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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】
[8] -25 -50 

1:🎏 ゆったりペースになりますが! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:09:52 ID:N4jwCkModw
1スレ

少年「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10

2スレ

カロル「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10

―――あらすじ―――

それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました

しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました

そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです

戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました

布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました

それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします


837:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2015/7/8(水) 22:30:25 ID:O9B95TLDKU
宣教師「以前にキミは新しい国の形を作ると宣言されましたよね?」

ヒメ「…!?」

宣教師「キミが有言実行を心掛ける気であれば…すでに政は役人だけの物ではない筈です」

ヒメ「も、もちろん有言実行するつもりだよ…。
政治に関心を持たせる為に城下の役所で定期的に講義の場を開かせているし…。
話し合った結果や議会で出た発言も詳細に伝わるよう紙面で情報化してるさ?」

宣教師「そうした努力は認めていますよ?
しかし体制が変わって現在まで民による提案は通りましたか?
実際に成立した事柄はどれだけありましたか?」

ヒメ「そ、それは…ほとんど……」モゴモゴ

宣教師「なぜ通らないのですか?」

ヒメ「どんな提案にしても…何かを成し遂げるまでの過程をないがしろにし過ぎてるんだ。
それを実践する為に必要な方法、人員、予算…そこを無視した理想ばかりが目に余る」

ヒメ「そんな提案が膨大に溢れて追い付かないから、なるべく現実的に検討出来そうな案を振り分けるけど…。
その振り分け作業自体が、また追い付かなくて難儀してるのが現状だ」

宣教師「…なるほど、そこで立ち止まっている訳にはいかないということですか」

ヒメ「西の国との緊迫感や同盟国との折り合いもあって役人達も消耗している。
皆、やれるだけの事はやっているんだ…。ただ…それが中々うまくいかない」シュン

宣教師「そうですか…。ままならないものですね」
838:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2015/7/8(水) 22:32:27 ID:O9B95TLDKU
ヒメ「やはり僕に国王なんて務まらないんだろうか…」ボソッ

宣教師「?」

ヒメ「…政務官から言われたんだ。国王が子供だという事実が国政の妨げになっていると」

宣教師「…私はそうは思いませんが」

ヒメ「はぁー……」

宣教師「…柄にもなく落ち込んでいるのですか?」

ヒメ「柄にもなくは余計だ?国王が落ち込んだら悪いか?」ジロッ

宣教師「悪くありませんよ。むしろ大いに結構です?」ニコッ

ヒメ「なんだよ、それ…」ボソッ

宣教師「これは極めて個人的な考えですが…人が落ち込んでしまうのは過去の誤った行いや失敗を振り返り、今の自分に自信が持てなくなっているからだと思います」

ヒメ「……?」

宣教師「自分を見つめ直す作業は決して無駄ではありませんよ?
以前に発覚した短所もこれから改めれば立派な長所になるでしょう。それが進歩です?」ニコニコ

ヒメ「簡単に言うなよ…」

宣教師「えぇ、簡単にはいきませんとも?だからこそ人は迷い、悩み、挫け続けるのですから?」

ヒメ「…説教だけは司祭らしくなったな?」ジトッ

宣教師「ふふ?そうさせたのはキミですよ?」ニコニコ

ヒメ「…ふっ!そうだな。おまえにも責任を押し付けてしまった訳だし僕ばかり泣き言を言ってるのはみっともないか?」

宣教師「ふふふ?」ニコニコ
839:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2015/7/8(水) 22:34:25 ID:O9B95TLDKU
ヒメ「じゃあ僕は議会に出るから…またいつでも来てくれよ?」ニコッ

宣教師「はい。頑張ってください?…あぁ、それから」

ヒメ「ん?なんだ?」

宣教師「…団長さんからは口止めされたのですが、やはりキミにも知っておいてもらいたいと思いまして?」

ヒメ「口止め?団長が?いったいどういう事だよ?」キョトン

宣教師「その前に…聞き耳を立てられてはいませんよね?」

ヒメ「そんなに重大な話なのか?」

宣教師「はい。少なくともキミにとっては?」

ヒメ「……分かった。部屋の周囲は近衛が見張りに立ってるから聞かれる心配はないと思う?」

宣教師「では念のため、お耳を拝借してもよろしいですか?」

ヒメ「……」スッ

宣教師「」コショコショ

ヒメ「……!?」ビクッ

宣教師「…以上です」スッ

ヒメ「本当…なのか!?」ワナワナ

宣教師「団長さんからはそう伺いました」

ヒメ「…政務官が……あいつを…?」ボーッ

宣教師「……」
840:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2015/7/8(水) 22:37:23 ID:O9B95TLDKU
ヒメ「…分かった。すまないな。わざわざ伝えに来てくれて?」

宣教師「いえ、それともう一つ…」

ヒメ「まだ他に僕の知らない事が起こってるのか…!?」

宣教師「入国手続きの方、早めにお願いしますね?」ニコニコ

ヒメ「は?」

宣教師「はい?」

ヒメ「ダメだって言ったろ?」

宣教師「なぜです?」

ヒメ「理由、話したよな?忠告もしたよな?」

宣教師「えぇ、聞きましたよ。しっかり心に留めておきます」

ヒメ「だからダメだって?危険過ぎるから?」

宣教師「分かりました…」

ヒメ「そうか…」ホッ

宣教師「じゃあ個人的に西の国に旅行しますから手続きと許可を?」

ヒメ「……」

宣教師「ほら、私まだ20代前半ですし?国外旅行とか憧れてまして?」

ヒメ「白々しい嘘つくな!?ダメなもんはダメだ!?」ムキーッ

宣教師「はぁ…分かりましたよ。お土産買ってきますから?」ヤレヤレ

ヒメ「何一つ分かってないよな!?」
841:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2015/7/8(水) 22:39:22 ID:O9B95TLDKU
宣教師「なんでですか!?私の自由でしょう!?」ガタッ

ヒメ「開き直るな!?」

宣教師「じゃあどうしたらいいんです!?」

ヒメ「どうしたってダメだよ!!おまえが向こうで面倒起こしたら負担が全部こっちに回ってくるんだよ!?」

宣教師「それくらいなんとかしてくださいよ!国王なんですから!?」

ヒメ「むちゃくちゃ言うな!!いいから今まで通りの活動を続けてろ!?」

宣教師「イヤです!!」キッパリ

ヒメ「年上のクセにわがまま言って恥ずかしくないのか!?」

宣教師「年下のクセに年長者に逆らっていいんですか!?」

ヒメ「とにかくダメだ!!絶対に許可しないからな!!」

宣教師「ケチ!!」

ヒメ「ケチじゃない!!」

ギャーギャー ギャーギャー
842:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2015/7/8(水) 22:42:12 ID:O9B95TLDKU
コンコン コンコン

ヒメ「」ハッ

「陛下、政務官殿がお呼びです!役人一同、議場に集結していると!」

ヒメ「わ、分かった!すぐ向かう!」アセアセ

宣教師「おやおや、遅刻ですか。一番やってはいけない失敗ですよ?」アチャー

ヒメ「おまえなぁ〜…!?」ギリギリ

宣教師「…話の続きはまたお会いした時に?」スクッ

ヒメ「話は終わりだ!この頑固女!!」

宣教師「間に合わなくなりますよ?」

ヒメ「誰のせいだ!?くっ…!」ガサガサ

宣教師「支度した物の見直しですか?マメですね?」マジマジ

ヒメ「うるさい!さっさと帰れ!?」ムキーッ

宣教師「では頑張ってください?」スタスタ

ヒメ「おまえに言われなくてもそうする!?」

宣教師「…私も私のやり方で頑張りますので?」クスッ

ヒメ「はぁ…?」

宣教師「では失礼しました」ガチャッ

バタンッ

ヒメ「あ、あいつ…全然諦めてないな…!」イライラ

ヒメ「ってこんなことしてる場合じゃない!僕も行かなきゃ…!」ダッ

ガチャッ バタンッ
843:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2015/7/8(水) 22:43:37 ID:O9B95TLDKU
―――王都(議場)―――

ゾロゾロ ゾロゾロ

高官1「ずいぶんとのんびりされていたようで?」ジロッ

高官2「この後も商家との懇親会があるんですが…あ〜間に合いませんな?皆さんになんと謝罪すればよいか…?」チラッ

ネバル「大丈夫です!寝坊くらいみんなするです!」

ヒメ「……!」ワナワナ

政務官「では陛下が到着なされたところで議会を開くとしようか」

ヒメ「ふん…」

政務官「まず始めに先日の件について……」ウンタラカンタラ

アーダコーダ

ガミガミ ギャーギャー

記者「」カリカリ

ヒメ「はぁー…」イライラ
844:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2015/7/8(水) 22:47:35 ID:/MzOWg.iM6
政務官「大体の意見がまとまりましたな。陛下、個人的に問題点などは見当たりましたか?」

ヒメ「ない。そのまま進めてくれ」

政務官「…では最後に私から提案がございます」

政務官「西の国との対立状況を一刻も早く打開すべく…我が国と致しましては武力行使も辞さない構えで交渉を迫ろうと考えております」

ザワザワ ザワザワ

政務官「無論、勝算はございます」

ヒメ「…勝算?」

政務官「はっ!西の国に潜入させている部下の報告を受けましてな?」

ヒメ「なんと?」

政務官「ここ半年の間、西の国内で大規模な暴動が起こっていると?」

高官1「暴動?圧政による今まで通りの反発では?」

政務官「いや、これまでとは全く異なる?」

ネバル「どういうことです?」

政務官「…独立遊民を自称するイアマンという過激派組織が立ち上がり、民を煽動して反政府活動を行っているのだ」

高官1「イアマン?聞いた事もない組織だ?」

政務官「彼らはまとまった地に留まらず、それぞれ一般人に扮して西の各地に根付き、密かに勢力を拡大しているそうだ?
その為、ファルージャの部下達も指導者の所在や構成員の正確な数を割り出せず手をこまねいている?」

ネバル「ほぇ〜…どうりで最近は西の国から音沙汰がないと思ったです」

政務官「聞くところによれば…イアマンの活動家による暗殺の手が二度、ファルージャの目前まで迫ったらしい」

高官1「二度も…!?」

高官2「そ、それはつまり…厳重な城の警備を潜り、女王に接近したと…!?」

政務官「そうだな。分かりやすく言えば、この城内に侵入した暗殺者が我々に気付かれる事なく陛下を襲撃するようなものか」

ネバル「ヒエエエ!!!?あっちゃならねぇ事ですだよ!?」ヒエー

高官1「格式高い議場で田舎言葉を発するな!?」

高官2「まったくこれだから庶民上がりは…」ブツクサ

ネバル「う…す、すんませんです。陛下にもしもがあったらと怖くなって気が動転したです…」ショボン
845:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2015/7/8(水) 22:50:39 ID:/MzOWg.iM6
ヒメ「おい」

ネバル「は、はいです!」ビクッ

ヒメ「おまえじゃない。そこの二人?」

高官1「は?なにか?」

ヒメ「出ていけ?」

高官1&2「はああああ!!!?」

ヒメ「爵位、領地共に没収、今後一切、城内の出入りを禁じる」

高官1「な、なぜっ…!?」ガタッ

高官2「納得しかねる!!」ダンッ

ヒメ「王国がより繁栄を遂げる為にどこを目指しているか…いつになったら理解するんだ?」

高官1「……!?」

ヒメ「言葉遣いがなんだ?庶民の何が悪い?
国を…ひいては我々、上流階級を生かし、支えてくれているのは庶民じゃないのか?」

ヒメ「ここで我々が出す案も実際に取り掛かるには庶民に労働力となってもらわなければならないんだぞ?」

シーン

ヒメ「日々、国家に身を捧ぐ彼らをなぜ見下せる?なぜ感謝と敬意の念を持って接してやれない!?」カッ

高官1&2「っ〜〜〜!」ワナワナ

ヒメ「おまえ達の発言一つ一つが城下を始め、全国に流れる仕組みが出来上がっているのに…まだ身分階級を口にする、その無神経な感覚が僕には分からないよ」

ネバル「へい…か」オロオロ

ヒメ「これだから貴族上がりの坊っちゃん役人は…?」フンッ

高官1&2「ぐぬぬ…!」ワナワナ

ネバル「陛下!!」ガタッ

ヒメ「……?」

ネバル「言い過ぎ…です」ブルッ

ヒメ「は?」
846:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2015/7/8(水) 22:53:53 ID:O9B95TLDKU
ネバル「オラ…田舎者の村役場務めだったから…正直、言葉遣いも礼儀作法もさっぱりわからねぇ。
バカにされても言い返せねぇべな。だども気にしちゃねぇですだよ」ブルブル

ネバル「そんなこって一々気ぃ落としちゃらんね!庶民の代表っつー役目をオラがやんなきゃなんねがら!」バッ

ネバル「国を良くしたい気持ちはみんな一緒です!ちょっとやそっといがみ合ったって、それだきゃ揺るがねぇ!」

ネバル「だがら…陛下も皆さんも気にしねぇでくんろ?オラ…こんぐらいへっちゃらですだ!」ニカッ

高官1&2「ネバル…!?」

ネバル「庶民を大切にしてくださる陛下の気持ちは嬉しいです。
でも…だからって貴族の方々に辛く当たるのは違いますです?」

ヒメ「おまえを尊重したんじゃない。この発言が民に伝わってしまうのが問題なんだ?」

ネバル「え…?」

ヒメ「ただでさえ愛国心の薄い国民性に拍車をかけて労働意欲さえ削ぎかねない。
こいつらは自分たちの発言の重みも先の課題も何一つ頭にない無能者だ」

高官1&2「ぐ…くく!」ギリギリ

ヒメ「国は民と共に在る。そこをないがしろにしてしまうような奴に役人は任せられない」

ネバル「……」

ヒメ「最初に言ったよな?身分階級にこだわる怠け者には務まらないものと思えと?」キッ

高官1&2「……」ググッ

ヒメ「今までご苦労だったな」

高官1「…後悔させてやるぞ。張りぼての王族風情が…!」ギリッ

高官2「ガキの分際で大人に意見しおってぇ…!」ワナワナ

ヒメ「没落貴族は庶民にも劣る」

高官1&2「……!?」ギクッ

ヒメ「自分たちが見下ろした場所に立って悔しさを学べば少しはマシになるかもな?」

高官1&2「ぬがあああああ!!!」ガクッ

ヒメ「ふん…」

高官's「」ビクビク

ネバル「(き、厳し過ぎるです…。なにもそこまで…?)」オロオロ
847:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2015/7/8(水) 22:56:51 ID:O9B95TLDKU
政務官「さて、話がだいぶ逸れたが…今現在、西の国は危機的状況にあり、我が国にとっては絶好の機会に他ならない。
ここは一つ強気に交渉を迫り、返答次第では攻撃を開始……」

ヒメ「戦争はしない」キッパリ

政務官「この好機をみすみす逃すと?立て直されてはもはや手の尽くしようもございませんぞ?」

ヒメ「まるで敵国と見なした物言いだが表面的には西の国と平和協定加盟国は友好的な間柄にあるんじゃないのか?」

政務官「表向きは…ですがね」

ヒメ「なら一方的な武力行使は得策じゃない筈だ。
友好的な国に不意討ちを仕掛ければ王国は卑怯者の烙印を押される事になる?」

政務官「西の国を滅ぼし、東の国を取り込めば王国は世界最大の国家勢力となりましょう。そうなれば多少の汚名など容易に拭い去れる?」

ヒメ「軽はずみな発言はよせ?東の国を吸収する気などない?」

政務官「しないでは済まされませんな?」ギロッ

ヒメ「……」

ネバル「」ビクビク

政務官「なぜ陛下は執拗に戦争を拒むのか?国家繁栄に繋がる大道を避けるようでは…王の器とは言えませぬ?」

ヒメ「言うじゃないか?」

政務官「フッ…今日は泣きべそをかかないので?」

ヒメ「おまえの挑発には乗らないさ…。全決定権は国王にある?
どれだけ御託を並べて役人達を取り巻こうと僕が頷かない限り、実行には移せない?」

政務官「その通り。多数決や裏技は使えない。貴方に納得してもらう他ございません?」

ヒメ「もう一度言う。戦争はしない!」キッパリ

政務官「理由をお聞かせ願えますか?」

ヒメ「西の国に攻撃を仕掛けるだけの大義がない。そして東の国を吸収する危険は避けたい」

政務官「大義はございます」

ヒメ「?」
848:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2015/7/8(水) 22:59:21 ID:O9B95TLDKU
政務官「西の国の三銃士を名乗る者が兵を率いて司祭の孤児院を焼き払い、保護されていたホビットを一人、殺害しております」

ヒメ「……!?」

政務官「それから各地、ホビット族の集落を襲撃した謎の男の被害証言が寄せられております」

ヒメ「なんだと…!?」

政務官「どちらも癒しの力を狙った犯行と思われる。すなわち……」

ヒメ「(まさか…!)」

〜〜〜回想(ヒメ)〜〜〜

カロル「…仲間の集落で変な人間に会ったんだ?」

ヒメ「変な人間?」

母「全身を紫のローブで覆って無表情の不気味な仮面を被った…まるで大昔の呪術士のような人だったわよね?」

カロル「うん…。その人間がね?ボクの口に指を入れてきたんだ?」

ヒメ「ゆ、指を…!?」

カロル「それでね、ボクに癒しの力があるの知ってて…愛してる人にあげたいって言ってたの」

ヒメ「はぁ…?何者だ、そいつ?」

カロル「わかんない…。あの後、すぐいなくなっちゃったから」

ヒメ「ふーん…なんだったんだろうな?」

…………………

ヒメ「(まさか…ファルージャの手下だったのか!?)」

政務官「いかがですか?これでもまだ大義はないと?」

ヒメ「……!」
849:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2015/7/8(水) 23:03:15 ID:/MzOWg.iM6
政務官「西の狙いは明らかでしょう。攻撃を控えるにせよ衝突は間近だ?」

ヒメ「っ…」

政務官「ご友人を守りたくはないのですか?」

ヒメ「……!?」ムカッ

政務官「何しろ急がねばなりません。ご決断を?」

ヒメ「おまえが…言うのか?」ボソッ

政務官「は?」

ヒメ「あいつを始末しようとした…おまえが!?」カッ

政務官「……さて?なんのことやら?」

ヒメ「……!」ギリッ

政務官「…誰に何を吹き込まれたか知りませんが誤解されては困りますな?」

ヒメ「……」スゥー

政務官「なぜ私が陛下の大切なご友人を始末するのです?」

ヒメ「(こいつ……)」

政務官「実は…貴方の為を想い、私も陰ながら救い主の安否を探っておりました?」

ヒメ「(わざとらしい…!)」

政務官「決して陛下を裏切るようなマネは致しません?この深い忠誠心に賭けて誓いましょう?」

ヒメ「(宣教師も団長も嘘を言うようなヤツじゃない…。やはり政務官には何か裏がある)」

政務官「陛下は私が信じられないと!?」

ヒメ「(今は何を言っても無駄か。こいつが裏で何をしてるか探らせないとな)」

政務官「……」

ヒメ「……」

ザワザワ ザワザワ

政務官「ふぅ…議会を閉じましょう。続きはまた後程?」

ヒメ「そうだな…」

ネバル「(な、なんです?この空気…?)」オロオロ
850:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2015/7/8(水) 23:55:46 ID:/MzOWg.iM6
>>833
フラグたっぷりながらもようやく普通の幸せルートに向かいました!
まだまだいろいろ巻き起こすつもりですがw
次スレで完結させるつもりですがハッピーエンドにするかバッドエンドにするか未だに決めてませんw

支援ありがとうございました!
>>834
二人ともお互いを幸せにしようと頑張って支え合ってます!
カロルも生粋のマザコンなのでマリーが生きてる間は多分やさグレませんw
…我ながらこんな親子いないだろうなーと違和感は覚えますがw

支援ありがとうございました!
851:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:01:44 ID:Xpa/i5jyug
〜〜〜数日後〜〜〜

―――王都(王宮)―――

コンコン コンコン

ヒメ「入れ」ポンッポンッ

ガチャッ

団長「失礼致します!お呼びでしょうか、陛下!」

ヒメ「二人は無事に送り届けてくれたみたいだな」クルッ

団長「はっ!あの者らに任せておけば今後、不自由なく暮らせるでしょう。
町の憲兵にも注意を払うよう呼び掛けておきましたので心配は入りません」

ヒメ「ご苦労だった。ところで……」

団長「……?」

ヒメ「おまえ、僕になにか隠してるだろ?」ジロッ

団長「ッッッ!!!」ギクゥッ

ヒメ「……」

団長「な、なんのことか…?」ツツー

ヒメ「目、泳がせすぎだ」

団長「は、はぁ…いや、さっぱり?」キョロキョロ

ヒメ「宣教師から聞いたぞ」

団長「!?」ブルッ

ヒメ「なぜ黙ってた?」

団長「……!」ダラダラ

ヒメ「答えろ?」

団長「(あの娘…!あれほど陛下には言うなと口止めしておいた筈だぞ…!?)」ブルブル

ヒメ「…命令だ。答えろ!」キッ

団長「…しょ、承知しました。こうなれば…包み隠さず申し上げます!」
852:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:04:37 ID:Xpa/i5jyug
団長「〜〜というのが事の次第にございます!」

ヒメ「…政務官は最初からファルージャの狙いを知ってたんだな。
その上であいつを始末しようとしてた訳か…」

団長「はっ…」

ヒメ「……で、おまえもそれを聞かされていながら僕に黙っていたと?」ジーッ

団長「っ…い、言い訳は致しませぬ」ブルブル

ヒメ「……」

団長「このような大事を隠そうなど陛下を裏切るも同然…いかなる処罰もお受け致す所存!」バッ

ヒメ「ふん…おまえなんか罰するにも値しない?」プイッ

団長「……!」ググッ

ヒメ「なにが忠義だ。僕の道を切り開く剣となると誓ったのは偽りか?」ジトッ

団長「ま、誠に面目次第もござらぬ有り様で…大変申し訳なく思っております」シュン

ヒメ「申し訳なく思うくらいなら最初から隠すな?」フンッ

団長「くっ…!」ググッ

ヒメ「はぁ…おまえさ、毎回思うけど考えすぎ?」シラー

団長「は…!?」

ヒメ「どうせまたあてにならない憶測でくっだらない心配事でも妄想してたんだろ?」ジトッ

団長「なっ…!そ、そのようなつもりは…!?」

ヒメ「これだけは言っておくぞ」

団長「はっ…ははっ!?」ピシィッ

ヒメ「僕をもっと信用しろ?」

団長「……!?」
853:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:06:05 ID:H6OizUfNzE
ヒメ「それとも…国王と言えど子供では頼りないか?」

団長「い、いえ…滅相もござらん!」アセアセ

ヒメ「侮るなよ?僕を誰だと思ってるんだ?」

団長「あ、侮るなど…畏れ多い!」アセアセ

ヒメ「もう一度聞くぞ。僕を誰だと思ってる?」

団長「そ、それは…我らが国王にござ……」アセアセ

ヒメ「そうだ」

団長「……?」

ヒメ「おまえ程の武人が忠誠を誓うに値すると認めた王だ?」ニヤリ

団長「…!……は、ははーっ!!」フカブカ

ヒメ「分かったら、もう僕の信頼を裏切るようなマネはするなよ?いいな?」

団長「……まことに申し訳ございません!!」バッ

ヒメ「…よし、信じたぞ?」クスッ

団長「ははっ!!」
854:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:09:44 ID:Xpa/i5jyug
ヒメ「問題はリルラだ。何を考えてるんだか…」ウーン

団長「む…?そ、それはやはり…西の国との衝突を回避しようと…」

ヒメ「そうか?むしろ逆に思えるけどな?」

団長「と申されますと…?」

ヒメ「まず西の国との貿易だ。あれを承認する必要があったか?」

団長「…断れば即座に危険が迫ると判断したのでは?」

ヒメ「ならなぜ西の国は平和協定を切り崩しに掛かった?」

団長「……?」

ヒメ「奴らが野蛮だと言って…6ヶ国同盟を結ぶ王国とやり合うのは無茶だと踏んだんだろ。それくらいの思慮はあった訳だ?」

団長「い、言われてみれば…そうですな」

ヒメ「こちらも貿易を承認した以上、西の国との友好を受け入れて入国も認めざるを得ない。
奴らの目的を分かっていながら…どうぞご自由に探ってくださいと言ってるようなものだ?」

団長「なるほど…」

ヒメ「それだけじゃない。平和協定が崩れた最大の要因は我が国が西の国と友好関係にあると各国に示してしまった事だ?」

団長「た、たしかに…いくら西の国の鉱石財源を欲したとしても平和協定下にある国々は野蛮な西の国と交渉など出来なかったでしょうな」

ヒメ「そうだ。西の国と親くなれば同盟間で警戒視され、外されに掛かる。現に我が国がそうなった」

団長「む、むぅぅ…」ポリポリ

ヒメ「だがそれだけの危険を踏まえてなお貿易を成立させた…。しかも西の国から交渉を仕掛けた形でだ?」

ヒメ「…危険を犯させてまで王国にウンと言わせた西の国は高度な外交戦略を用いたかに見える。
それはつまりやりようによっては交渉の余地もあるという認識も少なからず持たれたかもな?」

団長「……な、なるほど」

ヒメ「実際、これまで受けた糾弾は西の国との友好関係を指摘する声だけじゃなかった。
もしかすれば同盟間で最も危惧されていたのは西の鉱石財源を王国に独占される可能性……。
そこに都合よく西の国から各国へ貿易の申し入れが回った。
これは西の鉱石財源に目を付けていた国々からすれば、またとない好機だったんじゃないか…?」ブツブツ

団長「ほ、ほうほう…」

ヒメ「そして同盟間でギクシャクする事を避ける理由付けに合致して王国を更に糾弾し、西の国と王国の印象をすり替えた…。
これで同盟国は平和協定に縛られず、悠々と西の国の貿易を承認する大義が出来たと…こういう事だな?」ペラペラ

団長「(い、いかん!ワシとしたことが、だんだん話に付いていけなくなってきたぞ…)」モヤモヤ
855:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:12:21 ID:Xpa/i5jyug
ヒメ「と、なると…もしかしたら、あの一手で既に我が国は詰んでたのかもな」フゥッ

団長「なっ…!?」ギョギョッ

ヒメ「敵に永遠の命にまつわる真偽を探る時間を与え、同盟間での不信を煽り、選択肢を戦争に絞らせた…」

団長「…!?」

ヒメ「…だとしたらリルラの狙いは最初から西の国と王国を争わせる事だったとも取れる」

団長「おのれ…!やはり…!」ギリッ

ヒメ「まぁ今までと照らし合わせて無理やりこじつけただけだから…真意は読めないけどな」

団長「即刻問い詰め、返答によっては首を跳ねて参りましょうぞ!」ザッ

ヒメ「早まるな、アホ。いつの時代の人間だ、おまえは?」

団長「(な、なんという言われよう…!?)」ガーン

ヒメ「…結局、あいつは何がしたいんだ?」

団長「も、もしや…反旗を翻す気ではござらんか!?陛下を失脚させ、己が王座に着こうと…!」

ヒメ「ないない。的外れもいいとこだ?」フリフリ

団長「んなっ!?」ガガーン

ヒメ「王位に着きたいのに自国を弱らせて強国と衝突させてどうすんだよ?
王になるどころか国ごと身を滅ぼすだけじゃないか?」

団長「で、ではなぜ…!」

ヒメ「あいつが唯一、狼狽えたのは東の国の懐柔くらいか。
それもやけに賛成的だったしな…。何よりあいつは僕に王としての器を強く求めてる?」

ヒメ「野心でもない…。私欲でもない…。じゃあ何の為に間違った方向へ進ませようとする…?」

ヒメ「僕を試しているのか…?それとも見限って、敢えて破滅に導こうと…?そこまで現実味のない人間性だったか…?」グワングワン

ヒメ「何より…新体制で発足した当初は紛れもなく有能で忠誠心も感じ取れた。
いや、忠誠心に関して言えば今でも感じられる…。じゃあなぜ?」グワングワン

団長「へ、陛下…!大丈夫でございますか!?」

ヒメ「うーん…」
856:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:17:56 ID:H6OizUfNzE
ヒメ「そもそもおまえに話したって何も出てこないもんなー」

団長「(サラッと心をえぐられた…!)」ガーン

コンコン コンコン

団長「誰だ?」

「ネバルです!」

団長「ネバル…?」

ヒメ「あぁ、いいぞ。入れ?」

ネバル「失礼しますです!」ガチャッ

団長「(へ、陛下を訪ねてこれるとは思えぬほど垢抜けない男だな?)」シゲシゲ

ネバル「うわっ!?」ビクッ

団長「お初にお目にかかる。ワシは陛下の親衛隊である近衛師団長、ダパーシ・ルフィアスだ」スッ

ネバル「あ、ど、どうも…お噂はかねがね…ごっつい手ですね?」ガッチリ

団長「貴殿は?」パッ

ネバル「お、おいらは名乗るほどの者では…」オロオロ

ヒメ「市民投票から選出された中級役人のネバルだ」

団長「おぉ、そうでしたか?これは失敬…同じ城内におりながら名を尋ねるとはとんだ無礼であった?」ペコッ

ネバル「と、とんでもねぇですだよ!頭なんか下げねぇでけれ!?」アワアワ

ヒメ「で、僕に何か用か?」

ネバル「あ、は、はい!それがですだね…」

ヒメ「……?」
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