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チーム:夜会【騙す】
[8] -25 -50 

1:🎏 名無しですが何か?:2012/3/4(日) 12:58:12 ID:1lvOPQUkic
お題【騙す】

下記の順番でお願いします。

ガッチャピン ◆njsK9r1FDk
ゲソ ◆9nEkyiWUj6
トニー ◆zDv4YdgCF6
名無しくん ◆eRDUfXaGp2
鍵山 ◆OOv0QE0xGM



2:🎏 ガッチャピン ◆njsK9r1FDk:2012/3/4(日) 17:26:09 ID:6UUiCHuofE
この生活をして早くも20年程。代わり映えのしない毎日、見飽きた動作。
白髪が増えつつある生え際を撫でつけ、今日も仕事に向かう。


3:🎏 ゲソ ◆9nEkyiWUj6:2012/3/4(日) 17:44:49 ID:GJy45.yZXg
17時を過ぎた頃だろうか。彼は彼の仕事へと歩みだす。

沈む夕日が映し出す、彼の陰影に隠された真意を、或いはすれ違う女は知っていたのかもしれない。
4:🎏 トニー ◆zDv4YdgCF6:2012/3/4(日) 19:30:11 ID:AUdLdHLZEE
「すみません、道を聞きたいのですが」
彼の向かいから小走りに急いでいた女は、そう彼を呼び止めた。なんでしょうか、と自然な仕種で振り返った彼は、その穏やかな笑顔の下で冷徹に女を観察しはじめる。

5:🎏 名無しくん ◆eRDUfXaGp2:2012/3/4(日) 20:06:27 ID:PAa42pmhtk
息があがり閉じることのない唇は紅く塗られ、こぼれる吐息には白く色がついていた。
細い目には印象的な薄紫のラインが置かれ妖艶な雰囲気を演出する、だがなによりもそれを思わせるのは口元にあるほくろだろうか。

「どちらまで行かれるのですか?」

6:🎏 鍵 ◆OOv0QE0xGM:2012/3/4(日) 21:04:44 ID:SjykLH18N2
そう問うと女はどことなく寂しげな表情を浮かべながら答えた。
「この街の美術館まで…」
男はふと既視感を感じたがそれを拭い去った。
「残念ですが今日はもう閉館したはずですよ」
7:🎏 ガッチャピン ◆njsK9r1FDk:2012/3/4(日) 22:07:54 ID:6UUiCHuofE
すると一転、女は伏し目がちになり、
「……それは分かってますが、大事な約束をしてまして…」
と口が小さく動き、同時にほくろもそれに追随する。

…口にあまり出したく無かったのだろうか。
「そうでしたか」
だが、こちらも仕事が待っている。
「でしたらあちらの道を少し行けば交番がありますので、そちらで聞いては如何でしょうか…?」


8:🎏 ゲソ ◆9nEkyiWUj6:2012/3/5(月) 07:35:29 ID:jXjtQP5wys
美術館は"今日の仕事"への通り道であるため、案内することも思案したが、愚考だと彼はそれを意識の外へと追いやり無難な提案をした。
9:🎏 トニー ◆zDv4YdgCF6:2012/3/5(月) 08:58:06 ID:1HASR0l9Qw
しかし、またもやそれは思考の内に留まった。彼が思案している間に、女が挨拶もそこそこに立ち去っていったからだ。彼は少し瞠目しつつそれを見送ると、己も再び歩き始める。
ふと彼が見上げた空では、燃えるような橙を宵闇が浸蝕してきていた。急がなくては、と彼は足早に女が進んだは逆の方向へと消えていった。
10:🎏 名無しくん:2012/3/5(月) 13:16:01 ID:j/9XH463.Y
戸建ての木造住宅が立ち並ぶ住宅街、稀に通りすぎる人は今までのように冷たく見えた。

そういえばこの先を曲がれば先ほどの女が探していた美術館がある。

何故だろう…?美術館の方へと向かう足が重い、「たかが道案内をしなかっただけで良心の呵責が…?」「それとも…」馬鹿馬鹿しい、男は今までのように重い足に嘘をつき、先へ進んだ。
11:🎏 鍵 ◆OOv0QE0xGM:2012/3/5(月) 13:55:28 ID:AeHidzNwG.
『モーリッツ・エッシャー 〜不思議な視覚の世界』
重い足を進め、目に飛び込んできた美術館の看板にはそう書かれていた。
男はエッシャーという名前をしばし考え思い出す。
「あぁ、トリック・アートの人か…」

所謂『騙し絵』というやつだ。それは昇っても元の位置に戻る階段だったり構造上あり得ない立体だったり――。

そういえば、と男はあの女が約束をしていたことを思い出し、それらしき人物を探してみた。
12:🎏 ガッチャピン ◆njsK9r1FDk:2012/3/5(月) 16:28:12 ID:6UUiCHuofE
目当ての人物はすぐに見つかった。
艶のある短い黒髪、それに合う鋭い眼光。口元には横一線で、何かを待ちわびる表情。
携帯を片手に待つ男の姿は、背景と重なって非常に格好がつく。

(確かに、彼女の待ち合わせ人には相応だが…如何せん…)



(似合いすぎてる…)
13:🎏 ゲソ ◆9nEkyiWUj6:2012/3/5(月) 19:58:49 ID:rEsLET6s.U
自分には関係ない。そう彼は自分に言い聞かせ、彼は仕事へと向かった。

彼はその時点で、その黒髪の男に声を掛けなかったことへの、数時間後の後悔を予期することが出来なかった。
14:🎏 トニー ◆zDv4YdgCF6:2012/3/5(月) 20:22:35 ID:1HASR0l9Qw
場所は変わり、美術館の近くにあるとある喫茶店。小さい喫茶店だからか、顔なじみになったウェイターがいつものですね、とほがらかに席へ案内する。彼は人好きのするような笑みでそれに応えると、自分の仕事をはじめた。
彼の仕事は、個人が経営している探偵事務所に勤めている、いわゆる探偵である。依頼は逃げた飼い犬やら飼い猫やらを探す、というものがほとんどだが、半年に一度ほど、浮気調査といったものが入る。そして、今回がその半年に一度だった。
15:🎏 名無しくん ◆eRDUfXaGp2:2012/3/6(火) 01:34:09 ID:0XS1Gbf6Yk
女の勘ってやつは怖いものだ…決して数は多いとは言えないが今日までの依頼は全て女性からでそのうち白が0、つまりは確実に浮気をしていた。
仕事として割り切るならこんなに美味しい話はない、なんせちょっと探れば確実にボロが出るのだ、男とは鈍くて馬鹿な生き物、俺はそう解釈している。

だが今日の依頼は特別だ、何故なら…
「お待たせいたしました」
考えを遮るかのようにウェイターがコーヒーを持ってきた、軽く会釈をしコーヒーをすすりながら今回の依頼主の「男性」を待つ。

すると…

カランカラン

16:🎏 鍵 ◆OOv0QE0xGM:2012/3/6(火) 11:05:47 ID:bFDtNE5BAA
入ってきた男は辺りを見渡し私の方へ歩いてきた。
「失礼、探偵の男さんですか?」
「えぇ、じゃああなたが…」
「はい、今回の依頼をしました岡崎です」
「分かりました、では早速詳しい話を…」
「とりあえず何か飲ませてください。…あ、すみませんブレンドを一杯お願いします」
男は依頼人岡崎の態度に少しの不快感を覚える。
「で、今回依頼するのはこの二人の関係の調査です」
そういって岡崎は二枚の写真を取り出した。
17:🎏 ガッチャピン ◆njsK9r1FDk:2012/3/6(火) 17:59:01 ID:gI11xxLelI
「…この2人で、間違いないのですか?」
「ええ、こちらの2人の調査を依頼したい。」

写っていたのは極々普通のカップル。取り立てて言うことは無いが、先程の映像が脳裏に浮かび上がる。
(ははぁ、これはさっきの…)

「分かりました、引き受けましょう。期限はいつ頃までにしましょうか?」
「調査自体は二週間で結構です。」
「分かりました。できる限りの事をさせて頂きます。」

男は必要事項を岡崎に告げ、先に喫茶店を出て行った。
18:🎏 ゲソ:2012/3/6(火) 20:07:26 ID:T./AFUEEvE
空耳だろうか、探偵はそのときサイレンの音を耳にした。

私は何故、胸から血を流しているのだろうか?十余年、幸せな家庭の幸せな主婦として過ごした私は、テレビドラマにある様な愛憎劇とは無縁だったはずなのに、とそこまで考えてから考えるのをやめた。幸せな主婦ではあったが、幸せな家庭は私が一方的思っていただけなのかもしれないのだから。血が止まらない。血が生暖かい。
19:🎏 トニー ◆zDv4YdgCF6:2012/3/6(火) 20:37:14 ID:0UW08OXRsc
滔々と血が流れ、意識が薄れていく。いや、薄れているのは血だ。血が、赤から白濁した半透明に変わり――それがただのお湯だと、私は気づいた。
ああ、私は何をしていたのだろうか。そうだ、洗い物をしていたんだ。そう、なんだか寒かったからぬるいお湯で、お皿を洗っていたんだ。いや、手元にはお皿なんてない。あるのは、流しっぱなしだったせいか水溜まりになってしまっている、冷え切ったお湯だけだ。もとから水なのかもしれない。わからない。
自分で自分がわからなくなって、空を見る。鼠色が青を隠していた。雨が降るかもしれない。洗濯物を畳まなくては。洗濯なんてしただろうか。今朝したばっかりじゃないか。今朝とはいつの話だろうか。そもそも今は何時なのか。
もう、わけがわからない。とにかく外に行かなくては。この家から、出なくては――……
20:🎏 鍵 ◆OOv0QE0xGM:2012/3/7(水) 01:48:28 ID:Opd5Ib3YrA
名無しくんが忙しい様なので飛ばします。



『調査利用目的確認書』
簡単に言えば探偵の調査を依頼人が違法行為に使わないと証明する書類。今回で言えば岡崎が依頼した二人の情報を悪用しない、というわけだ。
普通男性が浮気調査と言ったら妻を調査するのが筋だろう。だが不思議な事に岡崎は知人である依頼の二人が浮気をしていないかを知りたいというのだ。確認書はしっかり書かせたがまさか『別れさせ工作』の下準備なんじゃ……などと考えていると

「お、ここか…」

隣の街にある依頼の夫婦の家に辿り着いた。
そう美術館で女を待っていた男の家だ。だが妻はあの道を尋ねてきた女ではないようだ。女の待ち人はこの男ではなかったのか、それともやはりこの男は浮気をしているのか……。

考えを巡らせているとガチャと玄関の開く音。咄嗟に探偵らしく身を隠す。そこには髪を濡らし慌てた様子で家の外に飛び出す女がいた。
21:🎏 ゲソ ◆9nEkyiWUj6:2012/3/7(水) 14:49:06 ID:qmuTkL.bmE
※12時間ルールで次の順番に回ります。

突然のことに探偵は避けきることが出来ず、ぶつかり顔を合わせてしまった。髪だけではなく、不可解にも全身を黒い液体でしとらせた彼女は、錯乱しているようだったが、調査対象に予期せぬ形で顔を知られてはいけない。探偵は即座に立ち去ろうとした。しかし倒れゆく女が目に入り、僅かに残る探偵の良心が足どめをしてしまった。倒れた女を中心に広がる黒い水溜まりを見て、探偵はやっと状況を理解する。
22:🎏 トニー ◆zDv4YdgCF6:2012/3/7(水) 15:43:12 ID:1HASR0l9Qw
探偵が黒と思っていたのは、褐色に程近い、赤だった。黒だったものが、急に色付いたかのように映える。探偵は赤が血であると認識し、慌てる。おびただしい量のそれは、少なくとも女だけのものではないだろう。そして、探偵の勘が正しければ、全て人のものだ。いったい誰のものなのか。探偵が知るよしはない。
もはやちょっとした池のような血。探偵が吸い込まれるようにそれの中心を見る。見続ける。しばらくして、遠くで頭を割るような音量のサイレンが響いた。その音で我に返った探偵は救急車、と漏らす。と同時に、響いていた音は霧消した。

23:🎏 鍵 ◆OOv0QE0xGM:2012/3/8(木) 12:18:05 ID:qvo.LPcHN.
※12時間経ったので飛ばします


幻聴か?今はとにかく救急車を呼ばねば。しかし調査対象に顔を知られるのは最大のタブーだ。このままここにいるのはマズい。かといって逃げたら俺が何かしたみたいじゃないか──

探偵は必死に考える。が、冷静になりきれていなかった。もしかしたら殺人事件の渦中かもしれないのだ。テレビじゃ探偵といえば難事件を解決がお決まりだが実際の探偵の仕事は地味なものがほとんど。こんな状況におかれるのは初めてだった。
24:🎏 ガッチャピン ◆njsK9r1FDk:2012/3/8(木) 19:00:32 ID:.XFomPqRuI
そうこうしている内に流れる血が弱くなっている…

(……ええいままよ‼)

探偵は携帯をかけながら女の傷に手を当て、止血を試みた。


………
……




25:🎏 ゲソ:2012/3/8(木) 23:05:20 ID:mjiyMOsgto
血液は粘りつくんだな、と探偵は救急車に同乗しながら心の中で呟いた。救急隊員が言うには詳しい状況を訊かなくてはいけないらしい。
26:🎏 トニー ◆zDv4YdgCF6:2012/3/8(木) 23:48:48 ID:HTBgGj87.M
しかし探偵にわかるのは血がたくさんあった、ということ程度で、その他のことはむしろ救急隊員のほうが詳しいだろう。それを正直に話すと、隊員は少し訝しげになりながらも、そうですか、と応えた。
――職業柄、洞察力には優れていたつもりだったが……。
探偵は車の天井を見上げ、憂鬱な気分でそう思った。サイレンが響く。探偵は音が違うな、と考えた。
27:🎏 鍵 ◆OOv0QE0xGM:2012/3/9(金) 11:53:53 ID:McH/7foGJk
だが具体的にどう違うかがはっきりしない。そもそも救急車のサイレンがどんな音だったのか思い出せない。今頃調査対象の男の家には警察が入っているのだろう。こんな状況では今回の依頼は失敗に終わりそうだ。岡崎にはなんと説明しようか。

あれこれと思案している内に病院に着いた。手術室に運ばれる女。とりあえず待合室で待っていると男が玄関から駆け込んできた。
28:🎏 ガッチャピン ◆njsK9r1FDk:2012/3/10(土) 00:13:05 ID:h4TF95GUdk
「貴方が発見してくれた人ですか?」
「はい、もう少し早く連絡出来たら良かったのですが…」
ここは印象をよくしておくほうが得策だろう。何故なら…
「それでは、発見した時の状況を少々聞かせてもらえますか?」
「ええ、良いですよ。えーっと…」
「申し遅れました、私の名前は遠井です」
そう言いつつ、彼は警察手帳を出してきた。
29:🎏 ゲソ ◆9nEkyiWUj6:2012/3/10(土) 03:56:13 ID:.Lm3BW7986
確かに遠井という文字が見えたが、探偵が想像していた警察手帳よりもそれは厚く、手帳にすら見えなかった。しかし現実にはそういうものなのだろう。
「はじめて警察手帳を見ました」
探偵は他愛のない話を切り出し時間稼ぎをした。
「以前は手帳だったんですがね」
単なる通行人として説明すべきか、探偵として説明すべきか悩んでいたからだ。
「彼女は大丈夫なんですかね、血だらけでしたが」
そろそろ決めなければならない。
「詳しくお聞かせ願えますか」
30:🎏 トニー ◆zDv4YdgCF6:2012/3/10(土) 14:06:23 ID:jyBeSMxwJA
遠井に低い声でそう言われ、探偵は名刺を差し出した。あんなに血まみれだったのだ、たかだか探偵の出る幕ではない――そう考えての行為である。
「探偵、ですか」
遠井が呟く。うっかり漏れてしまったかのような声量だったが、間近にいた探偵にはしっかりと聞こえた。
31:🎏 鍵 ◆OOv0QE0xGM:2012/3/11(日) 20:18:53 ID:4biYXxiI9E
※飛ばします

「──ではあなたは不審な人物などは見ていない、と。」
「…えぇ」

遠井に答える探偵。質問もほとんど終わりかとホッとしかけた時。

「あなた探偵ということでしたがあの女は調査対象だったんですか?」

一応探偵にも守秘義務はある。正直に話すべきか否か。
32:🎏 ガッチャピン ◆njsK9r1FDk:2012/3/12(月) 02:19:09 ID:h4TF95GUdk
…守秘義務があるし、面倒事に巻き込まれたく無いのでここは誤魔化しておく事にした

「いいえ、違います。今回はたまたま通りかかっただけですよ。」

「分かりました。…ではまた何かありましたら、ご連絡下さい」


そう言うとすぐに、遠井は立ち去っていった。
33:🎏 ゲソ ◆9nEkyiWUj6:2012/3/12(月) 03:20:14 ID:rEsLET6s.U
探偵が遠井の顔を見たのはこれが最後となった。
34:🎏 トニー ◆zDv4YdgCF6:2012/3/12(月) 09:59:44 ID:0UW08OXRsc
病院を出た探偵がどうしようかと考えていると、はかったかのように岡崎から電話がかかってきた。場所が悪いのか雑音のせいで部分的にしか聞き取れなかったが、調査は男だけでもいいので続行してほしい、と言っていたようである。
35:🎏 名無しくん:2012/3/12(月) 19:43:19 ID:2lntWaEQyk
岡崎はなにが知りたいのだろうか?男と女の関係が知りたかったのではないのか?探偵の仕事の域を越えてしまう気がする…そんな考えが頭をよぎったが、探偵は調査を続けることにした
36:🎏 鍵 ◆OOv0QE0xGM:2012/3/12(月) 21:22:26 ID:5hS4/iHY.M
探偵は調査対象の男についての情報を読み返す。彼は美術館に勤めている学芸員。今回病院に運ばれた女の夫。今頃病院に急いでいるだろう……と、ここまで考えて気付く。

「岡崎は何故女が事件に巻き込まれたのを知ってたんだ……?」
37:🎏 ガッチャピン ◆njsK9r1FDk:2012/3/13(火) 17:37:08 ID:h4TF95GUdk
(学芸員の彼が連絡を寄越すならまだ分かる)
警察を経由すれば、連絡先を得る事は難しくない。

(しかし岡崎がなんで先に連絡をするんだ?)


探偵は薄ら寒いのを感じて、岡崎に再度連絡をした。







…繋がらない?
38:🎏 ゲソ:2012/3/14(水) 05:51:15 ID:3ZN46PwZVU
岡崎はどこにいるのだろうか?呼び出し音はなく、繋がらない理由を機械的に繰り返す音声しか聞こえなかった。探偵は先ほどの通話に雑音が入っていたことを思い出した。
39:🎏 トニー ◆zDv4YdgCF6:2012/3/14(水) 07:19:53 ID:HTBgGj87.M
あれはまさか――
探偵の手は震えていた。いよいよ探偵ごときが扱う領域を超えてきたからである。
痛みの走る頭を使い、探偵はこれから己どうすべきかを考えた。警察を頼るには証拠が少なすぎる。かと言って、このまま放置しておくわけにはいかないだろう。しかし、一探偵に何ができると言うのか……。
痛む頭ではうまく考えがまとまらなず、探偵は一先ず心を落ち着かせるためにテレビをつけた。
40:🎏 名無しくん:2012/3/14(水) 13:03:05 ID:FWV/2K4l82
うぅ〜ゼロぉ〜

間に合った…探偵はここ最近毎日このニュース番組のOPを見ていたので、変な愛着と言うか意地のようなものでずっと欠かさず見てきたのだっ!
41:🎏 鍵 ◆OOv0QE0xGM:2012/3/15(木) 11:33:04 ID:iVakDA.HWg
流れるニュースはいつもと変わらないものだった。ただ一つ違うのは自分が当事者である事件があったことだ。ニュースによると女の状態はかなり悪いようだ。
42:🎏 ゲソ:2012/3/16(金) 21:30:46 ID:jXjtQP5wys
探偵にとってこの番組は二つの意味がある。一つは情報収集のためであり、一つはOPがはじまる定刻に自宅にいることで一日の疲れをリセットし、考えをまとめるためだ。男は自分がおかれている状況の整理をニュースを見つつはじめた。
43:🎏 トニー:2012/3/16(金) 21:48:56 ID:i7etF7UDUg
まず、岡崎のこと。彼はいつの間に女の怪我を知ったのだろうか。調査対象の、女の夫である男ならばなんらおかしくはない。しかし、岡崎は少なくとも、女の変事を早いタイミングで知ることのできる立場ではないだろう。
女も女で、あのおぞましい量の血は確実に一人のものではない。そこまで医学に詳しいわけでもない探偵にだって、それくらいは理解できる。あれは何の――否、誰の血なのだろうか。
そこまで考えて、探偵は、ふとあることに気付いた。
――女の顔が、写真とまるで違う……?
44:🎏 名無しくん:2012/3/17(土) 02:33:32 ID:nBizvRjA3M
改めてよく見返してみると依頼された夫婦と夫婦の家から出てきた血塗れの女はまるで別人のように見える。
もし仮に調査を依頼された女ではない違う誰かだとしよう、だとしたらあの血塗れの女は一体…言われてみれば病院で「あの女の旦那」には会っていない。
考えれば考えるほど事件の臭いしかしない、ここは警察である遠井に一度連絡をとるべきだろうか…それとも探偵の仕事を全うし、学芸員の彼を調査するべきか…

頭の中をなにか別の生き物が暴れまわるような感覚にいてもたってもいられなくなった探偵は………
45:🎏 鍵 ◆OOv0QE0xGM:2012/3/17(土) 17:52:12 ID:ygqcoXGp5k
探偵の出した結論はとにかく遠井に連絡をとることだった。自分だけで解決するには荷が重すぎると判断したからだ。……しかし遠井へ何度電話をかけても繋がらなかった。
46:🎏 ガッチャピン ◆njsK9r1FDk:2012/3/17(土) 19:42:01 ID:/FojNki4uo
……………
………


テレビの音で目が覚めた。

結局昨日はそのまま寝てしまったらしい。スーツが皺だらけだ。体全体が痛い。頭も痛い。喉が物凄く渇く。


取り敢えず水を飲もう。そう思い、探偵は痛む頭を押さえつけながら台所へコップを取りに歩いた。
47:🎏 ゲソ ◆9nEkyiWUj6:2012/3/17(土) 20:14:47 ID:CYOwNol3Qc
水道水をコップに満たしながら、それを何の気なしに探偵は観察する。コップの水嵩はどんどん上がり、コップの容量をこえてしまった水はコップから溢れた。流れ落ちる水は何故か昨日の血液を思い出させた。

どうも考えがまとまらない。シャワーも早々に探偵はあの馴染みの喫茶店で考えをまとめることにした。しかし喫茶店でも、やはり探偵は考えをまとめることができなかった。喫茶店の扉を開けた際に視界に捉えたコーヒーを飲んでいる女が、昨日探偵に道を尋ねてきた女だと気付いてしまったからだ。
48:🎏 トニー:2012/3/17(土) 20:29:10 ID:i7etF7UDUg
しかし、特徴的な薄紫とほくろがなければ気づかなかった、と思うほど、彼女は憔悴していた。
目の下には遠目にもわかる濃い隈。頬は骸骨のように痩せこけていて、探偵が男であるということを引いても、あの薄紫以外に化粧っ気が感じられない。
そして、何よりも目を引く生気がまるでない顔色は、まさに病人のそれである。
49:🎏 鍵 ◆OOv0QE0xGM:2012/3/18(日) 14:22:01 ID:8GaeMZJMP6

「昨日は失礼しました。なにぶん急いでいたもので…」
気が付くと探偵は女に話し掛けていた。自分でも何故そうしたのかわからなかった、がそうしなければならない気がしたのは確かだった。
50:🎏 トニー @飛ばしました:2012/3/19(月) 12:22:42 ID:dG2jpSBg82
ぎょろりと虚ろな瞳が探偵を向いた。近くでみるとより病人に見える。
「あなたは……?」
女はゆっくりかさついた唇を動かした。探偵がそれに答えるも、完全に忘れてしまっているようで、女は首を傾げるだけである。昨日道を聞かれただけの関係のうえ、女のこの有様だ。無理もないだろう、と探偵は結論づけた。
「重ね重ね失礼いたしました」
そう行って探偵は薄く微笑む。
いいえ、と力無く首を横に振る女を見、探偵はふと血まみれの女を思い出した。
51:🎏 鍵 ◆OOv0QE0xGM:2012/3/20(火) 16:11:05 ID:Bfj0tx5aEw
血まみれの女はどうなったのか遠井に連絡するも繋がらない。気になって病院に行ってみることにした。
52:🎏 ゲソ ◆9nEkyiWUj6:2012/3/21(水) 19:07:57 ID:CYOwNol3Qc
あれから5時間。時刻は14時をまわろうとしている。探偵はそんな昼下がりに警察で困惑をしていた。

探偵は不可解な今回の事件の犯人に気づき、遠井にそれを話す為警察に来たのだが、遠井は不在。しかも犯人が自首してきたとのことだ。探偵が困惑した原因は、それだ。犯人は自首など到底できない人物であるはずだったからだ。
53:🎏 トニー:2012/3/21(水) 20:02:24 ID:Hpqtx0m7GM
やんわりと警察を追い出され困った探偵は、後ろにいる女を振り返る。
「もう良いんです……あの人が私を思っていてくれた、と知れただけで十分なんです……」
女は枝のような手を目元へともっていき、はらはらと静かに泣きはじめた。
女、もとい吉沢明美。岡崎から依頼された調査対象の一人であり――かつ、この事件の犯人である。
54:🎏 名無しくん:2012/3/22(木) 02:03:17 ID:zJRVB2X7Ec
明美と言ってもマラソンの松野明美とは全くの別人である、ちなみに明美という名前であるがスナックやパブのママもしていない。
55:🎏 鍵 ◆OOv0QE0xGM:2012/3/22(木) 23:28:30 ID:XwPswQ0f5w
「私は長いことこの仕事をしてきましたが……」

探偵はここ数日の夢のような出来事を思い出しながら語る。

「こんなに頭を使ったのは初めてでしたよ…」

56:🎏 ガッチャピン ◆njsK9r1FDk:2012/3/23(金) 00:28:38 ID:C5bp2SIbZ.
「さて…ここで立ち話も難ですから、取り敢えず喫茶店にでも行きませんか?」

そう言いながら、探偵は未だ泣き止まぬ吉沢に手を差し伸べた。
57:🎏 ゲソ ◆9nEkyiWUj6:2012/3/23(金) 07:03:59 ID:mjiyMOsgto
気付いてしまえばある意味単純な事件だった。意識さえ失わなければ、血まみれの女は事を荒立てることを拒んだだろう。
探偵はコーヒーをすすりながら、吉沢が落ち着いたことを確認して語り始めた。
58:🎏 トニー ◆zDv4YdgCF6:2012/3/23(金) 08:46:45 ID:dQogQk0cu.
「さっそくで申し訳ありませんが……まず、ご主人はあなたのその傷をご存知でないのですね」
そう言って探偵が明美の腹のあたりに視線を向けると、明美は複雑な顔をしてうなずく。探偵は困ったような顔をし、そして、と話を続けた。
「あなたにその傷を負わせたのは、遠井という、警察官」
探偵と明美の視線があわさる。明美は探偵の問いに対し、あきらめた風に全てご存知なのですね、とだけ言って、その枯れた紅葉のような手で腹をさすった。
事件の原因は、岡崎の妻・岡崎由紀江である。由紀江は夫を持つ身でありながら、探偵がわかっているだけでも他に二人と同時に交際していた。それが遠井と、明美の夫の吉沢尚行である。
「……あなたにご主人の浮気を教えたのは岡崎由紀江で、その時に由紀江を殴った」
明美がことさら暗い顔でうなずいた。
明美は夫の浮気を知らなかったのだが、妙な見栄に駆り立てられたらしい由紀江が、わざわざ明美の家に来てまで浮気のことを自慢した。それにカッとなった明美は由紀江を鈍器か何かで殴り、由紀江はからがら逃げ出し……そこで探偵とぶつかった。血まみれの女は、由紀江だったのである。「血まみれの女」と「調査対象の女」のが違うのは当たり前だろう。
「二つほど、訃報を。遠井さんと、由紀江の夫の岡崎さんは亡くなられたそうです」
探偵はあえて淡々と話した。明美は何かを堪えるように顔を歪ませ、そうですか、と呟いた。
重傷を負わされたことを恨んだ由紀江は、もう一人の浮気相手である遠井をそそのかし、明美を襲うよう仕向けた。遠井が玄関から駆け付けてきたのは警察官だからではなく、由紀江に呼ばれたからであったらしい。
由紀江の思惑通り明美に傷を負わせた遠井だったが、何かのきっかけで一連のあらましを知った岡崎に襲われ、返り討ちにして殺しまう。そのことと、逆恨みとも言える明美のことで、元々正義感の強かった遠井は悩み抜いた末――自殺。このことは探偵が警察を訪ねた際に、とある婦警がこっそりと探偵に漏らしたものである。
「吉沢明美さん、あなたはどうされますか?」
思ったよりも冷たい声が出たことに探偵は驚いた。
「自首するのか、罪を肩代わりしてくれる人に全てを任せるのか。私は、後者をとっても悪くないと思いますが」
「……私は」
明美が口をゆっくり開く。明美の言葉を待つように、探偵が明美の伏された目を見た。
59:🎏 名無しくん:2012/3/23(金) 18:16:39 ID:dV.9SstoOY
わたしは……たわし…

探偵「え?」

吉沢「えっ?」
60:🎏 ゲソ@とばしました:2012/3/24(土) 09:43:33 ID:M3Wkvy33qg
イライラする。先ほどから聞こえる声。不可解。理解できない、不愉快。誰だ、だれが言ってるんだ。頭の中がぐちゃぐちゃする。目の前の女が言っているのか?何を考えているんだ。イライラする。この声はどうやったら止まる…?原因を止めなければずっと聞こえ続けるのか?少なくとも松野明美など知らない。たわし?意味が分からない。やはり別の生き物が頭の中にいるのだろうか?殺さなければ!殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す、私は私の頭をテーブルに打ち付けたが、止まらない。何故止まらない。殺さなければ。私の中にはいない。殺さなければ。目の前の女の頭の中にいるのでは?殺さなければ。はやく殺さなければ。殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すモウハヤクコロサナクテハイケナイ

「あの…」
吉沢の声で探偵は気がついた。どうやら意識がとんでいたのかもしれない。
「すみません、どうなさいますか?」
気を取り直し、改めて探偵が尋ねると吉沢から帰ってきた返答は意外なものだった。
61:🎏 トニー@もうどうにでもな〜れ:2012/3/24(土) 14:11:37 ID:i7etF7UDUg
「あなたは、間違いなく探偵の山門さんですよね」
明美がそう尋ねる。探偵はとっさにそうです、と言ったことをすぐさま後悔した。
明美の眉は八の字で、いかにも不安だと言わんばかりである。しかし、目は生き生きと――否、ギラギラと輝いていた。枯れ木のようなこの女には相応しくない、捕食者の瞳である。
「そうですか」
女の声と不気味な男の声が重なった。探偵はふと、女の後ろに誰かがいることに気付く。他の客が遠巻きに探偵たちを見つめていた。
「山門鷹雄。殺人、強姦、詐欺、その他諸々の罪で逮捕する。大人しくお縄につきやがれ」
一人の男が手帳と紙を取り出した。どんなものかは、読まなくともわかるだろう。
探偵、もとい山門鷹雄は警察を振り切り、喫茶店のガラス張りの壁から外に出る。転んだ際にガラスの破片が抜けないくらいに食い込んだが、鷹雄は気にならなかった。それどころか、笑いさえ込み上げている。
後ろからあのサイレンの音が聞こえ――探偵だった男は、頭の何かがいなくなるのを感じた。



―The End―
62:🎏 真・スレッドストッパー:停止
停止しますた。ニヤリ・・・( ̄ー ̄)
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sage:


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