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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】
[8] -25 -50 

1: ゆったりペースになりますが! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:09:52 ID:N4jwCkModw
1スレ

少年「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10

2スレ

カロル「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10

―――あらすじ―――

それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました

しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました

そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです

戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました

布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました

それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします


512: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/18(水) 20:27:36 ID:2wdwrIx/L.
政務官「巡礼の内乱ではホビット族を率いて我々を滅ぼそうとしたそうですがな?」

ヒメ「あ、あれは…しょうがないだろ?あいつのせいじゃない…!」

政務官「しょうがない?あそこまでしておいてしょうがないで済まされると!?」

ヒメ「だったらおまえはどうなんだよ!?アントリアにそそのかされてたんじゃないのか!?」

政務官「っ…そ、それは…」

ヒメ「アントリアみたいな悪党に操られて様々な問題を見てみぬフリしたよな!!
国の歪みも謂われなき差別も…知ってて許容してきたのはおまえらだ!?」

政務官「……!」

ヒメ「これ以上、僕とあいつの関係に口出しするな!?」

政務官「……」

ヒメ「はぁっはぁっ」ワナワナ

政務官「…分かりました。陛下に対する数々の無礼、及び失言をお詫び致します。申し訳ございませんでした」ペコッ

ヒメ「はぁっ…いいよ。僕も興奮しすぎた。
さっきも高官達を叱り付けたばかりだったから感情が抑えられなかったのかもしれない…」

政務官「…そうでしたか。国内の問題は彼らに任せきりですので…私にも責めはありましょう」

ヒメ「いや、おまえはよくやってるよ…。少ない人数で難しい外交をこなしてくれてるのは感謝してる」

政務官「…恐縮です」

ヒメ「おまえの言い付け通り、僕も積極的に親善に取り組むよ。
だから…捜索については…もう少し続けさせてくれないか?」

政務官「構いません。忠告程度に留めるつもりが踏み入った発言になってしまいましたが…陛下が満足なさるまでお続けください」

ヒメ「……東の国王と会食する日取りは?」

政務官「追って伝者を寄越すそうです」

ヒメ「分かった…」

政務官「…では次の予定が入っておりますので、今回の外交成果は先ほど手渡した書類に記載しておきました。ご確認願います」ガタッ

ヒメ「……」ペラッ

政務官「失礼致しました」スタスタ

ガチャッ バタンッ
513: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/18(水) 20:40:43 ID:2wdwrIx/L.
ヒメ「……僕も公務に戻らないとな」ハァァ

ヒメ「暇はないし…年上の役人をまとめなきゃだし…知りもしない奴や変態にまで愛想よく接待しなきゃならないし……」

ヒメ「ほんっと…楽じゃないな。国王って……」フッ

ヒメ「(なぁ、カロル。おまえは今…どこで何をしてるんだ?)」ボーッ

ヒメ「(おまえがいたら、無責任でぜんっぜん中身のない前向きなだけの励ましをくれるんだろうな…。能天気だし?)」クスッ

ヒメ「(そういう奴だよな、おまえは…?宣教師や僕たちを…嫌ったりしないよな?)」ズキンッ

ヒメ「……もう一頑張りするか」スクッ

ヒメ「まずは給仕にイチゴジュースを作らせて…いつも通り、自室で仕分けしよう」スタスタ

ヒメ「途中退席してしまったけど…あいつら順調に話し合えたかな…。
さんざん叱っといたから、さすがにやってるよな。出来上がった書類を確認しないと…」ガチャッ

ヒメ「……」ピタッ

ヒメ「…いろいろ考えすぎておかしくなりそうだ」ハァァ

ギィィ バタンッ
514: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/26(木) 22:02:09 ID:RCXCl5If6k
―――西の領土(関所)―――

パカラッパカラッ

守衛1「む…そこの馬!止まれぃ!?」ザッ

ザザッ ヒヒーン

???「」スタッ

守衛2「通行許可証と身分証明書を?」

???「……」スッ

守衛2「…問題ないな。よし、門を開けろ!」

ギィィィィッ

???「」スタスタ

守衛1「……?ちょっと待て?」

???「」ピタッ

守衛1「……」スンスン

守衛2「どうした?」

守衛1「こいつ…妙に臭うな?」ジロッ

守衛2「た、たしかに…鉄の錆びたような匂いが鼻に突く?」スンスン

守衛1「怪しいな…。所持品を改めさせてもらおうか」

???「」バッ

ヒヒーン パカラッパカラッ

守衛1「うおっ!?」ズサァッ

守衛2「き、貴様!くそっ!門を閉めろ!」

守衛3「お、追え!奴はおそらく例の残党だ!?」

???「クッカカカ…!」ファサッ

マドラス「バカヤローがざまぁねぇな!?」ゲラゲラ

マドラス「待ってろよ、賞金首…!俺からさんざん逃げ回った悪運の強さ…まさか溺れてくたばったりはしねぇだろ!なぁ!?」パカラッパカラッ

マドラス「潮の流れは西の方角…だいたい見当は付く。今度こそケリ付けてやるよ…!クッカカカカカカ!!!」パカラッパカラッ
515: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/26(木) 22:03:42 ID:RCXCl5If6k
―――西の領土(カーリンの町)―――

ズォォォォン

修道女「」ビクビク

教徒「…なん、だ…これ…」アゼン

バッ ドサッ バッ ドサッ

教団員1「はい、こちらへ積んでください!」サッサッ

修道女「ひぃっ…!し、死体が荷物みたいに積まれて…?」

教徒「ひどい匂いだ…。うっ…吐きそう」ウプッ

憲兵5「よし!こっちはあらかた終わったな?向こうを手伝うぞ?」

憲兵6「清掃活動はお任せを…教団の方々は死者の埋葬をお願いします」

教団員2「はい。お任せください」

教団員1「…司祭様に供養していただかないと?君たち、司祭様は?」

修道女「あ、はい!そ、その…?」

教徒「あそこに…?」ビッ

教団員1「悪いが呼んできてもらえるか?」

修道女「分かりました…」

教徒「おえっ…お、お腹痛くなってきた」キリキリ
516: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/26(木) 22:09:47 ID:RCXCl5If6k
ムワァァァァン

修道女「し、司祭様…!」スタスタ

宣教師「…どうしました?それから私は宣教師です?」

教徒「死者の供養をお願いしたいと…」

宣教師「…そうですか」

修道女「あ、あの!」

宣教師「なんですか?」

修道女&教徒「……」グッ

宣教師「黙りこんでいては分かりませんよ?」

修道女「どうするん…ですか?」

宣教師「?」

修道女「こんな事になっちゃって…本当にそれでもホビットを受け入れるんですか?」

宣教師「…どういう意味ですか?」

修道女「だって…これ……見てくださいよ!」

教徒「あ、あちこちに切り離された残骸が落っこちてて…ここまでするのっておかしくないですか?」ブルッ

修道女「頑是無い幼子も老人もお構い無しに矢が刺さって…町中、血の匂いで覆われちゃってるんですよ!?」

宣教師「……」

修道女「これ全部…ホビットの仕業だって言うじゃないですか!?」

宣教師「えぇ、とても…悲しいですよ」

教徒「それに言いたくないですが…この惨事の責任は司祭様に問われると思います。もちろん僕たちはそんな風に思いませんけど…」

修道女「うん…。多分、色んな人が教団の教えに異議を唱えるよ。
だって…今までホビットを遠ざけてきたのに…歩み寄った途端にこれじゃ…?」

宣教師「では諦めますか?」

修道女「え…?」

教徒「諦め…る?」ポカン

宣教師「こんな事になるなら、いっそやめてしまいましょうか?」
517: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/26(木) 22:13:42 ID:Zn..IGjcXM
宣教師「以前のようにホビットを差別していたぶり尽くしてやるんです?」

教徒「し、司祭様…?」

宣教師「そうすれば人間は平和です!最初からこうしておけば良かったんですよ?
まずは手始めに今まで教団で預かってきたホビットたちをまとめて追い払いましょう?」ニッコリ

修道女&教徒「」ゾゾゾッ

宣教師「私達を信じて平穏に生きようと頑張っている彼らに石を投げつけ、口汚く罵り、見事に期待を裏切ってあげましょうね?」

修道女「そんなのっ…イヤです!」アセアセ

教徒「あのホビットたちは関係ないじゃないですか!?」アセアセ

宣教師「…諦めるというのはそういうことですよ?」

修道女「……!」キュッ

教徒「……!」ズキンッ

宣教師「…こうした惨劇に目を背けてはなりません。
人の醜さもホビットの憎悪も…全て受け止めなくてはならないのですよ?」

宣教師「それでも諦めたくはないんですか?」

修道女「うっ…うぅ…」ガクッ

教徒「」シュン

宣教師「…どうなんですか?」ジッ

修道女「イヤです…!諦めたら…各地で共存してるホビットたちまで…!」

教徒「僕も…助けてあげたいです…!」

宣教師「ふふふ!あぁホッとしました?」ニコッ

修道女&教徒「?」キョトン

宣教師「キミたちがやめてしまったら私一人で旅を続けなければならないですし…寂しさに耐えられるか心配でどうしようかと?」ニコニコ

修道女&教徒「し、司祭様…!」パァァ

宣教師「……宣教師ですよ?では死者を弔いに参りましょうか?」

修道女&教徒「はいっ!!」
518: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/26(木) 22:17:27 ID:Zn..IGjcXM
―――西の国(王宮)―――

ファルージャ「…フゥ〜」スパー

魔導師「……」ジーッ

女装家「オネェ様ぁん……」ウットリ

将軍「」ハァハァ

ファルージャ「よくぞ戻ってまいった?」ジュッ

三銃士「ははぁーっ!!!」ザザザッ

ファルージャ「して…癒しの力は実在したとな?」ニヤァァ

魔導師「」コクリ

ファルージャ「…そうか?では…手に入れたのだな?」ニヤニヤ

魔導師「」ブンブンッ

ファルージャ「は?」

魔導師「あれには自分の呪術が効かないもんで?」

女装家「ちょっとぉ!?なによ、それぇ!?見つけといて持ってこなかったのぉ!?」

魔導師「うん。ムリだった」

将軍「そういう貴殿はどうなのだ?
我輩の聞くところによると…子供相手に惨敗し、拘束された上に強制送還されたそうだが?」

女装家「んぎっ…!な、なんであんたが…!?」ギクゥッ

将軍「貴殿が率いた兵は元々、我輩がパカラゥロに貸してやった物だ?」

女装家「くっ…くく…!」ギリッ

ファルージャ「そんな事はどうでもよいわさ?妾が解せぬのは…何故連れてまいらなかったのかじゃ?」

女装家「そ、そうよぅ!?オネェ様のおっしゃるとーり!?」

将軍「うむ…方法はいくらでもあった筈だが?」

魔導師「……」プイッ

ファルージャ「ん?パカラゥロ……そなた…」ジッ
519: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/26(木) 22:23:13 ID:RCXCl5If6k
将軍「なにを押し黙ってる?陛下の問いに答えぬか?」

女装家「あー!あー!分かっちゃった?やっぱり見つけてないのよぉ〜!?
オネェ様にご褒美もらいたくてウソついてんじゃないのぉ〜!?」

魔導師「……」ググッ

ファルージャ「…クスス?癒しの力はそれほどに不可思議であったか?」

魔導師「」ギクッ

ファルージャ「言葉にせずとも…表情など見ずとも…妾は見通しておるぞ?」

女装家「は?お、オネェ様?」

ファルージャ「己以外の特別な存在が恐ろしいのであろう?」

魔導師「んふふ…陛下には隠し事できないなぁ?」クックッ

女装家「な、なによ。アンタ?気持ち悪いわネェン…?」ブルッ

将軍「(二人にしか通じない会話…?わ、我輩の知らぬ陛下とパカラゥロだけの……き、気に喰わぬ!)」ギリィッ

ファルージャ「癒しの力に妬くな?妾はそなたを愛しておる?」

魔導師「!」ドキンッ

女装家「はぁぁ!?」

将軍「き、きき…き、きさささ…!わ、わわわぐぁ…我輩を差し置いて…!?」ワナワナ

ファルージャ「そなたも…そなたもじゃ?」ビッ

女装家「へっ!?」パァァ

将軍「!?」ドッキュンコ

ファルージャ「たった一つしかない才や物を特別というそうな?しかし妾は…一つでは足りぬ?全てを手元に置き、愛で続けたい?」

ファルージャ「全てをこの手に納めたい?地位、才、美……そして永遠、どれも妾にこそ相応しい?」

ファルージャ「新たな特別を手にしても…そなたらに与える愛に濁りはないぞよ?」

ファルージャ「永遠の命を得れば…そなたらは永遠に妾の寵愛を受けられる?それでは不満かえ?」ジッ

魔導師「んふ…ふふ!んふふふふ!」プルプル

女装家「そ、想像しただけで……あひぃ〜ん!?」ジタバタ

将軍「ヌオオオオ!!!永遠の命、万歳!!!」バンザーイ
520: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/26(木) 22:28:35 ID:Zn..IGjcXM
ファルージャ「なんにせよ癒しの力の存在は掴んだ。それなりの収穫じゃな?
しかも黒魔術をモノともせぬ程に強力…クスス?これは永遠の命も期待出来ような?」

女装家「あらーん?癒しの力に負けちゃうなんてアンタの術も大したことないのネェン?」フンスッ

魔導師「大したことないかどうか試してみるかい?」ニギニギ

女装家「じょ、ジョークよん…!おバカちゃんなんだから?」アセアセ

ファルージャ「して…シャルウィン。そなたの収穫は?」

女装家「癒しの力は見つけられませんでしたが…代わりに城で情報収集をして参りましたわ?」

将軍「何が情報収集だ?外交を官吏共に押し付け、貴殿は遊び歩いてたそうではないか?」

女装家「そーよ!悪い!?下っ端の集めた情報を後でアタシが収穫したの!?
それをオネェ様に報告するのはアタシ!つまりぜーんぶアタシの手柄よ!?違うっての!?」

将軍「開き直りにも程がある」

ファルージャ「申してみるがいい?」

女装家「それがもう笑っちゃうんですけどぉ〜?今の王国ってかなり追い詰められた立場にあるみたいですわよん?
伝承の撤回と国力の低下、それから巡礼での反乱、国王の代替わり、色々と問題起こし過ぎて6国の中でも浮き気味なんですってぇ〜?」

将軍「ほほう?なるほど…よし、戦争だな!」ガッツポーズ

女装家「気ぃ早すぎ!そうしちゃいたいけどぉ…まずはボロボロの外壁を完っ全にぶち壊さなきゃ〜?」

ファルージャ「何か企みがありそうじゃな?」ニヤリ

女装家「もっちろぉ〜ん!アタシがチャチャッと作った超完璧な作戦があるんですぅ〜?」

将軍「……大丈夫なのだろうな?」ジロッ

女装家「あぁん?」ギロッ

将軍「あぁ?」ギヌロォォ

魔導師「まぁまぁまぁ?聞くだけ聞いてみたらいいじゃないの?」

将軍「…よかろう。聞いてやる」

女装家「あ?聞かせてくださいでしょうが?」ギロッ

将軍「よし、受けて立つ!」チャッ

魔導師「陛下の御前だよ、二人とも?」ドウドウ

将軍&女装家「ちっ!」バチバチ
521: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/26(木) 22:31:04 ID:RCXCl5If6k
女装家「〜〜っていう作戦ですわん!」ドヤァッ

ファルージャ「……」ボケーッ

女装家「あーん、もうシャルウィンちゃんったら天才過ぎ!チョー完璧!もうヤっちゃいましょ!?」

ファルージャ「…分かるかえ?」チラッ

魔導師「ふぅ〜〜〜ん……って思った」

将軍「つまりは…ん、んぅ!そういうことであろうが!?」オホンッ

女装家「…あ、あらん?反応が…?」

ファルージャ「…妾にはさっぱり分からぬ?」

魔導師「将軍、分かるのかい?」

将軍「まま、まぁそうだな!うむ、紙一重の作戦だ!ヌハハハハハ!!!」

女装家「!?」ガーン

ファルージャ「政治に疎いでな?なんの事やら…まぁそなたの好きにせよ?」シラー

女装家「こ、光栄…ですわん…」ズーン
522: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/26(木) 22:36:19 ID:RCXCl5If6k
―――西の国(会議室)―――

女装家「ちょっとアンタぁぁ!?どうなってんのよぅ!?
アンタが考えた作戦、聞かしたのにオネェ様ったら全然ピンと来てなかったじゃないのよぅ!?おかげで大恥かいたんだから!?」バンッ

官吏3「わ、私は王国のパーティーで貴族や役人と親しくし、確かな情報を集めましたぞ?ど、どのように説明をなされたので?」アセアセ

女装家「えっ!?だからアレよ!アレをアレしてアレするってアレしてきたのよ!?」

官吏3「(そりゃピンと来んわなぁ…。そもそも陛下も三銃士の面々も頭脳はからっきしなのだから分かる訳がない…)」

将軍「ぬぬぬ…!」ギリィッ

女装家「アンタはいつまでイラついてんのよぅ!?暑苦しいったらありゃしない!?」

将軍「これがイラつかずにいられるかぁ!?なぜパカラゥロだけが陛下の寝室に呼ばれるのだぁ!?
我輩でさえご無沙汰だというのに…あぁ憎々しい!!」ダンッ

女装家「アタシだってムカつくわよぉ!?だけどしゃあないでしょ!?
今回一番の手柄を立てたのはパカちゃんだって言われちゃったんだから!?」

将軍「フンギギギ…!い、今頃は陛下と寝室でちちち…ち、乳繰り合ってフンギィィィ!!!」ダンッダンッ

女装家「あぁぁん!!言うんじゃないわよ!?アタシだって陛下の全身マッサージしたいぃぃ!!」ワシャワシャ

官吏3「(な、なんじゃそら!贅沢抜かしやがって…こっちなんか陛下の手を握った事さえないんだぞ…!)」イライラ

ガチャッ

参謀「遅れて申し訳ございま………」

将軍「フギィィ!!あぁクソッタレがぁ!?」ダンッダンッ

女装家「アイツばっかアイツばっかアイツばっかずるぃぃぃ!!!」ワシャワシャ

官吏3「(お、俺だって…!へ、陛下にむしゃぶり付きたいんだぞ!羨ましいな、畜生!!)」イライラ

参謀「(…煩悩の塊共め)」ハァッ
523: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/26(木) 22:46:51 ID:Zn..IGjcXM
女装家「あんのブキミ野郎…!イイとこばっか持ってきゃあがって…!」

参謀「…シャルウィン様」

女装家「んじゃゴラッ!?」ギロッ

参謀「向こうで火傷を負われたと聞いておりまするが…その後、具合の方は?」

女装家「あぁん?お化粧で隠してんのよ!アタシのコンプレックス突くなんていい度胸じゃないのぅん?」ビキィッ

参謀「あ、そうでしたか?とてもお美しい肌艶なので…すっかりと健康美を取り戻されたのかと?」ニコッ

女装家「……!あ、あぁ〜ら、そうかしらん?」デレッ

参謀「はい。本日もまことにお綺麗でございまする?火傷痕を跡形もなく消し去る美容術を持つ者など…はたしてシャルウィン様の他におりましょうや?」

女装家「ま、まぁ〜?いろいろ小まめにやってるしぃ?」デレデレ

参謀「陛下のケアをなさる美容顧問官として説得力に厚みが持たれますよ?」

女装家「ブォホホホ!アンタいいこと言うわネェン?」デレデレ

参謀「将軍閣下」

将軍「ぬぅ…!?」イライラ

参謀「先日に閣下自ら指揮なされたレジスタンス討伐の件を陛下が褒めておられましたよ?」

将軍「な、なんとおっしゃられた!?」ガタッ

参謀「鮮やかな手際だとか、そんな風な事を?」

将軍「そ、そうか!へ、陛下がな?ムフフ…!」ニヤニヤ

参謀「(手を焼かせる連中だ…)」

参謀「では会議を始めましょうか。まずは……王国孤立化に向けての外交戦術を固めましょう?
そこの官吏の意見を元に僕が考案致しました案なのですが……」

官吏3「(え!?そうなると私の手柄が参謀に……)」

参謀「なにか?」ギロッ

官吏3「い、いや…」タジッ

参謀「…この案には宝石商を営んでおられますシャルウィン様のお力が必要になりまする?」

女装家「そうよネェン、お化粧のノリも……アタシ?」キョトン

参謀「はい…?」ニヤリ
524: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/27(金) 22:41:11 ID:UavECGF.sw
〜〜〜1週間後〜〜〜

―――王都(会議場)―――

ヒメ「……!」ペラッ

高官's「」オロオロ

ヒメ「本当なのか…!これ…!?」

政務官「その書類の報告に偽りはございません」

ヒメ「だとしたら…まずいぞ!」ギリッ

政務官「…してやられましたな」

高官1「な、な…何が起こっているんですか!?」オロオロ

ネバル「……」ペラッ

高官2「わ、分かるか?」ツンツン

ネバル「内容そのまんま読むと…西の国がこちらの同盟国と貿易を成立させたってなってるです?」

高官2「読めば分かる…!それがなんでまずいんだ…!?」

ネバル「なんで…?うーん……なんで?」キョトン

高官2「私に聞くなぁ!?」

政務官「要約すると…こちらが進めていた取り引きを横取りされたのだ」

高官's「えぇぇ!?」

ネバル「はー…困ったですねー…。今んとこ国内がばたついて国家予算が流れてっちゃうですし…?
国外からの物流交易、文化交流で経済効果が高まる期待してたです…」

高官1「う、うーむ…た、確かに政務官殿が以前より進めておられた国家交流の円滑化には…貿易が必要でしょうなぁ」ポリポリ

ヒメ「それだけならまだしも…結び付きまで奪われた…!」ワナワナ

高官4「結び付き?」キョトン

政務官「…全容を理解しているのは私と陛下のみか。情けない…」ヤレヤレ

高官's「???」チンプンカンプン
525: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/27(金) 22:45:59 ID:YvuzyYVhZU
政務官「利害関係の結び付きを奪われた…つまり今、王国と5国の関係性は非常に希薄な物になっているという事だ」

ヒメ「あぁ、実質的には同盟なんて名ばかりの繋がりで…苦しい時に無償で手を差し伸べる国なんかない」

高官's「!?」

政務官「まさかあのファルージャが外交戦術を仕向けてくるとはな…。さすがに予想していなかった」

高官3「し、しかしですなぁ?なぜ長いこと危険視されてきた野蛮な西の国と……」

ネバル「あっ!?」

高官3「な、なんだ!?今は私が喋ってるだろ!?」

ネバル「でもそれって…同盟国からしたら、うちがそうですよね!?」

高官3「はぁ!?なにがだ!?」

政務官「そうだ」

高官3「えっ」

政務官「約1年前から西の国と貿易を結んだ我が国に対する同盟国の見方は…平和協定を崩しかねない危険因子……」

高官1「で、でも!でもですぞ?さすがにこんな急に事態が…!」

政務官「何を言っている?世界全体の流れは一分一秒の油断も許されない凄まじい速さで切り替わっていくのだ?」

高官1「…!?」ゴクリ

政務官「特に独自の繁栄を築く主要国家の判断力は極めて高い。
あらゆる流れを敏感に察知し、疑わしきは早急に排除しようと迷いなく決断する…」

ネバル「…あれ?だけど王国と同盟国は付き合いが長いですよね?
なんで王国じゃなくて危ないって分かってる西の国と?」

政務官「理由は3つある」

ザワザワ ヒソヒソ

政務官「第一に王国の弱体化、これにより西の国と貿易を結んだ我が国は…各国に対抗しようと焦ったものと思われている」

ネバル「た、たったそれだけで…?」

高官5「わ、我々が反旗を翻すとでも言うのか!馬鹿馬鹿しい!」
526: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/27(金) 22:49:50 ID:UavECGF.sw
政務官「第二に…西の国の持ちかけた貿易には王国以上のメリットがある」

高官5「め、メリット…?」

政務官「宝石や貴金属の元となる鉱石資源の採掘場だ?」

高官6「はぁっ!そういえば西の国は金や宝石の生産量が世界一だ!?」

高官5「し、しかしそれなら我が国にも…」

高官6「いや!昔から宝飾品の扱いに慣れ親しんでいる国民性だけに、その加工技術は群を抜いているとか!」

政務官「あぁ、それだけに過去の戦争では…いくつもの国から集中的に狙われたと聞く。
今でも世界中が密かに西の鉱石資源に目を付けているが…。
今回の取り引きで直接、生産地ごと明け渡してしまおうと言うのだから諸国にしてみれば、この上ない好機だ」

ネバル「そ、そんなすごいのあげて西の国は大丈夫です?」オロオロ

政務官「自国の主要財産を壌土したのだ…。腹を括って挑んでいるのは間違いない」

ザワザワ ザワザワ

高官7「な、何が狙いなんだ…!?」

高官8「政務官!3つ目の理由とは!?」

政務官「……」

シーン

政務官「…この国に先はないと判断されたのだ」

ヒメ「」ピクッ

ネバル「えぇっ…!?」

高官1「ど、どういう事だ!?」ガタッ

ザワザワ ザワザワ

政務官「巡礼での深い痛手が効いてきたな…。
他国の役人が集う場での大失態もそうだが…早い段階で信頼を取り戻せなかった事が大きい」

政務官「国力低下の煽りは何よりホビットとの和解だろう。
それが民をひどく混乱させ、伝承の偽りも広めさせ、国内外の糾弾と警戒を加速させた」

政務官「そして決定的なのは…国王が子供だという事実」

ジロジロ ヒソヒソ

ヒメ「……!」ググッ
527: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/27(金) 22:55:41 ID:UavECGF.sw
政務官「こうなる前に同盟国との繋がりを強くし、西の国が入り込む隙間を埋めるつもりだったんだが…ハッキリと認識されてしまった」

政務官「手詰まりになり、野蛮な国と共闘しようと企む王国…。
そして王国を足掛かりに各国との友好関係を築こうとしている西の国…どちらを取るかは明白だ?」

政務官「このままでは…同盟の中にいながら王国は孤立化してしまうだろう」

ネバル「あ、あの!なんでリルラ様は警戒されるって知ってて西の国と貿易したです?」

政務官「…同盟国に警戒される以上に西の国は危険だからだ」

ネバル「? で、でも武器の製造や軍の強化、日常的な紛争はあっても国同士の戦争は未だにないですよ?」

政務官「前皇帝の方針が常に戦争を意識したものだった」

ネバル「ぜ、前皇帝って…もう死んだんじゃ…?」

政務官「あぁ、だがファルージャに仕える配下は前皇帝時代の人間ばかりだ。
その意識は色濃く反映していると見ていいだろう」

政務官「更に言えば…ファルージャ自身が前皇帝を凌駕する極めて危険な人物だ?何をするか読めないだけに恐ろしい?」

ネバル「そ、それじゃ…万が一もありえたっていう…?」ブルッ

政務官「…」コクリ

ネバル「ひっ…!」

政務官「…巡礼での一件から間もないあの頃では西の国と揉めようと同盟国は素知らぬ顔をしただろう」

政務官「唯一の救いは西の国にファルージャが君臨してから国外への視野を狭め、情勢を把握していなかった事だ。
なので、こちらの弱味を握られる前に同盟国と利害を含む信頼を築き、牽制出来るまでに備えたかったが…残念だ」

ネバル「……どうして急に事情が漏れたです?」

政務官「ふん…西の国の役人を招いたパーティーで口の軽い上流層の人間が漏らしたんだろう?」

高官1「…せ、政務官、もしかして我々は…とんでもない危機に陥っているのでは?」

政務官「あぁ、早ければ半年内にも西の国の兵が侵攻してくる可能性が高い」

高官's「!?」ギョギョッ

ネバル「な、なんで…うちの国を狙うです?」ビクビク

政務官「……さぁな」
528: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/27(金) 22:58:42 ID:YvuzyYVhZU
高官1「へ、陛下!さっきから黙ってないでなんとか言ったらどうなんです!?」バンッ

ヒメ「なんとかって…」

高官2「そ、そうだ!貴様が悪いんだぞ!?しきたりを守らずに12歳で即位なんかするから!?」

高官3「お前のせいでナメられて国々に愛想尽かされたんだ!?」

高官4「さんざん偉そうに説教してくれたな!ガキの分際で!?」

高官5「この責任はどう取るんだ!?えぇ!?」バンッ

ヒメ「…な、なんだよ、それ?余がわる…」

高官6「何が"余"だ、えらっそうに!?前国王のマネか!?」

高官7「そういえば奴も無能だったな!やはり血は争えないか!?」

高官8「無能な王族が口出しするからおかしくなった!ホビットなんか差別させておけば良かったのだ!?」

ヒメ「ふ、ふざっ……」ガタッ

ジロジロ ジロジロ

ヒメ「!?」

ヒメ「(な、なんだよ…その目は?おまえたちの方がよっぽど怠けてたじゃないか…?)」プルプル

ヒメ「(僕は…僕は父上の無念を…あいつとの約束を……みんなが素敵だって言ってくれた国を作りたくて……)」
529: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/27(金) 23:00:27 ID:YvuzyYVhZU
ギャーギャー ギャーギャー

ヒメ「おまえら……なんなん…だよ…」ジワァ

ネバル「ちょ、ちょちょちょ!おかしい!陛下悪くないです!」アワアワ

政務官「…無礼者!!」

高官's「」ビクッ

ヒメ「……?」チラッ

ネバル「り、リルラ様…!」

政務官「貴様らに陛下を責める資格などないわっ!無能役人共が!?」

高官's「……!」

政務官「陛下の唱える政策は理に敵っていて決して実現不可能な物ではなかった!これは貴様らの遅すぎる対応が招いた事態だ!?」

シーン

ヒメ「…退席、する」フラッ

ネバル「陛下!?」

ヒメ「」フラッフラッ ガチャッ

バタンッ

ネバル「……!」ダッ

政務官「追わなくていい!!」

ネバル「」ビクッ

政務官「私が行く。お前たちはこれからの対応策を協議しておけ?」

ネバル「は、はぁ…」

高官's「……」
530: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/8(日) 21:00:28 ID:bKCYR0A6ec
―――王室―――

コンコン コンコン

ヒメ「…入るな、どっか行け」

政務官「失礼」ガチャッ

ヒメ「…入るなって言っただろ」ジロッ

政務官「会議を途中で投げ出してしまわれるとは貴方らしくもない?国王としてあるまじき行為ですな?」

ヒメ「…頼りない国王で悪かったな?」ムスッ

政務官「急を要する事態です。休む暇などございませんぞ?」

ヒメ「ふん…」

政務官「…北を筆頭に我が国への警戒を強めていた3国は…もはやどうにもなりません。中立を貫いてきた南の国も傾きかけています…」

ヒメ「…四面楚歌だな。もうおしまいか」

政務官「…そう思われますか?」

ヒメ「西の国が仕掛けてきた場合、食い止められるだけの交渉材料、もしくは王国の武力で勝てる見込みは?」

政務官「ございません」キッパリ

ヒメ「…それなら余計な血を流すより、早めに降伏した方がいいかもな」

政務官「そうなると国王である貴方の命は、まず無いでしょうな…」

ヒメ「…どうだっていいさ。誰も国王になんか興味ないし、また別の誰かが仕切るだけだ」

政務官「私個人の考えでは…この国の王は貴方以外にいないと」

ヒメ「同じだよ。誰でも?」

政務官「国王ともあろうお方がずいぶんと弱気ですな?」

ヒメ「一人で頑張ってもダメなんだ」

政務官「は?」

ヒメ「国王がいくら張り切っても役人達が渋るとダメになる…。国王と役人の目標が一致しても民に行き渡らないと意味がない」

政務官「国とはそういう物だと存じておられたのでは?」

ヒメ「ハハハ…そうだな。そんな大きな物…僕が背負っていける訳がなかったんだ…」フゥッ

政務官「これは重症だ…?」ヤレヤレ
531: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/8(日) 21:05:33 ID:51.WaVWWTg
政務官「よいですか、陛下?国を背負うのは…その国に住まう皆でございます?」

ヒメ「そりゃそうだけど、理想論だよ…。実際は足の引っ張り合いで追い詰められてるじゃないか…?」

政務官「先ほどは無能と称しましたが…彼らも役人としての責務を全うしようと心掛けております」

ヒメ「……どうだか」

政務官「着実に変化しているのは確かです。決算を確認してみましたが…」カサッ

政務官「以前より無駄な出資や記載漏れが減り、金の流れが分かりやすくなっている?
役人達も真剣に取り組んでいると見て間違いないでしょう」

ヒメ「っ…!」キュッ

政務官「お一人で励んでおられるというのは…少々驕りが見えますな?」

ヒメ「じゃあ…どうすればいいんだ!一丸になって取り組んでも結果がこれじゃ…!?」

政務官「確かに不利な状況を押し切るには…今の王国では地力が弱いようです?」

ヒメ「…そもそもファルージャがそこまでして狙ってる物はなんなんだ?この国にそんな物があるのか!?」

政務官「……」

ヒメ「おまえ…本当に何も知らないのか?直接、交渉してきたんだろ…!?」

政務官「…未だに狙いは読めません。それに…知ったところで現状は変えられないでしょう?」

ヒメ「っ…あの国の事もよく調べた!でも恨まれるような節はないし衝突する理由もないじゃないか!」

政務官「それだけに企みが読めないと先ほどから申し上げておりますが?」

ヒメ「なんだよ、それ…!じゃあ交渉も何もないじゃないか…!?」

政務官「そのようです。なので交渉は諦め、同盟を強めようと尽力してまいりました」

ヒメ「だから…それが出来なかったんだろ!交渉も無意味で同盟も断たれたら一溜まりも……」

政務官「まだ手はございます」

ヒメ「なっ…なんだよ、手って!?」
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