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平面適合率72%
[8] -25 -50 

1: ◆DPehMNPNeE:2012/8/8(水) 11:05:22 ID:6E1Q3FITdQ
今日は記念すべき日になるハズだった。

心踊らせる"宝"の予約は初日に済ませていた。そして本日!購入受け取りの後、体で"宝"を庇って帰宅。

追記するならば、事前準備として睡眠時間も環境設備も十二分に足りていた。

俺は自身の考え得る全ての手を打ったつもりだ。しかし、想定外の攻撃はあるもので。

"宝"ことゲームを進めて小一時間経過した頃。地雷。不吉な二文字が思考の隅を掠める。

嶺「なんだよコレ・・・・・・ハバキ様はこんな性格じゃないだろぉ」

自分でも情けなくなる声が出た。責めるような今にも泣き出しそうな。

落ち着け、少しでいいから冷静になるんだ俺。シナリオを全部見てから判断するのがマイルールだろ?


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


結局、傷口は広がってしまった。思い入れのあった作品の続編への期待には、評価は人それぞれ等と言う正論なんか意味を為さなくて。

嶺「まさか、このゲームでスキップ機能を使うとは思わなかった」

予約特典の制服が哀愁を誘う。前作の時に興が乗って作った、同學園の手作り制服と並べて写メを撮って悦に浸っていた時間が懐かしい。

嶺「俺の考察が間違っていたのだろうか」

認めたくない悔しさと、それと表裏の淡い希望を胸に抱き、前作"葦原學園探求会"を起動した。


5: ◆DPehMNPNeE:2012/8/8(水) 11:13:45 ID:6E1Q3FITdQ
気が付けば昼になっていた。教室内の声が煩わしい。

のんびりと教科書をしまい、返す手でビニール袋を漁る。ビニール袋特有の耳触りな音に眉をひそめつつ、中身を拾った。

「今日はお弁当じゃないんだ」

触れるな。昨日を思い出すから。苛立ちを噛み殺しながら作った笑顔を隣の席に向ける。

嶺「ちょっと時間作れなくてさ、たまには息抜き」

「え、いつもは嶺君の手作りだったの?凄いじゃん」

空気を読めないのか、はたまた読まないのか。適当に話を合わせる俺とは対照的に、隣人は楽しそうだ。

悪い人ではない。彼女は基本的に親切だ。ただ、その親切に俺が戸惑ってしまう事が多いだけで。

「今度料理のコツでも教えてよ」

嶺「教える程のものじゃないよ、レシピ通りにやるだけだし」

謙遜に見せ掛けた拒絶。悟ったのだろうか、その日初めて隣人は曇った顔をした。

ようやく落ち着いて食事を摂れるかな。平時より味気なくても食事は食事だ。手を合わせ、軽くお辞儀をする。

「コンビニのでもちゃんとお辞儀するんだ」

食欲が一気に失せた。何故今日に限って妙に絡んでくるのだろう。

耐え切れずに席を立とうとしたとき、友人に声をかけられた。

正晴「よっ、昼一緒にどうだ」

こんな中途半端な時間に?疑問符が浮かんだが、渡りに船とばかりに誘いに乗った。
6: ◆DPehMNPNeE:2012/8/8(水) 11:21:09 ID:6E1Q3FITdQ
新たにスレを建てさせて頂きました。スローペースになる未来が見えている気が致しますが、宜しければお付き合い下さいませ。

リバティー◆DPehMNPNeE
7: ◆DPehMNPNeE:2012/8/9(木) 03:26:29 ID:rMBNqI9S7U
正晴「具合はいかが」

嶺「病人じゃあるまいし」

正晴「顔色だけなら立派に病人だ」

心配をかけてしまっていたみたいだ。友人は見かけに反し、良く気が付く。いや、もしかすると一目で分かるぐらい酷いのかもしれない。

なんにせよ、情けない理由での体調不良などでこれ以上迷惑になる訳にはいけない。

「落ち着いた男二人の静かな昼食。あまり表情を出さない彼らもこればかりは頬が緩む。そう、儚い想いがあるから・・・」

正晴「黙ってろ」

悪びれずに隣人はニタニタ笑っている。正直不気味だ。

嶺「・・・・・・」

正晴「場所、変えるか?」

嶺「時間も少ないからいいよ・・・」

正晴「ああ・・・なんだ。お前も大変だな」

嶺「ありがとう」

菓子パンをもふもふかじる。やっぱり、食事と言うより餌みたいで好ましくない。なんだか踏んだり蹴ったりだ。

正晴「嫌そうな顔して食べやがる」

嶺「出来合いのモノは苦手なんだ」

正晴「贅沢者め」

嶺「手作りの方が金銭的には安いよ」

正晴「そう考えられるのが贅沢」

そういうものなのか。一つ勉強になった。ぼんやりとした頭にイマイチ入り切らない情報をなんとか咀嚼する。
8: ◆DPehMNPNeE:2012/8/9(木) 03:28:21 ID:rMBNqI9S7U
正晴「聞いていいか」

嶺「なにさ」

正晴「お前、好きな人とかいるか」

「うわ、ガチ。ガチだわー」

正晴「・・・・・・」

「いやん。睨まないでったら、ジョーダンよ」

恋愛話を切り出されたのは初めてだった。俺は良くも悪くも人と距離がある。言ってしまえば空気だ。それを自認していた俺には無縁の話だと思っていた。

嶺「んー、いないかな。憧れる人ならいない訳でもないけれど」

厳密には人ではなくて、画面の中のキャラクターだ。執着とも恋慕ともつかない気持ちをくれるのは、後にも先にも彼女だけ。

「ビッグニュース来たね、号外だね。神秘的な彼に憧れの君、その姿に迫る!」

正晴「マジか」

唖然とする友人にこっちが困惑する。頭の中で答えが決まっていたなら質問しないで欲しい。

嶺「驚き過ぎ。自分で話を振ったくせに」

正晴「悪い。興味ない分野かと思ってた」

失礼な。親しき仲にも礼儀あり、もっとオブラートに。むしろ謝るな。・・・沸騰した頭の端っこに、さもありなんと悟りを拓いている自分もいたのが業腹だった。

「ヒヒヒ」

正晴「気持ち悪いな、おい」

嶺「もう時間じゃないかな」

正晴「気ィ悪くしたか、後で埋め合わせする。じゃあな」
9: 本日はこの辺でノシ ◆DPehMNPNeE:2012/8/9(木) 03:30:33 ID:rMBNqI9S7U
201:摩周◆MASYUuLIKE:2012/4/27(金) 17:53:14 ID:※※※※※※※※
皆様、こんばんはです。探究部orz

202:名もなき探究者:2012/4/27(金) 17:58:14 ID:※※※※※※※※
摩周たん、ばんわー

203:神楽◆592HaRAM26:2012/4/27(金) 17:59:42 ID:※※※※※※※※
うはwやっぱり摩周落ち込んでるwww

204:名もなき探究者:2012/4/27(金) 18:07:46 ID:※※※※※※※※
摩周って誰だよ、クソコテが

205:名もなき探究者:2012/4/27(金) 18:08:14 ID:※※※※※※※※
新参か?よし誰かまたあのコピペ貼ってやれ。

206:名もなき探究者:2012/4/27(金) 18:18:47 ID:※※※※※※※※
すまん、若干修正してて遅れたw
摩周◆MASYUuLIKE嬢(違の輝かしい経歴。

・デモムービーの背景からモデルの場所を見つけ、発売日前に巡礼。(後に公式が明言)
・部屋に飾られたグッズの八〜九割は初期ロッド。残りは見比べる為だけに買った。
・ハバキ様のグッズを自作、特注。その種類は現在三桁に届く勢い。もちろん全部原作準拠。
・生年月日がハバキ様と一日違い。なんと、摩周さんと一緒www
NEW!探究部の予約特典の制服よりも出来の良い制服を自作。この度、並べた画像を見て質の差に住人絶句。

207:神楽◆592HaRAM26:2012/4/27(金) 18:19:33 ID:※※※※※※※※
>>204
名前の由来は探究会のサブ、ハバキ様親衛隊の摩周さんから、大まかに紹介したのが>>206

208:摩周◆MASYUuLIKE:2012/4/27(金) 18:22:26 ID:※※※※※※※※
>>206
お恥ずかしい限りです><
10: ◆DPehMNPNeE:2012/8/10(金) 10:09:49 ID:oUA7ZgxnXM
209:名もなき探究者:2012/4/27(金) 18:23:01 ID:※※※※※※※※
コピペ乙。削ってそれだからな。だが、これを削ったのは許せん。
878:摩周◆MASYUuLIKE:2010/7/10(金) 20:09:18 ID:※※※※※※※※
ハバキ様の体重を再現中、100g単位でズレてイライラ。折角同じ身長なのに。

210:名もなき探究者:2012/4/27(金) 18:28:03 ID:※※※※※※※※
ワロスwwwwww

211:名もなき探究者:2012/4/27(金) 18:31:11 ID:※※※※※※※※
摩周たんに神楽たん、探究部の触りはどんな感じだった?俺は光スキーだから楽しめたけど。

212:神楽◆592HaRAM26:2012/4/27(金) 18:34:42 ID:※※※※※※※※
>>211
前作がなければ普通。一部のキャラが改変されてるのが微妙(ハバキ様とかwww

213:摩周◆MASYUuLIKE:2012/4/27(金) 18:36:46 ID:※※※※※※※※
>>211
読解力の問題と信じて繰り返しプレイしています。としか言えない私・・・。

214:名もなき探究者:2012/4/27(金) 18:38:22 ID:※※※※※※※※
あー、摩周たんごめん。神楽たんサンクス。光に癒されてくるノシ

215:摩周◆MASYUuLIKE:2012/4/27(金) 18:41:07 ID:※※※※※※※※
私も落ちるかな。睡眠不足だし、時間を置きたい気分。

216:神楽◆592HaRAM26:2012/4/27(金) 18:43:52 ID:※※※※※※※※
>>214
光にされてくるに見えた。乙。
摩周もお疲れ様ー。

嶺「・・・少しは元気を貰えたかな。光スキーが羨ましいよ、まったく」
11: ◆DPehMNPNeE:2012/8/10(金) 10:11:48 ID:oUA7ZgxnXM
"探究部"の評価は最終的にはどのくらいだろう。各ルートをやる気力はもうない。しばらく待たなくてはならないか。

うつらうつらとしつつ目をさ迷わせる。すると、画面の端に目を惹くものがあった。

嶺「適合率診断・・・」

割とお堅い名前にファンシーなバナー。ミスマッチさに興味が湧く。寝不足で弱った頭は迷わずクリックを選択した。

嶺「平面、立体の適合率を診断致しますぅ?平面適合率の高い紳士淑女は平面旅行にご招待」

嶺「すげぇ胡散臭さー。ん、逆に気になるか。ネタにはなりそうだ」

六択、五十問余りの質問を手早く答える。見たところごくごく普通の診断に思えた。

嶺「チェック終了。気になる結果は、と」

立体適合率;27%
平面適合率;72%
誤差;1%

嶺「これは、高い?」

判断基準がないので分からない。普通は〜型とかに分けて、尤もらしいレッテルを貼ってくれるものではないのか。

説明の最下段にリンクがあった。平面適合率の高い方向け、との事だ。見逃してしまう程目立たないそれには悪意すら感じてしまう。

内容は平面適合率30%を越えた方へのプレゼント企画の詳細、らしい。

30%なら優に越えている。前段階は問題ない。些か抵抗はあったが、個人情報を入力していく。ここまで来て退くのもシャクだ。

嶺「後はカードの発送を待つのみ・・・何やってんだかな俺」

とりあえず、そのまま床に着く事にした。
12: 推敲したハズなのに、変換ミスを見つけたときの絶望感が凄い・・・失礼をばノシ ◆DPehMNPNeE:2012/8/10(金) 10:15:11 ID:oUA7ZgxnXM
派手な効果音も右から左。気分転換に格ゲーをプレイしていた。

画面の中で大仰なガスマスクを付けた小柄な女性が長柄を振り回し、気合いの入らない声を上げる。

この"ガスマスク"が俺の操作キャラクターだ。基礎能力は低いものの、攻撃範囲と判定が比較的強い。

向かい側に対する眼光鋭いスーツ姿の女性は、長柄を腕で打ち払いつつ間合いを窺っている。どうやら相手もそれなり以上に腕はあるらしい。

"ガスマスク"は一般的に"スーツ"と相性が悪いとされる。無敵有り、キャンセル可の打ち払いでほとんどの技が潰されるからだ。

嶺「分が悪いか」

接近されては勝負にならない。苦し紛れの牽制も打ち払われ、相手の超必殺技ゲージを増やすのみで苦しい戦いを強いられる。

嶺「ゲージも貯まってるし、強気で来るかな」

意識的に判定の残る技を置いて行く。またキャンセルや強弱で判定時間を変えられるので、嫌がらせには最適だ。

停滞する戦況に焦ったのか、"スーツ"がスライディングで距離を詰めに入る。思う壷だ。

置いた技に引っかかれ!カウンターヒットで打ち上げる未来を予測し、超必殺技を先行入力する。

画面が暗転。"ガスマスク"が打ち上げた"スーツ"にドクロマークの付いた球体を投げる。これで球体からは毒々しいガスが出て、体力の三割程を削るハズだ。

更に画面が暗転。ガスを擦り抜け、"スーツ"が華麗に着地。当然のようにダメージも吹き飛びもしない。予定とは反対に、超必殺技の硬直で動けない"ガスマスク"がサンドバッグになった。

嶺「またあの技かよ・・・ないわー」

13: ◆DPehMNPNeE:2012/8/11(土) 10:44:17 ID:W8TIfbYfqI
現在の体力は最大値の六割弱、〆に超必殺技を使われない限りは残るだろう。仮に超必殺技を使われたなら次の試合はこちらが有利に戦える。

嶺「待った方が圧力かけられるのに」

穏やかに勝利セリフを決める"スーツ"を、後ろのプレイヤーを諭すように呟く。

やはり次を捨てた。面白くない奴。決まった行動しか選ばないのなら対戦ゲームに意味などあるものか。

わかっている。仕方ないんだ。少し落ち着こう。ささくれ立った心を自覚しながら消化試合を楽しむ事にした。

嶺「テンプレ相手なら肉弾戦でもいけるな」

今回は超必殺技ゲージの回収源である打ち払いをあまり使わせないよう、近距離で潰し会いをして強引に勝ち星を取った。

流しのつもりで戦った相手はさぞかし驚いたハズだ。超必殺技ゲージがお互い据え置きで最終試合になだれ込むなんて有り得ない、と。

嶺「で、お望みだった展開で最終試合は終わり」

嶺「つまらない」

再び愚痴モードに入ろうとしたとき、挑戦者が現れた。

嶺「え、ライオンでか!?」

画面の大半を占める鬣の大男。高い攻撃力と削り能力がウリのキャラクターだ。反面、移動速度や飛び道具に恵まれず、人気はあまり高くない。

アツい。わざわざ"ガスマスク"と相性最悪のキャラクターで挑戦するとは。

嶺「こういうのを待っていたんだ。ああ、堪らないね」
14: ◆DPehMNPNeE:2012/8/11(土) 10:46:30 ID:W8TIfbYfqI
正晴「うっす、おはようさん」

嶺「おはよう」

正晴「今日は体調は悪くないみたいだな」

まだ心配されていたか。失敗した。こうなるのだったら金曜日は休んでおくべきだった。ちょっとした気遣いは有り難くも心に重い。

嶺「あの日は寝不足だっただけ、別に体調がどうのって話ではないよ」

正晴「悩み事か」

短く切り込む言葉が一瞬時を止める。いや、違うんだけれども。どうすれば回避できるのかわからなくて、曖昧に応える。

正晴「そうか」

嶺「そうだね」

特に会話もなく、進む。友人の陰にいる幼なじみは一言も話さず置物のようだ。

なんだろう?俺より遥かに不安定な状態じゃないか。なにか引っ掛かるものを感じて友人に視線を移す。

正晴「・・・・・・」

目と目が合うもスルー。多分、口に出すなという事だろう。今までの経験から言って、逆らうと何かしらのトラブルに見舞われるパターンだ。

嶺「冷える」

正晴「冷え性か。カイロならあるぞ」

使い捨てカイロをうやうやしく頂戴すると、気分がいくらか違った。

「キャー!?あれ、間接カイロだわ。もうそんな関係に・・・」

正晴「なんだあいつ」

嶺「間接カイロ?」
15: トマトが旨い! サラバダーノシ ◆DPehMNPNeE:2012/8/11(土) 10:50:40 ID:W8TIfbYfqI
「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん!!!」

正晴「呼んでない、帰れ」

「みんなのおトモダチ、アンパンマンで〜っす」

嶺「凄い声、頭がキンキンするよ。トーン落として」

「アハハ、ごめーんね。二人の邪魔になるこの娘は連れて行くから〜。バイビー!!!」

嵐のように現れ、去って行く幼児向けアニメのヒーロー(お面のみ着用、以下制服)。聞き覚えのある声とズレた行動で中身はバレバレだ。

嶺「祭のお面かな?アンパンマン」

正晴「うわっ、馬鹿力だなー。鳴抱えたまんま階段駆け上がってるぜ」

歩道橋を駆け抜けるアンパンマンに拍手する登校中の生徒達。中にはアンパン欲しいと叫ぶ者までいる。

嶺「ほっといて良いのか悩むところ」

正晴「どうにもならんだろ」

嶺「正晴ってさ、鳴相手には薄情だよね」

正晴「何もしないお前も同じさ」

ポケットから缶コーヒーを取り出し、プルタブを開ける友人。防寒対策は万全だ。俺も見習わなくては。

嶺「俺は誰に対しても態度は変わらないもの」

なんとなく対抗心が芽生え、ポケットを探る。取り出したのは革手袋、ハバキ様仕様だ。使った素材だけでもかなり高価な上、摩周的な意味でも傷は付けたくない逸品だ。

嶺「でも、使わなくちゃ飾りか」
16: ◆DPehMNPNeE:2012/8/13(月) 12:06:23 ID:UGpTFLNnic
正晴「いいやつだな。高いだろそれ」

目敏い。一目でわかるとは革物に詳しいのだろうか。前々から友人の知識の幅は広いとは思っていたが予想外だ。

嶺「見栄えを優先したから、そこまでは高くないよ」

正晴「いい造りしてる。メーカーどこよ」

俺の手ごと革手袋を動かして確かめようとする友人。

嶺「伯父さんのところの特注品。だから市販されてないよ」

本当は無理を押して機械を使わせて貰い、俺が作ったものだけど、作れとか頼まれそうなので言わないでおく。

正晴「あー、特注ってやっぱり高い?」

嶺「伯父さんのところだと1万8000円ぐらいからあるかな。もちろん、デザインや素材指定も入れるとどんどん積み上がるけど」

正晴「手が届かん。素直に身の丈に合ったのを使うわ」

正晴「ちなみにいくらよ、それ」

身内価格で話すべきか、一般価格で話すべきか。まあ、伯父さんも商売だろうし、身内価格は明確な値を口にしない事にした。

嶺「十万に少し欠けるぐらい。それから身内価格で割引利かせてもう少しお得に」

正晴「うわぁ」

ドン引きされた。確かに学生には分不相応なのは間違いない。だが、本気で望んで入手したのだから後悔はない。身内価格だし。人件費も掛かってないし。

革手袋談議が終わる頃には校門をくぐり終わっていた。未だ革手袋は役目を果たすに至らず、出しっ放しの手は凍えるように冷たかった。
17: ◆DPehMNPNeE:2012/8/13(月) 12:09:09 ID:UGpTFLNnic
昼休み。悠々と重役登校した隣人を捕まえる。

嶺「鳴はどうだった?」

「なんのことだか」

そらとぼける様子に怒りが湧く。そもそも、乱暴に扱って良い状態ではなかった。原因もわからず悪化させてしまったらどうしてくれる。

嶺「真面目に聞いているんだけど」

「女の子が体調悪くて、尚且つ人には言うのは憚られる。この二つを結ぶ答えは?」

嶺「え」

高速回転する頭。その弾き出した答えが正しいのなら・・・。冷水をかけられたように熱は冷め、息を吐く。

嶺「ごめん」

「いいって。心配して当然なんだから」

嶺「結局、学校に来てるの」

「勉強にならないみたいだし、無理矢理休ませた」

嶺「そっか」

隣人が汗をかいていた事に今更気が付いた。急いで来たのかもしれない。疲れた様子も見せずに対応してくれた優しさに頭が下がる。

鞄の肥やしとなっていたハンドタオルを取り出す。例の如くハバキ様仕様だ。功労者に使ってもらうのなら惜しくない。

嶺「汗拭かないと冷えるよ」

「ありがとう。助かる」

嶺「俺は少し頭冷やして来るわ。こんな事すら気付かなかったなんて、どうかしてる」

返事を待たず、去った。
18: 書き貯めが湯水のように消え行くwさらば、さらば・・・ ◆DPehMNPNeE:2012/8/13(月) 12:13:44 ID:UGpTFLNnic
「思ったより感情的だ。これは意外」

正晴「また適当なことばかり言って。真顔で嘘を付けるその神経が信じられないね」

見ていたのだろうか、いかにも偶然ですといった顔で現れた。行儀悪く手近な机に腰掛け、牛乳パックから伸びるストローを吸う。

「額面通りに受け取る人にゃ充分さね。潤滑油潤滑油」

こちらも行儀悪く話しながら昼食を摂っている。手頃なサイズの弁当の中は茶色が占める割合が多い。

正晴「借りたタオルでマヨネーズが付いた口元を拭うなよ。流石に嶺も怒るぞ?それ絶対高いし」

「普段物静かな人が怒ると怖いってよく聞くよね」

正晴「なんでも革手袋は10万だそうだ。布の面積だけならタオルの方がでかいな」

「またまたぁ、嘘でしょ」

正晴「朝、嶺から聞いたばっかりの話」

沈痛な表情で十字を切る。冗談半分、本気も半分。最悪の未来が浮かび、他人事ながらも青い顔が隣から伝染ってしまう。

「手洗いなら大丈夫かな。もう!馬鹿みたいな高級品を気軽に押し付けないでよ!!」

正晴「心中お察し致します」

「ご愁傷様、みたいに言わないで!口止め料あげるから」

弁当とは別の包みを開き、サンドイッチを披露する。正晴は鷹揚に頷き、黙って一切れ摘んだ。

正晴「なんだよこれ。この卵サンド、殻がキュウリより多く入ってやがる・・・」

嫌な食感を、栄養満点だから仕方ないと好意的に解釈してなんとか凌いだ。
19: ◆DPehMNPNeE:2012/8/14(火) 10:01:11 ID:dtFY3LReBk
820:摩周◆MASYUuLIKE:2012/5/1(火) 0:57:22 ID:※※※※※※※※
少し持ち直したんで、探究部の特典の制服について考察してみた。普通に考えたら既製品なんだろうけど、やっぱり〜専用の方が夢があるよねw

サイズが近しいのは柚子と菖蒲と光。左から順に誤差が少ない順。ただ、菖蒲は制服をゆとりを持った着方をしてるから、あんまり関係ないかな。大分長めのスカートの長さを鑑みるなら光が一番しっくりとくるかも。

もし他の人が検証してみて明らかに違う結果が出たら教えて下さいw出来れば制服うpも。きっと製造段階でのミ・・・各キャラの専用制服が出回ってるんだよ!夢が広がるぜ!

821:名無しの探究者:2012/5/1(火)
1:24:38 ID:※※※※※※※※
摩周たんは制服からどう逆算してるんだ・・・俺にはまったく理解ができない。

822:名無しの探究者:2012/5/1(火)
1:31:51 ID:※※※※※※※※
考えるな感じるんだ

823:名無しの探究者:2012/5/1(火)
1:46:46 ID:※※※※※※※※
そもそも、あの絵のキャラクター達は頭が制服の首を通らないから着るのは・・・おっと誰か来たようだ。

824:名無しの探究者:2012/5/1(火)
1:59:52 ID:※※※※※※※※
菖蒲と一緒に旅行に行きたい。

825:名無しの探究者:2012/5/1(火)
2:01:35 ID:※※※※※※※※
>>824
青木ヶ原ですね、わかります。

826:名無しの探究者:2012/5/1(火)
2:16:01 ID:※※※※※※※※
道理で俺が着るときつい訳だ。

827:名無しの探究者:2012/5/1(火)
2:22:21 ID:※※※※※※※※
流石摩周たん!セルフパンチラに夢中な俺達とは格が違う・・・

20: ◆DPehMNPNeE:2012/8/14(火) 10:05:09 ID:dtFY3LReBk
いつも通りからワンテンポぐらいズレながらも週が明けて。

半ば忘れていた適合率診断の件が進展した。カードが届いたのだ。

厚みのあるスカイブルーのカード、その裏面には大きく72と刻まれていた。おそらく適合率を刻印しているのだろう。

同封の紙には企画当日の日付と簡易な地図付きの住所、そして企画の詳細な説明。ざっと目を通して見るも、全く理解ができなくて途中からは読み飛ばしてしまった。

嶺「うわ・・・これ、冗談にしろ本気にしろ気合い入ってるなあ」

手慰みに意味もなく郵送物一式を携帯のカメラ機能で取り、カードを財布に挿した。

嶺「日曜日。予定もないし、行ってみるかな」

最低限必要な物を考える。それと、服装に鞄の類に靴。どうせネタイベントならはっちゃけた方が良い。

もしも、もしも本当に平面旅行に行けるなら。やっぱり葦原學園に行きたい。ハバキ様仕様の制服と學園鞄を胸に強く抱える。

嶺「成り切るなら化粧も覚えるべき?」

手早く検索する。ハバキ様的には薄化粧か、下手すれば化粧水と乳液だけかもしれない。

嶺「自然系、昔ながらの知恵の手入れってのも有り得るか」

作中で言及されていないところはまったくの想像になる。イマジネーションの世界だ。とりあえず現時点の個人的な想像では自然系が濃厚。

通販は間に合わないか?確実性を取るならやはり店頭か?気になった商品名を片っ端からメモに取る。

よし、メモはOK。時間は惜しい。はしごする覚悟で家を飛び出した。
21: とーかしゅーりょー ◆DPehMNPNeE:2012/8/14(火) 10:07:53 ID:dtFY3LReBk
結局、メモに取ったモノと店頭で気になったモノと一流メーカーの高い値段帯のモノをまとめて購入。

化粧品と比べるべくもないが、ついでに購入した化粧の本も安くはない。今月も財布は中身より自身が高価だ・・・・・・。

嶺「付け焼き刃の技術で化粧は上手くいくか・・・いや、いかせて見せよう」

へちま水、柚子、糠、馬油、ハチミツ、薬草etcetc・・・・・・。正直、よくわからない。特に最近の高価なモノは。

母君に教わるなんて選択肢は瞬時に破棄。学校で聞くのも論外。順当に、消去法で眼前にある機械の箱に運命を托す事にした。

ぺたぺた。ぺたぺたぺた。ぺたぺた。
ぺたぺた。ぺたぺたぺた。ぺたぺた。

結構楽しい。なんだろう?粘土みたいな?そういえば泥パックなんてのもあったな。

童心に戻りながらかれこれ三時間。手が疲れてきた。鏡で成果を確認してもイマイチ差が判別できない。日常的にやらなければ意味がないのかも。

望んでいた、馬子にも衣装にはならず猫に小判といったところか。

嶺「よくこんなのを毎日やれるもんだ。目に見えて成果が出るならともかく」

ひょっとして、慣れた女性ならかなりの成果が出ているのか?凄いけど詐欺だ。日常的にお面を被るってどうよ。

八つ当たり気味の言い掛かりを付けてなんとか落ち着こうとする。

ああ、お面で良いからハバキ様仕様の自分を造りたい!せっかく体格が似ているのだから。

一度火が付いたら止められない。そんな自分の性格はとうに諦めていた。
22: ◆DPehMNPNeE:2012/8/16(木) 10:45:16 ID:npN44V9z/Y
学校に日参。多分、重い体を引きずり引きずり、ゆっくりと。道を歩いた記憶はない。だが、今学校にいるということがその証だろう。

クマができてると友人に指摘されたりもしたけれど、今回は気分が軽い。落ちてから上がるとこうなるのか。

一時限。気もそぞろなのを自覚しながら時間を潰す。それはHR開始のときに、欠席と事務的に担任教師が告げるまで幼なじみの存在すら忘れてしまっていた程だ。

抑揚のない声を聞き流し、日曜日の予定を組み立てる。時間、予算の管理と化粧の仮面。服装から靴に髪の合わせ方、天候によっての他の組み合わせ。

納得の行くように組み立てても、気になるものだ。時間が空く度に再考させられてしまう。

チャイムが鳴る。これは何度目のチャイムだったか。

時計を見る。昼休みにはまだ早い。四時限か。折り返しだ、気合いを入れよう。すだれ頭の理科教師に風情を感じつつ、教科書を開いた。

起立、礼、着席。意識しなくとも行える作業。板書を取るのと同じ。

授業を理解したら先に進む。自主的に。こうして、大抵の場合は二学期終わりまでには教科書の範囲はカバーし終えている。

家でまで勉強などしてたまるか!ときには、と言うか度々。宿題さえも授業中に片付ける。

これらも板書と同じ。意識しなくとも行える作業。

ちなみに一部の教師には蛇蝎の如く嫌われている。知った事ではないけれど。良い生徒じゃない、静かだし。

考えが明後日へ飛び立っている、今。すだれ頭に名前を呼ばれた。
23: ◆DPehMNPNeE:2012/8/16(木) 10:47:22 ID:npN44V9z/Y
放課後、帰る準備をしているときに友人に声をかけられた。わりと珍しいことだ。

正晴「鳴、風邪だってさ。見舞いに行こうぜ」

らしくない台詞を吐く友人を訝しむが、反対する理由もない。体調が悪いときは淋しくなるものだろうし。

やっぱり見舞いといったら、果物辺りを持って行くのがベターなのかな。

嶺「おう。だけど珍しいな、正晴はもっとドライかと思ってた」

正晴「馬鹿が風邪引いたとなれば、気にもなる。よほど酷い風邪だな」

嶺「とりあえず飲み物や果物を持っていくべき?」

正晴「・・・だな。メロンとまでは言わないけれども、何もなくちゃ格好がつかん」

校舎から出た後。話し合い、スーパーに向かう事に決まった。迷わず行き先が定まったのは、ここが田舎だからという理由もある。ようは、選択肢がないのだ。

見舞いの品は割り勘。量はほどほどに、品物は値段で決めるな。等など、意見を擦り合わせ歩みを進める。

陽射しが強い。容赦なく照り付ける陽の光は昼から変わらず、一向に落ち着きを見せない。

一旦帰宅して着替えたばかりのシャツも瞬く間に汗を吸い、その重さをアピールしている。

正晴「この季節、この時間でこれかよ。今年はどうなってやがる」

嶺「同感。死人がでそうだ」

嶺(日曜日も着替えがいるかな、これは)

正晴「鳴がその死人にならないよう祈ろうぜ」
24: 割り箸で作った鉄砲はやっぱりカッコイイwサラバダー ◆DPehMNPNeE:2012/8/16(木) 10:51:23 ID:npN44V9z/Y
カーテンの隙間から差し込む光が眩しい。

部屋の主である制服姿の少女は、庇うように布団の上で身体を丸める。

サボってしまった。自分自身と、変な方向に撥ねる髪がどうしようもなくうっとうしい。

別に学校が嫌で休んだのではない。より正確に表現するなら、休まされたが正しいか。

顔色が悪い。その一言だけを放ち、直ぐさま学校に休みの連絡を入れた父の決断力には脱帽だ。

原因は自覚していた。又聞きで聞いた言葉に打ちのめされただけ。

こんなことなら、頼んでまで聞かなければよかった。

憧れる人ならいない訳でもないけれど―――――

色恋には無縁の幼なじみ。自分の中で位置付けていた価値観は脆くも崩れさり、価値観はただの願望であったと現実を突き付けられた。

胸が痛い。私達はフィクションの世界の幼なじみみたいな距離を築けてはいない。中味は伴っていない。

昔から家が近い、ただそれだけ。

楽に逃げて、貴重な時間を浪費して、あまつさえそれに満足して。勇気を振り絞り、一歩踏み出す事すらできなかった。

仕方ないのかな。口では物分かりの良い言葉をいいながらも、体は逆らう。

トイレに駆け込み、胃の中の物を逆流させる。だめだ。もうなんにもない。からっぽだ。

このまま胸に溜まった泥も吐き出せればいいのに。私、汚くなりたくない。だって素直に応援したいもの。私はそうしたい。そうあるべきだから。
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