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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】
[8] -25 -50 

1: ゆったりペースになりますが! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:09:52 ID:N4jwCkModw
1スレ

少年「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10

2スレ

カロル「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10

―――あらすじ―――

それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました

しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました

そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです

戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました

布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました

それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします


689: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:02:48 ID:tvS/hVrMQc
〜〜〜夜〜〜〜

―――城下町(北区市街)―――

母「まぁ…夜なのにとても明るいんですのね?」キョロキョロ

カロル「前より灯りが増えてる!」スタスタ

マルク「わんっ!わぅん!」シッポフリフリ

団長「町並みも少し変わっただろう?」スタスタ

カロル「うん!大きいお家が並んでるね?」

団長「前はこの一帯が胡散臭げな博打場や飲み屋街だったが今ではほとんど閉店してな。
ああした図書館や学習院、兵営等の施設が建っている」

カロル「…それって何をするところなの?」

母「図書館は誰でも自由に本が読める所で学習院はお勉強をする所よ?」

カロル「へぇ!そうなんだ!じゃあへいえいは?」

団長「軍の兵士達が住まう施設だ。見てみろ?
鉄柵の向こうにいくつもの家屋が並んでいるだろう?
兵の数が多いので複数の棟に分けて住居や食堂、訓練所等を配置しているのだ?」

カロル「わぁ…!すごーい!広いんだね?」

団長「あぁ、あの敷地だけでも村6つ分はあるだろうな」

母「…あら、あれって?」

カンッカンッ ギンッ キキンッ

団長「うむ、兵達はああして夜遅くまで鍛練に励むのだ。
いついかなる場合においても戦う覚悟を持てるよう腕を磨く為にな」

カロル「戦う為なんだ…」シュン

団長「バックヤードも今では難民の保護施設やホビットの住宅地として生まれ変わっているのだぞ?」

カロル「ボクと王子さまが連れてかれちゃったとこだよね!」

団長「うむ、今は住居を分けているがいずれは境なく暮らせるよう陛下も考えてくださっておりますぞ?」

母「…楽しみにしてます?」ニコッ

団長「無論、叶いましょうぞ!救い主である小童も戻ってきたことですしな!」ニコッ

カロル「ボクがすくいぬし…まだ慣れないなぁ。ムズムズする」ムズムズ
690: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:05:19 ID:tvS/hVrMQc
ザザッ

団長「む?何者だ!」

ゾロゾロ ゾロゾロ

母「な、なに…?なんなの?」オロオロ

剣士1「そのボウズが救い主か?」スラッ

カロル「……」ポカーン

剣士1「ん?救い主じゃないのか?」

カロル「へ?あ、そっか!ボクだったんだ!」ハッ

母「い、言わなくていいの!」アセアセ

カロル「あっ…そうだよね」

団長「誰に雇われたか知らんが刃を向けられては容赦出来んぞ?」スラッ

剣士1「すっこんでな、おっさん?邪魔くせぇと切っちまうぞ?」ニヤリ

団長「鞘に納めるか、憲兵に出頭するか決めるがいい?」スラッ

剣士1「威勢がいいね?こっちは7人いるんだぜ?」

団長「7人か。馬車移動に凝り固まった身体をほぐすにはちょうどよい数だ」

剣士1「ケケ!ノコノコ歩いてくたぁアホな輩共だ?」

団長「乗り物では死角が多い上に急な事態に応じにくい。身軽であれば楽でいい」

剣士1「やっちまうぞ!切り刻んで膾にしちまえ!」ダッ

ダダダッ

母「きゃっ!?」ビクッ

カロル「……!」バッ

マルク「グルルルル!」フシューフシュー

団長「ワシの後ろでじっとしていろ!」ダッ
691: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:08:00 ID:8AFkZ.RUD6
剣士2「ぎゃっ!!」ドサッ

団長「貴様で最後か。あっけなかったな?」ジロリ

剣士1「ひっ…ひぃ…!て、てめぇ…!」ガタガタ

団長「誰の指図だ?」

剣士1「っ…!」ググッ

団長「言え?」ジリッ

剣士1「し、知らねぇよ!!」

団長「言え!!」カッ

剣士1「うっ…か、仮面をした謎の男から金を渡されて…成功したら倍やるって言われたんだよ」ブルブル

団長「そいつは何者だ?政務官の手の者か?」

剣士1「だ、だから知らねぇって!?」

団長「…ふん、まぁいい。詳しい事情は後回しだ。まずは憲兵に出頭してもらおうか」

剣士1「み、見逃してくれよ!俺達は頼まれただけで……」

団長「」ザッ ブォンッ

剣士1「」ビクッ

団長「」ピタッ

剣士1「あ、あぁぁあうぅぅ……」ジョーッ

団長「大の男がこの程度で漏らすとは情けない…。切っ先を突き出しただけだろうが?」スッ

剣士1「あ、あぁぶ…あぶね…だろ?」ガクガク

団長「得体の知れぬ男から依頼を受け、無関係の者に刃を向けるのはこれ以上に危険ではないのか?」

剣士1「ぐっ…!」

団長「あとは署で話せ?行くぞ?」ガッ グイッ

剣士1「うぐぅ……」ガクッ

母「る、ルフィアスさんってすごい方なのね…?」

カロル「うん!かっこいいよね?」

マルク「クゥン」シッポフリフリ
692: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:10:00 ID:8AFkZ.RUD6
―――物陰―――

マドラス「ククッ!やるねぇ?腐っても剣士のはしくれだった奴らを一人で返り討ちにするたぁな?」

???「あのくらい当然ですよ」

マドラス「さすがに王国最強を謳われるだけはあるな?」

???「……」

マドラス「だが…その血を引く息子が裏切りか。因果なもんだぜ?なぁ?坊っちゃん?」

団長の息子「坊っちゃんではありません。ラキアです」

マドラス「へっ…悪うござんした?で…本当にいいのか?」

団長の息子(ラキア)「フィクサー軍長から話は聞いています。何も問題ありません」

マドラス「クッカカカ!実の親子で哀れなサダメだ?」

ラキア「俺はもう…あの方を父と認めてはいない」

マドラス「ほー?」

ラキア「……!」ギリッ
693: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:12:17 ID:8AFkZ.RUD6
〜〜〜回想〜〜〜

―――城下裏通り(旧バックヤード)―――

ムオオオオオン

ラキア「どうして俺をこんな所に?」オロオロ

マドラス「まぁまぁいいからよ?なぁ?」ポンッ

ラキア「……?」オロオロ

マドラス「社会見学さ?よく見な?」

浮浪者2「ひっ…ひひっ…ひひっ…」フシューフシュー

浮浪者3「あぁもう!バッカじゃねぇの!?なんで今日はねぇの!?」ガサゴソ

浮浪者4「うひょっ…カビパン!ごちそう!うひょー!?」ウヒョウヒョ

浮浪者3「寄越せ!?」ガッ

浮浪者4「な、なにすんじゃい!?」バッ

ドカスカバキボコ

浮浪者5「おっ…シケモク…んー」ヒョイッ

マドラス「けっ!ゴミ溜めに群がる糞蝿共が…クセークセー」

ラキア「…あれは何をしてるんだ?」ジーッ

絵描き「ぐふ…ぐふふ〜」カキカキ

マドラス「なんだ、ありゃ?いい歳こいて壁に落書きか?」

絵描き「らぐがぎではなーい!かいがだぁー!?」ガーッ

ラキア「絵画?その染み汚れが?」

絵描き「げいじゅつなのだー!!わはははは!!」ウヒャウヒャ

浮浪者6「あーダンナ!またもったいないことして?
潰れたトマトや腐った卵は滅多に回ってこないんだから壁にぶちまけちゃダメだって!」スタスタ

絵描き「わたしのさいのーにシットするがいー!!わはははは!!!」ウヒャウヒャ

浮浪者6「ちっ!話の通じねぇ没落貴族が!?」

ラキア「(没落貴族…?)」
694: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:13:42 ID:8AFkZ.RUD6
絵描き「ん?こぞー!なにみてる?デッサンか!わたしのげいじゅつのモデルになりたいんだな!?」ニヒヒヒ

ラキア「あなた…もしやランベルヤ家のバルガン侯爵では?」

絵描き(バルガン)「」ピクッ

ラキア「やはり…そうでしたか」

バルガン「ウガアアアアアアア!!!!」ダンッダンッ

ラキア「おやめください!石の壁に頭を打ち付けたら……」ガッ

バルガン「」フラッ ドタッ

マドラス「お、くたばった」

バルガン「」ピクピク

ラキア「(とても同じ人とは思えない…)」

浮浪者6「ラッキー!気絶してる間に持ち物抜いちまお!」ゴソゴソ

ラキア「やめろ!?」バッ

浮浪者6「なにすんだよぅ!?」

ラキア「他人の物を盗むなんて悪党のすることだ!」

浮浪者6「こうでもしなきゃやってけねーんだよ!!」

ラキア「なら…」スッ

浮浪者6「……!」

ラキア「少ないがこれで…」ジャラッ

浮浪者6「ざけんなっ!?」バシッ

チャリンチャリン

ラキア「な、なにするんだ!?」

浮浪者6「金なんかもらったってなぁ!小汚ないナリじゃどこも入れてくんねぇわ!?鼻つまんで門前払いされんのがオチだ!?」

ラキア「うっ…」

浮浪者6「オメーもいつこうなるか分からんぞ!?善人ぶって偉そうにしてんじゃねぇや!?若僧が!?」

ラキア「……」

マドラス「」ニヤニヤ
695: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:15:24 ID:tvS/hVrMQc
ラキア「これは一体…バックヤードは生まれ変わっていたんじゃ…?」

マドラス「実質、なにも変わっちゃねぇよ。いくらお国が動いてもあーやってあぶれる奴は出てくる?」

ラキア「え…!?」

バキッ ガッ ゴッ ドカッ

裏通りのホビット1「あっ!ぐっ!や、やめっ…」ギュッ

青年1「ぎゃははははは!!」ブンッ

裏通りのホビット1「ぎゃっ!」ドフッ

青年1「おら、金だよ!金!いっちょまえに働かせてもらってんだろ!?」

裏通りのホビット1「こ、このお金は…病に伏している祖父の薬代です…。お願いします…。見逃してください…」ゼェゼェ

青年1「だってよ?ぎゃははははは!!」

青年2「いいから金だよ!出せってんだよ?」ブンッ

バキィッ

裏通りのホビット1「っ…!」ヒリヒリ

青年3「どうせ俺らじゃなくても浮浪者の集団に襲われんだから一緒だろ?」

ラキア「やめろぉっ!!」バッ

青年1「は?」クルッ

ラキア「集団でか弱いホビットから強奪するなんて君達には誇りというものがないのか!?」

青年1「誇り……だってよwwwww」ゲハハハハハ

青年2「空気中にいっぱい飛んでるよー?」ヘラヘラ

青年3「そりゃ埃だろ!」ビシッ

青年2「そうでしたwwwww」ゲハハハハハ

ラキア「こいつら…!」
696: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:16:48 ID:8AFkZ.RUD6
裏通りのホビット1「た、助けてください!お礼は必ずしますから!」アセアセ

ラキア「大丈夫だ。心配するな!」

青年1「は?なになに?なんなの、さっきから?」

青年2「いとウザし」ペッ

ラキア「やめる気がないなら憲兵に通報するぞ」

青年3「すればー!?」ベロベロバー

ラキア「は…!?」

裏通りのホビット1「け、憲兵……」シュン

ラキア「?」

裏通りのホビット1「意味ないですよ…。憲兵には何度も相談しましたけど…助けてくれないです」

ラキア「なっ…!」

青年1「そゆこと!」ドヤァッ

青年2「俺達さー?金欠の度にコレやってんだよね!」

青年3「俺達の学習院じゃみんなやってるぜ!今年のトレンド、イチオシ!」

ラキア「そんな…ウソだろ?」ガクッ

マドラス「ま、気ぃ落とすなって!」ポンッ

ラキア「マドラス…さん」

マドラス「こういう時はよ、これに限るぜ?」ポキッポキッ

青年1「な、なんだよ?暴力か?憲兵に訴えるぞ?」オロオロ

マドラス「たかだかガキ3人がボコボコにされたくらいで憲兵が動くか?」ニタァァ

青年1「……!」ゴクリ

マドラス「いっくぜー?」ダッ

青年1「や、やめっ…」

バキィッ ゴッ ボカッ ズダァンッ ドカッ
697: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:21:13 ID:tvS/hVrMQc
裏通りのホビット1「助けてくれてありがとうございました…」ペコリ

マドラス「礼をするっつったよなぁ?」ニヤニヤ

裏通りのホビット1「」ビクッ

マドラス「まぁいいぜぇ?あいつらの懐から徴収してやったからよ?残りは善意から差し引いといてやらぁ?」ジャラッ

裏通りのホビット1「は、はは……」ヒクヒク

ラキア「……いつものことなのか?」

裏通りのホビット1「まぁ…そうですね。今日はマシな方です。
お金とかじゃなくて憂さ晴らしに八つ当たりする人も来ますから」

ラキア「……」

裏通りのホビット1「…王国は裏通りを僕らの住み処として提供してくれて、住み良いようにこっちにもお店や市場を作ってくれたりしてすごく助かってます」

裏通りのホビット1「だけど…表通りから難民が流れてきて…僕らをからかう人間がいじめてきて…全然…まともに…暮らせません」ウルッ

裏通りのホビット1「教団や王国も…上の人たちは頑張ってくれてるんです!
でも…その人たちがいないと…なにもしてくれません!?」ウルウル

ラキア「どうやって生活を…?」

裏通りのホビット1「働き口も少ないので…いろんなお家を掛け持って使用人みたいな事をしてます」

ラキア「……」

裏通りのホビット1「最初はお金の事とか分からなくて物々交換を申し出たら笑われちゃいました…。
今では何より大切な物だと分かってます…。みんなが欲しがるのも当たり前です」

裏通りのホビット1「慣れない家事や雑用にもたついちゃうんで叱られたり足蹴にされて…賃金も少なかったり貰えなかったりで…すごく貴重で大事にしてます」ギュッ

マドラス「よし、どうでもいいな!次の社会見学行くぞ?」

ラキア「ま、待ってください!俺を連れ回して何を……」

マドラス「フィクサー軍長に言われなかったか?俺に協力しろとよ?」

ラキア「だから何を…!?」

マドラス「お前が気持ちよく協力出来るように教えてやってんだよ?この国の現実をな?」スタスタ

ラキア「」チラッ

裏通りのホビット1「」ペコリ

ラキア「っ…!」キュッ
698: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:23:02 ID:tvS/hVrMQc
ワラワラ ワラワラ

裏通りのホビット1「……?」

裏通りのホビット2「だ、大丈夫だったか?」オロオロ

裏通りのホビット3「良かったな。親切な人間がいて!」

裏通りのホビット1「見てたのか…?」

裏通りのホビット4「あいつらがボコボコにされるのスッキリしたよ!」

裏通りのホビット5「うんうん!あれで少しは懲りたろ!」

裏通りのホビット1「ふざけんなよ…!」ワナワナ

裏通りのホビット's「?」

裏通りのホビット1「隠れてたんだろ?巻き込まれたくないから?」

裏通りのホビット's「……」

裏通りのホビット1「お前ら全員許さないからな…!二度と俺に話しかけるな!?」

裏通りのホビット2「しょうがないだろ。俺達が助けてもあいつら、もっと仲間を連れてきて仕返ししてくるだろうし」

裏通りのホビット3「俺達だってやられてるよ。その時だって誰も助けてくれなかった」

裏通りのホビット4「貰った寮も悪ガキとか浮浪者に奪われて住むとこも無くなっちまった」

裏通りのホビット5「みんな腹空かして精一杯なんだよ。分かるだろ?」

裏通りのホビット1「うるさい!言い訳なんか聞かない!お前らなんか仲間じゃない!」

裏通りのホビット2「お前、金があるんだよな。助けてもらったから」

裏通りのホビット3「いいな。帰ってうまい飯食うんだ?」

裏通りのホビット1「こ、これは薬を買う金だ!」サッ

裏通りのホビット4「ウソつき。どうせ腹一杯食うんだろ?
俺達なんて何日も虫や鼠をかじって飢えを凌いでるのに?」

裏通りのホビット5「くれよ、その金。仲間じゃないか」ジリッ

裏通りのホビット1「く、来るなっ!?」

裏通りのホビット's「」ジリッジリッ

ウワアアアアアアアア!!!
699: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:25:41 ID:tvS/hVrMQc
裏通りのホビット2「へへ!仲間を見下したりするからだ!」ジャラッ

裏通りのホビット3「薬代とか言ってたけど生活費、全部持ち歩いてたみたいだ。バカなヤツ?」

裏通りのホビット4「やっと食べられる!市場でおいしい物を買おう!」

裏通りのホビット5「いや、生活必需品を買おう。服も汚れて体が痒いし、湯浴みもしたい」

裏通りのホビット4「飯だ!」

裏通りのホビット5「服だ!!」

ギャーギャー ギャーギャー

憲兵37「おい、ホビット共?」スタスタ

裏通りのホビット's「え?」

憲兵37「汚い身なりだが税はちゃんと払ってるのか?」

裏通りのホビット's「」オロオロ

憲兵37「ちょっと来てもらおうか?役所で滞納金の額を確認するから?」

裏通りのホビット2「…わざとだ!」

憲兵37「は?」

裏通りのホビット2「なんで急に都合よく裏通りに来るんだよ!」

憲兵37「は?」

裏通りのホビット2「最初からタカる気で待ち伏せてたんだろ!」

憲兵37「は?」

裏通りのホビット2「お前らいつもそうだ!困った時は助けないのに奪ってばっかりだ!」

憲兵37「は?」

裏通りのホビット2「"は?""は?"じゃないよぉ!!」

憲兵37「」ブンッ

バコッ!
700: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:27:09 ID:8AFkZ.RUD6
裏通りのホビット2「いだぁっ!?」ズサァッ

憲兵37「税は払わなきゃダメだろ?国民の義務だぞ?そういう条件で迎えられたんだろ?」パシッパシッ

裏通りのホビット's「」ガクガクブルブル

憲兵37「自分たちが不甲斐ないから責任を果たせないんだろ?俺達のせいにするなよ?」

裏通りのホビット3「す、すみません!」

憲兵37「…」ブンッ

バコッ!

裏通りのホビット3「ひぎいっ!!」ドカッ

憲兵37「私だってこんな事はしたくないよぉ?お前らが反抗するからさぁ…」パシッパシッ

裏通りのホビット4「許してください…!?」ブルブル

憲兵37「有り金、全部寄越せ?そうすりゃ見逃してやるよ?」

裏通りのホビット4「え!?」

憲兵37「え?じゃなくて…はい!だろ!?」ブンッ

バコッ!

裏通りのホビット4「あぎゃあっ!?」ドサッ
701: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:28:20 ID:tvS/hVrMQc
裏通りのホビット's「」ピクピク

憲兵37「まいどあり」ホクホク

ザッ

憲兵37「ん?」

ラキア「そのお金…どうする気ですか?」ジロッ

憲兵37「…なにが?見回りの邪魔だからどいてくれる?」ジロッ

マドラス「そうやって普段から小遣い稼いでんだろ?なぁ?」ニヤリ

憲兵37「どうせ奪った金だろう?文句なんか言わせねぇよ?」

ラキア「憲兵の恥め…!」

憲兵37「なんだ、お前?偉そうに?」

マドラス「下っ端の兄ちゃんよ?こいつは団長の息子だぜ?」

憲兵37「はぁ?デタラメはよせよ?団長の息子は兵営の訓練生だ。こんなとこにはいねぇ?」

ラキア「……」

憲兵37「それとも…なんか証拠があんのか?ん?」

ラキア「」シュッ

憲兵37「は…?」カクンッ

ラキア「」ガッ グンッ

憲兵37「うげぇっ!?」ドサッ

ラキア「もういい。お前の話は聞かない。俺が裁いてやる」ギロッ

マドラス「ひゅー!やるぅ?」

憲兵37「(な、なにをされた…?なんで俺が地面に叩きつけられ……)」パクパク

マドラス「(足を引っ掛けて体勢崩したとこを襟首掴んで叩きつけたか。名付けるとしたら…"床ドン"だな)」ニヤニヤ
702: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:29:45 ID:8AFkZ.RUD6
ラキア「はっ…はっ…!」ブンッブンッ

ガッ バキッ メキッ ドフッ

マドラス「その辺にしとけ!死ぬぞ?」

ラキア「はっ…はっ……はっ…」パッ

憲兵37「」グッタリ

ラキア「マドラスさん…自分は全てに絶望しました。今まで恵まれ過ぎて視野が狭かったのだと実感しています」

マドラス「良かったな?大人の階段登れてよ?」

ラキア「はい…。あなたのおかげです」

マドラス「(バカだな。たかが強請タカり見ただけで世の中全て知った気になってよ?
この年頃はなんにでも感化されやがるから扱いやすいぜ。そういうのを視野が狭いって言うんだよ、バーカ?)」ニヤニヤ

ラキア「今まで父上が家にいないのも家族より王族を優先するのも…全ては正義を守り、秩序を正していく為なんだと思ってました。
でも結果として父上が守ってきた正義はこの程度の物だった」

マドラス「……」

ラキア「父上は…この程度の為に家族をないがしろにしてきた…!母上の苦労も…寂しさも知らないで…!」ワナワナ

マドラス「だなぁ?正義なんざバカヤローだぜぇ?」

ラキア「フィクサー軍長のご命令に従い、あなたに協力します。なんでも言ってください」

マドラス「おう、頼りにしてるぜぇ?」

マドラス「(はっ!一端に軍の正規兵気取りか?訓練期間も修了してねぇ候補生ごときが?
親父の名もなきゃてめぇに価値なんかねぇんだよ)」


……………………
703: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:33:18 ID:tvS/hVrMQc
―――城下町(団長の屋敷)――

母「…つまり坊やの力を狙って西の国が動き出した。
それを阻止する為に政務官さんが坊やを始末しようとしている…ということ?」

団長「そうなりますな」

母「そ、そんな大きすぎる話…急に言われても!」オロオロ

団長「まぁな…。信じられないのも無理はない。だが事実として君たちは狙われてきた筈だ」

母「……」

カロル「さっき狙われたばっかりだもんね?」

マルク「あんっ!」コクッ

団長「陛下の意向もあって表向きは我々の協力者を装おっているが…先刻の会話からも分かるように奴は君たちを始末する大義名分を探っている」

カロル「西の国ってなに?」チンプンカンプン

団長「大陸の西側に位置する悪評の絶えない野蛮な独裁国家だ。
人口も多く、武器の製造に掛ける資金や軍の規模も大きい」

母「お、恐ろしい国なのね…」ブルッ

団長「あぁ、恐ろしいぞ。どうやって調べたかは知らんが統計上は世界で最も餓死の率が高いとされるほど民が飢餓に見舞われている。
親が子を鍋で煮て食ってしまったという逸話さえあるのだから救いようがない」

母「……!?」

団長「民の3割は鉱石の採掘や武器の製造に駆り出され、強制労働を強いられていると聞く。
そのせいか紛争や反乱が絶えんそうだ。あんな国に生まれてしまった西の民が哀れでならんよ」

カロル「……」
704: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:35:10 ID:tvS/hVrMQc
団長「といって、まぁ…王国も胸を張って善良な国家と言えるかは別だがな。
身分の差や貧富の差、種族の差など区別したがるきらいがあり、内部では謀略の闇もはかり知れん」

団長「ワシも職業柄、口を伏せてきた経験は数知れず、だ」

母「…本当に大丈夫なんですか?あたし達を匿ったりして?」

団長「あぁ、それは全く構わんよ。心配せずとも邸内には腕利きの配下を護衛に付けてあるぞ?」

母「でもご家族がいらっしゃるんでしょう…?」

団長「憲兵の家族である以上、多少の危険は覚悟してくれているとも?」

母「……」

カロル「…団長さん」

団長「む?」

カロル「危なくなったら…ボクより家族を守ってあげてね?」ジッ

団長「……」

カロル「……」ジーッ

団長「そうなれば、な」ボソッ

母「……」
705: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:38:02 ID:8AFkZ.RUD6
―――団長の屋敷(客間)―――

カロル「ん〜!ふわふわ!ベッド大好き!」ポフッ

マルク「くぅ〜ん!」ゴロリ

ガチャッ

母「ふぅ…お風呂借りてきたわよ?坊やも入ってらっしゃい?」

カロル「うん!マルクも入ろう?」ナデリ

マルク「アンッ!アンッ!」シッポフリフリ

母「ダーメ?浴槽に毛が入っちゃうでしょ?後片付けが大変よ?」

マルク「」ガーン

カロル「そうだね。ごめん、マルク!また今度、ね?」ナデナデ

マルク「クゥン…」シュン

カロル「じゃあいってきまーす!」ガチャッ

母「いってらっしゃい?」

バタンッ

母「……」

マルク「あぅん?」

母「…なんだか身の回りがせわしなくなってきたわね。昔はこんなこと絶対になかったのに」ポフッ

マルク「わんっ!わんっ!」

母「…もう何がなんだか分からないわ。あたしは夢でも見てるのかしら」

母「坊やが国の英雄で…他の国にまで狙われてて…そしてまた王国に狙われて……全然、現実感がない」

母「あの子が求めてるのは普通の幸せなのに…なんでこんなに大きな事に巻き込まれちゃうの…?」ゴロン

マルク「わふぅー…」

母「あなたも同じよね?分かる訳がないもの?」クスリ

母「はぁ…」
706: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:40:38 ID:8AFkZ.RUD6
―――団長の屋敷(居間)―――

団長「はぁ…」

団長の妻「お疲れさまです。良かったら飲んで?」コトンッ

団長「ほう…豆コーヒーか」カチャッ

団長の妻「徹夜で見張るんでしょう?眠気覚ましにいいと思って?」ニコッ

団長「すまんな…」ズズッ

団長の妻「いいえ?お仕事なんですから?」

団長「息子はどうしてる?」

団長の妻「兵営で頑張ってるみたいですよ?あなたと働く為に?」

団長「ふふ…そうか」ニコッ

団長の妻「いつか同じ場所で働けるといいですね?」ニコニコ

団長「そうだな…。ラキアもいくつになった?」

団長の妻「今年で18ですよ?」

団長「大きくなったな?」

団長の妻「そりゃそうですよ?親が見てなくても子供は育つんですから?」ニコニコ

団長「思えばお前達には苦労をかけたな」

団長の妻「ふふ…今さらですよ?」

団長「…寂しい思いもさせたろう?」

団長の妻「……」

団長「陛下も休暇をくださると言ってくれた。この件のカタが着いたら軽く旅行にでも…」

団長の妻「いいのよ?」

団長「む…?」

団長の妻「大丈夫…私もあの子もいつでもあなたを待ってるから」

団長「……」

団長の妻「あなたがいくら忙しくしてても私達はこの家で待ってる。
だから無理しないで…やりたい事を続けて?」
707: 投下終了 ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:42:42 ID:8AFkZ.RUD6
団長「……」コトンッ

団長「待ってる…か。そう言ってもらえるからこそ心置きなく職務に専念出来る」

団長「…会えない時間は待たせているワシまで寂しくなるがな」フッ

ガチャッ

団長「……?」

護衛1「団長!今しがた手紙が届きました!」つ【手紙】

団長「手紙だと?こんな夜中に誰からだ?」パシッ

護衛1「見知らぬ町人風の男で…身元を伺ったところ頼まれたから届けに来ただけだと」

団長「……?」ビリッ カサッ

団長「ふむ…ご苦労だった」スッ

護衛1「いえ!」

団長「…明日は厳重に警戒体勢を敷いてくれ。ワシは屋敷を空けるが彼らに危害が及ばんようにな?」

護衛1「どちらへ行かれるのですか?」

団長「ヤボ用だ。気にするな」

護衛1「失礼しました!」

団長「……!」ググッ

手紙『お前の息子は預かった。助けたければ明日の朝、7時にバックヤードのヘマトバザール跡地まで一人で来い』

団長「(ヘマトバザールの残党か…!よくも…!)」ギリッ

『危なくなったら…ボクより家族を守ってあげてね?』

団長「……くっ!」スクッ
708: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:46:21 ID:tvS/hVrMQc
>>687
支援ありがとうございます!頑張ります!
>>688
お待たせして申し訳ないです!
必ず完結させますので最後までよろしくお願いします!
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