本格的に寒くなってきましたが、こりずにオカルト系SSを
また支援していただけたら嬉しいです
58: 1 ◆OFa0FInsIU:2011/11/19(土) 21:43:05 ID:NkcF/Q9mp6
昼休み、いちご牛乳を飲みながら思い出したことを後輩に言ってみた。
「占いって、信じる?」
「たしなむ程度になら」
「おっさんみたいな答えをありがとう」
興味が無さそうに後輩が言う。さすがに占いは別分野か。
「どうして急に?」
「いや、友達がさ。騙されたんだって」
「なににですか?インチキ霊媒師とか?」
「"神様からの使者"だって」
59: 1 ◆OFa0FInsIU:2011/11/19(土) 21:43:22 ID:NkcF/Q9mp6
「悪いことが起きるー、とか言って無理やりお守りを買わされたらしいよ」
「よくある話ですね」
「まあ確かに。」
「面白そうじゃないですか」
「え」
「どこでやってるんです?」
「…3A」
にやりと後輩が笑う。なんとなく次の言葉は予想できる。飲み終わったいちご牛乳のパックを潰しながら、時間を確認する。昼休みが終わるまで、後20分ある。
「行きましょうか」
60: 1 ◆OFa0FInsIU:2011/11/19(土) 21:43:30 ID:NkcF/Q9mp6
3Aの教室は他のクラスより随時賑わっていた。教室の一角に妙な人だかりが出来ているせいだろう。
「あの人ですか」
「多分」
中心の真ん中にいる長い黒髪の女の子。後輩が彼女を見て、カウプレが笑う。
「すいません、僕たちも占ってくれませんか?」
臆することなく言った後輩に、女の子はきょとんとしたあとに不敵に笑って頷いて、取り巻きは私たちを睨んだ。やだ怖い。
61: 1 ◆OFa0FInsIU:2011/11/19(土) 21:43:39 ID:NkcF/Q9mp6
「じゃあそこに座って」
「先輩どーぞ」
後輩に半分無理やり椅子に座らせられる。え、私が占って貰うの?座ったまま後輩を見上げればいつものニヤニヤ顔だったが、女の子との間に火花が見えた気がした。
「私は神からの使者よ。神様からの声をあなた達にお伝えするの。」
机の上に散らばっているタロットカードの見方は私にはよくわからない。
「なにを占ってほしいのかしら?」
「…無難に将来で」
タロットカードが切られ、ぱちりぱちりと机に並べられる。
62: 1 ◆OFa0FInsIU:2011/11/19(土) 21:43:46 ID:NkcF/Q9mp6
ジイ、とそれを女の子が見た後にこっちを見て彼女は言った。
「あまり良いカードが出ていないわ。あなた近いうちに危険な目に合うかもしれないわね。」
「危険な目…」
「交通事故とか、事件とか、命の危険になるかも」
「…………」
「あ、そうだわ。貴女にこのお守りをあげる!これできっと大丈夫よ」
うわあああぐいぐいくるパターンだああああ。ひえええと思い、後ろに立つ後輩を振り返る。肩にポンと手が乗り、後輩が口を開く。
63: 1 ◆OFa0FInsIU:2011/11/19(土) 21:44:02 ID:NkcF/Q9mp6
「危険な目…ですか」
「そうよ」
「それはまたどうして」
「それはタロットが…」
「塔のカード、逆位置ですよ?」
「………あ、」
タロットカードを一枚指差し、後輩が言う。
「それだとその解釈にはならないかと」
「ちが、えっとこれは間違いで!」
「間違いですか。それなら仕方ありませんね。あ、そういえば貴女の言う神様はどの神様ですか?」
「え?」
「いや、仏教なのかキリスト教なのか他にもいろいろ」
「…き、キリスト教よ!」
「そうですか。で、神様は?」
「イエス・キリストに決まってるじゃない!」
「キリストは預言者ですよ?神様ではありません。」
「………………」
絶句したように女の子が後輩を見る。取り巻きがざわりと騒がしくなった。
64: 1 ◆OFa0FInsIU:2011/11/19(土) 21:44:18 ID:NkcF/Q9mp6
「じゃあ行きましょうか、先輩」
「え、あ、うん」
「ありがとうございました。」
私の腕を掴み、後輩が椅子から私を立たせる。
「ああ、それと。貴女、なにか憑いてますよ。"危険な目"に合うかもしれません。そのお守りはご自分で持っておいた方がいいかと!」
そう言い切り、3Aの扉を閉める。後輩がクスクスと笑い出す。
「やー、ひどかったですね!」
「君が怖いことはよくわかった」
「だって、タロットカードまったく無視して危険な目、とか言い出すんでびっくりしちゃって」
まだ笑いが収まらない後輩が笑いながら言う。昼休みが終わるチャイム5分前の予鈴が鳴る。ささやかなお昼の休み時間は、有意義に使われたのだろう。
65: 名無しさん@読者の声:2011/11/19(土) 21:45:59 ID:O2Dmey52w.
現場にいたら噴き出すなw
俺は後輩寄りなのかなぁ・・・いやだなぁ変人。
そんな後輩に
つきん肉まん
66: 名無しさん@読者の声:2011/11/19(土) 22:32:35 ID:A2csk18jYs
なんかすっきりしてしまったw
そしてナチュラルに昼休みを一緒に過ごす先輩と後輩w
後輩うらやましす!
67: 1 ◆OFa0FInsIU:2011/11/19(土) 23:59:48 ID:emIXT3i.Lo
>>65
変人でもいいじゃない 人間だもの !私も笑うと思いますww
後輩「キン肉マン…スライム肉まんみたいな感じですかね?」
先輩「チャレンジあるのみだね」
>>66
先輩「はっ…!いつの間にかそれが普通になってた!」
後輩「うらやましいですかね?毎日いちご牛乳飲んでるの見ていい加減こっちが飽きてきそうですよ」
先輩「いいじゃないか!」
68: 1 ◆OFa0FInsIU:2011/11/20(日) 20:44:24 ID:KXnfP1O8Pc
「そう言えば、先輩の家ってマンションでしたよね」
「そうだけど」
「何階立てでしたっけ」
「10階」
「あ、ピッタリです。」
なにがピッタリなんだ。学校帰り、まだ明るい帰り道で後輩がにやりと笑う。
「ちょっと異次元に行きませんか」
「はあ?」
「10階立てのエレベーターが必要なんですよ」
さあ先輩の家に!なんて楽しそうに後輩が言う。これやるまで帰らないだろうな。
69: 1 ◆OFa0FInsIU:2011/11/20(日) 20:44:31 ID:KXnfP1O8Pc
「で、なにをやるって?」
家につき、エレベーターの前で後輩に訪ねる。
「異次元に行きます」
「?」
「まあ、ちょっとやって見ましょうよ」
「危険?」
「スリルって大事ですよ」
危険なのか。うええと顔を少し歪めれば、後輩が大丈夫ですよ!と慌てて付け足した。ちょうど良くエレベーターが1階に来る。後輩はさくさくとそれに乗ると、中から私を手招きした。
70: 1 ◆OFa0FInsIU:2011/11/20(日) 20:44:43 ID:KXnfP1O8Pc
ぴ、ぴ、と後輩がいくつかの階のボタンを押していく。悪戯に入らないかな、これ。ウィンとゆっくりとエレベーターが上がる。
「先輩何階に住んでるんですか?」
「8階」
他愛もない話をしながら4階で開いたエレベーターの扉を後輩が閉める。次は2階のボタン。
71: 1 ◆OFa0FInsIU:2011/11/20(日) 20:45:00 ID:KXnfP1O8Pc
4階、2階、6階、2階、10階。法則性は無く、上がったり下がったりを繰り返す。なにしてるんだろうこれ、気持ち悪い。
「そう言えば、異次元ってどんなとこ?」
「わかりません。死後の世界を確かめられないのと同じで、ちゃんとした情報がないんです」
「そうなんだ」
「だからきっとデマですよ。なにも起こらないと思います」
「そっか」
10階で扉が開く。次は5階らしい。
「あ、次の階で女の人が乗ってくると思います。その人に喋りかけないでくださいね」
「わかった」
5階で止まる。本当に女の人がエレベーターの扉の前で待っていた。
72: 1 ◆OFa0FInsIU:2011/11/20(日) 20:45:13 ID:KXnfP1O8Pc
カツン、とヒールを履いた女の人の足音がエレベーター内に響く。瞬間、頭から水をかけられたかのような寒気が全身をかける。後輩を見れば、少し驚いた顔で女の人を見た後、何事もなかったかのようにエレベーターを操作し始めた。1階のボタン。
声も出せないような、重い空気。足が竦む。これ、本当にかなり危険なものなんじゃないだろうか。1階へエレベーターが到着する。
しかし、そのまま扉は開かず上へとエレベーターは上がり始めた。え、と言う顔を後輩がする。ボタンにはどこにもランプがついていない。じゃあ、一体このエレベーターはどこに向かっているんだろうか。
73: 1 ◆OFa0FInsIU:2011/11/20(日) 20:45:24 ID:KXnfP1O8Pc
1階、2階、3階、
階を増すごとにバクバクと心臓が大きく音を立てる。後輩がボタンを押しているのが見えるが、どれも灯りが着かなかった。
4階、5階
かつり、とまた女の人の足音がエレベーター内に響く。さっきまで扉の方に向いて立っていた女の人がこっちを向いていた。長い髪が顔にかかり、俯いているせいもあって表情が見えない。きっと、見たらいけない。
7階を通り過ぎるのがわかった。ゆっくり、ゆっくり女の人が顔をあげる。心臓がより五月蝿くなる。目を逸らせない。女の人の口元が見えた。それはニイと不気味に口角が上がっていた。息が止まるような錯覚。今すぐにでも叫ぶか気絶をしてしまいたい。
もう一度、ヒールの音が響く。女の人がこっちに足を踏み出していた。思わず目を瞑り、うずくまる。
74: 1 ◆OFa0FInsIU:2011/11/20(日) 20:45:36 ID:KXnfP1O8Pc
ウィン、と間抜けな音が聞こえ目を開けると、明るい光と外の音が入ってきた。
「………ぅえ?」
「開い、た…」
呆然となんとも呆気なく開いた扉に後輩と顔を見合わせる。エレベーターの表示は8で止まっていた。
「なにしてんの、姉ちゃん」
聞き慣れた声が鼓膜を揺らす。エレベーターを覗き込んでいたのは、弟だった。
「先輩、弟いたんですか」
「う、ん。いや、なんであんたここに」
「いや、コンビニ行こうと思って」
ありきたりな理由に思わず、安心からかため息が漏れる。ああ、そうか人が乗ろうとしたから扉が開いたのか。普通のことなのに、すごく納得してしまった。女の人はもういない。エレベーターはもう異次元には繋がらない。
「立てますか?先輩」
「ん」
差し出された手を掴み立ち上がる。そのまま外に出て、深く息を吸った。弟は入れ違いでエレベーターに乗り、1階へ降りていった。
「…普通に危ないじゃない」
「すいません」
「いちご牛乳おごりね」
「…はい」
珍しく反省した顔の後輩は、階段で帰っていった。
75: 名無しさん@読者の声:2011/11/20(日) 20:53:10 ID:E1vvQmQ3Ms
この都市伝説やったことある
怖くなって途中でやめたけどw
後輩頑張れよ!
支援CCCCCC
76: 名無しさん@読者の声:2011/11/20(日) 20:56:06 ID:X/e8SDb5uw
どきどきしたぁぁあああ
CCCC
77: 名無しさん@読者の声:2011/11/20(日) 21:07:41 ID:N.fuDU/X6E
弟vs後輩を期待してすまんw
つCCCC
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