とある森。
光を浴びた小さな草むら。
花の香りの染み付いた、朽ちた梯子は木にもたれ、その脇近くの土の上には虫が群がる。そこから少しの距離置いて、またも群がる小さな虫。
静かな森に二つの羽音が広がった。
140: 1:2012/8/9(木) 21:32:50 ID:Ow7SAWLc86
少年は頭に神経を集中させました
頭上では、何か小さなものがうねっている感じがします
少年の頭に乗ったそれは生き物のようです
そして恐らく、それが少年の体を操っているのです
頭にそれが落ちてから、体の異変が始まったことは明らかでした
141: 1:2012/8/9(木) 21:40:33 ID:Ow7SAWLc86
ふと、少年は水溜まりでの出来事を思い出しました
迷わず入水していった、あの男の子の事です
たしか彼の頭にも虫が乗っていました
あれはただの自殺志願の少年では無かったのかもしれません
ただ体が操られ、
自由が利かず、
そのまま水溜まりに沈んでしまった
哀れな玩具だったのかもしれません
今まさに、足が勝手に前へ行く少年のように
142: 1:2012/8/9(木) 21:46:21 ID:Ow7SAWLc86
そして少年はもう一つ、思い出しました
ぎゃあぎゃあ喚く、
あの向こうにいる鳥達が
暗い暗い洞窟で
男の子を操っていたのと同じ虫を食べていた姿を
――それならば、一か八か
143: 1:2012/8/9(木) 21:51:37 ID:oGncu4DJc6
少年は鳥達のいる場所を確認しました
鳥は少年の背丈より少し高い所にいます
跳躍すれば頭が届く程度の高さです
少年はふらふら進む自分の膝を無理矢理に
ぐぐぐ、と屈め
ごろごろ口を開く鳥達の所まで飛び跳ねました
無理に跳んだその姿
非道く不格好な跳躍です
しかし少年は確かに高く跳躍し
頭は鳥達に近づきました
144: 1:2012/8/9(木) 21:52:45 ID:oGncu4DJc6
鳥の声が一層近くに聞こえます
頭上でぷち、と何かが潰れる音も聞こえました
145: 1:2012/8/9(木) 22:01:30 ID:Ow7SAWLc86
その瞬間、少年はまためまいに襲われました
視界が歪み、力は抜けて
受け身も取れず、体は固い岩の地面へと
少年は尻餅をついた痛みにたえながら、
ゆっくり腕を頭へやります
体はしっかり少年の言うことをきくようです
頭を触れば、虫はいない代わりに
ぬるりとした液体が手につきました
嫌なものを触ってしまったとばかりに、少年の皮膚は粟立ちました
146: 1:2012/8/9(木) 22:07:20 ID:oGncu4DJc6
少年は地面に液体をなすりつけ
何かを振り払うように頭を振り
ゆっくりゆっくり、
立ち上がります
操られていた体を無理に動かしたせいでしょうか
足はいやに重たく感じます
鉛のように重たく感じます
それでも、
足は自分の意志で動きます
少年にはそれだけで十分なのです
147: 1:2012/8/9(木) 22:09:02 ID:oGncu4DJc6
少年はほ、と息をつき
再び足を動かし始めました
自分の意志で、妹のために、
ただ、前へ
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