2chまとめサイトモバイル

2chまとめサイトモバイル 掲示板
カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】
[8] -25 -50 

1: ゆったりペースになりますが! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:09:52 ID:N4jwCkModw
1スレ

少年「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10

2スレ

カロル「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10

―――あらすじ―――

それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました

しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました

そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです

戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました

布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました

それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします


270: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 14:47:08 ID:o6D2/o4bEU
母「ほら、お礼は?」

カロル「ありがと…ございます?」ニコッ

漁師「…ほれ、見ぃ?かわいい笑顔だろ?おめぇの子もこうやって笑えんだぞ?」

チンピラ「は?」

漁師「見てらんねぇよ…。着る物もなくチンチンぶら下げて歩き回るザマをよ…。
いつもおめぇの家から女房の怒鳴り声とひもじそうな泣き声が聞こえんし…深夜から船出に向けた足取りもしょんぼりすらぁな?」

チンピラ「誰のおかげで飯が食えると……」

漁師「おめぇの女房のおかげだろうが?」

チンピラ「ちっ!居心地わりーし帰るぜ!」

漁師「おう、帰れ、帰れ。どうせ捨てる部分でもつまみに来たんだろ。うざってぇから消えちまえ」

チンピラ「……!」ギリッ

漁師「悔しそうなツラすんなら、とっととてめぇで稼げ?
そうすりゃ誰にだって一端に見られんだ?」

チンピラ「」スタスタ

漁師「……」

母「なんだかんだと言いながら、あの方のこと気にかけてらっしゃるんですのね?」ニコッ

漁師「おうよ。海の男は義理人情に厚いんだ」

カロル「あの人間…本当にお金に困ってそう」

母「あら、どうしてそう思うの?」

カロル「なんとなく…」

母「本当に困ってたら、あんな風に遊び歩いていられないわ?」

カロル「…違うと思う」

母「へ?」

カロル「焦って不安になるから好きなことをして紛れさせたくなるのかも…」

漁師「……」

母「それじゃダメじゃない?自業自得よ?」
271: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 14:50:53 ID:o6D2/o4bEU
漁師「実を言うとあいつんとこは借金してっし…もう三度も納税を怠ってる」

母「…納税?」

漁師「お国に差し出す金だ。それを払わねぇと民の生活は保障されんと…まぁ丸っきりカツアゲだがな。一体、何に使うやら分からん?」

母「払わなかったら…どうなるんです?」

漁師「前までは見せしめに惨殺されるか、街ごと焼き滅ぼされてたが…国王が変わってからは今んとこむごい噂は聞いてねぇ」

カロル「(王子さま…)」パァァ

漁師「だが…義務は義務だ。命は取らんでも憲兵に捕まっちまうのがオチだな」

母「…ますます分からないわ?そんなに追い込まれているのなら、なぜ働こうとしないの?」

漁師「わかんねぇ…。だから俺も口酸っぱく言ってんだがよ」

母「……何か働けない理由でもあるのかしら」

カロル「理由なんてないんじゃないかな」

母「え?」

カロル「あの山賊の人間もそうだったけど…」

漁師「…なにがだ?」

カロル「分からないけど…理由がある人は、ちゃんとした理由を話すと思う」

漁師「……?」

母「…どうなのかしらね。よそ様のことだから悪し様には言えないけど奥さんと子供がかわいそうよ!」

漁師「ま、そりゃそうだな。おっと客が並んだ。ちょいと横に」

母「あ、すみません」ススーッ

客1「あ、いえ」スッ
272: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 14:52:55 ID:o6D2/o4bEU
客1「お話中悪いね。これくれや」ビッ

漁師「あ、はいはい!こいつですと、ちょいと網にもがいて身を引っ掻いてんで、こっちにしときましょうか?」グイッ

客1「ありがとよ。いくらだい?」ニコッ

漁師「銅貨480枚になります!」

客1「はいよ」ゴソッ ジャラッ

漁師「はいはい!ちょうど頂きます!毎度どうも!」ヘコヘコ

客の子供2「パパ!これっ?」キャッキャッ

客2「高いよ…。こっちの下ろしてある鯵で十分だ」

漁師「はいはい!鯵ですね?いくつ?」

客2「4尾でいいかな…。そんな高くないだろ?」

漁師「4尾ですと…652枚ですね。取れたてなもんで?」

客2「……じゃあ一匹減らしてくれ」

漁師「はいはい!489枚になります!」

客の子供2「やだー!桃色のがいいのー!」

客2「……うるさいな。みんな見てるぞ?」

客の子供2「やだー!やだー!やだー!やーだー!」ジタバタ

客2「……!?」イラァッ

漁師「……」オロオロ
273: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 14:54:37 ID:g4lCkLBiEw
カロル「」ポンポン

客2「わあっ!?」バッ

カロル「怒らないであげて?」ジッ

客2「な、なんだ、お前…ホビットのクセに…!」

カロル「……」シュン

客2「うっ…」タジッ

カロル「おいしそうなお魚がいっぱいあるんだもの。お腹空いちゃうよね?」ニコッ

客2「……だ、だからお前はなんなんだ?」

カロル「マルク!泣き止ましてあげて!」

マルク「わんっ!」トトトッ

客の子供2「ふえ?」グズッ

マルク「あぅん?」ペロペロ

客の子供2「ふえ〜?えへへー!」パァァ

マルク「あんっ!」シッポフリフリ

客2「……」

カロル「おじさま!これっ?」つ【魚×1】

客2「なっ…」

母「坊や…」

漁師「あ、それは…」

カロル「あげる?」ニコニコ

客2「…な、なんで初めて会ったお前に…しかもホビットなんかに…同情されなくちゃ」ググッ

カロル「同情じゃないよ?二匹もらったけどボクとお母さまだけじゃ食べきれないの?」

母「(ホビットなんかに…?)」ピクッ
274: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 14:56:28 ID:g4lCkLBiEw
客2「……い、いら」

客の子供2「」グゥゥッ

客2「」ハッ

客の子供2「ぼくん家ね?夕ごはんだけなんだ?パパは少食でママは痩せたいんだってさ?」ナデナデ

マルク「あう?」

客の子供2「領主様の家のトールくんはパンとお肉、スープにサラダ、豆コーヒーもあるんだよ?」ギュッ

客の子供2「ぼくだって、もっとたくさん食べたいよ…。今日で8歳になるんだもん」シュン

母「お誕生日、だったのね…」

客2「っ…くく…!?」ワナワナ

客2「(お、俺だって…!俺だって必死なんだ…!まだ王政の変化が整いきってないじり貧生活で暮らしはまったく楽にならないんだぞ!)」

客2「(だから今日は築地に入って新鮮なうまい魚食わして…お祝いに新しい靴でも買ってやろうと寝る間も惜しんで働いてきた…!)」ググッ

客2「(けど…僅かな賃金に見合わねぇ労働量で…やっと貯めた金を、この目で見ると……やっぱり惜しい…!)」ジャラッ

客2「(この金があれば…明日からの暮らしがほんの少しだけ楽になる…!この調子で働き続ければ蓄えも出来る…!
今日を我慢して明日に繋げれば…きっと来年にはもっと贅沢に祝ってやれる…!)」

客2「(そんなこと…今日を楽しみに待ち望んでた子供にはわからない…。
なにより子供の笑顔をさておいて保身に揺らぐ自分が馬鹿馬鹿しい)」

客2「(…それでも、その日の辛く悲しい出来事がいつか…微かな笑顔になれば報われるんだと。
今は恨まれても時間が経てば分かってくれるさ)」フッ

客2「(俺たちの必死な暮らしを…こんなホビット程度に同情されてたまるか!)」ジロッ

カロル「(お魚重たいなぁ…。差し出したまんまだもん……)」プルプル
275: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 14:59:38 ID:o6D2/o4bEU
客の子供2「」ナデナデ

マルク「くぅ…」スリスリ

客の子供2「…あーあ、お金持ちの家だったらなぁ」ボソッ

客2「なんっ…だと!?」プチィッ

漁師「あ、ちょっ…お客さん!」アタフタ

カロル「だ、だめっ…」ビクッ

バッ バシィンッ!

客の子供2「……!?」ドギマギ

客2「…!」ハァッハァッ

母「っ…!」ヒリヒリ

カロル「お母さまぁ!?大丈夫!?」バッ

母「うん、なんともないわよ?」ニコッ

客2「あ、あんた…なにしてんだ!?」

母「あなたこそ何をなさるんですか?ここは往来の場ですわよ?」キッ

客2「お、俺の勝手だ!他人の事情に口出しすんな!」

母「いいえ!同じ子を持つ親として言わせてもらうわ!」ピシャリ

客2「な…な…!?」

母「いくら親が苦しんでいても子供には理解できないんです!」

客2「は…!?」

母「なぜ自分たちだけがひもじいのか…どうして我慢を強いられるのか…他の子たちと何が違うのか…家が貧乏な理由すら分かりっこないでしょう!?」

客2「う…くっ!」

母「…多少は運命を呪いますよ。悲しい言葉をかけられるのはやりきれないわ…?」

母「でも…それでもあたし達は親である以上…そんな想いをさせないように頑張るしかないじゃない!?」カッ

カロル「……」
276: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 15:01:38 ID:o6D2/o4bEU
客2「き、気ままに暮らすホビットに何が分かる…!?」

母「気ままになんか暮らしてません。こっちだって生活に追われる毎日です!」

客2「う、嘘を言うな!?人間ってのは金に縛られる生き物だ!そんな概念のないお前らが…!」

母「…なに言ってるのよ」

客2「あ!?」

母「あたし達に言わせれば、お金でなんでもやり取りできるあなた達が羨ましいわよ…」

客2「羨ましい!?羨ましいだ!?」

母「雨風に打たれながら泥濘に横たわったことがある?」

客2「は!?」

母「その手で殺した獣や鳥を生でかじったことがある?」

客2「……!」タジッ

母「誰も助けてくれない状況下で本気で必死になって家族を守ろうとしたことがある!?
生き延びる為に身を磨り減らして駆け回って、それでも守れなかったことがあるの!?」

客2「っ……」オロオロ

母「お金で買えない物はない…なんて贅沢なのかしら?働けばお金がもらえる…何が不満なの!?
辛くても、やりきれなくても、ほんの少しでも報われるあなた達の暮らしが羨ましくてたまらないわよ!?」

客2「な、なんだよ…なんなんだよぉ…?」ブルブル

母「……」ジッ

客2「…俺だって…辛いよ…!あんたに何が分かんだよぉ…!?」

母「ホビットなんかに同情されたくないんでしょう?だったら、その甘えた考えを打ちのめしてあげるわよ!」

客2「ひっ…ひっ…」ビクビク

客の子供2「パパをいじめるな!」ダッ

客2「えっ」
277: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 15:04:58 ID:g4lCkLBiEw
客の子供2「いじめるな!いじめるな!いじめるな!」ポコポコ

母「…うふふ」クスッ

客2「……」ボーッ

母「…小さくて柔らかい体にも大好きな人の為なら精一杯になれる気持ちが宿ってる?」

客2「」ハッ

母「頼りなく見えても…意外とたくましいんですよ。子供って?」ニコッ

客の子供2「うるさい!いじめるな!泣かすぞー!」ポコポコ

客2「……!」ジワァ

母「弱気になってはいけませんよ?暮らしはもちろん大事ですけどお子さんとの思い出も大切になさってください?」ジッ

客2「もう…大丈夫」ガッ

客の子供2「え…?」キョトン

客2「パパ…大丈夫だから」

客の子供2「……」

母「」ニコニコ

漁師「…坊っちゃんの母親、何かあったのか?」ヒソヒソ

カロル「うん…。お婆さまが早くに病気しちゃってお爺さまも旅の途中で病に苦しんでいなくなっちゃったの」コショコショ

漁師「…旦那さんも病で?」

カロル「ううん。殺されたんだ?」フルフル

漁師「え!?」

カロル「王国がね…。住んでた集落と一緒に焼き滅ぼしたんだって…?」

漁師「……!」ゾォッ

カロル「…お母さまはね、誰よりも家族想いなんだ?
失う怖さを知ってるから…とても大事にしてくれるの…」

漁師「……」オロオロ
278: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 15:09:12 ID:o6D2/o4bEU
客2「……」

客の子供2「ぱ、パパぁ……?」

客2「…代金だ」ジャラッ

漁師「は、はぁ…毎度どうも?品は袋詰めしときましたんで…」スッ

客2「」パシッ

客2「帰るぞ?」ジロッ

客の子供2「…桃色のは?」ウルッ

客2「靴、買いに行くぞ?」

客の子供2「……」シュン

客2「靴だけじゃ不満か?」

客の子供2「……」コクッ

客2「…うまいモン食いたいか?」

客の子供2「食いたぁい…」

客2「…安い魚もな、工夫次第だ」

客の子供2「……?」

客2「安物も工夫すれば一流に近付けるんだ…。俺たちは、まだ貧乏な安物だが……。
家族みんなで一生懸命に支え合えば…きっと、どこよりも幸せな家庭に育つ?」

客2「貧しくても幸せなら…上流層の奴らを妬まずに胸を張って生きてける。
…そのくらいがちょうどいいんだ。だから今はまだ…我慢してくれないか」

客の子供2「……」チンプンカンプン

客2「……分からないか」カクッ

母「そういうものですよ?」ニコッ

客2「…難しいな。親って?」

母「子供は詭弁に惑わされませんから、わがままが減らないんですよね?」ニコニコ

カロル「…ボクってわがまま?」ショボン

母「……ちょびっと?」ウインク

カロル「!?」ガーン
279: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 15:11:51 ID:g4lCkLBiEw
客2「……見下したりして悪かったね。気が立ってたんだ」

母「いえ……あら」キョロキョロ

客2「?」

野次馬's「」ジロジロ ジロジロ

客2「あ…おぉ……!?」ギョギョッ

カロル「結構前から人だかりだったよね?」

漁師「おう、俺の店の辺りが混みゃ宣伝になるからほっといたが」

母「あらあら…」クスクス

客2「か、か、帰るぞ!?」ガシッ

客の子供2「う、うん?」オロオロ

カロル「あ、待って!これっ!」つ【魚】

客2「い、いいよ!同情はいらん!恥ずかしいとこ見せちまったし、早く帰りたいんだ!?」カァァ

カロル「同情じゃなくって贈り物!はいっ!」スッ

客の子供2「え?」パシッ

カロル「お誕生日おめでとう?」ニコッ

客の子供2「……」

客2「はは…お礼言いなさい」ポンッ

客の子供2「犬……」ジーッ

カロル「へ?」

マルク「きゃうん?」キョトン

客の子供2「犬ほし…むぐっ」パッ

客2「あ、ありがとな!ホビットの少年!さぁ帰るぞ!はっはっは!」ダダダダッ

客の子供2「むぐーっ!むぐーっ!」ジタバタ

ダダダダッ

カロル「……」ポカーン

漁師「ははっ!子供ってのはわがままで正直だ?」ケラケラ
280: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 15:15:10 ID:o6D2/o4bEU
母「ぼ・う・やぁ……」ヌラァリ

カロル「なぁに?おかあさ……!?」ギョギョッ

母「お魚、二匹とも渡しちゃったの…?」ゴゴゴゴゴ

カロル「あえっ!?あ、あ、あぁっ!?笊ごと渡しちゃった!?」アタフタ

漁師「悪いがうちも商いだから、さっきのチンピラじゃないが、あんま商品をタダでホイホイやれねぇんだ?」

カロル「あうっ…お、おか…さま?」チラッ

母「…なんてね?」テヘペロ

カロル「……?」

母「苦労も無しに得た物なんて、すぐに手放してしまうものよ?
また街の外に出て食べられそうな虫や葉を探しましょ?」

カロル「う…うん!」パァァ

漁師「む、虫…?聞き間違え、か?」

野次馬's「」パチパチ パチパチ

母「え?」クルッ

カロル「な、なに…?」ビクッ

漁師2「いやーお前ら、いいもん見してもらった!」パチパチ

漁師3「おうよ!ホビットってのも、なかなか男気溢れんじゃねぇか?」

漁師4「俺っちの船で取れた鯛持ってけ?」グイッ

カロル「あ、えと…?」パシッ

漁師5「あんたの啖呵キレてたぜ!女なのに大したもんだ!魚油の瓶だ!丸々くれてやるぜ!」グッグッ

母「ど、どうも…?」パシッ

漁師6「これも持ってけ!持ってけ!」グッグッ

漁師7「海の男は威勢のいいのが好きなんだ!酒も振る舞ってやらぁ!グイッといきな!?」ズイッ

母「い、いえ!結構です!お気持ちだけありがたく……」アワアワ

カロル「こ、こんなにいっぱい持てっこないよ〜!」アタフタ
281: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 15:19:37 ID:o6D2/o4bEU
ワイワイギャーギャー

漁師「ちっ…同業者かよ。客じゃねぇなら宣伝になりゃしねぇ」

母「そ、そんな事より…どうにかしてください!?」ワチャワチャ

カロル「マルク〜!背中に乗っけれる?」ワチャワチャ

マルク「ハッ!ハッ!」シッポフリフリ

漁師「……なんか」

漁師「(身内の死を背負ってるとは思えねぇほど…底抜けに明るい親子だな)」

ワチャワチャ ギャーギャー

漁師「(……なんでかねぇ。苦しいことを避けて生きる奴より、苦しいことに耐えてきた奴のが強いってぇなぁ)」

漁師「(傷付くたびに壊れそうになるから、なるべく避けて通る奴もいりゃ傷付くたびに強くなる奴もいるんだから不思議だよなぁ)」

〜〜〜回想(漁師)〜〜〜

漁師「金なら貸さねぇぞ」ザッ

チンピラ「そ、そう冷たくすんなって!友達は大事にしようぜ?」アセアセ

漁師「…また博打か?」

チンピラ「ま、まぁな…。ちょいと小金が入ったもんでダイス親分とこ遊び行ったらすっかり搾られてよ?」ヘラヘラ

漁師「お前みたいな遊び人がどうやって金を用意したんだ?義理のオヤっさんの手伝いか?」

チンピラ「バカだねぇ?誰があんな小料理屋手伝うかよ?油と酢の違いも分からねぇってのに?」

漁師「…じゃあどうやって?」

チンピラ「なぁんでもいいだろ?それよかアレだ?金貸してくれよ。倍にして返すぜ!」

漁師「何度も言わすな。まともに働け!」

チンピラ「かぁ〜?まぁた説教ですか?やだねぇ?」

漁師「あぁ?」ギロッ
282: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 15:21:33 ID:g4lCkLBiEw
チンピラ「必死こいて働いて何がある?この貧乏生活がちったぁマシになるくらいだぁな?
馬鹿馬鹿しくていけねぇよ。人生ってのは楽して、ちゃっかりおいしいとこだけ頂けば幸せってもんさ!」

チンピラ「…その為にゃ博打だ。短い寿命なんだから有り余る時間でバンバン賭けに出ねぇと割りを食うばかりさ。
あくせく体使った結果が1日と引き換えに安い賃金だろ?
毎朝、早起きして荒波にもがいて危なげな上に獲れねぇ時は獲れねぇし季節や天気にも阻害されるってなぁ?」

チンピラ「俺っちにゃまったく分からねぇや。クソ面白くもねぇ?」

漁師「はぁぁ…その体たらくで妻子はどうすんだ。養ってけんのか?」シラー

チンピラ「…いいさ。愛も情けも、とうに枯れた仲だ。向こうの親父がスゲェ剣幕で迫りやがるから孕ました責任取っただけだ」

漁師「ここがまだ…こじんまりした漁村だった頃、仲間と集まって岸辺の洞穴にゴザ敷いて飲み明かしたの覚えてっか?」

チンピラ「…覚えてらぁ。バカがバカ話してバカ騒ぎ。夢だなんだと語り合ったもんだ?」ケッ

漁師「…もう戻れねぇんだよ。ガキの時期は感じてたより、ずっと短い」

漁師「頭がガキでも自然と体は成長する。髪も白くなってハゲ散らかるし、シワも増えて肌も渇いてく」

漁師「衰えるのもあっという間だよ。だからそれまでに…自分と伴侶を守ってけるだけの器量を身に付けんだろが?」

漁師「…バカな夢はもう捨てろよ。いつまでもガキのままでいるんじゃねぇ?」ギロッ

チンピラ「あーそーですか?ご立派ですこと?」ホジホジ

漁師「…幼なじみとして、こんなんなっちまったお前を見たくなかったよ」

チンピラ「……」

漁師「働く気になったら、いつでも訪ねてこい。俺が口添えして大将の船に乗せてやるよ」スタスタ

チンピラ「いーらね」ピンッ

スタスタ スタスタ……

チンピラ「…楽して生きるのも難しいね。こりゃ苦労を重ねると、もっとヤバそうだ。あぁ〜ゾッとするね!」

………………
283: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 15:23:52 ID:g4lCkLBiEw
―――バンブルの港(住宅地)―――

客2「」スタスタ

客の子供2「へへ〜!靴かっけー!」ニヤニヤ

客2「…よかったな」

客の子供2「うん!修道院で自慢するもん!パパ好き〜」ギュッ

客2「そ、そっか」テレッ

客の子供2「…ケーキ、ないよ…ね」チラッチラッ

客2「…買いに行こうか?」

客の子供2「〜〜〜!うんっ!」パァァ

客2「…あ」ハッ

客の子供2「パパ?」

客2「なんでもないよ」ニコッ

客の子供2「ふーん。ケーキ!ケーキ!」ルンルン

客2「(俺、この子と女房の為に働いてたんだよな…)」

客2「(…いつからだろう。"生活の為"になってたのは)」

客2「(いつからかも分からねぇや…)」

客2「(あのホビットの親子はきっと……それを忘れずに生きてきたんだろうな)」

客2「……」ウルッ

客の子供2「パパ?どうしたの?早く行こうよ!」

客2「…どうもしないよ。今日はお前の誕生日だから、なんでもわがまま言うんだぞ?」

客の子供2「?」キョトン

客2「行こうか。空が赤みがかってきた」スタスタ

客の子供2「うん!」ルンルン
284: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 15:27:26 ID:g4lCkLBiEw
―――チンピラの家―――

赤ん坊「びゃああああ!ふああああん!」

女房「あぁ、よしよし、お乳だね?」ボロン

子供「母ちゃん、腹ペコ!」グイグイ

女房「ちょっと我慢して?後で築地に行って分けてもらうから?」

子供「むりー!腹ペコ〜!?」グイグイ

女房「うるっさいね!我慢しなってんだよ!?」バシンッ

子供「ぅ……」ヒリヒリ

子供「……ああ゛あ゛あ゛あ゛ん!!」ビエー

女房「はいはい、お乳でちゅよー」ダキッ

赤ん坊「びゃああああ!!」ブンブン

女房「どちたのー?お腹空いてないでちゅかー?」アセアセ

子供「おなかすいたよー!!ああああん!!」ビエー

女房「あんたじゃない!!」ガァーッ
285: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 15:29:43 ID:o6D2/o4bEU
赤ん坊「ふやぁああああ!!!」ジタバタ

女房「う、うんちっち?おちっこ?あっ!ねむねむでちゅかー?」ユサユサ

ビエー ビエー ビャアアアアア!

女房「……!」プルプル

女房「どうしたらいいのよぉ!?」グズッ

女房「あの人は…なにしてんの…!家にも帰らないで…働きもしないで…!」

女房「これじゃ造花の内職も終わらせられないよぉ…!うえっ…ひっ…ひんっ…!」グズグズ

ビャアアアアア!ビャアアアアア!

女房「泣かないで…泣かないでよぉ…!」ユサユサ

子供「おなか〜!!おなか!!」ダンダン

女房「そんな言うならお爺ちゃんとこ行って!食べさせてくれるから!?」

子供「外暗い〜!怖い〜!」ダンダン

女房「じゃあ我慢するしかないでしょ!?」

子供「う…わああああん…!」ボロボロ

女房「あいつのせいよ…全部…あいつが悪いのよ!私、知らないからね!?
母ちゃんお仕事すんだから邪魔しないで!?」バッ

ビャアアアアア! ビャアアアアア! ウエーン オナカスイター!
286: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 15:32:58 ID:g4lCkLBiEw
―――バンブルの港(海沿い広場)―――

チンピラ「ちっ!しけてんなぁ?銅貨4枚じゃ水も買えねぇよ?」スッカラカン

チンピラ「こりゃなんとしても金作らなきゃな…。昨日の負けで親分への借金も膨らんじゃったし」

ジロジロ ヒソヒソ

チンピラ「あ!?」ギロッ

スッ スッ スッ スッ

チンピラ「けっ…まるで海沿いの岩盤に張り付いた苔でも見るような目だったな」

憲兵?「お兄さん」ポンッ

チンピラ「あぁ?……えっ」クルッ

憲兵?「夜分遅くにお声かけしてすみません?」

チンピラ「……!?」ゾォッ

憲兵?「」ニィィ

チンピラ「な、なんすか?た、滞納分なら義理の両親が肩代わりして……」

憲兵?「はは…違いますよ?ただお話を伺いたいと思いまして?」

チンピラ「は、はぁ…」
287: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 15:34:11 ID:g4lCkLBiEw
憲兵?「この手配書、見てくれます?」スッ

チンピラ「は…?」パシッ

憲兵?「そいつは救い主を騙ったインチキホビットでね。国を挙げて捜索中なんだ?」

チンピラ「し、知らねっす」スッ

憲兵?「そうですか?まぁ見つけたらご報告ください?」

チンピラ「うっす…」

憲兵?「あぁ、そうそう。出来れば近くの憲兵支部より領主様に報告してもらえるとありがたい?」

チンピラ「え?なんで領主に?」

憲兵?「各地の領主様は王都と直接の連絡手段を持ってるから、何かと都合がいいんです」

チンピラ「あーそーすか…」

憲兵?「では失礼します」スタスタ

チンピラ「(よく見ちゃねーけど、ホビットじゃどうせ賞金も掛かってねぇだろ)」

憲兵?「あぁ、そうそう」ピタッ

チンピラ「?」

憲兵?「その救い主の偽物ね。懸賞金は金2000枚なんですよ。通報しただけでも金200枚、いやぁ大したものです」

チンピラ「金…2000…?」ピクッ

憲兵?「」ニタァァ

チンピラ「そ、その手配書…1枚もらっていいすか?」ワナワナ

憲兵?「どうぞ?ご協力感謝します…」スッ

チンピラ「ど…も」パシッ

憲兵?「それでは」スタスタ

チンピラ「」マジマジ
288: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 15:36:31 ID:o6D2/o4bEU
―――バンブルの港(街角の屋台)―――

ガリッゴリィッ

ムチャツムチャッ クチャッ

店主「(きったねぇ食い方だなぁ…。これじゃ常連さんたちが入れねぇよ)」

バサッ

店主「あぁ、いらっしゃい」

憲兵?「隊長、指示通り町中のならず者に配ってきました」

マドラス「ムチャッ…ん、ご苦労さん」ゲフッ

店主「お、お連れさんですか?」

マドラス「口挟むな。それよりヒレ酒はどうした?」

店主「た、ただいま…」ゴソゴソ

憲兵?「他んとこもあらかた配り終えたそうです」

マドラス「南の人里全体に出回れば奴らの逃げ場はねぇさ。なぁ?」

店主「ひ、ヒレ酒になります」トンッ

マドラス「おう、あっちぃな。こりゃ不味そうだ?」グビッ

憲兵?「後はこのまま待てばいいと」

マドラス「ぶはーっ…まじぃ!…ならず者ってのは私利私欲の塊だ。大金が絡めばよく働くし、独占したがるから口外の心配もねぇ」バリッ
289: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 15:39:56 ID:g4lCkLBiEw
憲兵?「問題は領主ですが…」

マドラス「そこも問題ねぇ。雇い主が抱き込んである」

憲兵?「いえ、分け前が減るのではと」

マドラス「…まぁな。出来れば山中で捕まえときたかったがしゃあねぇ」

マドラス「領主には金500、報告者には銅20枚、残りは俺らで山分けだ。
山の獣に削られた分を考えりゃ、当初と予定額は変わらねぇさ」

憲兵?「銅20枚…?な、納得しないんじゃ…?」

マドラス「剣先でいいこいいこして、建物の屋上に荒縄で括ってたかいたかいのサービスも付けりゃ納得するさ。
それでも辛抱たまらんってなら細かく刻んで見知らぬ畑の肥溜めに沈めて肥料の仲間入りだ」

憲兵?「……!」ゾォッ

店主「」ブルブル

マドラス「ン…喋りすぎたなぁ?」ギョロッ

店主「ひゅやあっ!?」ビクビクゥッ

マドラス「わりーが今夜で店仕舞いだ?なぁ?」ニタァァ

憲兵?「はっ」スラッ

店主「ああ…うんやぁ…やだあぁあぁああ!!!!!」ガクガクブルブル

ズバッ ドカッ

マドラス「…クッカカカ!こんな場末で飲み屋やってんのがわりーんだよ。なぁ?」ピシュッ

憲兵?「…ま、まぁ」ドンビキ
992.81 KBytes

名前:
sage:


[1] 1- [2] [3]最10

[4]最25 [5]最50 [6]最75

[*]前20 [0]戻る [#]次20

うpろだ
スレ機能】【顔文字