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チーム:SS板【イコール】
[8] -25 -50 

1:🎏 名無しですが何か?:2012/3/4(日) 10:54:46 ID:1lvOPQUkic
お題【イコール】

下記の順番でお願いします。

◆rVJzEQ7fWg
◆KCXDu/KctI
◆xT/7hZrSec
◆DPehMNPNeE
◆J43/PIljHc



34:🎏 ◆xT/7hZrSec:2012/3/9(金) 00:32:16 ID:oslv.5eYcU
A「何買うの?」

B「誕プレ」

A「誰か誕生日だったっけ?」

B「うん、友達のねー」

名前を言わないということは、自分の知らない友達なのだろう。
クラスも違うのだから当然だ。
姉にも妹の知らない友達はいる。
だが、なぜか違和感を姉は感じた。

それは、怒りや疎外感、嫉妬や孤独とは違う。
ただ言い様の無い違和感。
35:🎏 ◆DPehMNPNeE:2012/3/9(金) 01:18:49 ID:IOn2eWI1Hc
無理矢理言葉に起こすなら、なんだろう。

足場が緩やかにに崩れ始めたような。
勘違いに気付かされてしまった瞬間のような。

わっかと裸眼。妹と姉。昔と今。建前と本音。エラーエラーエラー。心の雑音が邪魔だ。



A(全てがもっとわかりやすければ良いのに)

小物を物色している妹を眺める。近いようで遠い間隔と感覚。それはきっと、私には掴めない二人の距離を表していた。

B「…何?気分悪いの?また?」

妹に声を掛けられ、気持ちが急速に浮上する。不安は反転し、喜びに。

B「最近多いよね。病気なんじゃないの?」

返事を待たずに進める妹、ぎこちなく微笑む姉。
最近の私達の関係に。いや、違う。私自身に違和感が芽生えた。
36:🎏 ◆J43/PIljHc:2012/3/9(金) 08:08:24 ID:IZEwmfHPwo

妹「大丈夫だよ、お姉ちゃん」

 妹は何が、とは言わなかった。

妹「私はずっと──だよ」

 違和感が急速に膨らんでいく。脳が言葉を聴くことを拒絶する。妹を見ることも、触れることさえも拒否する。違和感という違和感が、感覚が、胸を頭を私を満たしていく。
 そう、違和感が。違和感が、違和感が違和感が違和感が違和感違和カンイワカンイワカンイワカン──!

 ハッと目を開くと妹の心配そうな顔があった。
37:🎏 ◆rVJzEQ7fWg:2012/3/9(金) 20:23:05 ID:jqvESfnE.I

B「やっぱりなにかの病気?病院とか行かなくても大丈夫?」

姉は答えずににこりと笑って見せた。

?「あれ、お前ら二人で出かけてんの?めっずらしー」

AB「えっ?」

男「俺だよ、俺、俺」

人懐こい笑みを浮かべたこの男、姉妹と同じ歳の幼なじみである。
男女の幼なじみには良くあることで、成長するにつれだんだん疎遠になってはいたが、小中高と同じ学校に通う正真正銘の幼なじみだった。

男「あー、でも、昔はよく二人で遊んでたよなー。俺がいてもなーんか仲間外れでさあ」

B「それ、あんたが女の子の中に入ってたのがおかしいのよ」

男「そういうものかねぇ」

妹と男は懐かしそうに笑い合う。思春期特有の男女の微妙な距離感を、気にするような素振りはなかった。

変わりつつあった。
38:🎏 ◆KCXDu/KctI:2012/3/9(金) 20:39:44 ID:zKUznGmCP6
すいません、ちょっと時間ないのでパスしてください。
39:🎏 ◆xT/7hZrSec:2012/3/10(土) 00:30:14 ID:vbxn/7iNoc
何かが変わりつつあった。
そう、きっとすれ違っていた妹との関係を変えようと行動したからだ。
だが元を辿れば、こいつの心無い言葉のせいではなかったか?
いや違う。
幼さ故の視野の狭さが原因で些細な言葉を馬鹿正直に捉えたのが悪い。
だがその言葉さえ無ければ…
いや違う…

妹は?


妹は何故、あんな風に笑えるの?
双 子 な の に、 何 故?
40:🎏 ◆DPehMNPNeE:2012/3/10(土) 02:14:50 ID:XgcHHaCXQY
妹は覚えていない?
妹は気にしていない?

風船からすは爆発した。
烏は不意に落ちて絶命した。

水玉看板に"らくらい"と書かれていた。
町の伝言板は雷が落ち黒焦げになった。

虹色の川を泳いでいた゛9゛の数字は゛3゛の数字を吸収した。
川を泳いでいた魚はより小さな魚を捕食した。

姉のわっか。
妹のわっか。

________
姉妹は仲違いした。
________
姉妹は勘違いした。




ぼんやりと輪郭が掴めた。そんな気がした。ぶれていた焦点が合わさり、気分が落ち着く。

熱を持った頭に冷水の如く声が降る。男、名前は道下……正樹だったか。
41:🎏 ◆J43/PIljHc:2012/3/10(土) 15:58:20 ID:at390TEmh.

 そうだ。そんな名前だった。道下本屋の次男だ。何度も漫画を買いに行った。
 そしてあの日、彼の何気ない一言が私たちを変えた。

 妹は変わらず正くんと話している。思うところはたくさんあるが、とにかく今は二人の会話に混ざろう。
 すべてはその後だ。
42:🎏 ◆KCXDu/KctI:2012/3/11(日) 11:57:49 ID:phUFhS7wzc
12時間過ぎてるのでいきますね。

考えに耽る私を余所に、二人は思出話で盛り上がっている。
言い様のない疎外感。それを拭い取るように、強引に話を変える。

A「それで、正くんはどうしたの?男一人でこんな所に来ちゃって」

今いるのは女性向けの小物ショップ。男が一人でいるのなんて事は、なかなかない。

男「おまえらが見えたから恥ずかしいけど入ったんだよ」

B「なにそれ新手の口説き文句ぅ〜?」

はははと二人が笑い合う。
が、姉の心は別の方向を向いていた。


本当に、そんな理由?
何か、もっと別の何かがあるんじゃ?


外は、厚い雲に覆われ始めていた。
43:🎏 ◆xT/7hZrSec:2012/3/11(日) 16:57:31 ID:jGAH6tq0zg
男「なーんか、天気微妙だな」

B「本当だ」

男「じゃ、帰るわ!」

A「あ、うん。気をつけて」

男「おう!
      ま た な
            !」


今、あいつは何て言った?

B「…?……!………!!」

遠くに妹の声を聞きながら、姉の世界はぐるりと回転し、
ブラックアウトした。
44:🎏 ◆DPehMNPNeE:2012/3/11(日) 19:46:43 ID:PQAQ1mPGDA
キリトリセン
_________________

またなまたな

リフレイン。

またなまたな

音階を変え、行間を変えて繰り返す。

またなまたな

雨は水滴、海のしずく。

またなまたな

声は空気、空のかけら。

またなまたな

歌うように。

またなまたな

崩れた私、意識のきれはし。

またなまたな

心の水面は乱れ、波紋は広がる。

またなまたな

反転。
汚れた私はしまいましょう。畳んで畳んで、シワを伸ばして綺麗な箱に。仕上げにリボンで飾って出来上がり。

出来上がり。
_________________
キリトリセン
45:🎏 何この回転率の早さと難しさw ◆J43/PIljHc:2012/3/11(日) 20:31:31 ID:7K8pCRrNtQ

 姉はめまぐるしく流れていく記憶を眺める。ふと、走馬灯という言葉が浮かんだ。馬鹿馬鹿しい。

 あの日の記憶が流れてきた。あの時の私が、妹が、彼が、笑い合っていた。
 ──遠い日の幻想。感情の錯覚。夢の想い出。
 走馬灯を見るのは彼奴の方だ。絶対殺す殺シテヤル──!


 あいつを殺せば私たちは、一つになれる。
46:🎏 ◆rVJzEQ7fWg:2012/3/11(日) 22:49:14 ID:fnmsbMb4Pg

 ばらばら

 ばらばら

B「ああ、雨だね」

妹の声が遠い。

B「傘、持ってきた?」

姉はゆっくり首を横に振る。

B「じゃああたし、この傘といっしょに誕プレ買ってくるよ」

そこで姉はやっと現実に引き戻された。

 あたしいまなにをしようとしたの

B「じゃあA、帰ろうよ」

戻ってきた妹の手に傘は一本。
人はふたり。

B「せっかくの相合い傘なのにAが相手なんてつまんなーい」

妹が言う。
姉は、醜い自分を綺麗に隠すために一言いうだけで精一杯だった。

A「お互い様よ」

雨はいつしか本降りになっていった。
47:🎏 ◆KCXDu/KctI:2012/3/12(月) 10:17:53 ID:fnmsbMb4Pg
連休明けの朝、気だるい体を起こし、時計に目をやる。
珍しく、目覚ましが鳴る前に目が覚めた。


リビングに行くと、忙しそうに家事をしている母親が、姉を見て意外そうな顔をする。

母「珍しいじゃない、Aが早く起きてくるなんて。Bといい、今日は槍でも降るのかしら」

なんて笑いながら言う母。しかし、姉はある一点に引っ掛かった。

A「Bが、どうした……の?」

母「用事があるっていってもう出かけたのよ〜。あんた達2人とも、いつもこれくらいちゃんと起きてくれたら助かるんだけどねぇ……」

母の小言は、しかし、姉に届くことはなかった。


Bが、もう出かけている。その事実に、心がざわつく。
何か、大切な事を見落としている。そんな気がしていた。
48:🎏 ◆xT/7hZrSec:2012/3/12(月) 13:59:09 ID:IIyU6frlBI
姉の様子に、母は手を止めた。

A「何?」

母「二人が仲直りして良かったと思ってる」

A「いきなり何よ」

眉を寄せる姉に、母はまっすぐ視線をぶつけた。

母「悩みや不安があるならいつでも話して頂戴」

A「…別にっ」

そうして走り去った姉を、母は見送り溜め息をついた。
49:🎏 ◆DPehMNPNeE:2012/3/12(月) 17:53:13 ID:hA9AWfqbSg
ムカムカする。
八つ当たりなのは理解していた。だが、簡単に抑えられるようなら苦労はないだろう。

A(わかったようなこと言わないでよ。気休めじゃないの)

プレゼントを買った+不自然に早い朝=
イコールの先に私はいない。

それでも、願望に惹かれてけもの道に足を向ける。わっかを通して見た景色の中で妹はそこにいたから。

同じ気持ちなら。等しい気持ちなら。



既に答えが出ている式を頭に浮かべながら、延々と考える。

やがて、肩で風を切る勢いも弱くなる。疲れもあった。体の疲れか、精神の疲れか。はたまた両方なのか。

なにより近付く程に怖くなった。妹に、けもの道に。

答えを見るのに堪えられなくなり、私は学校へ向かった。
50:🎏 ◆J43/PIljHc:2012/3/12(月) 20:45:40 ID:NZ0gmpkD7I

 沈んだ気分で席に着く。何人かの友達が挨拶してくれたが生返事を返しただけ。

─────────

 みな不機嫌な事を察したらしく昼休みになっても誰も話しかけて来ない。嬉しいと言えばそえなのだが、考える内容は妹の事ばかり少々辛い。

A(私は妹とイコールで結ばれる事はないのだろうか……いや、ないか……)

 答えはもう出ている。それを自覚している。
 それが何。ほしい、ほしいよ。妹は誰にも渡さない。
 私の覚悟はもう決まった……!
51:🎏 ◆rVJzEQ7fWg:2012/3/13(火) 09:19:19 ID:uqxtVPBJCA

椅子を蹴りたてて立ち上がる。随分大きな音がした。
まわりのクラスメイトは驚いた顔で姉を見る。
弁当は既に食べ終わった。

――この時間、Bは図書室か。

双子の勘と、今までの経験。それら二つを寄り合わせて居場所を割り出す。
そこに何があるか、は問題にしなかった。

均衡は崩れた。等号は不等号に。
姉の思いは重すぎた。
けれども少女は気づかずに、天秤をさらに傾ける。

A「B!」
52:🎏 ◆KCXDu/KctI:2012/3/13(火) 11:26:16 ID:IE9FPZTe0o
妹の名前を声に出す。

すれ違う子達が驚いているのが分かる。
そりゃそうだ、一心不乱に廊下を走ってるだけでも珍しいのに、さらに名前を叫んでるんだから。
だけど今はそんな事を気にしていられない。一刻も早く妹の元へ。
図書室に入り、中を見回す。目に入るところにはいない。と、いうことは奥の方か。


いた!


図書室の奥で本を探している姿が視界に入る。

A「B!」

B「ひゃっ!?って……なんだAか〜、ビックリさせ……ってちょっとなに!?」

妹の腕をつかみズルズルと引っ張っていく。

53:🎏 ◆xT/7hZrSec:2012/3/13(火) 16:56:10 ID:wIJeliMEjM
屋上に続くドアの前。
ドアは施錠されていて開くことはなく、人も滅多に来ない。

B「何よ」

ああ、こんなにも自分と同じ反応。

A「Bは私と一緒だよね」

B「はあ?」

A「同じだよね」

不可解な姉の言葉に眉を寄せて、妹は口を開く。

B「双子だけど、私はBでお姉ちゃんはAじゃん」
54:🎏 ◆DPehMNPNeE:2012/3/13(火) 18:40:02 ID:9gxDSVl8uA
軋む。転がる勢いに任せた感情は、躊躇なく私に負荷を掛ける。

A「同じじゃないの」

沈澱する重りを固めた言葉がするりと出た。淡々とした答え合わせ。甘いものが入る隙間など、ない。

B「Aは同じが良いんだ」

B「いつも、いっつもだ。わがままだよ。振り回してばっかり。私の気持ちを考えたことが一度でもあった?」

天秤の向こうにも重いものがあったようだ。内容が何であれ、嬉しい。

B「Aは私が大切じゃないんだ。だから簡単にそんなことを言える」

A「違うよ。勘違いしてる!!!」

大切じゃないだって?簡単だって?

怒りと悲しみと後悔がないまぜになって、偏り軋む。さっきの負荷とはベクトルが異なる負荷。

迷った挙げ句。
逃げたい。結局はいつもの考えに帰結する。

混乱した目に最初に映ったのは四方の柵だった。
手近な柵にしがみつく。その先など見えず、今はひたすら逃げたかった。
55:🎏 ◆J43/PIljHc:2012/3/13(火) 22:58:28 ID:sy4TdTqfb6

 Bの横を走ってすり抜ける。Bの制止の声が聴こえた気がした。何も考えずただ走る。そして──

B「お姉ちゃんっ!!」

体が宙に舞う。空を飛ぶような感覚。蒼い、蒼い、真っ青な空だけが眼に映っている。風が少々寒い。
 地上にはまだ到達しない。いっそ到達しなければいい。白ウサギの井戸のように。どこまでも奈落に……。

 Aのすぐ下のコンクリートに真っ赤な緋い花が咲いた。人々の甲高い悲鳴は季節外れの開花を喜んでいるよう。

56:🎏 ◆rVJzEQ7fWg:2012/3/14(水) 12:05:31 ID:n8fTcDe3SQ

まるで夢の中にいるようで、妹の足下はふらついた。
いや、最早、妹ではないのかもしれない。

騒ぎを聞きつけ野次馬たちが集まってくる。
少し遅れて教師がきて、それから、救急車の鳴る音。
屋上の壊れた扉の向こうに、倒れた妹がいた。

男「―――っ!」

彼女の体を揺さぶっても、ゆらゆらと力無く動くだけ。
双子は怪我などの痛みを分かち合うと言うから、まさか、と思った。
保体の授業を思いだし、脈と呼吸の有無を調べる。
呼吸も脈も安定していた。
一息ついて、彼女を背負う。とにもかくにも、保健室に運ばなければ。
57:🎏 ◆KCXDu/KctI:2012/3/14(水) 19:47:32 ID:S/.B8nd9vU
男「もうすぐ保健室に着くからな、辛抱してくれよ」

意識のないBに、一人言のようにそう呼び掛ける。

しかし、一人言のはずのその言葉に、予想してもいなかった言葉が返ってきた。


「……は渡さない」


男「えっ?」

だが、それ以上の言葉が返ってくることはなかった。


58:🎏 申し訳ないですが、十二時間ルール適用  ◆DPehMNPNeE:2012/3/15(木) 14:41:05 ID:97ObWMGE.2
妹はその日は早退した。
迎えに来たのは父親で、母親は病院に向かっていたそうだ。

錯乱して屋上からの落下。文句の付け処のない事故。事が事なので、警察も気を遣ったのか事情聴取は後日となった。

途中、木やプレハブの部室屋根に当たったおかげで姉は一命を取り留めた。と、夕方には学校にも連絡が届いた。

職員室に盗み聞きを仕掛けて拾った情報だ。居ても立ってもいられない気持ちはほんの少し落ち着いた。

なんとなく責任を感じて調べた成果はこれだけ。

「……は渡さない」

短い言葉に病的なものを感じられた。

自分は気付ける立場にいたのではないか?そもそも二人の間には一瞬たりとも入る事が出来なかった。

浮かんでは消える自責。

これが幼なじみとの距離。未だに姉と妹を間違えそうになるぐらいの。

男(ハッテン場にでも行こうかな)
59:🎏 前レスの男って道下正樹だよね?名前要らない? ◆J43/PIljHc:2012/3/15(木) 18:53:55 ID:BbaxKm3gIw
ちゃんとしたハッテン場を知らないため想像で書いております


─ハッテン場─

 周りの男性たちを眺め、ため息をつく。どうにも気分が乗らないのだ。
 これならバーで一杯引っ掛けてその後に適当な女を抱きに行った方が気が晴れただろう。自分の行動を後悔しまたため息をついた。

モブ1「なぁそこの兄さん。よかったら俺らと一発しない?」
モブ2「そうそう。兄さんさっきからため息ばっかじゃん?幸せ逃げるよ〜」
モブ3「2の家がすぐそこだしさ、シャワーも貸してあげるよ」

 頭にノイズが入る。今は何も考えてはならない。考えたくない。考えたら、──自分は死んでしまう。
 モブ達に大人しく着いていく男の頭に閃いた映像。それはAだった。

 そして男は夜明けまで犯され続けた。
60:🎏 すみません忙しいから一文だけ(引越準備中) ◆rVJzEQ7fWg:2012/3/16(金) 08:21:02 ID:X3/m/moTjA


アッー!
61:🎏 12時間ルール適用します ◆xT/7hZrSec:2012/3/17(土) 00:54:55 ID:YisBEfG4Ko
ーーーーーーーー
姉は眠り続けていた。
いや、目の前にいるのは自分の片割れ。
二人で一人。
故に彼女こそが妹なのかもしれない。

否…

B「私が、B。Aはお姉ちゃん1人なんだよ…」

思わず漏れ出た呟きは、涙を引き連れていたらしい。
頬が濡れていく感覚。

Aは、結果的には重傷で済んだ。
ただし、錯乱状態だったということで、一般病棟の個室にいることになった。
両親は一度家に帰り、着替えなどの準備をしている。
連絡を受けた父親は旅から直ぐ様戻り、混乱した母親を支えていた。
姉の意識が戻らないのは、心因的なものらしい。

B「私が、双子の妹だからこんなことになっちゃったの?」
62:🎏 ◇J43/PIljHcさんへ。その通りです。相談は無しって事なので、判断はお任せですわー。◇rVJzEQ7fWgさん、引越乙ですわ。  ◆DPehMNPNeE:2012/3/17(土) 07:25:44 ID:lQY/PDHNwE
B「同じだったら、触ることも話すことも出来ないのに」

体に障らないよう、髪の端にそっと指を重ねる。汗と血の脂を吸った髪は少しだけ重い。
看護士さんが温かいタオルで拭いてくれたけど、落とし切れなかったみたいだ。

B「振り回して、頑なになって。極めつけはこれ」

B「こんなのが二人になったら周りのみんなが困るよ。誰が面倒見るのさ」

生き写しの鏡を覗き込む。距離があるから見える。多分、同じだと見えない。



B「Aの気持ちがわからないから知りたい、Aが私と違うから欲しい」

B「眺める事しか出来ないわっかの景色よりも、隣にいる貴女が大切で」

B「歪んだ想いと不条理は等しくて」

B「私は歪んだ想いを捨てた」

弱っていた。情けなく痛みを吐き出した。これは形にしてはならない言葉だ。
耳に返る痛みが更に妹を憂鬱にさせた。
63:🎏 ◇rVJzEQ7fWgさんお疲れ様です ◆J43/PIljHc:2012/3/17(土) 15:36:10 ID:Zl6/kKfzlY

 この想いはどうすればいい?

 姉の事故から二週間が過ぎた。三年生には受験特有の張り詰めた空気が戻っていた。
 姉は相変わらず意識が戻らない。そして男──道下正樹もまたあれ以来学校に来ない。クラスメート達はいつもと変わらず談笑している。自分だけが周りから取り残される感覚に寒気を覚える。
 世界が変わっていっているのか、私が変わっていっているのか、或いはその両方か。
64:🎏 ◆rVJzEQ7fWg:2012/3/17(土) 20:21:31 ID:fE7XORbN5U

あ、と声が漏れた。
“自分だけが取り残された感覚”、それはもしかしたら、あの頃姉が感じていたことと似通っている気がしたからだ。

<道下正樹>を、<A>はずっと避けていた。
<B>と<道下正樹>は、幼なじみとして、それなりに仲は良かった。
<A>は、<A>と<B>を同じ物だと思っていた。

一度ずれた物を元に戻そうとし、元にもどっと思えばまたずれて。
それを繰り返すことを姉は拒み、あんな風に―――。


『Bは私と同じだよね』


同一であることを拒んだのは妹。きっかけを作ったのは道下正樹。同一であることに執着したのは姉。
では、綻びを広げたのは?

イコール、全員。
65:🎏 前回はすいませんっ! ◆KCXDu/KctI:2012/3/17(土) 21:51:38 ID:fAzrzYYGY6
誰が悪いとか誰は悪くないとか、そんな簡単な事じゃない。

最初は、気が付きもしないような小さなズレ。
だけど、小さなズレが重なれば、やがて大きなズレになる。

もっと早く気が付いていれば、もっと素直に姉からの歩み寄りを受け入れていれば。

後悔の念が、浮かんでは消えを繰り返す。

もう、どうしようもないのだろうか。元に戻るための扉は閉じられてしまったのだろうか。
66:🎏 私も以前やっちまったのでお気になさらず ◆xT/7hZrSec:2012/3/18(日) 00:32:42 ID:666H/dZvzI
溜め息を知らずについていたらしい。
それを聞いた母親がテーブルを挟んで正面に座った。

母「Aと、何かあったのね」

それは咎めるような口調では決してなかったが、妹は頷くのが精一杯だった。

母「昔ね、言われたの。なんでBと同じ顔なの?って」

妹は弾かれたように顔を上げた。

母「片割れだからよ。って、大事にしなさいね。って言ったわ」

B「…私たちは二人で一人ってこと?」

以前否定したことをひっくり返されたようで、問い掛けは非難めいたものになった。
だが、母親は首を横に振った。

母「1+1は1にはならないのよ…私の娘は二人だわ」

そして、母親はにっこりと笑った。
妹は安心して

大声で泣いた。
67:🎏 ◆DPehMNPNeE:2012/3/18(日) 07:02:47 ID:0xMxSIy0tQ
何故理解してくれないの?
心の中で繰り返し姉にしていた非難は、真っ直ぐ跳ね返って胸をえぐっていた。

あの時、柵を越えて責め立てたのは妹か姉か。

どちらであれ、溝は深く。いつかは訪れる災難だったに違いない。

頭で理解していても結果には納得がいかず。
怒りと悲しみでささくれ立った心に、母の穏やかな言葉が染み入った。

考えていたつもりが、自傷のような真似をしていたと気付かされて張り詰めた糸が切れた。



伸びをして強張った体を解そう。
腫れぼったい目を擦りながら、屈伸をする。

B「あ、擦ると余計に腫れちゃうんだっけ」

冷やして見るかと、冷蔵庫から氷嚢を拾いに行く。
さりげなく台所に食事が用意してあった。流石と言うかなんと言うか。

お目当ては見付けた。試しに氷嚢を直接当ててみる。

B「わっ、つめたー」

久しぶりに明るく素直な声が出た。間を置いてから笑みが零れる。
68:🎏 ◆J43/PIljHc:2012/3/18(日) 09:36:07 ID:67CEghovMM

 明日は姉のお見舞いに行こう。行って自分の想いを話そう。姉はまだ目を醒まさないだろうけど、私の声はきっと届くから。
 自然とそう思えた。妹はたった二週間とは言え、姉の元へ行くのをご無沙汰していた。
 久しぶりに味わって食べた母の料理はしょっぱかった。
69:🎏 すいません、12時間ルールで ◆KCXDu/KctI:2012/3/19(月) 11:17:49 ID:U6JcNKAVDk
「Aさんですね。えっと502号室ですね」

こんな大きな病院に来たのは久しぶりだ。受付のお姉さんに部屋を教えて貰い、姉の元に向かう。
うっかり、母に部屋を聞くのを忘れていたのだ。

それにしても、病院というのは独特な雰囲気だ。生と死が交差しているからなのか。それともまた別の理由なのか。

なんて、姉とは関係の無いことを考えて落ち着こうとする。
姉を見舞うことに一抹の不安を感じているから。

寝たきりの姉を見て平静を保てるのか。自信は全くない。
70:🎏 ◆xT/7hZrSec:2012/3/19(月) 21:03:21 ID:nHzDh4Fv9o
病室のドアを開ける。
2週間前から変わらない停滞した空気。
あまりにも静かすぎるそれに圧倒されて、妹は泣くタイミングを逸した。

B「久し、振り」

口をついて出た声は掠れた。
それでも喉から絞り出すように言葉を続ける。

B「そういえば、昔お姉ちゃんの方が朝弱かったよね」

静かな寝息を立てて眠る姉。
その傍らに妹は座る。

B「やっぱ、同じじゃないじゃんね」
71:🎏 ◆DPehMNPNeE:2012/3/19(月) 23:26:10 ID:48jD1VNWUM
白く、雑菌どころか人間さえも遮る病室。姉にぴったりだと思った。

私はこうはなれない。いつも何処かで妥協して、灰色に染まってしまう。眩しさと切なさが胸を締め付ける。

B「ちょっとごめんね」

気を取り直して頭を切り替える。
容量だけが取り柄の不格好な鞄から着替えやタオルを一式取り出し、使用済みのものをビニールに包んで代わりに詰め込む。

何か作業をしていれば少しは楽だ。視線がそちらに固定されるから。

鞄の外ポケットからハンカチとコップ、歯ブラシを引っ張り出して仕上げだ。

B「出来上がり」

起きたらすぐに使えるように。
まあ、一階に売店だってあるし。そこまで不自由はしないだろうけれど。

お守りみたいな感覚なのかも。きっと元気に起きてくれる。準備を念入りにすればその分早く、と。
72:🎏 幸せは逃げるよ ◆J43/PIljHc:2012/3/20(火) 00:33:58 ID:0JZBd7ZYdQ

 する事もなくなり、折り畳み椅子をベッドの傍に置いて座る。静かに眠り続ける姉の顔を見つめる。

「あっ……」

 改めて観察してみると顔の造りは同じでも肌の色、黒子、睫毛の長さなど、僅かに違うのだと分かった。
 私はBでお姉ちゃんはA、=にはならないんだ。

「ねぇお姉ちゃん、聞いてほしいの」

 昨日から考えていた事、今気付いた事、ありったけの気持ちを、考えを伝えよう。
 大丈夫、私たちはまたすぐに仲良くなれる。そう信じてる。だから聞いて──私の話。
73:🎏 ◆rVJzEQ7fWg:2012/3/20(火) 20:27:57 ID:.GH.QQdHf2
やっべえすいませんパスで
前回今回とすいません。
24日が引っ越し当日なので、これからあんまり時間とれなさそうです。
12時間経っちまってたらどんどん飛ばしてください。
74:🎏 ◆KCXDu/KctI:2012/3/21(水) 10:24:44 ID:Y94rLx4y/E
ねえお姉ちゃん、覚えてる?あの日の事。私達が同じじゃなくなったキッカケの事。
この前の感じだと、覚えてるどころか今でも引き摺ってるみたいだったけど。
正くんがさ、言ったんだよね。いつも一緒で変だってさ。
確かに変だよね、することも話すことも一緒じゃ。
あの時は2人で否定したけど、私もお姉ちゃんも、あの時からちょっとずつ間を置き始めたんじゃないかな。
そりゃそうだよね、好きな男の子に変だって言われたらさ。

でも、こんなに間隔を空けなくても良かったのにね。私達、極端すぎるね。

……私ね、気付いたんだ。しかも、なんで今まで気付かなかったのか分かんないくらい簡単なことにね。

私達は、パッと見はそっくり。でもよくよく見ると違うところはいっぱい。
だけどね、やっぱり本質の所では私達は一緒だよ。

意地っ張りで、極端で、寂しがりや。


……一人じゃ、寂しいよ。お姉ちゃんがいないとやっぱりダメなんだよ。私は妹、姉がいないと成り立たないんだよ!

ねぇ起きてよ!もうやだよ!お姉ちゃんがいない世界なんて無理だよ!
75:🎏 ◆xT/7hZrSec:2012/3/21(水) 21:23:44 ID:ypooTi7IVQ
妹は心からの叫びを努めて静かに吐き出した。
最後の方は感情の昂りに任せるままではあったが、取り乱すこともなく。
だが、病室という空間はそれすらも吸収するのか。
姉のバイタルが正常であることを示す電子音のみが規則的に鳴り続ける。

B 「なんて、そんなに上手くいk」

姉の瞼は閉じたままではあったけれど。

B「か、看護婦さん!!」

指先の微かな一瞬の震え。
身じろぎひとつしなかった姉の大きな変化に、妹は今度こそ取り乱した。
76:🎏 ◆DPehMNPNeE:2012/3/22(木) 00:27:44 ID:3/ZhaVXTRU
ナースコールをしても良いのかと迷う。
ええい時間が惜しい。でも、心証を悪くしたら待遇も悪くなっちゃうのかな。

仕方ない、足を使って呼びに行く。とにかく暇そうな看護士さんを捕まえるのだ。

病室の外の手近な白衣の群れから目標を引っ張る。丁寧に、有無を言わさず。

慌てて捕まえた看護士さんは手早く姉の様子を診てくれた。そして営業用の笑顔でささやかな祝いの言葉を吐いた。

「良かったですね、きっと元気になる予兆ですよ」

きっと。

多分に願望が含まれた言葉。このきっとはいつまで続くのだろう。嫌な想像は尽きない。だって、それだけ大切なのだから。

温かい手。布団に包まれて熱を持った姉の手を握る。

B「私を渡さないんでしょ?誰にだか知らないけど」

いつも振り回されっ放しな姉に、意趣返しとして一つ爆弾を投げた。
77:🎏 ◆J43/PIljHc:2012/3/22(木) 09:05:31 ID:Zl6/kKfzlY

 軽くベッドに乗り、姉に覆い被さる。そして顔を近付けその唇に唇を重ねる。閉じた唇を舌で無理矢理抉じ開ける。

「……ン、ふ」

 姉の口の中は温かく柔らかい。そのまま舌で口内を蹂躙する。
 十分に姉の口を堪能し顔を離す。唾液が僅かに糸を引いていたのが目に映る。

「それじゃあまたね、お姉ちゃん」

 もう大丈夫。私たちは前に進める。
 そんな確信があった。
78:🎏 一文ですみません ◆rVJzEQ7fWg:2012/3/22(木) 19:46:37 ID:C4OFHBqYdM


そうして、帰路についたときだった。
79:🎏 ◆KCXDu/KctI:2012/3/22(木) 21:39:44 ID:/YYDBeJ2g.
男「よう」

後ろから正くんに声をかけられ振り返る。

けれど、そこには見たことのない少女がたっていた。

B「えっと……どちらさまですか?」

男?「正樹です」

B「いやいや、えっ、なに、どーゆーこと?」

男?「あー、ごめん、Aのお見舞いに来たんだけど駄目だったかな?」

B「あっ、うん。それは嬉しいけど。いや、その格好……」


80:🎏 みんなの心遣いに感謝!! ◆xT/7hZrSec:2012/3/23(金) 23:50:07 ID:t8fWvnQWr6
正樹と名乗った見知らぬ人物は少し言いにくそうに口ごもった。

B「まあ、人それぞれだしね」

自分は姉が好きで。
正くんは実はこういう人で。
姉は1+1=1にしたくって。

みんな人それぞれだ。
81:🎏 おはようさんです。最終日、張り切っていくよ! ◆DPehMNPNeE:2012/3/24(土) 05:35:41 ID:9j6V3YbTfs
B「着痩せするねー。なんでだろ、今まではそんな風に思わなかったのに」

男「だろうね」

正くんは落ち着きなく、栗色の長い髪を指に巻き付けて弄んでいる。ちょっと様になってる。あれはウィッグかな。

男「もしかして、今帰り?なら悪いことしちゃった」

B「時間なら余ってるから大丈夫。病室分からないでしょ?案内するよ」

チラリと爪を見る。綺麗だ。きちんと手入れされていて、主張し過ぎない程度の明るさ。・・・・・・あちゃー、これはガチかも。

色々と複雑になりながらも、振り返り道を戻る。

男の子に対する小さな夢がぶち壊された気もするけど、仕方ないよね。

正くんのたっての希望で三人分の苺みるくを買って病室に入る。
結露した水滴を、彼?彼女?がハンカチで一生懸命拭いているのは見ていないことにして。
82:🎏 ◆J43/PIljHc:2012/3/24(土) 13:24:05 ID:ieSzhKrys2

「久しぶり、A」

 返事がないことを知っていても正くんは話しかけた。
 私の気のせいだろうか、先ほど見たときよりもAの顔は随分と穏やかで血色が良くなってる。

「俺さ、Aに謝らなくちゃって思って」

 一人淡々と、でもたくさんの感情をこめて語りかけている。

「きっと、誰かが悪い訳じゃないんだ。でも……ごめんな」

 その言葉はとても鋭く、そしてとても暖かく優しい。気がつけば二人とも涙が溢れていた。
 五分程静寂が続き互いに泣き顔をバカにし合っていると。

「…………ょ」

 僅かな物音とそして二人のものではない声が聞こえた。恐る恐る振り向くと目を開けた姉がいた。

「二人して、……何泣いてるのよ」

 笑いながら言った姉に、二人は今度こそ号泣した──。
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停止しますた。ニヤリ・・・( ̄ー ̄)
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