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カロル「ボクが世界を変えてみせる」
[8] -25 -50 

1: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/24(日) 19:26:09 ID:j5u3Ryt06o
前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/1-50


―――あらすじ―――

人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。

母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。

しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。

幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。


619: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/17(火) 21:11:54 ID:uhCX0v8puE
―――舞台裏のテント―――

カロル「はい!はい!はい!はい!」パシッ パシッ パシッ パシッ

フワッ フワッ フワッ フワッ

カロル「け、ケガしたらボクを触ってください!傷を癒しますから!」

ペタペタペタペタ

カロル「あ、ちょっ!まっ!く、くすぐったい!」ワチャワチャ

ズシャッ バシュッ ギャアアアアア

カロル「」ビクッ

バサッ カランカラン

ウォルター「そういうことか」

カロル「あ…!?」ギクッ

ウォルター「久しぶりだな?元気してたか?」ニタァァ

カロル「あ…は…はは?」ヘラッ

「やめろ!彼に触れるな!」ダッ

「ま、守るんだ!」ダッ

ウォルター「」ニヤリ

ザシュッ ザシュッ

ズシャァッ ズシャァッ

ウォルター「ナイフを使わせりゃ天下無敵だ?よく知ってるよなぁ?」クルクルッ パシッ

カロル「」タタタッ

ウォルター「お?倒れた仲間をどうすんだ?」
620: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/17(火) 21:13:03 ID:uhCX0v8puE
フワッ フワッ

ムクリ ムクリ

ウォルター「おーおー?なんだ、そりゃ?とんだ裏技じゃねぇか?何したんだ?」ニヤニヤ

カロル「い、癒しの力…」ジト

ウォルター「はっ!本当にあったとはなぁ?道理で切っても切っても死なねぇ訳だ?」

カロル「…ボクがいる限り、誰も死なせないよ!」キッ

ウォルター「じゃあ俺もちょちょいと癒してもらおうか?マジで限界近いんだ?」ジリジリ

カロル「こ、来ないで…!」スッ

ラム「ダメだ!!」タタタッ

バンパ「よせ!せっかくの苦労が水の泡だ!?」

ウォルター「おっと?近寄んな!こいつを殺すぞ?」チャキッ

カロル「……!」ゴクッ

ラム「くっ!」グッ

シープ「ご、ごめん!ぼくが逃げたから…」

バンパ「まったくだ!なにやってんだよ!?」

ウォルター「早くしろ!俺を回復させんだ!?」ギラッ

カロル「…もうボクらにひどいことしない?」

ウォルター「うるせぇ!いいから回復させろ!」

カロル「約束してくれないならダメ?」

ウォルター「…分かった。二度としねぇ?誓ってもいい?」

カロル「いいよ。信じるから?」

ウォルター「ありがとよ?助けてやった仲だもんな?」

カロル「手、出して?」スッ

ウォルター「ほらよ」スッ

カロル「」パシッ

アァァァァァ
621: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/17(火) 21:15:46 ID:AWtnRkelTY
ウォルター「」フワッ

カロル「はい、癒したよ」パッ

ウォルター「…おーおー!おーおー!おーおー!?」マジマジ

ウォルター「なんだ、なんだ、なんだ、なんだぁ!?」グッパッグッパッ

シープ「あぁ〜〜!?」ヒョエー

バンパ「やっちまった…!」

ラム「カロルくん!そいつから離れて!」

ウォルター「ギャラリーが落ち着かねぇなぁ?」ニヤニヤ

カロル「…ウォルターさん、これからどうするの?」

ウォルター「そうさなぁ?きっちり回復した事だし……ショーを再開すっか?」ギロッ

カロル「」ビクッ

ウォルター「っしゃああああ!!」ズバッ

カロル「ぅ…ぁあああ゙あ゙!!」ズルッ

ウォルター「ハッハー!恩人を切るなんざ…まるで悪い夢だなぁ?」ゲラゲラ

ラム「…最悪だ!」ギリッ
622: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/17(火) 21:17:41 ID:uhCX0v8puE
ウォルター「てめぇらが復活できねぇなら打つ手はあるぜ?皆殺し作戦で一件落着だ?」シャッシャッ

バンパ「ふ、服ん中にもナイフを仕込んでたのか!」

ラム「こうなったら生きるのは諦めよう!死ぬまで戦うんだ!」

シープ「や、やだ…」

ラム「シープ?」

シープ「ぼく…まだ死にたくない…」ブルブル

「お、俺もだ!」

「あたしだって!?」

「生きて帰れると思ったから戦ってきたんだ!」

「い、痛いし怖いし…もう戦いたくない」

ラム「みんな…どうしたんだよ?」

バンパ「無駄だ。完全に戦意を失ってる…!」

ウォルター「ククク!」

ラム「」ビクッ

ウォルター「形勢逆転ってか?」ジリジリ

???「ううん?ウォルターさんの負けだよ?」

ウォルター「あ?」クルッ

ズンッ!
623: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/17(火) 21:28:25 ID:AWtnRkelTY
ウォルター「……!?」グチュッ

カロル「約束、したのにね?」ジッ

ウォルター「て、てめぇ…なんで…!?」パチクリ

ラム「か、カロル…くん?」

ヒィィィィィィ

カロル「ボク言ったよね?ひどいことしないでって?」ズブゥゥ

ウォルター「ち、ちょうし…のんなぁ!?」ブンッ

カロル「っ…!」ザクッ

ラム「だ、大丈夫かい!?」ダッ

カロル「来ないで!」ドクドク

ラム「……!?」ピタッ

バンパ「来るなってお前…!」

カロル「自分で…なんとかするから!ボクだって戦う覚悟はあるんだ!」ズキズキ

ラム「…分かった!君に任せるよ!」

バンパ「お、おい」

ラム「僕に言われたのを気にしてるんだ…。だから行動で見せようとしてくれてる…」

バンパ「でもよ…」

ラム「本気で戦う決意をしてるんだ…!邪魔できる訳ないだろ!?」

バンパ「……!」
624: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/17(火) 21:31:05 ID:uhCX0v8puE
ウォルター「い、いてぇ…か?いてぇよなぁ?」グリグリ

カロル「う…ん!いた…い」ググッ

ウォルター「なおせぇ…!俺を…なおしやがれぇ…!そうすりゃ…ゆるして…やる!」グリィッ

カロル「あぁっ!」グチュッ

ウォルター「いってぇ〜…!い、いひいてぇ!」ガクガク

カロル「……!」ギュッ

ウォルター「は、はやくしろぉ〜…!いてぇよぉ〜…!」ビキビキ

カロル「ああああ!!」ズブズブ

ウォルター「がはっ!?」ブバァッ

カロル「」ドンッ

ウォルター「ぎゃあああああ!?」ドサッ

バンパ「おぉ!馬乗りだ!」

カロル「はぁっ!はぁっ!」キッ

ウォルター「がふっ…ぐえっ…」ゴフッ

カロル「……!」ブルブル

ウォルター「わ…わる…かった」ピクピク

カロル「」ピクッ

ウォルター「ゆる…して…もう…しない…」

ラム「嘘だ!」

バンパ「騙されんな!?」

シープ「そうだよ!はやく殺さなきゃ!」

カロル「……」

ウォルター「ほん…と…ぅだ。たの…む」プルプル
625: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/17(火) 21:34:28 ID:AWtnRkelTY
ウォルター「う………しんじて…くれぇ!」

カロル「ダメ…もう信じられない」スッ

ウォルター「…はぁ…あぐっ!?」ズキズキ

カロル「この力はボクが本気で癒したいと思わないと使えないんだ」

ウォルター「な…にぃ…!?」

カロル「信じて裏切られてもボクはいいと思う」

カロル「何も信じられなくなるよりずっと?」

ウォルター「だ、だったら…だったらなんで…!?」

カロル「裏切られ続けてまで信じることはできないよ。だから約束させたのに…」

ウォルター「こ、ころ…すのか?」ガフッ

カロル「……」

ウォルター「はっは……でき…ない…だろう?」

カロル「うん。しないよ?」

バンパ「お、おい?トドメ刺さないのかよ?」

カロル「だって信じられない人間の命なんて背負いたくないもの」

ウォルター「なら…どうする…!?」ギリッ

カロル「どうもしない」

ウォルター「は…!?」

カロル「ボクたちにはまだやることが残ってるから、もうウォルターさんは相手にしない」

ウォルター「」ピキィッ
626: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/17(火) 21:40:06 ID:AWtnRkelTY
カロル「行ってくるね?みんなのそばにいた方が早く癒せるから?」

バンパ「お、おう。いってらっしゃい?」オロオロ

バサッ カランカラン

「負傷者が出た!すぐに来てくれ!」ザザッ

カロル「任せて!」タタタッ

バンパ「あ、あいつってあんなキャラだっけ?」オロオロ

シープ「わ、わかんない」オロオロ

ラム「…あれ?」

バンパ「ん?どした?」

ラム「カロルくん、ウォルターに刺された肩の傷が治ってた?」

シープ「ホントだー?自分で治したのかな?」

バンパ「マジかよ…。なんでもありだな…」

ウォルター「ざっけんじゃ…ねぇぞ…!」ググッ

バンパ「うおっ!」

ラム「まだ悪あがきする気?おとなしく寝てなよ?」

ウォルター「こ、このまま…ほったらかされて…死ぬのを待てってのかぁ…!?」ワナワナ

ウォルター「俺を誰だと思ってやがる!?」ダッ

バンパ「く、来るぞ!?」バッ

シープ「ひぃっ!」ビクビク

ラム「くっ!」ザッ
627: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/17(火) 21:43:14 ID:AWtnRkelTY
ズルンッ ドサッ

ウォルター「ごはぁっ…!?」ビチャビチャ

バンパ「え?」キョトン

シープ「血、吐いてる?」ビクビク

ウォルター「あ…!え……?」グラッ

ラム「……」ジッ

ウォルター「から…だが…うごかねぇ…!」ギリッ

バンパ「ば、ばっかやろー!脅かしやがって?」アセアセ

シープ「ばーか!ばーか!おまえのかあちゃんデーベソ!」ベロベロバー

ウォルター「げはっ…!うっ…あつぅ…!?」ゲホゲホ

ラム「諦めなよ?その傷じゃもう戦えない?」

ウォルター「なっ…ナメんな…!」プルプル

ラム「お前の負けだよ、ウォルター」

ウォルター「ぢぐ…っしょ!」グググッ
628: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/17(火) 21:46:51 ID:AWtnRkelTY
ラム「最後に聞かせてくれない?なんでこんなことを始めたの?」

ウォルター「…こんな…こと?」

ラム「今までしてきた虐殺のことだよ」

ウォルター「はっ…」ニヤリ

ラム「お前に死なれたら、それが聞けない。だから最後に聞かせて?」

ウォルター「…なん、で…も」プルプル

ウォルター「なんでもよかったんだ…。獣でも…人でも…!」

バンパ「それがたまたま俺達だったって言うのか?どうしようもねぇな?」

ウォルター「は…はは…!殺意だけが…俺の快楽だ!」

シープ「き、きもちわる」ドンビキ

ウォルター「殺れば殺るだけ気持ちいいんだよぉ!?射精が止まらねぇんだぁ!?ゲハハハハハハ!!!」ゲラゲラ

ウォルター「ハハハ……ごぼっ!ぶふ…っばぁ」ゴパァッ

ウォルター「うっふ!?えふ!?」ビチャビチャ

ウォルター「ぼぼ…!……ぐふっ」ガクッ

ラム「…聞かなきゃよかった」シラー

バンパ「…死に際のセリフがそれかよ。とんだ変態野郎だな」

シープ「ねぇ?しゃせーってなぁに?」

バンパ「え?あ、いや…それは…」マゴマゴ

ラム「行くよ、二人とも?舞台を守ってる仲間を加勢しにね?」チラッ

バンパ「(た、助かった)」ホッ

シープ「れっつらごー!」
629: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/20(金) 21:47:28 ID:w4WKmrgy6I
―――客席最前列―――

カインッ ガキンッ ザシュッ ズンッ ギャアアアアアア

バタッ バタッ

兵士長「ま、まだか!助勢はまだなのかぁ!?」アセアセ

兵士6「やぁぁぁっ!!」ズバッ

ドサッ

兵士7「ぎゃっ!?」ズドッ

バタッ

兵士長「…くそっ!」ギリッ

キンッ シュバッ ヒュッ サッ

兵士長「(数が一向に減らない…。舞台で交戦していたホビットが合流したのか…?)」

ビュッ

兵士長「くっ!」キンッ

兵士長「えやあっ!」ブンッ

ザシュッ ドバッ

兵士長「や、やったか…!」ハァッハァッ

ダダダッ

兵士長「くそ…!次から次へと!」ジャキッ
630: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/20(金) 21:48:42 ID:w4WKmrgy6I
兵士8「うおおお!」ダッ

ビュッ サササッ

兵士8「ちっ!また散ったか!」

兵士長「追うなよ…!追えば別の奴が奇襲を仕掛けてくる…!」

兵士8「はっ!」

兵士長「現在でこちらの兵力はどうなってる?」

兵士8「だいぶやられております…。すでに20名以上の被害が…」

兵士長「そうか…!だがこちらもかなり切った筈だ!」

兵士8「そ、それが…おかしいんです!」

兵士長「なにがだ?」

兵士8「奴らの亡骸が見当たらんのですよ!切り伏せたホビットの亡骸も気付いたら、そこにないのです!」

兵士長「…どうなってるんだ!」

兵士8「それから一つ厄介なことが…」

兵士長「まだあるのか!?」
631: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/20(金) 21:50:11 ID:RvsogzPv8w
ズブッ ズシャッ

ダダダッ

兵士8「あぁ!あれです!?」オロオロ

兵士長「な、なに…!」


兵士9「死ねぇ!」ブンッ

ティラーナ「」サッ

兵士9「おおっとと!」スカッ フラフラ

兵士10「だぁっ!?」シュバッ

ティラーナ「」ヒョイッ

兵士9「こざかしい!」イライラ

兵士10「おとなしく死ねぇ!?」ドドッ

ティラーナ「」ビュッ

兵士9「うわっ!」ビクッ

ドスッ

兵士10「な、な…!」ズシャッ

兵士9「ば、バカめ!武器を投げるとはな!たとえ片方は仕止めても…」

ティラーナ「」ジャッ ヒュンッ

兵士9「」ピクッ

ズバァッ

兵士9「は…やい」プシャァァ

ティラーナ「武器ならお前達から借りればいい…。死骸は頼まなくても貸してくれる…」ブツブツ

ティラーナ「人間は皆殺しだ…!」ダッ
632: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/20(金) 21:51:21 ID:RvsogzPv8w
兵士長「あのホビットは異彩を放っているな…。武器の扱いに長けているし身のこなしがずば抜けて器用だ」

兵士8「ただでさえ体が小さくて的も狭いのにあの動きをされてはかすらせるのも至難の技です…!」

ビュッビュッ ドスッ

兵士長「な、なるほどな…。あれの孤軍奮闘が我々の兵力を分散しているのか…」

兵士8「他のホビットも侮れません!素早い動きと巧みな連携で執拗に兵を削っています!」

兵士長「か、数は勝っているんだ。一匹ずつ確実に……」

???「いい考えだね?」ザッ

兵士長「だ、だれだ!?」クルッ

ドスッ

兵士8「っ…!っ…!」パクパク

ラム「一匹ずつ確実に仕止めればいいんだ…」グチュグチュ

兵士長「きっ…さまぁぁぁあ!!」ブンッ

ガキィッ!

兵士長「!?」ギギッ

バンパ「させるか…よ!」ギャリィンッ

兵士長「ぬぐっ!」ズサッ

バンパ「生まれてこの方、剣なんか持った事ねぇけど…おっさんぐらいなら倒せそうだな?」ニシシ

兵士長「き、き、きさまぁ…!」ムクッ
633: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/20(金) 21:52:44 ID:RvsogzPv8w
兵士11「兵士長を助太刀せねば!」ダッ

シープ「キーック!」ピョンッ

兵士11「あがぁ!?」ドカッ

シープ「どーだ!まいったか!?」シャキーン

兵士11「こ、このガキ!?横から攻撃するとは卑怯だぞ!?」ムクッ

シープ「やーい!やーい!弱虫ー!」ベロベロバー

兵士11「殺す…!」スクッ

シープ「あー!後ろで兵士長が!?」ビッ

兵士11「なに!?」クルッ

ブオンッ

兵士11「ぶぁげひゅっ」ドチャッ

シープ「アッハハハハハ!」ケラケラ

黒装束1「ヘマトのテントにあった金槌…すごい威力だ。兜ごとぺしゃんこ」ググッ

黒装束2「うく…すごいけど…おんもっ…!」ググッ

シープ「ねー!もっかいやろー!」キャッキャッ

黒装束1「え…二人がかりでも重いよ」

黒装束2「普通の武器で戦いたい…」

シープ「いーじゃん!ほら、また来たよ?」

黒装束1「えー…」

黒装束2「えー…」
634: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/20(金) 21:53:57 ID:w4WKmrgy6I
―――舞台―――

カロル「」パシッ

フワッ

「うぅ…こっちも…頼む!」

カロル「うん!」パシッ

「よし!行ってくる!」フワッ

ギャアアアアア

カロル「……!」ダッ

「待て!どこに行くんだ!」ガシッ

カロル「離して!仲間が切られてる!」

「君に動かれたら運ばれてくる仲間はどうすんだ!決まった場所にいてもらわないと?」

カロル「……!」

「焦る気持ちはよく分かる!だが傷付いた仲間を確実に助けたかったら動き回っちゃいかん!」

カロル「でも…」チラッ

「確かに間に合わなかった仲間もいる。だからといって冷静さを失えば、また同じ悲劇が起こるぞ」

カロル「……」

「敵の数が多すぎて…はっきり言って傷付いた仲間を運ぶ余裕が無くなってきてる。けど君はじっと耐えて待つんだ!いいな?」

カロル「はい…」シュン

セッセッ セッセッ

「ほら、運ばれてきたぞ!」

カロル「うん!」タタタッ
635: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/20(金) 21:55:47 ID:w4WKmrgy6I
―――客席最後列―――

信者1「なにが起こってるのです!神聖な大樹にホビットが群がってますぞ!」

信者2「お、おのれ!神の意思に背き、またしても大樹を枯らせる気か!」

信者3「そうはさせん!皆で祈るのだ!罪深きホビットに神罰を!」パンッパンッ

兵士12「どけ!邪魔だ!」

信者4「何故か!我々は正当な信者だぞ!」

兵士13「まずは要人の避難が先だ!」

信者5「なんで役人が逃げるんだ!役人なら我々民の為にホビットを粛清してみせろ!」

信者6「そうだ、そうだ!辺境の町々で田畑を耕す我々の苦労も知らず、都ばかりを豊かにして!」

信者7「やれ税だ、認可料だと貧しい者からむしっておいて田舎町には一切、支援する気概を見せない!
おまけにベルメロ牛や馬などの家畜を要求して精魂込めて育てた大切な作物や米、麦まで奪った!」

信者8「おかげで発展も望めず、見返りのない農作業に嫌気を差した若い連中は後を発っていくばかりだ!」

信者9「医術の供給や学問をタダで提供してくれる教団を見習え!実質的に我々を支えているのは国じゃなく教団だ!」

信者10「さっき国外の人が馬車で引き返してたな!あれも俺達の金じゃないのか!」

信者11「だいたい我々は今日の巡礼の為に一週間かけて歩いてきたのに…なんでお前らだけ馬を使って来てんだ!」

信者12「おかしいだろ!我々に何もしてくれないお前らが悠々と豪奢な乗り物を使って最前列を陣取るのに…身銭を切って旅をしてきた我々が最後尾の平原まで遠ざけられるなんて!」

兵士12「う…!」

大臣「ごちゃごちゃごちゃごちゃとうるっさいですなぁ!?」

ワァァ ワァァ

政務官「あ、あまり刺激するな…!」

大臣「はぁ?なぜです?庶民の分際で弁えもせずにぐちぐち御託ばっか並べて……」ブツブツ

政務官「今、こいつらが暴動でも起こしてみろ…!武器を持たない庶民といえ1万以上の人間を抑える手立てはないぞ…!
ただでさえホビットの制圧に兵が駆り出されているのだ!」

大臣「」ゾワァ

政務官「なんとか穏便に済ませなければ…前門の虎、後門の狼、四面楚歌になるのは免れんぞ!」

大臣「し、しかし…どうやって!かなり興奮してますぞ?」

アントリア「お困りかな?」スタスタ
636: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/20(金) 21:57:53 ID:RvsogzPv8w
政務官「助かりました!神官、あの信者共を黙らせてください!」

アントリア「…ふむ」スタスタ

信者1「おお!アントリア神官だ!」

信者2「お教えください!なぜあのような事に!」

アントリア「罪深きホビットが懲りずに罪を重ねようとしているのだ。悲しいものだよ?」

信者3「やはりか!許せん!」

アントリア「大樹にホビットの血を注ぎ、不浄の血を洗い清め、天へと昇らせる事で神の赦しを得た大地は大樹を蘇らせたのだが…ホビットは再び枯らせようと大樹に迫っている?」

アントリア「私たち人間はこの愚行を許すべきだろうか?」

信者4「絶対にゆるしてはなりません!」

信者5「我々の手で大樹を取り戻すのだ!」

アントリア「よろしい。さすれば強く祈りなさい」

シーン

アントリア「……」パンッパンッ
637: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/20(金) 21:59:13 ID:w4WKmrgy6I
政務官「お、収まったか!」

大臣「では我々を避難させてくれませんか?こうも行く手を阻まれては逃げられませんぞ?」

アントリア「……」

大臣「な、なんとか言いなさいよ!」

アントリア「諸君、この役人たちは事態の収拾よりも身の保身を求めているようだ」

信者's「」ピクッ

アントリア「はたしてそれは正しい選択なのだろうか?
それならば危険を顧みずに祈祷する我々は一体なんなのか……」

大臣「し、神官?」

アントリア「ここで諸君に問わせてほしい。人間とはどういうものだろうか?」

信者's「……」

アントリア「例えば国という一つの形態を一人の人としてなぞらえ、解き明かしてみよう?」スタスタ

アントリア「王国と民の関係性とは?その中に信仰はどう関わるか?」スタスタ

アントリア「…あなたはどう思われる?」クイッ

信者5「わ、わたしは…ちょっと…」モゴモゴ

アントリア「物事を難しく考えてはいけない?単純でいいのだよ?」

信者5「は、はぁ…」

アントリア「人で言うなら王国は頭だ。あらゆる物事の決定権を持ち、体に命令を与えては酷使する」スタスタ

信者6「で、では体は民ということですか?」

アントリア「間違ってはいない?しかし体だけだろうか?」

信者7「わ、我々は作物や家畜を育て、納税や土地の維持にも務めて義務を果たしております!」

アントリア「あぁ、君たちは手足の役割を果たすと共に体を働かせる原動力まで確保している。それは頭にとっても素晴らしい貢献だ?」

大臣「…なんの話をしてるんだか?ばっかばかしい…」
638: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/20(金) 22:00:46 ID:w4WKmrgy6I
アントリア「では最後に宗教とは人のどの部分に当たるのか?」

信者8「心です!体である我々を支え、道を示してくれるんだから!」

アントリア「素晴らしい!」ビッ

信者8「あ、ありがとうございます!」ペコッ

アントリア「その通りだよ?宗教とはすなわち良心!体を支配下に置く絶対権力の持ち主、頭に待ったをかけられる唯一無二の部分だ!」

オォォォォオォォォォ!

大臣「いい加減にしてくれませんかねぇ?こんな危なっかしい所にいつまでもいたくないのですよ?」イライラ

アントリア「これまでは邪念の巣食う頭に操られ、体は酷使されてきた…」

アントリア「だが心と体が一つになれば負の螺旋から逃れられる!」

アントリア「民でありながら信者でもある諸君は今まさに千載一遇の好機を手にしている!」

アントリア「僕は良心として訴えかけよう!今こそ体が自由を取り戻す時!心身一体となりて頭という名の邪念を払い清めるのだ!」

ワァァァァアアアアア!

大臣「なぁに言ってんですか?訳の分から……」

アントリア「諸君、恐れる必要はない?正しい行いには神が背を押してくださる!邪念に報復するのだ!」

オォォォォオォォォォオォォォォ!

政務官「神官?いったい何を……」

ドドドドドドッ!

大臣「げぇっ!?な、な…なぁっ!?」ビクビク

兵士13「ひ、ひいぃぃ!?」
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名前:
sage:


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