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平面適合率72%
[8] -25 -50 

1: ◆DPehMNPNeE:2012/8/8(水) 11:05:22 ID:6E1Q3FITdQ
今日は記念すべき日になるハズだった。

心踊らせる"宝"の予約は初日に済ませていた。そして本日!購入受け取りの後、体で"宝"を庇って帰宅。

追記するならば、事前準備として睡眠時間も環境設備も十二分に足りていた。

俺は自身の考え得る全ての手を打ったつもりだ。しかし、想定外の攻撃はあるもので。

"宝"ことゲームを進めて小一時間経過した頃。地雷。不吉な二文字が思考の隅を掠める。

嶺「なんだよコレ・・・・・・ハバキ様はこんな性格じゃないだろぉ」

自分でも情けなくなる声が出た。責めるような今にも泣き出しそうな。

落ち着け、少しでいいから冷静になるんだ俺。シナリオを全部見てから判断するのがマイルールだろ?


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


結局、傷口は広がってしまった。思い入れのあった作品の続編への期待には、評価は人それぞれ等と言う正論なんか意味を為さなくて。

嶺「まさか、このゲームでスキップ機能を使うとは思わなかった」

予約特典の制服が哀愁を誘う。前作の時に興が乗って作った、同學園の手作り制服と並べて写メを撮って悦に浸っていた時間が懐かしい。

嶺「俺の考察が間違っていたのだろうか」

認めたくない悔しさと、それと表裏の淡い希望を胸に抱き、前作"葦原學園探求会"を起動した。


50: ◆DPehMNPNeE:2012/9/9(日) 06:16:17 ID:ugbHSBCN/o
カメコ「最初は新興宗教か何かと思ってたら、すんごい演出ですねー、ねー」

デューク「あの倒れたの、前に自衛隊ドラマに端役で出てたぞ」

失礼にも指を指す二人。オクターブ上がった声は音響と、文字通りの爆発音で掻き消される。

嶺「役者さんなんですかね。眼鏡の、朝香さんもアニメのテロップで見たような」

デューク「ああ、色々と考えてあるようだ。場所も、なんでこんなところでと訝しんでいたが、簡易ライブをやるなら納得だな」

三桁半ばの収容数を誇る、この璞浜ブリッジホールは。夜間に映画上映を行われたり、劇団の公演、識者の講演会など多目的に使われている。

それはもちろん、コンサートホールやライブもしかりだ。デュークはもっとアングラなものを想像していたのだろうか。

デューク「ハバキ、お前適合率70パー越えだったか。高い奴から順に呼ばれるらしいから、ゆっくりはしてられないな」

聴覚にあまり期待できないのがわかっているらしく、デュークの言った通りの内容のプレートを掲げた係員が大勢見受けられた。

カメコ「うわ、係員ショッカーだ。地獄大使までいる!」

デューク「地獄大使?あのゴキブリみたいなのか」

嶺「アニキのライブを途中で抜けるのか・・・・・・」

わりとガチで凹んだ。テレビでよく放映される話題性偏重のものとは一線を隔すラインナップのメドレーは正直惜しい。何より今回は生なのだ。

アニキ「ゼーット!!」
51: 両手に足る、両手で足りる、両手で足る、両手に足りる。どの表現が正しいのか・・・まったくわからんwさらばー ◆DPehMNPNeE:2012/9/9(日) 06:29:44 ID:ugbHSBCN/o
係員「北峰様ー、北峰様はいらっしゃいますか!?」

音響に負けず、張り上げた声で問われる。そう多くはない苗字であるし、自分の可能性は高い。

顔を向けて確認したプレートにも、ご丁寧に72%の北峰様へ、と可愛らしいキャラクターが呼びかけるよう描かれていた。まず間違いないだろう。

係員「僥倖だ、すぐに見つかりましたね」

首に掛けたカードを認識して安堵する係員。カメコが後ろで"元帥"と呟いた。元帥、姿が姿なだけに不気味だ。

自宅警備隊「おい、貴様。嫁の顔を表側にしたら埃がついてしまうではないか」

元帥「貴方のご高説、わからないでもない。しかし、嫁の顔を裏側にしてしまうと私の体で嫁が汚れてしまうのです」

自宅警備隊「なんと申し訳ない。某、自宅以外の礼儀に疎かったようだ。嫁への愛、痛い程に伝わり申した」

とことんおかしな人間しかいない場所である。変人共はプレートを交換仕合い、一方は持ち場に戻って行く。

自宅警備隊が去った後、隣のビルへ向かう際に元帥は「知ってるが、お前の態度が気に入らない」と描かれたプレートを掲げていた。

大企業と見紛う巨大なビルの中をカッカッと音を立てて歩くと、空いたスペースの広さと自身の矮小さに切なくなってくる。

無言でエレベーターで上へと昇り、目的の階層に降りる。窓からはさっきまでいたホールが見え、特撮風の爆発音はここまで響いていた。

入るはグリーンライトの部屋。やけにSFチックな見かけはトンデモイベントに相応しい。感慨に至って足を止めたせいか、両手に足る視線が刺さって痛かった。
52: ◆DPehMNPNeE:2012/9/12(水) 08:45:47 ID:AOSB44QGPA
使用方法は至ってカンタン!

あちら側の人物、筋肉質なナイスガイが深夜の通販番組のノリで弾けるように語り出す。何故だか自転車型のダイエット機具に跨がり、彼はご機嫌でぶっ飛んでいた。

内容は例に漏れず、簡潔かつ明快だ。ついでに、短い会話の途中でプロテインを飲みダンベルを指先で廻すサービス付き。お前、体鍛える必要ないだろ、と言わせて頂きたい。

肝心の内容といえば。人数分より少し多く並んでいる、SFでたまに登場するコールドスリープに似た装置。部屋の薄暗い雰囲気も手伝い、棺桶を連想されるモノ。

その中に入り、仮眠を摂るだけ。以上。爽やかな笑顔で語り切ったナイスガイは輝く歯を見せ付けて素早く去って行った。

え、セルフサービス?微妙な雰囲気の中少しずつ参加者が棺桶に近付く。接触。けれど、滑らかな表面に取っ手があるでもなく、入り方が分からない。

下手に扱う訳にもいかず、途方に暮れ始めたとき。部屋の角のスピーカーから朝香の声で助け舟が入った。

朝香「諸君、大変申し訳ない。こちらの手違いで説明に不足があった。今度のイベントの華"ダイヴァー"の搭乗は音声認識である」

朝香「前列は指ぱっちん、後列はテックセッターが開閉コマンドだ。では、健闘を祈る」

結局セルフサービスは変わらないようだ。人手が足りないのだろうか。テックセッターと熱い叫びが寂しい一室でこだました。

上方に開いた"ダイヴァー"の蓋は固定されていて、搭乗の後に自動で閉じる造りになっていた。

流れを視認してから私も搭乗する。内部は案外柔らかい。これなら寝違えることもなさそうだ。

程なく入眠し。こうして未だかつて前例のないトンデモイベント、二次元旅行は静かに開始された。
53: 葦原學園探求会 ◆DPehMNPNeE:2012/9/12(水) 08:47:43 ID:AOSB44QGPA
風が冷たくなり始めた九月下旬。私は私立葦原學園の校門をくぐる。庭では、時期外れの新たな来客に、枯れた葉は惜しんで泣く風で、幹は拙いお辞儀で歓迎をしてくれた。

長く続く道の果てに鎮座する、古めかしくも頑強な建築物。眼を惹く時代の重みは褪めた心にも微かに響く。

戦前に建てられた學舎が逞しく残っている。これはこの學園が祝福されている証である。と、余計な台詞で台なしにしたのは担任教諭だ。情熱的なのは好ましいとも言えるが。

私を先導する教諭の鼻息荒くまくし立てる演説は止まらない。早回しに時系列は進み、世紀が階段飛ばしになる。

教諭の話では、葦原學園は俗に言うお嬢様校で、それでいて土地は辺境。誇りと現実の間、屈折した生徒が多いそうだ。

ふと閃き、私は今自分の想像した文の尻に教諭も、と付け加える。生の経験は早くも役に立ったようだ。學生の糧になったのなら教諭も本望だろう。

噛み合わなくてもご機嫌な二人。なんて素敵なのでしょう。教諭の年齢にそぐわない鼈甲の眼鏡が太陽光を反射した。

私は咄嗟に手で顔を遮蔽する。その姿は傍から見ればお嬢様に見えるだろうか、それとも黒い腹の底が滲み出ているか。

無駄な事と理解しつつも頭から離れない。こんなのでも形だけは女だ。文字通り面の皮一枚で人生が変わる。

気付けば怪訝な表情を浮かべている教諭が扉越しに目の前にいた。彼女の濃いグロスの艶めく唇が言葉を放つ前に取り繕う。

楚々とした立ち振る舞いを心掛けていたつもりが早くも崩れたか。所詮鍍金は鍍金だ。金ではない。

厚塗りの鍍金を塗り直し、ぶれた調子を元に戻す。溜め息をつき、まるで困ったものを見るかのような教諭の顔は優しかった。

54: テックセッタァァアアア!!!さらばー 葦原學園探求会 ◆DPehMNPNeE:2012/9/12(水) 08:50:39 ID:AOSB44QGPA
重い扉の先、建物の中に入ってからは退屈窮まりなかった。常に広く大きい道を進むだけ。景色も大して代わり映えはしない。

作り物染みた綺麗な通路の圧迫感には何時になったら慣れる事が出来るのだろう。外圧に潰されてひしゃげる空き缶を連想し、身震いをしてしまう。

この學舎内で些か興味を惹く点を挙げるなら、各部屋に名札が付いていないのが私にとっては後々困りものになるかもしれない。

昔、華族の屋敷だった名残で、隠された通路があるとも噂されている學舎は道に迷う要素が多分にあり、初見では迷うどころか外出すら行えなかった生徒すらいる。

その仲間入りは勘弁願いたいものだ。後ろ向き後ろ向きへと気分が落ちる感覚を自覚しても止められず、なだらかに降下。なんとも情けない私。

意図せず聞こえた伸びやかな声。爽やかな風が如く緩やかに流れる。今通り過ぎた部屋は職員室か。それとも用務員室か。

立ち止まり、一際豪奢な扉の前で軽く身嗜みを整える教諭。察して私も手鏡を頼りに手短に整える。

新しい制服の肌触り、微かに浮かぶ過去。全て割り切って押し込めていても、今も昔も変わらずにスペースは取ったままだ。

不要な物を掻き集めた塊。そこらの塵芥と違って捨てる事も出来やしない。不良品ではないのか。

いけないいけない。おそらく、此処は學長室。これまで以上に気を張らねば。気持ちを切り替えて顔を上げる。

人の気も知らず、善意の励ましの笑顔が降る。有り難くも重い。これ以上の荷物を私は必要としない。

教諭が丁寧にノックをする。軽い音が耳に響く。それは新たな學園生活の始まりを告げる鐘の音のように思えた。
55: ◆DPehMNPNeE:2012/9/14(金) 08:41:10 ID:TYL9yaVm3Q
間違いない。本物だ。葦原學園、そして所謂主人公の視点の白塚菖蒲。上羽教諭とそのセットと言える長口上。

原作と寸分違わない出来に感嘆の声を漏らした。本当に平面世界に二次元に葦原學園にダイブしたかのよう。

教室、自己紹介で自身の名前を黒板に書く菖蒲。名を刻む行為への躊躇、小さな伏線さえも捕まえて話は進む。下手なアニメよりよほど原作に忠実だ。

だが、欲は限りがない。趣味人ならば尚のこと。始め感動に胸を押さえた手は震え、俯瞰に過ぎない私の立場に不満を述べる。

平面旅行などと謳いながら、これでは観察じゃないか。

トンデモだの胡散臭いだの抜かしていたクセに。自重も自嘲も跳ね退けて胸の内からどんどん込み上げる。やめられない止まらない。

不自然な程に綺麗過ぎる學舎の壁をツーと指でなぞる菖蒲が映る。不安定で、破滅的で、強靭。菖蒲の裏の顔を表す嘲笑の瞬間。

感情がリンクされたみたいに私も嘲笑する。例えるなら溺れたときに近い感覚は果てしなく心地好い。今、私は確かに"ダイヴァー"だ。

好きな世界に飛び込んだ異邦人。想像した景色と多少の違いはあれど、後悔には至らない。むしろ愉快なぐらいである。

酔って判断能力は狂う。世界に。自分に。あれ?菖蒲の台詞と感情が私に。細く美しい指と透けた白い指が重なってぶれて。

扉を開く。

探求会に宛がわれた埃臭い一室。煤けた赤茶色の扉を興味本位で開いて、壊してしまう。

各キャラクターの視線を浴びながら硬直。本来ならオープニングが流れるタイミングで意識がぷつりと途絶えた。
56: ◆DPehMNPNeE:2012/9/14(金) 08:42:48 ID:TYL9yaVm3Q
262:摩周◆MASYUuLIKE:2012/5/28(月) 1:45:22 ID:※※※※※※※※
落ち着いたので報告を。
会場には50人ぐらい集まっていました。どうも来なかった方も多い模様。

流れとしては、寸劇で笑いを取った後イベント開催アニキ絶叫!各係員は怪しいコスプレをしていて順番で皆様ご案内。待ち時間はそうそうたる顔触れのライブ。最後の解散前にグッズ販売してたようだけど焼け石に水、大赤字確定かとw

肝心の平面旅行の内容は・・・その名に偽りなしでした。

263:名無しの探究者:2012/5/28(月)
1:58:47 ID:※※※※※※※※
乙ー。え、旅行、本当に?にわかには信じられん話だぜ。

264:摩周たんの探求者:2012/5/28(月)
2:00:03 ID:※※※※※※※※
そんな事はどうでもいい。ハバキ様のカッコした美人さんがおにゃのこと百合百合してたと有志の報告を受けている!真偽はいかに!!!

265:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:10:33 ID:※※※※※※※※
>>264
おいw名前ww

266:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:19:45 ID:※※※※※※※※
>>264
摩周は男のハズだが?

267:神楽◆592HaRAM26:2012/5/28(月)
2:29:22 ID:※※※※※※※※
お、今度はタイミングいいか?じゃじゃーん、有志参上!

怒りに任せて有休捩込んだはいいが、ヒマなんでスネークしたぜぇいV

268:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:01 ID:※※※※※※※※
お仕事大変で可哀相な神楽ちゃんペロペロ
57: ペロペロ さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/9/14(金) 08:44:55 ID:TYL9yaVm3Q
269:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:16 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ

270:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:18 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ

271:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:21 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ

272:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:24 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ

273:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:26 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ

274:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:28 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ

275:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:31 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ

276:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:38 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロおいしい

277:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:45 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ本当に

278:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:49 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ

279:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:55 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロペロペロペロペロペロペロ

280:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:37:15 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ。
ねえ、なんでお返事してくれないの?
58: ふぇぇ・・・あちゃまいたいよぅ・・・さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/9/15(土) 21:48:51 ID:TAGfDjF6ng
返レスを付ける前にリロード。このスレは話がよく飛ぶので必須の作業だ。スルーされることはないが、気を遣わせたり流れを澱ませるのはよろしくない。

嶺「・・・・・・!?」

なんだよ、おい。荒らしか?似たような文面の羅列に寒気を覚える。リロードする度にレスは増えて行き、やがては埋まった。

呆れた執念だ。多分、新スレを立てても同じ結末になると感じた。神楽には同情を禁じえない。

ブラウザを閉じて代わりにメーラーを開く。すると見慣れないアドレスからメールが二通来ていた。送り主も二人。

嶺「カメコとデュークかな」

アドレス交換の際、こちらは名刺を渡したのでPCのアドレスも知られたのだろう。

嶺「デュークやカメコは細かいところに気を回す人種じゃないと思ってたのだけれど」

宛先:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年5月27日20:00
送信者:ore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
添付ファイル:********
件名:お疲れ様でした
こちらデュークだ。
イベントお疲れ様。楽しんでたなあハバキ。また機会があればよろしく。

追伸、ライブのセットリストを添付して置いた。次回の物販まで悔しがるといいwwww

宛先:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年5月28日00:18
送信者:tsuru_kame@tempura.com
件名:慰労とオマケ
はいはいカメコでございますー。お疲れ、いやいやそりゃあお疲れですよね。お休みなさい。

今回のイベントで撮った写真が欲しければ個人情報を垂れ流すのだーケケケ
59: 風呂敷広げるのに時間掛かり過ぎてワロリンヌwさらばー ◆DPehMNPNeE:2012/9/17(月) 11:19:23 ID:r2Pqb0DRLw
デュークは定型文とスルーのどちらがダメージが大きいか。若干悩んだが、返事をしないのは性に合わないので定型文に決定。

カメコ何がなんだか。読む側で補完しなければ内容がいまいち分からない。

単純に考えるなら「イベントで写真を撮ったのですけど、宜しければ郵送しますので住所を教えて頂けませんか」となるだろうか。まったく、翻訳家の気分だ。

齟齬が有ってはいけないので問い質す方向で固める。これで返信の二通は完成だ。送信前に時間を見ると、いい加減夜中になっていたので今日は寝かせることにした。

宛先:神楽 yononaka_zeni@meatball.com
送信日時:2012年5月28日02:44
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
変なのにモテモテだったようで・・・・・・。明日には居なくなってるだろうさ、ドンマイww

忘れないように神楽には軽くフォローのメールを送って完了。奴は明日夜勤だから起きているハズだ。

PCをシャットダウンした後、い草の詰まった枕を引き寄せて横になる。

い草独特の香りと自分の匂いは興奮していた神経を宥めてくれた。そして、落ち着けば身体の重さが気になってくる。

慣れない場所への外出、初対面の人間との交流。やはり、疲れが溜まっていたのだ。睡魔がゆっくりと近付くのを感じた。

嶺(ああ、もう明日遅刻してもいいかな)

丸まっているタオルケットを足で引っ掛けて拾う。適当に広げて腹をカバーしたらそれでいい。知らず知らずに背中を丸めている自分が滑稽だ。

意識を手放す寸前。鳴の澄ました表情が浮かんだ。似合わないのだからやめておけ。唇だけで、受け取る相手のいない言葉を虚空に投げた。
60: ◆DPehMNPNeE:2012/9/18(火) 13:38:55 ID:WX15Mx6PPQ
特筆すべき事象の無い朝。疲れは興奮の名残で見事に消え去っている。

正晴「おはようさん」

嶺「おはよう」

正晴「なんか機嫌良さそうだな。いいことでもあったか」

馬鹿正直に話しても趣味の合わない友人には退屈なだけだろう。いかにも対応に困る姿が目に浮かぶ。

曖昧な返事を返すと、会話はそこで途切れて場を沈黙が支配した。

正晴「・・・・・・」

嶺「・・・・・・」

空気が重い。普段は軽薄に笑っている友人がいつになく真剣な表情だ。俺はなにかまずいことをしたのだろうか、心当たりはない。

正晴「なあ、俺と嶺は友達だよな。仲は良い方だ」

正晴「だけど親友ではない」

正晴「ずっと前から考えてたんだけど。お前、自分から話ふらないよな。聞かれなければ自分の話もしない」

ズシリとのしかかる言葉。親友だったらノータイムで正しい答えを導き出せたのかな。いや、そもそもこんなこと言われないか。

正晴「お前にとって俺や鳴はどんな存在なんだ。それがわからないんだ」

嶺「・・・・・・」

正晴「責めるつもりじゃない。ただ気になってさ。時間はいくら掛けてもいいから答えは必ずくれよな」

どんな存在、か。遠退く背中を見詰めて考えれば考える程、胸の奥が渦巻いて答えの出る気配は見えなかった。
61: ◆DPehMNPNeE:2012/9/18(火) 13:41:05 ID:WX15Mx6PPQ
宛先:カメコ tsuru_kame@tempura.com
送信日時:2012年5月28日19:32
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:お疲れ様でした。
お疲れ様でした。相変わらずお元気そうでなによりです。
個人情報を垂れ流す・・・。郵送に住所が必要ってことかな?恥ずかしいから写真は要りませんので悪しからず><

宛先:ハバキ様wwww ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年5月28日20:21
送信者:tsuru_kame@tempura.com
添付ファイル:********
件名:RE:お疲れ様でした。
なんだいツーカーで伝わると思ったのに('A`)

個人情報の件了解でありますゞちっ、掲示板でばらまくプランがおじゃんね・・・・・・。
あ、いい景色撮れたので添付しておきますねー。携帯のカメラじゃなければもっといい写真なんだけど残念、いやあ残念

宛先:摩周 ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年5月28日22:36
送信者:yononaka_zeni@meatball.com
件名:畜生畜生畜生www
ふざけるなこぬ野郎www今日もいるじゃねーかwwwもうマジ助けてwwwww

宛先:神楽 yononaka_zeni@meatball.com
送信日時:2012年5月28日23:11
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:ご愁傷様wwwwwww
アレ、まだいるのか。腹痛いwww
頑張れ。とりあえず俺、今日は掲示板見ないことにするから。

こぬ野郎とか焦り過ぎw

宛先:摩周 ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年5月28日23:19
送信者:yononaka_zeni@meatball.com
件名:笑えない
第三者はいいよな。あいつ昼にも居たんだぜ。神楽ちゃんちょっと本気で身の危険感じちゃう。
62: ワンと言えばツースリーサイレンの音高らかに さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/9/18(火) 13:43:46 ID:WX15Mx6PPQ
宛先:神楽 yononaka_zeni@meatball.com
送信日時:2012年5月28日23:30
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:RE:笑えない
とりあえず掲示板見るのはやめて仕事をしよう。

宛先:摩周 ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年5月28日23:36
送信者:yononaka_zeni@meatball.com
件名:RE:RE:笑えない
うげ、そこはさあ相談に乗るよ。とか言うべきタイミングじゃない?なんかドーラーイー

宛先:神楽 yononaka_zeni@meatball.com
送信日時:2012年5月28日23:43
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:RE:RE:RE:笑えない
メールに集中して事故でも起こされたら、そっちの方が問題だよ

ドライなのは元から。

宛先:摩周 ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年5月28日23:51
送信者:yononaka_zeni@meatball.com
件名:RE:RE:RE:RE:笑えない
優しいんだか、クールなんだか。しっかし、メールだとレスポンス遅いから時間くうな。

つか、なんかあった?

宛先:神楽 yononaka_zeni@meatball.com
送信日時:2012年5月28日23:58
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:RE:RE:RE:RE:RE:笑えない
神楽が仕事中でなければ話ぐらいは聞くから。メール、負担になって来た?

宛先:摩周 ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年5月28日00:27
送信者:yononaka_zeni@meatball.com
件名:ごめん立て込んだ
やっぱり何かあったろ?わざとらしいんだよ。たまにゃ、神楽お姉ちゃんに相談しなさいw

忙しくなってきたから、また今度!またなー
63: 名無しさん@読者の声:2012/9/19(水) 19:07:09 ID:brSrHsV4b2
支援
64: ◆DPehMNPNeE:2012/9/20(木) 14:18:28 ID:Fnqx.ghFpU
「あたしの嶺君が元気ないんだけど」

わざとらしく足元を蹴る動作をしながら口先を曲げる。作られた動作と詰まらない冗談は感情を逆なでするには充分過ぎた。

正晴「なら慰めにでも行けよ」

「・・・・・・マジでお冠?」

正晴「お冠」

頭の左右で指を立てる正晴。隣り合わせの悪友は人の悪い笑みを崩さない。綱渡りが好きな彼女には怒るだけ時間と労力の無駄だというものだ。

「そっかー」

正晴「そうだ」

「原因は?」

正晴「性格の不一致」

「夫婦か」

言った方も言われた方も吹き出した。おかげで正晴にも余裕ができたのか、多少表情が和らぐ。

正晴「実際そうなんだから仕方ない・・・茶化すなよ」

「もしかして難航してる?」

正晴「見たところ航路自体がない」

例えに乗っかって端的に述べた。鳴は嶺の眼中に入っていない。少なくとも恋愛対象には。

友人の範疇には入っているとは信じている。だが、鳴を、自分を、ぞんざいに扱っているような気がして言葉にできない不快感が募る。

正晴「あいつ自己完結しすぎなんだよ。話し掛けられたから話す、こういうときこうするのが普通だからする」
65: 支援ありがとう、これからもハッピーうれピーよろピくねー さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/9/20(木) 14:22:11 ID:Fnqx.ghFpU
正晴「そんなんじゃ、俺達のいる意味ないだろ」

「嶺君は嶺君なりに誠実だよ、みんなと形が違うだけで」

恐ろしい程に真っ直ぐな瞳。優しい口調で宥める発言のその内容は距離を示すようにしか思えなくて、共感からは最も遠く思えた。

正晴「怖いなお前」

「久しぶりに言われたよソレ」

正晴「心配になるからやめろよその瞳」

作られたモノの中でただ一つの天然物。黒く深い瞳はいつも不意に訪れる。

今まで瞳について触れる人間がいないという事は、見せる人が限られているのだろうか。それともただの正晴の思い込みか。

「なんでさ、普段通りっしょ」

正晴「お前、今日はもう休め顔色がよくない」

「嫌だ」

正晴「言って聞く奴ではない、か」

手足を伸ばして息を吐く。お節介な性分も抑えるべきか。いつも結果がついて来る訳でもないのだから。

「そうそう、だから正晴なんかと友達になれるんだよねえ」

「めんどくさい人大好きでしょ?」

正晴「知らん。たまたま周りに面倒な奴がいるだけだ」

キャッキャと喜ぶ姿を眺める。はたして彼女は心から喜んでいるのか。

そして彼女がスカートのポケットからチラシを取り出してメモを取り始めたときに「ああ、嶺と同じだ」と思いすとんと落ち着いた。
66: ◆DPehMNPNeE:2012/9/21(金) 17:33:10 ID:2GBMj/wAFM
時折、窓から花壇を眺めていた。お行儀良く並ぶ花と花の群れ。隅で萎れた花が隣の花に寄り添っていた。この間違った風景を仲睦まじく思えたのはいつ頃までか。

鳴(私と嶺みたいだ)

弱い花が背筋を伸ばした真っ直ぐな花に寄生し、不必要な陰が生まれる。結果、陰のところだけ細く脆くなってしまう。

依存心が強い私と奇形の嶺。歪な関係から解き放てばまだ取り返しはつくのかな。どうやら嶺には陽の光を与えてくれる人もいるらしいし。

いじましく正晴に探りを入れさせた。憧れの人という単語を聞いただけで私はあっさりと打ちのめされた。こんなに弱い私は嶺の隣にいてはならない。

決めてからは早かった。行動力には自信がある。ただ、残念なことに決断力が致命的に足りなかっただけで。

宙ぶらりんだった距離感をリセット。幼なじみなどと甘々な期待の詰め合わせは現実にはない。

近からず遠からず。あれだ、女子のリーダーグループとの距離に近い感覚だ。核心には触れずほどほどに付き合い、ウナギが如くすり抜ける。

正晴がなにか言いたいそぶりを見せるが、声を掛けては来ない。流石、空気を読める奴。正直かなり気を遣わせていると思う。

正晴は目に見えないラインを感じ取る稀有な人物でその評価は昔から揺るがない。惚れる対象があちらなら楽だったのだけれど。こればかりは選べないのだからしょうがない。

初恋は実らないもの。愉快な話を語るようにはしゃいで肩を叩く___えーっと・・・二条さんだっけ名前が特徴的な___嶺の隣の席の人と空笑いしながら無駄な事を考えた。

「二条。そうよ私は二条。愚民共よ、名字で呼ぶのを許してあげるわ」
67: 物語は進み、緩やかに佳境へ迷い込む さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/9/21(金) 17:35:02 ID:2GBMj/wAFM
チュリチュリン(効果音)
諸君達に最新情報を教えよう!

穏やかに日常を過ごしていた北峰嶺。その背中に忍び寄る破滅の影。

光があれば闇がある。構って貰えない友人達のジェラシーに襲われる日々が幕を開けた__________

粘着片思い♀来堂鳴。
彼女の構ってちゃんオーラは並の人間ではスルーできない危険かつ端迷惑な代物だ!

お節介マイスター♂遠見塚正晴。
彼の発言は稀にグサリと刺さるぞ!純然たる好意を盾に取る重さは他に類を見ない。

現人神、二条♀※名前は検閲により削除。
トラブルメーカーはどのような場合でもトラブルメーカーである。天上天下唯我独尊。

俺の後ろに立つな♂デューク=東。
二条と同じ香りのする人間。嫌な予感が拭えない。意外と常識人?期待はするな。

ハイパーメディアクリエイター♀鶴田カメコ。
天然素材。不動(うごかず)の嶺でさえアクティブに抑えに廻らねばならない希少生物。

ストーカー吸引力の変わらないただ一つの♀神楽。
趣味仲間。幸が薄くお人よし。最近、ハバキ様姿の嶺をパパラッチするのがマイブーム。

主要キャラクターは出尽くした。後は開いた風呂敷を包むのみ。ギャルゲーならば選択肢一つでルートは変わる。だが、残念ながら、これは一本道の決まりきったストーリー。

もしも、もしもこの物語を天から見下ろす者の意思があれば__________

道は、微かに、揺れて、奇跡とも呼ばれる力で未来は新たに拓かれるのかもしれない。

現在の北峰嶺の適合率、平面適合率72%立体適合率27%誤差1%高位適合者128名中7位。警告!平面適合率80%以上で日常生活に支障をきたします。
68: ◆DPehMNPNeE:2012/9/22(土) 23:42:49 ID:o5YQ0wPnxI
久しぶりに生じた悩み事。思考に没頭しつつ手慰みに手芸を始めた。手芸なら失敗しても手直し一つで済む上、時間も無駄にしない。

絡み付く網目模様が意識を内に内に引き込む。友人と親友の境界線。それはなんだろう?長年連れ添った関係であってもわからない。

友人の望むこれからの関係はなに?距離感がわからない。今より近い距離なんて有り得ない。

他人との距離は1m、友人との距離は45cm。親友は?恋人は?息苦しくて、胸の動悸が酷くて、視界がモノクロに支配されて。

嶺(子供の頃、よく貧血で倒れたなあ)

倒れたときには大体友人が介抱してくれた。友人は倒れない。だから俺は助ける機会もない。友人、正晴は一方的な負担に疲れたのだろうか。

恥を忍んで告白するならば苦手なのだ。型が決まっていないものは。他人の真似をして隙間を埋めても取り繕う鍍金は剥げてしまう。まるで"探究会"の白塚菖蒲のように。

勝手にシンパシーを感じているが菖蒲と俺とは性格はまったく違う。でも、本人のみに見える過程をすっ飛ばせば結果が同じだ。大差ない、多分。

駄目だ。原因が予想できても、質問の意味がわからない俺にはきっと望む答えは出て来ない。

仮になにかを「おかしいよ」と指摘されたとしても「ここが」「こうだから」「こうなる」と細部まで指定されなければ理解できない馬鹿なのだ。俺は。

馬鹿は馬鹿で自覚していればマシになるハズだ。素直に聞いてみよう、必ず教えてくれる。なぜなら友人なのだから。

手袋を編み終え、鞄に入れる。友人は手袋に興味があったみたいだからちょうどいい。オレンジ色の手袋は冬場でも目に暖かい。
69: スカポンティーヌ・モエさん最高w さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/9/22(土) 23:44:43 ID:o5YQ0wPnxI
気分転換に格ゲーを引っ張り出した。今日は人と関わりたくないからオフラインで。蛸足配線のコードの足を一つ抜いて新たに挿し直す。

起動して一戦。落ち着かない。これがなにも手に付かない状態という奴か。リセットボタンの出番は速かった。

掲示板は神楽のストーカーの独壇場。外出するにもコンビニぐらいしか宛てもなし。ついでに言えば就職組なので勉強に対するモチベーションもだだ下がりだ。

嶺(そういえば、正晴や鳴は進学か)

ひょっとしたら進学組にも気を遣えと遠回しに言われただけなのかもしれない。都合の良い考えは心地好い。

友人は成績優秀なれど、悩みでもあるのかも。幼なじみはムラが凄まじい。苦手な教科の勉強でも手伝いをしようか。

隣人が料理を教えて欲しいとかなんとか言ってたような気がする。

こうして並べてみるとやるべきことが沢山あった。もしかして、第三者視点だと俺は酷く怠惰に見えていたりするのか。

忘れないようノートにメモを取ろう。幸いノートは白いページの方が多く、今後たいして埋まる予定はない。

色鮮やかな下線の引かれた英語のノートがピッタリだ。三色のラインで黒いボールペンの味気なさを相殺するのだ。

縦横無尽。乱雑な書き取りの合間、余白をメモで潰す。無駄がない。年単位で使って半分も使わないのにノートは何故このように不必要な厚みがあるのだろう。

嶺(・・・・・・あ)

手芸で編んだ手袋、片手しかない。

とりあえず、再び編み物との格闘が約束された。
70: ◆DPehMNPNeE:2012/9/25(火) 20:04:43 ID:28sZqGGQJs
嶺「なあ正晴、この前の質問の意図はなんだ」

登校中、脈絡なんか無視してぶつけてみる。幼なじみは今日も来ていない。友人は目を見開いた後ため息を吐いて応じてくれた。

正晴「お前はそういう奴だったな」

正晴「普段の嶺の態度がさ、顔見知り程度の相手に対する態度に感じられたんだ。それこそまるで全部社交辞令みたいな」

確かめるようにところどころ途切れて紡ぎ出される。ゆっくりと内容を咀嚼して飲み込むペースを考えればちょうどよく感じた。

正晴「そのくせ同じようなことを鳴がしたらご機嫌ナナメになるし・・・まったくもって理解の外だ」

正晴「今、お前が聞かなければわからなかったように、俺も聞かなきゃわからない。これはいささか友人としては格好がつかん話じゃないか」

言葉もない。けれど、今より近しい関係を築いたとしても俺は聞かなきゃわからないだろう。

正晴「しょげるなって。責めてる訳じゃない」

嶺「嶺と鳴は、友達だよ」

最低限、言わなければならないことを搾り出した。今の気持ちすら伝えられなかったらあまりに惨め過ぎる。

正晴「それだけでも聞けてよかった」

卑怯な一時しのぎはあっさり看破された。友人の優しさが身に染みる。

きっと友人には不信があって、一朝一夕には無くならない。上手く俺を切り捨てないのが友人の甘さで、苛む不信の素すら理解しないのが俺の酷さだ。

何処でもう一人の自分が終わりを予感していた。私の居場所は此処ではない、と。
71: 虫の鳴き声が風流だっぜ さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/9/25(火) 20:06:48 ID:28sZqGGQJs
「なんだ、なんだい?青春だねー」

人混み掻き分け乗り越え隣人参上。通学時間、学生がひしめき合う雑踏の中で会話を聞き取れる聴覚だけは心の中で褒めておく。

正晴「またうるさいのが気やがった」

「青い、青いねー青い果実だ。もいじゃおうか」

嶺「・・・・・・」

視線がこちらに飛んできた。青い果実とは俺のことか。

「そんなに正晴を振ったのが辛いか。いや、マイノリティだからね男同士は厳しいと判断した君は正しい」

正晴「今はやめておけ」

「そう?なら邪魔者は去るとしましょうか。お幸せに・・・あ、これは冗談でもなんでもないから」

嵐が如く現れて、ひたすら場を荒らして去って行く。これはもう隣人の毎度のパターンとして定着しつつある・・・のか。疲労感が膨らむばかりなので遠慮願いたい。

嶺「気を遣ってくれてたのかな」

正晴「騒ぎたくて騒いでいるようにしか見えないのがまた微妙なところだわな」

嶺「そうだ、これ。確か手袋に興味持ってたよね」

正晴「うわあ」

あからさまに嫌な顔をされた。ちょっとショック。

正晴「男に手編みの手袋貰ってどうしろって言うんだよ」

「キマシタワー」

正晴「様子窺ってるんじゃねえ!消えろ!」

72: 72レスめ! ◆DPehMNPNeE:2012/9/27(木) 22:11:53 ID:ZiBrhD4LL6
赤陽テレビジョン。モーニングNEWS.505

御法川「はい、今日も早朝から生放送モーニングNEWS.505です」

飛田アナ「本日のゲストは四ツ谷重工広報部部長の朝香清文氏です。おはようございまーす」

朝香「おはようございます。ご紹介に預かりました朝香です。どうぞよろしく」

飛田アナ「いきなりですが、質問を一つ。なんでも御社では"平面旅行"という新規プロジェクトを行っていますが、どのような内容でしょうか」

御法川「それは私も気になりますねえ」

朝香「我が社の"平面旅行"プロジェクト。正式名称"ダイヴァールート"は人間の記憶を司る脳の一部、海馬から情報を引き出して新たに仮想空間を作り出すものです」

朝香「平たく言えばバーチャルリアリティですね。まだ手前ですけれど」

飛田アナ「いやはや、本当なら素晴らしい試みだと思います。ねえ、みのさん」

御法川「しかし、人を募って人体実験紛いだと一部の団体からの圧力もあるのだとか」

朝香「私共の行っている事は法律の範囲内であり、安全性も証明されています。なにより利用者様に楽しんで頂いている自負があります」

御法川「いっそ団体の人にも試して貰っちゃえばいいかもね」

飛田アナ「あはは」

朝香「事が事だけに、どうしても反発はありますからね。理解の一助になるのであれば」

飛田アナ「厳しい視点によって改良の種になるかもしれませんね」

朝香「個人的にはマスコミの皆さんの視点の方が怖いです」
73: このSSは フィクション で あり、登場人物、団体名等は 全て架空のものです  さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/9/27(木) 22:16:13 ID:ZiBrhD4LL6
宛先:摩周 ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年6月12日5:19
送信者:yononaka_zeni@meatball.com
件名:赤陽テレビ見た?
朝香△

宛先:神楽 yononaka_zeni@meatball.com
送信日時:2012年6月12日5:33
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:RE:赤陽テレビ見た?
オッサン趣味全開もここまでくると清々しい

宛先:摩周 ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年6月12日5:42
送信者:yononaka_zeni@meatball.com
件名:RE:RE:赤陽テレビ見た?
うるせーやい。まあ、これで平面旅行がマジモンだって証明されたな

宛先:神楽 yononaka_zeni@meatball.com
送信日時:2012年6月12日5:59
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:RE:RE:RE:赤陽テレビ見た?
心置きなく次回もレポするわ。てか、四ツ谷重工が実在することに驚きを隠せない。

宛先:摩周 ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年6月12日6:09
送信者:yononaka_zeni@meatball.com
件名:RE:RE:RE:RE:赤陽テレビ見た?
海馬がどうたらってうさんくせー。本当になにも後遺症とか出ないのかよ。

宛先:神楽 yononaka_zeni@meatball.com
送信日時:2012年6月12日6:23
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:RE:RE:RE:RE:RE:赤陽テレビ見た?
お前カッコイイって言ったばかりだろwww不安になるからやめれwwww

宛先:摩周 ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年6月12日6:36
送信者:yononaka_zeni@meatball.com
件名:これ、一応本気な
見た目と中身は別腹。摩周もやめとけ赤陽がフォローしてるし下手すりゃ人死に出んじゃねーか。
74: アーイキャーンフラーイ! さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/9/29(土) 07:08:52 ID:52ogqqnND2
「嶺君からお誘いがきた」

正晴「なにの」

つまらなさそうに呟いて言葉を拾わせる。二条は大事なことでも瑣事でも関係なく同じ動作で吐き捨てて、二度は言わないから。

「料理。前に教えて欲しいって頼んでお断りされたやつ」

正晴「はあ、なんで今頃になって」

「なんでだろうねー」

両手を空にかざしてわっかを作る。白色の天ならぬ天井が眩しい。閉鎖された空間ならイレギュラーなどなくて落ち着く。

「鳴ちゃんも誘ってやれば進展するかな」

正晴「鳴は厳しいんじゃないかな。意地張ってる」

「じゃあ正晴君、一緒に行こうよ」

試していた。いつも茶化して遊ぶ振りをしながら怯えている。性格が悪い卑怯者だと自覚
がある。あるからなんだ。

正晴「嶺と二人じゃ間がもたないか」

「だって嶺君私のこと苦手っしょ」

悪い感情は皮膚で伝わる。表情なり顔色なり接触なり。本当は嫌なんだ。知りたくもないのに理解が及んでしまうのは。

正晴「鳴が行かないならやめとけ」

「けちー」

正晴「断っても嶺は怒らない。無理して行って楽しいかよ」

甘い、あまあまベタベタだよ。アンタはお母さんか。自分に甘くなっちまうからやめてけれ。

「ああ、正晴君と一緒に屋上からアイキャンフライしたくなってきた」
75: ◆DPehMNPNeE:2012/9/30(日) 23:04:03 ID:sHbGVStAnM
宛先:ハバキashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年6月18日21:08
送信者:ore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
添付ファイル:********
件名:両手に花
ニヤリ

宛先:デュークore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
送信日時:2012年6月18日21:41
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:無題
その手の冗談はちょっと・・・・・・

宛先:ハバキashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年6月18日21:59
送信者:ore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
件名:スマン悪気はない
写真写りは良いんじゃないか、うん。折角ハバキ様の格好してたんだし恥ずかしがることはないぞ。

宛先:デュークore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
送信日時:2012年6月18日22:20
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:知・り・ま・せ・ん
カメコから貰ったんですかね。

そういえば平面旅行二回目も目処が立ったとか。

宛先:ハバキashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年6月18日22:30
送信者:ore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
件名:マジでスマン
そうそう。サバゲーやってたらいつの間にやら紛れ込んでたんだよカメコ。

で、挨拶がてらネガを渡された。他の仲間にも百里とかの写真のネガを渡してたなあ。顔が広いもんだ。

おお、アレな。二回目は俺パス(―_―)ノ“
ちょっくら調べたいことがあるんよ。まあ楽しんできなー。
76: ワンダーキャホーイwww さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/9/30(日) 23:05:47 ID:sHbGVStAnM
宛先:デュークore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
送信日時:2012年6月18日22:45
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:調べたいこと?
アングラな話ですか?また人様に迷惑を掛けているんじゃないでしょうね。

宛先:ハバキashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年6月18日22:56
送信者:ore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
件名:言わなきゃダメ?
アングラはアングラだわな。確定情報がないからあんまり他言したくないのよ。結果的にデマを流したらいろいろ困るしさ。

宛先:デュークore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
送信日時:2012年6月18日23:09
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:なんか気になる
言えないなら仕方ないですけど・・・・・・

無茶はしないで下さいよ。どうせ泥を被るのは周りなんですから。

宛先:ハバキashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年6月18日23:16
送信者:ore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
件名:悪いね
言ってもいいっちゃいいが、ねえ。ハバキにとっては面白い話じゃないぜ?
わざわざ不快な思いをしたいって言うなら協力しちゃるがw

宛先:デュークore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
送信日時:2012年6月18日23:30
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:もういいです
からかってるんですか。既に不快ですよー、まったくもう。

好きにして下さい。もう寝ますから。お休みなさい。
77: こんな本筋も投下もスローな話について来て下さる方がいるのなら感謝。ぐだぐださんです。 さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/10/3(水) 07:27:06 ID:pP/gi4jzXc
なんだか平面旅行に否定的な人が多いような気がする。身近なところでは神楽、多分デュークも。カメコもあんまり面白くなかったと言っていて悲しい。

やっぱり適合率で見えるものも変わるのかしら。画質の差みたいな感じで。

愚痴愚痴歎きながら次回の準備を進めて行く。前回でカメコに教えて貰ったおかげで化粧の塩梅がわかったのは大きい。

暇を見て制服も繕い直さなくちゃ。実際に着て歩くと様々なアラが露見されるのも収穫の一つだった。

完璧なハバキ様の図を描く日は近い。

財布をチラッと眺めた。

・・・・・・財布が底を突く日も近い。

夏休みにバイトを増やそうか。伯父さんのところでグッズを作らせて貰っているうちに見込まれたのだ。

お金が欲しいので二つ返事でアルバイト、後はなし崩しで卒業後には就職とあっさり決まった。

そんなお世話になっている身で申し訳ないが、ここは譲れない。伯父さんのところでの仕事の勉強時間をいくらか削って他のアルバイトに充てる。

スケジュールが埋まる埋まる。一週間に半日程度の休みをなんとかキープして確定。下手な仕事人より忙しいのではなかろうか。

去年の夏休みには、親父より早くに家を出て親父より遅く帰る日も多々あって心配を掛けてしまったものだ。同じ轍は踏まないよう細心の注意を配る。

過干渉を招いた人間の行く先は神楽が実体験を持って教えてくれた。

彼女は学校卒業と同時に夜勤のある介護職に就いたものの、それでも対処に困り、別居を経て今は引越を重ねているそうだ。

嶺(このままでは自分の未来も容易に想像できるな、勘弁してくれ)

78: ◆DPehMNPNeE:2012/10/4(木) 16:09:30 ID:8pF3a50zjo
深夜。寝付けなくて夜風に当たりに外へ出た。

一歩二歩三歩。ほんの少しだけの移動でも瞳に映る景色は変わる。気付けば私は嶺の部屋の窓を凝視していた。

電気はすぐに落ちる。この時間なら当然か。毎日夜更かししてるのなら体を壊してしまわないだろうか。

黒猫「にゃー」

鳴「猫か、おいでー」

物陰から踊り出た黒猫を捕まえて抱きかかえる。中々重く、人懐こい。おそらく餌付けされているようだ。

鳴「夜は目が細くて怖いねー、キミは」

頭を撫でたら逃げ出した。なんでだろ。

警戒と期待の間、曖昧な距離。このまま別れるのも惜しくなって一つ提案をしてみる。財布を取り出してヒラヒラとかざして。

鳴「一緒にコンビニ行こう。猫缶買ったげる」

言葉を理解できるんだか、黒猫は歩みを進めた私について来た。現金なものだ。

鳴「賢い賢い」

猫「にゃあ」

小首を傾げる仕草がかわいい。こうして一人と一匹の夜の探検が始まった。

小さな橋を渡って。

点滅する信号機をすり抜けて。

速度制限から解放された車達を見送って。

朝も夜も同一。不夜城、コンビニにたどり着く為に。

鳴「それゆけー。まるいちきゅうのすいへいせんに、ぼくらはきーっとまーている」

鳴「くるしいこともあるだろさ、かなしいこともあるだろさ、だけどぼくらはくじけない!なくのはいやだわらっちゃお、すすめー」

79: ちゃーす、これは流行る(キリ さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/10/4(木) 16:11:22 ID:8pF3a50zjo
鳴「あ、あんにゃろ。途中で逃げたな」

鳴「コンビニはもう目の前なのにさあ」

着いた途端に買う物が必要なくなってしまった。私はいつもこうだ。空転空転空転。

踵を返してさようなら。明日も学校がある、お遊びは切り上げだ。どうせ特に欲しい物なんかなかったのだ。

チャラ男「ちゃーす」

鳴「え?あ、はい。ちゃーす」

ついつい挨拶をしちゃったけど、まずいかも。派手な服着ていかにもガラが悪そうな人だ。まして時間が時間でもある。

チャラ男「驚かせてスンマセン。この前、お面被ってた女と一緒にいたでしょ」

チャラ男「俺、その女と知り合いなんすわ。で、最近元気なくて心配で心配で」

鳴「ごめんなさい。心当たりありません」

怖いよ。そんなに一気に言われてもわからない。私、貴方の知り合いでもなんでもないのに。

チャラ男「そっすか。急にスンマセンした」

あれ?もしかして実は良い人?時間差で頭に入った言葉の内容と今の表情で天秤が若干傾いた。

鳴「行っちゃった。怖がり過ぎて失礼だったかも」

鳴「でも仕方ないよね」

鳴「・・・・・・」

返事をくれる相手はもういない。

鳴「にゃー」

悲しい。
80: 葦原學園探究会 ◆DPehMNPNeE:2012/10/7(日) 14:11:37 ID:1xl41vWnoM
學園の旧校舎の南側、かつて防空壕として使われていたとも落武者の流れた先とも噂される祠がある。

白塚菖蒲は考える。どうしてこの場所が正式に調査をされないのかを。

推測に推測を重ねて一つの道が見つかった。それは十三年前の内乱事件である。当時の陸軍中将、巾木重成による大量虐殺及び国会転覆の目論見。俗に言う一・二三事件だ。

政府の公式見解では祠内部の白骨や装備品、意味不明な地図などは巾木元帥の部隊のものだとされる。

だが、この見解には不明瞭な点がいくつか挙がる。

まず、一・二三事件の被害者は葦原の町民になのだが、葦原の地では戦闘の行われた形跡のない点。

次に、被害者である町民の死体や骨が一切見つからない点。

最後に、鎮圧した当時の陸軍司令、須崎直人の対応が記録されていない事。注目すべきは、記録は消失したのではなく元々されていないという点だ。

きな臭い。とても。何故、被害者が見つからないのに被害者と断定されるのか。何故、巾木中将の部隊が葦原で"非戦闘地域"で死んだのか。

侵入禁止区域の立て看板を無視して進む。此処から先は白骨やら火薬やらがあるかもしれない。

観察に目を取られていた菖蒲は、背後、自らを追う黒い影に気付けなかった。

慎重に迫る影。手に獲物を持っていないのがせめてもの幸運か。おそらくは、やがてたどり着く行き止まりで運命は決するのだろう。

覆うように被さる影。飲み込まれたかに思えたそのとき。
81: 葦原學園探究会 巾木中将が一つ元帥になってる。またやっちまった・・・。熱があるときは駄目ダナwさらばー ◆DPehMNPNeE:2012/10/7(日) 14:14:47 ID:1xl41vWnoM
一閃。絡んだ黒い手は捕まれてそのまま軸となり身を投げる寄る辺となった。

菖蒲「病弱なお嬢様とでもお思いになったかしら」

照明を相手の顔に当て、問い掛けた。

「あちゃー、驚かすつもりが驚かされたよ」

悪びれず笑うこの人物は___ええと探究会の___

そうだ。入会のときにしつこく絡んできた宮川光だ。短慮を起こすような人物には見受けられなかったが。

宮川「やめておきなよ、この學園は危ない。年間行方不明者は断トツだ」

そういう事か。心配して警告がてらに襲い掛かったと。確かにそれなら彼女の人物像に当て嵌まる。

菖蒲「危ないって、貴女みたいな同性愛者が?」

宮川「強がりもほどほどにな。あの巾木会長ですら近寄らないんだぜ此処」

何か言い返そうと思うも、巾木会長の名前を出されると痛い。言うまでもなく、この場所を誰より調べたいのは巾木中将の孫娘の会長だろう。

菖蒲「・・・・・・巾木会長に免じて許して差し上げます」

宮川「流石、菖蒲!巾木会長ファンクラブ会員一号なだけはあるね」

菖蒲「調子が良いったら、まったく」

土塗れの宮川に手を貸して起こす。足元がふらついた宮川を抱き上げる形になり、互いに若干照れが生まれた。

宮川「抱き上げるのはよくやるけど、抱き上げられるのは始めてかも」

菖蒲「貴女、やっぱりそっちの趣味があるのね。離れて頂戴」
82: ◆DPehMNPNeE:2012/10/9(火) 15:22:34 ID:XopoxEd.XI
一章一章で区切りを付ける形になっているみたいだ。ただ、前回と違って今回はまるまる菖蒲視点で同調された。

圧倒的な進歩の速さに目を見張るばかりで。調子に乗っていたら視界の隅に白骨を見掛けて吐き気を催してしまった。

嶺(リアルだって証なのは分かるけれど、キツイものはやはりキツイ)

折れた心に引きずられたのか意識がフェードアウトする。いや、平面旅行時のフェードアウトなので覚醒と言うべきなのかもしれない。

機械の方舟から身を乗り出し、周囲を眺める自分。薄暗いグリーンのライトは冷静になると少々不気味だ。まるで未来の世界に一人送られてしまったかのような悪寒。

嶺(これも不安を煽った神楽のせいだ)

寂しく響く安っぽい階段の音をBGMにして愚痴る。

モヤモヤとした気分を払拭する景気付けに物販で派手に散財。半ば寝こけるスタッフに声を掛けて、買い物の内容込みで仰天させてやった。

半端に余った時間をどうしよう。デュークの話していた白いゴミ拾いの登録でも行ってみるかな。

・・・・・・厄介事は御免だ。アウェイではしゃぐにも一人では腰が引ける。適当に革物を見繕って帰ろう。

この街なら牛や豚以外の珍しい革だって容易に見つかるハズ。そしてそれは、たとえ加工済みの製品であっても見ているだけで面白い。

古着を素材にして新しく服を造るのも良いか。ストックしてある素材と相談して買い足し買い足し、と。

帰りに電車に乗る際、荷物が多過ぎて乗車拒否を食らった。電車にも乗車拒否があるというどうでもいい知識を得る代わりに精神的に手痛いダメージを貰った。
83: ラクガキッズ! いつのまにか100KB越えてたwさらばー ◆DPehMNPNeE:2012/10/9(火) 15:24:30 ID:XopoxEd.XI
http://ryu.boy.jp/up/uf/20121009152125.jpg
84: ◆DPehMNPNeE:2012/10/12(金) 07:17:38 ID:oRETuIBz7E
331:名無しの探究者:2012/7/29(日)
18:10:15 ID:※※※※※※※※
探究部評価まとまったかな。

332:名無しの探究者:2012/7/29(日)
18:13:22 ID:※※※※※※※※
売上は悪かないな。前作を知らない奴にゃ評判いいんじゃないか

333:名無しの探究者:2012/7/29(日)
18:16:44 ID:※※※※※※※※
前作が8万ちょい。探究部は9万後半か・・・

334:名無しの探究者:2012/7/29(日)
18:22:25 ID:※※※※※※※※
竜山、調子に乗ってアニメ化とか言ってたなwwwお前は本当にwwwww

335:名無しの探究者:2012/7/29(日)
18:26:30 ID:※※※※※※※※
摩周じゃなくても怒りたくなる。前作を潰して人気取りか氏ね

336:名無しの探究者:2012/7/29(日)
18:31:21 ID:※※※※※※※※
探究部の流れじゃ中将なんの為にしんだのか・・・・・・

337:名無しの探究者:2012/7/29(日)
18:40:02 ID:※※※※※※※※
>>336
犠牲になったのだ

338:神楽◆592HaRAM26:2012/7/29(日)
18:49:28 ID:※※※※※※※※
立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花。神楽ちゃん参上だぜい。

摩周ー、大方の予想通り人気投票じゃハバキ様順位ひっくいわ。・・・・・・ついでに菖蒲もな。一緒に飲もうぜ・・・・・・

339:名無しの探究者:2012/7/29(日)
18:56:13 ID:※※※※※※※※
あまりに無情。

340:摩周◆MASYUuLIKE:2012/7/29(日) 19:03:19 ID:※※※※※※※※
呼ばれた気がした。今、新しく服を繕っているんだ。気持ち華やかな感じの。
85: ◆DPehMNPNeE:2012/10/12(金) 07:19:30 ID:oRETuIBz7E
341:名無しの探究者:2012/7/29(日)
19:06:32 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ

342:名無しの探究者:2012/7/29(日)
19:06:36 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ

343:名無しの探究者:2012/7/29(日)
19:06:41 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ

344:神楽◆592HaRAM26:2012/7/29(日)
19:06:43 ID:※※※※※※※※
>>摩周
現実逃避か、悪くない・・・・・・

345:名無しの探究者:2012/7/29(日)
19:06:47 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんの体から出るお酒ペロペロ

346:名無しの探究者:2012/7/29(日)
19:06:54 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ

347:名無しの探究者:2012/7/29(日)
19:06:59 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんワカメ酒ペロペロ

348:神楽◆592HaRAM26:2012/7/29(日)
19:07:03 ID:※※※※※※※※
またいるうううううううううううううううううううううううう最近いなかったのにいいいいいいいいいいいいいいいいなんでだよ畜生畜生畜生!!!!!

349:名無しの探究者:2012/7/29(日)
19:07:08 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ

350:名無しの探究者:2012/7/29(日)
19:07:14 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんのお酒ペロペロ美味しい美味しい

351:名無しの探究者:2012/7/29(日)
19:07:20 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃん脇汗ペロペロ

352:名無しの探究者:2012/7/29(日)
19:07:29 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロお仕事忙しい?
86: ◆DPehMNPNeE:2012/10/12(金) 07:21:50 ID:oRETuIBz7E
宛先:ハバキashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年7月30日19:56
送信者:ore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
件名:こちらデューク、報告する
おっす久しぶり。前言ったアングラな話の裏取れたけど聞くか?

宛先:デュークore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
送信日時:2012年7月30日20:12
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:無題
話したいのなら聞きますけど。

宛先:ハバキashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年7月30日20:26
送信者:ore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
件名:まだ怒ってるか?スマンって
うんとな"ダイヴァールート"の四ツ谷重工はさ、三ツ谷重工の子会社なんだ。ガチで陰謀の香りがしてきたろ?

だいたい"ダイヴァールート"始める前はペーパーカンパニーで、今も採算度外視だ。絶対裏はあるだろうな。ハバキも覚えておいた方がいいぜ。

宛先:デュークore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
送信日時:2012年7月30日20:36
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:なんか盛り上がってキタwww
現実で陰謀の中心とか胸が熱くなるわw

29日、東亰・璞浜市でひき逃げ事件があり、塗装業金田つとむさん(18)が同日午後11時50分頃、搬送先の病院で死亡した。事故があったのは璞浜市の交差点で、29日午後5時前、金田さんの自転車と白のワンボックスカーが出合い頭に衝突した。この事故で、自転車に乗っていた金田さんが頭を強く打ったとみられる。近隣住民の証言によれば、現場からワンボックスカーを運転していた40〜50歳くらいの女が立ち去ったという。また道路にブレーキを掛けた痕跡は見つけられず、警察は悪質なひき逃げ事件と して捜査している。

梅日新聞。
87: ピンクのパンダが黒い部分を渡そうとしてくる さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/10/12(金) 07:25:02 ID:oRETuIBz7E
宛先:ハバキashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年7月30日20:55
送信者:ore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
件名:そいつ、一回目のとき居たぞww洒落にならん・・・・・・
確かに喫茶フルールで話した。店員も知っている。お前達と会う前に先に行っちまったがね。

宛先:デュークore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
送信日時:2012年7月30日21:04
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:冗談ですよね
いやいやいや。本当に怖いんですけど!?
朝霞の赤陽テレビ出演に、三ツ谷重工に参加者ひき逃げ?役満じゃないですか。

宛先:ハバキashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年7月30日21:16
送信者:ore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
件名:信じる信じないはあなた次第
まあ夜道には気を付けるんだな

宛先:デュークore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
送信日時:2012年7月30日21:30
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:信じたくない
引きこもればなんとかなる・・・か?駄目だ、住所も最初に記入しちゃった。怖すぎる。

宛先:ハバキashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年7月30日21:47
送信者:ore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
添付ファイル:********
件名:俺からのネタはこれでとりあえずおしまい
三ツ谷重工の酸素カプセル"ヴィジョン"見れば見る程"ダイヴァー"に似てるだろ。

実はこの"ヴィジョン"何年か前に原因不明の回収騒ぎを起こしてそれきりの代物だ。当時は幻覚が見えただの色々言われてたな。
88: 特撮は昭和に限る さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/10/15(月) 13:20:28 ID:uJHdcEMxZc
薄々感づいていた。あからさまなイベント、それでいて金の匂いがしない夢のようなイベント。現実という名の煉獄から足場を移した俺達に見えた幻の世界。

友人ですら利害関係があるのに企業が慈善活動など行う道理がない。チャリティーだって売名で。裏がある。まだまだ子供の分際でも理解できる簡単な理屈だ。

諭されていたのに必死で目を逸らした事実。

金田つとむ。気になって調べた彼の写真、セピア色に写されていた顔には見覚えがあった。

地獄大使の格好をした男を中心に戦闘員が集まる中にいたチャラチャラとした男。場違いに思って脳裏から離れなかった人物だ。

彼は白のワンボックスカーに乗せられて去って行った。そう、白のワンボックスカーだ。でも40〜50歳女性はいなかった。

どこまでが真実でどこまでが嘘なんだ。

異様な空気を察して目を背けたのは俺だけではない。皆逃げたのだ。自分には関係ないと。

だが、現実では無関係ではなく同類であった。死んでしまった。殺されたのか?理由は何故?次は誰だ?

彼は仲睦まじく大使と昭和の特撮について語っていたではないか。知人ではなかったのか。全ては計算尽くなのか。

次回からは適合率40%未満の人間は切られるらしい。機器の調整とのことだが、今の状況からは鵜呑みにする気になれない。

つまりはターゲットは高い適合率の人間。認めたくないことに自身に綺麗に当てはまる。金田つとむは適合率何%だったのだろう。

高い人間が死ぬのか低い人間が死ぬのか。もしかして両方か。怖くて怖くて仕方ないのにどうしてもそれだけは確認したかった。
89: ◆DPehMNPNeE:2012/10/18(木) 14:56:41 ID:RHXo8Ihs.g
カレンダーに×と〇を付ける。外出した日と外出しなかった日を明確にするためだ。

夏休みでよかった。これが学校のあるときなら怪訝に思われただろう。

矛盾した行動を自覚しながらも繕いものをする。無為に過ごすのは堪えられないから。濁った思考は煮詰まりつつある。

元来の性質が開き直るタチであるからして。自暴自棄みたいな状態になりそうだ。それは今までかろうじて性向を持っていただけで手綱は酷く緩い。

グッズを作ることで放出していた熱は既に矛先を"ダイヴァー"に向けていた。まるで中毒だ。常日頃何かに酔わずにはいられない。

向こうに足場があるからいけない。夢はときに人を誤らせる。

言い訳が泉が如く湧き出でて。矛盾した行動と同じく、矛盾した思考が完成した。

怖い=知りたい
知りたい=欲しい
欲しい=手に入れる
手に入れる=手に入れた
平面<立体
平面>立体
平面≠立体
平面=立体

感覚がスライドして歪んで行く。認知が正しくないのは狂っているのと同義ではないか?ならば俺は初めから狂っている。

恐怖は消え去り、欲が取って代わる。異常だと警笛を鳴らす自分が霞んで見えた。そんなもの幻だ。幻、だ。

軽快な音楽。チャイムが鳴った。警笛ではなく現実の音。耳障りな音。

他者が自分の領域に侵入してくる。そんなのは嫌だ。無視をすることに決めてぼうっと窓の外を眺めていたら、鍵の開く音が聞こえた。
90: ◆DPehMNPNeE:2012/10/18(木) 14:57:50 ID:RHXo8Ihs.g
うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

情緒不安定だ。
91: 疲労感がヤヴァい さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/10/18(木) 15:00:02 ID:RHXo8Ihs.g
うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

客人から返された。声に出ていたらしい。多分鳴の声か。
92: ◆DPehMNPNeE:2012/10/21(日) 19:38:58 ID:ABkti..Zgg
しばし休憩モード
いやあ、現実って大変ですね/(^o^)\
93: ◆DPehMNPNeE:2012/10/27(土) 06:53:06 ID:uT3akgpehc
夏休みに入ってきっかり10日目。嶺の外出は二回。今までを考えると異常だ。行動も不安な様子を感じさせる。

毎日の生活パターンとして、モノを作る素材集めと適度な運動が組み込まれている嶺は毎日外出するのが常だった。

かつてない事態だ。緊急事態。

なにがあったのだろう。ここ最近で気になった事柄と照らし合わせる。化粧品の類の購入、夕方帰りの長い遠出が二回。時間の違う他の外出はほとんどが叔父の会社だったか。

脅されている?まさか。嶺に限って線引きを間違えるなんて有り得ない。よって後ろ暗い話の可能性はゼロ。

と、なると単純な脅威に遭遇って辺りが正解に近いかもしれない。


鳴(会って見るか)


離れようとした距離をまた詰める。自分を騙して。

別に私じゃなくて良いハズだもの。こういった話は正晴に任せるのが無難であって今まではそうしてきた。

いつまでも同じ関係ではいられない。理解したのは遥か昔。塗り固めた自己弁護は薄汚く、だからこそ私に似合うと薄く笑った。

欲しい。私は嶺が欲しい。弱った嶺というまたとないチャンスが目の前に転がっている。

無難に逃げた私はもういない。綺麗事で酔った私ももういない。だってどう取り繕っても気持ちはかわらない。

辛いのは嫌だ。当たり前だ。だったら妥協点を綱渡りして見せよう。愚かしくも楽しい遊びを。

所詮私は、私は、なんなんだろう。
94: ◆DPehMNPNeE:2012/10/27(土) 06:55:16 ID:uT3akgpehc
程なく部屋に幼なじみが現れる。宗教勧誘や訪問販売に鉄壁を誇る偉大な我が母も、幼い頃から知っているお隣のお嬢さん相手だとベタ甘だ。

部屋に通したのは初めてだろうか。互いに仲良く遊んでいた時分にはまだ自身の部屋は持っていなかった。

思春期の終わりに適度に距離を取ることに成功した後、大分時間が経ったとき、適度な距離とは他人の距離と知った。

負担になるのだ。その時々で大切なものに気が向き過ぎてしまって神経がみるみるうちに削られる。

なれば不安定な人間などに向いては生活できぬ。必死になって作った逃げ場に腰を落ち着けてようやく自らを理解するに至る。

どうしようもない出来損ないだ。適合率診断の立体適合率27%も社会不適合者という意味ではないか。

だからもうやめてくれ。

俺は期待になんか応えられないし応える気もない。

今更距離を詰められても息苦しいだけでただただ辛い。意識に入り込む異物は要らない。昔は昔、今は今だろう?

当然、心中など察して貰えず現実は何も影響しない。幼なじみは座布団もない畳に座る。曖昧な距離曖昧な表情。

「宿題を一緒にやろう」取って付けたような理由も何故か断り切れなくて。どうせ毎日時間を取って行うなら同じか、と悪い方向に妥協してしまう。

泥沼だ。押しに弱い。あまりにも。
踏み込まれない日常に適応してしまったせいか事後策も生まれない。

生きているだけで他者の介在を許してしまう。なんとも生きにくい世の中だ。立て掛けてあった製図用の折り畳み式テーブルを開いて訪問者と学習に向かうとする。
95: ◆DPehMNPNeE:2012/10/27(土) 06:56:37 ID:uT3akgpehc
嶺「教科は」

鳴「現国」

しばしの沈黙を挟んで返答。得意な教科を選んだと見える。

嶺「苦手なものからやった方が後々楽じゃないか?」

鳴「まずは勢いを付けたいの」

立腹のご様子。図星を突かれて怒るとはなんともやりにくい。とりあえず口を閉ざして防衛を図る。

鳴「読書感想文は中学のを使いまわすとして。まずは書き取り、単純作業は得意なんだよねー」

なにも言うまい。早く終わらせて早く帰って頂こう。

向かい合わせで黙々と課された問題を解いて行く。恣意的に選ばれたような名作を流れ作業で右から左へ。

嶺(芥川とかなら面白いのにな)

教養のないもので詩はまったくと言って差し支えない程知識の外だ。尤もそれは詩に限った話ではないか。

俺と幼なじみ。成績を比較するなら中の上から上の下と中の下から中の上。教科によって多少の差はあれども極端に苦手な教科もなければ得意な教科もない。

そして現国の成績に限定すれば同レベルだ。これでは二人で行う意義は薄い。どちらもスラスラと解けてしまう。

丁寧に書き込む俺の向かいには腕が疲れたと騒ぐ乱雑者が。無意識なのだろうから黙殺する。

刹那、集中が途切れたこのタイミングを狙いすましたかのように母が飲み物とささやかな菓子を給仕してくれた。

何度でも噛み締める。やはり母は偉大だ。
96: ◆DPehMNPNeE:2012/10/27(土) 06:57:56 ID:uT3akgpehc
嶺「あーあーあー、もうちょっとでいいから丁寧に書きなさいよ」

ついつい余計な嘴を入れる。しょうがない、これが性分だ。

嶺「一つ一つを大切にしなければ身に付くものも身に付かん。手癖でなんとかなるものには価値がありません」

鳴「たかが宿題でそんなに言われましても・・・・・・」

なにかの意思表示か氷の入っているオレンジジュースのグラスを揺らす。対になる氷の入っていないのは俺の分だ。

嶺「たかがと侮る心が無駄を生む。どうせまともに勉強するのは、せいぜい後四年、五年なんだから気を引き締めること!」

鳴「あー、はい。イエス、サー」

適当な返事が癪に障った。

嶺「進学だろ。わりとギリギリだろ。誰も助けになってはくれないぞ」

鳴「やめて」

気持ち表情が張り詰める。ここでやめてなにが変わるというのだ。

嶺「やめない」

嶺「宿題の進み具合見てみろ。二時間やってこれだけ、あまつさえ隅に落書きなんぞしてある」

嶺「一日どのくらい進めたら余裕を持って片付くかとか考えたか?得意な教科でこのザマだ」

嶺「だいたい他人の時間まで潰して結果を残せないのは無責任だ」

とどめを、刺した。不用意に間合いに入るからだ。何事にも理由がある、俺の生きるスタンスにも。そしてもちろん幼なじみの行動にも。

わかっていて拒絶した。
97: 長い間お付き合いありがとうございました。これで嶺と鳴の物語はおしまいです。 ◆DPehMNPNeE:2012/10/27(土) 07:08:38 ID:uT3akgpehc
幼なじみが帰る。見送りの際、疲れが出たのか二人揃って階段を踏み外してしまう。

体感時間は遅くなり浮遊感が悪寒を呼び覚ます。直線的な高さはたかだか数メートルでも落下すれば恐ろしい

縋るように手を振り回して爪が階段の滑り止めにかかる。期待するもすぐに爪は割れてしまい意味を為さない。

眼前の幼なじみ。幼なじみがフローリングに激突した。勢いのまま玄関の方に転がって行く。そして心配する間もなく俺も後を追うことになった。

轟音。ドアはぶち破られた。後方では我が偉大な母もレースに参加を始めたようだ。

標識、電柱とワンクッション置いて道路になだれ込む。列を為して。

道路では車線を占領する程に巨大なトラックが側面から猛進する。

避けられない。

もはや勢いを失って団子と化した俺達は道路から脱出する術を持たない。

鳴「ねえ、こういうのも心中になるのかな」

黙れよ。

最期に一言文句を付けてやりたかったが、口を動かす前に俺の体はトラックと衝突した。

見事に手足が吹き飛んだ。不思議と痛みはなく冷静でいられた。きっと死ぬんだな。誰のものかもわからなくなった体の残骸を眺めて静かに目を閉じた。

赤い海となって混ざる。

二人は永遠に結ばれた______________________________

TRUE END ネガティブハッピートラックタイヤ

Fin.

リバティー◆DPehMNPNeE先生の作品を読めるのは2CHサイトモバイルだけ!リバティー◆DPehMNPNeE先生の次回作にご期待下さい!
98: 後書き ◆DPehMNPNeE:2012/10/27(土) 07:20:45 ID:uT3akgpehc
長くなりましたがこのSSはこれで終わりです。
ここまで支援、保守をしてくれた方々本当にありがとうごさいました!
パート化に至らずこのスレで完結できたのは皆さんのおかげです (正直ぎりぎりでした(汗)
今読み返すと、中盤での伏線引きやエロシーンにおける表現等、 これまでの自分の作品の中では一番の出来だったと感じています。
皆さんがこのSSを読み何を思い、何を考え、どのよ うな感情に浸れたのか、それは人それぞれだと思います。少しでもこのSSを読んで「自分もがんばろう!」という気持ちになってくれた方がいれば嬉しいです。
長編となりましたが、ここまでお付き合い頂き本当に本当にありがとうございました。
またいつかスレを立てることがあれば、その時はまたよ ろしくお 願いします!ではこれにて。
99: 真・スレッドストッパー:停止
停止しますた。ニヤリ・・・( ̄ー ̄)
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