2chまとめサイトモバイル

2chまとめサイトモバイル 掲示板
チーム:変態収監所【家族】
[8] -25 -50 

1: 名無しですが何か?:2012/3/4(日) 12:18:34 ID:1lvOPQUkic
お題【家族】

下記の順番でお願いします。

キマラシ ◆0sHUq1EiMQ
枕 ◆t5ttWOhuII
乙潤 ◆nyan.ce4UM
寅午 ◆.eH7uaEVrQ
鬱岡 ◆CevUvUjMhQ
普乳 ◆kSd3h.IkGU
お姉様 ◆RO2jhvAC9Y
PK ◆UnV9.Bq5g.



2: キマラシ ◆0sHUq1EiMQ:2012/3/4(日) 19:28:19 ID:QzP3CfJMbU

朝、私は清々しい気分で目が覚めた。

辺りはまだ薄暗く、目覚ましで時間を確認してみるといつも起きる時間より一時間も早かった。

「どおりでまだ薄暗い訳だ……」

確かにこの日は私にとって忘れられない日なのだが目覚ましより早く起きてしまうとは……自分の子供っぽさに少し呆れてしまった。


3: 枕 ◆t5ttWOhuII:2012/3/4(日) 19:54:01 ID:7AAOSzGVqU

「おはようございます、ご主人様」

 部屋を出たところでメイドと出会す。

「ああ、おはよう。朝食はできてるかい?」

「はい。本日は卵スープとベルギーワッフルでございます。ワッフルは国産蜂蜜にてお召し上がりくださいね」

 お辞儀して彼女は去っていく。

 私は食堂へ向かった。

「あら、お父様。おはようございます」

 そこには娘がちょこんと座っていた。相変わらず綺麗なブロンドだな。
4: 乙潤 ◆nyan.ce4UM:2012/3/4(日) 22:43:46 ID:0JZBd7ZYdQ
「おはよう娘ちゃん。今日も一段とかわいいじゃないか。ところで、小さい方の娘はまだ起きt…」

バアアアン

「おとーさま!おとーさま!おっとおーっさまぁぁぁ〜!!!」

食堂全体に響き渡る声。

外れんばかりの勢いで開
け放たれた食堂の扉。

そこから飛び出してきたのは、満面の笑みを浮かべた、天使を彷彿させるような、小さい方の娘であった。

「はぁ…」

深いため息。

次に起こるアクションを考えると無意識にも嘆息してしまう。

「おっとぉーさまぁ〜!」

タッタッタッタッ ダッ

さながら、走り高跳びの選手のような美しい跳躍から繰り出されるローリングソバット。

「グフッ」

娘に怪我をさせるわけにはいかない。
従って、おとなしくローリングソバットを体で受け止めるしかない。

「おとーさまっ!おはようございますっ!」

娘なりの好意なのだろうが、もう少しきちんとしたコミュニケーションは取れないものなのだろうか。

こうしてようやく落ち着いて朝食をとることができた。
5: 寅午 ◆.eH7uaEVrQ:2012/3/4(日) 23:20:08 ID:/XrHcIN.Dk
「ごちそうさまでしたっ」

下の娘は元気よく椅子からとびおりると、たったかと足音をたてながら食堂をでていこうとする。

「妹ちゃん、お待ちなさい」

それを上の娘が厳しい声で引き留めた。

「はぁい、おねえさま」
「はい、いいお返事です。…けれどね、ご飯の前に、お父様にローリングソバットをかますのはいかがなものかしら」

下の娘はきょとんとした顔で、自分をまっすぐに捉えた姉の瞳を見つめ返す。
わかるわね、と問いかける姉に、幼い娘はぐっとガッツポーズをした。

「わかった!ローリングソバットはごはんのあとにしますっ」
「ちがいます!」

さっそく私に向かって構えようとする妹を、上の娘が声を荒くして制止する。
危うく今朝の朝食をもう一度見ることになるところだったと(リバース的な意味で)、嫌な汗が私の全身から吹き出た。
6: 鬱岡 ◆CevUvUjMhQ:2012/3/5(月) 01:16:39 ID:uMelaGOOoQ
「妹ちゃん、お父様が好きなのはわかりますがもう少し表現方法を考えなさい!第一ですね食堂でのマナーとして…」



 結局下の娘は上の娘に礼節というものを小一時間説かれ、ヘロヘロになったまま食堂を後にした。
 私ならば過激だと思えどローリングソバット程度嬉々として受け止めるのだが、その点で上の娘は妻に似て肉体言語の趣味は持たないらしい。
 逆に下の娘は私に似て肉体言語での表現を得意としている。
 親に似るところは良く言われる顔立ちがすぐ思い浮かぶと思うのだが、こんな性格面がはっきり出る当たり中々面白いものである。

 突然ではあるがまずはっきりと言っておこう。
 私の可愛い娘達は、方向性は違いつつも少々愛情表現が激しすぎるきらいはあるがまっすぐ育っているとてもいい子たちだ。 
 親馬鹿と言われるかも知れないがこれはだれしもが賛同すべき事実であると思う。
 重要なことなので改めて主張しておこう。娘達は可愛い。


 ん?そういえば今日はまだ妻の姿を見ていないな。普段なら間違いなく朝食の席にはいるはずなのだが…
 確かメイドは私の私室前から妻の部屋の方へと移動していたので何か知っているはずだ。 

「メイドよ、妻はどうした?あの後妻の部屋へと行ったのだろう?」
7: 普乳 ◆kSd3h.IkGU:2012/3/5(月) 01:36:54 ID:ieSzhKrys2

「あ、ご主人様。その……確かに部屋には言ったのですが……、」

 普段はハキハキと話すメイドの口は珍しく歯切れが悪い。
 何かあったのか、数度問いかけたがメイドは口を閉ざしたままだった。

「えぇい、なら仕方ない。直接妻の部屋に行くまでよ」
「あ…!待って下さい!」
「だが断る!」

 歩きながらメイドと口論する。直に妻の部屋が見えてきた。

「分かりましたご主人様…!話しますので部屋を開けるのはどうか…!」

 メイドはそれほど私を部屋に入れたくないようであった。

「分かった。なら部屋には入らない。で、話とは?」
「は……、はい、その……奥様は、知らない殿方と一夜を過ごされたのです……」

 目の前が真っ暗になった。


8: お姉様 ◆RO2jhvAC9Y:2012/3/5(月) 02:16:25 ID:Aqg/BSb8l.
時は遡り、妻との出会いは19年前の春、大学バンドのサークル仲間だった。
当時の妻は物静かで、大学では読書をしていることが多かった。
ただサークルでギターを弾いている時は最高の笑顔を見せる一面も持っていた。
私はそんな妻に恋心を抱き、想いを告げ、妻もそれに応えてくれた。

大学の4年間を終え、互いに就職も決まっていた。
私たちは同棲して1年が過ぎ、長女を妊娠、そして出産。
最初結婚を反対していた妻の両親も、孫の誕生と同時に和解し、結婚を承諾してくれた。
私たちは晴れて、夫婦となれたのだ。

私は妻の両親の経営する会社に転職し、今では副社長として会社の経営を任されるようになった。
長女が保育園の年長組に上がる頃、次女が産まれた。

妻は奥床しく、昼間は秘書として、私と会社経営を営み、二人の子供の育児、そして家事もメイドだけに任せっきりにせず手伝う、私にはもったいない出来た妻だ。
私は、順風満帆な人生に幸せを感じていた。

それ故、メイドの発した言葉がどうしても信じられなかった。
9: PK:2012/3/5(月) 02:38:58 ID:QfS7smOUok
「ええぃ、のけ!自分の目で確かめる!」

驚きのあまりに、語気が荒くなってしまう。どうしても信じられない。

「できません、旦那様!」

彼女がドアの前にたちはだかる。

「のけと言っとるのがわからんか!」

彼女を無理やりにドアから引きはがし、感情のままに扉を開ける。

それと同時に目に飛び込んできたのは



「……どっきり」

赤いプラカートを持った妻と、右手にビデオカメラを構える義母の姿だった。
10: キマラシ ◆0sHUq1EiMQ:2012/3/5(月) 03:26:02 ID:xjQJL6U.dM

次第に自分が盛大にからかわれた事に気付いて、さっきまで動揺していた自分が馬鹿馬鹿しくなった。

「イェーイ、ドッキリ大☆成☆功☆」

呆けている私のすぐ横でそう言いながら義母が妻とハイタッチをしていた(しかも義母は超ドヤ顔だった)

私は妻の寝室のドアをそっと閉めたのだった。

「さて、仕事を片付けてしまうか…いや、娘達と遊んでやるか……」

私が有意義な1日をすごすための予定を考えていると

「って無視すんなゴラァ!!」

そう言いながら義母がドアを勢いよく開けながら私にドロップキックをかましてきやがった。

流石に可愛い我が愛しの娘のドロップキックならば喜んで受けるが、相手は素手でライオンと殺りあった過去を持つチートババアだ。

蹴られたら今朝の朝食どころか臓物すらぶちまけかねん…

ここは全力で避ける!!
しかし次の瞬間私は義母のドロップキックによって意識を刈り取られたのだった
11: 枕 ◆t5ttWOhuII:2012/3/5(月) 07:20:11 ID:U6JcNKAVDk

「……ん?」

 目を覚まして目に入ったのは天井と妻の顔だった。

「あ、起きられましたか、あなた?」

 やや額に冷や汗を浮かべた彼女は、私の頭から手を退けた。

「お母様が膝枕をして差し上げれば起きると仰ったので、気持ち良いですか?」

 言われてみれば、私の頭を受け止めている柔らかさがいつもの枕とは異なっている。

「気持ち良いよ、ありがとう」

 私がそう言うと、妻の顔に花が咲く。そこで私が聞きたかったことを聞く。

「……今日がさ、何の日か覚えてる?」

 妻はキョトンとして首を傾げるだけだった。
12: 乙潤 ◆nyan.ce4UM:2012/3/5(月) 09:26:10 ID:T5oBtfpACg
「本当に覚えてないのか?」

妻の柔らかさを肌で感じつつ非難めいた口調で問う。

「え、ええ。桃の節句は過ぎましたし……メイドさんの誕生日とかですか?」

どうやら妻は本当にわかっていない様子だ。

「あのだな……」

バアアアン

「うぇっ!?」

妻が可愛らしい悲鳴を上げる。

本日二度目の、扉が激しく開け放たれる音。

今朝の光景がフラッシュバックされ、思わず身構えた。
しかしそこにいたのはあの小さな可愛らしい悪魔では無く、メイドだった。

「そんなに焦ってどうしたのだメイドよ。」

どうしてこうも静かに扉の開け閉めを出来ないものなのかと嘆く間もなくメイドが言った。
13: 寅午 ◆.eH7uaEVrQ:2012/3/5(月) 10:59:58 ID:xZgsXzpN3.
「ご主人様ァ!!」

そのあまりの気迫に私はたじろいだ。

「だ、だから、一体どうしたというのだ」
「お、落ち着いてくださいメイドさん」

おののく私の後ろで妻は少し顔を赤らめていた。
おそらく膝枕を見られたからだろう。
大胆かと思えばふとした時に恥じらいを見せる、そんなところが愛らしいと思う。

「あなた…」
「おまえ…」

「そういう展開は結構ですから!」

メイドの一喝で話を戻す。

「それで一体なんの話だ?」

私が訊ねると、メイドは息を整え満面の笑みを浮かべた。

「坊っちゃんがお帰りになりました!」
14: 鬱岡 ◆CevUvUjMhQ:2012/3/6(火) 00:33:33 ID:uMelaGOOoQ
「ちゃーっすwただ今帰ったんすけどもぉww誰もいねーの?www」

 メイドが壊したドアから聞き覚えのあるどこか間延びした声がここまで届いてきた。
 私も妻も突然のことにびっくりしたもののつい顔が緩んでいる。
 それも当然だろう、息子に会うのは数カ月ぶりなのだから。
 膝枕は名残惜しいが早く迎えに行くとしようじゃないか!

「あ、久しぶりーっすw父さん母さん相変わらずラブラブだなww」

 …ちょっと見ない間に外見がかなり変わったらしい。
 最近の流行りなのだろうか、髪を茶色に染めて伸ばし、赤い眼鏡をかけている。
 目を下に移せばよくわからないベルトの多い黒のジャケットと、何処に売っているのか和柄の龍のジーンズという不思議な組み合わせだ。

「ちょwそんなに目を丸くしてどーしたのwwこンくらいのカッコーフツーだよwww」

 ううむ、これは学校が遠いからと預けた親戚の影響だろうか?
 確かあそこには30前後くらいのウェブデザイナーをしているという子がいたはずだ…それか?
 まぁいい、詳しくはゆっくり話を聞くとしよう。

「積もる話もあるだろうが、玄関で話すのもなんだろう。まずは荷物を置いてリビングへおいで」
「あいお!」
15: 普乳 ◆kSd3h.IkGU:2012/3/6(火) 00:57:56 ID:oJgqTZyDuc

─10分後─

「親父もお袋も元気そうでよかったっす!忙しくてなかなか連絡出来なくてさぁ……」

「本当に連絡の一つぐらい寄越しなさい。心配してるんだから」

「まぁまぁ、息子が元気にやれてる証拠なんだから構わないさ。ところで訊きたいのだがその格好は何だ?」

「あ、これぇ?流行りっスよ流行り〜!俺組に入ったんで!」

 メイドが淹れてくれた紅茶を飲みながら息子の話を聴く。
 組とは暴力団やらヤクザやらの組であっているのだろうか。いやいや我が自慢の息子の事だ、きっと町内の組合員などの事だろう。

─さらに40分後─

「それでさぁ、お金を一億ほど貸してほしいなー、なンて……」

 ブチン、と何かが切れる音がした。
16: お姉様 ◆RO2jhvAC9Y:2012/3/6(火) 01:28:19 ID:omb4nJ7J3.
私「久しく帰ってきたと思ったら金を貸してくれ?ふざけるのは格好だけにしておきなさい」
息子「面白い事言うね親父www」
私「そもそも一億も何に使うつもりだ」
息子「ちょっと親父、いや親父の事じゃなくてうちの組の親父の事で親父の事じゃないからカンチしないでね」
この発言で私は確信を抱いた。息子は暴力団に入ったのだと…それにしてもカンチってなんだ?
火星と木星の軌道を公転している小惑星ではなさそうだ。

私「わかってる。で、親父がどうした」
息子「親父が新しく事業を起こすんだよ。貿易会社を設立するらしいんだけど、出資金が必要なんだよ。でも今色々かき集めてもあと一億足りなくてさー」
私「でも何でお前がその一億を出さなきゃいけないんだ」
息子「だって出したら俺支部長に慣れるらしいんだよね!大丈夫だって、お金は後で返すからさ!だから、ね?可愛い息子の為に投資してよw」
私「何が投資だ、話にならん。帰れ」
17: PK:2012/3/6(火) 01:49:09 ID:nqE4lLULaU
「おいおい親父頼むよーww可愛いかわいい息子のためだと思ってさぁww」

まったく……なぜこんな屑に育ってしまったんだ。
金持ちの息子はこうなってしまうというフラグに私もあらがえなかったか。


「……つまみ出せ。金輪際この家に近づけさせるな。……首輪を使っても構わん。離縁する」

そうメイドに命じる。
予想通り、クイクイと袖を引っ張る感触。

「あなた……それは……首輪だけは……」

泣きそうな顔をしている。
お前にこんな顔をさせたくはない。しかし、これもすべて息子のためだ。

「……では、お前があいつに一切金を渡さないと。そう誓うのなら……私に誓ってくれるのなら」

「っ……」

やはりそうだったのだろう。彼女は後でこっそりと金を渡すつもりだった。
しかし、それだけはやめさせねばならなかった。息子のためにも。
18: キマラシ ◆0sHUq1EiMQ:2012/3/6(火) 02:26:02 ID:tZu5oC2b9.

緊迫した空気が場を支配する。

「わた「ふざけんなぁー」

妻は何か言いかけたのだが義母がそれを遮り息子にキレていた
19: 枕 ◆t5ttWOhuII:2012/3/6(火) 07:27:28 ID:6xJ3UYyEi6

「こんな湿気た家なんかとは喜んで縁切ってやるさ!! 金であんたが後悔しても、俺は知らないからな!!」

 そう言って息子は出ていった。

「ねぇ、おとーさま」

 それと入れ替わりで小さい娘が部屋に顔を覗かせた。

「さっきの茶色い人、だれなの?」

 彼がこの家に居た時、小さい娘とよく遊んでいた。

 だが、そんな娘にも彼が誰だか分からなかったようだ。

 金で後悔するのはお前だぞ、息子よ。

 私は天井を仰ぎ見る。

 何で今日に限って変なことばかり起きるんだ。
20: 乙潤 ◆nyan.ce4UM:2012/3/6(火) 12:13:26 ID:BbaxKm3gIw
「ッベーよ!マジヤッベーよ!超勢いで飛び出てきたけど、一億なんて金ぜってー用意出来ねぇし!
他に一億くれる様なダチとかいるわけねえしよっ!」

焦りと、一億が用意できないまま組へ行くことへの恐怖で、ヘルメットを被ることにすらもたつく。

いつもの倍はかけて、ようやく愛車のホンダ シャドウ750に乗り込む。

昔家を出る前に父親から買ってもらったバイクだ。

あの頃は
父『バイクなんで危険だからやめなさい!』

母『まぁまぁ、未だに移動手段が一輪車だなんて可哀相ですし、車輪が増えたほうが安定するじゃないですか〜』

何て事があって渋りつつもこいつを買ってくれたんだよな…

「なのに今回は渋る所か全否定しやがって。マジありえねーよ。ふざけんなよ糞親父が!」

半ば逆ギレしつつ愛車を走らせ、俺は館を後にした。
21: 寅午 ◆.eH7uaEVrQ:2012/3/6(火) 15:38:11 ID:tZenqkdHEI

…待てよ?

確かに、一億出すバカなんかダチにはいねえが。


俺は道路脇に愛車を寄せると、携帯を開きリダイヤルの先頭にきていた番号に発信した。

つ、つ、つ……という音に次ぎ、五回目のコールの途中で相手は出た。

「チッス、どうかしたんスか?」
「よお、例の一億の話だけどよォ」

相手の声色が、露骨に嫌そうなものへと変化した。

「マジでカンベンしてくださいよぅ、そんな金用意できませんて」

話を聞かない男に若干イライラしながら、俺は文句を遮り計画を話しだした。

「まあ聞けよ、カモは決まってんだ」
「…一億も出すようなバカがいるんですか?」

今度は相手の声色が怪訝そうなものへと変わった。


…確かに一億出すバカなんかダチにはいねえが。

「おう、サギの得意なお前に頼みてえんだ」

バカに一億出させるダチならいるわけだ。


「一体どんなヤツなんすか?」

俺はにたりと笑うとその質問に答えた。


「俺の親だよ」


22: 鬱岡 ◆CevUvUjMhQ:2012/3/7(水) 01:20:01 ID:uMelaGOOoQ
「メイド、ブランデーを濃いめで頼む。気付けでもせんとやってられんよ…」

 かしこまりました、と言いリビングを出て行くメイドを横目で確認した後つい心の内を零してしまう。

「本当に…どうしてこんなことになってしまったのだろうな、やんちゃではあったが素直な心を持った息子だったのに…人を疑うということを教えずに育てたのが良くなかったのか」

「おとうさま?よくわかりませんがかなしそうです、げんきだして!」

 そういえば、下の娘が今は隣にいたのだったな。
 この程度のことも頭からすっかり抜け落ちている当たり、私も自分が思うほどに心に余裕はないようだ。
 ところで義母は何故部屋の角でびっくりするほどユートピア!などと言っているのだろう?
 気でも触れたのだろうか。

 そんなことをぼんやりと霧がかかったような頭で考えていると、いつのまにかメイドが横へと控えていた。

 「ご主人様、ブランデーをお持ちしました」
23: 普乳 ◆kSd3h.IkGU:2012/3/7(水) 06:59:08 ID:8uKbgHD6iE

「あぁ、ありが……ブラン、デー…?」
「はい。ブランデーで御座います」

 メイドはにこやかに答えたが明らかにブランデーの色をしていない。何ゆえ緑色をしている。

「私、メイドオリジナルの抹茶ブランデーで御座います。なかなかいけますよ」
「そうか。ならウィスキーに変えてくれ」
「畏まりました」

 相も変わらずメイドのボケにはついていけない。
 訪れた問題とボケに腹立たしさと疲れを覚え、こめかみに指を当ててため息をついた。
24: お姉様 ◆RO2jhvAC9Y:2012/3/8(木) 00:14:42 ID:GriouPw.r6
すいませんパスでお願いします…
25: PK:2012/3/8(木) 00:29:34 ID:70VA5bn/Ag
ブランデーを受け取り、メイドを下がらせる。
これで部屋には私と妻と下の娘と、ユートピア中の義母。

「涼子、おばあちゃんとどこかで遊んできなさい」
下の娘に言いつける。はーいと元気よく返事をし、義母をパンツ一丁で部屋から連れ出していった。

これで部屋の中には私と妻と、義母のスカートのみ。

「なぁ……どこで、私は間違えてしまったのだろうな?」
妻に尋ねる。
「さぁ……?わかりません。あなたはずっと、結婚の時約束したままの、良き父でしたよ。
ずっとそばで見ていた私が言うんですから、間違いありません。きっと責任は」

「その先は言うな」

言葉が強くなる。その先は聞きたくない。間違いなく自分にも責任があるのだ。
それを彼女一人に背負い込ませてたまるか。

「これは、二人の問題だ。責任は二人にある。なに、いつも何とかなってきたんだ。私たちならできるさ」
根拠のない言葉だが、これがふさわしいような気がした。

涙をためながら、それでも笑顔で彼女が頷いてくれる。
ありがとう。

「さて、それならそうと決まったところで……作戦会議と行こうか?」

彼女が頷くと同時に、扉が大きな音を立てて開いた。
26: 枕 ◆t5ttWOhuII:2012/3/8(木) 17:46:19 ID:J77dTcstGk

「あ、ご主人様。結局、私特製のブランデーをお飲みになられたのですか」

 ウイスキーを持ってきたメイドが言う。

「どうですか、お味は」

 取り合えず、私は率直に言った。

「不味い」

 その言葉に衝撃を受けたメイドは部屋を猛スピードで飛び出していった。

「人払いはできたな」

 私は妻に向き直った。
27: 乙潤 ◆nyan.ce4UM:2012/3/8(木) 21:23:44 ID:IZEwmfHPwo
今日は何と扉の扱いが雑な日なのだろうか。

いっそのことドアを取っ払おうかとも考えたのだが、今はそんな場合ではない。

「で、だ。作戦というほどでも無いのだが、きっとあのバカ息子は再び何らかの形で私達にアプローチをかけてくると思う。」
「えっ、でもさっき、『喜んで縁何て切ってやる!』って……」

不思議そうな顔で妻が言う。

「あの状況だ。感情に任せてああは言ったが、息子にとって、今このタイミングで勘当されたのは大打撃だろう。しかしこれでお互い他人だ。家族でなくなったからこそ、冷酷に、卑怯な手段をとってでも何かをしてくる。そう思ったんだ。」

「なるほど。でもその何かって何をしてくるんですか?」

「すまんがそれはわからん。だが、蛇の道は蛇というからには、良からぬ側の人間の手を借りて行動を起こす可能性は高いだろう。とりあえずしばらくは来客、外出などに細心の注意を払う必要があるな。家にいるみんなにもこれを伝えねば。」

「わかりました。では私が伝えてきますね〜!」

妻が伝えに行こうしたところで今度はゆっくりと扉が開く。
28: 寅午 ◆.eH7uaEVrQ:2012/3/9(金) 09:27:24 ID:sdOKoiAXn.
「お、お父様……」

久々に見た「きちんと」開かれる扉に感動すら覚えたが、娘の様子が異常だったため褒めるのは後にしておくことにした。

「どうした?」
「う、うぅ……っ」

上の娘が珍しく見せる取り乱した姿に妻が駆け寄る。

「どうしたの?泣かないで頂戴」
29: 普乳 ◆kSd3h.IkGU:2012/3/10(土) 16:05:11 ID:oJgqTZyDuc

「お、お兄様が……、ぅ、うああああ……!!」
「落ち着いて。兄がどうしたの?」
「バ、バイクで……、事故に遭われて……っく、ぅう」
「それで?」
「相手の方が慰謝料等で一億寄越せと……」

 部屋にいた全員に衝撃が走った。
30: お姉様 ◆RO2jhvAC9Y:2012/3/10(土) 20:51:13 ID:doDuHsc89U
私「振り込め詐欺か。まったく…あの馬鹿の考えそうなことだ」
私は肩を落とし、残ったウイスキーを飲みほす。
長女「お父様…でもお兄様が事故を…」
妻「心配することないわよ、お兄様は大丈夫だから」
長女「うぅ…本当…?」
私「ああ、心配することはない。怖かったな…気分転換に散歩に出かけるといい。メイド、娘を買い物に連れて行ってあげてくれ」
メイド「畏まりました。さぁお嬢様、こちらへ」
メイドに連れられ、長女は部屋を出て行った。
ドアは静かに閉められた。
妻「あなたの言ったとおりになりましたね…」
私「まさかこれで一億出すとでも思ったのかあいつは…浅はかなものだ。預けた親戚はいったいどういう教育をしてくれたんだ」
妻「まあ……あの人ですからね」
私「それで納得できてしまうのが痛いところだな」
まだ昼前だと言うのに、今日と言う日に限ってなぜこんなに問題が起きるんだ。
私「なんで今日なんだ……」
31: PK:2012/3/10(土) 21:32:57 ID:90CFbYzMvA
「おー、どーだった?」
ソファの上に寝転がりながら、電話を終えたあいつに声をかける。
もともと乗り気じゃなかったみたいだが、シナリオをこっちが用意し、なおかつ借金までチャラにしてやると言ったら
簡単に乗ってきやがった。これだからバカは扱いやすい。

「あー、なんか女の子が出ました。しかし『お兄さんがバイクで事故』まで言った瞬間に泣きだしまして……
話最後まで聞いてくれてるかはわかんねーっす。一応慰謝料として一億必要、とは言っときましたが……」

「が、なんだ?」

「いや、その……」

「良いから言え。怒らねーから。むしろいわねーと殴る」
そう言って拳をちらつかせる。

「わ、わかったっすよ。あのっすねその、正直言って……さすがにこれは無理っすわ。
タイミング良すぎますし、なによりあんたが書いたシナリオがしょぼすぎます。
『電話で事故の医者料に一億円必要という』って……中学生でも無理だってわかりますよ。字間違えてますし」

「……」
笑顔で立ち上がり、笑顔で近づいていく。

「……あー、おーけー、カームダウンっす。落ちつけっす。
いいですか、いくらあんたが馬鹿でもきっとなにかひとつくらいは俺を殴らずにすむ方法を」

「いや、殴ろうなんて考えてねーよ」
笑顔のまま相手の言葉を遮り、そして続ける。
「ちょっと(ピー)そうかなーとか(オイー)を切り落とそうかなーって思ってるだけだし。
あ、よかったな。殴られはしないかもしんねーぞ?」
ここでもうちょっと笑ってみる。元仲間は泣きそうな顔になっている。

「す、すいませんっしたー!!!」
そして、そう言い捨ててどこへともなく逃げて行った。

……まぁいつか戻ってくるだろ。ここ、あいつんちだし。
32: キマラシ ◆0sHUq1EiMQ:2012/3/11(日) 02:09:04 ID:tcRtqtvME2

「つうか、マジ一億どうすんだよwwもうwこの際www妹誘拐してw身の代金wwwでも要求すっかなwwwwwそうだwwwwそうしようwwwww」

気でも狂ったのか笑いながら仲間にそう言い放った。

33: 枕 ◆t5ttWOhuII:2012/3/11(日) 10:57:33 ID:gV4cgvBG5M

 ゾクッとしたものが私の背中を走り抜けた。

「お兄様……」

 私は手元の写真に目を落とした。

 そこには私と下の妹と…………黒い髪のお兄様が居た。

 皆、笑顔だ……。

「前みたいに、皆で笑えないのかな……」
34: 乙潤 ◆nyan.ce4UM:2012/3/11(日) 14:59:59 ID:0B9Jecr0mE
「よーぉ〜帰ってきたのか使えない詐欺師ちゃんよぉ〜。」

オドオドしつつもあいつが家に帰って来た。
そりゃ財布も携帯も置いたままじゃ何処にもいけねぇだろうなぁ〜。

「あ、あの〜。もし、もしですよ?よかったら私の考えたプランで一億を奪っt「あ〜もういいよお前。邪魔だから黙って今から俺の話し聞けや。。」

駄目だ。これは覚悟を決めたやつの目だ。
確実に異常な何かをたくらんでる。そう思った。

「俺ぁ〜決めたんだよぉ〜。ヒャハハ、妹達を拉致ってよぉ〜親父に身代金要求すんだぁ〜。どうだ?手っ取り早くて簡単だろぉ?アヒャヒャ、使えないお前にも一度だけ挽回できるチャンスやろうかぁ?アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ……」

狂気。ただ純粋な狂気。
温室育ちだったお坊ちゃまはこんなにも簡単に壊れるのかと、驚きにも感心にも取れる感情が胸の中で渦巻く。

「黙ってねぇでよぉ〜チャンスやるってんだからさぁ〜てめぇは大人しくYesかハイか言えばいいんだ、よっ!」

理不尽なテンプルーへの右フック。
今まで口だけの奴だと思っていたが、意外にも意識が飛びそうなほどの重い拳に驚愕する。

従わないと命が危ない。
「はい。」
詐欺師は自らの命を取った。
35: 寅午 ◆.eH7uaEVrQ:2012/3/12(月) 05:48:35 ID:47PMIPHl4o


メイドに手を引かれながら、ぼんやりとお店までの道を歩いた。
考えていたのは、お兄様のこと。

事故?慰謝料…払えなかったらどうなるの?…お兄様に怪我は?無事なの?相手の方の怪我はどのくらいなんだろう?もし一生治らないような怪我を負わせていたとしたら?お父様は詐欺だと仰っていたけど…どうしてそんなことがわかるの。

そんな考えがぐるぐると廻る。

「お嬢ちゃん!」

ふいに背後で大声があがり、私はビクリと体を跳ねさせた。
振り返ると、車道の脇に留めてあるバイクにまたがった男性が、大きく手招きをしていた。

「ワンピースのお嬢ちゃん、君だよ!」

ワンピース?
……あ、もしかして…私?

私のことですか?と身ぶりで尋ねると、こくこくと大きく頷かれた。

「お嬢様、無視してしまいましょう」

メイドさんが握っていた手の力を強める。

「痛いわメイドさん…それに大切な用かもしれないから」

手を振りほどこうとしたけれど、メイドさんは頑なに離そうとしない。

そうこうするうちに、もう片側の腕を誰かに掴まれた。

「君のお兄さんが大変なんスよ、来てくれませんかね」

先ほどのバイクの男性だった。

「は、はい!」

真剣な表情に押されて、私はしっかりと返事をする。
私を止めるメイドを振り払って、彼は私をバイクに乗せた。

「大丈夫だから落ち着いてね」
「……はい」

その優しい言葉に私はほっと息をついた。
髪もお兄様と違って黒だし、男らしいし、素敵な方だと少し心惹かれた。

「…ごめんね」

呟いた彼の言葉は、エンジンに掻き消されて私の耳まではとどかなかった。
36: 鬱岡 ◆CevUvUjMhQ:2012/3/12(月) 23:26:06 ID:uMelaGOOoQ

「…ごめんね」

 これは誰の何に対しての言葉だったのだろうか。
 

 或いは父の、家族というコミュニティを守り切れなかった悔恨か。
 或いは母の、息子の道を違えてしまった懺悔か。

 或いは姉妹の、笑顔を保つことができなかった無念か。
 或いは兄の、家族に対して残された唯一の良心か。

 或いは詐欺師の、これから先が見えてしまったことに対する諦観か。
 或いはメイドの、暗い笑みを携えた策謀か。

 或いは義母の、恵まれない出演に対する狂気か。
 或いは作者の、義父の出番があるかないかもわからない出番に対する謝罪か。


 どこまでも暗く、人間の感情の一端を表すその言葉は一人の口から漏れたもの。
 されどそれは、皆の行く末を束ね物語を幸せな結末へと紡ぐ一筋の光明となり得るのだろうか。
 


 少しばかり場所を移したここは、ある意味その団結と精神性はもう一つの家族と言えるであろう所。
 兄が組と呼ぶ組織の部屋の扉の前だ。
37: 普乳 ◆kSd3h.IkGU:2012/3/13(火) 00:23:46 ID:NZ0gmpkD7I

「さ、降りて。行くよ」
「あの、どこに……?」

 妹さんは不安げに着いてくる。僅かに残った良心がチクリと痛むが今更気にかけていられない。
 だから、……心の中で謝る。ごめんなさい……、ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさいごめんなさい……、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……

「失礼します。……連れてきました」

 部屋の扉を開けると煙草の匂いがした。普段は嗅がないその匂いに眉間に皺を寄せる。

「おいおい、せっかくの美貌が台無しだぜェ〜?じゃ、お前はもういい、出てけ」
「……失礼しました」

 私を連れてきた男性は出ていってしまった。
 兄の元気な姿にほっとしたのも束の間、

「きゃっ…!?」

物凄い力で引き摺られソファに押し倒された。そして直ぐに口枷を付けられ、首輪と手錠が鎖で繋がっている物で拘束されてしまった。

「〜っ!〜っ!」

 抗議の声を上げるが当然声になっていない。それでも抵抗しているとスカートの中に手を突っ込まれ下着を剥ぎ取られた。

「…!!」

 実の兄に、誰にも見せたことのない秘部を舐めるように見つめられ涙が流れた。
38: お姉様 ◆RO2jhvAC9Y:2012/3/13(火) 22:42:43 ID:tmR2D2iuX.
??「何しとんじゃヴォケェー!!」
兄は叫び声と共に蹴り飛ばされ視界から消えた。
??「われは何しとるんかわかっとんのか!?手ぇ出したら交渉もやりにくくなるじゃろがクソが!!」
蹴り飛ばした男は兄の顔目掛けて何度も蹴りをいれていた。
兄「す、すいません若!つい勢いで…もうしません!勘弁しtry」
言い終わる前に若と呼ばれる男の蹴りが兄の口にめり込み、兄は口を両手で塞ぎ丸まり痙攣を起こしていた。

若「能無しが…すまねぇな嬢ちゃん、怖かったよな……ほら、下着汚しちゃったけど履いていいからね。おいお前ら、大事な客人に何してくれてんだ。はよ外せや」
「は、はい若!」
カメラや刃物を持っていた男達はすぐさま私の手錠と鎖を外してくれた。
床に投げ捨てられていた下着を拾い、私は部屋の隅に走り座り込んだ。出入口に別の男が居るため逃げ出す事は出来なかった。
若「嬢さん、もう何もしないから怖がんなくていいから、早く下着をはいた方がいい。風邪ひいちゃまずいからな。」
若「そんで、誰や。こんなくだらん芸を考えた味噌粕は」
「こ、こいつです頭…娘襲ってるディスク送りつけたら、簡単に金を払うからって…」
男の一人が丸まった兄を指差す。兄は口を塞いだまま若に視線を向ける。
呼吸も荒く、手は赤く染まり、目尻には涙を浮かせていた。
それをまるで野良犬を哀れむかの様に見下ろし、兄の前に大股を開いて座った。
若「お前はホンマに能足りんやな…せやから他からモタレや言われるんや。わしらは辺り構わず、ささらもさらやりゃえいっちゅうもんやないんや。交渉はビジネスや。どんだけ要領よく事を儲けるかを楽しみながらいかないかん。」
若「それにな、われのしよることは組を危険に晒しとんのやぞ?われがパクられんのは勝手やがな、察はここぞとばかりに親父までしょっぴこうとするやろう。そんでケツ割らないかんのはわしらや…そんなみっともない真似してみぃ、何処がわしらを引き取るんや?なあ、われはここまで考えたんか?なぁ?モタレよ、あぁん?」
若は兄の髪を掴み上げ、勢いよく地面に叩きつけた。
その瞬間、私は何が起きてるのか理解する間もなく若の腕にしがみついていた。
長女「ごめんなさい、もうやめてください!私の兄なんです!まだ何処もなにもされていません!兄も本気じゃなかったんです!だからもうやめて下さい!死んじゃいます!!もう許して下さい!!」
私は若の腕にすがり、泣いていた。
39: PK:2012/3/13(火) 23:28:10 ID:8KNNMHCSzM
「あん?じょーちゃん、こんな奴のことまだ兄貴言うんかいな。ゆーとくけどこんな屑、わし等ん中でも希少種やぞ?」
若が私がすがりつく腕とは逆の手で兄の髪の毛を引っ張り、頭を持ち上げる。

「助け……」
血まみれの鼻が曲がった顔で、命乞いをしている。きっと、鼻が折れているのだろう
その顔からはかつての優しかった兄の面影など、みじんも感じられなかった。

血まみれの兄の姿にどこか非現実なものを感じながらも、兄を助けてもらえるよう必死に言葉をつなぐ。

「お、おねがいです。兄を助けてください。なんでもします。お、お金が必要なら私が何とかします。だから……」

「……」ドサッ

若はそれまでつかんでいた兄の髪の毛を離し、少し考え込む。

「おいじょーちゃん。自分、なんでもするゆーたよな?」

嫌な予感を感じつつも、それに頷く。

「そやなぁ……とりあえず、わしの腕離し」

それまでずっと若の腕にしがみついていたことに気づき、慌てて離す。

「そんでやな。流石にじょーちゃんから金もらうわけにはいかん。かといってこっちも商売やさかい、このままじょーちゃんにお帰りいただくわけにもいかん。
まぁワシ個人としては帰ってもらってこの屑の処分したいんやけどな」

そう言って若は軽く笑う。話がなんだか変な方向に行っている気が……

「っちゅーわけで。まず、じょーちゃんが親から一億円借りてもらう。
そんで、それをそのままこっちに渡す。ここまではええか?」

なんだかわからないがとりあえず頷く。

「それと引き換えに、じょーちゃんはこの屑つれてこっから出ていく。これでどーや?」




40: 枕 ◆t5ttWOhuII:2012/3/14(水) 18:47:10 ID:qmh5YAfdUw

「わ、分かりました……。だから、兄を……お兄様を!」

 私がそう言うと、彼は何の躊躇いもなく兄を放す。

「お兄様!!」

 お兄様に駆け寄り、体を引き起こす。

 後ろから声が聞こえた。

「お嬢ちゃんがそのまま逃げる可能性も無いことはない。だから、1人か2人、付いてこい」

「私は逃げません!!」

 思わず声を荒らげてしまった。若と呼ばれた人は、頭を掻きながら困ったように言う。

「いやな、お嬢ちゃんのことが信用ならんって言ってる訳じゃないんよ? ただ、1つの可能性としてって事よ」

 彼は部下の人に「車を出すぞ」と言って奥に消えていった。
41: 寅午 ◆.eH7uaEVrQ:2012/3/15(木) 22:16:50 ID:25K21tG77g

しばらくお兄様を抱き締めたその体勢のまま、身動きができなかった。
体をこわばらせて若と呼ばれた男性の出ていった後をずっと見続ける。

「ぅ、」

兄だった。
折れた鼻からしたたる血が、私のスカートを汚した。

「お兄様、大丈夫ですか…!」

そっとその肩に触れようとした、瞬間。

「あ゛っへんりゃれえろおお!」

私は突き飛ばされ押し倒される。
先ほどと同じようなことをされるのか、という考えが頭をよぎり、逃れようにも体が動かない。

「ぅお、おまへのへいれ……」

違った。
兄は、私を殴る。殴る。

すぐさま周りの人々が止めに入ってくれたけれど、
それでも私は兄に手荒なことだけはしないよう頼んだ。
42: 普乳 ◆kSd3h.IkGU:2012/3/17(土) 21:55:04 ID:8uKbgHD6iE

 若と呼ばれていた人の部下を数人連れ、自分の家への道を辿る。携帯を見るとメイドから大量の着信とメールが着ていた。

「助けを読んでも無駄だからな」

 男たちにそう言われ、メイドに返事をする事を諦める。だがメイドは諦めていなかったようでメールが着た。マナーモードではないため、着メロであるマジンガーZが流れる。

「いいか、返信するんじゃねーぞ?」

 男たちは少々唖然としていたが、助けを呼ばない様釘を刺した。
 少女はそれに頷きまた歩き出す。

 10分ほど歩いたところで背後から激しいバイク音が聞こえてきた。一人の男が何事かと振り返ると

「ぶげらっ!?」

いきなり顔面を蹴られた。

「何事だっ!?」
「貴様ぁ…!」
「お嬢様は返して頂きますっ!」

 バイクに乗っていたのはメイドだった。

43: お姉様 ◆RO2jhvAC9Y:2012/3/17(土) 22:51:04 ID:GriouPw.r6
メイドは合気道と薙刀の有段者、そしてキックボクシングのアマチュアチャンピオンだった。
そして茶道に華道、舞踏に着付けの心得もあり、有名女子大学を主席で卒業し、大型二輪の免許を持つ才色兼備。

瞬く間に部下を一掃し、私を抱えてバイクを走らせた。
少女マンガの主人公になった気分だ…脇に強く抱かれ腕にメイドのDカップのマシュマロが当たって暖かいし柔らかいし格好いいし惚れてまうやろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉry
メイド「お嬢様!お怪我はありませんか!?」
ハッと我に還る。
長女「あっ……大丈夫」
メイド「嗚呼お嬢様…良かった本当に無事で良かった…メイドはお嬢様に何かあったらと心配で心配で…私がもっと強くお嬢様を掴んでいれば怖い思いもさせなかったのに。帰ったらどんな罰でも受けます。」
メイドは目尻に涙を浮かべていた。
現場から随分離れたショッピングモールの駐車場で止まり、メイドは私を下ろした。
長女「そんな、助けてくれたのに罰なんて…でもどうして場所が?」
メイド「それは携帯のGPSと、お嬢様の髪留めとお召し物につけた発信機と盗聴kry」
長女「えっ」
メイド「えっ……」
髪留めを外し、よく見るとビーズに紛れて発信機、ワンピースのリボンの中に盗聴器と発信機が着いていた。
長女「知らなかった…これ、いつから着けてたの?」
メイド「誤解されませんようにお嬢様、これは今回外に出られて何かあってはいけないと念には念をとry」
長女「これ今朝自分で選んで着たワンピース…」
メイド「それはいついかなる場合にも対処できる様に全てのお召し物に着けさせてはいただいてるもので決して趣味で盗聴いや貞操を護るためいやあんな声やこんな音をとかそんなつもりはふじこふじこ」
長女「もういい…黙って」
メイド「すいませんでしたお嬢様!!お嬢様の事がどうしても気掛かりでつい…どうか、どうか私をお嫌いにならないで下さい」
深々と頭を下げ謝罪するメイド。
まさかメイドがこんな趣味を持っていたなんて…じゃあ今まで私が自室で籠もってしてたアイドルの真似やネットを見てうふふとかそこからさらにうふふとかうふふとかうふふふふわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
メイド「お嬢様、お気を確かに!此処は安全とは限りません、ひとまず邸へ戻りませんと」
長女「あっ、は、はい。そうですね」
我に還った私はメイドの後ろに乗り、バイクは走り出した。






早く戻って、兄を救わなくては。
44: 乙潤 ◆nyan.ce4UM:2012/3/19(月) 21:40:03 ID:0B9Jecr0mE
メイドに乗せられ、ひとまず無事に自宅に帰ることができた。

「かくかくしかじかと言う訳でして〜」

メイドが、私に付けていた違法グッズ諸々を駆使して得た情報を全てお父様に話している。

「ふむ。メイドよ。普通ならお前は解雇相当のことをしていた訳なのだが、とりあえず今のところは役に立ったからお咎め無しということにしておこう。」

え、お父様。一応私にとっては私生活が一変するほどの一大事なんですけど……。

「まさかあのバカが自分の妹にまで手を掛けるようなやつだったとはな……」

「お父様!それでもお兄様が!お兄様がぁ!うぅっ……」

ボロボロと涙を流す娘。

「ねぇさまを泣かせるやつは、私がキャメルクラッチでしとめるから大丈夫だよっ!」

自分の兄がこの事件の中心だとも知らずに私を慰めてくれる妹。
落ち着かせようとしてくれることはとても嬉しい。思わず微笑みがこぼれる。

「ふふっ、ありがと。それでお父様。お兄様を助け出してはくれませんか?」
45: 寅午 ◆.eH7uaEVrQ:2012/3/20(火) 15:27:58 ID:G5S6hvVP/2

「……それはならん」

父の厳しい声色に、一瞬緩んだ空気が再びはりつめた。

「お兄様がしてらっしゃることは……私も薄々わかっています」
「ならばわかるだろう、金を払うことは私達のためにも、あの阿呆のためにもならん」

すすり泣く母が、あなた、と呟いて頭を振った。
妹は、父が母を泣かせたのだと判断し、キャメルクラッチを仕掛けようとする。
無言で妹を制止し、父と向き合う私。

普段はほのぼの仲良し家族である私達の思わぬ修羅場に居合わせた使用人達は、ひどく居心地が悪そうだった。
46: 普乳 ◆kSd3h.IkGU:2012/3/22(木) 19:10:54 ID:8uKbgHD6iE

「なぜお兄様を助けて下さらないのですか!」

「なぜか?ふ、その答えは簡単だ。アレはこの家の格に相応しくないレベルにまで堕ち、更には一億円を貸せとまで言ったのだぞ」

「ではお貸しなされれば…!!」

「馬鹿者っ!!」

 珍しい父の怒声に食堂にいたみなは一瞬身をすくませた。

「いいか!アイツのことは放っておけ!今はまだ子どもだから分からんだろうがな、将来母親になった時我が子に同じ事を言われたらお前は必ず私と同じ行動を取る!絶対にな!」

 それだけ言うと父は食堂から出ていった。乱暴に閉められたドアは悲鳴の様にキィキィと鳴っていた。
47: お姉様 ◆RO2jhvAC9Y:2012/3/23(金) 01:34:56 ID:MvZ84buXJc
「相応しくないレベルって何…お兄様をおじ様に預けたのはお父様でしょ…会いにも行かず、仕事だからって言い訳ばかりして放っておいたのは誰よ」
すすり泣く母は何度も、ごめんね、ごめんねと呟いている。
妹は母の背中をさすっていた。
「会社の経営をすることが成功なの?良い子で成績優秀なら誉められるの?髪を染めたり、オシャレな格好しなかったら優秀なの?失敗したり道を踏み外したら見捨てられるの?家族って何なの?子供より体裁が大事なの?家柄ってそんなに大切なの?お金ってそんなに惜しいの?もうお兄様は家族じゃないの?」
傍に立つ使用人が声を掛けてくる。
「お嬢様…旦那様は家族を見捨てるような人では…」
「じゃあなんで放っておけなんて言えるの!?お兄様がどんなお仕事に就いているか、これからどうなるのか私は知らないとd……ごめんなさい」
興奮のあまり使用人に当たってしまった事を反省する。

わかっている、兄がどれだけ不誠実な申し出をしているのか、我が家の財産で何をしようとしているのか、それに対する父の反応は世間一般で考えると、恐らく正しいのかもしれない。
だけど、自身の息子の危機に何もしないで放っておく決断をした父に遺憾と憤りを覚えるのは正直な気持ちだ。
このままでは恐らく兄の命は無いだろう。人の命を何とも思っていない人ばかりの世界だ。使いものにならなければ弾かれ、ただのチンピラとなりやがて警察に捕まる。それだけならまだいい、組の顔に泥を塗ったと思われ最悪……
不安は重なり最悪の結末が頭をよぎり、気付いたら私の目から涙が零れていた。
もう兄は帰ってこないかもしれない。昔は優しくて聡明で面倒見の良い兄だった。
遊び心も盛んで、一緒に悪さもした。妹にプロレス技を教えて、父に仕向けるように仕組み怒られもした。

でも今ではそれが生活の一部になっている。
それはきっと妹は兄を思っているから。
家族みんなが兄の事忘れていないと言う意思表示だったんだと思う。
今の生活に兄が加わり、お前が教えるから妹が野蛮になったんあだと叱る父、それを笑いながらすまんと謝る兄。それを見て笑う私たち。きっとそんな生活がこれから待ってるはずだった…

その未来はもう叶わないの?もう兄に会えないの?帰ってくるって約束してたんだよ?いつもみたいに謝ってお小遣い没収じゃだめなの?もう兄は家族じゃないの?
泣きだしてしまった私に気付き、妹も泣いている。
家族ってなんなの……

食堂に家族の泣き声だけが響いていた…



そしてメイドが口を開いた。
「奥様、お嬢様……今までお世話になりました。本日付で私はメイドを辞職したしますので、退職金として一億いただきたいと思います」
それはメイドがわが身を犠牲にする選択だった。
48: PK:2012/3/23(金) 09:12:41 ID:nUB3/LZQ6U
一瞬、部屋の空気が凍りつく。

「「「「「……………………」」」」」

まずはじめに口を開いたのは、まだ泣き顔の妹だった。……私も泣き顔だけど。
「いやだよ!めーもいなくなっちゃうなんて……そんなのいやだ!」
めーというのは妹が昔メイドを呼ぶときに使っていた呼び名だ。
めー、めー と子羊のようにメイドを呼び慕っていたことを思い出す。
「ねぇ、めー、いやだよ!でていかないでよ!」
「……」
妹の必死の懇願に耐えかねたのか、メイドが目線を下に落とす。
「いやだぁ!」
メイドのスカートにすがりつき、また激しく泣き出す妹。
それを見かねたのか、母が父の袖をクイクイと引っ張る。

ふぅ。父は軽く嘆息すると、メイドに向かって口を開いた。
「その決心、心からか?」

「はい」
いままでにない強い意志を持った目。少しだけ、かっこいいと思ってしまった。
「退職金は渡せる。しかし、次の職が見つかるまでの保証金はお前から言い出した退職なので出せない。それでもかまわないな?」
「……は、はい」
一瞬目の光が消えた。しかしさっきより弱弱しいながらもまた意思の光が灯る。父がにやりと笑った、気がした。
「ついでに言うとおまえの退職金は規定に少しおまけしても5000万だ。それでもかまわないか?」
「いいえ」
はっきりと言い切った。
「なら、辞めない、ということで良いのか?」「はい」
彼女の黄金の澄んだ精神は何処へか消え去り、後には、底に泥のたまった鈍色(にびいろ)の淀んだ魂が残っていた。

「……しかし旦那様」 メイドがあきれたような顔で口を開く。
「なんだ?」
「『空気』これ、なんて読むか知ってます?」
メイドは大きく『空気』と書いた看板を頭の上に掲げる。……どこから出したんだろう。

「atmosphere」
完璧な発音(多分)で父が答える。なんて言ったのかはわからないが、何となくそれっぽい気はする。
「普通、Airじゃありません?」
「こっちの方が意味的には近い」メイドの問いかけに父が返す。
「まぁそうですけど……」
「そんなことはどうでもいい。作戦会議だ」父が言う。
「いや、それが……」
メイドがいまだ服に縋り付いている妹を指し困った顔をする。
……妹は立ったまま眠っていた。泣き疲れたのだろう。それにしても……器用なやつ。道理で静かなわけだ。
納得しながら妹をメイドの服から引きはがし、ソファにねかせる。
涙とよだれでメイドの服がひどいことになっていたが……見ていないことにしよう。

「さて、今度こそ本当の作戦会議だな」
父が、会議の始まりを宣言した。
49: 枕 ◆t5ttWOhuII:2012/3/24(土) 13:56:51 ID:c6LdN8AlDo

「あの馬鹿は腐ったとは言え、私の息子だ」

 父は苦虫を潰した顔で言った。

「私が何処で間違えたかも分かっているつもりだ。それを知らん顔で放ってしまった結果だ。だから──」

 まるで懺悔のように父は呟いていた。しかし、その言葉は途中で止まる。いや、止められる。

「でりゃあぁぁ!!」

「ぷげらっ!?」

 お婆様のドロップキックによって……。

「お義母さん!? 何をするん──」

「ごちゃごちゃ言ってないでシャキッと言ったらどうだい!!」

 珍しく真剣なお婆様がお父様に言った。

「あんた、折角の格好付ける機会じゃ! 家族にナヨナヨした姿見せて先延ばしする気かい!? 『今日の残り時間』は少ない!! さっさと言いなぁ! 息子を助けたい、力を貸せって!!」

 お父様はよろけながらも立ち上がる。その目には固い決意があった。

「皆、馬鹿息子を一緒に助けたいから…………
 力を貸してくれ!!」


50: 乙潤 ◆nyan.ce4UM:2012/3/24(土) 16:42:30 ID:0JZBd7ZYdQ
「ふふふ、あなたならそういうと思っていましたよ。」

ずっと深刻な顔でいたお母様がようやく笑顔になった。

「まぁ私もまだこの屋敷のメイドな訳ですし、お嬢様とムフフなことをするためにも尽力しますかね!」

「……頼む。一億払うから今すぐにでも辞めてくれないか?」

苦い顔をしながらお父様は、冗談まじりに(だと思いたい)そういった。

「HAHAHA〜ジョウダンデスヨ〜」アセアセ

「私も当然、お兄様のためならなんでもしますわ!」
「ふむ。では作戦なのだが、メイドよ。お前のことだから蹴散らした部下にも何やら怪しい機械を付けて来たのであろう?」

「あ、よくわかりましたね。とりあえず一瞬しか無かったので、盗聴器とGPSの発信機くらいしか付けられませんでしたけど。」
えっあの間にまだそんなことしてたのね!?メイド……恐ろしい子っ!

「お前はメイドを辞めても充分違う仕事で働けるのではないか……。だが、それがあるなら話は早い。その部下の会話を聞けば敵勢力もバカ息子の居場所も分かるだろう。仮に移動していたとしても発信機の電波で居場所は確実に分かる。すぐにでも救出に向かうぞ。」

「お父様私もっ」

「お前はダメだ。さっき何をされそうになったか分かっているのか!」

「でもっ!」

「旦那様。娘さんは私が守ります。ですから共に連れていっては下さいませんか?」

メイドが真剣な目でお父様に頼み込む。

「……何かあったら退職金は無しだぞ?」

「お嬢様、大人しく家にいてください。」

「め、メイドっ!」

「冗談ですよ。」

お父様に頼み込んだのと同じ顔で言われると流石に冗談とは思えないよ……

「あなた、私は?」

「あのバカ息子の親は私達だろう?一緒に行こう。お義母様、小さい娘は頼みましたよ。」

「あらほらさっさー!」

……帰ってきたら家に髑髏型のキノコ雲が上がってるんじゃないかしら。


こうしてお父様、お母様、メイド、私の4人でお兄様救出作戦、オペレーションゲットバッカーズ(命名メイド)が始まった。

51: 寅午 ◆.eH7uaEVrQ:2012/3/24(土) 19:37:03 ID:LIH9xLQmeE
『──…くっそ、なんだあのメイド…強ぇ…』
『うっ…』
『おい、こいつ気失ってるんじゃないか…──』

移動中の車の中、メイドが部屋から持ってきた大仰な機械で、盗聴した内容を録音したものを聞いていた。
そのあまりに鮮明な音声に、おそらくそれまでこの機械の被害者だったであろう私が戦慄したのは言うまでもない。

『──とりあえずボスに連絡だろ』
『うぅ、怖ぇ…』
『おい、いいからこいつ運ぶのを手伝ってくれ──』
私たちがその録音を聞いているうちに、運転をしてくれている執事長がGPSで場所を確認しながら訪ねる。

「旦那様方、何やら四つあった反応のうち、二つだけ移動し始めましたぞ」

それは録音された音声の内容とも一致していた。

「移動し始めた方を追ってください。坊っちゃんの元へ向かうようです」

メイドさんが答える。
というかメイドさん、四人ともに発信器をつけていたの…。

一つしかつけられなかったらしい盗聴機の方は、幸いにも移動し始めた二人のどちらかにつけられたらしい。
お兄様を助け出す際のことを考えると、心強く感じる。

「了解しました。少し運転が乱暴になるやもしれませぬ、お気をつけくだされ」

執事長さんはそう言うと、アクセルを深く踏み込む。
乱暴さなど感じないが、周りの景色だけが移り行く速度を増した。

…お父様がぼそりと、運命とやらを感じさせられる、と呟いたことに、私は気づかなかった。

──この特別な日に、私たちは、再び『家族』として全員揃うのだな。
52: 鬱岡 ◆CevUvUjMhQ:2012/3/24(土) 20:35:21 ID:upUyOZQyEI
――怖い恐いコワイ

「さて、逃げません。と言っていたお嬢ちゃんがどういうことかいなくなってしまったんだが…どんな気持ちだい、お兄様?まぁまともに喋られるとは思っていないワケだが」

――なんでこんなことになったんだ
声がでない

「ま、バカやったくらいならちょっと指詰めて許してやらないでも無かったんだが」

――兄貴がなにか俺に話しかけてくる
体が動かない

「少しばかりハメを外しすぎちまったな。家族には迷惑かけちゃいけませんて習わなかったか」

――家族。この言葉だけは耳に残るけど兄貴の俺を見る目はゴミかなにかを見ているようで
アンモニアの臭いがする

「これからも親に迷惑かけ続けそうな子を養うと思うか?ま、そういうわけだ短い付き合いだったな………おい!このナマモノいつもんとこに捨てておけ」

――兄貴…いや若はあっさり俺を、家族を見捨てた



 全ての繋がりを自分で切ってしまった。
 関係を捨てたつもりはなかったんだけど…な、切れてしまってちゅうぶらりんだ。
 俺の手には糸くずが握られてるだけで本当に大切なモノは何一つ素手で掴んじゃいなかった。
 もうどうしようもないほどに手遅れになって今更気付いた関係。
 そういえば今日はあの日だったな………
遠くから車の音がする――
53: 普乳 ◆kSd3h.IkGU:2012/3/24(土) 21:51:35 ID:sy4TdTqfb6

「お兄様!!ご無事ですか!?」

 バン!っと扉が開くと共にメイドを先頭に父親、そして屋敷の警備員が入ってきた。突然のことに部屋の中にいた者は大した反応が出来なかった。
 その隙に何人かは拘束されていった。

「てめぇ!!」

 一人がメイドに銃を向ける。しかしメイドは臆する事なくその身体にタックルをかました。

「ふごぉっ!?」

 タックルした勢いのまま兄の元に辿り着いたメイドは、兄を俵持ちにした。

「兄は確保した!全員撤退!」

 父のその言葉と共に一斉に人が出ていく。時間にしてほんの二、三分の出来事であった。


─車内─

 メイドは運転する車内は静かだった。因みに警備員は休暇を取っていた者だったので作戦が終わった段階で解散していた。

「……」

 兄は妹達に治療を受けていた。父は誰かに電話をかけていた。

「分かった、では。……兄よ、お前は明日から私の下に戻ることになった」

 その言葉に兄以外のみなは顔を輝かせた。

「何でだよ……」
「お前がもう道を踏み外さない様にだ」
「んなの余計なお世話だっ!!」

 兄は吠えるが誰も意に介さない。

「こんな特別な日に家族全員揃うなんて、私は幸せ者だな……」

 父のその言葉に誰も返事は出来なかった……。
 その後兄は改心し、妹達の想いは叶えられた。家族とは、きっと、どんな時でも、どんな事があっても見捨てない、強い絆を持った人たちの事なのだろう──。
54: お姉様 ◆RO2jhvAC9Y:2012/3/24(土) 23:04:37 ID:tmR2D2iuX.
兄を奪回後、家族は無事屋敷に到着した。
帰り着くとすぐさま兄は屋敷専属の医師団に迎えられ、検査と治療の為リビングに案内される。帰りの車内で医師団を集めるようにも指示していたからだ。
私たちも後に続く。

幸い尿検査も陰性、外傷も娘たちの手当てが的確だったため、経過観察となった。

―23:02―
激動の1日を終え、私は疲れでソファーに座り込む。

「メイド…キツいバーボンを一杯頼む」
「かしこまりました旦那様」
メイドはリビングを後にする。
医師達も治療を終え退室した。リビングには私達5人だけとなった。
徐に兄が口を開く。
「…迷惑かけて、ごめん……その…父さん…」
父さん…永らく聞いていない言葉…悪ガキだった息子も、こう見るとまだまだ幼い。
「…お前が無事だった。それだけでいいさ……家族だろう」
家族…その言葉に兄は涙した。
ただの言葉なのに、何故こうまで胸に温かさがこみ上げてくるのか…冷え切ったグラスに温かい飲み物を注がれた様に、止められない汗が涙として溢れ出した。多くの言葉はいらない。
これから離れていた距離はかならず縮められる。
私は、いい子供を持った…

「ねぇねぇ、そういえば今日ってry」
二女が口を開くと同時にメイドがバーボンとグラスを二個持って来た。
「お待たせしました、旦那様、お坊ちゃま」
「おいおい、息子はまだ18で…」
「堅いこと言うなよ親父wwwもう飲み慣れてるってのw」
「まずはその言葉遣いから再教育しなくてはな。」
クスリと娘たちが笑った。
メイドに渡されたバーボンを二人が受け取り、息子とグラスを当て合いバーボンを一口喉に流し込んだ。一日の疲れが消化されていく気持ちだ。

私「……こうして、また家族みんなで暮らせる日を願っていた。それが今日と言う日に叶った。まったく…因果なものだな。」
息子「うるせぇやいwww」

私「今日はみんな、もう何の日かわかっているな?」
息子「しつこく惚気話聞かされて耳だこだってぇのw」
長女「お母様も歳を考えなさいよ」
妻「あら、私はまだまだ若いし現役よ?」
二女「お父様もだからね!」
私「お前はもう少しお淑やかにならんとなw」
ばつの悪そうな顔をする二女にみんなが笑い声をあげた。

私「……今日は、妻と出会って20年目の記念日、そして結婚記念日でもある、つまり…」







私「私達が、家族になった日だ」
55: PK:2012/3/24(土) 23:46:38 ID:gE8pwd8Sek
「あー、はいはい。またおっさんが臭いこと言ってるよww」
兄が文句を言う。しかしその顔は本当にうれしそうに笑っている。

「お兄様、その言葉遣い、妹に移さないでくださいね?」
おねーちゃんがおにーちゃんにちゅーいしてる。
でもえがおだからきっとおこってないんだ。

「おとーさま、おっさんくさいー」
あの、お嬢様、それはちょっと違うような?
……でもまぁ、面白そうだから乗っかっておきましょうか。

「旦那さま。とりあえずこれ、体臭が取れる石鹸と、話題の毛生え薬でございます」
あらあら、メイドさんってばあんなものどこから取り出したんでしょう?
……いえ、女には秘密の一つや二つ位あるものですわね。

「あなた、遠慮なく受け取っておきなさいな。この前、抜け毛で悩んでいたでしょう?」
くっくっく、うちの娘も図太くなったもんだね。昔はあんなに泣き虫だったのがさ。
ま、多少頼りないとこもあるけどあの旦那様のおかげかな?
ちょっとくらいはみとめてやってもいいかもねぇ。

「おや、そーなのかい?昔うちのじーさんが使ってた毛生え薬、後で届けさせようか?」

……まったく、なぜ私がこんな目に合っているのだろう。
そんなに楽しそうな目を全員から向けられたら、怒るに怒れないじゃないか。


「まったく……しょうがない家族だよ、お前たちは」

親父が、笑いながらあきれながら、楽しそうにつぶやいた。

〜Fin〜
56: 真・スレッドストッパー:停止
停止しますた。ニヤリ・・・( ̄ー ̄)
52.75 KBytes

名前:
sage:


[1] 1- [2] [3]最10

[4]最25 [5]最50 [6]最75

[*]前20 [0]戻る [#]次20

うpろだ
スレ機能】【顔文字