今日は記念すべき日になるハズだった。
心踊らせる"宝"の予約は初日に済ませていた。そして本日!購入受け取りの後、体で"宝"を庇って帰宅。
追記するならば、事前準備として睡眠時間も環境設備も十二分に足りていた。
俺は自身の考え得る全ての手を打ったつもりだ。しかし、想定外の攻撃はあるもので。
"宝"ことゲームを進めて小一時間経過した頃。地雷。不吉な二文字が思考の隅を掠める。
嶺「なんだよコレ・・・・・・ハバキ様はこんな性格じゃないだろぉ」
自分でも情けなくなる声が出た。責めるような今にも泣き出しそうな。
落ち着け、少しでいいから冷静になるんだ俺。シナリオを全部見てから判断するのがマイルールだろ?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
結局、傷口は広がってしまった。思い入れのあった作品の続編への期待には、評価は人それぞれ等と言う正論なんか意味を為さなくて。
嶺「まさか、このゲームでスキップ機能を使うとは思わなかった」
予約特典の制服が哀愁を誘う。前作の時に興が乗って作った、同學園の手作り制服と並べて写メを撮って悦に浸っていた時間が懐かしい。
嶺「俺の考察が間違っていたのだろうか」
認めたくない悔しさと、それと表裏の淡い希望を胸に抱き、前作"葦原學園探求会"を起動した。
2: ◆DPehMNPNeE:2012/8/8(水) 11:07:11 ID:6E1Q3FITdQ
嶺「ぅあ」
喉から変な声がこぼれ落ちる。かつてない程に体調が悪い。先程まで前作、今作をぶっ続けで、加えてもう一度並行してプレイをしていたのが響いたか。
五月蝿く鳴り始める前に目覚ましを叩き、ため息をつく。
寝不足、考え過ぎが原因と思われる頭痛、虚無感の三重苦と戯れつつ、学園へ行く準備を進める。
機械的に行う準備は沈み切った心境には関係なく正確に進み、変なところで発揮される器用さに余計にげんなりとする。
嶺「サボろうか」
割と本気で悩んだが、今日が金曜日であることも後押しして怠惰な誘惑を振り切ることができた。
大体、家に居たらまた眠らずゲームをプレイするのが目に見える。時間を置こう。そうしよう。
体に鞭を打て。これが行動が産んだ結果だ。(byハバキ様)
もちろん前作のセリフですとも。檄を飛ばすハバキ様は今なお色褪せない。だからこそ今作は許せないのだが。
"宝"だったモノは期待と共に崩れ去った為、神棚に飾った四本のゲームソフトは飾られた当日の内に撤去、以前より在った同数の"宝"である"葦原學園探求会"だけが残った。
"葦原學園探求会"に続編、"探求部"はなかったのだ。
そう考えると思いの外落ち着き、時間を掛けてなんとか食事を詰め込むことに成功した。
なんだかんだと時間を浪費したせいで、いつもより出発は遅くなってしまったが仕方ない。眼前にいない友人を思い浮かべ、足早に家を出る。
3: ◆DPehMNPNeE:2012/8/8(水) 11:09:16 ID:6E1Q3FITdQ
待ち合わせ。惰性で続いている行為にもきっと意味はある。特に今日みたいなけだるい日には。
学園までの道程の半分に少し足りない距離。個人商店の前で友人は待っていた。
嶺「おはよう」
正晴「五分遅い。珍しいな、お前が遅れるなんて」
嶺「サボろうか悩んでてさ」
正晴「驚いた。冗談を言うようになったのか、明日にでも雨が降りそうだ」
口元だけを動かし、笑う友人。彼には俺がよほど真面目に映るらしい。
曖昧に返事をすると、冗談はわかりやすく言わないと誤解される。と、いささか検討外れの言葉を頂いた。
気まぐれな友人と生真面目な俺。約束をしていた二人は揃った。後は約束の外、何故か朝によく遭遇する幼なじみがいる。つまり、もう一人現れるのが定例だ。
正晴「クマができてる」
目の下を叩く様子に促され、よくよく観察してみる。
嶺「クマなんてないけど」
正晴「俺じゃなくてお前」
心当たりは見事なまでにあった。間違いなく昨夜の件だ。せめて家の外では忘れていたい悲しい出来事。涙が出そうになる。
嶺「目立つ、かな」
正晴「それなりに」
嶺「困ったもんだ」
とても、とても憂鬱だ。
4: ◆DPehMNPNeE:2012/8/8(水) 11:11:44 ID:6E1Q3FITdQ
鳴「おはよう」
嶺「おはよう」
後ろからかけられた挨拶に反射で応じる。相手の確認もせずに返事をするのは失礼ではないかとも思うが、ついた癖は中々抜けてくれない。
鳴「うわ、クマできてるよ」
こちらの反応に構わず、話を続ける幼なじみ。彼女の落ち着きのなさは頭の左右で跳ねる黒い尻尾が見事に体現している。
嶺「多分、寝不足」
端的に応える。流石に理由を全部を説明するのは恥ずかしい。
鳴「肌白いから目立つね」
正晴「末期の病人」
鳴「それ、笑えない」
嶺「・・・・・・」
正晴「お前の愛想笑い、怖いな」
嶺「・・・・・・」
正晴「どうすんだよ、嶺が固まってるぞ」
鳴「私が悪いの!?」
正晴「本人に聞けば分かるさ」
鳴「えぇ・・・」
正晴「メデューサ」
鳴「そうそう、髪形もそれっぽいし。ナイスネーミング」
正晴と鳴「イェーイ」
ハイタッチの後、正晴はブロック塀に叩きつけられた。
5: ◆DPehMNPNeE:2012/8/8(水) 11:13:45 ID:6E1Q3FITdQ
気が付けば昼になっていた。教室内の声が煩わしい。
のんびりと教科書をしまい、返す手でビニール袋を漁る。ビニール袋特有の耳触りな音に眉をひそめつつ、中身を拾った。
「今日はお弁当じゃないんだ」
触れるな。昨日を思い出すから。苛立ちを噛み殺しながら作った笑顔を隣の席に向ける。
嶺「ちょっと時間作れなくてさ、たまには息抜き」
「え、いつもは嶺君の手作りだったの?凄いじゃん」
空気を読めないのか、はたまた読まないのか。適当に話を合わせる俺とは対照的に、隣人は楽しそうだ。
悪い人ではない。彼女は基本的に親切だ。ただ、その親切に俺が戸惑ってしまう事が多いだけで。
「今度料理のコツでも教えてよ」
嶺「教える程のものじゃないよ、レシピ通りにやるだけだし」
謙遜に見せ掛けた拒絶。悟ったのだろうか、その日初めて隣人は曇った顔をした。
ようやく落ち着いて食事を摂れるかな。平時より味気なくても食事は食事だ。手を合わせ、軽くお辞儀をする。
「コンビニのでもちゃんとお辞儀するんだ」
食欲が一気に失せた。何故今日に限って妙に絡んでくるのだろう。
耐え切れずに席を立とうとしたとき、友人に声をかけられた。
正晴「よっ、昼一緒にどうだ」
こんな中途半端な時間に?疑問符が浮かんだが、渡りに船とばかりに誘いに乗った。
6: ◆DPehMNPNeE:2012/8/8(水) 11:21:09 ID:6E1Q3FITdQ
新たにスレを建てさせて頂きました。スローペースになる未来が見えている気が致しますが、宜しければお付き合い下さいませ。
リバティー◆DPehMNPNeE
7: ◆DPehMNPNeE:2012/8/9(木) 03:26:29 ID:rMBNqI9S7U
正晴「具合はいかが」
嶺「病人じゃあるまいし」
正晴「顔色だけなら立派に病人だ」
心配をかけてしまっていたみたいだ。友人は見かけに反し、良く気が付く。いや、もしかすると一目で分かるぐらい酷いのかもしれない。
なんにせよ、情けない理由での体調不良などでこれ以上迷惑になる訳にはいけない。
「落ち着いた男二人の静かな昼食。あまり表情を出さない彼らもこればかりは頬が緩む。そう、儚い想いがあるから・・・」
正晴「黙ってろ」
悪びれずに隣人はニタニタ笑っている。正直不気味だ。
嶺「・・・・・・」
正晴「場所、変えるか?」
嶺「時間も少ないからいいよ・・・」
正晴「ああ・・・なんだ。お前も大変だな」
嶺「ありがとう」
菓子パンをもふもふかじる。やっぱり、食事と言うより餌みたいで好ましくない。なんだか踏んだり蹴ったりだ。
正晴「嫌そうな顔して食べやがる」
嶺「出来合いのモノは苦手なんだ」
正晴「贅沢者め」
嶺「手作りの方が金銭的には安いよ」
正晴「そう考えられるのが贅沢」
そういうものなのか。一つ勉強になった。ぼんやりとした頭にイマイチ入り切らない情報をなんとか咀嚼する。
8: ◆DPehMNPNeE:2012/8/9(木) 03:28:21 ID:rMBNqI9S7U
正晴「聞いていいか」
嶺「なにさ」
正晴「お前、好きな人とかいるか」
「うわ、ガチ。ガチだわー」
正晴「・・・・・・」
「いやん。睨まないでったら、ジョーダンよ」
恋愛話を切り出されたのは初めてだった。俺は良くも悪くも人と距離がある。言ってしまえば空気だ。それを自認していた俺には無縁の話だと思っていた。
嶺「んー、いないかな。憧れる人ならいない訳でもないけれど」
厳密には人ではなくて、画面の中のキャラクターだ。執着とも恋慕ともつかない気持ちをくれるのは、後にも先にも彼女だけ。
「ビッグニュース来たね、号外だね。神秘的な彼に憧れの君、その姿に迫る!」
正晴「マジか」
唖然とする友人にこっちが困惑する。頭の中で答えが決まっていたなら質問しないで欲しい。
嶺「驚き過ぎ。自分で話を振ったくせに」
正晴「悪い。興味ない分野かと思ってた」
失礼な。親しき仲にも礼儀あり、もっとオブラートに。むしろ謝るな。・・・沸騰した頭の端っこに、さもありなんと悟りを拓いている自分もいたのが業腹だった。
「ヒヒヒ」
正晴「気持ち悪いな、おい」
嶺「もう時間じゃないかな」
正晴「気ィ悪くしたか、後で埋め合わせする。じゃあな」
9: 本日はこの辺でノシ ◆DPehMNPNeE:2012/8/9(木) 03:30:33 ID:rMBNqI9S7U
201:摩周◆MASYUuLIKE:2012/4/27(金) 17:53:14 ID:※※※※※※※※
皆様、こんばんはです。探究部orz
202:名もなき探究者:2012/4/27(金) 17:58:14 ID:※※※※※※※※
摩周たん、ばんわー
203:神楽◆592HaRAM26:2012/4/27(金) 17:59:42 ID:※※※※※※※※
うはwやっぱり摩周落ち込んでるwww
204:名もなき探究者:2012/4/27(金) 18:07:46 ID:※※※※※※※※
摩周って誰だよ、クソコテが
205:名もなき探究者:2012/4/27(金) 18:08:14 ID:※※※※※※※※
新参か?よし誰かまたあのコピペ貼ってやれ。
206:名もなき探究者:2012/4/27(金) 18:18:47 ID:※※※※※※※※
すまん、若干修正してて遅れたw
摩周◆MASYUuLIKE嬢(違の輝かしい経歴。
・デモムービーの背景からモデルの場所を見つけ、発売日前に巡礼。(後に公式が明言)
・部屋に飾られたグッズの八〜九割は初期ロッド。残りは見比べる為だけに買った。
・ハバキ様のグッズを自作、特注。その種類は現在三桁に届く勢い。もちろん全部原作準拠。
・生年月日がハバキ様と一日違い。なんと、摩周さんと一緒www
NEW!探究部の予約特典の制服よりも出来の良い制服を自作。この度、並べた画像を見て質の差に住人絶句。
207:神楽◆592HaRAM26:2012/4/27(金) 18:19:33 ID:※※※※※※※※
>>204
名前の由来は探究会のサブ、ハバキ様親衛隊の摩周さんから、大まかに紹介したのが>>206
208:摩周◆MASYUuLIKE:2012/4/27(金) 18:22:26 ID:※※※※※※※※
>>206
お恥ずかしい限りです><
10: ◆DPehMNPNeE:2012/8/10(金) 10:09:49 ID:oUA7ZgxnXM
209:名もなき探究者:2012/4/27(金) 18:23:01 ID:※※※※※※※※
コピペ乙。削ってそれだからな。だが、これを削ったのは許せん。
878:摩周◆MASYUuLIKE:2010/7/10(金) 20:09:18 ID:※※※※※※※※
ハバキ様の体重を再現中、100g単位でズレてイライラ。折角同じ身長なのに。
210:名もなき探究者:2012/4/27(金) 18:28:03 ID:※※※※※※※※
ワロスwwwwww
211:名もなき探究者:2012/4/27(金) 18:31:11 ID:※※※※※※※※
摩周たんに神楽たん、探究部の触りはどんな感じだった?俺は光スキーだから楽しめたけど。
212:神楽◆592HaRAM26:2012/4/27(金) 18:34:42 ID:※※※※※※※※
>>211
前作がなければ普通。一部のキャラが改変されてるのが微妙(ハバキ様とかwww
213:摩周◆MASYUuLIKE:2012/4/27(金) 18:36:46 ID:※※※※※※※※
>>211
読解力の問題と信じて繰り返しプレイしています。としか言えない私・・・。
214:名もなき探究者:2012/4/27(金) 18:38:22 ID:※※※※※※※※
あー、摩周たんごめん。神楽たんサンクス。光に癒されてくるノシ
215:摩周◆MASYUuLIKE:2012/4/27(金) 18:41:07 ID:※※※※※※※※
私も落ちるかな。睡眠不足だし、時間を置きたい気分。
216:神楽◆592HaRAM26:2012/4/27(金) 18:43:52 ID:※※※※※※※※
>>214
光にされてくるに見えた。乙。
摩周もお疲れ様ー。
嶺「・・・少しは元気を貰えたかな。光スキーが羨ましいよ、まったく」
11: ◆DPehMNPNeE:2012/8/10(金) 10:11:48 ID:oUA7ZgxnXM
"探究部"の評価は最終的にはどのくらいだろう。各ルートをやる気力はもうない。しばらく待たなくてはならないか。
うつらうつらとしつつ目をさ迷わせる。すると、画面の端に目を惹くものがあった。
嶺「適合率診断・・・」
割とお堅い名前にファンシーなバナー。ミスマッチさに興味が湧く。寝不足で弱った頭は迷わずクリックを選択した。
嶺「平面、立体の適合率を診断致しますぅ?平面適合率の高い紳士淑女は平面旅行にご招待」
嶺「すげぇ胡散臭さー。ん、逆に気になるか。ネタにはなりそうだ」
六択、五十問余りの質問を手早く答える。見たところごくごく普通の診断に思えた。
嶺「チェック終了。気になる結果は、と」
立体適合率;27%
平面適合率;72%
誤差;1%
嶺「これは、高い?」
判断基準がないので分からない。普通は〜型とかに分けて、尤もらしいレッテルを貼ってくれるものではないのか。
説明の最下段にリンクがあった。平面適合率の高い方向け、との事だ。見逃してしまう程目立たないそれには悪意すら感じてしまう。
内容は平面適合率30%を越えた方へのプレゼント企画の詳細、らしい。
30%なら優に越えている。前段階は問題ない。些か抵抗はあったが、個人情報を入力していく。ここまで来て退くのもシャクだ。
嶺「後はカードの発送を待つのみ・・・何やってんだかな俺」
とりあえず、そのまま床に着く事にした。
12: 推敲したハズなのに、変換ミスを見つけたときの絶望感が凄い・・・失礼をばノシ ◆DPehMNPNeE:2012/8/10(金) 10:15:11 ID:oUA7ZgxnXM
派手な効果音も右から左。気分転換に格ゲーをプレイしていた。
画面の中で大仰なガスマスクを付けた小柄な女性が長柄を振り回し、気合いの入らない声を上げる。
この"ガスマスク"が俺の操作キャラクターだ。基礎能力は低いものの、攻撃範囲と判定が比較的強い。
向かい側に対する眼光鋭いスーツ姿の女性は、長柄を腕で打ち払いつつ間合いを窺っている。どうやら相手もそれなり以上に腕はあるらしい。
"ガスマスク"は一般的に"スーツ"と相性が悪いとされる。無敵有り、キャンセル可の打ち払いでほとんどの技が潰されるからだ。
嶺「分が悪いか」
接近されては勝負にならない。苦し紛れの牽制も打ち払われ、相手の超必殺技ゲージを増やすのみで苦しい戦いを強いられる。
嶺「ゲージも貯まってるし、強気で来るかな」
意識的に判定の残る技を置いて行く。またキャンセルや強弱で判定時間を変えられるので、嫌がらせには最適だ。
停滞する戦況に焦ったのか、"スーツ"がスライディングで距離を詰めに入る。思う壷だ。
置いた技に引っかかれ!カウンターヒットで打ち上げる未来を予測し、超必殺技を先行入力する。
画面が暗転。"ガスマスク"が打ち上げた"スーツ"にドクロマークの付いた球体を投げる。これで球体からは毒々しいガスが出て、体力の三割程を削るハズだ。
更に画面が暗転。ガスを擦り抜け、"スーツ"が華麗に着地。当然のようにダメージも吹き飛びもしない。予定とは反対に、超必殺技の硬直で動けない"ガスマスク"がサンドバッグになった。
嶺「またあの技かよ・・・ないわー」
13: ◆DPehMNPNeE:2012/8/11(土) 10:44:17 ID:W8TIfbYfqI
現在の体力は最大値の六割弱、〆に超必殺技を使われない限りは残るだろう。仮に超必殺技を使われたなら次の試合はこちらが有利に戦える。
嶺「待った方が圧力かけられるのに」
穏やかに勝利セリフを決める"スーツ"を、後ろのプレイヤーを諭すように呟く。
やはり次を捨てた。面白くない奴。決まった行動しか選ばないのなら対戦ゲームに意味などあるものか。
わかっている。仕方ないんだ。少し落ち着こう。ささくれ立った心を自覚しながら消化試合を楽しむ事にした。
嶺「テンプレ相手なら肉弾戦でもいけるな」
今回は超必殺技ゲージの回収源である打ち払いをあまり使わせないよう、近距離で潰し会いをして強引に勝ち星を取った。
流しのつもりで戦った相手はさぞかし驚いたハズだ。超必殺技ゲージがお互い据え置きで最終試合になだれ込むなんて有り得ない、と。
嶺「で、お望みだった展開で最終試合は終わり」
嶺「つまらない」
再び愚痴モードに入ろうとしたとき、挑戦者が現れた。
嶺「え、ライオンでか!?」
画面の大半を占める鬣の大男。高い攻撃力と削り能力がウリのキャラクターだ。反面、移動速度や飛び道具に恵まれず、人気はあまり高くない。
アツい。わざわざ"ガスマスク"と相性最悪のキャラクターで挑戦するとは。
嶺「こういうのを待っていたんだ。ああ、堪らないね」
14: ◆DPehMNPNeE:2012/8/11(土) 10:46:30 ID:W8TIfbYfqI
正晴「うっす、おはようさん」
嶺「おはよう」
正晴「今日は体調は悪くないみたいだな」
まだ心配されていたか。失敗した。こうなるのだったら金曜日は休んでおくべきだった。ちょっとした気遣いは有り難くも心に重い。
嶺「あの日は寝不足だっただけ、別に体調がどうのって話ではないよ」
正晴「悩み事か」
短く切り込む言葉が一瞬時を止める。いや、違うんだけれども。どうすれば回避できるのかわからなくて、曖昧に応える。
正晴「そうか」
嶺「そうだね」
特に会話もなく、進む。友人の陰にいる幼なじみは一言も話さず置物のようだ。
なんだろう?俺より遥かに不安定な状態じゃないか。なにか引っ掛かるものを感じて友人に視線を移す。
正晴「・・・・・・」
目と目が合うもスルー。多分、口に出すなという事だろう。今までの経験から言って、逆らうと何かしらのトラブルに見舞われるパターンだ。
嶺「冷える」
正晴「冷え性か。カイロならあるぞ」
使い捨てカイロをうやうやしく頂戴すると、気分がいくらか違った。
「キャー!?あれ、間接カイロだわ。もうそんな関係に・・・」
正晴「なんだあいつ」
嶺「間接カイロ?」
15: トマトが旨い! サラバダーノシ ◆DPehMNPNeE:2012/8/11(土) 10:50:40 ID:W8TIfbYfqI
「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん!!!」
正晴「呼んでない、帰れ」
「みんなのおトモダチ、アンパンマンで〜っす」
嶺「凄い声、頭がキンキンするよ。トーン落として」
「アハハ、ごめーんね。二人の邪魔になるこの娘は連れて行くから〜。バイビー!!!」
嵐のように現れ、去って行く幼児向けアニメのヒーロー(お面のみ着用、以下制服)。聞き覚えのある声とズレた行動で中身はバレバレだ。
嶺「祭のお面かな?アンパンマン」
正晴「うわっ、馬鹿力だなー。鳴抱えたまんま階段駆け上がってるぜ」
歩道橋を駆け抜けるアンパンマンに拍手する登校中の生徒達。中にはアンパン欲しいと叫ぶ者までいる。
嶺「ほっといて良いのか悩むところ」
正晴「どうにもならんだろ」
嶺「正晴ってさ、鳴相手には薄情だよね」
正晴「何もしないお前も同じさ」
ポケットから缶コーヒーを取り出し、プルタブを開ける友人。防寒対策は万全だ。俺も見習わなくては。
嶺「俺は誰に対しても態度は変わらないもの」
なんとなく対抗心が芽生え、ポケットを探る。取り出したのは革手袋、ハバキ様仕様だ。使った素材だけでもかなり高価な上、摩周的な意味でも傷は付けたくない逸品だ。
嶺「でも、使わなくちゃ飾りか」
16: ◆DPehMNPNeE:2012/8/13(月) 12:06:23 ID:UGpTFLNnic
正晴「いいやつだな。高いだろそれ」
目敏い。一目でわかるとは革物に詳しいのだろうか。前々から友人の知識の幅は広いとは思っていたが予想外だ。
嶺「見栄えを優先したから、そこまでは高くないよ」
正晴「いい造りしてる。メーカーどこよ」
俺の手ごと革手袋を動かして確かめようとする友人。
嶺「伯父さんのところの特注品。だから市販されてないよ」
本当は無理を押して機械を使わせて貰い、俺が作ったものだけど、作れとか頼まれそうなので言わないでおく。
正晴「あー、特注ってやっぱり高い?」
嶺「伯父さんのところだと1万8000円ぐらいからあるかな。もちろん、デザインや素材指定も入れるとどんどん積み上がるけど」
正晴「手が届かん。素直に身の丈に合ったのを使うわ」
正晴「ちなみにいくらよ、それ」
身内価格で話すべきか、一般価格で話すべきか。まあ、伯父さんも商売だろうし、身内価格は明確な値を口にしない事にした。
嶺「十万に少し欠けるぐらい。それから身内価格で割引利かせてもう少しお得に」
正晴「うわぁ」
ドン引きされた。確かに学生には分不相応なのは間違いない。だが、本気で望んで入手したのだから後悔はない。身内価格だし。人件費も掛かってないし。
革手袋談議が終わる頃には校門をくぐり終わっていた。未だ革手袋は役目を果たすに至らず、出しっ放しの手は凍えるように冷たかった。
17: ◆DPehMNPNeE:2012/8/13(月) 12:09:09 ID:UGpTFLNnic
昼休み。悠々と重役登校した隣人を捕まえる。
嶺「鳴はどうだった?」
「なんのことだか」
そらとぼける様子に怒りが湧く。そもそも、乱暴に扱って良い状態ではなかった。原因もわからず悪化させてしまったらどうしてくれる。
嶺「真面目に聞いているんだけど」
「女の子が体調悪くて、尚且つ人には言うのは憚られる。この二つを結ぶ答えは?」
嶺「え」
高速回転する頭。その弾き出した答えが正しいのなら・・・。冷水をかけられたように熱は冷め、息を吐く。
嶺「ごめん」
「いいって。心配して当然なんだから」
嶺「結局、学校に来てるの」
「勉強にならないみたいだし、無理矢理休ませた」
嶺「そっか」
隣人が汗をかいていた事に今更気が付いた。急いで来たのかもしれない。疲れた様子も見せずに対応してくれた優しさに頭が下がる。
鞄の肥やしとなっていたハンドタオルを取り出す。例の如くハバキ様仕様だ。功労者に使ってもらうのなら惜しくない。
嶺「汗拭かないと冷えるよ」
「ありがとう。助かる」
嶺「俺は少し頭冷やして来るわ。こんな事すら気付かなかったなんて、どうかしてる」
返事を待たず、去った。
18: 書き貯めが湯水のように消え行くwさらば、さらば・・・ ◆DPehMNPNeE:2012/8/13(月) 12:13:44 ID:UGpTFLNnic
「思ったより感情的だ。これは意外」
正晴「また適当なことばかり言って。真顔で嘘を付けるその神経が信じられないね」
見ていたのだろうか、いかにも偶然ですといった顔で現れた。行儀悪く手近な机に腰掛け、牛乳パックから伸びるストローを吸う。
「額面通りに受け取る人にゃ充分さね。潤滑油潤滑油」
こちらも行儀悪く話しながら昼食を摂っている。手頃なサイズの弁当の中は茶色が占める割合が多い。
正晴「借りたタオルでマヨネーズが付いた口元を拭うなよ。流石に嶺も怒るぞ?それ絶対高いし」
「普段物静かな人が怒ると怖いってよく聞くよね」
正晴「なんでも革手袋は10万だそうだ。布の面積だけならタオルの方がでかいな」
「またまたぁ、嘘でしょ」
正晴「朝、嶺から聞いたばっかりの話」
沈痛な表情で十字を切る。冗談半分、本気も半分。最悪の未来が浮かび、他人事ながらも青い顔が隣から伝染ってしまう。
「手洗いなら大丈夫かな。もう!馬鹿みたいな高級品を気軽に押し付けないでよ!!」
正晴「心中お察し致します」
「ご愁傷様、みたいに言わないで!口止め料あげるから」
弁当とは別の包みを開き、サンドイッチを披露する。正晴は鷹揚に頷き、黙って一切れ摘んだ。
正晴「なんだよこれ。この卵サンド、殻がキュウリより多く入ってやがる・・・」
嫌な食感を、栄養満点だから仕方ないと好意的に解釈してなんとか凌いだ。
19: ◆DPehMNPNeE:2012/8/14(火) 10:01:11 ID:dtFY3LReBk
820:摩周◆MASYUuLIKE:2012/5/1(火) 0:57:22 ID:※※※※※※※※
少し持ち直したんで、探究部の特典の制服について考察してみた。普通に考えたら既製品なんだろうけど、やっぱり〜専用の方が夢があるよねw
サイズが近しいのは柚子と菖蒲と光。左から順に誤差が少ない順。ただ、菖蒲は制服をゆとりを持った着方をしてるから、あんまり関係ないかな。大分長めのスカートの長さを鑑みるなら光が一番しっくりとくるかも。
もし他の人が検証してみて明らかに違う結果が出たら教えて下さいw出来れば制服うpも。きっと製造段階でのミ・・・各キャラの専用制服が出回ってるんだよ!夢が広がるぜ!
821:名無しの探究者:2012/5/1(火)
1:24:38 ID:※※※※※※※※
摩周たんは制服からどう逆算してるんだ・・・俺にはまったく理解ができない。
822:名無しの探究者:2012/5/1(火)
1:31:51 ID:※※※※※※※※
考えるな感じるんだ
823:名無しの探究者:2012/5/1(火)
1:46:46 ID:※※※※※※※※
そもそも、あの絵のキャラクター達は頭が制服の首を通らないから着るのは・・・おっと誰か来たようだ。
824:名無しの探究者:2012/5/1(火)
1:59:52 ID:※※※※※※※※
菖蒲と一緒に旅行に行きたい。
825:名無しの探究者:2012/5/1(火)
2:01:35 ID:※※※※※※※※
>>824
青木ヶ原ですね、わかります。
826:名無しの探究者:2012/5/1(火)
2:16:01 ID:※※※※※※※※
道理で俺が着るときつい訳だ。
827:名無しの探究者:2012/5/1(火)
2:22:21 ID:※※※※※※※※
流石摩周たん!セルフパンチラに夢中な俺達とは格が違う・・・
20: ◆DPehMNPNeE:2012/8/14(火) 10:05:09 ID:dtFY3LReBk
いつも通りからワンテンポぐらいズレながらも週が明けて。
半ば忘れていた適合率診断の件が進展した。カードが届いたのだ。
厚みのあるスカイブルーのカード、その裏面には大きく72と刻まれていた。おそらく適合率を刻印しているのだろう。
同封の紙には企画当日の日付と簡易な地図付きの住所、そして企画の詳細な説明。ざっと目を通して見るも、全く理解ができなくて途中からは読み飛ばしてしまった。
嶺「うわ・・・これ、冗談にしろ本気にしろ気合い入ってるなあ」
手慰みに意味もなく郵送物一式を携帯のカメラ機能で取り、カードを財布に挿した。
嶺「日曜日。予定もないし、行ってみるかな」
最低限必要な物を考える。それと、服装に鞄の類に靴。どうせネタイベントならはっちゃけた方が良い。
もしも、もしも本当に平面旅行に行けるなら。やっぱり葦原學園に行きたい。ハバキ様仕様の制服と學園鞄を胸に強く抱える。
嶺「成り切るなら化粧も覚えるべき?」
手早く検索する。ハバキ様的には薄化粧か、下手すれば化粧水と乳液だけかもしれない。
嶺「自然系、昔ながらの知恵の手入れってのも有り得るか」
作中で言及されていないところはまったくの想像になる。イマジネーションの世界だ。とりあえず現時点の個人的な想像では自然系が濃厚。
通販は間に合わないか?確実性を取るならやはり店頭か?気になった商品名を片っ端からメモに取る。
よし、メモはOK。時間は惜しい。はしごする覚悟で家を飛び出した。
21: とーかしゅーりょー ◆DPehMNPNeE:2012/8/14(火) 10:07:53 ID:dtFY3LReBk
結局、メモに取ったモノと店頭で気になったモノと一流メーカーの高い値段帯のモノをまとめて購入。
化粧品と比べるべくもないが、ついでに購入した化粧の本も安くはない。今月も財布は中身より自身が高価だ・・・・・・。
嶺「付け焼き刃の技術で化粧は上手くいくか・・・いや、いかせて見せよう」
へちま水、柚子、糠、馬油、ハチミツ、薬草etcetc・・・・・・。正直、よくわからない。特に最近の高価なモノは。
母君に教わるなんて選択肢は瞬時に破棄。学校で聞くのも論外。順当に、消去法で眼前にある機械の箱に運命を托す事にした。
ぺたぺた。ぺたぺたぺた。ぺたぺた。
ぺたぺた。ぺたぺたぺた。ぺたぺた。
結構楽しい。なんだろう?粘土みたいな?そういえば泥パックなんてのもあったな。
童心に戻りながらかれこれ三時間。手が疲れてきた。鏡で成果を確認してもイマイチ差が判別できない。日常的にやらなければ意味がないのかも。
望んでいた、馬子にも衣装にはならず猫に小判といったところか。
嶺「よくこんなのを毎日やれるもんだ。目に見えて成果が出るならともかく」
ひょっとして、慣れた女性ならかなりの成果が出ているのか?凄いけど詐欺だ。日常的にお面を被るってどうよ。
八つ当たり気味の言い掛かりを付けてなんとか落ち着こうとする。
ああ、お面で良いからハバキ様仕様の自分を造りたい!せっかく体格が似ているのだから。
一度火が付いたら止められない。そんな自分の性格はとうに諦めていた。
22: ◆DPehMNPNeE:2012/8/16(木) 10:45:16 ID:npN44V9z/Y
学校に日参。多分、重い体を引きずり引きずり、ゆっくりと。道を歩いた記憶はない。だが、今学校にいるということがその証だろう。
クマができてると友人に指摘されたりもしたけれど、今回は気分が軽い。落ちてから上がるとこうなるのか。
一時限。気もそぞろなのを自覚しながら時間を潰す。それはHR開始のときに、欠席と事務的に担任教師が告げるまで幼なじみの存在すら忘れてしまっていた程だ。
抑揚のない声を聞き流し、日曜日の予定を組み立てる。時間、予算の管理と化粧の仮面。服装から靴に髪の合わせ方、天候によっての他の組み合わせ。
納得の行くように組み立てても、気になるものだ。時間が空く度に再考させられてしまう。
チャイムが鳴る。これは何度目のチャイムだったか。
時計を見る。昼休みにはまだ早い。四時限か。折り返しだ、気合いを入れよう。すだれ頭の理科教師に風情を感じつつ、教科書を開いた。
起立、礼、着席。意識しなくとも行える作業。板書を取るのと同じ。
授業を理解したら先に進む。自主的に。こうして、大抵の場合は二学期終わりまでには教科書の範囲はカバーし終えている。
家でまで勉強などしてたまるか!ときには、と言うか度々。宿題さえも授業中に片付ける。
これらも板書と同じ。意識しなくとも行える作業。
ちなみに一部の教師には蛇蝎の如く嫌われている。知った事ではないけれど。良い生徒じゃない、静かだし。
考えが明後日へ飛び立っている、今。すだれ頭に名前を呼ばれた。
23: ◆DPehMNPNeE:2012/8/16(木) 10:47:22 ID:npN44V9z/Y
放課後、帰る準備をしているときに友人に声をかけられた。わりと珍しいことだ。
正晴「鳴、風邪だってさ。見舞いに行こうぜ」
らしくない台詞を吐く友人を訝しむが、反対する理由もない。体調が悪いときは淋しくなるものだろうし。
やっぱり見舞いといったら、果物辺りを持って行くのがベターなのかな。
嶺「おう。だけど珍しいな、正晴はもっとドライかと思ってた」
正晴「馬鹿が風邪引いたとなれば、気にもなる。よほど酷い風邪だな」
嶺「とりあえず飲み物や果物を持っていくべき?」
正晴「・・・だな。メロンとまでは言わないけれども、何もなくちゃ格好がつかん」
校舎から出た後。話し合い、スーパーに向かう事に決まった。迷わず行き先が定まったのは、ここが田舎だからという理由もある。ようは、選択肢がないのだ。
見舞いの品は割り勘。量はほどほどに、品物は値段で決めるな。等など、意見を擦り合わせ歩みを進める。
陽射しが強い。容赦なく照り付ける陽の光は昼から変わらず、一向に落ち着きを見せない。
一旦帰宅して着替えたばかりのシャツも瞬く間に汗を吸い、その重さをアピールしている。
正晴「この季節、この時間でこれかよ。今年はどうなってやがる」
嶺「同感。死人がでそうだ」
嶺(日曜日も着替えがいるかな、これは)
正晴「鳴がその死人にならないよう祈ろうぜ」
24: 割り箸で作った鉄砲はやっぱりカッコイイwサラバダー ◆DPehMNPNeE:2012/8/16(木) 10:51:23 ID:npN44V9z/Y
カーテンの隙間から差し込む光が眩しい。
部屋の主である制服姿の少女は、庇うように布団の上で身体を丸める。
サボってしまった。自分自身と、変な方向に撥ねる髪がどうしようもなくうっとうしい。
別に学校が嫌で休んだのではない。より正確に表現するなら、休まされたが正しいか。
顔色が悪い。その一言だけを放ち、直ぐさま学校に休みの連絡を入れた父の決断力には脱帽だ。
原因は自覚していた。又聞きで聞いた言葉に打ちのめされただけ。
こんなことなら、頼んでまで聞かなければよかった。
憧れる人ならいない訳でもないけれど―――――
色恋には無縁の幼なじみ。自分の中で位置付けていた価値観は脆くも崩れさり、価値観はただの願望であったと現実を突き付けられた。
胸が痛い。私達はフィクションの世界の幼なじみみたいな距離を築けてはいない。中味は伴っていない。
昔から家が近い、ただそれだけ。
楽に逃げて、貴重な時間を浪費して、あまつさえそれに満足して。勇気を振り絞り、一歩踏み出す事すらできなかった。
仕方ないのかな。口では物分かりの良い言葉をいいながらも、体は逆らう。
トイレに駆け込み、胃の中の物を逆流させる。だめだ。もうなんにもない。からっぽだ。
このまま胸に溜まった泥も吐き出せればいいのに。私、汚くなりたくない。だって素直に応援したいもの。私はそうしたい。そうあるべきだから。
25: ◆DPehMNPNeE:2012/8/18(土) 09:38:09 ID:N20h4L77mw
喉が渇いた。エアコンの効いた室内でずっと寝ていたせいか、渇きが酷い。
今は人に会いたくない。回り道をして、普段は使わない方の水道へ向かう。
だが、水を汲んだのはいいが臭いに負けて吐き気が振り返す。回り道の甲斐なくそのまま台所へ流れて行く。
何か替わりの物はないのかな。音を立てないように気を遣い、人の気配に耳を尖らせて冷蔵庫を漁る私はきっと誰が見ても浅ましい。
不意に涙が零れ落ちる。私はまだ頭のラインが混線しているらしい。
いつまでもこうしていられない。心配もかけてしまう。しっかりしなくちゃ。
しっかり、しなくちゃ。
甘ったるいジュースを流し込んで食材を抱える。兵糧は重要だ。まずは食べる。それから寝る。経験上、大概はこれでなんとかなる。
後は部屋に待避するのみよ。包装の擦れる音や床の軋みに注意して。
漫画ではよく小枝を踏むヘマをやらかす奴がいるが、私はそんなヘマはしない。小枝なんか我が家の床にはないのだ。
この時点でもはや勝利は約束されたようなもの。泣き顔は誰にも見られない。万歳、ちっぽけなプライドは守られた。
人の、父の気配がする部屋の前は特に慎重に。抜き足差し足忍び足。スカートを摘み上げてほら、大サービス。
見る人のいないサービスは終わり、部屋に戻った。自分の臭いで少しだけ落ち着く。
そうだ。笑顔の練習をしなくちゃ。と、前向きになった成果の泣き笑いの顔は酷くブサイクでまた鬱になった。
26: ◆DPehMNPNeE:2012/8/18(土) 09:40:15 ID:N20h4L77mw
閑静な住宅街、我が家のすぐ隣にある、煉瓦屋根で重厚な雰囲気を醸し出す年代物の家。幼なじみ、鳴が父親と二人で住んでいる家だ。
正晴「こんちわー」
嶺「あ、こんにちはー」
チャイムを鳴らし声を掛ける。すると、慌てた様子でひょろりと細長い優しげな中年男性が顔を出す。
正晴「すみません、お久しぶりです兼夫さん」
やや馴れ馴れしく対応する友人は世慣れていると思う。っと、失礼にならないよう話の続きを引き取る体勢に入る。
嶺「鳴の体調が悪いと伺ったので、こちら正晴と二人で買った見舞いの品です」
兼夫「こんにちは、二人共本当に久しぶりだね。いや、どうも気を遣わせてしまってすまない。で、折角来て貰っているのに悪いけど、鳴は部屋で休んでいるんだ」
俺達二人に見せるように開け放たれた扉、その先には積まれた書類に埋め尽くされていた。
兼夫「仕事は待ってくれないんだ」
唖然としているのに気付いたのか、苦笑しながら端的に説明してくれた。
正晴「ありゃ、大変そうだ・・・お邪魔しちゃって悪いかったかな」
嶺「鳴の具合はどうなんですか?」
兼夫「顔色が悪くてね、大事をとっての休みだから心配しなくても大丈夫だよ」
兼夫「あ、ちょっとまって。よくよく考えたら二人共いいとこに来てくれた。いいものがあるんだよ、凄く」
引っ込む父。落ち着きのない様子が些か不安だ。
27: 1レス1レス詰め込むとスクロールが大変だと気付いたこの頃。さらば ◆DPehMNPNeE:2012/8/18(土) 09:43:09 ID:N20h4L77mw
兼夫「これ、なんだか分かるかなあ?」
嶺「・・・・・・魚?」
兼夫「そう、そうだよ魚だよ!みんな大好きマグロさんさ!ホンマグロだよ!ホンマ!」
兼夫「ほらほら、見舞いに来てくれたお礼だ。旨いところを持っていきな」
異様なテンションに若干引く。マグロの存在にも引く。言うまでもなく、理解に苦しんだ。
正晴「でも、流石に悪いですし・・・」
兼夫「気にしない気にしない。どうせ二人じゃ食べ切れないから、おすそ分けするところだったんだ。さあさあ」
テキパキと袋に詰めて渡してくる辺り、ナチュラルに押しが強い。
困り果てて友人と顔を見合わせていたら、何を誤解したのか、「氷がなくちゃ駄目だな」とまた引っ込んで行った。
正晴「なあ、いくらなんだろうな、マグロ一匹って」
嶺「お金のことばっかり気にして」
正晴「気にしない訳にはいかんだろ。なんで俺の周りには感覚が狂った奴しかいないんだ」
天を仰ぎ嘆息している。正直、世話になっているおじさんまで奴扱いは如何なものか。
兼夫「一本買うと高いぞー。目玉飛び出るかと思ったわ」
正晴(聞かれてたよ・・・)
嶺(天然だよね、マグロもおじさんも)
丁寧にお礼を言ってお暇する。なんだか疲れた。今度はメバチかそれとも大正海老か、なんて大笑いするおじさんには、振り返って考えてもどう対応していいか分からなかった。
28: 名無しさん@読者の声:2012/8/18(土) 16:34:05 ID:T2y2d5pvx2
今後の展開も期待っC
29: ついに!我!以外の!レスがついた!!ありがとうございますわー ◆DPehMNPNeE:2012/8/19(日) 12:02:20 ID:Pj31ZiAoE.
夕方、右手にビニールで包まれたマグロをぶら下げる男二人。製氷皿から生まれた小粒な氷は早くも溶け始めている。
正晴「うちの晩飯が決まった」
嶺「うちは・・・どうだろ。もう作ってるかも」
日にちを跨いだら生食は難しいかな。これだけのマグロなら生が一番美味しいだろうに。現金なもので、浮ついた気はあっさり萎む。
正晴「しっかしなあ、体調不良の娘にマグロはねーだろ。吐くぞ」
心底嫌そうに呟く。ひょっとしたら、以前に身をもって経験したのかもしれない。
嶺「もったいないねー。しかも量が量だし」
正晴「・・・・・・だなー。あ、悪くなっちまうから俺もう帰るわ」
嶺「はいはい。じゃあ、また」
ひらひらと手を振り、別れる。間もなく友人は背を向けマグロを担ぎ、その冷たさで悲鳴を上げた。
同じく背を向けていたのだが、悲鳴に思わず振り向いてしまったので見送ってみる。重しにより鈍った歩みは急いでようやく平時並といったところか。
嶺「あれじゃ溶けるな」
友人の家は山を越えて向こうだ。交通の為に道が通ってはいても中々の距離である。更には、よく登下校に使われるバスも時間は合わないだろう。
嶺「ボーッとしてたらこっちも溶けちゃうか」
我が家の扉を開け、マグロに驚く母に事情を説明すると、お返しの菓子折りを持たされて家から追い出された。
なんで菓子折りなんかあるんだ?疑問に思って中身を眺めていたら、賞味期限が切れていることに気付いた。
30: ◆DPehMNPNeE:2012/8/19(日) 12:03:56 ID:Pj31ZiAoE.
翌日。何事もなかったかのように幼なじみは登校してきた。
嶺(朝に見かけなかったから、また休みかと思ってたんだけど)
喜ぶべきなんだろうけど、素直に喜べない。なんだか引っ掛かる。
いつもの待ち合わせ場所にいなかったから?そういえばどことなくぎこちないような・・・。よそよそしいような・・・。
気のせいか?そもそも登校以外で、学校では元からあまり話はしない。学校での男子と女子の活動区域は明確に分けられていて、被る点は僅かなのだ。
先日は存在すら忘れていたのに。一度気になると落ち着かない。理屈ではない、自分でも首を傾げる違和感満載な感覚。謎だ。
風が吹き、書きかけのメモ代わりのミニノートのページがめくれて、意図しない場所にインクを載せてしまい苛立ちは加速する。
「嶺君嶺君。ちょっとさー」
嶺「なに?」
上の空で返す。ただでさえ中身のない話が多い隣人だ。たまに気を抜いた返事しても罰は当たるまい。
「顔が怖い」
「いや、マジ怖いからやめて。小便ちびっちゃう」
意識して笑う。すると何故か頬が引き攣る。
「え?え!?なに?まさかマヨネーズの件バレてたり」
嶺「ごめん、なんの話?」
「いや、心当たりがないならいいんだ。アハハ。この前借りたタオル返したくってさ」
嶺「タオル・・・マヨネーズ・・・」
31: 熱砂にやられた。サラバダー ◆DPehMNPNeE:2012/8/19(日) 12:06:09 ID:Pj31ZiAoE.
手にしたタオルが心なしか黄ばんでいる気がする。悟ってしまった。堪えていた眉、口角の筋肉の緊張が頂点に達し、連鎖して大きく跳ねる。
事は迅速に。父から学んだ言葉だ。血走った目で、五日間睡眠時間ゼロで、カタカタと機械を操作していた父の気持ちが今なら理解できる。
隣人から話を聞く。丁寧に。細かく。正確な話を。
友人を捕まえる。屋上でフケていたのを有無を言わさず。
話に食い違いはないか。本当にマヨネーズを?他はないのか。タオルは雑巾ではない。繰り返す、タオルは雑巾ではない。
手洗いをした?見よう見真似で手洗いをするぐらいなら洗わず返せ。お前に使った素材の特徴がカケラでも分かるのか。
それ以前に触るだけで素材が分かるのか。何故素直に言えない。
俺は。信じて。貴女に。貸したのに。
俺は。信じて。貴女に。貸したのに。
言語道断。信頼を裏切り、買収を行い、隠蔽工作をするなど。もちろん買収に乗る我が友人も。
どれだけ苦労して買ったか。どれだけ愛情込めて手入れをしたか。ほんの少しでも脳裏を掠めてはくれなかったのか。
のしかかった全ての想いを表情で現わして、ただ一言どうして?と尋ねた。
しばし待つも答える者はなく、周囲にばらつく生徒達は土下座していた。肝心の隣人は土下座する余裕もなかったのか、不動だ。
足音。甘い。
逃げようとした友人の腕を掴む。逃げるのはルール違反だよ、正晴。
大丈夫。痛くしないから。
32: ◆DPehMNPNeE:2012/8/21(火) 12:42:34 ID:T7G1cXLFiQ
嵐は去った。地べたに座った、放心状態の正晴がぽつねんと残されている。
正晴「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
蛍光灯の光を遮る影。顔を上げずともその主が誰だか分かる。今回の引き金、嶺の逆鱗に触れてしまった御仁だ。
「これ絶対寿命縮む。てか、なにバックレようとしてたのさ」
正晴「無理なんだよ、あれだけは勘弁してくれ。バレるような真似するんじゃねえよ、まったく」
脚を組み替えようとするが、強張っていて中々言うことを聞いてくれない。どうせ労力を使うなら、飲み物でも買いに行った方が幾らかマシか。
正晴「飲み物買いに行くけど、なにかいるか?」
「ミルクティーお願い」
立ち上がる正晴。入れ代わり座る御仁。だらしなく床に寝そべる姿は見ていて自然と溜め息が零れる。
「しっしっ!さっさと行けぃ」
正晴「お前は・・・・・・ああ、もういいや」
文句を言うのも億劫だ、途中で投げる。着衣が乱れてわりと大変なことになっていても、今は見る輩もいまい。
ここで自分で悟るぐらい聡ければ、違う結果を迎えていたのだろうか。いや、変なところでだけ妙に鋭い嶺相手では微妙かもしれない。
嶺も、もっと分かりやすい、真っ当な部分で鋭いとこっちも助かるのだけど。
正晴(きっと、眼中にないからだろうな。どいつもこいつも面倒臭いことで)
33: ◆DPehMNPNeE:2012/8/21(火) 12:44:43 ID:T7G1cXLFiQ
途中、いつもの癖で購買でパンを買いそうになるも、珍しく弁当があった事を思い出して会計の前に思い留まった。
他には特に問題には出くわさず、多少の気分転換にもなって想像していたよりも気分は良くなった。
正晴「ほれ、ただいまさん」
「ありがとうさん」
早速ストローを刺してミルクティーに手を付ける。案外無頓着なのか着衣は教室を出たときより更に乱れていた。想定外だ。
「なあ、正晴君よ。君の机の辺りから生臭い臭いがするのだが」
正晴「生臭い?なんだ?」
心当たりと言えば弁当ぐらいか。嫌な予感しかしない。
机の横に引っ掛けていた鞄を慎重にまさぐる。異物はない。と、なるとやはり臭いは弁当か。
思い切って指の端に捕まえた包みを引っこ抜く。鞄の中にあるのは弁当だけ。既に強く臭いは感じられ、もはや疑う予知はない。
正晴「うわ」
「なんか垂れてる」
汁に触らないよう包みを開けて、蓋を取る。むわっと臭気が吹き出して軽く吐き気がする。食欲なんて明後日の空だ。
正晴「生物をそのまま弁当に入れやがって。ガキでもヤバいってわかるだろうがよ」
"生"のマグロが"生"温かいご飯の上に鎮座していた。区切る容器なんて上等な配慮の入り込む余地はなく、ご飯自身や煮物類が醤油の海に一体化した混沌を形作る。
トイレに流したいと本気で思いつつ、そっと包みを元に戻した。
34: 不人気さん程かわいいと思うこの頃。さらば ◆DPehMNPNeE:2012/8/21(火) 12:48:07 ID:T7G1cXLFiQ
待ちに待った日曜日、今までに過剰な程準備した物の多くを悩み、選び、切り捨てて行く作業が楽しい。
天気は晴れ、予定通り服は制服、葦原學園のものだ。鞄はどのサイズ?着替えを考慮するなら大きいの、でも大きいのは見映えが悪い。
ワンサイズ小さい鞄を手にしてしばし容量と相談。入るには入るけど、パンパンに詰めたらやっぱり見映えが悪い。
がさばる着替えは諦めるか。日帰りだし、最悪下着ぐらいなら簡単に買える。そうと決まれば小物類を詰めて荷は完成。
おっと。忘れないように、一応最低限の化粧品も。なんとなくだけど、こだわらなければいけない気がするから。
時間は余裕がある。机の上に置いた腕時計を確認、その時計も上着に袖を通してから着用。
些か早いが部屋を出よう。目的地は慣れない場所だ。乗り継ぐ電車も多い。
嶺(日曜だし、今なら通勤時間からはズレるよね)
最後の仕上げに送られてきたカードを社員証のように紐を通して首に掛ける。この場合だと、生徒証か。
玄関にあるのは履き慣れた靴とイメージに合った靴。今日履く靴はとうに決まっていた。後者だ。ここまで来て妥協は許されない。
本気である。イベント、冗談のようなイベントだからこそ手は抜かない。なにより、今の俺は一番好きな、あのハバキ様を背負っているのだから。
流石に靴のサイズまではハバキ様と一致しないので普通に男物なのが非常に残念で心残りではあるが、致し方ない。
これで全て纏まった。背筋をピンと伸ばし、出立。太陽の下、かつてなく胸が踊っていた。
35: ◆DPehMNPNeE:2012/8/23(木) 18:24:58 ID:Wi9FGxYElM
146:摩周◆MASYUuLIKE:2012/5/27(日) 5:32:18 ID:※※※※※※※※
噂の平面旅行、体験してきます。葦原學園の制服で璞浜を闊歩している人がいたらそれはきっと私ですw
147:名無しの探究者:2012/5/27(日)
5:46:31 ID:※※※※※※※※
久々に早起きしたらなんだか面白いものを見た
148:名無しの探究者:2012/5/27(日)
5:52:55 ID:※※※※※※※※
え、あれってマジだったん
149:名無しの探究者:2012/5/27(日)
6:11:25 ID:※※※※※※※※
>>147
こら、いくら相手が摩周さんだからって面白いもの扱いはいけません!人間ですよ(変態だけど)
150:名無しの探究者:2012/5/27(日)
6:19:22 ID:※※※※※※※※
摩周と旅行に行きたい
151:名無しの探究者:2012/5/27(日)
6:31:35 ID:※※※※※※※※
>>150
璞浜ですねわかります。
152:名無しの探究者:2012/5/27(日)
6:37:01 ID:※※※※※※※※
〜と旅行に行きたいの汎用性の高さww
153:名無しの探究者:2012/5/27(日)
6:42:08 ID:※※※※※※※※
いいなー。俺なんか休日出勤だよ。あ、リアル摩周見たら誰か写メ撮って置いてうp
154:神楽◆592HaRAM26:2012/5/27(日)
6:59:44 ID:※※※※※※※※
げえっ。神楽ちゃん流れに乗り遅れたでござる。ちきしょーめ。今日は一日ネトゲ廃人してやる!
155:名無しの探究者:2012/5/27(日)
7:00:00 ID:※※※※※※※※
ハァハァ、神楽たん。白鯖で待ってるよ・・・うっ・・・
36: ◆DPehMNPNeE:2012/8/23(木) 18:27:19 ID:Wi9FGxYElM
掲示板にも書いたように、平面旅行のイベント会場は璞浜だ。ありとあらゆる無茶が詰め込まれた街には相応しい。
科学者、発明家からベンチャー企業に遊園地。カルト宗教にマルチまで。他人事なら面白いことに満ちた街。その特異性から観光客というか、見物人は絶えない。
反面犯罪率は高く、治安が悪いと認知されてはいるものの、殺人などの凶悪事件だけはまったくと言っていい程起こらない不思議な街でもある。
中には都市伝説よろしく、隠蔽されていて科学実験の材料に・・・などと語られたり。もっとも語っているのも怪しげな占い師だったりするのだが。
なんにせよ、胡乱な噂がされる土壌はバッチリできていて。だからこそ信じていないにも関わらず、休みを潰してわざわざ今日訪れることにしたのだ。
で、参加するお祭りの首謀者、四ツ谷重工と言えば。
一応調べてみたけれど、検索に名前すら引っ掛からない。このご時世、ネットで検索して見つからないなんてほぼ実在しないと見ていい。
有名な会社をもじったと思われる名前は想像力を掻き立てられる。おそらく、元となった有名会社は、数多くのフィクション作品に置ける陰謀の元締のモチーフを勤める老舗だ。
事実、規模はとてつもなく巨大で、名前をもじるだけでもかなりの勇気が必要だったろう。ネタとして本気の程が窺える。
参加者の身としては、責任者のクビが飛ばされないよう祈るのみだ。近年稀に見るお祭りの幕がそれではあまりにも後味が悪い。
空気を読んでくれよ、大企業さん。
田舎特有の電車の待ち時間を消化して、時間つぶしは終わる。切りよくやってきた電車に乗り込んだ。
37: ◆DPehMNPNeE:2012/8/23(木) 18:30:11 ID:Wi9FGxYElM
璞浜に近付くにつれ、人が少しずつ増えて行く。そのうち席も埋まってしまうだろう。乗り換えが早いか、埋まるのが早いか。
幼い頃覚えた近くの駅の名前は出尽くして。背景は田園風景や山から住宅街やビルに移り変わる。
電車に乗るのも久しぶりだ。自身の行動範囲の狭さを思い知る。知らない、慣れない場所は気が引けるのだ。
突如。母が怒り、嘆くときの枕言葉が脳裏に浮かぶ。
GREAT-MOTHER「なまじなんでも熟す性格が災いして凝り固まった」
いまいち意味がわからない。いつか実感する日が来るのだろうか。
溜め息が一つ。幸せが逃げる。幸せってなにさ、不幸なら分かりやすいのに。車窓の一点を眺めて他愛もないことを考える時間は短くも長くも感じる。時間感覚が無くなる。
どれだけの間そうしていたか。意識の外から、不意に声を掛けられた。
女「すみませーん。その格好、葦原學園シリーズのハバキ様ですよね?」
やや過剰に付けられたアクセントに眉を潜める。わざとらしいのは嫌いだ。半ばげんなりとしながら、声の主に振り向いた。
女「あ、やっぱり。正面からだとより似てるー」
嶺「こんにちは。お知り合いだったかな」
まさか、掲示板の人間?とりあえずそれっぽく応対する。女を見ると、上下共にやけに厚着をしていて、なんだか毒気を抜かれた。
女「服装、気になりますか?お互い目立ちますね」
ごく自然に、ちゃっかりと向かいに座る辺り、奴は強者だ。上手には下手に逆らわない方が無難、と体内の警報が鳴っていた。
38: ◆DPehMNPNeE:2012/8/23(木) 18:34:28 ID:Wi9FGxYElM
多分これから遅くなるよ!申し訳ありませぬ。前の長編作品はもっと丁寧にやるべきだったと後悔したので、今回こそは・・・頑張ろ。
39: ◆DPehMNPNeE:2012/8/26(日) 04:52:53 ID:yX4GGgEJXQ
女「申し遅れました。私、鶴田カメコと申します。鶴は千年亀は万年、いやあ、縁起がいいですねえ」
持ちネタなのだろうか、陽気に自己紹介をする女はノリにノっている。背に負ったリュックサックからカメラを取り出し、"カメコ"で〜す!などとVサインをしていた。
嶺「随分と古めかしいカメラだね」
黙っているのも難なので、とりあえず話を振ってみる。
カメコ「父が無類のカメラ好きでして、譲り受けました。名前はアサヒペンタックスSP。こんな見た目ですけれど、まだまだ現役ですよ」
嶺「自分だったら、なんだか壊しそうで気を遣いそうだ」
曖昧な相槌しか打てなくて、情けない。畑違いの話なので仕方なくはあるのだけれど。
カメコ「あはは、必要以上に手入れしてるせいか、元気元気で頼もしい子です、この子は」
カメコ「おっと、話が明後日の方に。その格好、コスプレですよね。何かイベントでもありましたっけ?」
中々、説明し辛い質問だ。そもそも平面旅行とハバキ様の格好はイコールで結ばれる事象とは言えない。
悟ってくれる事を期待して首に掛けたカードを見せてみる。この時間、あの格好、同類の可能性は高い。
嶺「これで理解できるかな」
カードに視線を向けると、カメコは笑う。そして、再びリュックサックをまさぐり、同色のカードを私のカードに合わせてきた。
嶺「お仲間さんか」
カメコ「そのようです」
40: ◆DPehMNPNeE:2012/8/26(日) 04:55:07 ID:yX4GGgEJXQ
カメコ「実は最初からそうじゃないかと疑ってたんです。あなた、いやハバキ様?モノ凄く気合い入っていたから」
そうだ、名乗り返していなかった。以前冗談で作った名刺を渡す。ハバキ様親衛隊隊長北峰嶺、と黒字であっさり目に印刷された味気ない名刺だ。
カメコ「あ、はい。どうもご親切に・・・・・・」
カメコ「うはあ、なんて言ったらいいか。いや、うはあ」
カメコ「あの、もしかしてもしかしてなんですけど。その一張羅、既製品じゃなかったりします?」
いちいちオーバーリアクションなのも慣れてくれば面白い。揺れ動く武骨なカメラも滑稽に映り、自然と笑みが零れる。
嶺「ボタンと襟周り以外は手作り。あんまり慣れないうちに作ったものだから、アラも目立つかな」
カメコ「流石適合率72%・・・・・・格が違った」
自らのとカードを比べて大仰に嘆く。カメコのカードは56と刻印されていた。やはり、アレはパーセンテージを示すものらしい。
不意に会話が途切れたと思ったら、カメコは向かいに移動し、車窓から見を乗り出してシャッターを切り始めた。
嶺「ちょっと、ちょっと危ないって。樹が、ぶつかるから」
思わず素が出る。下手したら窓から落っこちるぞ。恥も外聞もかなぐり捨てて、カメコの体を引っ張り上げる。
カメコ「離して下さい!今オニヤンマがいたんですよ、それもこんな場所に。シャッターチャンスは一瞬しかないんですうー!」
剣幕に押されて手を離すと、苦笑いしているおばさんと目があった。互いの表情は愛想笑いに変わった。
41: 眠い、眠いのよん。さらばさらば ◆DPehMNPNeE:2012/8/26(日) 04:57:38 ID:yX4GGgEJXQ
都内を一周する路線に乗り換え、迷路のように複雑な地下鉄に乗り換え、地方線に乗り換えて璞浜にたどり着く。
厚着の服は体を守る為のものだったのだと気付くにはそう時間は掛からなかった。先程のような件は枚挙に暇がなく、その度に車掌さんの対応は私がする事になった。
嶺「結構時間があるな」
カメコ「ですねー、とりあえず下見しても時間単位で間が空く感じ」
前衛芸術のような駅前、ここならば私達の服装も違和感となることはないだろう。135゜に傾く合歓の木に比べたらどうってことはない。
嶺「喫茶店でも入ろうか。同じく早く来過ぎた人がいるかもしれない」
駅の並びに鎮座する璞浜唯一の喫茶店。璞浜なら、何処に店があっても客足が絶える事はなさそうだが、大抵は早晩潰れる。
そんな中生き延びたこの喫茶店は重宝されると同時に、よくメディアやミーハーの的にされている。
カメコ「そうですね。もっと遭遇するかなと思ってたのに拍子抜けな気分ですし、私」
言うが早いか足を向けた。行動派な人間は話が早い(byハバキ様)
チリーン、と扉の鈴を鳴らして入店。中では髭が立派な赤髪の老紳士が応対の準備をしていた。
老紳士「よくぞいらっしゃいました。喫茶フルールで御座います。御席は如何なさいましょう」
視線でカメコと相談する。彼女は特にこだわらないとのこと。ならば、こちらのハバキ様イメージを優先させて頂く。
嶺「カウンター席で頼む。空いているなら、奥から二番目で」
42: 1レスだけ。うがぁー ◆DPehMNPNeE:2012/8/28(火) 06:38:58 ID:M.eYQ7hfPE
滞りなく席への案内を受け、風情を感じるメニューを一人ずつ手渡しで渡される。
カメコ「観葉植物が丁寧に手入れされてますね」
嶺「分かるのかい」
門外漢の私にとっては差異がいまいち感じ取れない。そもそも、背景の一部としてしか認識していない時点で論外と思わなくもない。
カメコ「ええ、専門家ではないので上手く説明はできないのですけど、確かに」
嶺「そういうものか」
あれだけ写真に固執していれば自然と観察力が養われるのかもしれない。試しにメニューを畳み、植物を観察してみる。
嶺(アレ、変な動きしてないか!?)
窓際を平行移動している。小刻みに、速く。視線を向けるも、既にカメコはメニューにかじりついていて宛てにならない。
嶺「フルールはサンドイッチが美味しいらしい。雑誌やら口コミやらで話題になっていた」
話しながら植物に近付く。子供染みたいたずらに笑みを堪えて。
カメコ「えー、でもお菓子みたいなのばっかりですよ。これから戦場に向かうのに甘味て、わいわいがやがや学生の遊びならまだしも」
変なこだわりを持っているようだ。妙に漢らしい。きっと、恋人との初めての外食でも躊躇なく居酒屋やファストフードに入る人種だ。
嶺「名物を食べるのも醍醐味だと、そう思うよ」
カメコ「そうまで言われちゃ・・・・・・。食糧は多少は持参していますし、いいかあ」
嶺「それがいい。たまには騙されてみるのも悪くないさ」
43: ◆DPehMNPNeE:2012/8/31(金) 00:05:30 ID:s.U8wIemjU
嶺「動く植物とは面妖な。どれ、調べてみるか」
カメコ「はいい?何か言いましたー?」
まだカメコは悩んでいるようだ。それでも律義に返事を返してくれるのはありがたいことだが。
乱暴にならないように鉢に手を掛ける。すると、観念したのか鉢が乗っていた低い壁の向こうから男がひょっこり顔を出した。
男「なはははは、付き合ってくれてありがとうよ。暇で暇でなあ」
カメコ「暇なら腕立てでもしてればいいんですよ、うん」
私と勘違いしているのだろう、中々乱暴な意見をぶつけてきた。少なくとも眼前の男は体格から考えて、日常的に体を鍛えているようなのであながち見当ハズレでもないか。
男「面白い連れだ。いやあ、驚いた。腕立ては後でするから、まずは挨拶させてくれまいか」
男「俺の名は東郷。仲間内ではデュークと呼ばれている」
暗にデュークと呼べと言われた気がする。どうやら、今回は押しが強い人ばかりに縁があるようだ。
嶺「よろしくお願いします。あー、その、デュークさん」
言い終わる前にそれでいい、と肩を強く叩かれて少し咳込む。体重差があるんだから配慮をして欲しい。
カメコ「うちのお嬢様になんてことを」
デューク「む!貴様、俺の後ろに立つな」
小芝居が始まってしまった。自分のポジショニングに若干の不満を感じつつ、カメコの分も勝手に注文させて貰う。
44: 頑張らんと、ふぁいとー。さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/8/31(金) 00:07:58 ID:s.U8wIemjU
デューク「実は徹夜組なのだ」
カードを胸ポケットから出して重々しくデュークは言葉を紡ぐ。カードには39と刻印されていた。
老紳士「長居するばかりの渋いお客様でほとほと困り果てている次第です。お待たせ致しました、こちら注文のランチセットAとBで御座います」
会話の間に自然に入り込んだ老紳士の技に内心で感嘆の声を挙げる。
カメコ「大体予想はしていました」
これは徹夜というではなくイベント仲間という意味だろう。まず徹夜組などと考えるハズもない。
デューク「ん、俺渋いって?」
老紳士の溜め息が聞こえた。後から「処置なし」との声も。同意である。
向かいにある肘と肘の隙間にランチセットAを押し込んで、こちらにBを置く場所を確保。老紳士の会釈に会釈で返した。お互い大変ですね、と視線もついでに送る。
嶺「時間は待つと長く感じる」
カメコ「食べ終わったら散策しますー?」
カメコも大分砕けた話し方になった。しかし、会って間もない男相手でこんなに無防備で大丈夫なのだろうか。
何はともあれ、思惑通りの流れになった。このままデュークも一緒に連れて行けば老紳士の心労もいくらか軽減されるだろう。
なんだかデュークに似た人をよく知っているような気がしてならない。ほら、ええと、学校の隣の席とかで。
頭が下がる。アレと何時間もとは。失礼にも程がある表現と想像をしながら食事を行うと砂を噛むようだった。
45: 名無しさん@読者の声:2012/8/31(金) 00:55:05 ID:Zq6czno8R2
自分は、今後も期待♪
っ‐CGL‐
46: ◆DPehMNPNeE:2012/9/1(土) 23:51:10 ID:Qp9ByFJ.6g
デューク「この街なら俺がよく知っている。案内は任せるがいい」
会計を済ませ、開口一番に出た言葉がこれだ。胸の隅に疑念はあったものの、そのまま話を促す。
嶺「小一時間程時間を潰すのにオススメの場所はありますかね」
デューク「健全なものなら、本屋かゲーセンだろう。ゴミ拾いのボランティアは事前に登録しなくてはいけないから、今回は無理だな」
怪訝な顔をしたのに気付いたのか、気付いていないのか。説明が続く。
デューク「去年、ボランティアルートの森林公園で大量の"白い粉"が発見されるという事件があった。まあ、調べてみると片栗粉で愉快犯の仕業だったとオチが付いた」
笑い話が一々洒落になっていない。広域指定暴力団のお膝元で"白い粉"、一歩間違えば命に関わるのではなかろうか。
デューク「実際五年前に本物の"白い粉"が見つかったからなあ。そりゃ、信じてしまうよ。・・・・・・こんな感じで毎年何かしら起こるのさ」
嶺「何段オチですか!?笑えませんよ」
思わず声を上げてしまう。いかん、イメージが崩れる。今日の私はハバキ様ハバキ様ハバキ様。
カメコ「ちなみに、不健全なものは」
デューク「カルト宗教乗り込み、ネズミ講のサクラ、裏治験、闇賭博とかかな」
指折り数えるデューク。彼が「もちろん俺はやったことないけどな」と笑ったところでようやく身体が弛緩した。
嶺「健全なのにしましょう。一時間で帰って来られる気がしません」
問題点が違うなどという正論は何処かへ飛んで行った。
47: 期待に応えられるよう、精進致す次第であります、はい。さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/9/1(土) 23:53:20 ID:Qp9ByFJ.6g
悩む時間がもったいない。カメコ発案の二者択一あみだくじで行き先は本屋とゲームセンターから後者に決まり、国内最大と目されるゲームセンターに入場することになった。
嶺「はいはい、夢中になりすぎて時間を忘れないことー」
気分はまるで保護者だ。三人の中ではおそらく自分が年少なのに。お金とメダルを交換するカメコの背を見て思う。
デュークは似合いもしないダンスゲームでノリノリだ。開始間もなくで観客が居ることからして、技量は高いらしい。
見事に個人主義な面子の仲間達。でも、やはり自分も個人主義であって。格ゲーの筐体に自然と張り付いていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・。
歯ごたえがない。一部ゲーマーに聖地とまで言われているのは噂でしかなかったのか。連勝して席を独占してしまい、なんとなく居心地悪い。
魅せ技の奥義を放って終幕。これで上出来だろう。一段落入れようと息を吐いたとき、肩に手が掛かった。
デューク「凄いな、やるじゃない。負けなしかー。キリも良さそうだし俺と一戦だけしようぜ」
時計を見ればそろそろ時間だった。何だかんだで私も楽しんでいたらしい。折角なのでお誘いも気分良く受けることにした。
デューク「ライオンか執事、どうするかなー」
嶺「確かミリタリーがお好きでしたよね?執事さん、元軍属だしいいんじゃないかと」
48: 運動してぇ・・・さらば ◆DPehMNPNeE:2012/9/4(火) 00:18:29 ID:NrJvnvsrcI
甲高い声の男「これぞ我等が望んだ光である」
通る声で、厳かに語りたい様子と見て取れるが、如何せん地声が地声だ。耳を抑えている人がちらほらといる。
甲高い声の男「新たなる扉の先へ向かう、先駆者となる君達に心から祝福と称賛を贈ろう。君達は宝だ、希望だ、灯だ」
甲高い声の男「私は、私でさえ諸君達の立場であったら、今回の挙には疑いを持ったであろう。だからこそ存分に楽しんでいって頂きたい、私が返せる全ての礼を込めて」
ぱらぱらと拍手が上がる。鷹揚に応える檀上の人物が主催者の雇われ、形式上の責任者といった立場になる朝香清文主任だ。
胸に輝くネームプレートには流星がこしらえてあり大変派手な為、名前はすんなりと頭に入った。
逸般人「せんせー、その眼鏡何処で売ってるんですか?」
朝香「ンフ、残念ながらコレは市販されていないのだよ。漢なら何かしらのこだわりを持つと宜しいですね」
檀上にいかにもステレオタイプのオタク風情の中年男性が上る。質問の主だ。やがて、質問に応じた朝香の眼鏡を勝手に触って笑みを浮かべ始めた。
朝香「往年の特撮ヒーローをイメージした品です。馴染むように作って貰うまでに大分苦労しました」
ニコニコと朝香が営業スマイルを被る中、眼鏡は終には外され、中年男性がその眼鏡を掛けてVサインを掲げてしまった。
逸般人「こ、れ、は、タマラン。いやあ、やりますなお主」
一触即発の雰囲気。パァンと軽い音が響き渡り、中年男性は鈍い音を立てながら前面に倒れた。
49: ゼーット!!サラバダーZ ◆DPehMNPNeE:2012/9/6(木) 07:39:49 ID:/PTBg9h5qI
更に混迷へと舵は切られる。急に視界が失われた。停電だ。袖からはスモークが噴出し、観覧者達の混乱は極致に達した。
程なく、瞬きが如くぱちぱちと点滅を繰り返した後に照明が復旧。檀上、スモークの陰にうっすらと人影が滲み出ている。
そして、先刻朝香が言及した往年の特撮ヒーロー。彼が現れるときのテーマソングが大音量で流れ出した。いや、生で歌われている。
仮面の男「この声、もしかして倒れた奴の声か」
黒タイツ「うむ、そのように感じるな」
安心と共に疑念が生まれた。多分コレは最初から想定内なのだろう。しかし、目的は一体何だ。
アニキ「ゼーット!!」
全ての人間が瞬時にどよめく。あまりにも耳に馴染んだ声、今この場にいる者で気付かないような人間はいまい。
世紀末救世主「アニキ・・・・・・」
セーラー服美熟女戦士「アニキだわ!?」
腕にフリスビーを付けた少年「アニキ!!!」
紙吹雪を引き連れて空からアニキが舞い降りた。マイクもなしに歌に入り、聞く者は声の張りにただただ圧倒されるばかりだ。
流石はアニソンの帝王と呼ばれる男である。抜群の知名度と歌唱力は伊達ではないという事か。
アフロ「このイベント、伊達じゃない」
サビに入り、熱が最高潮に高まった頃。スモークが晴れて中年男性扮する特撮ヒーローとアニキが肩を組む姿があらわになり、見事にサプライズは成功で始まった。
アニキ「ゼーット!!」
50: ◆DPehMNPNeE:2012/9/9(日) 06:16:17 ID:ugbHSBCN/o
カメコ「最初は新興宗教か何かと思ってたら、すんごい演出ですねー、ねー」
デューク「あの倒れたの、前に自衛隊ドラマに端役で出てたぞ」
失礼にも指を指す二人。オクターブ上がった声は音響と、文字通りの爆発音で掻き消される。
嶺「役者さんなんですかね。眼鏡の、朝香さんもアニメのテロップで見たような」
デューク「ああ、色々と考えてあるようだ。場所も、なんでこんなところでと訝しんでいたが、簡易ライブをやるなら納得だな」
三桁半ばの収容数を誇る、この璞浜ブリッジホールは。夜間に映画上映を行われたり、劇団の公演、識者の講演会など多目的に使われている。
それはもちろん、コンサートホールやライブもしかりだ。デュークはもっとアングラなものを想像していたのだろうか。
デューク「ハバキ、お前適合率70パー越えだったか。高い奴から順に呼ばれるらしいから、ゆっくりはしてられないな」
聴覚にあまり期待できないのがわかっているらしく、デュークの言った通りの内容のプレートを掲げた係員が大勢見受けられた。
カメコ「うわ、係員ショッカーだ。地獄大使までいる!」
デューク「地獄大使?あのゴキブリみたいなのか」
嶺「アニキのライブを途中で抜けるのか・・・・・・」
わりとガチで凹んだ。テレビでよく放映される話題性偏重のものとは一線を隔すラインナップのメドレーは正直惜しい。何より今回は生なのだ。
アニキ「ゼーット!!」
51: 両手に足る、両手で足りる、両手で足る、両手に足りる。どの表現が正しいのか・・・まったくわからんwさらばー ◆DPehMNPNeE:2012/9/9(日) 06:29:44 ID:ugbHSBCN/o
係員「北峰様ー、北峰様はいらっしゃいますか!?」
音響に負けず、張り上げた声で問われる。そう多くはない苗字であるし、自分の可能性は高い。
顔を向けて確認したプレートにも、ご丁寧に72%の北峰様へ、と可愛らしいキャラクターが呼びかけるよう描かれていた。まず間違いないだろう。
係員「僥倖だ、すぐに見つかりましたね」
首に掛けたカードを認識して安堵する係員。カメコが後ろで"元帥"と呟いた。元帥、姿が姿なだけに不気味だ。
自宅警備隊「おい、貴様。嫁の顔を表側にしたら埃がついてしまうではないか」
元帥「貴方のご高説、わからないでもない。しかし、嫁の顔を裏側にしてしまうと私の体で嫁が汚れてしまうのです」
自宅警備隊「なんと申し訳ない。某、自宅以外の礼儀に疎かったようだ。嫁への愛、痛い程に伝わり申した」
とことんおかしな人間しかいない場所である。変人共はプレートを交換仕合い、一方は持ち場に戻って行く。
自宅警備隊が去った後、隣のビルへ向かう際に元帥は「知ってるが、お前の態度が気に入らない」と描かれたプレートを掲げていた。
大企業と見紛う巨大なビルの中をカッカッと音を立てて歩くと、空いたスペースの広さと自身の矮小さに切なくなってくる。
無言でエレベーターで上へと昇り、目的の階層に降りる。窓からはさっきまでいたホールが見え、特撮風の爆発音はここまで響いていた。
入るはグリーンライトの部屋。やけにSFチックな見かけはトンデモイベントに相応しい。感慨に至って足を止めたせいか、両手に足る視線が刺さって痛かった。
52: ◆DPehMNPNeE:2012/9/12(水) 08:45:47 ID:AOSB44QGPA
使用方法は至ってカンタン!
あちら側の人物、筋肉質なナイスガイが深夜の通販番組のノリで弾けるように語り出す。何故だか自転車型のダイエット機具に跨がり、彼はご機嫌でぶっ飛んでいた。
内容は例に漏れず、簡潔かつ明快だ。ついでに、短い会話の途中でプロテインを飲みダンベルを指先で廻すサービス付き。お前、体鍛える必要ないだろ、と言わせて頂きたい。
肝心の内容といえば。人数分より少し多く並んでいる、SFでたまに登場するコールドスリープに似た装置。部屋の薄暗い雰囲気も手伝い、棺桶を連想されるモノ。
その中に入り、仮眠を摂るだけ。以上。爽やかな笑顔で語り切ったナイスガイは輝く歯を見せ付けて素早く去って行った。
え、セルフサービス?微妙な雰囲気の中少しずつ参加者が棺桶に近付く。接触。けれど、滑らかな表面に取っ手があるでもなく、入り方が分からない。
下手に扱う訳にもいかず、途方に暮れ始めたとき。部屋の角のスピーカーから朝香の声で助け舟が入った。
朝香「諸君、大変申し訳ない。こちらの手違いで説明に不足があった。今度のイベントの華"ダイヴァー"の搭乗は音声認識である」
朝香「前列は指ぱっちん、後列はテックセッターが開閉コマンドだ。では、健闘を祈る」
結局セルフサービスは変わらないようだ。人手が足りないのだろうか。テックセッターと熱い叫びが寂しい一室でこだました。
上方に開いた"ダイヴァー"の蓋は固定されていて、搭乗の後に自動で閉じる造りになっていた。
流れを視認してから私も搭乗する。内部は案外柔らかい。これなら寝違えることもなさそうだ。
程なく入眠し。こうして未だかつて前例のないトンデモイベント、二次元旅行は静かに開始された。
53: 葦原學園探求会 ◆DPehMNPNeE:2012/9/12(水) 08:47:43 ID:AOSB44QGPA
風が冷たくなり始めた九月下旬。私は私立葦原學園の校門をくぐる。庭では、時期外れの新たな来客に、枯れた葉は惜しんで泣く風で、幹は拙いお辞儀で歓迎をしてくれた。
長く続く道の果てに鎮座する、古めかしくも頑強な建築物。眼を惹く時代の重みは褪めた心にも微かに響く。
戦前に建てられた學舎が逞しく残っている。これはこの學園が祝福されている証である。と、余計な台詞で台なしにしたのは担任教諭だ。情熱的なのは好ましいとも言えるが。
私を先導する教諭の鼻息荒くまくし立てる演説は止まらない。早回しに時系列は進み、世紀が階段飛ばしになる。
教諭の話では、葦原學園は俗に言うお嬢様校で、それでいて土地は辺境。誇りと現実の間、屈折した生徒が多いそうだ。
ふと閃き、私は今自分の想像した文の尻に教諭も、と付け加える。生の経験は早くも役に立ったようだ。學生の糧になったのなら教諭も本望だろう。
噛み合わなくてもご機嫌な二人。なんて素敵なのでしょう。教諭の年齢にそぐわない鼈甲の眼鏡が太陽光を反射した。
私は咄嗟に手で顔を遮蔽する。その姿は傍から見ればお嬢様に見えるだろうか、それとも黒い腹の底が滲み出ているか。
無駄な事と理解しつつも頭から離れない。こんなのでも形だけは女だ。文字通り面の皮一枚で人生が変わる。
気付けば怪訝な表情を浮かべている教諭が扉越しに目の前にいた。彼女の濃いグロスの艶めく唇が言葉を放つ前に取り繕う。
楚々とした立ち振る舞いを心掛けていたつもりが早くも崩れたか。所詮鍍金は鍍金だ。金ではない。
厚塗りの鍍金を塗り直し、ぶれた調子を元に戻す。溜め息をつき、まるで困ったものを見るかのような教諭の顔は優しかった。
54: テックセッタァァアアア!!!さらばー 葦原學園探求会 ◆DPehMNPNeE:2012/9/12(水) 08:50:39 ID:AOSB44QGPA
重い扉の先、建物の中に入ってからは退屈窮まりなかった。常に広く大きい道を進むだけ。景色も大して代わり映えはしない。
作り物染みた綺麗な通路の圧迫感には何時になったら慣れる事が出来るのだろう。外圧に潰されてひしゃげる空き缶を連想し、身震いをしてしまう。
この學舎内で些か興味を惹く点を挙げるなら、各部屋に名札が付いていないのが私にとっては後々困りものになるかもしれない。
昔、華族の屋敷だった名残で、隠された通路があるとも噂されている學舎は道に迷う要素が多分にあり、初見では迷うどころか外出すら行えなかった生徒すらいる。
その仲間入りは勘弁願いたいものだ。後ろ向き後ろ向きへと気分が落ちる感覚を自覚しても止められず、なだらかに降下。なんとも情けない私。
意図せず聞こえた伸びやかな声。爽やかな風が如く緩やかに流れる。今通り過ぎた部屋は職員室か。それとも用務員室か。
立ち止まり、一際豪奢な扉の前で軽く身嗜みを整える教諭。察して私も手鏡を頼りに手短に整える。
新しい制服の肌触り、微かに浮かぶ過去。全て割り切って押し込めていても、今も昔も変わらずにスペースは取ったままだ。
不要な物を掻き集めた塊。そこらの塵芥と違って捨てる事も出来やしない。不良品ではないのか。
いけないいけない。おそらく、此処は學長室。これまで以上に気を張らねば。気持ちを切り替えて顔を上げる。
人の気も知らず、善意の励ましの笑顔が降る。有り難くも重い。これ以上の荷物を私は必要としない。
教諭が丁寧にノックをする。軽い音が耳に響く。それは新たな學園生活の始まりを告げる鐘の音のように思えた。
55: ◆DPehMNPNeE:2012/9/14(金) 08:41:10 ID:TYL9yaVm3Q
間違いない。本物だ。葦原學園、そして所謂主人公の視点の白塚菖蒲。上羽教諭とそのセットと言える長口上。
原作と寸分違わない出来に感嘆の声を漏らした。本当に平面世界に二次元に葦原學園にダイブしたかのよう。
教室、自己紹介で自身の名前を黒板に書く菖蒲。名を刻む行為への躊躇、小さな伏線さえも捕まえて話は進む。下手なアニメよりよほど原作に忠実だ。
だが、欲は限りがない。趣味人ならば尚のこと。始め感動に胸を押さえた手は震え、俯瞰に過ぎない私の立場に不満を述べる。
平面旅行などと謳いながら、これでは観察じゃないか。
トンデモだの胡散臭いだの抜かしていたクセに。自重も自嘲も跳ね退けて胸の内からどんどん込み上げる。やめられない止まらない。
不自然な程に綺麗過ぎる學舎の壁をツーと指でなぞる菖蒲が映る。不安定で、破滅的で、強靭。菖蒲の裏の顔を表す嘲笑の瞬間。
感情がリンクされたみたいに私も嘲笑する。例えるなら溺れたときに近い感覚は果てしなく心地好い。今、私は確かに"ダイヴァー"だ。
好きな世界に飛び込んだ異邦人。想像した景色と多少の違いはあれど、後悔には至らない。むしろ愉快なぐらいである。
酔って判断能力は狂う。世界に。自分に。あれ?菖蒲の台詞と感情が私に。細く美しい指と透けた白い指が重なってぶれて。
扉を開く。
探求会に宛がわれた埃臭い一室。煤けた赤茶色の扉を興味本位で開いて、壊してしまう。
各キャラクターの視線を浴びながら硬直。本来ならオープニングが流れるタイミングで意識がぷつりと途絶えた。
56: ◆DPehMNPNeE:2012/9/14(金) 08:42:48 ID:TYL9yaVm3Q
262:摩周◆MASYUuLIKE:2012/5/28(月) 1:45:22 ID:※※※※※※※※
落ち着いたので報告を。
会場には50人ぐらい集まっていました。どうも来なかった方も多い模様。
流れとしては、寸劇で笑いを取った後イベント開催アニキ絶叫!各係員は怪しいコスプレをしていて順番で皆様ご案内。待ち時間はそうそうたる顔触れのライブ。最後の解散前にグッズ販売してたようだけど焼け石に水、大赤字確定かとw
肝心の平面旅行の内容は・・・その名に偽りなしでした。
263:名無しの探究者:2012/5/28(月)
1:58:47 ID:※※※※※※※※
乙ー。え、旅行、本当に?にわかには信じられん話だぜ。
264:摩周たんの探求者:2012/5/28(月)
2:00:03 ID:※※※※※※※※
そんな事はどうでもいい。ハバキ様のカッコした美人さんがおにゃのこと百合百合してたと有志の報告を受けている!真偽はいかに!!!
265:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:10:33 ID:※※※※※※※※
>>264
おいw名前ww
266:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:19:45 ID:※※※※※※※※
>>264
摩周は男のハズだが?
267:神楽◆592HaRAM26:2012/5/28(月)
2:29:22 ID:※※※※※※※※
お、今度はタイミングいいか?じゃじゃーん、有志参上!
怒りに任せて有休捩込んだはいいが、ヒマなんでスネークしたぜぇいV
268:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:01 ID:※※※※※※※※
お仕事大変で可哀相な神楽ちゃんペロペロ
57: ペロペロ さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/9/14(金) 08:44:55 ID:TYL9yaVm3Q
269:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:16 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ
270:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:18 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ
271:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:21 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ
272:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:24 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ
273:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:26 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ
274:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:28 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ
275:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:31 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ
276:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:38 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロおいしい
277:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:45 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ本当に
278:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:49 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ
279:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:55 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロペロペロペロペロペロペロ
280:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:37:15 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ。
ねえ、なんでお返事してくれないの?
58: ふぇぇ・・・あちゃまいたいよぅ・・・さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/9/15(土) 21:48:51 ID:TAGfDjF6ng
返レスを付ける前にリロード。このスレは話がよく飛ぶので必須の作業だ。スルーされることはないが、気を遣わせたり流れを澱ませるのはよろしくない。
嶺「・・・・・・!?」
なんだよ、おい。荒らしか?似たような文面の羅列に寒気を覚える。リロードする度にレスは増えて行き、やがては埋まった。
呆れた執念だ。多分、新スレを立てても同じ結末になると感じた。神楽には同情を禁じえない。
ブラウザを閉じて代わりにメーラーを開く。すると見慣れないアドレスからメールが二通来ていた。送り主も二人。
嶺「カメコとデュークかな」
アドレス交換の際、こちらは名刺を渡したのでPCのアドレスも知られたのだろう。
嶺「デュークやカメコは細かいところに気を回す人種じゃないと思ってたのだけれど」
宛先:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年5月27日20:00
送信者:ore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
添付ファイル:********
件名:お疲れ様でした
こちらデュークだ。
イベントお疲れ様。楽しんでたなあハバキ。また機会があればよろしく。
追伸、ライブのセットリストを添付して置いた。次回の物販まで悔しがるといいwwww
宛先:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年5月28日00:18
送信者:tsuru_kame@tempura.com
件名:慰労とオマケ
はいはいカメコでございますー。お疲れ、いやいやそりゃあお疲れですよね。お休みなさい。
今回のイベントで撮った写真が欲しければ個人情報を垂れ流すのだーケケケ
59: 風呂敷広げるのに時間掛かり過ぎてワロリンヌwさらばー ◆DPehMNPNeE:2012/9/17(月) 11:19:23 ID:r2Pqb0DRLw
デュークは定型文とスルーのどちらがダメージが大きいか。若干悩んだが、返事をしないのは性に合わないので定型文に決定。
カメコ何がなんだか。読む側で補完しなければ内容がいまいち分からない。
単純に考えるなら「イベントで写真を撮ったのですけど、宜しければ郵送しますので住所を教えて頂けませんか」となるだろうか。まったく、翻訳家の気分だ。
齟齬が有ってはいけないので問い質す方向で固める。これで返信の二通は完成だ。送信前に時間を見ると、いい加減夜中になっていたので今日は寝かせることにした。
宛先:神楽 yononaka_zeni@meatball.com
送信日時:2012年5月28日02:44
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
変なのにモテモテだったようで・・・・・・。明日には居なくなってるだろうさ、ドンマイww
忘れないように神楽には軽くフォローのメールを送って完了。奴は明日夜勤だから起きているハズだ。
PCをシャットダウンした後、い草の詰まった枕を引き寄せて横になる。
い草独特の香りと自分の匂いは興奮していた神経を宥めてくれた。そして、落ち着けば身体の重さが気になってくる。
慣れない場所への外出、初対面の人間との交流。やはり、疲れが溜まっていたのだ。睡魔がゆっくりと近付くのを感じた。
嶺(ああ、もう明日遅刻してもいいかな)
丸まっているタオルケットを足で引っ掛けて拾う。適当に広げて腹をカバーしたらそれでいい。知らず知らずに背中を丸めている自分が滑稽だ。
意識を手放す寸前。鳴の澄ました表情が浮かんだ。似合わないのだからやめておけ。唇だけで、受け取る相手のいない言葉を虚空に投げた。
60: ◆DPehMNPNeE:2012/9/18(火) 13:38:55 ID:WX15Mx6PPQ
特筆すべき事象の無い朝。疲れは興奮の名残で見事に消え去っている。
正晴「おはようさん」
嶺「おはよう」
正晴「なんか機嫌良さそうだな。いいことでもあったか」
馬鹿正直に話しても趣味の合わない友人には退屈なだけだろう。いかにも対応に困る姿が目に浮かぶ。
曖昧な返事を返すと、会話はそこで途切れて場を沈黙が支配した。
正晴「・・・・・・」
嶺「・・・・・・」
空気が重い。普段は軽薄に笑っている友人がいつになく真剣な表情だ。俺はなにかまずいことをしたのだろうか、心当たりはない。
正晴「なあ、俺と嶺は友達だよな。仲は良い方だ」
正晴「だけど親友ではない」
正晴「ずっと前から考えてたんだけど。お前、自分から話ふらないよな。聞かれなければ自分の話もしない」
ズシリとのしかかる言葉。親友だったらノータイムで正しい答えを導き出せたのかな。いや、そもそもこんなこと言われないか。
正晴「お前にとって俺や鳴はどんな存在なんだ。それがわからないんだ」
嶺「・・・・・・」
正晴「責めるつもりじゃない。ただ気になってさ。時間はいくら掛けてもいいから答えは必ずくれよな」
どんな存在、か。遠退く背中を見詰めて考えれば考える程、胸の奥が渦巻いて答えの出る気配は見えなかった。
61: ◆DPehMNPNeE:2012/9/18(火) 13:41:05 ID:WX15Mx6PPQ
宛先:カメコ tsuru_kame@tempura.com
送信日時:2012年5月28日19:32
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:お疲れ様でした。
お疲れ様でした。相変わらずお元気そうでなによりです。
個人情報を垂れ流す・・・。郵送に住所が必要ってことかな?恥ずかしいから写真は要りませんので悪しからず><
宛先:ハバキ様wwww ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年5月28日20:21
送信者:tsuru_kame@tempura.com
添付ファイル:********
件名:RE:お疲れ様でした。
なんだいツーカーで伝わると思ったのに('A`)
個人情報の件了解でありますゞちっ、掲示板でばらまくプランがおじゃんね・・・・・・。
あ、いい景色撮れたので添付しておきますねー。携帯のカメラじゃなければもっといい写真なんだけど残念、いやあ残念
宛先:摩周 ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年5月28日22:36
送信者:yononaka_zeni@meatball.com
件名:畜生畜生畜生www
ふざけるなこぬ野郎www今日もいるじゃねーかwwwもうマジ助けてwwwww
宛先:神楽 yononaka_zeni@meatball.com
送信日時:2012年5月28日23:11
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:ご愁傷様wwwwwww
アレ、まだいるのか。腹痛いwww
頑張れ。とりあえず俺、今日は掲示板見ないことにするから。
こぬ野郎とか焦り過ぎw
宛先:摩周 ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年5月28日23:19
送信者:yononaka_zeni@meatball.com
件名:笑えない
第三者はいいよな。あいつ昼にも居たんだぜ。神楽ちゃんちょっと本気で身の危険感じちゃう。
62: ワンと言えばツースリーサイレンの音高らかに さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/9/18(火) 13:43:46 ID:WX15Mx6PPQ
宛先:神楽 yononaka_zeni@meatball.com
送信日時:2012年5月28日23:30
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:RE:笑えない
とりあえず掲示板見るのはやめて仕事をしよう。
宛先:摩周 ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年5月28日23:36
送信者:yononaka_zeni@meatball.com
件名:RE:RE:笑えない
うげ、そこはさあ相談に乗るよ。とか言うべきタイミングじゃない?なんかドーラーイー
宛先:神楽 yononaka_zeni@meatball.com
送信日時:2012年5月28日23:43
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:RE:RE:RE:笑えない
メールに集中して事故でも起こされたら、そっちの方が問題だよ
ドライなのは元から。
宛先:摩周 ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年5月28日23:51
送信者:yononaka_zeni@meatball.com
件名:RE:RE:RE:RE:笑えない
優しいんだか、クールなんだか。しっかし、メールだとレスポンス遅いから時間くうな。
つか、なんかあった?
宛先:神楽 yononaka_zeni@meatball.com
送信日時:2012年5月28日23:58
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:RE:RE:RE:RE:RE:笑えない
神楽が仕事中でなければ話ぐらいは聞くから。メール、負担になって来た?
宛先:摩周 ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年5月28日00:27
送信者:yononaka_zeni@meatball.com
件名:ごめん立て込んだ
やっぱり何かあったろ?わざとらしいんだよ。たまにゃ、神楽お姉ちゃんに相談しなさいw
忙しくなってきたから、また今度!またなー
63: 名無しさん@読者の声:2012/9/19(水) 19:07:09 ID:brSrHsV4b2
支援
64: ◆DPehMNPNeE:2012/9/20(木) 14:18:28 ID:Fnqx.ghFpU
「あたしの嶺君が元気ないんだけど」
わざとらしく足元を蹴る動作をしながら口先を曲げる。作られた動作と詰まらない冗談は感情を逆なでするには充分過ぎた。
正晴「なら慰めにでも行けよ」
「・・・・・・マジでお冠?」
正晴「お冠」
頭の左右で指を立てる正晴。隣り合わせの悪友は人の悪い笑みを崩さない。綱渡りが好きな彼女には怒るだけ時間と労力の無駄だというものだ。
「そっかー」
正晴「そうだ」
「原因は?」
正晴「性格の不一致」
「夫婦か」
言った方も言われた方も吹き出した。おかげで正晴にも余裕ができたのか、多少表情が和らぐ。
正晴「実際そうなんだから仕方ない・・・茶化すなよ」
「もしかして難航してる?」
正晴「見たところ航路自体がない」
例えに乗っかって端的に述べた。鳴は嶺の眼中に入っていない。少なくとも恋愛対象には。
友人の範疇には入っているとは信じている。だが、鳴を、自分を、ぞんざいに扱っているような気がして言葉にできない不快感が募る。
正晴「あいつ自己完結しすぎなんだよ。話し掛けられたから話す、こういうときこうするのが普通だからする」
65: 支援ありがとう、これからもハッピーうれピーよろピくねー さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/9/20(木) 14:22:11 ID:Fnqx.ghFpU
正晴「そんなんじゃ、俺達のいる意味ないだろ」
「嶺君は嶺君なりに誠実だよ、みんなと形が違うだけで」
恐ろしい程に真っ直ぐな瞳。優しい口調で宥める発言のその内容は距離を示すようにしか思えなくて、共感からは最も遠く思えた。
正晴「怖いなお前」
「久しぶりに言われたよソレ」
正晴「心配になるからやめろよその瞳」
作られたモノの中でただ一つの天然物。黒く深い瞳はいつも不意に訪れる。
今まで瞳について触れる人間がいないという事は、見せる人が限られているのだろうか。それともただの正晴の思い込みか。
「なんでさ、普段通りっしょ」
正晴「お前、今日はもう休め顔色がよくない」
「嫌だ」
正晴「言って聞く奴ではない、か」
手足を伸ばして息を吐く。お節介な性分も抑えるべきか。いつも結果がついて来る訳でもないのだから。
「そうそう、だから正晴なんかと友達になれるんだよねえ」
「めんどくさい人大好きでしょ?」
正晴「知らん。たまたま周りに面倒な奴がいるだけだ」
キャッキャと喜ぶ姿を眺める。はたして彼女は心から喜んでいるのか。
そして彼女がスカートのポケットからチラシを取り出してメモを取り始めたときに「ああ、嶺と同じだ」と思いすとんと落ち着いた。
66: ◆DPehMNPNeE:2012/9/21(金) 17:33:10 ID:2GBMj/wAFM
時折、窓から花壇を眺めていた。お行儀良く並ぶ花と花の群れ。隅で萎れた花が隣の花に寄り添っていた。この間違った風景を仲睦まじく思えたのはいつ頃までか。
鳴(私と嶺みたいだ)
弱い花が背筋を伸ばした真っ直ぐな花に寄生し、不必要な陰が生まれる。結果、陰のところだけ細く脆くなってしまう。
依存心が強い私と奇形の嶺。歪な関係から解き放てばまだ取り返しはつくのかな。どうやら嶺には陽の光を与えてくれる人もいるらしいし。
いじましく正晴に探りを入れさせた。憧れの人という単語を聞いただけで私はあっさりと打ちのめされた。こんなに弱い私は嶺の隣にいてはならない。
決めてからは早かった。行動力には自信がある。ただ、残念なことに決断力が致命的に足りなかっただけで。
宙ぶらりんだった距離感をリセット。幼なじみなどと甘々な期待の詰め合わせは現実にはない。
近からず遠からず。あれだ、女子のリーダーグループとの距離に近い感覚だ。核心には触れずほどほどに付き合い、ウナギが如くすり抜ける。
正晴がなにか言いたいそぶりを見せるが、声を掛けては来ない。流石、空気を読める奴。正直かなり気を遣わせていると思う。
正晴は目に見えないラインを感じ取る稀有な人物でその評価は昔から揺るがない。惚れる対象があちらなら楽だったのだけれど。こればかりは選べないのだからしょうがない。
初恋は実らないもの。愉快な話を語るようにはしゃいで肩を叩く___えーっと・・・二条さんだっけ名前が特徴的な___嶺の隣の席の人と空笑いしながら無駄な事を考えた。
「二条。そうよ私は二条。愚民共よ、名字で呼ぶのを許してあげるわ」
67: 物語は進み、緩やかに佳境へ迷い込む さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/9/21(金) 17:35:02 ID:2GBMj/wAFM
チュリチュリン(効果音)
諸君達に最新情報を教えよう!
穏やかに日常を過ごしていた北峰嶺。その背中に忍び寄る破滅の影。
光があれば闇がある。構って貰えない友人達のジェラシーに襲われる日々が幕を開けた__________
粘着片思い♀来堂鳴。
彼女の構ってちゃんオーラは並の人間ではスルーできない危険かつ端迷惑な代物だ!
お節介マイスター♂遠見塚正晴。
彼の発言は稀にグサリと刺さるぞ!純然たる好意を盾に取る重さは他に類を見ない。
現人神、二条♀※名前は検閲により削除。
トラブルメーカーはどのような場合でもトラブルメーカーである。天上天下唯我独尊。
俺の後ろに立つな♂デューク=東。
二条と同じ香りのする人間。嫌な予感が拭えない。意外と常識人?期待はするな。
ハイパーメディアクリエイター♀鶴田カメコ。
天然素材。不動(うごかず)の嶺でさえアクティブに抑えに廻らねばならない希少生物。
ストーカー吸引力の変わらないただ一つの♀神楽。
趣味仲間。幸が薄くお人よし。最近、ハバキ様姿の嶺をパパラッチするのがマイブーム。
主要キャラクターは出尽くした。後は開いた風呂敷を包むのみ。ギャルゲーならば選択肢一つでルートは変わる。だが、残念ながら、これは一本道の決まりきったストーリー。
もしも、もしもこの物語を天から見下ろす者の意思があれば__________
道は、微かに、揺れて、奇跡とも呼ばれる力で未来は新たに拓かれるのかもしれない。
現在の北峰嶺の適合率、平面適合率72%立体適合率27%誤差1%高位適合者128名中7位。警告!平面適合率80%以上で日常生活に支障をきたします。
68: ◆DPehMNPNeE:2012/9/22(土) 23:42:49 ID:o5YQ0wPnxI
久しぶりに生じた悩み事。思考に没頭しつつ手慰みに手芸を始めた。手芸なら失敗しても手直し一つで済む上、時間も無駄にしない。
絡み付く網目模様が意識を内に内に引き込む。友人と親友の境界線。それはなんだろう?長年連れ添った関係であってもわからない。
友人の望むこれからの関係はなに?距離感がわからない。今より近い距離なんて有り得ない。
他人との距離は1m、友人との距離は45cm。親友は?恋人は?息苦しくて、胸の動悸が酷くて、視界がモノクロに支配されて。
嶺(子供の頃、よく貧血で倒れたなあ)
倒れたときには大体友人が介抱してくれた。友人は倒れない。だから俺は助ける機会もない。友人、正晴は一方的な負担に疲れたのだろうか。
恥を忍んで告白するならば苦手なのだ。型が決まっていないものは。他人の真似をして隙間を埋めても取り繕う鍍金は剥げてしまう。まるで"探究会"の白塚菖蒲のように。
勝手にシンパシーを感じているが菖蒲と俺とは性格はまったく違う。でも、本人のみに見える過程をすっ飛ばせば結果が同じだ。大差ない、多分。
駄目だ。原因が予想できても、質問の意味がわからない俺にはきっと望む答えは出て来ない。
仮になにかを「おかしいよ」と指摘されたとしても「ここが」「こうだから」「こうなる」と細部まで指定されなければ理解できない馬鹿なのだ。俺は。
馬鹿は馬鹿で自覚していればマシになるハズだ。素直に聞いてみよう、必ず教えてくれる。なぜなら友人なのだから。
手袋を編み終え、鞄に入れる。友人は手袋に興味があったみたいだからちょうどいい。オレンジ色の手袋は冬場でも目に暖かい。
69: スカポンティーヌ・モエさん最高w さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/9/22(土) 23:44:43 ID:o5YQ0wPnxI
気分転換に格ゲーを引っ張り出した。今日は人と関わりたくないからオフラインで。蛸足配線のコードの足を一つ抜いて新たに挿し直す。
起動して一戦。落ち着かない。これがなにも手に付かない状態という奴か。リセットボタンの出番は速かった。
掲示板は神楽のストーカーの独壇場。外出するにもコンビニぐらいしか宛てもなし。ついでに言えば就職組なので勉強に対するモチベーションもだだ下がりだ。
嶺(そういえば、正晴や鳴は進学か)
ひょっとしたら進学組にも気を遣えと遠回しに言われただけなのかもしれない。都合の良い考えは心地好い。
友人は成績優秀なれど、悩みでもあるのかも。幼なじみはムラが凄まじい。苦手な教科の勉強でも手伝いをしようか。
隣人が料理を教えて欲しいとかなんとか言ってたような気がする。
こうして並べてみるとやるべきことが沢山あった。もしかして、第三者視点だと俺は酷く怠惰に見えていたりするのか。
忘れないようノートにメモを取ろう。幸いノートは白いページの方が多く、今後たいして埋まる予定はない。
色鮮やかな下線の引かれた英語のノートがピッタリだ。三色のラインで黒いボールペンの味気なさを相殺するのだ。
縦横無尽。乱雑な書き取りの合間、余白をメモで潰す。無駄がない。年単位で使って半分も使わないのにノートは何故このように不必要な厚みがあるのだろう。
嶺(・・・・・・あ)
手芸で編んだ手袋、片手しかない。
とりあえず、再び編み物との格闘が約束された。
70: ◆DPehMNPNeE:2012/9/25(火) 20:04:43 ID:28sZqGGQJs
嶺「なあ正晴、この前の質問の意図はなんだ」
登校中、脈絡なんか無視してぶつけてみる。幼なじみは今日も来ていない。友人は目を見開いた後ため息を吐いて応じてくれた。
正晴「お前はそういう奴だったな」
正晴「普段の嶺の態度がさ、顔見知り程度の相手に対する態度に感じられたんだ。それこそまるで全部社交辞令みたいな」
確かめるようにところどころ途切れて紡ぎ出される。ゆっくりと内容を咀嚼して飲み込むペースを考えればちょうどよく感じた。
正晴「そのくせ同じようなことを鳴がしたらご機嫌ナナメになるし・・・まったくもって理解の外だ」
正晴「今、お前が聞かなければわからなかったように、俺も聞かなきゃわからない。これはいささか友人としては格好がつかん話じゃないか」
言葉もない。けれど、今より近しい関係を築いたとしても俺は聞かなきゃわからないだろう。
正晴「しょげるなって。責めてる訳じゃない」
嶺「嶺と鳴は、友達だよ」
最低限、言わなければならないことを搾り出した。今の気持ちすら伝えられなかったらあまりに惨め過ぎる。
正晴「それだけでも聞けてよかった」
卑怯な一時しのぎはあっさり看破された。友人の優しさが身に染みる。
きっと友人には不信があって、一朝一夕には無くならない。上手く俺を切り捨てないのが友人の甘さで、苛む不信の素すら理解しないのが俺の酷さだ。
何処でもう一人の自分が終わりを予感していた。私の居場所は此処ではない、と。
71: 虫の鳴き声が風流だっぜ さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/9/25(火) 20:06:48 ID:28sZqGGQJs
「なんだ、なんだい?青春だねー」
人混み掻き分け乗り越え隣人参上。通学時間、学生がひしめき合う雑踏の中で会話を聞き取れる聴覚だけは心の中で褒めておく。
正晴「またうるさいのが気やがった」
「青い、青いねー青い果実だ。もいじゃおうか」
嶺「・・・・・・」
視線がこちらに飛んできた。青い果実とは俺のことか。
「そんなに正晴を振ったのが辛いか。いや、マイノリティだからね男同士は厳しいと判断した君は正しい」
正晴「今はやめておけ」
「そう?なら邪魔者は去るとしましょうか。お幸せに・・・あ、これは冗談でもなんでもないから」
嵐が如く現れて、ひたすら場を荒らして去って行く。これはもう隣人の毎度のパターンとして定着しつつある・・・のか。疲労感が膨らむばかりなので遠慮願いたい。
嶺「気を遣ってくれてたのかな」
正晴「騒ぎたくて騒いでいるようにしか見えないのがまた微妙なところだわな」
嶺「そうだ、これ。確か手袋に興味持ってたよね」
正晴「うわあ」
あからさまに嫌な顔をされた。ちょっとショック。
正晴「男に手編みの手袋貰ってどうしろって言うんだよ」
「キマシタワー」
正晴「様子窺ってるんじゃねえ!消えろ!」
72: 72レスめ! ◆DPehMNPNeE:2012/9/27(木) 22:11:53 ID:ZiBrhD4LL6
赤陽テレビジョン。モーニングNEWS.505
御法川「はい、今日も早朝から生放送モーニングNEWS.505です」
飛田アナ「本日のゲストは四ツ谷重工広報部部長の朝香清文氏です。おはようございまーす」
朝香「おはようございます。ご紹介に預かりました朝香です。どうぞよろしく」
飛田アナ「いきなりですが、質問を一つ。なんでも御社では"平面旅行"という新規プロジェクトを行っていますが、どのような内容でしょうか」
御法川「それは私も気になりますねえ」
朝香「我が社の"平面旅行"プロジェクト。正式名称"ダイヴァールート"は人間の記憶を司る脳の一部、海馬から情報を引き出して新たに仮想空間を作り出すものです」
朝香「平たく言えばバーチャルリアリティですね。まだ手前ですけれど」
飛田アナ「いやはや、本当なら素晴らしい試みだと思います。ねえ、みのさん」
御法川「しかし、人を募って人体実験紛いだと一部の団体からの圧力もあるのだとか」
朝香「私共の行っている事は法律の範囲内であり、安全性も証明されています。なにより利用者様に楽しんで頂いている自負があります」
御法川「いっそ団体の人にも試して貰っちゃえばいいかもね」
飛田アナ「あはは」
朝香「事が事だけに、どうしても反発はありますからね。理解の一助になるのであれば」
飛田アナ「厳しい視点によって改良の種になるかもしれませんね」
朝香「個人的にはマスコミの皆さんの視点の方が怖いです」
73: このSSは フィクション で あり、登場人物、団体名等は 全て架空のものです さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/9/27(木) 22:16:13 ID:ZiBrhD4LL6
宛先:摩周 ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年6月12日5:19
送信者:yononaka_zeni@meatball.com
件名:赤陽テレビ見た?
朝香△
宛先:神楽 yononaka_zeni@meatball.com
送信日時:2012年6月12日5:33
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:RE:赤陽テレビ見た?
オッサン趣味全開もここまでくると清々しい
宛先:摩周 ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年6月12日5:42
送信者:yononaka_zeni@meatball.com
件名:RE:RE:赤陽テレビ見た?
うるせーやい。まあ、これで平面旅行がマジモンだって証明されたな
宛先:神楽 yononaka_zeni@meatball.com
送信日時:2012年6月12日5:59
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:RE:RE:RE:赤陽テレビ見た?
心置きなく次回もレポするわ。てか、四ツ谷重工が実在することに驚きを隠せない。
宛先:摩周 ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年6月12日6:09
送信者:yononaka_zeni@meatball.com
件名:RE:RE:RE:RE:赤陽テレビ見た?
海馬がどうたらってうさんくせー。本当になにも後遺症とか出ないのかよ。
宛先:神楽 yononaka_zeni@meatball.com
送信日時:2012年6月12日6:23
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:RE:RE:RE:RE:RE:赤陽テレビ見た?
お前カッコイイって言ったばかりだろwww不安になるからやめれwwww
宛先:摩周 ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年6月12日6:36
送信者:yononaka_zeni@meatball.com
件名:これ、一応本気な
見た目と中身は別腹。摩周もやめとけ赤陽がフォローしてるし下手すりゃ人死に出んじゃねーか。
74: アーイキャーンフラーイ! さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/9/29(土) 07:08:52 ID:52ogqqnND2
「嶺君からお誘いがきた」
正晴「なにの」
つまらなさそうに呟いて言葉を拾わせる。二条は大事なことでも瑣事でも関係なく同じ動作で吐き捨てて、二度は言わないから。
「料理。前に教えて欲しいって頼んでお断りされたやつ」
正晴「はあ、なんで今頃になって」
「なんでだろうねー」
両手を空にかざしてわっかを作る。白色の天ならぬ天井が眩しい。閉鎖された空間ならイレギュラーなどなくて落ち着く。
「鳴ちゃんも誘ってやれば進展するかな」
正晴「鳴は厳しいんじゃないかな。意地張ってる」
「じゃあ正晴君、一緒に行こうよ」
試していた。いつも茶化して遊ぶ振りをしながら怯えている。性格が悪い卑怯者だと自覚
がある。あるからなんだ。
正晴「嶺と二人じゃ間がもたないか」
「だって嶺君私のこと苦手っしょ」
悪い感情は皮膚で伝わる。表情なり顔色なり接触なり。本当は嫌なんだ。知りたくもないのに理解が及んでしまうのは。
正晴「鳴が行かないならやめとけ」
「けちー」
正晴「断っても嶺は怒らない。無理して行って楽しいかよ」
甘い、あまあまベタベタだよ。アンタはお母さんか。自分に甘くなっちまうからやめてけれ。
「ああ、正晴君と一緒に屋上からアイキャンフライしたくなってきた」
75: ◆DPehMNPNeE:2012/9/30(日) 23:04:03 ID:sHbGVStAnM
宛先:ハバキashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年6月18日21:08
送信者:ore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
添付ファイル:********
件名:両手に花
ニヤリ
宛先:デュークore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
送信日時:2012年6月18日21:41
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:無題
その手の冗談はちょっと・・・・・・
宛先:ハバキashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年6月18日21:59
送信者:ore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
件名:スマン悪気はない
写真写りは良いんじゃないか、うん。折角ハバキ様の格好してたんだし恥ずかしがることはないぞ。
宛先:デュークore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
送信日時:2012年6月18日22:20
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:知・り・ま・せ・ん
カメコから貰ったんですかね。
そういえば平面旅行二回目も目処が立ったとか。
宛先:ハバキashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年6月18日22:30
送信者:ore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
件名:マジでスマン
そうそう。サバゲーやってたらいつの間にやら紛れ込んでたんだよカメコ。
で、挨拶がてらネガを渡された。他の仲間にも百里とかの写真のネガを渡してたなあ。顔が広いもんだ。
おお、アレな。二回目は俺パス(―_―)ノ“
ちょっくら調べたいことがあるんよ。まあ楽しんできなー。
76: ワンダーキャホーイwww さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/9/30(日) 23:05:47 ID:sHbGVStAnM
宛先:デュークore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
送信日時:2012年6月18日22:45
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:調べたいこと?
アングラな話ですか?また人様に迷惑を掛けているんじゃないでしょうね。
宛先:ハバキashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年6月18日22:56
送信者:ore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
件名:言わなきゃダメ?
アングラはアングラだわな。確定情報がないからあんまり他言したくないのよ。結果的にデマを流したらいろいろ困るしさ。
宛先:デュークore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
送信日時:2012年6月18日23:09
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:なんか気になる
言えないなら仕方ないですけど・・・・・・
無茶はしないで下さいよ。どうせ泥を被るのは周りなんですから。
宛先:ハバキashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年6月18日23:16
送信者:ore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
件名:悪いね
言ってもいいっちゃいいが、ねえ。ハバキにとっては面白い話じゃないぜ?
わざわざ不快な思いをしたいって言うなら協力しちゃるがw
宛先:デュークore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
送信日時:2012年6月18日23:30
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:もういいです
からかってるんですか。既に不快ですよー、まったくもう。
好きにして下さい。もう寝ますから。お休みなさい。
77: こんな本筋も投下もスローな話について来て下さる方がいるのなら感謝。ぐだぐださんです。 さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/10/3(水) 07:27:06 ID:pP/gi4jzXc
なんだか平面旅行に否定的な人が多いような気がする。身近なところでは神楽、多分デュークも。カメコもあんまり面白くなかったと言っていて悲しい。
やっぱり適合率で見えるものも変わるのかしら。画質の差みたいな感じで。
愚痴愚痴歎きながら次回の準備を進めて行く。前回でカメコに教えて貰ったおかげで化粧の塩梅がわかったのは大きい。
暇を見て制服も繕い直さなくちゃ。実際に着て歩くと様々なアラが露見されるのも収穫の一つだった。
完璧なハバキ様の図を描く日は近い。
財布をチラッと眺めた。
・・・・・・財布が底を突く日も近い。
夏休みにバイトを増やそうか。伯父さんのところでグッズを作らせて貰っているうちに見込まれたのだ。
お金が欲しいので二つ返事でアルバイト、後はなし崩しで卒業後には就職とあっさり決まった。
そんなお世話になっている身で申し訳ないが、ここは譲れない。伯父さんのところでの仕事の勉強時間をいくらか削って他のアルバイトに充てる。
スケジュールが埋まる埋まる。一週間に半日程度の休みをなんとかキープして確定。下手な仕事人より忙しいのではなかろうか。
去年の夏休みには、親父より早くに家を出て親父より遅く帰る日も多々あって心配を掛けてしまったものだ。同じ轍は踏まないよう細心の注意を配る。
過干渉を招いた人間の行く先は神楽が実体験を持って教えてくれた。
彼女は学校卒業と同時に夜勤のある介護職に就いたものの、それでも対処に困り、別居を経て今は引越を重ねているそうだ。
嶺(このままでは自分の未来も容易に想像できるな、勘弁してくれ)
78: ◆DPehMNPNeE:2012/10/4(木) 16:09:30 ID:8pF3a50zjo
深夜。寝付けなくて夜風に当たりに外へ出た。
一歩二歩三歩。ほんの少しだけの移動でも瞳に映る景色は変わる。気付けば私は嶺の部屋の窓を凝視していた。
電気はすぐに落ちる。この時間なら当然か。毎日夜更かししてるのなら体を壊してしまわないだろうか。
黒猫「にゃー」
鳴「猫か、おいでー」
物陰から踊り出た黒猫を捕まえて抱きかかえる。中々重く、人懐こい。おそらく餌付けされているようだ。
鳴「夜は目が細くて怖いねー、キミは」
頭を撫でたら逃げ出した。なんでだろ。
警戒と期待の間、曖昧な距離。このまま別れるのも惜しくなって一つ提案をしてみる。財布を取り出してヒラヒラとかざして。
鳴「一緒にコンビニ行こう。猫缶買ったげる」
言葉を理解できるんだか、黒猫は歩みを進めた私について来た。現金なものだ。
鳴「賢い賢い」
猫「にゃあ」
小首を傾げる仕草がかわいい。こうして一人と一匹の夜の探検が始まった。
小さな橋を渡って。
点滅する信号機をすり抜けて。
速度制限から解放された車達を見送って。
朝も夜も同一。不夜城、コンビニにたどり着く為に。
鳴「それゆけー。まるいちきゅうのすいへいせんに、ぼくらはきーっとまーている」
鳴「くるしいこともあるだろさ、かなしいこともあるだろさ、だけどぼくらはくじけない!なくのはいやだわらっちゃお、すすめー」
79: ちゃーす、これは流行る(キリ さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/10/4(木) 16:11:22 ID:8pF3a50zjo
鳴「あ、あんにゃろ。途中で逃げたな」
鳴「コンビニはもう目の前なのにさあ」
着いた途端に買う物が必要なくなってしまった。私はいつもこうだ。空転空転空転。
踵を返してさようなら。明日も学校がある、お遊びは切り上げだ。どうせ特に欲しい物なんかなかったのだ。
チャラ男「ちゃーす」
鳴「え?あ、はい。ちゃーす」
ついつい挨拶をしちゃったけど、まずいかも。派手な服着ていかにもガラが悪そうな人だ。まして時間が時間でもある。
チャラ男「驚かせてスンマセン。この前、お面被ってた女と一緒にいたでしょ」
チャラ男「俺、その女と知り合いなんすわ。で、最近元気なくて心配で心配で」
鳴「ごめんなさい。心当たりありません」
怖いよ。そんなに一気に言われてもわからない。私、貴方の知り合いでもなんでもないのに。
チャラ男「そっすか。急にスンマセンした」
あれ?もしかして実は良い人?時間差で頭に入った言葉の内容と今の表情で天秤が若干傾いた。
鳴「行っちゃった。怖がり過ぎて失礼だったかも」
鳴「でも仕方ないよね」
鳴「・・・・・・」
返事をくれる相手はもういない。
鳴「にゃー」
悲しい。
80: 葦原學園探究会 ◆DPehMNPNeE:2012/10/7(日) 14:11:37 ID:1xl41vWnoM
學園の旧校舎の南側、かつて防空壕として使われていたとも落武者の流れた先とも噂される祠がある。
白塚菖蒲は考える。どうしてこの場所が正式に調査をされないのかを。
推測に推測を重ねて一つの道が見つかった。それは十三年前の内乱事件である。当時の陸軍中将、巾木重成による大量虐殺及び国会転覆の目論見。俗に言う一・二三事件だ。
政府の公式見解では祠内部の白骨や装備品、意味不明な地図などは巾木元帥の部隊のものだとされる。
だが、この見解には不明瞭な点がいくつか挙がる。
まず、一・二三事件の被害者は葦原の町民になのだが、葦原の地では戦闘の行われた形跡のない点。
次に、被害者である町民の死体や骨が一切見つからない点。
最後に、鎮圧した当時の陸軍司令、須崎直人の対応が記録されていない事。注目すべきは、記録は消失したのではなく元々されていないという点だ。
きな臭い。とても。何故、被害者が見つからないのに被害者と断定されるのか。何故、巾木中将の部隊が葦原で"非戦闘地域"で死んだのか。
侵入禁止区域の立て看板を無視して進む。此処から先は白骨やら火薬やらがあるかもしれない。
観察に目を取られていた菖蒲は、背後、自らを追う黒い影に気付けなかった。
慎重に迫る影。手に獲物を持っていないのがせめてもの幸運か。おそらくは、やがてたどり着く行き止まりで運命は決するのだろう。
覆うように被さる影。飲み込まれたかに思えたそのとき。
81: 葦原學園探究会 巾木中将が一つ元帥になってる。またやっちまった・・・。熱があるときは駄目ダナwさらばー ◆DPehMNPNeE:2012/10/7(日) 14:14:47 ID:1xl41vWnoM
一閃。絡んだ黒い手は捕まれてそのまま軸となり身を投げる寄る辺となった。
菖蒲「病弱なお嬢様とでもお思いになったかしら」
照明を相手の顔に当て、問い掛けた。
「あちゃー、驚かすつもりが驚かされたよ」
悪びれず笑うこの人物は___ええと探究会の___
そうだ。入会のときにしつこく絡んできた宮川光だ。短慮を起こすような人物には見受けられなかったが。
宮川「やめておきなよ、この學園は危ない。年間行方不明者は断トツだ」
そういう事か。心配して警告がてらに襲い掛かったと。確かにそれなら彼女の人物像に当て嵌まる。
菖蒲「危ないって、貴女みたいな同性愛者が?」
宮川「強がりもほどほどにな。あの巾木会長ですら近寄らないんだぜ此処」
何か言い返そうと思うも、巾木会長の名前を出されると痛い。言うまでもなく、この場所を誰より調べたいのは巾木中将の孫娘の会長だろう。
菖蒲「・・・・・・巾木会長に免じて許して差し上げます」
宮川「流石、菖蒲!巾木会長ファンクラブ会員一号なだけはあるね」
菖蒲「調子が良いったら、まったく」
土塗れの宮川に手を貸して起こす。足元がふらついた宮川を抱き上げる形になり、互いに若干照れが生まれた。
宮川「抱き上げるのはよくやるけど、抱き上げられるのは始めてかも」
菖蒲「貴女、やっぱりそっちの趣味があるのね。離れて頂戴」
82: ◆DPehMNPNeE:2012/10/9(火) 15:22:34 ID:XopoxEd.XI
一章一章で区切りを付ける形になっているみたいだ。ただ、前回と違って今回はまるまる菖蒲視点で同調された。
圧倒的な進歩の速さに目を見張るばかりで。調子に乗っていたら視界の隅に白骨を見掛けて吐き気を催してしまった。
嶺(リアルだって証なのは分かるけれど、キツイものはやはりキツイ)
折れた心に引きずられたのか意識がフェードアウトする。いや、平面旅行時のフェードアウトなので覚醒と言うべきなのかもしれない。
機械の方舟から身を乗り出し、周囲を眺める自分。薄暗いグリーンのライトは冷静になると少々不気味だ。まるで未来の世界に一人送られてしまったかのような悪寒。
嶺(これも不安を煽った神楽のせいだ)
寂しく響く安っぽい階段の音をBGMにして愚痴る。
モヤモヤとした気分を払拭する景気付けに物販で派手に散財。半ば寝こけるスタッフに声を掛けて、買い物の内容込みで仰天させてやった。
半端に余った時間をどうしよう。デュークの話していた白いゴミ拾いの登録でも行ってみるかな。
・・・・・・厄介事は御免だ。アウェイではしゃぐにも一人では腰が引ける。適当に革物を見繕って帰ろう。
この街なら牛や豚以外の珍しい革だって容易に見つかるハズ。そしてそれは、たとえ加工済みの製品であっても見ているだけで面白い。
古着を素材にして新しく服を造るのも良いか。ストックしてある素材と相談して買い足し買い足し、と。
帰りに電車に乗る際、荷物が多過ぎて乗車拒否を食らった。電車にも乗車拒否があるというどうでもいい知識を得る代わりに精神的に手痛いダメージを貰った。
83: ラクガキッズ! いつのまにか100KB越えてたwさらばー ◆DPehMNPNeE:2012/10/9(火) 15:24:30 ID:XopoxEd.XI
http://ryu.boy.jp/up/uf/20121009152125.jpg
84: ◆DPehMNPNeE:2012/10/12(金) 07:17:38 ID:oRETuIBz7E
331:名無しの探究者:2012/7/29(日)
18:10:15 ID:※※※※※※※※
探究部評価まとまったかな。
332:名無しの探究者:2012/7/29(日)
18:13:22 ID:※※※※※※※※
売上は悪かないな。前作を知らない奴にゃ評判いいんじゃないか
333:名無しの探究者:2012/7/29(日)
18:16:44 ID:※※※※※※※※
前作が8万ちょい。探究部は9万後半か・・・
334:名無しの探究者:2012/7/29(日)
18:22:25 ID:※※※※※※※※
竜山、調子に乗ってアニメ化とか言ってたなwwwお前は本当にwwwww
335:名無しの探究者:2012/7/29(日)
18:26:30 ID:※※※※※※※※
摩周じゃなくても怒りたくなる。前作を潰して人気取りか氏ね
336:名無しの探究者:2012/7/29(日)
18:31:21 ID:※※※※※※※※
探究部の流れじゃ中将なんの為にしんだのか・・・・・・
337:名無しの探究者:2012/7/29(日)
18:40:02 ID:※※※※※※※※
>>336
犠牲になったのだ
338:神楽◆592HaRAM26:2012/7/29(日)
18:49:28 ID:※※※※※※※※
立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花。神楽ちゃん参上だぜい。
摩周ー、大方の予想通り人気投票じゃハバキ様順位ひっくいわ。・・・・・・ついでに菖蒲もな。一緒に飲もうぜ・・・・・・
339:名無しの探究者:2012/7/29(日)
18:56:13 ID:※※※※※※※※
あまりに無情。
340:摩周◆MASYUuLIKE:2012/7/29(日) 19:03:19 ID:※※※※※※※※
呼ばれた気がした。今、新しく服を繕っているんだ。気持ち華やかな感じの。
85: ◆DPehMNPNeE:2012/10/12(金) 07:19:30 ID:oRETuIBz7E
341:名無しの探究者:2012/7/29(日)
19:06:32 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ
342:名無しの探究者:2012/7/29(日)
19:06:36 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ
343:名無しの探究者:2012/7/29(日)
19:06:41 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ
344:神楽◆592HaRAM26:2012/7/29(日)
19:06:43 ID:※※※※※※※※
>>摩周
現実逃避か、悪くない・・・・・・
345:名無しの探究者:2012/7/29(日)
19:06:47 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんの体から出るお酒ペロペロ
346:名無しの探究者:2012/7/29(日)
19:06:54 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ
347:名無しの探究者:2012/7/29(日)
19:06:59 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんワカメ酒ペロペロ
348:神楽◆592HaRAM26:2012/7/29(日)
19:07:03 ID:※※※※※※※※
またいるうううううううううううううううううううううううう最近いなかったのにいいいいいいいいいいいいいいいいなんでだよ畜生畜生畜生!!!!!
349:名無しの探究者:2012/7/29(日)
19:07:08 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ
350:名無しの探究者:2012/7/29(日)
19:07:14 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんのお酒ペロペロ美味しい美味しい
351:名無しの探究者:2012/7/29(日)
19:07:20 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃん脇汗ペロペロ
352:名無しの探究者:2012/7/29(日)
19:07:29 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロお仕事忙しい?
86: ◆DPehMNPNeE:2012/10/12(金) 07:21:50 ID:oRETuIBz7E
宛先:ハバキashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年7月30日19:56
送信者:ore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
件名:こちらデューク、報告する
おっす久しぶり。前言ったアングラな話の裏取れたけど聞くか?
宛先:デュークore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
送信日時:2012年7月30日20:12
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:無題
話したいのなら聞きますけど。
宛先:ハバキashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年7月30日20:26
送信者:ore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
件名:まだ怒ってるか?スマンって
うんとな"ダイヴァールート"の四ツ谷重工はさ、三ツ谷重工の子会社なんだ。ガチで陰謀の香りがしてきたろ?
だいたい"ダイヴァールート"始める前はペーパーカンパニーで、今も採算度外視だ。絶対裏はあるだろうな。ハバキも覚えておいた方がいいぜ。
宛先:デュークore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
送信日時:2012年7月30日20:36
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:なんか盛り上がってキタwww
現実で陰謀の中心とか胸が熱くなるわw
29日、東亰・璞浜市でひき逃げ事件があり、塗装業金田つとむさん(18)が同日午後11時50分頃、搬送先の病院で死亡した。事故があったのは璞浜市の交差点で、29日午後5時前、金田さんの自転車と白のワンボックスカーが出合い頭に衝突した。この事故で、自転車に乗っていた金田さんが頭を強く打ったとみられる。近隣住民の証言によれば、現場からワンボックスカーを運転していた40〜50歳くらいの女が立ち去ったという。また道路にブレーキを掛けた痕跡は見つけられず、警察は悪質なひき逃げ事件と して捜査している。
梅日新聞。
87: ピンクのパンダが黒い部分を渡そうとしてくる さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/10/12(金) 07:25:02 ID:oRETuIBz7E
宛先:ハバキashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年7月30日20:55
送信者:ore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
件名:そいつ、一回目のとき居たぞww洒落にならん・・・・・・
確かに喫茶フルールで話した。店員も知っている。お前達と会う前に先に行っちまったがね。
宛先:デュークore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
送信日時:2012年7月30日21:04
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:冗談ですよね
いやいやいや。本当に怖いんですけど!?
朝霞の赤陽テレビ出演に、三ツ谷重工に参加者ひき逃げ?役満じゃないですか。
宛先:ハバキashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年7月30日21:16
送信者:ore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
件名:信じる信じないはあなた次第
まあ夜道には気を付けるんだな
宛先:デュークore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
送信日時:2012年7月30日21:30
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:信じたくない
引きこもればなんとかなる・・・か?駄目だ、住所も最初に記入しちゃった。怖すぎる。
宛先:ハバキashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年7月30日21:47
送信者:ore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
添付ファイル:********
件名:俺からのネタはこれでとりあえずおしまい
三ツ谷重工の酸素カプセル"ヴィジョン"見れば見る程"ダイヴァー"に似てるだろ。
実はこの"ヴィジョン"何年か前に原因不明の回収騒ぎを起こしてそれきりの代物だ。当時は幻覚が見えただの色々言われてたな。
88: 特撮は昭和に限る さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/10/15(月) 13:20:28 ID:uJHdcEMxZc
薄々感づいていた。あからさまなイベント、それでいて金の匂いがしない夢のようなイベント。現実という名の煉獄から足場を移した俺達に見えた幻の世界。
友人ですら利害関係があるのに企業が慈善活動など行う道理がない。チャリティーだって売名で。裏がある。まだまだ子供の分際でも理解できる簡単な理屈だ。
諭されていたのに必死で目を逸らした事実。
金田つとむ。気になって調べた彼の写真、セピア色に写されていた顔には見覚えがあった。
地獄大使の格好をした男を中心に戦闘員が集まる中にいたチャラチャラとした男。場違いに思って脳裏から離れなかった人物だ。
彼は白のワンボックスカーに乗せられて去って行った。そう、白のワンボックスカーだ。でも40〜50歳女性はいなかった。
どこまでが真実でどこまでが嘘なんだ。
異様な空気を察して目を背けたのは俺だけではない。皆逃げたのだ。自分には関係ないと。
だが、現実では無関係ではなく同類であった。死んでしまった。殺されたのか?理由は何故?次は誰だ?
彼は仲睦まじく大使と昭和の特撮について語っていたではないか。知人ではなかったのか。全ては計算尽くなのか。
次回からは適合率40%未満の人間は切られるらしい。機器の調整とのことだが、今の状況からは鵜呑みにする気になれない。
つまりはターゲットは高い適合率の人間。認めたくないことに自身に綺麗に当てはまる。金田つとむは適合率何%だったのだろう。
高い人間が死ぬのか低い人間が死ぬのか。もしかして両方か。怖くて怖くて仕方ないのにどうしてもそれだけは確認したかった。
89: ◆DPehMNPNeE:2012/10/18(木) 14:56:41 ID:RHXo8Ihs.g
カレンダーに×と〇を付ける。外出した日と外出しなかった日を明確にするためだ。
夏休みでよかった。これが学校のあるときなら怪訝に思われただろう。
矛盾した行動を自覚しながらも繕いものをする。無為に過ごすのは堪えられないから。濁った思考は煮詰まりつつある。
元来の性質が開き直るタチであるからして。自暴自棄みたいな状態になりそうだ。それは今までかろうじて性向を持っていただけで手綱は酷く緩い。
グッズを作ることで放出していた熱は既に矛先を"ダイヴァー"に向けていた。まるで中毒だ。常日頃何かに酔わずにはいられない。
向こうに足場があるからいけない。夢はときに人を誤らせる。
言い訳が泉が如く湧き出でて。矛盾した行動と同じく、矛盾した思考が完成した。
怖い=知りたい
知りたい=欲しい
欲しい=手に入れる
手に入れる=手に入れた
平面<立体
平面>立体
平面≠立体
平面=立体
感覚がスライドして歪んで行く。認知が正しくないのは狂っているのと同義ではないか?ならば俺は初めから狂っている。
恐怖は消え去り、欲が取って代わる。異常だと警笛を鳴らす自分が霞んで見えた。そんなもの幻だ。幻、だ。
軽快な音楽。チャイムが鳴った。警笛ではなく現実の音。耳障りな音。
他者が自分の領域に侵入してくる。そんなのは嫌だ。無視をすることに決めてぼうっと窓の外を眺めていたら、鍵の開く音が聞こえた。
90: ◆DPehMNPNeE:2012/10/18(木) 14:57:50 ID:RHXo8Ihs.g
うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
情緒不安定だ。
91: 疲労感がヤヴァい さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/10/18(木) 15:00:02 ID:RHXo8Ihs.g
うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
客人から返された。声に出ていたらしい。多分鳴の声か。
92: ◆DPehMNPNeE:2012/10/21(日) 19:38:58 ID:ABkti..Zgg
しばし休憩モード
いやあ、現実って大変ですね/(^o^)\
93: ◆DPehMNPNeE:2012/10/27(土) 06:53:06 ID:uT3akgpehc
夏休みに入ってきっかり10日目。嶺の外出は二回。今までを考えると異常だ。行動も不安な様子を感じさせる。
毎日の生活パターンとして、モノを作る素材集めと適度な運動が組み込まれている嶺は毎日外出するのが常だった。
かつてない事態だ。緊急事態。
なにがあったのだろう。ここ最近で気になった事柄と照らし合わせる。化粧品の類の購入、夕方帰りの長い遠出が二回。時間の違う他の外出はほとんどが叔父の会社だったか。
脅されている?まさか。嶺に限って線引きを間違えるなんて有り得ない。よって後ろ暗い話の可能性はゼロ。
と、なると単純な脅威に遭遇って辺りが正解に近いかもしれない。
鳴(会って見るか)
離れようとした距離をまた詰める。自分を騙して。
別に私じゃなくて良いハズだもの。こういった話は正晴に任せるのが無難であって今まではそうしてきた。
いつまでも同じ関係ではいられない。理解したのは遥か昔。塗り固めた自己弁護は薄汚く、だからこそ私に似合うと薄く笑った。
欲しい。私は嶺が欲しい。弱った嶺というまたとないチャンスが目の前に転がっている。
無難に逃げた私はもういない。綺麗事で酔った私ももういない。だってどう取り繕っても気持ちはかわらない。
辛いのは嫌だ。当たり前だ。だったら妥協点を綱渡りして見せよう。愚かしくも楽しい遊びを。
所詮私は、私は、なんなんだろう。
94: ◆DPehMNPNeE:2012/10/27(土) 06:55:16 ID:uT3akgpehc
程なく部屋に幼なじみが現れる。宗教勧誘や訪問販売に鉄壁を誇る偉大な我が母も、幼い頃から知っているお隣のお嬢さん相手だとベタ甘だ。
部屋に通したのは初めてだろうか。互いに仲良く遊んでいた時分にはまだ自身の部屋は持っていなかった。
思春期の終わりに適度に距離を取ることに成功した後、大分時間が経ったとき、適度な距離とは他人の距離と知った。
負担になるのだ。その時々で大切なものに気が向き過ぎてしまって神経がみるみるうちに削られる。
なれば不安定な人間などに向いては生活できぬ。必死になって作った逃げ場に腰を落ち着けてようやく自らを理解するに至る。
どうしようもない出来損ないだ。適合率診断の立体適合率27%も社会不適合者という意味ではないか。
だからもうやめてくれ。
俺は期待になんか応えられないし応える気もない。
今更距離を詰められても息苦しいだけでただただ辛い。意識に入り込む異物は要らない。昔は昔、今は今だろう?
当然、心中など察して貰えず現実は何も影響しない。幼なじみは座布団もない畳に座る。曖昧な距離曖昧な表情。
「宿題を一緒にやろう」取って付けたような理由も何故か断り切れなくて。どうせ毎日時間を取って行うなら同じか、と悪い方向に妥協してしまう。
泥沼だ。押しに弱い。あまりにも。
踏み込まれない日常に適応してしまったせいか事後策も生まれない。
生きているだけで他者の介在を許してしまう。なんとも生きにくい世の中だ。立て掛けてあった製図用の折り畳み式テーブルを開いて訪問者と学習に向かうとする。
95: ◆DPehMNPNeE:2012/10/27(土) 06:56:37 ID:uT3akgpehc
嶺「教科は」
鳴「現国」
しばしの沈黙を挟んで返答。得意な教科を選んだと見える。
嶺「苦手なものからやった方が後々楽じゃないか?」
鳴「まずは勢いを付けたいの」
立腹のご様子。図星を突かれて怒るとはなんともやりにくい。とりあえず口を閉ざして防衛を図る。
鳴「読書感想文は中学のを使いまわすとして。まずは書き取り、単純作業は得意なんだよねー」
なにも言うまい。早く終わらせて早く帰って頂こう。
向かい合わせで黙々と課された問題を解いて行く。恣意的に選ばれたような名作を流れ作業で右から左へ。
嶺(芥川とかなら面白いのにな)
教養のないもので詩はまったくと言って差し支えない程知識の外だ。尤もそれは詩に限った話ではないか。
俺と幼なじみ。成績を比較するなら中の上から上の下と中の下から中の上。教科によって多少の差はあれども極端に苦手な教科もなければ得意な教科もない。
そして現国の成績に限定すれば同レベルだ。これでは二人で行う意義は薄い。どちらもスラスラと解けてしまう。
丁寧に書き込む俺の向かいには腕が疲れたと騒ぐ乱雑者が。無意識なのだろうから黙殺する。
刹那、集中が途切れたこのタイミングを狙いすましたかのように母が飲み物とささやかな菓子を給仕してくれた。
何度でも噛み締める。やはり母は偉大だ。
96: ◆DPehMNPNeE:2012/10/27(土) 06:57:56 ID:uT3akgpehc
嶺「あーあーあー、もうちょっとでいいから丁寧に書きなさいよ」
ついつい余計な嘴を入れる。しょうがない、これが性分だ。
嶺「一つ一つを大切にしなければ身に付くものも身に付かん。手癖でなんとかなるものには価値がありません」
鳴「たかが宿題でそんなに言われましても・・・・・・」
なにかの意思表示か氷の入っているオレンジジュースのグラスを揺らす。対になる氷の入っていないのは俺の分だ。
嶺「たかがと侮る心が無駄を生む。どうせまともに勉強するのは、せいぜい後四年、五年なんだから気を引き締めること!」
鳴「あー、はい。イエス、サー」
適当な返事が癪に障った。
嶺「進学だろ。わりとギリギリだろ。誰も助けになってはくれないぞ」
鳴「やめて」
気持ち表情が張り詰める。ここでやめてなにが変わるというのだ。
嶺「やめない」
嶺「宿題の進み具合見てみろ。二時間やってこれだけ、あまつさえ隅に落書きなんぞしてある」
嶺「一日どのくらい進めたら余裕を持って片付くかとか考えたか?得意な教科でこのザマだ」
嶺「だいたい他人の時間まで潰して結果を残せないのは無責任だ」
とどめを、刺した。不用意に間合いに入るからだ。何事にも理由がある、俺の生きるスタンスにも。そしてもちろん幼なじみの行動にも。
わかっていて拒絶した。
97: 長い間お付き合いありがとうございました。これで嶺と鳴の物語はおしまいです。 ◆DPehMNPNeE:2012/10/27(土) 07:08:38 ID:uT3akgpehc
幼なじみが帰る。見送りの際、疲れが出たのか二人揃って階段を踏み外してしまう。
体感時間は遅くなり浮遊感が悪寒を呼び覚ます。直線的な高さはたかだか数メートルでも落下すれば恐ろしい
縋るように手を振り回して爪が階段の滑り止めにかかる。期待するもすぐに爪は割れてしまい意味を為さない。
眼前の幼なじみ。幼なじみがフローリングに激突した。勢いのまま玄関の方に転がって行く。そして心配する間もなく俺も後を追うことになった。
轟音。ドアはぶち破られた。後方では我が偉大な母もレースに参加を始めたようだ。
標識、電柱とワンクッション置いて道路になだれ込む。列を為して。
道路では車線を占領する程に巨大なトラックが側面から猛進する。
避けられない。
もはや勢いを失って団子と化した俺達は道路から脱出する術を持たない。
鳴「ねえ、こういうのも心中になるのかな」
黙れよ。
最期に一言文句を付けてやりたかったが、口を動かす前に俺の体はトラックと衝突した。
見事に手足が吹き飛んだ。不思議と痛みはなく冷静でいられた。きっと死ぬんだな。誰のものかもわからなくなった体の残骸を眺めて静かに目を閉じた。
赤い海となって混ざる。
二人は永遠に結ばれた______________________________
TRUE END ネガティブハッピートラックタイヤ
Fin.
リバティー◆DPehMNPNeE先生の作品を読めるのは2CHサイトモバイルだけ!リバティー◆DPehMNPNeE先生の次回作にご期待下さい!
98: 後書き ◆DPehMNPNeE:2012/10/27(土) 07:20:45 ID:uT3akgpehc
長くなりましたがこのSSはこれで終わりです。
ここまで支援、保守をしてくれた方々本当にありがとうごさいました!
パート化に至らずこのスレで完結できたのは皆さんのおかげです (正直ぎりぎりでした(汗)
今読み返すと、中盤での伏線引きやエロシーンにおける表現等、 これまでの自分の作品の中では一番の出来だったと感じています。
皆さんがこのSSを読み何を思い、何を考え、どのよ うな感情に浸れたのか、それは人それぞれだと思います。少しでもこのSSを読んで「自分もがんばろう!」という気持ちになってくれた方がいれば嬉しいです。
長編となりましたが、ここまでお付き合い頂き本当に本当にありがとうございました。
またいつかスレを立てることがあれば、その時はまたよ ろしくお 願いします!ではこれにて。
99: 真・スレッドストッパー:停止
停止しますた。ニヤリ・・・( ̄ー ̄)
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