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1: ◆DPehMNPNeE:2012/8/8(水) 11:05:22 ID:6E1Q3FITdQ
今日は記念すべき日になるハズだった。

心踊らせる"宝"の予約は初日に済ませていた。そして本日!購入受け取りの後、体で"宝"を庇って帰宅。

追記するならば、事前準備として睡眠時間も環境設備も十二分に足りていた。

俺は自身の考え得る全ての手を打ったつもりだ。しかし、想定外の攻撃はあるもので。

"宝"ことゲームを進めて小一時間経過した頃。地雷。不吉な二文字が思考の隅を掠める。

嶺「なんだよコレ・・・・・・ハバキ様はこんな性格じゃないだろぉ」

自分でも情けなくなる声が出た。責めるような今にも泣き出しそうな。

落ち着け、少しでいいから冷静になるんだ俺。シナリオを全部見てから判断するのがマイルールだろ?


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


結局、傷口は広がってしまった。思い入れのあった作品の続編への期待には、評価は人それぞれ等と言う正論なんか意味を為さなくて。

嶺「まさか、このゲームでスキップ機能を使うとは思わなかった」

予約特典の制服が哀愁を誘う。前作の時に興が乗って作った、同學園の手作り制服と並べて写メを撮って悦に浸っていた時間が懐かしい。

嶺「俺の考察が間違っていたのだろうか」

認めたくない悔しさと、それと表裏の淡い希望を胸に抱き、前作"葦原學園探求会"を起動した。


55: ◆DPehMNPNeE:2012/9/14(金) 08:41:10 ID:TYL9yaVm3Q
間違いない。本物だ。葦原學園、そして所謂主人公の視点の白塚菖蒲。上羽教諭とそのセットと言える長口上。

原作と寸分違わない出来に感嘆の声を漏らした。本当に平面世界に二次元に葦原學園にダイブしたかのよう。

教室、自己紹介で自身の名前を黒板に書く菖蒲。名を刻む行為への躊躇、小さな伏線さえも捕まえて話は進む。下手なアニメよりよほど原作に忠実だ。

だが、欲は限りがない。趣味人ならば尚のこと。始め感動に胸を押さえた手は震え、俯瞰に過ぎない私の立場に不満を述べる。

平面旅行などと謳いながら、これでは観察じゃないか。

トンデモだの胡散臭いだの抜かしていたクセに。自重も自嘲も跳ね退けて胸の内からどんどん込み上げる。やめられない止まらない。

不自然な程に綺麗過ぎる學舎の壁をツーと指でなぞる菖蒲が映る。不安定で、破滅的で、強靭。菖蒲の裏の顔を表す嘲笑の瞬間。

感情がリンクされたみたいに私も嘲笑する。例えるなら溺れたときに近い感覚は果てしなく心地好い。今、私は確かに"ダイヴァー"だ。

好きな世界に飛び込んだ異邦人。想像した景色と多少の違いはあれど、後悔には至らない。むしろ愉快なぐらいである。

酔って判断能力は狂う。世界に。自分に。あれ?菖蒲の台詞と感情が私に。細く美しい指と透けた白い指が重なってぶれて。

扉を開く。

探求会に宛がわれた埃臭い一室。煤けた赤茶色の扉を興味本位で開いて、壊してしまう。

各キャラクターの視線を浴びながら硬直。本来ならオープニングが流れるタイミングで意識がぷつりと途絶えた。
56: ◆DPehMNPNeE:2012/9/14(金) 08:42:48 ID:TYL9yaVm3Q
262:摩周◆MASYUuLIKE:2012/5/28(月) 1:45:22 ID:※※※※※※※※
落ち着いたので報告を。
会場には50人ぐらい集まっていました。どうも来なかった方も多い模様。

流れとしては、寸劇で笑いを取った後イベント開催アニキ絶叫!各係員は怪しいコスプレをしていて順番で皆様ご案内。待ち時間はそうそうたる顔触れのライブ。最後の解散前にグッズ販売してたようだけど焼け石に水、大赤字確定かとw

肝心の平面旅行の内容は・・・その名に偽りなしでした。

263:名無しの探究者:2012/5/28(月)
1:58:47 ID:※※※※※※※※
乙ー。え、旅行、本当に?にわかには信じられん話だぜ。

264:摩周たんの探求者:2012/5/28(月)
2:00:03 ID:※※※※※※※※
そんな事はどうでもいい。ハバキ様のカッコした美人さんがおにゃのこと百合百合してたと有志の報告を受けている!真偽はいかに!!!

265:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:10:33 ID:※※※※※※※※
>>264
おいw名前ww

266:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:19:45 ID:※※※※※※※※
>>264
摩周は男のハズだが?

267:神楽◆592HaRAM26:2012/5/28(月)
2:29:22 ID:※※※※※※※※
お、今度はタイミングいいか?じゃじゃーん、有志参上!

怒りに任せて有休捩込んだはいいが、ヒマなんでスネークしたぜぇいV

268:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:01 ID:※※※※※※※※
お仕事大変で可哀相な神楽ちゃんペロペロ
57: ペロペロ さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/9/14(金) 08:44:55 ID:TYL9yaVm3Q
269:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:16 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ

270:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:18 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ

271:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:21 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ

272:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:24 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ

273:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:26 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ

274:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:28 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ

275:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:31 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ

276:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:38 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロおいしい

277:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:45 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ本当に

278:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:49 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ

279:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:36:55 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロペロペロペロペロペロペロ

280:名無しの探究者:2012/5/28(月)
2:37:15 ID:※※※※※※※※
神楽ちゃんペロペロ。
ねえ、なんでお返事してくれないの?
58: ふぇぇ・・・あちゃまいたいよぅ・・・さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/9/15(土) 21:48:51 ID:TAGfDjF6ng
返レスを付ける前にリロード。このスレは話がよく飛ぶので必須の作業だ。スルーされることはないが、気を遣わせたり流れを澱ませるのはよろしくない。

嶺「・・・・・・!?」

なんだよ、おい。荒らしか?似たような文面の羅列に寒気を覚える。リロードする度にレスは増えて行き、やがては埋まった。

呆れた執念だ。多分、新スレを立てても同じ結末になると感じた。神楽には同情を禁じえない。

ブラウザを閉じて代わりにメーラーを開く。すると見慣れないアドレスからメールが二通来ていた。送り主も二人。

嶺「カメコとデュークかな」

アドレス交換の際、こちらは名刺を渡したのでPCのアドレスも知られたのだろう。

嶺「デュークやカメコは細かいところに気を回す人種じゃないと思ってたのだけれど」

宛先:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年5月27日20:00
送信者:ore_no_ushiro_ni_tatsuna@croquette.com
添付ファイル:********
件名:お疲れ様でした
こちらデュークだ。
イベントお疲れ様。楽しんでたなあハバキ。また機会があればよろしく。

追伸、ライブのセットリストを添付して置いた。次回の物販まで悔しがるといいwwww

宛先:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年5月28日00:18
送信者:tsuru_kame@tempura.com
件名:慰労とオマケ
はいはいカメコでございますー。お疲れ、いやいやそりゃあお疲れですよね。お休みなさい。

今回のイベントで撮った写真が欲しければ個人情報を垂れ流すのだーケケケ
59: 風呂敷広げるのに時間掛かり過ぎてワロリンヌwさらばー ◆DPehMNPNeE:2012/9/17(月) 11:19:23 ID:r2Pqb0DRLw
デュークは定型文とスルーのどちらがダメージが大きいか。若干悩んだが、返事をしないのは性に合わないので定型文に決定。

カメコ何がなんだか。読む側で補完しなければ内容がいまいち分からない。

単純に考えるなら「イベントで写真を撮ったのですけど、宜しければ郵送しますので住所を教えて頂けませんか」となるだろうか。まったく、翻訳家の気分だ。

齟齬が有ってはいけないので問い質す方向で固める。これで返信の二通は完成だ。送信前に時間を見ると、いい加減夜中になっていたので今日は寝かせることにした。

宛先:神楽 yononaka_zeni@meatball.com
送信日時:2012年5月28日02:44
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
変なのにモテモテだったようで・・・・・・。明日には居なくなってるだろうさ、ドンマイww

忘れないように神楽には軽くフォローのメールを送って完了。奴は明日夜勤だから起きているハズだ。

PCをシャットダウンした後、い草の詰まった枕を引き寄せて横になる。

い草独特の香りと自分の匂いは興奮していた神経を宥めてくれた。そして、落ち着けば身体の重さが気になってくる。

慣れない場所への外出、初対面の人間との交流。やはり、疲れが溜まっていたのだ。睡魔がゆっくりと近付くのを感じた。

嶺(ああ、もう明日遅刻してもいいかな)

丸まっているタオルケットを足で引っ掛けて拾う。適当に広げて腹をカバーしたらそれでいい。知らず知らずに背中を丸めている自分が滑稽だ。

意識を手放す寸前。鳴の澄ました表情が浮かんだ。似合わないのだからやめておけ。唇だけで、受け取る相手のいない言葉を虚空に投げた。
60: ◆DPehMNPNeE:2012/9/18(火) 13:38:55 ID:WX15Mx6PPQ
特筆すべき事象の無い朝。疲れは興奮の名残で見事に消え去っている。

正晴「おはようさん」

嶺「おはよう」

正晴「なんか機嫌良さそうだな。いいことでもあったか」

馬鹿正直に話しても趣味の合わない友人には退屈なだけだろう。いかにも対応に困る姿が目に浮かぶ。

曖昧な返事を返すと、会話はそこで途切れて場を沈黙が支配した。

正晴「・・・・・・」

嶺「・・・・・・」

空気が重い。普段は軽薄に笑っている友人がいつになく真剣な表情だ。俺はなにかまずいことをしたのだろうか、心当たりはない。

正晴「なあ、俺と嶺は友達だよな。仲は良い方だ」

正晴「だけど親友ではない」

正晴「ずっと前から考えてたんだけど。お前、自分から話ふらないよな。聞かれなければ自分の話もしない」

ズシリとのしかかる言葉。親友だったらノータイムで正しい答えを導き出せたのかな。いや、そもそもこんなこと言われないか。

正晴「お前にとって俺や鳴はどんな存在なんだ。それがわからないんだ」

嶺「・・・・・・」

正晴「責めるつもりじゃない。ただ気になってさ。時間はいくら掛けてもいいから答えは必ずくれよな」

どんな存在、か。遠退く背中を見詰めて考えれば考える程、胸の奥が渦巻いて答えの出る気配は見えなかった。
61: ◆DPehMNPNeE:2012/9/18(火) 13:41:05 ID:WX15Mx6PPQ
宛先:カメコ tsuru_kame@tempura.com
送信日時:2012年5月28日19:32
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:お疲れ様でした。
お疲れ様でした。相変わらずお元気そうでなによりです。
個人情報を垂れ流す・・・。郵送に住所が必要ってことかな?恥ずかしいから写真は要りませんので悪しからず><

宛先:ハバキ様wwww ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年5月28日20:21
送信者:tsuru_kame@tempura.com
添付ファイル:********
件名:RE:お疲れ様でした。
なんだいツーカーで伝わると思ったのに('A`)

個人情報の件了解でありますゞちっ、掲示板でばらまくプランがおじゃんね・・・・・・。
あ、いい景色撮れたので添付しておきますねー。携帯のカメラじゃなければもっといい写真なんだけど残念、いやあ残念

宛先:摩周 ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年5月28日22:36
送信者:yononaka_zeni@meatball.com
件名:畜生畜生畜生www
ふざけるなこぬ野郎www今日もいるじゃねーかwwwもうマジ助けてwwwww

宛先:神楽 yononaka_zeni@meatball.com
送信日時:2012年5月28日23:11
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:ご愁傷様wwwwwww
アレ、まだいるのか。腹痛いwww
頑張れ。とりあえず俺、今日は掲示板見ないことにするから。

こぬ野郎とか焦り過ぎw

宛先:摩周 ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年5月28日23:19
送信者:yononaka_zeni@meatball.com
件名:笑えない
第三者はいいよな。あいつ昼にも居たんだぜ。神楽ちゃんちょっと本気で身の危険感じちゃう。
62: ワンと言えばツースリーサイレンの音高らかに さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/9/18(火) 13:43:46 ID:WX15Mx6PPQ
宛先:神楽 yononaka_zeni@meatball.com
送信日時:2012年5月28日23:30
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:RE:笑えない
とりあえず掲示板見るのはやめて仕事をしよう。

宛先:摩周 ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年5月28日23:36
送信者:yononaka_zeni@meatball.com
件名:RE:RE:笑えない
うげ、そこはさあ相談に乗るよ。とか言うべきタイミングじゃない?なんかドーラーイー

宛先:神楽 yononaka_zeni@meatball.com
送信日時:2012年5月28日23:43
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:RE:RE:RE:笑えない
メールに集中して事故でも起こされたら、そっちの方が問題だよ

ドライなのは元から。

宛先:摩周 ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年5月28日23:51
送信者:yononaka_zeni@meatball.com
件名:RE:RE:RE:RE:笑えない
優しいんだか、クールなんだか。しっかし、メールだとレスポンス遅いから時間くうな。

つか、なんかあった?

宛先:神楽 yononaka_zeni@meatball.com
送信日時:2012年5月28日23:58
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:RE:RE:RE:RE:RE:笑えない
神楽が仕事中でなければ話ぐらいは聞くから。メール、負担になって来た?

宛先:摩周 ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年5月28日00:27
送信者:yononaka_zeni@meatball.com
件名:ごめん立て込んだ
やっぱり何かあったろ?わざとらしいんだよ。たまにゃ、神楽お姉ちゃんに相談しなさいw

忙しくなってきたから、また今度!またなー
63: 名無しさん@読者の声:2012/9/19(水) 19:07:09 ID:brSrHsV4b2
支援
64: ◆DPehMNPNeE:2012/9/20(木) 14:18:28 ID:Fnqx.ghFpU
「あたしの嶺君が元気ないんだけど」

わざとらしく足元を蹴る動作をしながら口先を曲げる。作られた動作と詰まらない冗談は感情を逆なでするには充分過ぎた。

正晴「なら慰めにでも行けよ」

「・・・・・・マジでお冠?」

正晴「お冠」

頭の左右で指を立てる正晴。隣り合わせの悪友は人の悪い笑みを崩さない。綱渡りが好きな彼女には怒るだけ時間と労力の無駄だというものだ。

「そっかー」

正晴「そうだ」

「原因は?」

正晴「性格の不一致」

「夫婦か」

言った方も言われた方も吹き出した。おかげで正晴にも余裕ができたのか、多少表情が和らぐ。

正晴「実際そうなんだから仕方ない・・・茶化すなよ」

「もしかして難航してる?」

正晴「見たところ航路自体がない」

例えに乗っかって端的に述べた。鳴は嶺の眼中に入っていない。少なくとも恋愛対象には。

友人の範疇には入っているとは信じている。だが、鳴を、自分を、ぞんざいに扱っているような気がして言葉にできない不快感が募る。

正晴「あいつ自己完結しすぎなんだよ。話し掛けられたから話す、こういうときこうするのが普通だからする」
65: 支援ありがとう、これからもハッピーうれピーよろピくねー さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/9/20(木) 14:22:11 ID:Fnqx.ghFpU
正晴「そんなんじゃ、俺達のいる意味ないだろ」

「嶺君は嶺君なりに誠実だよ、みんなと形が違うだけで」

恐ろしい程に真っ直ぐな瞳。優しい口調で宥める発言のその内容は距離を示すようにしか思えなくて、共感からは最も遠く思えた。

正晴「怖いなお前」

「久しぶりに言われたよソレ」

正晴「心配になるからやめろよその瞳」

作られたモノの中でただ一つの天然物。黒く深い瞳はいつも不意に訪れる。

今まで瞳について触れる人間がいないという事は、見せる人が限られているのだろうか。それともただの正晴の思い込みか。

「なんでさ、普段通りっしょ」

正晴「お前、今日はもう休め顔色がよくない」

「嫌だ」

正晴「言って聞く奴ではない、か」

手足を伸ばして息を吐く。お節介な性分も抑えるべきか。いつも結果がついて来る訳でもないのだから。

「そうそう、だから正晴なんかと友達になれるんだよねえ」

「めんどくさい人大好きでしょ?」

正晴「知らん。たまたま周りに面倒な奴がいるだけだ」

キャッキャと喜ぶ姿を眺める。はたして彼女は心から喜んでいるのか。

そして彼女がスカートのポケットからチラシを取り出してメモを取り始めたときに「ああ、嶺と同じだ」と思いすとんと落ち着いた。
66: ◆DPehMNPNeE:2012/9/21(金) 17:33:10 ID:2GBMj/wAFM
時折、窓から花壇を眺めていた。お行儀良く並ぶ花と花の群れ。隅で萎れた花が隣の花に寄り添っていた。この間違った風景を仲睦まじく思えたのはいつ頃までか。

鳴(私と嶺みたいだ)

弱い花が背筋を伸ばした真っ直ぐな花に寄生し、不必要な陰が生まれる。結果、陰のところだけ細く脆くなってしまう。

依存心が強い私と奇形の嶺。歪な関係から解き放てばまだ取り返しはつくのかな。どうやら嶺には陽の光を与えてくれる人もいるらしいし。

いじましく正晴に探りを入れさせた。憧れの人という単語を聞いただけで私はあっさりと打ちのめされた。こんなに弱い私は嶺の隣にいてはならない。

決めてからは早かった。行動力には自信がある。ただ、残念なことに決断力が致命的に足りなかっただけで。

宙ぶらりんだった距離感をリセット。幼なじみなどと甘々な期待の詰め合わせは現実にはない。

近からず遠からず。あれだ、女子のリーダーグループとの距離に近い感覚だ。核心には触れずほどほどに付き合い、ウナギが如くすり抜ける。

正晴がなにか言いたいそぶりを見せるが、声を掛けては来ない。流石、空気を読める奴。正直かなり気を遣わせていると思う。

正晴は目に見えないラインを感じ取る稀有な人物でその評価は昔から揺るがない。惚れる対象があちらなら楽だったのだけれど。こればかりは選べないのだからしょうがない。

初恋は実らないもの。愉快な話を語るようにはしゃいで肩を叩く___えーっと・・・二条さんだっけ名前が特徴的な___嶺の隣の席の人と空笑いしながら無駄な事を考えた。

「二条。そうよ私は二条。愚民共よ、名字で呼ぶのを許してあげるわ」
67: 物語は進み、緩やかに佳境へ迷い込む さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/9/21(金) 17:35:02 ID:2GBMj/wAFM
チュリチュリン(効果音)
諸君達に最新情報を教えよう!

穏やかに日常を過ごしていた北峰嶺。その背中に忍び寄る破滅の影。

光があれば闇がある。構って貰えない友人達のジェラシーに襲われる日々が幕を開けた__________

粘着片思い♀来堂鳴。
彼女の構ってちゃんオーラは並の人間ではスルーできない危険かつ端迷惑な代物だ!

お節介マイスター♂遠見塚正晴。
彼の発言は稀にグサリと刺さるぞ!純然たる好意を盾に取る重さは他に類を見ない。

現人神、二条♀※名前は検閲により削除。
トラブルメーカーはどのような場合でもトラブルメーカーである。天上天下唯我独尊。

俺の後ろに立つな♂デューク=東。
二条と同じ香りのする人間。嫌な予感が拭えない。意外と常識人?期待はするな。

ハイパーメディアクリエイター♀鶴田カメコ。
天然素材。不動(うごかず)の嶺でさえアクティブに抑えに廻らねばならない希少生物。

ストーカー吸引力の変わらないただ一つの♀神楽。
趣味仲間。幸が薄くお人よし。最近、ハバキ様姿の嶺をパパラッチするのがマイブーム。

主要キャラクターは出尽くした。後は開いた風呂敷を包むのみ。ギャルゲーならば選択肢一つでルートは変わる。だが、残念ながら、これは一本道の決まりきったストーリー。

もしも、もしもこの物語を天から見下ろす者の意思があれば__________

道は、微かに、揺れて、奇跡とも呼ばれる力で未来は新たに拓かれるのかもしれない。

現在の北峰嶺の適合率、平面適合率72%立体適合率27%誤差1%高位適合者128名中7位。警告!平面適合率80%以上で日常生活に支障をきたします。
68: ◆DPehMNPNeE:2012/9/22(土) 23:42:49 ID:o5YQ0wPnxI
久しぶりに生じた悩み事。思考に没頭しつつ手慰みに手芸を始めた。手芸なら失敗しても手直し一つで済む上、時間も無駄にしない。

絡み付く網目模様が意識を内に内に引き込む。友人と親友の境界線。それはなんだろう?長年連れ添った関係であってもわからない。

友人の望むこれからの関係はなに?距離感がわからない。今より近い距離なんて有り得ない。

他人との距離は1m、友人との距離は45cm。親友は?恋人は?息苦しくて、胸の動悸が酷くて、視界がモノクロに支配されて。

嶺(子供の頃、よく貧血で倒れたなあ)

倒れたときには大体友人が介抱してくれた。友人は倒れない。だから俺は助ける機会もない。友人、正晴は一方的な負担に疲れたのだろうか。

恥を忍んで告白するならば苦手なのだ。型が決まっていないものは。他人の真似をして隙間を埋めても取り繕う鍍金は剥げてしまう。まるで"探究会"の白塚菖蒲のように。

勝手にシンパシーを感じているが菖蒲と俺とは性格はまったく違う。でも、本人のみに見える過程をすっ飛ばせば結果が同じだ。大差ない、多分。

駄目だ。原因が予想できても、質問の意味がわからない俺にはきっと望む答えは出て来ない。

仮になにかを「おかしいよ」と指摘されたとしても「ここが」「こうだから」「こうなる」と細部まで指定されなければ理解できない馬鹿なのだ。俺は。

馬鹿は馬鹿で自覚していればマシになるハズだ。素直に聞いてみよう、必ず教えてくれる。なぜなら友人なのだから。

手袋を編み終え、鞄に入れる。友人は手袋に興味があったみたいだからちょうどいい。オレンジ色の手袋は冬場でも目に暖かい。
69: スカポンティーヌ・モエさん最高w さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/9/22(土) 23:44:43 ID:o5YQ0wPnxI
気分転換に格ゲーを引っ張り出した。今日は人と関わりたくないからオフラインで。蛸足配線のコードの足を一つ抜いて新たに挿し直す。

起動して一戦。落ち着かない。これがなにも手に付かない状態という奴か。リセットボタンの出番は速かった。

掲示板は神楽のストーカーの独壇場。外出するにもコンビニぐらいしか宛てもなし。ついでに言えば就職組なので勉強に対するモチベーションもだだ下がりだ。

嶺(そういえば、正晴や鳴は進学か)

ひょっとしたら進学組にも気を遣えと遠回しに言われただけなのかもしれない。都合の良い考えは心地好い。

友人は成績優秀なれど、悩みでもあるのかも。幼なじみはムラが凄まじい。苦手な教科の勉強でも手伝いをしようか。

隣人が料理を教えて欲しいとかなんとか言ってたような気がする。

こうして並べてみるとやるべきことが沢山あった。もしかして、第三者視点だと俺は酷く怠惰に見えていたりするのか。

忘れないようノートにメモを取ろう。幸いノートは白いページの方が多く、今後たいして埋まる予定はない。

色鮮やかな下線の引かれた英語のノートがピッタリだ。三色のラインで黒いボールペンの味気なさを相殺するのだ。

縦横無尽。乱雑な書き取りの合間、余白をメモで潰す。無駄がない。年単位で使って半分も使わないのにノートは何故このように不必要な厚みがあるのだろう。

嶺(・・・・・・あ)

手芸で編んだ手袋、片手しかない。

とりあえず、再び編み物との格闘が約束された。
70: ◆DPehMNPNeE:2012/9/25(火) 20:04:43 ID:28sZqGGQJs
嶺「なあ正晴、この前の質問の意図はなんだ」

登校中、脈絡なんか無視してぶつけてみる。幼なじみは今日も来ていない。友人は目を見開いた後ため息を吐いて応じてくれた。

正晴「お前はそういう奴だったな」

正晴「普段の嶺の態度がさ、顔見知り程度の相手に対する態度に感じられたんだ。それこそまるで全部社交辞令みたいな」

確かめるようにところどころ途切れて紡ぎ出される。ゆっくりと内容を咀嚼して飲み込むペースを考えればちょうどよく感じた。

正晴「そのくせ同じようなことを鳴がしたらご機嫌ナナメになるし・・・まったくもって理解の外だ」

正晴「今、お前が聞かなければわからなかったように、俺も聞かなきゃわからない。これはいささか友人としては格好がつかん話じゃないか」

言葉もない。けれど、今より近しい関係を築いたとしても俺は聞かなきゃわからないだろう。

正晴「しょげるなって。責めてる訳じゃない」

嶺「嶺と鳴は、友達だよ」

最低限、言わなければならないことを搾り出した。今の気持ちすら伝えられなかったらあまりに惨め過ぎる。

正晴「それだけでも聞けてよかった」

卑怯な一時しのぎはあっさり看破された。友人の優しさが身に染みる。

きっと友人には不信があって、一朝一夕には無くならない。上手く俺を切り捨てないのが友人の甘さで、苛む不信の素すら理解しないのが俺の酷さだ。

何処でもう一人の自分が終わりを予感していた。私の居場所は此処ではない、と。
71: 虫の鳴き声が風流だっぜ さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/9/25(火) 20:06:48 ID:28sZqGGQJs
「なんだ、なんだい?青春だねー」

人混み掻き分け乗り越え隣人参上。通学時間、学生がひしめき合う雑踏の中で会話を聞き取れる聴覚だけは心の中で褒めておく。

正晴「またうるさいのが気やがった」

「青い、青いねー青い果実だ。もいじゃおうか」

嶺「・・・・・・」

視線がこちらに飛んできた。青い果実とは俺のことか。

「そんなに正晴を振ったのが辛いか。いや、マイノリティだからね男同士は厳しいと判断した君は正しい」

正晴「今はやめておけ」

「そう?なら邪魔者は去るとしましょうか。お幸せに・・・あ、これは冗談でもなんでもないから」

嵐が如く現れて、ひたすら場を荒らして去って行く。これはもう隣人の毎度のパターンとして定着しつつある・・・のか。疲労感が膨らむばかりなので遠慮願いたい。

嶺「気を遣ってくれてたのかな」

正晴「騒ぎたくて騒いでいるようにしか見えないのがまた微妙なところだわな」

嶺「そうだ、これ。確か手袋に興味持ってたよね」

正晴「うわあ」

あからさまに嫌な顔をされた。ちょっとショック。

正晴「男に手編みの手袋貰ってどうしろって言うんだよ」

「キマシタワー」

正晴「様子窺ってるんじゃねえ!消えろ!」

72: 72レスめ! ◆DPehMNPNeE:2012/9/27(木) 22:11:53 ID:ZiBrhD4LL6
赤陽テレビジョン。モーニングNEWS.505

御法川「はい、今日も早朝から生放送モーニングNEWS.505です」

飛田アナ「本日のゲストは四ツ谷重工広報部部長の朝香清文氏です。おはようございまーす」

朝香「おはようございます。ご紹介に預かりました朝香です。どうぞよろしく」

飛田アナ「いきなりですが、質問を一つ。なんでも御社では"平面旅行"という新規プロジェクトを行っていますが、どのような内容でしょうか」

御法川「それは私も気になりますねえ」

朝香「我が社の"平面旅行"プロジェクト。正式名称"ダイヴァールート"は人間の記憶を司る脳の一部、海馬から情報を引き出して新たに仮想空間を作り出すものです」

朝香「平たく言えばバーチャルリアリティですね。まだ手前ですけれど」

飛田アナ「いやはや、本当なら素晴らしい試みだと思います。ねえ、みのさん」

御法川「しかし、人を募って人体実験紛いだと一部の団体からの圧力もあるのだとか」

朝香「私共の行っている事は法律の範囲内であり、安全性も証明されています。なにより利用者様に楽しんで頂いている自負があります」

御法川「いっそ団体の人にも試して貰っちゃえばいいかもね」

飛田アナ「あはは」

朝香「事が事だけに、どうしても反発はありますからね。理解の一助になるのであれば」

飛田アナ「厳しい視点によって改良の種になるかもしれませんね」

朝香「個人的にはマスコミの皆さんの視点の方が怖いです」
73: このSSは フィクション で あり、登場人物、団体名等は 全て架空のものです  さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/9/27(木) 22:16:13 ID:ZiBrhD4LL6
宛先:摩周 ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年6月12日5:19
送信者:yononaka_zeni@meatball.com
件名:赤陽テレビ見た?
朝香△

宛先:神楽 yononaka_zeni@meatball.com
送信日時:2012年6月12日5:33
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:RE:赤陽テレビ見た?
オッサン趣味全開もここまでくると清々しい

宛先:摩周 ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年6月12日5:42
送信者:yononaka_zeni@meatball.com
件名:RE:RE:赤陽テレビ見た?
うるせーやい。まあ、これで平面旅行がマジモンだって証明されたな

宛先:神楽 yononaka_zeni@meatball.com
送信日時:2012年6月12日5:59
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:RE:RE:RE:赤陽テレビ見た?
心置きなく次回もレポするわ。てか、四ツ谷重工が実在することに驚きを隠せない。

宛先:摩周 ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年6月12日6:09
送信者:yononaka_zeni@meatball.com
件名:RE:RE:RE:RE:赤陽テレビ見た?
海馬がどうたらってうさんくせー。本当になにも後遺症とか出ないのかよ。

宛先:神楽 yononaka_zeni@meatball.com
送信日時:2012年6月12日6:23
送信者:ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
件名:RE:RE:RE:RE:RE:赤陽テレビ見た?
お前カッコイイって言ったばかりだろwww不安になるからやめれwwww

宛先:摩周 ashihara_habaki_tankyu@hamburg.com
送信日時:2012年6月12日6:36
送信者:yononaka_zeni@meatball.com
件名:これ、一応本気な
見た目と中身は別腹。摩周もやめとけ赤陽がフォローしてるし下手すりゃ人死に出んじゃねーか。
74: アーイキャーンフラーイ! さらばー ◆DPehMNPNeE:2012/9/29(土) 07:08:52 ID:52ogqqnND2
「嶺君からお誘いがきた」

正晴「なにの」

つまらなさそうに呟いて言葉を拾わせる。二条は大事なことでも瑣事でも関係なく同じ動作で吐き捨てて、二度は言わないから。

「料理。前に教えて欲しいって頼んでお断りされたやつ」

正晴「はあ、なんで今頃になって」

「なんでだろうねー」

両手を空にかざしてわっかを作る。白色の天ならぬ天井が眩しい。閉鎖された空間ならイレギュラーなどなくて落ち着く。

「鳴ちゃんも誘ってやれば進展するかな」

正晴「鳴は厳しいんじゃないかな。意地張ってる」

「じゃあ正晴君、一緒に行こうよ」

試していた。いつも茶化して遊ぶ振りをしながら怯えている。性格が悪い卑怯者だと自覚
がある。あるからなんだ。

正晴「嶺と二人じゃ間がもたないか」

「だって嶺君私のこと苦手っしょ」

悪い感情は皮膚で伝わる。表情なり顔色なり接触なり。本当は嫌なんだ。知りたくもないのに理解が及んでしまうのは。

正晴「鳴が行かないならやめとけ」

「けちー」

正晴「断っても嶺は怒らない。無理して行って楽しいかよ」

甘い、あまあまベタベタだよ。アンタはお母さんか。自分に甘くなっちまうからやめてけれ。

「ああ、正晴君と一緒に屋上からアイキャンフライしたくなってきた」
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