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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】
[8] -25 -50 

1: ゆったりペースになりますが! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:09:52 ID:N4jwCkModw
1スレ

少年「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10

2スレ

カロル「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10

―――あらすじ―――

それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました

しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました

そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです

戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました

布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました

それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします


643: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/22(水) 22:13:04 ID:/5.FhTrlCQ
〜〜〜2週間後〜〜〜

―――王国領(中央平原地帯)―――

馭者1「馬を休ませますので乗車中の皆さんもおくつろぎください」 ブルルルル ヒヒーン

カロル「ねぇ、あれなぁに?」

クエックエッ クエックエッ

母「なんの群れかしらねぇ…?大きい鶏みたい?」

憲兵7「リックルモアです。王都領にしかいない貴重な鳥で指定保護動物にも認定されてるんですよ」

カロル「おっきい!背中乗ってみたい!」キラキラ

マルク「……わふっ」ムスッ

母「マルクの背中も乗り心地いいわよねぇー?」ナデナデ

カロル「くえくえーくえー!」フリフリ

母「あらら?鳴き真似してるの?」

クエックエッ クエックエッ

カロル「あっ!こっち見たよ!おいで、おいで、くえー!」フリフリ

マルク「……」チッ

母「ぼ、坊や!マルクもかまってあげたら?」

カロル「え?」クルッ

マルク「はっ!はっ!」シッポフリフリ

クエックエッ ツンツン

カロル「あっ!いっぱいきた?わわっ!突っついてくる?あはははは!」キャッキャッ

マルク「」ケッ

母「め、珍しいものね?おほほ…?」オロオロ

憲兵7「あ、あんまり刺激しないようにね?
大男の背丈くらいあるし、こう見えて力も強いからね?」アセアセ

カロル「首長いねー?かわいい!」ナデナデ

憲兵7「(あ、全然聞いてない)」ガビーン
644: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/22(水) 22:20:19 ID:/5.FhTrlCQ
憲兵7「(あーあ、馬車降りちゃったよ…。団長に怒られないか?)」ビクビク


カロル「見てみて!お母さま!」キャッキャッ

クエックエッ クエックエッ

母「まぁすごい?背中に乗せてもらえたのね?」パチパチ

カロル「えへへ!毛がふんわりふかふか?」ナデナデ

クエックエッ クエックエッ

マルク「」ザクッザクッ

母「ま、マルク…?地面に穴なんか掘ってどうしたの?」オソルオソル

マルク「」ザクッザクッ

母「(いじけちゃったわ…)」

カロル「マルク!」

マルク「アンッ!?」クルッ

カロル「高いでしょー?えへへ!」ニコニコ

マルク「……わんっ」ムスッ

カロル「いいなー…リッくん大きくって?ボクも背が伸びたらいいのに!」サワサワ

クエックエッ クエックエッ

マルク「!?」ガーン

母「(自分以外に名前付けられたのがショックなのね…)」

マルク「」イジイジ
645: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/22(水) 22:29:17 ID:OTeQ/ZqiSE
母「…マルク」ホロリ

カロル「どうしたの?」

母「ううん、なんでもないのよ?そういえば宣教師様はお元気だった?」

カロル「うん!変わってなかったよ!」

母「そう。あたしもご挨拶したかったけれど…」

カロル「…大変みたい。やらなくちゃいけないこと、いっぱいなんだって?」

母「久しぶりに会えたのに残念ねぇ」

カロル「ううん、宣教師さまも王子さまと一緒に差別をなくそうとしてるんだもの。ちょっぴり寂しいけど邪魔したくないんだ」

母「…差別、ねぇ」

カロル「?」

母「…自分を分かってくれる相手と過ごせれば幸せじゃないかしら」

カロル「……」

母「差別があるかないかはそんなに重要じゃないと思うの。
そばにいる相手を大事に想えれば…なにも心配なんてない」

母「ま、それが出来れば苦労はないんでしょうけどね?」クスッ

カロル「…そうだね」シュン

クエックエッ クエックエッ

カロル「リッくんたちは同じ種族で仲良しだもんねー?」サワサワ

マルク「」イジイジ

カロル「マルク?」

マルク「わぅ〜…」ジトッ

カロル「キミもともだちだよ!」ニコッ

マルク「わ、ワゥン!」パァァ

カロル「憲兵さんはちょっぴり怖がってたけど…ふれあってみたら素直でかわいいのにね?」スリスリ

クエッ?

カロル「…信じ合えないのって悲しいね。疑ってみないと不安なのかな」
646: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/22(水) 22:33:22 ID:OTeQ/ZqiSE
母「誰だって自分を守らないといけないから…信じたくてもなかなか踏み切れないんじゃない?」

カロル「うん、ラムくんも仲直りする時に言ってた」

『一方的に信じても…一方的に裏切られる時だってある。
だから僕たちは分かり合えるように…お互いに理解する努力をしなきゃいけないんだ』

母「…疑ってしまうのは相手を知りたい気持ちの裏返しなのかもしれないわね。
ラムくんはとても理不尽な環境にいたようだから…他人の気持ちを窺うのが苦手だったのかも?」

母「あの子も本当は誰かを疑ったりしない心優しい子だったんじゃない?
純粋な心に孤独と差別が重なって悪い方へ傾いて他人の気持ちを思いやれなくなってしまったのよ」

カロル「そうかも?でも最後には信じてくれたよ?」

母「ふふ…そうね。みんなで説得したんでしょ?」

カロル「うん!シヴァさんも今度は宣教師さまと一緒に説得するんだ!約束したの!」

母「あら、それなら早く会わせられるといいわね。宣教師様と族長さん」

カロル「うん!きっと仲直りさせてくれるよ!」ニコニコ

母「(若いっていいわね…。なんでも煌めいて見えて。ホビット族の長命からするとあたしもまだまだ小娘だけど)」

カロル「もうすぐ王子さまとも会えるね!楽しみ!」ニコニコ

母「えぇ、あたしも初めて会うからとってもドキドキするわ?どんな子なの?」ニコッ

カロル「あのね!イチゴが大好物で剣が上手なんだ!すごく頭もよくて頼りになるの!」

母「へぇ…それじゃ非の打ち所がないわね。やっぱり王子様ってそういうものなのかしら?」

カロル「ちょっぴり怒りっぽくて口が乱暴だけど、ホントは優しくて素直なんだよ?
でもあんまり褒めると嫌がるの。照れ屋さんだから?」ペラペラ

母「ふふ…そうなの。お母さんも会ってみたいわ?」ニコニコ

カロル「うん!ボクも会わせたい!」ニコニコ

母「……今度は何事もないといいけど」ボソッ
647: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/22(水) 22:35:51 ID:/5.FhTrlCQ
団長「」ボーッ

憲兵30「団長!王都には明日の晩、到着予定だと聞きました!」

団長「む?あ、あぁそうか…」ハッ

憲兵30「どうかされましたか!?」

団長「い、いや…今夜の宿を探さねばな?道中に滞在出来そうな町はないのか?」

憲兵31「ここからだとスターリーの町が一番近いですね。先に向かわせた護送班もそこに滞在していると思われます!」

団長「そうか、そうか、折り合いが付かず見張りを交代しながら馬車で睡眠を取る日もあったが…。
さすがにそろそろ座りながら寝るのも限界だ。尻が痛くてかなわん」サスサス

憲兵33「ですねぇ…。しかし救い主様は元気だなぁ?外で野生の鳥達と遊んでおられますよ?」

憲兵31「初めてお会いしたが…本当に無邪気だよねぇ。
長い馬車移動にも文句一つ言いませんし、イメージと違いましたよ」

憲兵32「だな。もっと神秘的な…なんかちょっと謎めいていて不思議な雰囲気の方なのかなぁと想像してたら、実物はただの明るい子供って感じだ?」

団長「はぁ……まぁな」

憲兵30「団長…なんかありました?元気ないですけど?」

団長「…ワシの息子もちょうどあれぐらいでな。長らく顔を見ておらん…」

憲兵30「……」ピキーン

憲兵31「(なに重い話引き出してんだよ、このバカ…)」

憲兵32「(様子がおかしいのは知ってたが…まさかあの親子に自分の家族を投影してたのか?)」

憲兵33「(残りの道中、同じ馬車でずっと気まずいじゃんかよ…)」
648: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/22(水) 22:40:48 ID:OTeQ/ZqiSE
団長「妻から逐一便りをもらってはいるが…幼い頃の口癖が『どうしてボクにはパパがいないの?』だったと読んだ時は立ち直れなかった…」シュン

憲兵30「へ、へー…じょ、ジョークのうまい奥さんですね?」ヒクヒク

団長「修道院の初等部卒業の際、アルバムに書いた将来の夢が『兵士様になってパパに会う』だったんだと……」ウルウル

憲兵31「り、立派な夢ではないですか!近衛に入隊すれば将来は近い距離で働く事になりますし!」

団長「たまに帰った時に顔を合わせると…物凄く人見知りされるんだぞ!親子なのにだ!」プルプル

憲兵32「ま、まぁよくありますよ!反抗期とか?」

団長「確かに思春期な訳だが……剣の稽古を付けてやろうとすれば『王子様には毎日稽古を付けるのに僕は二月に一度なんですね』と目も合わさずに吐き捨てられ…!うっ…ぐぅ!」グシグシ

憲兵33「い、いやでも奥さんがちゃんとやってますから!そのうち立派に育って団長を見直しますって?」

団長「…半年前に帰った時などは妻に『え!?帰ってらしたの!?事前に言ってくださいまし!貴方の分のおかず用意してませんのよ!?』と叱られたがな」フッ

憲兵's「(なんも言えねぇ…)」ヒクヒク

団長「しかたあるまい!ワシには大事な大事な使命があるのだ!
国の為、民の為、ヒメ様の為!日夜働かなければならんのだぁっ!!」ウオオオオ

憲兵's「(こんな団長見たくなかった…)」シラー
649: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/22(水) 22:48:09 ID:/5.FhTrlCQ
>>642
追い付かれましたかw
また多く更新して追いかけてもらわなければ!
なるべく早く書けるよう頑張ります!
ありがとうございました!
650: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/30(木) 21:22:48 ID:HMmt4299jM
―――東の国(城下町)―――

ガランガラン ガランガラン

ワイワイガヤガヤ

ネバル「す、すごいですだ!まるでお祭り騒ぎです!」グラグラ

ヒメ「そりゃお祭り騒ぎだろ。パレードなんだから」

ネバル「ど、どっしりと構えてるですね?」

ヒメ「僕だってれっきとした王族だぞ?パレードくらい何度も経験してるさ?」

ヒメ「(民から尋常じゃなく嫌われてたから、ほとんど顔伏せっぱなしだったけど…)」

ネバル「おぉ…!さすが王族は違うです!」キラキラ

ヒメ「ま、まぁな!よし、見てろよ!」

キャーキャー ヒューヒュー

ヒメ「た、試しに手でも振ってやろうかな…!」ドキドキ

ワァーワァー!!

ヒメ「ホッ……ふ、ふふん!ま、こんな感じだな?」

ネバル「陛下は人気者ですだね!」

ヒメ「当たり前だろ?」エッヘン

ネバル「オラもやってみるです!東の国のみなさーん!」フリフリ

オォォオオオオ!!

ネバル「やった!オラも反応もらえたです!たぶん陛下よりもらえたです!」

ヒメ「……」ジトッ

ネバル「…陛下?」

ヒメ「…おまえ、家臣のクセに生意気!」ゲシッ

ネバル「いたっ!?け、蹴るなんてひどいです!」アタフタ

ヒメ「うるさい!家臣は家臣らしく後ろでおとなしくしてろ!」

ネバル「へ、陛下は器も体もちっこいです…!」ブツクサ
651: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/30(木) 21:26:41 ID:HMmt4299jM
ワァーワァー ゾロゾロ

ヒメ「…それにしてもいい国だな。よそ者の僕らをあんなに明るく歓迎してくれてる」シミジミ

ネバル「来るまであんなにいやがってたですよね?」

ヒメ「政務官が変に脅かすからだよ」

ネバル「国王様が風変わりって言ってたですね」

ヒメ「あぁ、でも国自体はしっかりしてるし石造りの街並みは繊細な技術が垣間見えて僕たちの国より、よほど栄えてる」

ネバル「オラたちが乗ってるこの石造車もすごいです!
こんな重いのを2頭の象が引っ張って動かしてるなんて圧巻です!」

ヒメ「ちょっと高さが気になるけどな…。あんな石床に落下したらどうなんだろ…」ブルッ

ネバル「? 陛下って高いとこ苦手です?」

ヒメ「そ、そんな訳ないだろ!?庶民を見下ろす優越感に浸れて楽しいさ!あー楽しい!?」

ネバル「あ、そういうの良くないです!オラ庶民の代表で役人になったですよ!」

ヒメ「…ほ、本気にするなよ。謝るから」シュン

ネバル「知ってるです?陛下、すごい優しいです!」ニカッ

ヒメ「……!ムカつくヤツだな!?」ゲシッゲシッ

ネバル「あたっ…!ひ、ひどいです!でもあれ…ちょっとビックリしたですね?」ビッ

ヒメ「ん?あぁ、あれか…」ジッ

ズラッ

ヒメ「うん、まぁ…あれはどうなんだろうな。精巧な技術の無駄遣いっていうか、至るところに裸の少年の石像が並んでるのは…」

ネバル「あの中に陛下の石像も飾られるですね」

ヒメ「……みたいだな。せめて服は着せてあるといいけど?」シラー
652: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/30(木) 22:04:43 ID:HMmt4299jM
―――東の国(城内の大庭園)―――

ワイワイガヤガヤ

東の貴族「ルネッサーンス!」カンッ

東の貴婦人「ルネッサーンス!」カンッ

ネバル「ルネサンスってなんですだか?」コショコショ

ヒメ「見たところ乾杯の音頭じゃないか?」コショコショ

ネバル「へー…じゃあオラたちもやるです!ルネッサーンス!」スッ

ヒメ「無理に合わせなくても…ルネサーンス」カンッ

???「ルネッサーンス!!」カンッ

ヒメ「へ?あ…!」

東の王「フホホ!遠路はるばるよくぞ来たな!ヒメ君!」

ヒメ「これはこれはブルードル陛下!ご挨拶が遅れて申し訳ございません!」ペコッ

東の王(ブルードル)「やや!パレードでは同乗出来なくてすまない?
少々込み入っててな!ここからは予定通りご一緒させていただくのでどうかよろしく?」スッ

ヒメ「若輩者ではありますが末永いお付き合いをお願いします!」パシッ

ネバル「はぁ…!王様なのに気さくです?」パチクリ

ヒメ「失礼なこと言うな…!」ツネリ

ネバル「いっ…!?」ギュゥゥ

ヒメ「本日はお日柄もよく、晴天の下でいただく料理は格別にございますね?」ニコッ

ブルードル「ご満足いただけてるようで?
しかし華の都からやって来たヒメ君にしてみれば我が街の眺めは退屈だったのではないか?」

ヒメ「なにをおっしゃいますか!我が国より、よほど精巧に仕上げられた石の街並みは目にも鮮やかで眩く映りましたよ!」

ブルードル「やや!それは嬉しいお言葉!
もし機会が折り合えば私もそちらの風土を確かめてみたいものだ?」

ヒメ「いつでもいらしてください!ささやかながら精一杯のもてなしをさせていただきます?」

ブルードル「えぇ、是非!」ニコッ
653: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/30(木) 22:09:50 ID:t.lqZ1zb4g
ペチャクチャ ワイワイ

東の貴婦人「まぁ!お若いのにご立派ですこと!」オホホ

東の貴族「これは将来が楽しみですな!」ハハハ

東の騎士「王国は安泰だ!」ガハハ

ヒメ「ハハハ…とんでもない?」ニコニコ

ブルードル「お若いのにとても社交性に優れてらっしゃる?
さぞやこういう場に慣れておられるのでしょうな?」

ネバル「全然です?普段はもっとツンツンしてるですよ!」

ボカッ!

ネバル「いたいです…!」ヒリヒリ

ヒメ「皆さんのお話が楽しいので聞き入ってしまいました?」ニコニコ

東の貴婦人「やだ、お上手!」オホホ

ヒメ「(政務官の言い付けでさんざんくだらないパーティーに出席した上に処世術全般の講師まで付けられたからな…。イヤでも愛想振り撒くのがうまくなるさ…?)」ハァッ

ブルードル「フホホ!ところでヒメ君…?」サスッ サワサワ

ヒメ「っ……!?」ビクッ

ブルードル「十分親交も深まったかな?そろそろ落ち着いて話せる所へ移動しようか?」ボソッ

ヒメ「……!」ゾワゾワッ

ブルードル「折り入って話がございますのでお付きの方々はこちらで待っていただいてよろしいか?」

東の貴婦人「役人さんのお話も伺いたいわ?あちらの席にご一緒してくださる?」ガッ

東の貴族「我が国の酒は格別でしてな?きっとお口に合いましょう!」ガッ

東の騎士「護衛の皆様もどうぞ遠慮なく!我々に王国の文化などご教授くだされ!」スタスタ

ネバル「わっ!つ、掴まないでほしいです!自分で歩けるです!?」グイグイ

ブルードル「フホホ…さて?」チラッ

ヒメ「(そ、そうだ…忘れてた!この爺さん……)」ガクガク

ブルードル「ヒメ君に見せたい品があるんだ?」ニィィッ

ヒメ「は、はい…?」ブルブル
654: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/30(木) 22:12:53 ID:t.lqZ1zb4g
―――東の国(王宮)―――

ブルードル「遠慮なく座りなさい?」スッ

ヒメ「は、はぁ…失礼します」ストッ

ブルードル「ふふふ…フホホ!」プルプル

ヒメ「(気色悪いな…)」

ブルードル「これこれ?」パシッ

ヒメ「布が掛かっておりますが…それが何か?」ジッ

ブルードル「きっとお喜びいただけますぞ?」バッ

ジャジャーン

ヒメ「……!?」ギョギョッ

ブルードル「いかがかな?我が国屈指の石膏技師が肖像を頼りに総力を挙げて完成させた少年王の像!」

ヒメ「(気味が悪い…!)」

ブルードル「フホホ!いや苦労したよ…。採寸も取らず実物大の彫像を造り上げるのは?」

ヒメ「(あ、でも服は着せてあるみたいだな…。良かった…)」ホッ

ブルードル「是非とも感想をお訊きしたい!?」

ヒメ「へ?あ、はい!とても光栄です!
まさかこんな素敵な計らいを用意していただけるなんて…胸がいっぱいで!」アセアセ

ブルードル「フホホ!そうでしょう、そうでしょう?作らせた甲斐があった!」

ヒメ「は、はは…ははは?」ヒクヒク

ヒメ「(…何がしたいのか理解できない)」ヒクヒク
655: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/30(木) 22:21:47 ID:t.lqZ1zb4g
ブルードル「フホホ!これぞまさしく会心の出来だ!!」スリスリ

ヒメ「あの…像もいいんですけど、お伺いしてもよろしいですか?」オソルオソル

ブルードル「なんだい?」クルッ

ヒメ「なぜ僕なんかに興味を持たれるのかなーと?」

ブルードル「子供だから!!」キッパリ

ヒメ「!?」ズルッ

ブルードル「大国を担う若き国王!実に夢のある話だ!
子供とは尊く素晴らしい!まだ見ぬ未来に輝きをもたらすのは次世代を生きる子供たちに他ならない!
私は世界中の子供に愛を捧ぐ伝道師でありたいと願っている!フホホホホッ!!」

ヒメ「そ、そうですか」シラー

ブルードル「ヒメ陛下も聞いておられるかな?私の偏った趣味を?」

ヒメ「…う、噂程度には?」

ブルードル「正確にはね、少年でなく子供が好きなのだよ」

ヒメ「子供好き…?」

ブルードル「出ておいで?」パンパンッ

バサッ スタスタ

東の王妃「まぁそっくり?良い出来ね?」ニコッ

ヒメ「?」

ブルードル「フホホ!忠実に再現出来たよ!」

ヒメ「どなた様ですか?」

ブルードル「私の妻だ?さ、ヒメ君にご挨拶なさい?」

東の王妃(ミリア)「ミリアと申します?」ニコニコ

ヒメ「(おっとりとしててキレイな人だな…)」ペコッ

ブルードル「ミリアよ、さっそく聞かせて差し上げて?」

ミリア「はい?」ニコニコ

ヒメ「へ…?」
656: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/30(木) 22:25:14 ID:t.lqZ1zb4g
ヒメ「子供ができない…?」

ブルードル「うむ、どちらに原因があるのかは分からないが、どうやらそういう身体らしいのだよ?」

ヒメ「し、しかし…それではお世継ぎが…」

ミリア「私達には後継者がいないの?」ニコニコ

ヒメ「(よく朗らかに答えられるな…?)」

ブルードル「お互い苦心したなぁ…。立場上、子の存在は不可欠…しかし結局、この歳まで子宝に恵まれず今に至る?」

ミリア「家臣の皆様もそればかりが気掛かりで心配しておられますの?」ニコニコ

ヒメ「そう、だったんですか…」シュン

ブルードル「…子への渇望からずいぶん荒れた時期も、な。
城下に飾られた少年の像も言うなれば満たされぬ想いを具現化したような代物…今では趣味になってしまったが」

ミリア「お城に貧しい子供たちを招いて聖歌隊を結成してみたのも親になれなかった憂さ晴らしみたいなものですの?」ニコニコ

ヒメ「…複雑な事情があったのですね」

ミリア「おかげさまで私も陛下も少女や少年に倒錯した情を馳せる変わり者と囁かれておりますの?笑ってしまうでしょう?」クスクス

ヒメ「そ、そんなっ…とんでもない!」アセアセ

ブルードル「決してそういう目で見たことはないのだが…まぁ子無しの子供好きでは噂されるのも致し方ない」

ヒメ「(それにしては妙にベタベタ触ってきたような…?)」

ミリア「ウフフ?それだけではないでしょう?
貴方がみだりに触れたりするから勘違いされちゃうのよ?」

ブルードル「? より親密になるにはスキンシップが必要ではないか?」

ヒメ「(スキンシップだったのか、あれは…!?)」ガクッ
657: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/30(木) 22:29:02 ID:HMmt4299jM
ヒメ「(政務官のヤツ…よくもデタラメを吹き込んでくれたな!)」イライラ

ブルードル「どうかなされたか?」

ヒメ「あ、いえ!事情はよく分かりました!」

ミリア「ウフフ?お行儀のよいこと?若くして責任ある立場に就いておられるだけありますわ?」クスクス

ブルードル「父君を亡くされて早2年になるか。苦労なさってることであろう?」

ヒメ「…政務官が後見人として助言をくれるのでなんとか?」

ブルードル「思えばあの巡礼の日……」

ヒメ「……?」

ブルードル「招待を受け、私もミリアと共に大樹復活の瞬間を拝見させていただいたのだが…」

ヒメ「」ピクッ

ミリア「素晴らしかったわ?あれほどの奇跡は生涯、拝めそうにございませんもの?」

ブルードル「今でも瞼の裏に焼き付いているよ。同盟国の間でも度々話題に昇るほどだ?」

ヒメ「あ、あれは…」

ブルードル「しかし…あの奇跡の後に教団が教えを歪めていたと発表されるとは驚いた」

ミリア「大変勇気の要ることだったでしょう?」

ヒメ「…ホビットと共存するにはそれしかなかったので」

ブルードル「ふむ、国連協議の際も熱く語っておられたな!」

ヒメ「たしかに差別を続ければ人間同士で大きな争いは生まれないかもしれません。
むしろホビットを共通の敵と認め、団結力も高まるでしょう」

ヒメ「…でもそうして得た平穏は仮初めの物でしかないと気付かされました」

ブルードル「…なにかきっかけが?」

ヒメ「…父上が教えてくれたんです」

ブルードル「ほう?」
658: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/30(木) 22:31:07 ID:t.lqZ1zb4g
ブルードル「前国王陛下がなんと?」

ヒメ「言葉にはしてくれませんでしたが…父上の生き方を見て悟りました」

ヒメ「とても悔しげで…心の底から孤独で…臆病なほどに卑屈な方でしたから」

ブルードル「……」

ヒメ「父上は国王でありながら家臣達に実権を奪われ、民にも貴族にも慕われず、尊厳すらも失っていた」

ヒメ「母上に至っては父上の苦悩も知らず贅沢に溺れ、あたかも自分を高級な存在だと思い込んで……。
貴族のように身分にとらわれ、息子である僕でさえ"王子"という飾り物にしようとしてたんです」

ヒメ「僕の周りにいたのはだらしない顔をした貴族と奇異の目で見る大人ばかり…。
ひたすら関わりを避けてきた結果、友人どころか話し相手の一人もいませんでした」

ヒメ「黙々と言われるままに教養を身に付け、母上の期待に応える重圧に耐えながら…。
父上のお姿を眺めていると僕もいつかこの人のようになるんだと思い、みじめでならなかった」

ミリア「まぁ…どうして?お辛い立場でも逃げ出さずに務めてらっしゃったのですからご立派ですことよ?」

ヒメ「共有出来るものがなかったんです」

ミリア「共有?」

ヒメ「…父上は僕と話をするどころか目も合わせてくれない人でした。
まるで僕なんて見えてないかのように振る舞って…挙げ句に吐き捨てられた言葉は『興味がない』の一言……」

ミリア「…自分の子に?」パチクリ

ブルードル「なんと哀れなお方だ!子を持つ親であれることがどれほど幸せか…!?」ワナワナ

ヒメ「…父上ばかりを責められませんけどね。そのように追い詰めてしまったのは周囲の人間ですから」

ミリア「…寂しかったでしょう」

ヒメ「……」

ミリア「私達も分からない訳ではないわ?ね、陛下?」

ブルードル「うむ…お父君の気持ちはいくらか共感出来る。
我々のような身分を羨ましがる者は大勢いるが…それほど楽な立場ではないからね」

ヒメ「…そうですね。実際、楽ではないです」
659: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/30(木) 22:34:13 ID:HMmt4299jM
ブルードル「だが信じられん…。実の子に対して興味がないだなんて…私は言えない」

ミリア「私達も子を身籠っていたら分からないですよ?」

ブルードル「いぃや、ありえない!子供は宝だ!天より授かった幸運!私は生涯最期の時まで愛する自信がある!」

ミリア「あぁそうですか?それでお父君とは疎遠なまま?」

ヒメ「後に和解出来ました。短い間でしたが…」

ブルードル「おぉっ!それでこそだ!」

ミリア「和解の理由は?」ニコニコ

ヒメ「…あるホビットと友人になったからです」

ブルードル「ん…ホビット!?」

ヒメ「生まれて初めて出来た友人…親友と言っても過言のないヤツです。
あいつに出会ったから僕は今もこうして重圧に押し潰されずに希望を持っていられる」

ミリア「いいことですわね?」ニコニコ

ブルードル「…王国の先代は大のホビット嫌いで通っていたが、よく許されたな?」

ヒメ「許されてなんかいません?たっぷりとお叱りを受けました?」

ブルードル「なんと?ではどのように和解を?」

ヒメ「どのようにと聞かれると困りますが…お叱りを頂いた時に全てを知らされたんです。
ホビットにまつわる伝承はまことしやかに囁かれた迷信であると」

ブルードル「ほう…」

ヒメ「父上はホビットへの差別を止めるべきではないと諭してきましたが…僕はその時に決意を固めました」

ブルードル「決意とは…?」

ヒメ「ホビットと共存する方法を見つけると」

ブルードル「しかしそれではお父君の意に反するのでは?」

ヒメ「…それでも僕には差別が平穏に結び付くとは思えません。
なぜなら父上も国王として民や家臣から差別を受けてきた一人だからです」

ヒメ「たった一人を徹底的に貶めて大多数の人間が笑い者にする…。
あのおぞましい日常が平穏だと言うのなら、王国に未来はない…そう感じたんです」

ブルードル「…たしかにおぞましい話だ」

ミリア「そうね。それは平穏とは呼べませんわ?」ニコニコ
660: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/30(木) 22:38:09 ID:t.lqZ1zb4g
ヒメ「今はホビットとの共存を選んだばかりに非難を浴びせられてますけどね…」

ブルードル「定例の会合でもよく耳にしますが…口汚く罵る声も少なくはない?」

ヒメ「……」ジッ

ブルードル「な、なにか?」キョトン

ヒメ「…なぜ分かっていながら西の国との貿易を断ったのですか?」

ブルードル「……」

ヒメ「他の同盟国は西の国と貿易を開始し、王国を排他する動きを見せているのに…?」

ブルードル「…そうだなぁ」

ヒメ「こうして僕を招いてしまっていることも諸国の不信を買うのでは?」

ブルードル「うむ。否めないな」

ヒメ「家臣達からは咎め立てられなかったのですか?」

ブルードル「話し合ってはみたよ。満場一致で西の国との貿易など断固拒否と決定した」

ヒメ「西の国を相手に…ですか!?」

ブルードル「今のファルージャについてはよく知らんが…以前、西の国とは多少揉めてね」

ミリア「そんなこともありましたわね…。思い出したくもありませんけれど…」ズーン

ヒメ「…よ、良ければお聞かせ願えますか?」

ブルードル「無断で国境を越え、兵を率いて踏み入った上に我が国の子供らをさらっていったのだよ…」ググッ

ヒメ「さらっ…!?」

ブルードル「聞くところによると西の国の皇帝は黒魔術に手を出し、子供を生け贄にして禁忌の力を得ようとしていたとか…!」プルプル

ヒメ「こ、抗議は…?」

ブルードル「したとも!だが知らぬ存ぜぬを繰り返すとぼけようだ!」ドンッ

ミリア「調査に行かせた役人や兵の皆さんも行方知れずに……!」ウルッ

ヒメ「じゃ、じゃあさらわれた子供たちは……」

ミリア「今でも年に一度、遺族の方々を城に招いて追悼を行っておりますの…」ズーン

ブルードル「私は西の国を許しはしない…!愛しい子供らの尊く美しい未来を醜い野心に埋もれさせたのだから…!」ギリッ

ヒメ「っ…」キュッ
661: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/30(木) 22:41:50 ID:HMmt4299jM
ヒメ「……」モジモジ

ブルードル「……!」ワナワナ

ミリア「……な、なんだか湿った雰囲気になってしまいましたわ?話を変えましょ?」アセアセ

ブルードル「…そうだな。この話はあまりしたくない」

ヒメ「…す、すみません。僕が聞いたばかりに?」シュン

ブルードル「やや!聞いて当然だよ!何しろ不自然に思えただろうからね?」アセアセ

ミリア「そ、そうですわ?」アセアセ

ヒメ「……」

???「ルネッサーンス!!!」バァンッ!!

ヒメ「えっ!?」クルッ

ブルードル「な、何事か!?」ガタッ

ミリア「……?」ビクッ
662: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/30(木) 22:42:33 ID:HMmt4299jM
ネバル「ひぇいかぁ〜」フラフラ

ヒメ「ね、ネバル!?」

ネバル「ここいたでしゅかぁ〜?おいしいイチゴのジュースでしゅよぉ〜?」フラフラ

ヒメ「お、おまっ…なにを…!?」ヒクヒク

ブルードル「…彼が手にしているのは」ハッ

ミリア「アヴァードウスの瓶……強めの果実酒ですわね?まぁ酔ってらっしゃって?」

ネバル「へにゃ〜?」ウイーヒック

ヒメ「こんのっ…バカぁっ!!」ムキーッ

ザザザザザッ

東の衛兵's「曲者でございますか!?」ババーン

ブルードル「フホホ!なになに!物騒な事は起こらんよ!」ニコニコ

ミリア「誰ぞ冷たいお水と袋をお持ちしてくださいな?」ニコニコ

東の衛兵1「は、はぁ…!承りました!」ダッ

ヒメ「す、すみません!本当に申し訳ございません!」ペコペコ

ブルードル「フホホ!いいのだよ?楽しいお酒でなにより?」ニコニコ

ネバル「いちばん!ネバル飲むですー!」グビッ

ミリア「まぁま?飲み過ぎはいけませんよ?お体を壊されては大変?」

ヒメ「おまえ、そこに直れぇっ!!処刑してやるっ!?」ガタッ

ブルードル「そ、そうカッカせず?私もミリアも気にしておらんよ?」アセアセ

ネバル「アヒャヒャヒャヒャ!!」ゲラゲラ
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