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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】
[8] -25 -50 

1: ゆったりペースになりますが! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:09:52 ID:N4jwCkModw
1スレ

少年「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10

2スレ

カロル「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10

―――あらすじ―――

それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました

しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました

そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです

戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました

布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました

それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします


874: 支援ありがとうございます! ◆WEmWDvOgzo:2015/7/24(金) 22:59:30 ID:ADKExpv6rc
>>873
ミシング「やーん!なにそれー!本気にしちゃうじゃーん!やめてよ、もーう!?」バシバシッ

宣教師「ですから何故、私をバシバシ叩くんですか…!」イライラ

ミシング「あたしっていつもスレ終盤になるとモテ期到来なんだよねー!
後からジワジワきちゃうタイプだったりして?」キャピッ

宣教師「はいはい、よかったですね!あなたも団長さんも読者の方に好かれてて!私なんて未だに名前すらもらえないのに…」ブツブツ

ミシング「キャハハハ!宣教師ってば準主人公なのに名前ないんだもんね!なんでだろうねー?」ケラケラ

宣教師「知りませんよ!!私と話すより勇気を出して告白してくださった873さんにお返事を返したらどうですか!?」

ミシング「いいよー!結婚しちゃおっ!」アッケラカン

宣教師「(か、軽い…)」ガーン

ミシング「なーんちゃって!あたし年上のダンディーなおじさまじゃなきゃダメなんだー?そーゆーわけでごめんなさい!」ペコッ

宣教師「(そ、そういえばミシングは趣味が偏ってましたっけ)」

ミシング「年上好きの私より年下趣味で少年大好きな宣教師の方が可能性あるかもよー!じゃ、バイバイ!」ダダダッ

宣教師「だ、誰が少年大好きですか!?待ちなさい!?」ダダダッ

ワァーワァーギャーギャー

ミシング「ごめんごめん、ゆるしてー……あ、言い忘れちゃうとこだった!支援ありがとね!」フリフリ

宣教師「あなたという人はいつもいつも……ハッ!す、すみません。
これからもあたたかい目で見守っていただけたら幸いです」ペコリ

『※このやりとりは本編とは無関係です』
875: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:20:39 ID:kGLpDrdDWs
〜〜〜数日後〜〜〜

―――城(王立図書館)―――

ヒメ「」ペラッ

ヒメ「…」パタンッ

学者「お探しの物はございましたか?」

ヒメ「…歴史書はこれで全部か?」

学者「陛下が未読の物は全てご用意させていただきました」

ヒメ「…ふーん。そうか」

学者「お探しの資料がないのでしたら国内の書を管理する機関にお問い合わせしましょうか?」

ヒメ「うん。頼む」

学者「かしこまりました…」

ヒメ「すまないな」スクッ

学者「いえ…あっ!?何をなさって…!?」ビクッ

ヒメ「ん?」スッ

学者「へ、陛下自ら書棚に戻さずとも我々がしまいますので!?」アタフタ

ヒメ「子供扱いはよせ。自分で出来る事は自分でする」スッ

学者「そ、そうではなく国王陛下にそんな事をさせては我々がお叱りを受けまするので!?」アタフタ

ヒメ「……」ジロッ

学者「は…!?」

ヒメ「国王ともあろう者が自分で読んだ本の始末もろくにせず、散らかし放題で家臣任せにする品性のねじ曲がったお坊っちゃんであると囁かれても…僕に何もさせないのか?」ムスッ

学者「い、いえ…そのような…?」ブルッ

ヒメ「じゃあ咎めるな」スッ

学者「……」ポカーン

ヒメ「よし…これで全部だな。あ、巻数順に並べたけどよかったか?」スッ

学者「は、はい…問題ありません」オロオロ
876: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:23:08 ID:rR12EivkCY
ヒメ「ところで…ここに置いてある文献はどこにも出回ってない代物なんだよな?」

学者「は、はい!他にない貴重な書物ですので原本を厳重に保管しております!」

ヒメ「そうか…」

学者「そ、それが何か…?」

ヒメ「…ここの書物の写しを作成させる事は可能か?」

学者「は、はぁ…可能ですが全ての物を書き写していくとなると…広い作業場と豊富な人材、主に紙やインク等の大量の資材もそうですし、何より膨大な時間を要するかと?」

ヒメ「ふーん。ならおまえを責任者に任命するから書物の写しを作成してくれ。
必要経費は国が負担するし、なるべく広くて活動的な場所を用意させる。
人材は各斡旋所に募集を掛けて、教団にも一部の難民、ホビットに掛け合うよう協力要請を出すから」ペラペラ

学者「お、おおお待ちください!?」

ヒメ「…なんだ?」

学者「なぜ突然、そのような考えに踏み切ったのですか!?」

ヒメ「これだけ貴重で内容の厚い書物をここに眠らせておくのはもったいないだろ。写しを大量に作って全国に配布するべきだ」

学者「はいぃぃい!!?」

ヒメ「ここには医学書も学術書もあるし、政治・経済・宗教・偉人伝と豊富な種類の教養が備わってる。
これだけの実用性ある書物が世に出れば必ず人々の役に立つ筈だ」

学者「し、しかし世界に一冊しかない貴重な書物を写して、しかも衆人環視の目に晒すなど恐れ多い…!?」

ヒメ「世界に一冊しかないのと書物の価値は関係ないだろ。大事なのは内容だ」

学者「で、ですが…」

ヒメ「読まれない本に価値なんかない。多くの人の目に触れて初めて価値が見いだされるんだ」

学者「くっ……」

ヒメ「文化は皆で共有してこそ成り立つものだ。
ここに置き続けて読めなくなるより広く行き渡らせた方が筆者も喜ばしいと思うけどな?」

学者「か、かしこまりました…」

ヒメ「じゃあ任せたぞ?」スタスタ

学者「(噂には聞いていたが、なるほど変わったお方だ…。先代は城内の管理どころか単独行動さえ取らなかったが…)」マジマジ
877: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:25:33 ID:rR12EivkCY
―――公務室―――

ヒメ「……」ペラッ

ヒメ「(この国の歴史のほとんどが闇に葬られ、空白の章を残している。
きっと"終わらない争い"の事実を隠し通す為に関連する史実はまとめて処分して改竄させられたんだろうな…)」

ヒメ「(まるで…その時代を生きた人達はいなかったかのように)」シュン

ヒメ「(…文化を保持していくのも僕らの大切な役目だ。
王国が未来を生きていく為にも……今を生きる人達の存在を証明しておかないと)」

ヒメ「(ネバルの言う事は最もだな。僕はなんでも決め付けすぎる。
国を守っていくには…過去、現在、未来を隅々まで見渡せる広い眼が必要だ)」

ヒメ「(王という重い立場を引き受けた以上は国民達に『こんな時代に生まれなきゃよかった』なんて…絶対に言わせたくない)」グッ

コンコン コンコン

ヒメ「入れ」ペラッ

団長「失礼します!陛下!」ガチャッ

ヒメ「早かったな」パタンッ

団長「ハッハッ!これでも馬術には覚えがござるので!」

ヒメ「武においても王国随一、剣においては天下一、馬を走らせても超一流か?
これで知に長けていれば言うこと無しなんだけどな?」ジトッ

団長「(…す、素直にお褒めにはなられないのですな)」ガクッ

ヒメ「ま、それでも僕にはもったいないくらい誇れる配下だ?」ニコッ

団長「へ、陛下ぁぁ…!」ウルウル

ヒメ「あぁ、泣くなよ?おまえの泣き顔を見ると心底うんざりするから?」シラー

団長「(やはり最後は落とされるのか…!?)」ガーン
878: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:28:26 ID:XBpzw2ybEc
団長「陛下に頼まれた通り、軍部の長に問い合わせてまいりましたぞ!」

ヒメ「フィクサーだったっけな?僕はあまり関わりがないけど…政務官と繋がりが深いんだろ?」

団長「はっ…おそらく政務官の目論みに加担しているものと思われます」

ヒメ「ふーん…他にもいるのか?」

団長「今のところ城内には際立って不審な動きを見せる者はおりません」

ヒメ「そうか…」

団長「陛下の方に奴からの接触はございましたか?」

ヒメ「いや、あいつはしばらく王都を離れてるから大丈夫だ」

団長「では…地下に探りを入れてみますか?」

ヒメ「そうだな…。内輪揉めもいい加減煙たいし、そろそろ決着を着けるか」

団長「ははっ!!」
879: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:31:01 ID:XBpzw2ybEc
〜〜〜夕方〜〜〜

―――城(地下牢獄)―――

カツンカツン カツンカツン

アントリア「……?」

見張り1「こ、こちらになります。暗いのでお足元にお気をつけくださいませ…」ビクビク

ヒメ「ケホッ…こんな所だったのか。いやに埃臭いし、狭苦しくて不気味だな?身体が全く受け付けないぞ…!」ムズムズ

団長「罪人の檻なのですから当然にござる。なるべく長居は無用ですな」

アントリア「おや、これは珍しい来客だ…?」

ヒメ「ふん…二度と会う事はないと思ってたけどな?」ジロッ

アントリア「国王自ら罪人の食事を運びに来てくれたのかな。なんと慈悲深い?」

ヒメ「……」

団長「こやつ…!陛下に対してなんたる無礼…!」

アントリア「クックッ…いいものだね。反応が返ってくるというのは?
もう長いこと言葉を発してこなかったが…やはり会話は心が躍るものだよ」クスクス

ヒメ「白々しい芝居はやめろ。腹黒い道化師が?」ジロッ

アントリア「…なんとも手厳しい?」

ヒメ「(こいつ…!)」ギリッ
880: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:32:29 ID:rR12EivkCY
団長「貴様、性懲りもなく、またよからぬ企てを謀っておるな!?」カッ

アントリア「企て…なんの事だろうか?」

団長「調べは付いているのだぞ。コソコソと政務官に接触しおって…!」

アントリア「ハハハ…言い掛かりはよさないか?
このような地下に封じ込められた身に今さら何が出来ると言うのだね?」クスクス

団長「しらばっくれると承知せんぞ!?」ズイッ

アントリア「…よく見たまえよ?」ジャラッ

団長「……!?」

アントリア「か細く萎びた四肢に繋がれた重く冷たい鉛の枷…柔く脆い首に括られた分厚い荒縄……」ギシッ

アントリア「一切の挙動も許されぬ状況下で手厚く保護され、強制的に生かされる哀れな老人の気持ちなど…。
若さに溢れ、眩いばかりの栄光に照らされた国王陛下は考えた事すらないだろう…?」

ヒメ「考える気にもならないな?おまえのしてきた事を思えば…まだまだ生ぬるい!」キッ

アントリア「残酷だねぇ…。君のお父上はいくらか情を残しておられたが…?」

ヒメ「おまえが父上を語るな!?」ガッ

アントリア「おぉこわい?今にも喉元を貫かれそうだ?」クスッ

ヒメ「…そうやってやり過ごす気なら、それでいいさ?
こっちもおまえになんか最初から何も期待してない?」

アントリア「ふふ…」ニヤリ
881: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:35:03 ID:XBpzw2ybEc
団長「おい、隣の独房を解放しろ」

見張り1「は、はい!只今!」ジャラッ

アントリア「……?」

カチャカチャ パキンッ

見張り1「で、では…開けます!」ガッ

ギィィィィィイイイ

アントリア「(あの部屋は……)」

初老の女「」ダラァァァァン

団長「ふん、ベルを鳴らして叩き起こせ」

見張り1「はっ!」ガンッガンッ

初老の女「ん……うぅ」ヨロッ

ヒメ「団長、ランタンの灯りをそいつに向けろ」

団長「はっ!」パッ

サァァァァァァァ

初老の女「ひぃっ!?まぶしっ……」キュッ

ヒメ「(やつれたな…。髪が真っ白に変色して抜け落ちた毛が床に散乱してる…。
骨の突っ張った皮一枚の身体…肩幅も狭まって囚人服の襟がずり落ちてる…。まるで生きる亡者だ)」

初老の女「だ…れ?ひぃぃ……し、し、しけ…い?し、ししし死にたくなあいぃぃぃぃ…!!」ガタガタ

団長「騒ぐな!貴様に聞きたい事がある!?」

初老の女「ひゃっ…ひゃっ!ウヒャアアアア!!いやだぁあああ!!」ジャラジャラ

団長「ちっ…これではラチがあかん!」イラッ
882: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:36:11 ID:XBpzw2ybEc
ヒメ「アリアス!」

初老の女(アリアス)「」ビクッ

ヒメ「ここから出たいか?」

アリアス「あ、あぁうっ…あふぅぅうう!!」コクコクコクコク

ヒメ「それなら僕らの質問に偽る事なく答えろ」

アリアス「あた…し…出してぇ…!」ウルッ

ヒメ「アントリアはここで誰と何を話していた?」

アリアス「だじでょぉぉお!!!」ガシャンガシャン

ヒメ「答えられないのか!?」

アリアス「ダセェェエエエエイイィィアアアヤァァァイ!!!!」ガシャンガシャン

ヒメ「……」

団長「こ、これでは話になりませんな…」アセアセ

アントリア「クックッ…気は済んだかな?」ニヤニヤ

団長「黙れぃっ!!」カッ

ヒメ「…拘束を解いてやれ」

団長「は!?」

見張り1「よ、よろしいのですか!?激しく暴れてますが…!?」

ヒメ「多少はもがくだろうが死人同然の中年女だ。何もできないさ」

見張り1「わ、分かりました…」

アントリア「……?」
883: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:37:38 ID:rR12EivkCY
〜〜〜夜〜〜〜

―――王宮(広間)―――

バクバク ガツガツ ムシャムシャ

給仕1「……」アゼン

給仕2「うわぁ……」ドンビキ

給仕3「うっ…」ウプッ

アリアス「ぐふぅ…!ウゥゥゥ…!」ギロッ

団長「そ、そうがっつかんでも誰も奪いはせん?」アセアセ

アリアス「ぶっ…ングッングッ」ジュルルルル

ヒメ「追加を寄越せ?」

給仕1「は、はい!只今お持ちします!!」ガラガラ

給仕2「た、食べ終えたお皿を下げさせていただきますね…?」ビクビク

アリアス「グァアアア!!」シャッ

給仕2「いっ…!?」サッ

団長「こ、こら!?引っ掻くな!?食器を片付けようとしただけだ!?」

アリアス「ふぅ…!ふぅ…!」ワナワナ

ヒメ「構わないから空の皿に料理を重ねろ」

給仕3「か、かしこまりました…」ビクビク

ヒメ「今日から、この女の身の回りに付いて世話してやってくれ」

侍女1「は、はい…」

侍女2「分かりました…」オロオロ

侍女3「お任せください!」シャキッ
884: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:41:04 ID:rR12EivkCY
―――宮廷(大浴場)―――

ザァァァァァアアア

侍女1「お、お身体を洗わせていただきますぅ…」スッ

アリアス「……」ボーッ

侍女2「わ、私たちだけで大丈夫でしょうか…?」ビクビク

侍女3「手早く済ませて浴槽に放り込んじゃいましょ…?何されるか分かったもんじゃない…!」ブルブル

ゴシゴシ シャワシャワ

アリアス「あっく…!」ズキンッ

侍女1「ひっ!?」サッ

侍女2「い、痛かったですか!?」

侍女3「構わないから続けるわよ!」ゴシゴシ

アリアス「うぅぅぅ……」ボーッ

侍女1「……!」

侍女2「へ、平気そうですね。続けましょうか」

侍女3「すごいアカ?泡がまっ茶色じゃない。汚いわね?なんで私たちがこんな女の世話なんか…!」ブツクサ

アリアス「」ボーッ
885: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:44:14 ID:rR12EivkCY
―――客間―――

アリアス「あぁぁぁうぅぅぅ〜〜………」ファサッ

侍女1「ほ、本当にいいのでしょうかぁ?拘束も無しに寝かせてしまってぇ……」

侍女2「食事中もさんざん暴れた上に嘔吐するまで食べてたって聞くし怖いわ?」ブルブル

侍女3「…あぁやだやだ!汚ならしい!」

ジワァァァァァァァ

侍女1「え?毛布が湿って……」

侍女2「くさっ!」

侍女3「ま、まさか漏らしたの!?」

アリアス「えぅぅううわぁぁあ」モゾモゾ

侍女1「あぁ!だ、大丈夫ですかぁ?すぐに替えの毛布と寝間着をご用意しますからねぇ?」バサッ

侍女2「ベッドもびしょびしょ…別の部屋を用意しないと…」

侍女3「はぁ〜!やだやだ!陛下の頼みじゃなかったら、とてもじゃないけど出来ないわよ!こんな汚い"おばさん"の世話なんて!?」

アリアス「おば……さん?」ピクッ

侍女1「はーい、一旦ベッドから出ましょうねぇ!自分で立てますかぁ?」ガシッ

侍女2「非力な私たちが掴んでも折れそうな身体だし慎重に支えないと…」ガシッ

侍女3「あたしは嫌よ!あんな地下で2年間も埃被ってた"お漏らしババア"なんかバッチくて触れやしない!?」

アリアス「ば、ば…あ」ピクッピクッ

侍女1「そう言わずに手伝ってくださいよぉ」

侍女2「そうですよ。私たちだって我慢してるんですから?」

侍女3「じゃあもうそのまま小水まみれのベッドに寝かしときなさいよ!臭いしベタつくし気持ち悪いのよ!」

侍女1「そんなことしたら陛下に叱られますぅ」

侍女2「それにこれは私たちの評価を上げる絶好の機会だっておっしゃったのは貴女じゃないですか?」

侍女3「そ、そりゃね?普段の陛下は隙がないし、ろくにお世話もさせてもらえないから…お近付きになるには良い機会だと言いましたけれど…」モジモジ

侍女1「(要するに玉の輿狙いでしょ)」シラー

侍女2「(陛下があんたなんかに振り向く訳ないじゃないのよ。身の程知らず…)」シラー
886: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:46:10 ID:rR12EivkCY
侍女3「なによ、その目は?」ギロッ

侍女1「い、いえぇ…べつに?」アセアセ

侍女2「なんでも?」

アリアス「……!?」ブチブチィッ

侍女1「ほえ…!?」ビクッ

侍女2「!?」ギョギョッ

侍女3「は?なによ?」

アリアス「…ぇうぐ…!!」ギリッ

侍女1「お、怒ってるぅ!?」パッ

侍女2「こわっ!」パッ

サササッ

侍女3「あ、あんたたち!?」

アリアス「」ジリッジリッ

侍女3「こ、来ないで!叫ぶわよ!?」ズザザッ

アリアス「」ジリッジリッ

侍女3「え、衛兵さ……」

アリアス「」バッ ガシッ

侍女3「ギャーッ!?」ギョギョッ

ギャーギャー ジタバタ

侍女1「た、大変…!衛兵さん達を呼んでくるぅ!」ダッ

侍女2「わ、私も!」ダッ

侍女3「あ、あんたたち!?たすけ……いだぁっ!?噛みつかれたぁ!?」ジタバタ

アリアス「あえんやあいあよ、おうふえあぁ!?」ガブカブ

イヤァァァァァァァ!!
887: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:47:27 ID:XBpzw2ybEc
〜〜〜1週間後〜〜〜

ガチャッ ガラガラ

侍女1「は、はーいぃ…お食事お持ちしましたよぉ?起きてますかぁ?」オソルオソル

アリアス「……」

侍女1「お、おはようございますぅ。置いておきますねぇ」ビクビク

コトッ コトッ

アリアス「……」

侍女1「…で、では失礼しま……」スッ

アリアス「」ツツー

侍女1「え!?」ギョギョッ

アリアス「ふっ…く……」ポロポロ

侍女1「(な、なになに?なに!なんなの!?)」アワアワ

アリアス「っ…なんでも、ないわよ!」グシッ

侍女1「喋ったぁ!?」

アリアス「はぁ…?喋って何が悪いのよ?」ジロッ

侍女1「あ、いやや、べ、べべ別に悪くなんて…!?」アタフタ

アリアス「…いただくわ」スッ

カチャカチャ パクッ モグモグ

侍女1「(さ、昨夜までずっとおかしかったのに…!?)」

アリアス「(あぁ…美味しい)」フッ

侍女1「(あ…意識が戻ったら陛下にお伝えしないと!)」ハッ
888: 名無しさん@読者の声:2015/7/30(木) 22:48:45 ID:6iwqECQfdc
侍女1と2は優しい人みたいだ
889: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:51:02 ID:XBpzw2ybEc
―――王宮(謁見の間)―――

ヒメ「目が覚めたそうだな?」

アリアス「はい。はっきりと」

ヒメ「そうか」

アリアス「まことに感謝申し上げるよりほかございません」ペコッ

ヒメ「気にするな」

アリアス「地下で過ごした2年は地獄そのものでした」

ヒメ「……」

アリアス「ですが陛下の恩情によって、こうして再び地上に戻る機会をいただけて…久しぶりに人間らしい生活を送らせてもらえました」

ヒメ「…どうだった?久しぶりの地上での生活は?」

アリアス「…本心から、本心から……後悔しております」

アリアス「浅ましい欲に駈られ、ノワール司祭の側で見過ごし、自らも犯してきた過ちを……」

アリアス「この一週間、言葉を忘れ、眩しさに目を痛め、身体中から力が失われたように何をするにも不自由致しました。
食器を持つ手がおぼつかなく…身体を清める湯の熱に強張って…与えていただいた柔らかなベッドに横たわって眠ることさえ落ち着きがなく……」プルプル

アリアス「当たり前に出来ていたことが…まるで初めてのように感じられて…!」ググッ

アリアス「これまで普通に思えていたこと全てが…恵まれた物だったのだと気付かされました…。
自分が裁かれた理由も……今なら受け止められます」

ヒメ「そうか…」
890: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:54:20 ID:XBpzw2ybEc
ヒメ「…これからも地上で暮らしたいと思うか?」

アリアス「許されるのであれば…そうさせていただきたいと願います。ですが…私の罪はあまりにも……」

ヒメ「…罪は大きいよ。あれだけ多くの人とホビットを巻き込んでしまったんだから」

アリアス「っ…!」ブルッ

ヒメ「でも…軽い罪だって簡単に許していい訳じゃない。
その逆で重い罪にしたって絶対に許されない訳じゃないんだ」

アリアス「……?」

ヒメ「おまえが本気で許されたいと願うなら…反省を忘れず地上で暮らせ」

アリアス「へ?」

ヒメ「人は厳しい。きっとほとんどの者がおまえを許しはしないだろう」

アリアス「……」ズーン

ヒメ「それでも腐らないで穏やかに、誰も恨まずに生きてくれたら…僕はおまえを許すよ。
たとえ死んでも…おまえが罪に報いてまっとうな人生を送った事を僕が覚えておく?」

アリアス「……!」

ヒメ「もう地下には戻るなよ?国王は罪人の嘘に踊らされた大馬鹿者だったと国民達に囁かれるのは御免だからな?」

アリアス「〜〜〜…はい!!」ウルウル

ヒメ「…心なしか顔色も良くなったな?」ニコッ

アリアス「そうでしょうか…?」グシッ

ヒメ「うん。10歳くらい若返ったんじゃないか?」ニコニコ

アリアス「……!そ、そうでしょうか!?」デレデレ

ヒメ「(まぁ見た目70から60になったくらいの変化だけど)」

アリアス「ふ、ふふ…ふふふ…!」ニヤニヤ
891: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:56:19 ID:XBpzw2ybEc
スタスタ スタスタ

ヒメ「来たか」

アリアス「は?」クルッ

団長「遅くなりまして申し訳ない。連れて参りましたぞ」

衛兵1「ほら、自分で歩け!」グイッ

アントリア「クッ…!老いさらばえた身に容赦なく縄引くとは…君は家臣にどういう教育をしているのだね?」ギシギシ

アリアス「あ、アントリア…!?」

アントリア「やあ、アリアス君。少し見ない間にずいぶん生気を取り戻したじゃないか?」クスッ

アリアス「あんたが…あんな言葉をかけてきたから…!?」ワナワナ

アントリア「ふっ…」

ヒメ「なにかあったのか?」

アリアス「こいつが…地下であたしに語りかけてきたのよ!
あの暗く気味悪い地下で…身体も心も動かせない最低な状況下で…絶望を煽るような言葉を…ずっとずっとしつこく何度も何度も何度も繰り返し繰り返し……」ブツブツ

ヒメ「……」

アリアス「…おかしくならない訳がないじゃない…!
こいつのくぐもった笑い声が今も焼き付いて離れやしない…!!」クシャッ

アントリア「クックッ…」

アリアス「笑うなぁっ!?」キーッ

団長「こいつめ…!?」ギリッ

ヒメ「……」
892: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:59:49 ID:rR12EivkCY
ヒメ「…役者が揃ったな」ボソッ

アリアス「!?」クルッ

政務官「これは…いったい?」ポツン

ヒメ「遠方視察、ご苦労だったな。戻ってきて早々になるが付き合ってもらうぞ?」

アントリア「…リルラ君」ジッ

政務官「な、なぜ貴様が…!?」ハッ

ヒメ「静かにしろ」

政務官「陛下…!」

アントリア「……」

ヒメ「アリアス、おまえに聞きたい」

アリアス「え?」ビクッ

ヒメ「これまでアントリアは地下で政務官と何を話してきた?」

政務官「なっ…なんのことだ!?」アセアセ

団長「知らばっくれても無駄だ!すでに調べは付いておるわ!!」カッ

政務官「だ、黙れ!そんな罪人に何が証明出来る!?」

ヒメ「アリアスは地下でアントリアの隣に閉じ込められてたんだ。当然、会話は聞こえてたよな?」

アリアス「……」

団長「正直に言え!?」ズイッ

アリアス「ひっ」ビクッ

ヒメ「よせ、団長!」

団長「は…!」スッ

ヒメ「…頼む。僕の力になってくれ」ジッ

アリアス「!!!」ポッ

政務官「くっ…!」ギリッ
893: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 23:01:54 ID:rR12EivkCY
政務官「よ、読めたぞ!貴様ら、この女に好条件を持ちかけ、私を貶める証言を言わせる気だろう!?」

団長「何を言う!?陛下が卑劣な手段を用いたとでも言うのか!?」

政務官「こんなものは茶番劇に過ぎない!絶対に認めんぞ!?」

団長「えぇいっ!見苦しい奴め!それ以上しのごの抜かすと叩っ切るぞ!?」

ヒメ「落ち着け!!」

シーン

ヒメ「…アリアスはただ聞いたままの事を話すだけだ。おまえの疑いを晴らすには絶好の機会だろ?」

政務官「そちらが虚偽を促している可能性がある以上、この場においてのやりとりは公平ではない!!」

団長「なにを貴様ぁぁ!?」

ヒメ「アリアスは昨夜まで精神的に衰弱していて会話もままならなかった。それは城の人間全員が証明してくれる」

政務官「だ、だが…!」アセアセ

ヒメ「今のアリアスは絶対に嘘はつかない」

政務官「なぜそう言い切れる!?」

ヒメ「過去の罪を懺悔して心を入れ換えたからだ!」

アリアス「」キュンッ

政務官「そんなのは何の意味も成さん!罪人の言葉など信じられるか!!」

アリアス「(陛下………)」ドキドキ

ヒメ「アリアス!おまえは真実を知ってるんだろ!包み隠さず全てを話せ!?」

アリアス「…い、いいわよ。私の知ってる限りでよければ話してあげても?」テレッ

政務官「なに…!?」ギロッ

アントリア「……」ジッ

ヒメ「アリアス…!」パァァ
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