お題【イコール】
下記の順番でお願いします。
◆rVJzEQ7fWg
◆KCXDu/KctI
◆xT/7hZrSec
◆DPehMNPNeE
◆J43/PIljHc
39: ◆xT/7hZrSec:2012/3/10(土) 00:30:14 ID:vbxn/7iNoc
何かが変わりつつあった。
そう、きっとすれ違っていた妹との関係を変えようと行動したからだ。
だが元を辿れば、こいつの心無い言葉のせいではなかったか?
いや違う。
幼さ故の視野の狭さが原因で些細な言葉を馬鹿正直に捉えたのが悪い。
だがその言葉さえ無ければ…
いや違う…
妹は?
妹は何故、あんな風に笑えるの?
双 子 な の に、 何 故?
40: ◆DPehMNPNeE:2012/3/10(土) 02:14:50 ID:XgcHHaCXQY
妹は覚えていない?
妹は気にしていない?
風船からすは爆発した。
烏は不意に落ちて絶命した。
水玉看板に"らくらい"と書かれていた。
町の伝言板は雷が落ち黒焦げになった。
虹色の川を泳いでいた゛9゛の数字は゛3゛の数字を吸収した。
川を泳いでいた魚はより小さな魚を捕食した。
姉のわっか。
妹のわっか。
________
姉妹は仲違いした。
________
姉妹は勘違いした。
=
≠
ぼんやりと輪郭が掴めた。そんな気がした。ぶれていた焦点が合わさり、気分が落ち着く。
熱を持った頭に冷水の如く声が降る。男、名前は道下……正樹だったか。
41: ◆J43/PIljHc:2012/3/10(土) 15:58:20 ID:at390TEmh.
そうだ。そんな名前だった。道下本屋の次男だ。何度も漫画を買いに行った。
そしてあの日、彼の何気ない一言が私たちを変えた。
妹は変わらず正くんと話している。思うところはたくさんあるが、とにかく今は二人の会話に混ざろう。
すべてはその後だ。
42: ◆KCXDu/KctI:2012/3/11(日) 11:57:49 ID:phUFhS7wzc
12時間過ぎてるのでいきますね。
考えに耽る私を余所に、二人は思出話で盛り上がっている。
言い様のない疎外感。それを拭い取るように、強引に話を変える。
A「それで、正くんはどうしたの?男一人でこんな所に来ちゃって」
今いるのは女性向けの小物ショップ。男が一人でいるのなんて事は、なかなかない。
男「おまえらが見えたから恥ずかしいけど入ったんだよ」
B「なにそれ新手の口説き文句ぅ〜?」
はははと二人が笑い合う。
が、姉の心は別の方向を向いていた。
本当に、そんな理由?
何か、もっと別の何かがあるんじゃ?
外は、厚い雲に覆われ始めていた。
43: ◆xT/7hZrSec:2012/3/11(日) 16:57:31 ID:jGAH6tq0zg
男「なーんか、天気微妙だな」
B「本当だ」
男「じゃ、帰るわ!」
A「あ、うん。気をつけて」
男「おう!
ま た な
!」
今、あいつは何て言った?
B「…?……!………!!」
遠くに妹の声を聞きながら、姉の世界はぐるりと回転し、
ブラックアウトした。
44: ◆DPehMNPNeE:2012/3/11(日) 19:46:43 ID:PQAQ1mPGDA
キリトリセン
_________________
またなまたな
リフレイン。
またなまたな
音階を変え、行間を変えて繰り返す。
またなまたな
雨は水滴、海のしずく。
またなまたな
声は空気、空のかけら。
またなまたな
歌うように。
またなまたな
崩れた私、意識のきれはし。
またなまたな
心の水面は乱れ、波紋は広がる。
またなまたな
反転。
汚れた私はしまいましょう。畳んで畳んで、シワを伸ばして綺麗な箱に。仕上げにリボンで飾って出来上がり。
出来上がり。
_________________
キリトリセン
45: 何この回転率の早さと難しさw ◆J43/PIljHc:2012/3/11(日) 20:31:31 ID:7K8pCRrNtQ
姉はめまぐるしく流れていく記憶を眺める。ふと、走馬灯という言葉が浮かんだ。馬鹿馬鹿しい。
あの日の記憶が流れてきた。あの時の私が、妹が、彼が、笑い合っていた。
──遠い日の幻想。感情の錯覚。夢の想い出。
走馬灯を見るのは彼奴の方だ。絶対殺す殺シテヤル──!
あいつを殺せば私たちは、一つになれる。
46: ◆rVJzEQ7fWg:2012/3/11(日) 22:49:14 ID:fnmsbMb4Pg
ばらばら
ばらばら
B「ああ、雨だね」
妹の声が遠い。
B「傘、持ってきた?」
姉はゆっくり首を横に振る。
B「じゃああたし、この傘といっしょに誕プレ買ってくるよ」
そこで姉はやっと現実に引き戻された。
あたしいまなにをしようとしたの
B「じゃあA、帰ろうよ」
戻ってきた妹の手に傘は一本。
人はふたり。
B「せっかくの相合い傘なのにAが相手なんてつまんなーい」
妹が言う。
姉は、醜い自分を綺麗に隠すために一言いうだけで精一杯だった。
A「お互い様よ」
雨はいつしか本降りになっていった。
47: ◆KCXDu/KctI:2012/3/12(月) 10:17:53 ID:fnmsbMb4Pg
連休明けの朝、気だるい体を起こし、時計に目をやる。
珍しく、目覚ましが鳴る前に目が覚めた。
リビングに行くと、忙しそうに家事をしている母親が、姉を見て意外そうな顔をする。
母「珍しいじゃない、Aが早く起きてくるなんて。Bといい、今日は槍でも降るのかしら」
なんて笑いながら言う母。しかし、姉はある一点に引っ掛かった。
A「Bが、どうした……の?」
母「用事があるっていってもう出かけたのよ〜。あんた達2人とも、いつもこれくらいちゃんと起きてくれたら助かるんだけどねぇ……」
母の小言は、しかし、姉に届くことはなかった。
Bが、もう出かけている。その事実に、心がざわつく。
何か、大切な事を見落としている。そんな気がしていた。
48: ◆xT/7hZrSec:2012/3/12(月) 13:59:09 ID:IIyU6frlBI
姉の様子に、母は手を止めた。
A「何?」
母「二人が仲直りして良かったと思ってる」
A「いきなり何よ」
眉を寄せる姉に、母はまっすぐ視線をぶつけた。
母「悩みや不安があるならいつでも話して頂戴」
A「…別にっ」
そうして走り去った姉を、母は見送り溜め息をついた。
49: ◆DPehMNPNeE:2012/3/12(月) 17:53:13 ID:hA9AWfqbSg
ムカムカする。
八つ当たりなのは理解していた。だが、簡単に抑えられるようなら苦労はないだろう。
A(わかったようなこと言わないでよ。気休めじゃないの)
プレゼントを買った+不自然に早い朝=
イコールの先に私はいない。
それでも、願望に惹かれてけもの道に足を向ける。わっかを通して見た景色の中で妹はそこにいたから。
同じ気持ちなら。等しい気持ちなら。
=
既に答えが出ている式を頭に浮かべながら、延々と考える。
やがて、肩で風を切る勢いも弱くなる。疲れもあった。体の疲れか、精神の疲れか。はたまた両方なのか。
なにより近付く程に怖くなった。妹に、けもの道に。
答えを見るのに堪えられなくなり、私は学校へ向かった。
50: ◆J43/PIljHc:2012/3/12(月) 20:45:40 ID:NZ0gmpkD7I
沈んだ気分で席に着く。何人かの友達が挨拶してくれたが生返事を返しただけ。
─────────
みな不機嫌な事を察したらしく昼休みになっても誰も話しかけて来ない。嬉しいと言えばそえなのだが、考える内容は妹の事ばかり少々辛い。
A(私は妹とイコールで結ばれる事はないのだろうか……いや、ないか……)
答えはもう出ている。それを自覚している。
それが何。ほしい、ほしいよ。妹は誰にも渡さない。
私の覚悟はもう決まった……!
51: ◆rVJzEQ7fWg:2012/3/13(火) 09:19:19 ID:uqxtVPBJCA
椅子を蹴りたてて立ち上がる。随分大きな音がした。
まわりのクラスメイトは驚いた顔で姉を見る。
弁当は既に食べ終わった。
――この時間、Bは図書室か。
双子の勘と、今までの経験。それら二つを寄り合わせて居場所を割り出す。
そこに何があるか、は問題にしなかった。
均衡は崩れた。等号は不等号に。
姉の思いは重すぎた。
けれども少女は気づかずに、天秤をさらに傾ける。
A「B!」
52: ◆KCXDu/KctI:2012/3/13(火) 11:26:16 ID:IE9FPZTe0o
妹の名前を声に出す。
すれ違う子達が驚いているのが分かる。
そりゃそうだ、一心不乱に廊下を走ってるだけでも珍しいのに、さらに名前を叫んでるんだから。
だけど今はそんな事を気にしていられない。一刻も早く妹の元へ。
図書室に入り、中を見回す。目に入るところにはいない。と、いうことは奥の方か。
いた!
図書室の奥で本を探している姿が視界に入る。
A「B!」
B「ひゃっ!?って……なんだAか〜、ビックリさせ……ってちょっとなに!?」
妹の腕をつかみズルズルと引っ張っていく。
53: ◆xT/7hZrSec:2012/3/13(火) 16:56:10 ID:wIJeliMEjM
屋上に続くドアの前。
ドアは施錠されていて開くことはなく、人も滅多に来ない。
B「何よ」
ああ、こんなにも自分と同じ反応。
A「Bは私と一緒だよね」
B「はあ?」
A「同じだよね」
不可解な姉の言葉に眉を寄せて、妹は口を開く。
B「双子だけど、私はBでお姉ちゃんはAじゃん」
54: ◆DPehMNPNeE:2012/3/13(火) 18:40:02 ID:9gxDSVl8uA
軋む。転がる勢いに任せた感情は、躊躇なく私に負荷を掛ける。
A「同じじゃないの」
沈澱する重りを固めた言葉がするりと出た。淡々とした答え合わせ。甘いものが入る隙間など、ない。
B「Aは同じが良いんだ」
B「いつも、いっつもだ。わがままだよ。振り回してばっかり。私の気持ちを考えたことが一度でもあった?」
天秤の向こうにも重いものがあったようだ。内容が何であれ、嬉しい。
B「Aは私が大切じゃないんだ。だから簡単にそんなことを言える」
A「違うよ。勘違いしてる!!!」
大切じゃないだって?簡単だって?
怒りと悲しみと後悔がないまぜになって、偏り軋む。さっきの負荷とはベクトルが異なる負荷。
迷った挙げ句。
逃げたい。結局はいつもの考えに帰結する。
混乱した目に最初に映ったのは四方の柵だった。
手近な柵にしがみつく。その先など見えず、今はひたすら逃げたかった。
55: ◆J43/PIljHc:2012/3/13(火) 22:58:28 ID:sy4TdTqfb6
Bの横を走ってすり抜ける。Bの制止の声が聴こえた気がした。何も考えずただ走る。そして──
B「お姉ちゃんっ!!」
体が宙に舞う。空を飛ぶような感覚。蒼い、蒼い、真っ青な空だけが眼に映っている。風が少々寒い。
地上にはまだ到達しない。いっそ到達しなければいい。白ウサギの井戸のように。どこまでも奈落に……。
Aのすぐ下のコンクリートに真っ赤な緋い花が咲いた。人々の甲高い悲鳴は季節外れの開花を喜んでいるよう。
56: ◆rVJzEQ7fWg:2012/3/14(水) 12:05:31 ID:n8fTcDe3SQ
まるで夢の中にいるようで、妹の足下はふらついた。
いや、最早、妹ではないのかもしれない。
騒ぎを聞きつけ野次馬たちが集まってくる。
少し遅れて教師がきて、それから、救急車の鳴る音。
屋上の壊れた扉の向こうに、倒れた妹がいた。
男「―――っ!」
彼女の体を揺さぶっても、ゆらゆらと力無く動くだけ。
双子は怪我などの痛みを分かち合うと言うから、まさか、と思った。
保体の授業を思いだし、脈と呼吸の有無を調べる。
呼吸も脈も安定していた。
一息ついて、彼女を背負う。とにもかくにも、保健室に運ばなければ。
57: ◆KCXDu/KctI:2012/3/14(水) 19:47:32 ID:S/.B8nd9vU
男「もうすぐ保健室に着くからな、辛抱してくれよ」
意識のないBに、一人言のようにそう呼び掛ける。
しかし、一人言のはずのその言葉に、予想してもいなかった言葉が返ってきた。
「……は渡さない」
男「えっ?」
だが、それ以上の言葉が返ってくることはなかった。
58: 申し訳ないですが、十二時間ルール適用 ◆DPehMNPNeE:2012/3/15(木) 14:41:05 ID:97ObWMGE.2
妹はその日は早退した。
迎えに来たのは父親で、母親は病院に向かっていたそうだ。
錯乱して屋上からの落下。文句の付け処のない事故。事が事なので、警察も気を遣ったのか事情聴取は後日となった。
途中、木やプレハブの部室屋根に当たったおかげで姉は一命を取り留めた。と、夕方には学校にも連絡が届いた。
職員室に盗み聞きを仕掛けて拾った情報だ。居ても立ってもいられない気持ちはほんの少し落ち着いた。
なんとなく責任を感じて調べた成果はこれだけ。
「……は渡さない」
短い言葉に病的なものを感じられた。
自分は気付ける立場にいたのではないか?そもそも二人の間には一瞬たりとも入る事が出来なかった。
浮かんでは消える自責。
これが幼なじみとの距離。未だに姉と妹を間違えそうになるぐらいの。
男(ハッテン場にでも行こうかな)
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