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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】
[8] -25 -50 

1: ゆったりペースになりますが! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:09:52 ID:N4jwCkModw
1スレ

少年「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10

2スレ

カロル「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10

―――あらすじ―――

それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました

しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました

そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです

戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました

布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました

それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします


528: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/27(金) 22:58:42 ID:YvuzyYVhZU
高官1「へ、陛下!さっきから黙ってないでなんとか言ったらどうなんです!?」バンッ

ヒメ「なんとかって…」

高官2「そ、そうだ!貴様が悪いんだぞ!?しきたりを守らずに12歳で即位なんかするから!?」

高官3「お前のせいでナメられて国々に愛想尽かされたんだ!?」

高官4「さんざん偉そうに説教してくれたな!ガキの分際で!?」

高官5「この責任はどう取るんだ!?えぇ!?」バンッ

ヒメ「…な、なんだよ、それ?余がわる…」

高官6「何が"余"だ、えらっそうに!?前国王のマネか!?」

高官7「そういえば奴も無能だったな!やはり血は争えないか!?」

高官8「無能な王族が口出しするからおかしくなった!ホビットなんか差別させておけば良かったのだ!?」

ヒメ「ふ、ふざっ……」ガタッ

ジロジロ ジロジロ

ヒメ「!?」

ヒメ「(な、なんだよ…その目は?おまえたちの方がよっぽど怠けてたじゃないか…?)」プルプル

ヒメ「(僕は…僕は父上の無念を…あいつとの約束を……みんなが素敵だって言ってくれた国を作りたくて……)」
529: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/27(金) 23:00:27 ID:YvuzyYVhZU
ギャーギャー ギャーギャー

ヒメ「おまえら……なんなん…だよ…」ジワァ

ネバル「ちょ、ちょちょちょ!おかしい!陛下悪くないです!」アワアワ

政務官「…無礼者!!」

高官's「」ビクッ

ヒメ「……?」チラッ

ネバル「り、リルラ様…!」

政務官「貴様らに陛下を責める資格などないわっ!無能役人共が!?」

高官's「……!」

政務官「陛下の唱える政策は理に敵っていて決して実現不可能な物ではなかった!これは貴様らの遅すぎる対応が招いた事態だ!?」

シーン

ヒメ「…退席、する」フラッ

ネバル「陛下!?」

ヒメ「」フラッフラッ ガチャッ

バタンッ

ネバル「……!」ダッ

政務官「追わなくていい!!」

ネバル「」ビクッ

政務官「私が行く。お前たちはこれからの対応策を協議しておけ?」

ネバル「は、はぁ…」

高官's「……」
530: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/8(日) 21:00:28 ID:bKCYR0A6ec
―――王室―――

コンコン コンコン

ヒメ「…入るな、どっか行け」

政務官「失礼」ガチャッ

ヒメ「…入るなって言っただろ」ジロッ

政務官「会議を途中で投げ出してしまわれるとは貴方らしくもない?国王としてあるまじき行為ですな?」

ヒメ「…頼りない国王で悪かったな?」ムスッ

政務官「急を要する事態です。休む暇などございませんぞ?」

ヒメ「ふん…」

政務官「…北を筆頭に我が国への警戒を強めていた3国は…もはやどうにもなりません。中立を貫いてきた南の国も傾きかけています…」

ヒメ「…四面楚歌だな。もうおしまいか」

政務官「…そう思われますか?」

ヒメ「西の国が仕掛けてきた場合、食い止められるだけの交渉材料、もしくは王国の武力で勝てる見込みは?」

政務官「ございません」キッパリ

ヒメ「…それなら余計な血を流すより、早めに降伏した方がいいかもな」

政務官「そうなると国王である貴方の命は、まず無いでしょうな…」

ヒメ「…どうだっていいさ。誰も国王になんか興味ないし、また別の誰かが仕切るだけだ」

政務官「私個人の考えでは…この国の王は貴方以外にいないと」

ヒメ「同じだよ。誰でも?」

政務官「国王ともあろうお方がずいぶんと弱気ですな?」

ヒメ「一人で頑張ってもダメなんだ」

政務官「は?」

ヒメ「国王がいくら張り切っても役人達が渋るとダメになる…。国王と役人の目標が一致しても民に行き渡らないと意味がない」

政務官「国とはそういう物だと存じておられたのでは?」

ヒメ「ハハハ…そうだな。そんな大きな物…僕が背負っていける訳がなかったんだ…」フゥッ

政務官「これは重症だ…?」ヤレヤレ
531: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/8(日) 21:05:33 ID:51.WaVWWTg
政務官「よいですか、陛下?国を背負うのは…その国に住まう皆でございます?」

ヒメ「そりゃそうだけど、理想論だよ…。実際は足の引っ張り合いで追い詰められてるじゃないか…?」

政務官「先ほどは無能と称しましたが…彼らも役人としての責務を全うしようと心掛けております」

ヒメ「……どうだか」

政務官「着実に変化しているのは確かです。決算を確認してみましたが…」カサッ

政務官「以前より無駄な出資や記載漏れが減り、金の流れが分かりやすくなっている?
役人達も真剣に取り組んでいると見て間違いないでしょう」

ヒメ「っ…!」キュッ

政務官「お一人で励んでおられるというのは…少々驕りが見えますな?」

ヒメ「じゃあ…どうすればいいんだ!一丸になって取り組んでも結果がこれじゃ…!?」

政務官「確かに不利な状況を押し切るには…今の王国では地力が弱いようです?」

ヒメ「…そもそもファルージャがそこまでして狙ってる物はなんなんだ?この国にそんな物があるのか!?」

政務官「……」

ヒメ「おまえ…本当に何も知らないのか?直接、交渉してきたんだろ…!?」

政務官「…未だに狙いは読めません。それに…知ったところで現状は変えられないでしょう?」

ヒメ「っ…あの国の事もよく調べた!でも恨まれるような節はないし衝突する理由もないじゃないか!」

政務官「それだけに企みが読めないと先ほどから申し上げておりますが?」

ヒメ「なんだよ、それ…!じゃあ交渉も何もないじゃないか…!?」

政務官「そのようです。なので交渉は諦め、同盟を強めようと尽力してまいりました」

ヒメ「だから…それが出来なかったんだろ!交渉も無意味で同盟も断たれたら一溜まりも……」

政務官「まだ手はございます」

ヒメ「なっ…なんだよ、手って!?」
532: 名無しさん@読者の声:2015/3/8(日) 21:08:45 ID:OGBUeoyU8o
政略結婚?
533: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/8(日) 21:10:32 ID:51.WaVWWTg
政務官「さるお方より、こちらをお渡しするよう仰せつかってまいりました」カサッ

ヒメ「な、なんだ…その手紙?誰から受け取ったんだ?」

政務官「ご確認ください」スッ

ヒメ「……?」パシッ

『親愛なる王国第9代国王ヒメ陛下へ〜〜ますますの御盛栄お慶び申し上げます〜〜』

ヒメ「こういうのっていちいちめんどくさいんだよな…。飛ばして読もう」カサッ

『つきましてはヒメ陛下を招待し、世界初となる少年王誕生を祝して盛大なるパレード及びパーティーを催させていただきたく存じます。詳細は同封のプログラムをご確認下さい』

ヒメ「……まさかこれ」

政務官「はっ…東の国王より預かりました招待状にございます」

ヒメ「危険じゃないか…?」

政務官「と、申されますと?」

ヒメ「どうせ東の国も他の同盟国と一緒で西の国と貿易するんだろ?
警戒されてる王国に進んで取り入れば疑惑を向けられて自分の首を締めるハメになるはずだ?」

政務官「東の国は西の国の誘いを断っておられます」

ヒメ「えっ」

政務官「暗殺や謀略の影は見られません。この誘いを断る手はないかと」

ヒメ「…なんで危険を犯してまで僕にこだわるんだ?やっぱり頭おかしいんじゃないのか?」

政務官「大臣もそうでしたが…権力者という者は大概が底の知れぬ変態です?(※偏見)」フッ

ヒメ「自国の治世より自分の趣味かよ…。そんな奴に頼りたくないなぁ…」ドンビキ
534: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/8(日) 21:19:08 ID:51.WaVWWTg
政務官「なんにしろ我々が取り入るとしたら東の国以外にはないという事になりますな」ヘッ

ヒメ「ま、まぁ願ってもない話だけどさ…」

政務官「…色々と要求されるでしょうが」ボソッ

ヒメ「!?」

政務官「どうかご辛抱くださいますよう…?国の一大事ですからな?」

ヒメ「う、うぅ……」ウルウル

政務官「落ち込まなくとも?このような逆境において一筋の幸運に恵まれたのは貴方様が即位なされたからですぞ?」

ヒメ「くっ…慰めのつもりか?さっきはさんざん役人たちを煽っておいて?」キッ

政務官「なにぶん陛下には経験が欠けておられますのでな?
彼らを出汁に器の程を確かめさせていただきました?」

ヒメ「イヤな奴だな…!それもアントリア仕込みのやり方か?」

政務官「ふっ…あの程度で絶望してしまわれるようでは先が思いやられますぞ?」

ヒメ「分かってるよ!こうなったら…もうなりふり構ってられるか!」

政務官「その意気にございます?」

政務官「……」

政務官「(ある意味、最も避けたい選択肢ではあったが…しかたあるまい)」

政務官「(幼い陛下は気付いておられないが…まさか一国の王が身売りするほどに追い込まれるとはな)」ハァッ

ヒメ「なんとしても東の国王を味方に付けて…ファルージャの思惑を打ち砕いてやる!」

政務官「(おいたわしいが…これもまた繁栄の軌跡だ。ここを越えていただくしかないな)」
535: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/8(日) 21:24:38 ID:51.WaVWWTg
―――西の領土(畔上の道)―――

母「……ふぅ」クタァ

カロル「お母さま、お母さま?おたまじゃくしが泳いでるよ!」ピチョピチョ

母「えぇ、可愛いわね?」ニコッ

マルク「くぅ〜…!」ジュルリ

カロル「食べちゃダメ?」ジッ

マルク「あふんっ…」ジーッ

カロル「」ツンッ ピチョピチョ

チャプチャプ チャプチャプ

カロル「あはは!指先に集まってる?気になるのかな?」ピチョ

マルク「クゥン…」グゥー

カロル「お腹鳴ってるよ?」クスッ

母「平地ばかり歩いてきたから、まともに食べれてないものね?何か食べさせてあげたいけど人里には……」

ダダダッ

母「……?」クルッ

百姓「お、おめーら!おらの田んぼで何してるだ!?」ダダダッ

母「」ビクッ

百姓「ウオオオオ!!!」ブンッ

カロル「え?……わぁっ!?」ズサァッ

母「きゃあっ!?」サッ

ガスッ
536: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/8(日) 21:26:21 ID:51.WaVWWTg
百姓「ちぃっ!外したっぺな!」ズボッ

母「い、いきなり何するんですか!?鍬なんか振り回したら危ないじゃない!?」ビクビク

マルク「ワンッわぅんっ!」プンスカ

百姓「うるせぇ!?小汚ないホビットが田んぼさ荒らすからだっぺ!?」

カロル「ぼ、ボクたち、ここで休んでただけだよ?荒らしたりしない…です?」ビクビク

百姓「嘘こくでねぇ!?村はずれの田んぼやら畑さ狙うホビットが増えてるって聞いたんだ!様子見に来て正解だったべ!」

カロル「……」シュン

百姓「どっか行け!消えちまわねぇと本当にぶっ殺すだぞ!?」バッ

母「…行きましょ、坊や」スクッ

カロル「はーい…」スクッ

マルク「わぅぅ…」グゥー
537: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/8(日) 21:28:00 ID:bKCYR0A6ec
母「どこに行っても同じね…。なぜだか人里に入れてもらえない…」トボトボ

カロル「うん…。昔に戻っちゃったみたい」トボトボ

マルク「」グゥー

カロル「……あっ!あっちに原っぱがあるよ!」ビッ

母「この辺りは田んぼ道になってたから、もしかしたらあの原っぱに水源があるのかもしれないわ?」

カロル「……原っぱにお水があるの?」キョトン

母「たぶんね?普通は川の水を通したりするんでしょうけど近場にない場合もあるから、そういう時は管を通して湧き水を引っ張ってくるの?
この辺は川がないからひょっとしたら、そうしてるんじゃないかしら?」

カロル「へー!お母さますごーい!なんでも知ってるんだね!」パァァ

母「ふふーん!お母さんだって伊達に40年生きてないもの?坊やの知らない事もいっぱい経験してるのよ?」フフン

カロル「そうなんだー…!」キラキラ

母「うふふ!分からない事があったら、なんでもあたしに聞きなさい?」

カロル「うん!」キラキラ

マルク「あんっ!あんっ!」タタタッ

カロル「あぁっ!ずるい!ボクだって喉カラカラなんだからね!」タタタッ

母「ふふ?もう…せっかちな子たちね?」タッタッ
538: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/8(日) 21:30:07 ID:bKCYR0A6ec
―――草藪の池―――

マルク「」パシャパシャ

カロル「んっ…」チャプッ ズズズ

母「はぁ…おいし?」ゴクッ

カロル「お水があってよかったね?」

母「えぇ、あのまま歩き続けてたら、いつか干からびちゃうわ?入れ物もあったら、もっとよかったけど…」

カロル「…海に飛び込んだ時にぜんぶ流されちゃったもんね」

母「ああしなきゃ逃げられなかったんだからしょうがないわよ?」ナデリ

カロル「牧場のおじさまにもらったミルクの瓶があったら…お水持っていけたのになぁ」シュン

母「…それはちょっぴりもったいなかったかも」ガクッ

マルク「」クンクン

母「あら、何か見つけたの?」

マルク「」ハッハッ

母「あぁ、それはシラナ草よ?害はないから食べても平気だけど水洗いして土を払っておきましょうか」ブチッ

カロル「なんでシラナ草って言うの?」

母「どこにでも生えてるから誰でも一度は目にしてるけど、意外と広く知られてないからシラナ草(そう)って言うのよ?」ジャブジャブ

カロル「えー!ヘンなの?」クスクス

母「あたしも夫に教えてもらうまで、よく知らなかったんだけど…聞いてみると面白い名前よね?」クスクス

マルク「あぅぅん…」モジモジ

母「はいはい?キレイにしたから大丈夫よ?召し上がれ?」スッ

マルク「あんっ!」パクンッ ムシャムシャ

母「うふふ?普段は草なんて食べないのに…よっぽどお腹が空いてたのね?」

カロル「1日ぶりのごはんだもん?お腹ペコペコだよね?」ナデリ

マルク「あんっ!」ペロリ

ガサガサ

母「!?」ピクッ
539: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/8(日) 21:33:34 ID:51.WaVWWTg
旅のホビット1「同族だぞ!」ガサッ

ガサガサ

旅のホビット2「ホントに?」

旅のホビット3「」ヒョコッ

カロル「……?」キョトン

母「ま、まぁ…?」ビックリ

マルク「」ゴクゴク

旅のホビット1「あ、ごめんなさい。挨拶もしないで…分かると思うけど僕達もホビットです?」

カロル「はじめまして!カロルって言います!」ニコッ

母「母親のマリーです。あなた方もお水を?」

旅のホビット1「あ、ご丁寧にどうも…そうなんですよ。休憩がてら飲み水を補給したくて?」

旅のホビット2「まさか同族がいるなんて思わなかったよ?」

母「ふふ、そうですね。あたし達もびっくりしました?」ニコッ

旅のホビット1「よかったですよ…。また人間に出くわしたらどうしようかとヒヤヒヤして…」ホッ

母「人間がどうかなさったんですか?」

旅のホビット1「へ?」

旅のホビット2「おたくらも追い出されたんじゃないの?」

母「追い出された?うーん…まぁそうなるのかしら?」

旅のホビット1「やっぱり……」

旅のホビット2「大変だね?親子二人で野ざらしなんて…」

母「いえいえ、意外と慣れてるんです。こういうの?」

旅のホビット1「へぇ…見かけよりたくましいんですね」

旅のホビット2「あ、とりあえず水分けてもらっていい?」

母「どうぞ、どうぞ?元々あたし達の物でもないですから?」ニコニコ
540: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/8(日) 21:38:46 ID:bKCYR0A6ec
旅のホビット2「ありがとね。じゃあちょっと失礼するよ」チャプッ

カロル「あっ!入れ物だ?」

旅のホビット1「? ウッドボトルがどうかしたのかい?」

母「実はあたし達…水を見つけたはいいんですけど入れ物を持ってなくて?」

カロル「どうしようって話してたんだよね?」

旅のホビット2「へー…じゃあ一つあげるよ?旅するのに飲み水がないと困るだろうし?」スッ

母「いいんですか!?」パァァ

旅のホビット2「うん。いいよな?」

旅のホビット1「もちろん?先客はそっちだし、ボトルのストックはあるから遠慮しないでください?」

母「催促しちゃったみたいですみません…」パシッ

カロル「ありがとうございます!」

旅のホビット2「いいよ、いいよ!困った時はお互い様だから?」

カロル「親切な仲間に会えてよかったね!お母さま!」ニコニコ

母「えぇ、ホントに助かったわ?」ニコニコ

旅のホビット1「い、いやぁ?」テレッ

旅のホビット2「それほどでも?」テレテレ
541: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/8(日) 21:41:59 ID:bKCYR0A6ec
旅のホビット3「」シュン

カロル「? どうしたの?」

旅のホビット3「」ビクッ

旅のホビット2「あぁ、大丈夫、大丈夫。その子はちょっと臆病でさ?
追い出された時の事がトラウマになってるみたいなんだ?」

母「そうでしょうね…。あんなに乱暴な事をされたら怖くもなるでしょう?」

旅のホビット1「そうですよ…。最初はニコニコして迎えてくれたのに…急に豹変して」

旅のホビット2「…しょうがないよ。あんな事が起きちゃったら、そりゃ?」

母「あんな事って…何かあったんですか?」

旅のホビット1「え?知らないんですか?」

母「す、すみません。そういうのに疎くて…」

旅のホビット2「謝ることないけどさ。最近、大勢のホビットが人里を襲ったんだ?」

カロル&母「えぇっ!?」ビックリ

旅のホビット1「ひどいものだったと聞いてますよ。
一斉に矢を飛ばして町の住人たちを混乱させて…なだれ込んだホビットが石槍やこん棒で無抵抗の人々を執拗に攻撃したんですって?」

カロル「ど、どうして?」

旅のホビット1「実際に見た訳じゃないから分からないけど…やっぱり遺恨だろうね」

旅のホビット2「うん。正直、こっちだって全部を許した訳じゃないし…」

母「……」

カロル「そんなの…理由にしちゃダメだよ…」

旅のホビット1「……?」

カロル「昔のことを理由にしたら…いつまでも終わらないじゃない。
全部を許せる訳じゃなくても…許せるところを探さなきゃ…」

旅のホビット2「うーん…まぁね」ポリポリ

旅のホビット1「なんだかんだ言いながら僕達も人里でお世話になってましたしね」

旅のホビット3「……」
542: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/8(日) 21:48:03 ID:bKCYR0A6ec
母「難しいのよね?たった一つの出来事でもずーっと心に残っちゃう事ってあるから…。
その前まで我慢出来てた事が急に我慢出来なくなってモヤモヤしちゃう時もあるでしょうし…」

カロル「そうかも…しれないけど」シュン

母「もちろん残さないように清算するのが一番よ?
でもその時にうまくいかなくて長引いてしまうと…だんだんと歯止めが効かなくなっていくの」

旅のホビット1「そうなんですよね…。些細なきっかけから生まれたわだかまりが後々になって尾を引くんですよ」

旅のホビット2「僕達のいた町だけかもしれないけど…人間ってわりとことなかれ主義っていうか…あんまり助け合おうって感覚がないもんな?」

旅のホビット3「……僕も」

旅のホビット1「え?」

旅のホビット3「許せない…。僕達は…なんにもしてないのに」

旅のホビット2「あー…そうだね。うん、ちょっとやりすぎだったよね」

カロル「……?何かされたの?」

旅のホビット1「僕達は教団を通じて同じ町に越してきた仲間だったんで…まぁ追い出された時も一緒だったんですけど」

旅のホビット2「うん…。急にさ、言われたんだよ。『お前らもグルなんだろ?』って」

母「? グルって…別にその町で起きた訳じゃないんでしょう?」

旅のホビット1「はい。当然、僕達も否定しましたけど…全然信じてもらえなくて?」

旅のホビット2「それまで一緒に働いたり、ご飯食べたり、遊びも教えてくれたり楽しくやってたんだけどね…。なんでああなったかな」

旅のホビット3「わけ分かんなかった…。他のみんなも…そうだったと思う」

母「そうねぇ。思い込みが激しいものね、人間って…」

カロル「ホントに誰も庇ってくれなかったの…?仲良しだったんでしょ…?」

旅のホビット1「最初は庇ってくれてた人も少なからずいたんですが…領主っていう偉い人が決めた途端に知らんぷりしちゃって」

旅のホビット2「うんうん。掌返して出てけーなんて言ってた奴もいたよな。人間不審になるよ、あれは」

旅のホビット3「僕達だって…されてきた事、我慢して…普通に暮らそうって…してきたのに」

カロル「…そうなんだ」フイッ
543: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/8(日) 21:54:48 ID:bKCYR0A6ec
カロル「分かんないね…。どうして争いたがるのかな」

母「…なぜでしょうね」

旅のホビット2「こんな事言いたくないけど…こうしてみると人間の町が襲われたってのも、なんかスカッとするよな?」

旅のホビット1「ん?んぅぅ…う、うん…不謹慎だけどね」

カロル「え…?」

母「…いけませんよ?誰かの不幸を喜んだりしたら?」

旅のホビット2「も、もちろん本気じゃないけど…いきなり放り出されて間もないから、ちょこっとね」

旅のホビット3「カーリンとかいう…町だったよね。襲われたの?」

旅のホビット1「あ、うん。そうだよ?それがどうしたの?」

旅のホビット3「カーリンからハーブを売りに来た行商が…僕を見るなり唾を吐きかけたんだ。あんな奴…いなくなってよかった」

旅のホビット2「え!?そんなことされてたのか?」

旅のホビット1「それ誰かに言った方がよかったんじゃないかな…。
いくらなんでもひどいよ。頑張って人間の町に馴染もうとしてたのに?」

旅のホビット3「教団の人が見てて…注意してくれたからだいじょうぶ」

母「まぁ?優しい人間もいたんじゃない?」

旅のホビット3「しかたないからだよ…。司祭様が厳しいから嫌々やってたんだ」

カロル「司祭様って…教団の?」

旅のホビット3「うん…。司祭様はだいすき。僕達をまっすぐ見てくれるから…」

カロル「へー…いい人間なんだね」ニコッ

母「前の司祭とは大違い…?」ボソッ

旅のホビット1「あの人は僕も好きだなぁ?気が強くて、しっかり者で頼りになるよ?」

旅のホビット2「たまにちょっと抜けてるところもあるけどな?」ニヤッ

旅のホビット3「…初めて人間の町に来た時、全然馴染めなくて…ダメかなぁって思ってたら、司祭様が何度も様子見に来て励ましてくれたんだ」
544: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/8(日) 21:57:07 ID:51.WaVWWTg
〜〜〜回想〜〜〜

『まだ慣れないでしょう?いいんですよ、急がなくて?』

『話し相手ができない?ふむふむ、それは気まずいですね…』

『同族の皆さんも意外と早く打ち解けてきたみたいで…人間を交えた輪には入りづらいでしょうしね…』

『もし…嫌じゃなければ…私がキミのお友達になりたいんですがどうでしょう…って聞くものではないですよね?すみません?』

『私もなぜだかワガママな国王様のせいで各地を飛び回されていて、なかなか気の合う相手がいないものでして…?
こうして訪れる町々でも不安な想いに駈られたりするんです?』

『……本当ですか!?ありがとうございます!とっても嬉しいです!』

『あぁ…よかった。これから、この町に来る楽しみが増えました?』

『次に訪れる時には…人々がもっと優しく暖かい心でキミたちとの絆を深めていると信じてます?
またしばらく会えなくなりますが…キミもこの町の人々を信じて、たくさんの喜びを養っていけるよう頑張ってくださいね?』

『約束ですよ?ふふふ!』

…………………
545: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/8(日) 22:01:35 ID:51.WaVWWTg
旅のホビット3「……司祭様、会いたいなぁ」

母「いい人ねぇ…。ホントに前の司祭とは大違い?」

カロル「……」ウーン

旅のホビット2「……?」

旅のホビット1「どうかしたのかい?」

カロル「もしかして…司祭さまって女の人なの?」

旅のホビット3「うん、そうだよ?」

カロル「!」パチクリ

母「あっ…坊や…!」ジッ

カロル「うん…!宣教師さまかも!」パァァ

旅のホビット1「宣教師!?」ハッ

旅のホビット2「あ、そうだな…。司祭様ってなぜか自己紹介する時は宣教師って名乗ってた?」

旅のホビット3「司祭様って呼ぶと宣教師ですって言うよね…?」

カロル「やっぱりそうだよ!」

母「宣教師様が司祭になってたのね!道理で聞き回っても分からない筈だわ?
それなら最初から教団の人に頼んで司祭様に会わせてくださいって言えばよかったのね…」

カロル「あはは…しょうがないよ?
司祭様になってたのも知らなかったし、名前も知らなかったんだもの?」タジタジ
546: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/8(日) 22:03:50 ID:bKCYR0A6ec
旅のホビット1「司祭様とお知り合いなんですか?」

母「えぇ、ちょうど探していたところで?」

旅のホビット2「おー!それなら僕達と一緒だよ!」

カロル「3人も宣教師さまを探してるの?」

旅のホビット3「うん…。帰る場所もないし、このままじゃいられなかったから」

母「じゃあ…もしかしてどこにいるのかも分かってるんですか?」

旅のホビット2「いや、色んなところに忙しく飛び回ってるから場所は分からない。だから聖堂に行ってみよっかなって?」

カロル「せい…どう……ってなに?」キョトン

旅のホビット1「言ってみれば大きい教団の支部ですね。
行き場のないホビットや人間を預かったり、修道院みたいに教養を身に付けさせたり、教団の幹部の人達が各地の領土問題に当たる大事な場所だと教わりました?」

旅のホビット3「僕達も移住先が決まるまで、そこにいたんだ…?」

母「なら聖堂に行けば宣教師さまに会えるかもしれないのね!」

旅のホビット1「はい!さすがに教団の人は僕達を追い出さないでしょうから!」

カロル「〜〜〜!」ワクワク

母「よかったわね!坊や?」

カロル「やったー!!」バンザーイ

旅のホビット1「!?」ビクッ

旅のホビット2「すごい嬉しそうだね!」

旅のホビット3「……」ニコッ

母「あたし達も聖堂まで付いていっていいですか!」

旅のホビット1「もちろん!一緒に行きましょう!」ニコッ

母「よかった…!これでやっと長かった旅も終えられるのね…!」ジーン

カロル「マルクー!宣教師さまに会えるよ!」ダキッ

マルク「わうん?」スリスリ
547: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/8(日) 22:18:29 ID:51.WaVWWTg
>>532
惜しかったですね!正解は変態な東の国王をヒメの魅力で味方に付けるでした!

政略結婚……よくよく考えたらその手があったか!と…よくよく考えるまでもなく普通思い付きますよね。
バカな頭でややこしい話考えちゃダメですね…。
もういろいろおかしいとは分かってても面白いかなーなんて安易な気持ちで書き進めちゃいましたorz
親しげだった南の国と政略結婚の方がしっくり来ますねー…でももう投下しちゃいましたし時すでに遅しですw
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うpろだ
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