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ドラえもん のび太の電脳大戦記
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1: :2012/5/2(水) 22:55:37 ID:NeNQDk43GY
ドラえもんのSSを書いていきます。
映画風なタイトルですけど、一つ問題があるとすると、俺映画のドラえもんは見たことないです。
なので、本当に映画っぽくするとかそういう作風ではないはずです。お気を付け下さい。
それでも良いという方は、最後まで頑張るつもりなので、何卒よろしくお願い致します。


345: :2012/5/27(日) 21:02:46 ID:NeNQDk43GY
「んっ」

のび太が目覚めると、そこは懐かしの我が家だった。
目の前のテレビはスタッフロールを流していた。

「……ああ、クリアしたんだ」

カレンダーの日付を確認すると、ゲームを始めたあの日のままだ。時間を確認すると夕暮時くらいになっていた。

(ドラえもん、言ってたもんな……現実世界とゲーム世界じゃ時間の感じ方が違うって)
(僕達の何百時間という冒険は、現実では数時間のものでしかなかったんだな……)

そのようなことを考えて、彼は気付いた。

「ドラえもんは!?」
346: :2012/5/27(日) 21:03:39 ID:NeNQDk43GY
仲間たちの魂は、のび太と同様に戻っていた。
彼と同じよう目覚めて、戻ってきた現状を把握しようとしている。
だが、青いロボットに関しては、目を閉じたまま微動だにしなかった。

「どらえもん!」

叫びながらのび太は青いロボットに駆け寄った。

「ドラえもん!起きてよ!僕達、戻ってこれたんだよ!ねえ、冗談はやめてよ!戻ってるんだろ!?返事をしてよ!」

必死に呼びかけるのび太だったが、青いロボットは命も感情も宿さないただの鉄と化していた。
347: :2012/5/27(日) 21:04:37 ID:NeNQDk43GY
「ドラえもん!僕頑張ったんだよ!ドラえもんが生かしてくれたから、頑張れたんだよ!」
「ドラえもんが残してくれたアイテムのおかげでクリアすることができたんだよ!」
「僕は君に感謝もしたいし謝罪もしたいんだ!」
「ドラえもんが信じてくれたから僕は変われたんだ!ドラえもんの言葉を信じなかった今までを謝りたいんだ!」
「生きてる君に今の僕を伝えたいんだ!だから……目を開けてよ!」
「ねえ!僕……僕、いい子になるから!自分の、自分の力で変わっていくからぁ!」
「勉強だってちゃんとやる!浮き輪も使わず泳げるようになる!自転車だって乗れるようになる!」
「僕はこれから自分の力で頑張るからぁ!お願いだから……目を開けてよ!開けてくれよぉ!!ドラえもん……!!」

のび太の言葉と四つに重なる泣き声が響くだけで、その場にドラえもんの声が生まれることはなかった。
その日、のび太達と共に数々の冒険を切り抜けてきた猫型ロボット・ドラえもんは、現実世界から消えたのだった。
348: :2012/5/27(日) 21:05:36 ID:NeNQDk43GY
その日は大変だった。
夕暮時でも帰ろうとしない友達に、泣き声の四重奏を聞いて、心配になったのび太の母親・玉子が二階に駆け付けた。
彼女は現状を把握できなかったが、ただならぬ雰囲気だけは察して、必死に息子とその友達をなだめた。
その甲斐あってか、だいぶ落ち着きを取り戻したのび太は、ゲームの細かい説明は抜きにして次のように母に説明した。
ドラえもんは、もう二度と直ることのない故障をしてしまった、と。
349: :2012/5/27(日) 21:06:22 ID:NeNQDk43GY
しばらくしてのび太は、友達と母親を置いてタイムマシンに乗って未来へと発った。
操縦は簡単なので、のび太でも問題ない。程なくして未来に辿り着いた。
そしてのび太は、自分の子孫であるセワシと、ドラえもんの妹にあたるロボットであるドラミを頼ったのである。
事の次第を説明すると、兄の危機的状況を知ったドラミはすぐに過去へと行ってしまった。
セワシの方はドラミより冷静で、脱獄犯の入ったゲームをどうにかしてもらうべく、タイムパトロールに通報してからのび太の時代に向かったのだった。

セワシとタイムパトロールを連れて現代に戻ると、動かなくなった兄を前にして涙する妹の姿があった。
タイムパトロールはアインス達の入ったゲームを直ちに確保した。そしてのび太は、セワシに親友の亡きがらを渡すことにした。
350: :2012/5/27(日) 21:07:55 ID:NeNQDk43GY
「ごめん、セワシくん。僕の力が及ばなくてドラえもんを死なせちゃったよ……」
「ううん、気にしないで、おじいさん。悪いのはその脱獄犯で、おじいさんは悪くないよ」
「ドラミちゃんもごめん……」

のび太の謝罪は聞こえていたが、ドラミはこの時涙を零すばかりで、その言葉に応じることができなかった。
のび太もそれを察し、それ以上は言葉をかけないと決めた。そこにセワシがこんな提案をしてきた。

「おじいさん。言い方は悪いけど……ドラえもんはロボットだ。新品の記憶データを用意すれば、動くには動くけど……」
「……いいよ。新しい記憶データだったら、それはドラえもんと同型のロボットにすぎないよ。僕からすればそれはドラえもんじゃない」

記憶も何もかも全て消去された新たな出会いをのび太は拒絶した。
今の彼は、自分を助けてくれるロボットが欲しいんじゃなくて、自分の親友に戻ってきてほしいと思っている。
そしてそれが不可能だと知っていたので、もう何かを望むこともしなかった。
351: :2012/5/27(日) 21:09:25 ID:NeNQDk43GY
タイムパトロールは、脱獄犯をゲーム機ごと再逮捕して未来へと戻ることになった。
帰り際に、脱獄を許した自分達の不手際のせいで犠牲者を出してしまったことをのび太達に謝罪した。
それをのび太は受け入れる。最も悪くて、責められるべき人物は彼らではない。今ののび太はそれを理解している。

タイムパトロールが戻ったのを見届けて、セワシも未来へ帰ることにした。一人のロボットと一体の鉄の塊を連れて。
鉄の塊となった親友をのび太は最後まで見届けた。最早ただの鉄だとしても、それの形はのび太にとって大切な姿だ。可能な限り、その目に焼き付けておきたかった。
やがてセワシ達は時空の歪みの中に消えていった。あまりにあっけなくて、あまりに悲しい永遠の別れだった。

全てが終わり、ようやく落ち着いてきた仲間達は、自分たちの帰る場所へと戻っていった。
こうしてのび太達の悪夢のような冒険は完全に終わりを告げた。
親友との永遠の別れという、残酷な結末を経て……。
352: :2012/5/27(日) 21:10:34 ID:NeNQDk43GY
翌日は学校の日だ。その日の朝、野比家には自ら早起きするのび太の姿があった。
あのゲームを経て、のび太は決心したのだ。自分を変えていくために努力していくと。
まずは生活から自分を高めていこうという表れがこの早起きだった。
そんなのび太を見ていて両親は心配していた。

「のびちゃん……昨日、あんなことがあって辛いでしょ?今日くらいは無理しなくても……学校休んだっていいのよ?」

熱心な教育ママである玉子ですら、このようなことを言うのだ。
のび太にとってドラえもんを失うということが、どれほどの絶望なのかを両親は理解していた。
しかし、のび太はその提案を払いのけた。
353: :2012/5/27(日) 21:11:33 ID:NeNQDk43GY
「……ドラえもんは機械だからね。こう考えるのはおかしいかもしれないけど……」
「天国だとか、そういう僕からは見えないようなところで、ドラえもんは見守っててくれてると思うんだ」
「ドラえもんはね、僕が努力さえすればちゃんとできるってことを前から見抜いてたんだ」
「そして、そういう僕をドラえもんは待ち焦がれてたと思う」
「一緒の空間でその姿を見せてあげられないのは残念だけど……」
「せめて、遠いどこかから見守ってくれてるドラえもんに、今の僕を、これからの僕を届けていきたいんだ」
「だから毎日を無駄にはできないよ。……悲しむのは、昨日でおしまい!」
「ドラえもんのために、そして自分のこれからのために、前向きに頑張っていくんだ!」

その発言は、確かな成長を感じさせるものだった。
両親は我が息子の突然の変化に戸惑うしかなかったが、それは何百時間ものゲーム内冒険がのび太に与えた経験値の表れだった。
354: :2012/5/27(日) 21:14:12 ID:NeNQDk43GY
十分に学校に間に合う余裕ある時間の中で、のび太は家を発った。
どこか清々しい気分だった。気持ちの上では生まれ変わった結果、世界の映し方をも変えてしまったのだろうか。
きっと今日から人生の第二章が始まったのだ。小学生ながらにのび太はそう結論付けた。

「今まで散々さぼってきたからなあ。勉強に運動に……忙しくなるぞぉ!」

必要以上の声を張り上げて、のび太は駆けだした。
根拠はないけども、自らがこれから進む道は希望で満ちてるような、そんな気がしていたのだった。
355: :2012/5/28(月) 00:48:58 ID:NeNQDk43GY
「お兄ちゃんはきっと死んでない!」

のび太の時代より遙かなる未来、22世紀でのドラミの発言だ。

「……ドラミちゃん、信じたくない気持はわかるけど、現実逃避したって……」

呆れ気味に諭そうとしているのはセワシだ。

「おじいさんから聞いただろ?ゲーム内のプレイヤーが集まるイベントでドラえもんは現れなかった。つまりそれは、ドラえもんのデータは消滅したってことだよ」
「……あの時はそう聞いて納得したけど、私あれから考えてみたの!違う可能性もあるんじゃないかって!」

知識面で信頼を寄せているドラミが示した可能性とやらに、セワシは反応した。
聞くだけなら何も問題ないとして、セワシはそれを聞き入れる姿勢を示した。それを受けて、ドラミは考えを喋り出したのだった。
356: :2012/5/28(月) 00:51:01 ID:NeNQDk43GY
プレイヤーが集まるイベントで、ドラえもんは現れなかった。
あの時のゲームプレイで、プレイヤーとして参加していたのはのび太達五人だ。
どういう形であれ、のび太達の魂がゲーム世界に存在していれば、例のイベントで集結するわけだ。
なのに、ドラえもんは魂の牢獄にも現れず、イベントでも現れなかった。つまり、ドラえもんは存在してなかったわけである。

「だからそう言ってるじゃないか。全てのプログラムに弾かれて行き場を失った記憶データは消滅してしまって……」
「もし……消滅してなかったとしたら?」
「……え?」
357: :2012/5/28(月) 00:52:10 ID:NeNQDk43GY
先人たちの努力によって、22世紀の魂を移すゲームは確かな安全を保障されたものとなった。
顧客の命を扱うのだから、安全面で努力をするのは当然と言えば当然である。
そんな安全を目指す中で、バグか何かで魂や記憶データがプログラムから弾かれて放置された場合に、安易にそれを削除するように設定されてるだろうか。
もしかしたら、ドラえもんはゲームの中でまだ生きてるのではないか。ドラミはそのように考えたのだった。

「ゲーム中の……マップでもアイテムでも何でもいいわ。作品の空き容量などに収納されて助かってる……そういう風には考えられない?」
「で、でも……助かってるなら何で最後のイベントで集まらなかったんだよ?」
「いい?お兄ちゃんは空き容量に収納されてゲームの一部となってデータ消滅を免れたの。その場合「プレイヤー」の魂を集めるイベントには反応しないわ」
「……なるほど、プレイヤーとしては存在してなくて、ゲームの一部になってたってことか。でも、そう考えられる根拠はあるのかい?」
「何言ってるの!根拠のない考えは死亡説も一緒でしょ!その時はそれしか考えられなかったってだけで!」
358: :2012/5/28(月) 00:53:20 ID:NeNQDk43GY
言われてみればそうである。
ドラえもんの記憶データがゲーム内で消滅してしまったという明確な証拠はない。その時はそれしか考えられず、そうだと決めつけたに過ぎない。

「どちらにせよ、調査不足だと思わない?お兄ちゃんの安否を確認するために、私達が動くしかないと思うの!」
「動くったって……どうするつもりだよ?」
「真実を焙り出すにはいつの時代も現場を調べるに限るでしょ!」
「現場って、まさか……」
「私達もゲーム内に行こう!お兄ちゃんを見つけ出すの!」

そう言い切って、ドラミは脱獄犯達の入ってるゲームを求めてタイムパトロールを訪ねるために出発したのだった。
その大胆な行動を放ってはおけないと、セワシもドラミを追って家を後にした。
359: :2012/5/28(月) 00:54:30 ID:NeNQDk43GY
かくして二人はタイムパトロール本部に辿り着いた。
面会ですか、等と訊かれたが、ある意味では面会のようなものだ。

「……私はゲームで脱獄を図った犯人達の被害者であるロボットの妹です」

立場を説明すると、タイムパトロールは犠牲者を出してしまったことを謝罪してきた。
ドラミはそれを受け取ってから、ゲームに関するその後を訊ねてみた。

「ゲーム内に残ってる犯人達はどうなったんですか?」
「今もそのまま残ってるよ。脱走当時は死亡したと判断して体を処理してしまった……彼らはもう現実には戻れないよ」
360: :2012/5/28(月) 00:55:36 ID:NeNQDk43GY
「彼らの寿命があと40年くらいだとしたら……ゲーム世界の時間の感覚だと2000年くらいまで魂が朽ちることはない。自業自得とはいえ、少しかわいそうに思うよ」
「2000年……ですか」
「彼らは終身刑の身だったんだが……寝ることも食べることも許されないゲーム世界で、さすがにそれは酷かと思って……ゲームソフトを破壊する形で死刑にしようかと思ってる」
「は、破壊!?ちょっと待ってください!」

ドラミの慌てようを不審がったタイムパトロール。その隙を突くように、ドラミは本題に入った。
そう、兄がまだ生きてるかもしれないという可能性があり、それに関する調査をしたいという旨を伝えたのだ。

「……なるほど。確かに調査不足なのは否めないな」
「お願いです!大切なお兄ちゃんの命がかかってるんです!是非とも調査させてください!」
361: :2012/5/28(月) 00:56:22 ID:NeNQDk43GY
言い切って、ドラミは頭を下げた。
ここまでだんまりを決め込んでいた、同席しているセワシも同様に頭を下げた。
気持ちとしてはドラミと同じだ。可能性が僅かでも存在するなら、それにかけてみたかった。
それに対して、タイムパトロールはどのように反応したのか。

「……わかった。調査しよう。我々としても、救えるかもしれない命があるなら、全力を注ぐ所存だ」

その発言によって顔を上げた二人の表情は希望色に染まっていた。
もう二度と叶わないと思っていたドラえもんとの再会に大きく前進し、内心喜びを隠せない状態にあった。
362: :2012/5/28(月) 00:57:10 ID:NeNQDk43GY
「……ただし」

タイムパトロールは、調査に当たって以下の条件を出した。

まず、タイムパトロール側で技術者を用意し、プログラム等を外部からチェックして異変を探すという。
ドラミの言うとおり、空き容量などに紛れこんでいるのなら、プログラムの合間に何かしらの異変があってもおかしくない。
それをプログラミング言語の群れから探してみようというのだ。

それでも駄目な場合は、直接ゲーム内に入って探してみるという。
ただ、今もなおこのゲームはアインス達によって改悪された状態である。
なので、ゲーム内調査をする場合、ゲーム内容にまた手を出して、調査に適したものにしなければならない。
具体的に言えば、セーブポイントからのゲーム終了機能を蘇らせるのだ。
363: :2012/5/28(月) 00:58:20 ID:NeNQDk43GY
ついでに、敵のステータスなども全て最弱にし、スムーズな調査が可能になるよう工夫するという。

「これらを行う場合、我々の技術ではけっこうな時間を要するだろう。それ故、結果を伝えるのは数日後になると思うが、了承してもらえるか?」

その提案に、ドラミは黙って頷く。
それを確認して、タイムパトロールは更にこう続けた。

「あと、君も調査に加わりたいようだが、それは駄目だ。調査は我々だけで行う」

自らゲーム内に赴き、兄を救出するつもりでいたドラミにしっかりと釘を刺しておいたのだ。
攻略しやすい環境に変えるとは言え、危険が伴うことには変わりない。それを考えると、一般人を巻き込まないようにするこの判断は妥当と言えるだろう。
しかし、それでもドラミは諦めることが出来なかった。自らの手で、兄に降りかかったゲームの呪縛から救いたいと願っていた。
364: :2012/5/28(月) 00:59:18 ID:NeNQDk43GY
始めは提案した方針を折るまいと必死に拒絶していたタイムパトロールだったが、最終的にはドラミの熱意に負け、調査の参加を許可したのだった。

「……しょうがないな。でも、単独調査は絶対に許さないからね。我々と同伴し、無理そうだったらセーブポイントから脱出すること。いいね?」
「っ!は、はい!ありがとうございます!」

こうしてドラミ達はドラえもんを求めてのゲーム内への旅立ちが決まった。
まだドラえもんが生きていると決まったわけでもないし、技術者による外部からの調査で全てが片付く可能性も現段階ではあるのだが。
しかし、ドラミは自分が行動することで、兄を救えると心から信じているのだった。
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