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後輩「先輩、落とし物です」
[8] -25 -50 

1: 1 ◆OFa0FInsIU:2011/11/14(月) 18:32:36 ID:gdR95DCXGs

本格的に寒くなってきましたが、こりずにオカルト系SSを

また支援していただけたら嬉しいです


101:
◆OFa0FInsIU:2011/11/25(金) 18:37:08 ID:lNbS31iwTM
用事があるという後輩とは、今日は別々に帰る。いつも通る団地の一角に引っ越しの車が止まっている。きっと誰か新しい場所に行くんだろう。
一人で歩く帰り道、ウォークマンから流れるのは古い映画の曲が流れていた。ひゅうと勢いよく吹いてきた風に目を瞑る。冷たい風が頬を撫でる。

うっすらと目を開けた先に、引っ越しの車は見当たらなかった。



102:
◆OFa0FInsIU:2011/11/25(金) 18:37:18 ID:lNbS31iwTM

「…………あれ?」

どこか違う。なにかが違う。さっきの引っ越しの車がそんな一瞬でいなくなるわけがないし、それよりあそこの空き地には去年、家が立ったんじゃなかっただろうか。

「早く帰らないと遊ぶ時間無くなっちゃうよ!」
「今日まいちゃんの家ー?」
「うんー!」

ぱたぱたと私の後ろから前へ小学生が駆けて行く。赤いランドセル。ひらりと靡いた髪。ああ、見覚えがあるなんて話じゃないぞ。

「…小学生の、私?」



103:
◆OFa0FInsIU:2011/11/25(金) 18:37:26 ID:lNbS31iwTM

一瞬息が止まり、どくどくと心臓が激しく脈を打つ。タイムスリップ?いやいや、そんな馬鹿な。じゃあ夢だ。きっとまだバスの中なんだ。うん、そうに違いない。

「結城の嘘つきー!」

聞こえた言葉に思わずバッと振り返る。黒いランドセル。パーカー。ムッとした顔。面影は十分にある。後輩、だ。あれはきっと、何年か前の彼だ。後輩とは別に二人の男の子(例えるならジャイアンとスネ夫のような)がいる。暗い表情の後輩とは真逆にゲラゲラと笑っているのがなんとも言えない。


104:
◆OFa0FInsIU:2011/11/25(金) 18:37:37 ID:lNbS31iwTM

「嘘つきじゃないもん」
「嘘ついたんだから嘘つきだろー!」
「嘘じゃない!あそこにいるだろ!男の人!」
「なにもいねえよばーか!」

後輩が指差した場所には確かに男の人が見えて、男の子たちに見えないということはきっとそういうモノなんだろう。冷静に考えている場合じゃないけど。

「じゃあな嘘つき結城ー!」
「だから嘘つきじゃないってば、あ!!」

ドサッと痛そうな音がして、男の子に押された後輩が尻餅をつく。気づいたときには体が動いていた。


105:
◆OFa0FInsIU:2011/11/25(金) 18:37:45 ID:lNbS31iwTM

「大丈夫?」

ぱしぱしと汚れた手を払う後輩に向かって、手を伸ばす。後輩は私の手を掴むことなく、一瞥して立ち上がった。

「平気です」
「…手、擦りむいてるよ。絆創膏あげる」

ポーチから絆創膏を取り出し、擦り傷のついた後輩の手に張る。不思議そうに、こちらを見る後輩にへらりと笑う。

「はい、これで大丈夫」
「…ありがとう、ございます」
「いえいえ」

ぺこりと頭を下げて、歩き出そうとする後輩の腕を掴む。驚いた顔。私いま、誘拐犯にでも見えるんじゃないだろうか。だけどきっと、言わなきゃ、後悔する。


106:
◆OFa0FInsIU:2011/11/25(金) 18:37:54 ID:lNbS31iwTM

「君が嘘つきじゃないって知ってるよ」
「…え?」
「だって私にも見えるから。見てきたから、」

(君と、一緒に。)

泣きそうな顔をする後輩の頭を撫でる。大丈夫だよ、私は君を信じてるよ。ひゅうとまた、大きな風が吹き、私のマフラーを揺らす。目をつむり、ウォークマンの音がゆっくりと耳に帰ってくる。再び目を開ければ、引っ越しのトラックはもとの場所に止まっていた。

(怖くないさ)
(君がそばにいてくれさえすれば)



107: 名無しさん@読者の声:2011/11/25(金) 19:47:12 ID:N.fuDU/X6E
オカルトながら、切なくて良い話だった。
後輩、いいこいいこ(p_;)\(^^ )

108: 名無しさん@読者の声:2011/11/25(金) 21:43:05 ID:ke8kDwatac
本当なのに嘘つき扱いされるのはキツいよな…
先輩がいてよかったな後輩
先輩についちご牛乳
後輩につ肉抜き肉まん
1につC
109: 名無しさん@読者の声:2011/11/25(金) 22:27:38 ID:O2Dmey52w.
後輩よしよし
後輩についちご牛乳
先輩につC
1につ肉まん
110: 名無しさん@読者の声:2011/11/26(土) 13:33:15 ID:AZN8vEPq8w
後輩(´;ω;`)
こっちおいで(ナデナデ

支援支援C
111:
◆OFa0FInsIU:2011/11/26(土) 18:56:42 ID:emIXT3i.Lo
>>107
後輩「ちょ、照れるんでやめてくださいー!」

>>108
支援ありがとうございます。
彼は今でこそ楽しそうですけどねえ…。
先輩「ありがとう」
後輩「野菜マン?野菜マンですかこれ」

>>109
後輩「シャッフル…だと…?いちご牛乳ウマー」
先輩「支援?ありがとう」
肉まんウマー

>>110
支援ありがとうございます!
後輩「今日みんな優しい…!」
112:
◆OFa0FInsIU:2011/11/26(土) 18:56:51 ID:emIXT3i.Lo

「とおりゃんせーとおりゃんせー」
「いきなりどうしたの」
「いや、思い出したんでつい」

いきなり童謡を思い出すのってどんな思考回路だ。夕日に染まる帰宅道に、なんとなく似合わないような似合うようなよくわからない歌が響く。

「その歌、なんか好きじゃないんだよね」
「不気味ですもんね」

こくりと頷く。童謡にしてはやけに怖いから好きじゃないのだ。メロディーといい、歌詞といい、重く不気味な気がしてしまう。


113:
◆OFa0FInsIU:2011/11/26(土) 18:57:01 ID:emIXT3i.Lo

「一番は割と明るい歌詞なんだけどね。天神様の細道を、7つのお詣りに来るってことだから。」
「問題は2番ですよね。鬼神様になって、7つの弔いになって。子ども泣くレベルですよ」
「確かに」

そういえば神隠しの歌とか言う話もあったっけか。ああでも、昔「こわい」は方言で「疲れた」って意味ってのも誰かが言っていたか。

「かごめより話に上がらないよね」
「あれは都市伝説化してますからね。半分降霊術みたいに使ってるような」

ニヤリと笑いながら後輩が言う。


114:
◆OFa0FInsIU:2011/11/26(土) 18:57:11 ID:emIXT3i.Lo

カツンと足音を鳴らす。後輩と合わせて2つ、のはずだ。

「行きはよいよい帰りはこわいって、ことですかね」
「帰り道だしね」

まあ、行く道も眠たすぎてよいよいじゃないけど。気づかないわけがない、ぴったりとくっついてくる足音に。それが、普通の足音じゃないなら尚更だ。カランカランと、下駄を鳴らすような。


115:
◆OFa0FInsIU:2011/11/26(土) 18:57:26 ID:emIXT3i.Lo

「振り返りますか」
「…ほんとに?」
「はい、当たり前じゃないですか」

まじでか。まあきっとなんとかなるかと、諦めに似た気持ちで頷く。

「じゃあ…せーの」

合わせたタイミングで後輩と同時に振り返る。長い黒い髪、鮮やかな赤い着物、夕日に照らされた顔はにこりと人懐こい笑顔を浮かべていた。7つ、6つくらいだろうか。


「云ったはずでしょ、帰りが怖い」


鼓膜を揺らす綺麗な声は、私の背筋を凍り付かせるのに十分なものだった。


116:
◆OFa0FInsIU:2011/11/26(土) 18:57:37 ID:emIXT3i.Lo

す、と夕日に同化するように女の子が消える。

「…なん、え、え?」
「うーん、ちょっと驚かせたかっただけじゃないですかね」
「可愛らしい理由だなあ、ずいぶん!」



117:
◆OFa0FInsIU:2011/11/27(日) 15:57:52 ID:sMCa5523Yo

「肝試し?」
「はい。部の方でやるんですけど、先輩も来ませんか」
「それ私が行っていいものなの?」
「良くなかったら誘いません」

それもそうだ。人数少なくて盛り上がらなそうなんで、と後輩が笑う。少しでも人数増やしたいのか。

「いいよ、行く」
「ほんとですか」
「こんなとこで嘘つく理由が無いよ」
「ありがとうございます。場所は駅の裏の廃墟で、9時に駅集合だそうです」
「了解」


118:
◆OFa0FInsIU:2011/11/27(日) 15:58:37 ID:sMCa5523Yo

すっかり真っ暗な中、駅に向かえば後輩が待っていた。他にも結構な数、人が集まってる。他の部員も友達とかを呼んだ結果なんだろう。

「先輩で最後ですか、部長」
「ああ、そうだと思うが」

後輩に声を掛けられた長身の男の人が頷く。確か、同じ学年の人じゃないだろうか。クラスが同じになったことがないから名前は知らないけど。

「じゃあ出発ですね」


119:
◆OFa0FInsIU:2011/11/27(日) 15:58:45 ID:sMCa5523Yo

「思ったより怖そうなんだけど」
「夜だと余計雰囲気出ますからね」
「おどろおどろしいよね」
「蔦が巻いてるあたりなんて特にです」

異様な雰囲気を醸し出す廃墟を前に少し腰が引ける。こんなお化け屋敷あったよなあ…とかいらないことまで思い出した。あれは後楽園だったかな。ギイと嫌な音がして、さっきの部長が家の門を開ける。そういえばこれって不法侵入かな。


120:
◆OFa0FInsIU:2011/11/27(日) 15:58:54 ID:sMCa5523Yo

埃っぽい部屋に足を踏み入れる。異臭こそしないものの、綺麗とは言い難い。ただそこにありありと生活の風景が残っているのが嫌だった。

「夜逃げあったらしいですよ」
「…へえ」
「ああでも、正確には一家心中ですかね。夜逃げしたはいいけど、そのまま生活を苦にして車で出かけた先で練炭自殺をしたらしいんで。」
「それ噂聞いたな。確か小さい子どもも居たらしいね」
「はい。赤ちゃんと3歳の男の子が」

重く苦しい話だ。そんな結果になるまでその両親を追い詰めたものはなんだったんだろうか。

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