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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】
[8] -25 -50 

1: ゆったりペースになりますが! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:09:52 ID:N4jwCkModw
1スレ

少年「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10

2スレ

カロル「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10

―――あらすじ―――

それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました

しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました

そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです

戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました

布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました

それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします


853: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:06:05 ID:H6OizUfNzE
ヒメ「それとも…国王と言えど子供では頼りないか?」

団長「い、いえ…滅相もござらん!」アセアセ

ヒメ「侮るなよ?僕を誰だと思ってるんだ?」

団長「あ、侮るなど…畏れ多い!」アセアセ

ヒメ「もう一度聞くぞ。僕を誰だと思ってる?」

団長「そ、それは…我らが国王にござ……」アセアセ

ヒメ「そうだ」

団長「……?」

ヒメ「おまえ程の武人が忠誠を誓うに値すると認めた王だ?」ニヤリ

団長「…!……は、ははーっ!!」フカブカ

ヒメ「分かったら、もう僕の信頼を裏切るようなマネはするなよ?いいな?」

団長「……まことに申し訳ございません!!」バッ

ヒメ「…よし、信じたぞ?」クスッ

団長「ははっ!!」
854: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:09:44 ID:Xpa/i5jyug
ヒメ「問題はリルラだ。何を考えてるんだか…」ウーン

団長「む…?そ、それはやはり…西の国との衝突を回避しようと…」

ヒメ「そうか?むしろ逆に思えるけどな?」

団長「と申されますと…?」

ヒメ「まず西の国との貿易だ。あれを承認する必要があったか?」

団長「…断れば即座に危険が迫ると判断したのでは?」

ヒメ「ならなぜ西の国は平和協定を切り崩しに掛かった?」

団長「……?」

ヒメ「奴らが野蛮だと言って…6ヶ国同盟を結ぶ王国とやり合うのは無茶だと踏んだんだろ。それくらいの思慮はあった訳だ?」

団長「い、言われてみれば…そうですな」

ヒメ「こちらも貿易を承認した以上、西の国との友好を受け入れて入国も認めざるを得ない。
奴らの目的を分かっていながら…どうぞご自由に探ってくださいと言ってるようなものだ?」

団長「なるほど…」

ヒメ「それだけじゃない。平和協定が崩れた最大の要因は我が国が西の国と友好関係にあると各国に示してしまった事だ?」

団長「た、たしかに…いくら西の国の鉱石財源を欲したとしても平和協定下にある国々は野蛮な西の国と交渉など出来なかったでしょうな」

ヒメ「そうだ。西の国と親くなれば同盟間で警戒視され、外されに掛かる。現に我が国がそうなった」

団長「む、むぅぅ…」ポリポリ

ヒメ「だがそれだけの危険を踏まえてなお貿易を成立させた…。しかも西の国から交渉を仕掛けた形でだ?」

ヒメ「…危険を犯させてまで王国にウンと言わせた西の国は高度な外交戦略を用いたかに見える。
それはつまりやりようによっては交渉の余地もあるという認識も少なからず持たれたかもな?」

団長「……な、なるほど」

ヒメ「実際、これまで受けた糾弾は西の国との友好関係を指摘する声だけじゃなかった。
もしかすれば同盟間で最も危惧されていたのは西の鉱石財源を王国に独占される可能性……。
そこに都合よく西の国から各国へ貿易の申し入れが回った。
これは西の鉱石財源に目を付けていた国々からすれば、またとない好機だったんじゃないか…?」ブツブツ

団長「ほ、ほうほう…」

ヒメ「そして同盟間でギクシャクする事を避ける理由付けに合致して王国を更に糾弾し、西の国と王国の印象をすり替えた…。
これで同盟国は平和協定に縛られず、悠々と西の国の貿易を承認する大義が出来たと…こういう事だな?」ペラペラ

団長「(い、いかん!ワシとしたことが、だんだん話に付いていけなくなってきたぞ…)」モヤモヤ
855: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:12:21 ID:Xpa/i5jyug
ヒメ「と、なると…もしかしたら、あの一手で既に我が国は詰んでたのかもな」フゥッ

団長「なっ…!?」ギョギョッ

ヒメ「敵に永遠の命にまつわる真偽を探る時間を与え、同盟間での不信を煽り、選択肢を戦争に絞らせた…」

団長「…!?」

ヒメ「…だとしたらリルラの狙いは最初から西の国と王国を争わせる事だったとも取れる」

団長「おのれ…!やはり…!」ギリッ

ヒメ「まぁ今までと照らし合わせて無理やりこじつけただけだから…真意は読めないけどな」

団長「即刻問い詰め、返答によっては首を跳ねて参りましょうぞ!」ザッ

ヒメ「早まるな、アホ。いつの時代の人間だ、おまえは?」

団長「(な、なんという言われよう…!?)」ガーン

ヒメ「…結局、あいつは何がしたいんだ?」

団長「も、もしや…反旗を翻す気ではござらんか!?陛下を失脚させ、己が王座に着こうと…!」

ヒメ「ないない。的外れもいいとこだ?」フリフリ

団長「んなっ!?」ガガーン

ヒメ「王位に着きたいのに自国を弱らせて強国と衝突させてどうすんだよ?
王になるどころか国ごと身を滅ぼすだけじゃないか?」

団長「で、ではなぜ…!」

ヒメ「あいつが唯一、狼狽えたのは東の国の懐柔くらいか。
それもやけに賛成的だったしな…。何よりあいつは僕に王としての器を強く求めてる?」

ヒメ「野心でもない…。私欲でもない…。じゃあ何の為に間違った方向へ進ませようとする…?」

ヒメ「僕を試しているのか…?それとも見限って、敢えて破滅に導こうと…?そこまで現実味のない人間性だったか…?」グワングワン

ヒメ「何より…新体制で発足した当初は紛れもなく有能で忠誠心も感じ取れた。
いや、忠誠心に関して言えば今でも感じられる…。じゃあなぜ?」グワングワン

団長「へ、陛下…!大丈夫でございますか!?」

ヒメ「うーん…」
856: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:17:56 ID:H6OizUfNzE
ヒメ「そもそもおまえに話したって何も出てこないもんなー」

団長「(サラッと心をえぐられた…!)」ガーン

コンコン コンコン

団長「誰だ?」

「ネバルです!」

団長「ネバル…?」

ヒメ「あぁ、いいぞ。入れ?」

ネバル「失礼しますです!」ガチャッ

団長「(へ、陛下を訪ねてこれるとは思えぬほど垢抜けない男だな?)」シゲシゲ

ネバル「うわっ!?」ビクッ

団長「お初にお目にかかる。ワシは陛下の親衛隊である近衛師団長、ダパーシ・ルフィアスだ」スッ

ネバル「あ、ど、どうも…お噂はかねがね…ごっつい手ですね?」ガッチリ

団長「貴殿は?」パッ

ネバル「お、おいらは名乗るほどの者では…」オロオロ

ヒメ「市民投票から選出された中級役人のネバルだ」

団長「おぉ、そうでしたか?これは失敬…同じ城内におりながら名を尋ねるとはとんだ無礼であった?」ペコッ

ネバル「と、とんでもねぇですだよ!頭なんか下げねぇでけれ!?」アワアワ

ヒメ「で、僕に何か用か?」

ネバル「あ、は、はい!それがですだね…」

ヒメ「……?」
857: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:19:28 ID:Xpa/i5jyug
ネバル「貴族の方々が怒ってまして…我々、役人に圧力をかけてきたです?」

ヒメ「貴族が…?」

ネバル「先日、失脚したお二方が貴族全体に呼び掛けたみたいで…貴族を無下に扱う国王のやり方を非難すると?」

ヒメ「ふーん。それだけか?」

ネバル「え?それだけって…いいですだか?」

ヒメ「あぁ。さしたる問題でもない。無視を決め込め?」

ネバル「で、でも国の予算の半分近くは貴族の財で賄われていて……」アセアセ

ヒメ「大丈夫だ。奴らの扱いもパーティーに出席してだいぶ分かってきた」

ネバル「……?」

ヒメ「爵位を売買出来る制度を廃止する。これで奴らは納得する筈だ」

ネバル「そ、そんな事で…?」

ヒメ「あいつらは自尊心の塊だからな。自分が誰よりも優れてると勘違いしてる。
だが爵位を金で買える制度は貴族の特別さを薄らがせる。あいつらにしてみれば気に入らないだろ?」

ネバル「…そういうものです?」オロオロ

ヒメ「貴族という地位に価値が高まり、自尊心を満たせればいいのさ。
あとはその地位に見合うだけの働きを課してやるだけだ。
それが出来なければ爵位を下げ、働きが認められれば上がっていく。
貴族制度を新たにし、奴らの競争心を利用すれば勝手に働いてくれるだろ。自分の地位を守る為にもな?」

ネバル「は、はぁ…」

ヒメ「やる気のない奴は淘汰される。そろそろあいつらにも責任を持たせないとな?」

ネバル「……」

ヒメ「まぁこれも議会に通して話し合ってもらうから決議は先になるけど…それまでは適当にあしらっておいていいぞ?」

ネバル「わ、分かったです…」シュン

団長「(なんと早い成長を見せるものだ…。即位なされて未だ2年ほどだというのに?)」
858: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:21:16 ID:H6OizUfNzE
ヒメ「話は終わりか?」

ネバル「あ、いや…あの……」モゴモゴ

ヒメ「なんだ、はっきりしろ?」

ネバル「り、リルラ様と何かあったですか?」オドオド

ヒメ「…何かって?」

ネバル「も、揉めてるように見えなくもなくて…」モゴモゴ

ヒメ「何もないさ。あったとしても、おまえが心配しなくていい」

ネバル「で、でも…リルラ様…変な噂があるです」

ヒメ「噂?」

ネバル「庭師のヘレンさんに聞いたですけど…夜中に発光植物の手入れをしてると時折、地下に続く回廊からリルラ様が出てくるのを見る事があると」

ヒメ「なんだと…?」

団長「おかしな話だな?地下には牢屋と宝物庫があるだけだ?
回廊の近辺には使用人達の宿舎しかあるまいに?」

ネバル「関係あるかは分からないですが…前に議会が閉廷した後も軍長を召集して個室で話してたみたいです」

ヒメ「ふーん…」

団長「着々となんらかの準備を進めている訳か…」

ネバル「何もないといいですだが…」

団長「探らせますか?」

ヒメ「あぁ、そうしてみてくれ?」

団長「承知しました」

ネバル「……」モジモジ

ヒメ「ご苦労だったな。下がっていいぞ?」

ネバル「は、はいです…」キュッ

ヒメ「…そんなに不安そうにするな?きっと何もないさ?」ニコッ

ネバル「……」
859: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:24:28 ID:Xpa/i5jyug
ネバル「さ、最後にいいですだか?」

ヒメ「まだあるのか?」

ネバル「へ、陛下は貴族が嫌いですか…?」

ヒメ「? 逆にあんな連中、好きになれるか?」

ネバル「す、好き嫌いはよくない!…っておっ父によく叱られたです。
おいら達が口にしている物は全部、限りある命から頂いたありがたい物だから…感謝して残さず食べなさい、と」モジモジ

ヒメ「いい教えだな。で、それがなんだ?」

ネバル「出過ぎたマネだと分かってるですけど…言わせてくださいです」

ヒメ「……」

ネバル「国民が第一、それは間違ってないです。
でも陛下に付き従って働いてる役人達も…大事な国民だと思うです」モジモジ

ヒメ「……」

ネバル「陛下は貴族の方々が庶民を見下すのを叱ってくれるです。すごく嬉しいです!」

ヒメ「何が言いたいのかまとめろ?」

ネバル「…貴族を好き嫌いする陛下は、庶民を見下す貴族と少しだけ似てる…です。
ひょっとしたらリルラ様との仲も…そういう食い違いがあるかもです」モゴモゴ

ヒメ「……」

ネバル「……」

団長「……」

ネバル「(な、何もおっしゃってくれない…!や、やっぱり怒らせちゃったです…!?)」オソルオソル

ヒメ「…ん、分かった。下がっていい」

ネバル「え?」

ヒメ「聞こえなかったか?下がっていいと言ったんだ?」ジロッ

ネバル「は、はははいぃぃぃ!!!」ダッ

ガチャッ バタンッ!
860: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:26:52 ID:H6OizUfNzE
団長「随分な言われようでしたな?」

ヒメ「…あいつの発言、どう感じた?」

団長「陛下に対してなんたる無礼!ただちに首を跳ね、見せしめに城門前に飾ってくれよう!!」

ヒメ「……」

団長「…とでも申すべきなのでしょうが正直、ワシはあの青年に見込みがあると感じました」

ヒメ「そうか」

団長「下心のない意見、立場を顧みぬ勇気、そしてなにより…本気で陛下を想い、まっすぐな気持ちで向き合おうとしている」

団長「投票で役人の座を勝ち得たそうですが…なるほどまさしく庶民の代表に相応しい?」

ヒメ「おまえもそう思うか」

団長「…どことなくあなたのご友人を思わせる人柄ですな?」

ヒメ「まぁ、あいつほど能天気じゃないけどな」

団長「…陛下は先の発言をどのように感じられたので?」

ヒメ「…そうだな」

団長「……」

ヒメ「僕には足りない物が多すぎる。はたしてこの器に収まり切るのか…ちょっと心配だ」

団長「陛下の器はこれから更に広がりますとも。また新たな成長の兆しが見えましたな?」ニコッ

ヒメ「あぁ…」

団長「ではリルラの不審な行動について調査を進めてまいりましょう」

ヒメ「…待て」

団長「は…?」

ヒメ「他に調査してもらいたい事がある。頼めるか?」

団長「…無論にござる。何なりとお申し付けくだされ?」
861: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:30:06 ID:H6OizUfNzE
―――王国軍の砦―――

フィクサー「これはこれはルフィアス団長。わざわざ明朝に我が居城まで足を運ばれるとは珍しい事もあったものだ?」

団長「突然の訪問にも関わらず応じていただき、恐れ入ります。貴殿に一つ確認したい事がございましてな」

フィクサー「確認?」

団長「ここ最近、軍備を整えておられるとか?」

フィクサー「えぇ、いかにも?」

団長「これはどういった事態に備えてのものか尋ねたい?」

フィクサー「他国による不法侵入、または不当な侵略行為に対する制裁措置、及び国内に起きるであろう多様な問題への配慮、と言いましょうか」

団長「では決して西の国に向けたものではないと?」

フィクサー「そうですね。ある一点に捉えた考えは致しておりません」

団長「なるほど…」

フィクサー「とは言うものの…いつ何が起きるとも限りません。此度に備わった武力の矛先が西の国となる可能性も無いとは言い切れないでしょうね」

団長「しかしそれは仕掛けられた場合であろう?」

フィクサー「西の国の出方次第と考えております」

団長「?」

フィクサー「もしもあちらに争う意思があると見受ければ…我々、軍部を取り仕切る人間は国の守護者として相応の働きを民に示さねばなりません」

団長「むぅ…それは全くその通りだが?」

フィクサー「我々は現制度におきまして、その指揮権をリルラ政務官に預けております」

団長「…政務官の指示いかんによっては侵攻も辞さないということか?」

フィクサー「そうする場合には政務官の方から陛下の許諾を得ていただく必要がございますがね」

団長「では陛下の意思が確固たるものであれば問題が拡大化する心配はないのだな?」

フィクサー「断言はしかねます」

団長「なぜだ?」

フィクサー「降りかかる火の粉は払い、燃えいずる火の気は鎮めねばなりますまい?
軍部の長には…独自に自衛を働かせる権限がございますのでね?」
862: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:32:56 ID:H6OizUfNzE
フィクサー「確認は以上でよろしいか?」

団長「うむ…フィクサー殿は確かに優秀な軍師だ」

フィクサー「? 光栄にございます…?」

団長「だが君が勝ち取ってきた名誉は所詮、盤上の競技に過ぎない」

フィクサー「……」

団長「戦争とは始めれば二度とやり直せない事実だ。認識を誤ってはならん」

フィクサー「お言葉ですが…戦争においての無知はお互い様でしょう?」

団長「まぁそうだが…あくまで忠告として受け止めてほしい」

フィクサー「承りました。肝に銘じておきましょう」

団長「…では」ガタッ

フィクサー「…ルフィアス殿、僭越ながら、わたしからも一つ忠告が?」

団長「なんだ?」

フィクサー「貴方とわたしでは役職が異なる。
次回から、こういった無用な圧力は越権行為と見なし、報告に上げさせていただくので…くれぐれも慎重に?」

団長「…今のやりとりの何が越権行為だと言うのだ?」ギロッ

フィクサー「不快に思われたなら謝罪しましょう。しかし…わたしは時間の消費を何より嫌っておりましてね」

団長「ほう?ワシとの話は無駄な時間だったか?」ピキィッ

フィクサー「そうは申しておりませんが…なにぶん事前の伺いもなく訪れてくださったもので本日の予定を大幅に押してしまったのですよ」

団長「ふん…。それは悪いことをしたな?」

フィクサー「いえ、次回からお願いします?」

団長「……失礼した」ガチャッ

バタンッ
863: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:34:53 ID:Xpa/i5jyug
副官「失礼します。南の領土より参られたルウェーク領主殿とドレッド軍長が総軍長の不在に痺れを切らしておりますが…」

フィクサー「そうか」ガタッ

副官「ところで…先ほどルフィアス団長がお越しになられたそうですが一体、何用で?」

フィクサー「雑音を散らされた…。聞く耳を持つのも一苦労だな」

副官「熱い御仁であると伺っておりますが、まさしくその通りでしたか?」

フィクサー「加齢臭にまみれた子守り好きな情熱家といったところか。古参であるだけに扱いに困る人物だ」

副官「ぷっ…くく!総軍長殿も口が過ぎるのでは…?」ニヤニヤ

フィクサー「あの手の輩は易々と指揮下に収まりそうにないな。
その日が来たら真っ先に死地へ突撃させてやるか…」トントン

副官「くく…聞かなかったことにしておきましょうかね」ニヤニヤ

フィクサー「…兵の訓練は進んでいるか?」

副官「えぇ、えぇ、そりゃもうメキメキと?」

フィクサー「…なら、そろそろか。国境付近の貿易商団連にそれとなく流せ」

副官「東の辺境ミラルド…でしたっけな?しかしよろしいので?どなたかの指示を待たずに実行してしまっても?」

フィクサー「この程度の問題で頭を悩ませる無能な役人の意見が必要か?」

副官「おやおや、今日は耳が遠いようだ?」ホジホジ

フィクサー「…喰わせ者め?」ニヤッ

副官「その商団連筆頭金主であるルウェーク卿をお待たせしてしまってますし急がれた方がよろしいのでは?」ニヤニヤ

フィクサー「そうだな。行くぞ…」スタスタ

副官「えぇ、えぇ、お供しますとも」スタスタ
864: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:37:06 ID:H6OizUfNzE
―――ミラルドの町(孤児院)―――

ミシング「はーい!ちゅうもーく!」

全員「???」

ミシング「いきなりだけど道徳のお勉強をしまーす!」

ルーボイ「えー!?勉強〜!?」ブーブー

ミシング「はい、ブー垂れない!それじゃ問題、ここに7個のチョコレートがあります!
でも子供たちは8人!このままでは1人だけ食べられません!
さて、8人で仲良くおやつを分けるにはどうしたらいいでしょーか?」ジャジャン

母「いい問題ですわね?」ニコニコ

ミシング「でしょでしょー!もうすんごい考えたんですからー?」

ルーボイ「よーし!んじゃどうするか決めよーぜ?」

孤児1「はーい!」

ルーボイ「おっ!なんか思い付いたか!」

孤児1「たべたーい!」

ルーボイ「」ガクンッ

ラム「ルーボイが食べなければいいんじゃない?そしたら7人で1個ずつ分けれるから?(論破)」

ルーボイ「はぁ!?なんで俺だけなんだよぉ!?」ガァーッ

ラム「譲る事と我慢する事、道徳的な二つの答えが出たよ?やったね、ルーボイ!」グッジョブ

ルーボイ「なんにもやってねぇよ!俺ばっか損じゃんか!?」

ラム「へー…損得で考えるんだ?君もまだまだだね?」クスッ

ルーボイ「うるせぇ!屁理屈言うなし!?俺だけ食えないなんてやだからな!?」プンスカ

カロル「うん。みんなで食べた方がおいしいもんね!」ニコニコ

ホビット2「そうですよ!平等に分けましょう!」

ルーボイ「へへーん!どうだ、バーカ!みんなもそうだってよ?」ドヤァッ

ラム「ま、なんでもいいけど早く決めてよね?」プイッ

ルーボイ「くっ…ムカつく!」イライラ
865: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:38:52 ID:Xpa/i5jyug
ナラ「はんぶんこ…するのは?」

ルーボイ「そしたら半分こしたヤツが少なくなんじゃん」

ホビット2「じゃあみんなのをちょこっとずつ分けましょう!」

ルーボイ「7個のおやつを一口ずつだと…なんかそいつだけいっぱい食ってねーか?」

ラム「さっきから聞いてるとセコいよね、君って?誰の方が多いとか少ないとか…?」シラー

ルーボイ「う、うるせぇな!?ふこーへいはダメだから言ってんだよ!?」

ホビット3「じゃあルーボイさんも案を出してくださいよー?」

ルーボイ「ん?うーん…じゃんけん!」

ズルッ バタバタ

ルーボイ「なんでずっこけんだし!?」ビックリ

ホビット3「そ、それだと結局、負けた子が食べれなくて不公平じゃないですかー!」

ルーボイ「勝負だからいいんだよ!」

ホビット2「そんな理不尽な……」ハァッ
866: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:39:53 ID:H6OizUfNzE
カロル「ねぇねぇ、ミシングさんとお母さまとマルクもいるから11人で分けようよ!」

ルーボイ「なんでだよ!?増えたら、もっとめんどくせーだろ!?」

カロル「でもみんなで食べた方がおいしいよ?」ニコッ

ルーボイ「そういうことじゃねーっつの!?」

母「ふふ。あたし達は平気だからみんなで分けてちょうだい?」クスクス

ミシング「そうそう!子供たちに食べてほしくて買ったんだからさ!」ニコニコ

カロル「マルクはいいの?」

マルク「わんっわんっ!」コクコク

カロル「そっか!ありがとう?」ナデリ

ルーボイ「(わんっしか言ってねーだろ)」シラー

孤児1「はやくたべたいー!」

孤児2「ぼくもー!」

ルーボイ「だーかーら!みんなでどうやって分けるか決めんだろ!?」

ナラ「あ、そうだ!」ピコン

ルーボイ「ん?なんだよ?」

ナラ「チョコレートだから、とかして、かためたら8つにできるよ?」

ルーボイ「おっ!そっか!そうすりゃこーへいだぜ!」

カロル「ナラすごーい!」パチパチ

孤児1「ナラねーちゃん、あたまいいー!」キャッキャッ

ラム「じゃあ解決だね。ミシングさん、どう?」

ミシング「100点満点!花丸あげちゃう!」グッジョブ

母「料理をする女の子ならではの発想ね。とてもいい答えよ?」ニコッ

ナラ「えへへ…」テレッ
867: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:41:31 ID:Xpa/i5jyug
ミシング「でもね、このお勉強で一番大事なのは答えよりもみんなで話し合って考えることなの!」

ルーボイ「はぁ?なんでだよ、答え出なきゃ意味ねーじゃん!」

ミシング「どうしたら平等になるか、その答えを出すには8人、全員の意思を尊重して考えなきゃいけません!
誰か一人でも納得しなかったり、ズルしちゃったら全部ダメになっちゃうもんね!」

ホビット2「たしかにそうですね!」

ミシング「でしょー?で、あたしの独断と偏見で答え合わせしちゃうとね?
まずみんなの意見を聞こうとしたルーボイくん!大正解!」

ルーボイ「へへ!」テレッ

ミシング「でもじゃんけんはないよねー。あと怒りすぎ。ケチ臭い。とりあえず80点かにゃー」

ルーボイ「」ズルッ

ミシング「お次におチビちゃんたち!正直でよろしい!100点!」

孤児1、2「わーい!100てーん!」キャッキャッ

ミシング「ナラちゃんも積極的に意見を出したし優しさ抜群だったよねー!100点!」

ナラ「そ、そう…かな?」テレッ

ミシング「ホビットの二人も間違ってる事は間違ってるって言えたよね!
それって勇気がいることだよ?というわけで100点!」

ホビット2、3「……!」モジモジ

ミシング「カロルくん、ちょっと意見はズレてたけど他の人にも気配りが出来てたね!
自分たちだけじゃなくて、そこにいるみんなで分けようっていう発想はあなたらしくて良かったよん?100点!」

カロル「やったー!」バンザイ

ミシング「ラムくんもいいボケだったよー!100点!」

ラム「やったー」ボーヨミ

ルーボイ「やったーじゃねーっつの!」プンスカ

ミシング「とにかくみんなよく出来ました!お勉強はおしまい!仲良くおやつを食べましょー!」

ワーイワーイ!

母「ふふ。道徳心を学んで深め合える良いお勉強でしたわね?」ニコニコ

ミシング「ま、まぁー…?あははのは!」アセアセ

ミシング「(本当はおやつ1個買い忘れちゃっただけなんだけど…てへっ)」ペロッ
868: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:56:34 ID:H6OizUfNzE
〜〜〜夜〜〜〜

―――共用部屋―――

ミシング「じゃあ灯り消すよー!」

ハーイ!!

フッ シュッ………

ミシング「夜更かししてたらお仕置きオバケのお夜食にしちゃうからねー?じゃ、おやすみ〜!」

バタンッ

ルーボイ「お、おぉぉオバケなんていねーし!オバケなんていねーし!」ガクガクブルブル

孤児1「オバケこわーい…」ブルブル

孤児2「ママー…」

ラム「なにが怖いんだろうね?触れもしないし、精々脅かすだけでしょ?無視すればいいじゃん?」

ナラ「…そういうことじゃないとおもう」

孤児1「…こわいもん」

カロル「オバケがいたら、ともだちになりたいね?」ワクワク

ラム「それもどうなの…?」

ルーボイ「なかよくなんかなれねーよ!死んでんだぞ!」

カロル「? どうして?」

ルーボイ「はぁ?こ、怖いだろ!死んでるヤツが出てきたら!」

ナラ「やっぱりこわいんだ?」

ルーボイ「こ、ここ怖くねーし!?」
869: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 22:58:31 ID:Xpa/i5jyug
カロル「オバケだって生きてたんでしょ?どうして死んじゃったら怖くなるの?」

ルーボイ「はぁ…!?お、おどかしたりすんからだろ!」ブルッ

カロル「いたずら好きなんだよ。一緒に遊んだら楽しそうじゃない?」ニコニコ

ルーボイ「ふ、不思議な力で物を動かしたりすんだぞ!?」

カロル「気付いてほしいんじゃないかな。誰にも見えないのって寂しいもんね?」ニコニコ

ルーボイ「こ、子供を食べるんだぞ!」

カロル「へ?オバケなのにお腹空くの?」キョトン

ルーボイ「し、知らねーよ!」

カロル「じゃあ食べないんじゃない?」ニコニコ

ルーボイ「なんでそんなオバケの味方すんだよ!?」

カロル「…だってボクがオバケになったら、きっと同じことしちゃうもの」

ルーボイ「はぁ…!?」

カロル「見えなくても触れなくても、ここにいるよって知っててほしいんだ?」

ルーボイ「意味わかんねーし…」ブツブツ

カロル「それに…ボクがオバケになっても、みんなに嫌われたくないな。
生きてた時みたいに仲良くしてほしいって思うよ?」

ルーボイ「無理だっつの。見えねぇし触れねぇんだから?」
870: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 23:02:29 ID:H6OizUfNzE
カロル「ふふ。じゃあさ、ここにいるみんながオバケになっても、またこうやってお話しよ?」ニコニコ

全員「?」キョトン

カロル「おんなじオバケなら、きっと見えるし触れるよ。
それなら生きてる人を脅かさなくても寂しくならないもんね?」ニコニコ

ルーボイ「っ…こえー話すんなよ!」

ラム「そう?僕は賛成だけど?」

ナラ「わたしも…しんじゃっても…みんながいてくれたら、それでいい…かな」ニコッ

ルーボイ「し、死ぬとかやめろよ。こえーな…」

孤児1「いんちょーもママもミシングねえさんもオバケになるの?」

カロル「うん。みんな、そばにいてくれるよ」ニコッ

孤児1「えへへ〜…」ニマァァ

孤児2「ぼく、オバケでいいやー…」ウトウト

ルーボイ「なんでオバケが怖い話からオバケになる話になってんだよ…」

カロル「えへへ…わかんない?」ニコニコ

ルーボイ「なんだ、そりゃ」

ラム「僕らはここしか居場所がないしね。オバケになって住み着くのもありかもよ?」

ナラ「ずーっといっしょがいいよ」ニコニコ

カロル「ねー」ニコニコ

ルーボイ「全然わかんねぇ…」
871: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 23:04:21 ID:H6OizUfNzE
ガチャッ

布のオバケ「」ヌラリ

全員「!?」バッ

布のオバケ「寝ない子だれだー!がおー!?」バサッ

ルーボイ「ギャアアアアア!!!!?」ビクビクビクゥッ

布のオバケ「寝ない子は食べ散らかしてやるー!」ドタバタ

ワァーワァーキャーキャー!

ラム「…白い布なんか被ってなにしてんの?ミシング姉さん?」

布のオバケ「っ…」ギクッ

カロル「ミシングさん…なの?」オソルオソル

布のオバケ「ちがいまーす。お仕置きオバケでーす」ルンタカタッタ

ルーボイ「おどかすんじゃねぇよ!?」ガバッ

布のオバケ「寝ない子はお尻ぺんぺんの刑に処すのだー!がおー!」ガシッ

ルーボイ「ぎゃあー!やめろよー!?」アワアワ

孤児1「ルーボイ兄ちゃん!?」

ルーボイ「うわー!?バカ!やめろ!みんなにケツ見えちゃうだろー!?」ジタバタ

ナラ「っ〜〜〜!」カァァ

布のオバケ「いっくよー!?」ブンッ

バシンッバシンッ

イテェェェェェェ!! ゴメンナサーイ!!

アハハハハハハ!
872: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/23(木) 23:06:25 ID:Xpa/i5jyug
布のオバケ「はい。お尻が真っ赤にならないように寝ましょうね!ではさらばじゃ!」タタタッ

ルーボイ「なんで俺だけ…」ヒリヒリ

ズルッ ドタッ

ラム「あ、こけた」

ミシング「やーん!裾踏んじゃったー!」ムクッ

孤児1「ミシングねえちゃんだー!」

孤児2「オバケじゃなーい!」

ミシング「げげっ!バレちゃった!とにかくみんな寝るの!分かった?」

ハーイ

ミシング「はい、よいお返事!おやすみ〜!」ガチャッ

バタンッ

ナラ「ねよっか?」

ラム「そうだね。今度は本気で叱られそうだし…」

ルーボイ「ケツいてぇ…」シクシク

孤児1「おやすみなさーい」モゾモゾ

孤児2「んぅ〜…ねむーい」ゴロン

カロル「…おやすみなさい」

シーン

カロル「(今日のおやつみたいにみんなで仲良く分け合えたら、あの旅で会ったみんなも悲しまなくて済んだのかな…)」

カロル「(…ここはなくしたくないなぁ…。みんなといたい…。ずっと)」ウトウト

カロル「(こんな日が続きますように……)」スヤスヤ
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うpろだ
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