くなれた?」ニッ

少女「なれてたら嬉しいな」ニコニコ

男友(恐るべき少年)


71: 名無しさん@読者の声:2012/7/12(木) 18:21:10 ID:gnbnkKGQ4M

――――
―――
――

少女「あ、私こっちだから!」

男友「そっか」シュン

少年「また明日ー!」ブンブン

少女「うん!少年くん、男友くんバイバイ」




少女(…鬼さんの所は明日行こう)トコトコ

少女(友達出来たって言わなきゃ)トコトコ

少女(鬼さんなんて言ってくれるかな〜)ニコニコ トコトコ


72: 名無しさん@読者の声:2012/7/12(木) 20:01:31 ID:wbmvmi.Dv6



鬼「……」ボー

巫女「おい」

鬼「……」ボー

巫女「おいっ!!!」

鬼「ん?あぁ、何だ、いたのか」ボー

巫女「全く」ハァ

鬼「そうだな、やっぱりそうだよな……猫って可愛いよな」ボー

巫女「そんなこと言ってないんだが」


73: 名無しさん@読者の声:2012/7/12(木) 20:06:25 ID:2TFT4mDCRU

巫女「少女が一週間来ないのが心配なのはわかるけども」

鬼「どうしたのだろうか」

巫女「大丈夫だろう」

鬼「そうか?」

巫女「多分だが」

鬼「信用ならねぇな」

巫女「はっはっはっ」

鬼「俺が普通の人間なら会いに行けたのにな……」


74: 名無しさん@読者の声:2012/7/12(木) 20:10:44 ID:2TFT4mDCRU

巫女「なれないことはないが、鬼と人間じゃ力が違いすぎる」

巫女「なれたとしても鬼に戻れずそのまま死ぬだけだ」

鬼「……ふむ」

巫女「まぁ、気長に待とうや」ポン

鬼「そうする」

鬼(きっと明日は来るよな……)


75: 名無しさん@読者の声:2012/7/13(金) 17:26:12 ID:2TFT4mDCRU



巫女「――あれからまた一週間経った訳だが」

鬼「そんなに経ったのか」

巫女「現れないな」

鬼「やはりこんな化け物と、変な趣味持つやつの所になんか来たくないよな」

巫女「変な趣味ってなんだ、変な趣味って」

鬼「……」ハァ


76: 名無しさん@読者の声:2012/7/13(金) 17:30:30 ID:2TFT4mDCRU

鬼「暇だな」

巫女「暇なのが日常だったはずなのだが」

鬼「そうなんだよな」

巫女「やはり変わったな」

鬼「…ふむ」

巫女「まだ待つのか?」

鬼「どうするかな」

巫女「どっちにしろ得するのは僕だけどね」

鬼「そう言われると意地でも待ちたくなる」


77: 名無しさん@読者の声:2012/7/13(金) 17:38:31 ID:wbmvmi.Dv6



女友「少女ちゃんまたねー!」

女友2「またねー」

少女「うん、またね」

少女(あれからいじめられることはなくなったけど、)

少女(あの人たち学校で見なくなったなぁ……)

少女(それに友達が出来てから、鬼さんの所にも行かなくなったし、鬼さんどうしてるかな)

少女(…久しぶりに行ってみよう)


78: 名無しさん@読者の声:2012/7/17(火) 21:39:20 ID:z7sgiJ79xM
支援支援支援
79: 名無しさん@読者の声:2012/7/18(水) 18:38:05 ID:L5zMYeNLkc

少女「あれ?こっちで合ってるよね……」ガサガサ

少女「ふぅ、こんなに草生えてなかったのに」ガサガサ

少女「いっ……、切っちゃった…」

少女「鬼さんっ…どこ」ガサガサ


80: 名無しさん@読者の声:2012/7/18(水) 18:42:40 ID:2EhyZ4mXbI


鬼「……」ピクッ

巫女「なに?どうしたの?」ボリボリ

鬼「聞こえる」

巫女「誰の?」

鬼「アイツだ」

巫女「少女?」ボリボリ

鬼「そうだ、そして何してる」

巫女「ポテチ食ってる」

鬼「1枚くれ」


81: 名無しさん@読者の声:2012/7/19(木) 11:20:28 ID:SZEVTH1fAU

鬼「……」ポリポリ

巫女「……」ボリボリ

鬼「……」パリ ポリポリ

巫女「……」ボリボリ

鬼「何でそんな音出るんだよ」

巫女「歯の構造じゃない?鬼は鋭いから」

鬼「そういう問題なのか?」

巫女「知らん」


82: 名無しさん@読者の声:2012/7/19(木) 11:22:57 ID:SZEVTH1fAU

――ガサガサガサ

鬼「!敵か……?」ジロリ

巫女「……」ボリボリ

鬼「お前ってやつは」

――ガサガサガサ

鬼(近いな…)

巫女「あ、ポテチ無くなった」

鬼「雰囲気ぶち壊すなってば」

巫女「うん」


83: 名無しさん@読者の声:2012/7/19(木) 11:33:36 ID:0/Xtkukn0U

少女「っ…鬼さん!いた!」バッ

鬼「!?」

巫女「少女!!!!」

少女「また来ちゃった」ヘラ

鬼「お前、手怪我してるじゃないか」

巫女「絆創膏持ってくるね!」

少女「これくらい平気…巫女さん行っちゃった」

鬼「良かった……」

少女「え?」

鬼「また来てくれてありがとう」ナデナデ


84: 名無しさん@読者の声:2012/7/19(木) 11:36:19 ID:SZEVTH1fAU

少女「えへへ」ギュウ

鬼「うおっ…!」

少女「私ね友達出来たんだよ」

鬼「ん」ナデナデ

少女「強くなったんだよ」

鬼「そうか」ナデナデ

少女「うん」ギュウ


85: 名無しさん@読者の声:2012/7/19(木) 11:39:39 ID:SZEVTH1fAU

鬼「それにしても巫女遅いな、手見せて」

少女「大丈夫なのに」

鬼「怪我して大丈夫なことはないだろ」グイッ

少女「う〜」

鬼「深くはないな」

――ウマソウ

少女(……え?)

――ウマソウダ

少女(な、に…?鬼さんの、声?)


86: 名無しさん@読者の声:2012/7/19(木) 16:48:23 ID:fqcL.KG2s2

少女「お、にさん?」

鬼「……」

少女「鬼さん!」

鬼「――あぁ、どうした?」

少女(あれ?いつもの鬼さんだ……)

少女(さっきのは幻聴?)

鬼「巫女遅いなー」

少女「そ、そうだね」

鬼「全くどこまで言ったんだか」ハァ


87: 名無しさん@読者の声:2012/7/19(木) 16:53:00 ID:vFRPYtFYaE


巫女「絆創膏持ってきたぞー」ピラピラ

鬼「おっせーよ!」

巫女「すまんすまん!消毒液持ってきた」

少女「ありがとう、ございます」

鬼「俺がやってやるよ」

巫女「やめろよロリコン」

鬼「しばくぞ」ギロリ


88: 名無しさん@読者の声:2012/7/19(木) 16:57:41 ID:fqcL.KG2s2

鬼「完璧」

少女「…」グチャア

巫女「これは酷い、どうしたらこんな貼り方が出来るんだよ」

鬼「うるせぇ!」

少女「ふふ、鬼さんありがとう」

巫女「良いんだよ?やり直しやがれ、このロリコンとか言っても」

鬼「お前はさっきから喧嘩売ってんのか?」

少女「ふふ」クスクス


89: 名無しさん@読者の声:2012/7/19(木) 17:01:34 ID:fqcL.KG2s2


鬼「さて、そろそろ少女も帰る時間だな」

巫女「えー!まだ遊びたい!」

鬼「勝手に遊んでろ」

少女「うん、帰るね」スクッ

巫女「また遊ぼうな」

少女「はい」ニコリ

鬼「途中まで送ってく」

巫女「カッコつけんなよロリコン」

鬼「黙れよ」


90: 名無しさん@読者の声:2012/7/19(木) 17:04:41 ID:fqcL.KG2s2

鬼「本当に草生えてきたなー、歩きにくい」ガサガサ

少女「ここで切っちゃったんだよ」ガサガサ

鬼「次来るまでには怪我しない程度に片付けておく」ガサガサ

少女「私も手伝うよ!」

鬼「その気持ちだけもらっとく」ポンポン

少女「むむ」ムス


91: 名無しさん@読者の声:2012/7/19(木) 17:08:10 ID:vFRPYtFYaE

少女「もうっ…て、また切っちゃった」

鬼「……」ピタッ

少女「鬼さん?」クルリ

鬼「……」

少女「…っ」ゾク

――ウマソウダナ

――スコシダケ

――スコシダケナラ

鬼「――ユルシテクレルヨナ?」

少女「え?」


92: 名無しさん@読者の声:2012/7/19(木) 23:48:48 ID:wbmvmi.Dv6

鬼「……」スッ

少女「…!?」ビクッ

鬼「どうした?早く行くぞ」

少女「……え…」

鬼(そろそろやばいかもしれない)

鬼「…行くぞ、足元気を付けろよ」スタスタ

少女(さっきのは…?やっぱり私がおかしいのかな)

少女「う、ん」スタスタ


93: 名無しさん@読者の声:2012/7/20(金) 00:12:56 ID:EvAzpROGN6
不定期過ぎ申し訳ない、そして読み返すと誤字ばかり、おうふ
今日の更新は以上です

また更新が不定期になるかもしれませんが、お付き合いして下さると嬉しいです!おやすみなさい!
94: 名無しさん@読者の声:2012/7/20(金) 01:10:26 ID:KgzQHlTql2
楽しみに見てます!
支援!
95: 名無しさん@読者の声:2012/7/20(金) 19:45:14 ID:E4mGsN8p.g
続き楽しみに待ってます!
つCCCC
96: 名無しさん@読者の声:2012/7/22(日) 22:14:45 ID:REVtjlG9dw
C
97: 名無しさん@読者の声:2012/7/22(日) 22:25:45 ID:UFaqZLRQeo




少女「じゃあ、鬼さんまたね」

鬼「気を付けてな」

少女「うん」




98: 名無しさん@読者の声:2012/7/22(日) 22:29:48 ID:EvAzpROGN6


鬼「ふぅ…疲れ」

巫女「遅いぞ!!!」

鬼「!!!?」ビックゥ

巫女「貴様手を出そうとしたな」

鬼「……」

巫女「答えろ、僕に誤魔化しは通用しないぞ」

鬼「あぁ…」

巫女「やはりそろそろ限界だな」

鬼「かもしれない」

巫女「どうする?」

鬼「……大切な人を殺めるくらいなら、


――いっそ死んでしまった方が楽だろうな」


99: 名無しさん@読者の声:2012/7/22(日) 22:45:05 ID:xZdXCOmvGQ

巫女「……」

鬼「恐がられて避けられて、」

巫女「おい」

鬼「また昔みたいに一人は嫌だ……」

巫女「…おい!」

鬼「早く殺してくれよっ……もう…、苦しい…」ポロポロ

巫女「っ…」グッ

鬼「早くっ!!!!」





100: 名無しさん@読者の声:2012/7/23(月) 13:39:12 ID:REVtjlG9dw
どうなる…
っC
101: 名無しさん@読者の声:2012/7/23(月) 14:06:07 ID:2TFT4mDCRU


女友「少女ちゃん聞いてる?」

少女「え、…何だっけ?」

女友「もう!だからここの近くに新しいお店出来たから行かない?」

女友2「食べ放題あるんだー!少女も行くよね?」

少女「……」

女友2「少女?」

少女「ごめん!私今日用事あるから!本当にごめん!」

女友「なら仕方ないかー、また今度行こうね」


102: 名無しさん@読者の声:2012/7/23(月) 14:17:42 ID:2TFT4mDCRU

少女(あれからまた行ってないや…)

少女(何だか怖いし)

少女(でも会いたいな)

少女(少しだけなら、大丈夫だよね)スタスタ






103: 名無しさん@読者の声:2012/7/23(月) 14:53:00 ID:0CncDXXLC.


少女「鬼さん……いる?」ヒョコ

少女「あれ?」

少女(巫女さんの所に行ったのかなー)キョロキョロ

少女「待っててみよ」

少女「いつもならいるはずなのに……」

巫女「なにしてる」

少女「うああああ!?」

巫女「色気がない悲鳴だな」

少女「い、いいいいつからそそそこに!」

巫女「ついさっきだ」


104: 名無しさん@読者の声:2012/7/23(月) 14:57:07 ID:yNzGmcFMN2

少女「そいえば…!」バッ

巫女「ん?」

少女「鬼さん、知らない?」

巫女「……さあ」

少女「そっか、どこ行っちゃったんだろう」

巫女「気になるか?」

少女「うん、大切なお友達だから…でも私が勝手に思ってるだけなんだけどね」

巫女「……少女、少し昔話をしよう」

少女「…?」

巫女「聞き流してくれても構わない」


105: 名無しさん@読者の声:2012/7/26(木) 08:59:41 ID:cG3pS4Wp8I
紫煙
106: 名無しさん@読者の声:2012/7/26(木) 11:38:21 ID:hsxByxJUlA


人里離れた場所に小さな村があった。
小さな村ではあったが、住人全員仲良く暮らしており、争いも起こることはなかった。

その村の子供たちが、ある日海岸へ行ったときだった。岩場の影に村では見かけない顔を見た。

一人の子供が言った。

「そんなところで何をしているの?」

相手は小さな声で言った。

「なにもしていないよ」

また違う子供が言った。

「一緒に遊ぼう」

相手は嬉しそうに目を細め、笑って頷いた。
107: 名無しさん@読者の声:2012/7/26(木) 11:41:25 ID:2ggFDejXpI

それから村の子供たちは内緒で海岸に行っては、その相手と遊んだ。
日に日に相手に似た容姿が現れるようになった。

名前を聞いていなかった子供たちは、思いきって聞いてみることにした。
相手はただ一言「おに」と答えた。
そして、遅くまで遊んでは「また明日」と言って帰っていく。

いつも遅く村に帰る子供たちに、親は「いつもなにしてるんだい?」と、訊ねる。
遅くと言っても、今で言ったらまだ5時前だが……。

子供たちは首を振り何度も「ないしょ」と言っては、黙りしてしまう。
親は不審に思ったんだろうな。
108: 名無しさん@読者の声:2012/7/26(木) 11:44:08 ID:2ggFDejXpI

次の日になり、また遊びに行く子供たちの後をつけることにした親。

海岸は、村から結構場所が離れていた。子供たちにとったら楽々に進める道でも、親にとったら厳しいもんだ。
その日は諦めて、親は素直に家に帰った。

また何日かすると、親はまた後を着けた。今回は帰ることはなかった。

海岸につき、子供たちはいつものように遊び始める。
泳いだり、貝殻を集めたり、走り回ったり。
そして、一人の子供が「おに」と呼んだ瞬間、親の表情が強張る。



その村は鬼が災いとされていたんだ。鬼は人間に化け、人間を喰い、力を得る。
確かにそうなんだが、鬼だってそうそう人間を食べたりしないさ。

さて、話を戻そうか……。
鬼と遊ぶ子供を見て、その親は何を思ったんだろうね?
109: 名無しさん@読者の声:2012/7/26(木) 11:46:27 ID:hsxByxJUlA

またその次の日だ。
いつものように遊びに行こうとした子供を親は閉じ込めた。

「鬼に会ったらいかん!喰われちまう!」

子供もまだ幼かったわけで、鬼のことなんて、何にも知らなかった。
そして、その言葉を聞いた子供たちは泣きじゃくった。ずっと泣きながら「出して」と、何度も何度も叫んだ。

そして、一人の子供が小さな穴を見つけた。そこを抜け、外に出た子供たちは海岸へ走っていった。



海岸に辿り着いた子供が見た光景は、大人たちが鬼を捕まえている場面。

今で言ったら鬼ごっこみたいなもんだろうか。
昔は鬼かけっこと言って、人間役が鬼役を追いかけた。
しかし鬼が人間を喰うというのが、いまだに残っていて、その真逆の"鬼ごっこ"になったんだよ。

……また話が逸れたな。
110: 名無しさん@読者の声:2012/7/26(木) 18:27:08 ID:V1xdh5jVhQ

争いがない村だったもんだから、その光景に子供たちは腰を抜かし、逃げることも出来なかった。
子供たちに気付いた後をつけていた親は、子供たちを強く抱き締め、見せないようにした。

それからどれくらいの時間が経ったのだろうか、もう何も聞こえなくなり、何事もなかったかのように、子供たちの手を引いて村へと帰っていった。

鬼が出たということで、村人はその村を出ていくことにした。
まだどこにいるかもしれないからね。

子供たちは何も出来なかった自分たちを責めながらも、その村を出ていった。
……まあ村人の勘は当たっていて、何日かして鬼が海岸にやってきた。

しかし誰もいない。
鬼は殺され、村人は出ていったから。
だけども、その生き延びた鬼は何も知らなかった。
111: 名無しさん@読者の声:2012/7/26(木) 18:41:24 ID:0YbkPN9Fys

鬼は海岸を探し回った。
どこかで遊んでいるんじゃないか、と。
しかし見つけたのは波打ち際に倒れている、殺された鬼の山。

その鬼は嘆いた。
そして、泣き叫んだ。

「どうして」そう思っただろう。
しかし子供たちが言った「また明日」を信じていた。
ずっとずっと待っていたんだ。
だけど、来るはずもなく鬼はひとりぼっちで生きていった。
それでも鬼は信じていたんだ「また明日」と言った子供たちを。


そして月日は流れ、遊んだ海岸も無くなり、村も無くなった。そこは森となり、鬼はそこでひっそりと暮らし始めた。

何百年もして、鬼の前に子供が現れた。
その子供は昔の遊んだ子供と同じ「また明日」と言って、いつも去っていく。

鬼はその言葉が怖く、しかしそれとは逆に嬉しいという感情が出来た。
112: 名無しさん@読者の声:2012/7/26(木) 19:02:07 ID:.bMWHj9yPU

何百年もすれば、鬼の本来の力も薄れる。
だから、人を喰わなければならない。
しかしそれをしたくない鬼は自分が死ぬということを選択した。

馬鹿だろう?
『大切な人を殺めるくらいなら、いっそ死んでしまった方が楽だろうな』
そう言ったんだ。
昔のこと思うなら、喰ってしまうのが妥当だとは思わないか?
……恨んでるのかと思ったら、そんなことはなかった。



――どうして、鬼に生まれて来たんだろうな。
113: 名無しさん@読者の声:2012/7/26(木) 20:55:52 ID:odDgfJ6YoQ
なんか切なくなってきた。
つCCCCC
114: 名無しさん@読者の声:2012/7/27(金) 10:11:50 ID:/B3b3dmmu6

話終わった巫女の表情は、悲しそうに、眉を下げて微笑んだ。
目に涙を浮かべ、じっと凝視する少女に巫女は「この話は、これで終わり」と立ち上がり、背を向ける。

まだ納得のいかない少女は、その背に言葉を掛けた。

「……その鬼は、今どうしてるの?」

どうやら、察した少女に巫女は首を横に振り「教えられない」と繰り返すばかり。
少女は背中に飛び掛かり、抱きついてわんわん泣いた。

「ヒントだけあげるよ」

ようやく観念したかのように、巫女静かに「上に向かって走れ」と呟き、少女の手に触れる。

「早く行け」



その手が離されたと、同時に少女は走り出した。


115: 名無しさん@読者の声:2012/7/27(金) 10:34:27 ID:wEeg6djuqA

少女の走る背中を見ながら、巫女はため息。
「なんだかなー」と何度も呟いて、その場に座り込む。

「……鬼もずるいよな、あんな可愛い少女に懐かれちゃって」

「僕と交換してくれないかなー……なんて、」

「本当に死ぬのかな?そしたら、僕はもうオムライスとか何にも作んなくて、楽になるや」

あはは、と笑った巫女の目から温かい雫が溢れた。口ではなんとでも言えるけど、やっぱり嘘はつけないのか、そう自身に語りかける。


……お願い、お願いだから、


「――っ、鬼、死なないでくれ……」

顔を両手で覆い、嘆いた。約束を守れなかったあの日と同じように。


116: 名無しさん@読者の声:2012/7/27(金) 10:46:50 ID:wEeg6djuqA


ただ上に向かい、ひたすら走る少女。途中葉や枝に肌を引っ掻け、痛々しい傷が出来ても足を止めることはなかった。

目的地なんてわからないけど、だけどただ走るだけ。それしか出来ることがない。

でももしかしたら、鬼さんを守れるかもしれないと、どこか自信のある自分もいた。


ようやく森を抜ける、ここは、どこだろう?
足を止めた。
神社……?一瞬思考が停止したが、すぐに動き出す。

鬼さんはここにいるかもしれない。
確証はなかったけれど、なんとなくいる気がした少女は、止めた足を再び動かして走り出した。


117: 名無しさん@読者の声:2012/7/27(金) 11:10:20 ID:w6dNu/OzNI

もうそろそろ終わりが見えてきました!
一旦更新は止めて、夜また再開させますので今日から明日までで完結させたいとおもいます。
支援くれた方々!ありがとうごさいます!
118: 名無しさん@読者の声:2012/7/27(金) 21:52:43 ID:mp/oc/co2M

目の前に見覚えのある姿が見える。良かった、と一安心して、無意識に名前を呼ぶが返事がない。

「鬼、さん?」

「!!なんでここに……」

さっき名前を呼んだのは全く聞こえてなかったらしく、驚きを隠せない顔をしていた。

そして、その手には鋭く光を放つ刃物が握られている。少女は思わず飛び付いた。

「やめてやめてやめてやめて!!!」

顔を背中に顔を埋めて、精一杯叫ぶ。
黙ったままの鬼に、再び大声で言葉を投げ掛ける。

「死なないで……、お願い!」

まだ鬼は黙ったままだった。


119: 名無しさん@読者の声:2012/7/27(金) 23:07:25 ID:PLwJoUXEi.


「……少女」

優しく囁く初めての名に、そっと頭に乗せられた暖かい手。
少女が声を殺しながら、泣いた。鬼は見切ったように小さく笑い、そのままの優しい声で続ける。

「相変わらず泣き虫なんだなぁ……」

「でも、俺なんかに泣かないでくれよ」

「泣いて、なっ、い」

「嘘も下手なんだな」

体が離され、向き合う形になると、片手で強く抱き締められ「ありがとう」と言われ少女はどんな顔をして良いかわからず、ただ頷く。


120: 名無しさん@読者の声:2012/7/28(土) 01:16:55 ID:ecnXYtqA6E

額に柔らかい感触。
少女はすぐにわかった。
口付けされたのだと。


そして、引き離される。
「待っ…!」

手を伸ばす。

「さようなら」

伸ばした手を掴んでくれることはなかった。

全然届かない。

目の前で見た光景は、鬼が少女に向けた優しい微笑みのまま、自身に刃を深く突き刺し、力尽きる鬼の姿。



――また明日、

その言葉は叶わぬものになってしまった。


121: 名無しさん@読者の声:2012/7/28(土) 13:43:44 ID:FTpf6Dw/sU


目が覚める。

一番に瞳に映るのは、少女の手を握り眠っている母親の姿。
そして、見慣れない真っ白な天井。

何があったんだろう?

考えてみるものの、答えに辿り着くことはなかった。

「お母さん」

「……起きたのね?良かった、心配したわ、森の近くの道で倒れてたのを救急車を呼んで、」

「知らない……」

「え?」

「何も思い出せない」

弱々しく首を横に振り、少女は頭を抱える。
何か大切なことを忘れているような、モヤモヤとした気持ちが取れない。


何だっけ……?


122: 名無しさん@読者の声:2012/7/28(土) 16:20:44 ID:NGZrpq51p6
え…?
123: 名無しさん@読者の声:2012/7/28(土) 16:25:21 ID:NIj.eYohms
ざわ…ざわ…
124: 名無しさん@読者の声:2012/7/28(土) 16:40:57 ID:.7VlUS1Pgg

「失礼します」

若いスラッとした、白衣を身に纏う男性は椅子に座り、話始めた。

どうやら「一部の記憶だけが消えている」らしいが、日常に支障はない、というものだ。

帰宅の許可も出て支度しながら、少女はぼんやりと考える。
何を忘れたんだろう。

だが、やはり思いだすことは出来なかった。

「少女支度終わった?」

「うん」

「じゃあ帰りましょう」


125: 名無しさん@読者の声:2012/7/28(土) 16:44:45 ID:.7VlUS1Pgg

――――
―――
――

少女「おはよう!」

少年「おはよう、クラス一緒だね」

男友「しょ、しょ、少女さんおはよ!」

少女「おはよ」ニコ

男友「俺死ねる」

少女「え!?」

少年「去年は色々あったけど、よろしくね」


126: 名無しさん@読者の声:2012/7/28(土) 16:50:23 ID:sUngrJedTY

女友「少女おはよー!」ギュウ

女友2「同じクラスが良かったあああ!」

少女「でも隣のクラスなんでしょ?」

女友2「毎日行くからね!来ちゃうからね!」

女友「土日も来るの?」ニヤニヤ

女友2「休日や祝日は来るわけないじゃん、馬鹿なの?ねえ馬鹿なの?」

女友「うわ殴りたい」


127: 名無しさん@読者の声:2012/7/28(土) 16:54:18 ID:sUngrJedTY

少年「朝から賑やかだね」

男友「うるせーくらいだけどな」

少年「男友には負けるよ」ニッコリ

男友「何で俺に敵意剥き出しなんだよ、泣くぞ」

女友2「少女聞いてよ!」

女友「いやいやおかしいから!」

少女「……」オロオロ


128: 名無しさん@読者の声:2012/7/28(土) 18:08:42 ID:Sc.9qk/mn.


少女「明日からもう授業だねー…」トコトコ

少年「だね」トコトコ

男友「ずっと授業なしでいいのにな」トコトコ

少女「じゃあ私はこっちだから、また明日!」

男友「またな」

少年「ばいばーい」




少女「……そういえば私ってここで倒れてたんだっけ?」

少女「ちょっとだけ行ってみようかな」


129: 名無しさん@読者の声:2012/7/28(土) 18:11:46 ID:Sc.9qk/mn.

少女「うわ、足元見えないや」

少女「……ん?」

少女「誰か、いる?」

少女(まさかこんなところに人が?……やっぱ猫とかだよね)


130: 名無しさん@読者の声:2012/7/28(土) 21:45:15 ID:odDgfJ6YoQ

息を潜め、ゆっくりと近付く。

パキリと足元で音がした。どうやら木の枝を踏んでしまったらしい。

ガサリと草が揺れた。
慌てて身を隠そうと、屈み震える手を必死で握る。


「誰だ」

真上で聞こえたその声に顔を上げる。

頭に生えた角、
それはまるで……

「……鬼?」



   おわり


131: まりも:2012/7/28(土) 21:53:50 ID:odDgfJ6YoQ

この形式で書くのは2回目ですが、前回のは諦めたので、今回のは完結さたかったです。無事出来て良かった…

だけど中途半端で申し訳ありません。
読んでくださった方々、支援下さった方々ありがとうございました!
132: 名無しさん@読者の声:2012/7/28(土) 23:15:31 ID:suDSYcBPW6
面白かったです!

お疲れ様でした!
133: 名無しさん@読者の声:2012/7/30(月) 03:37:00 ID:cYbHYCPh8g
面白かった

乙!非常に乙!
134: 名無しさん@読者の声:2012/7/30(月) 04:11:47 ID:nYeVic85Aw
面白かったです
お疲れ様でした
135: 名無しさん@読者の声:2012/7/30(月) 07:41:41 ID:swa4Hc0nRk
こういう切ない気持ちは久しぶりだ。

乙でした。
136: 名無しさん@読者の声:2012/7/30(月) 08:48:02 ID:rfyxk7skhw
お疲れ様でした!
137: まりも:2012/8/1(水) 15:17:21 ID:Bs4HQk2gRM
>>132-136
まとめて返事してしまいすいません!

こちらこそ読んでくださり、お疲れ様です、そしてありがとうございました
138: 真・スレッドストッパー:停止
停止しますた。ニヤリ・・・( ̄ー ̄)
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sage:


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