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幼い兄、進むはモノクローム
[8] -25 -50 

1: :2012/3/13(火) 20:41:31 ID:JCMcRY0PdY

とある森。

光を浴びた小さな草むら。

花の香りの染み付いた、朽ちた梯子は木にもたれ、その脇近くの土の上には虫が群がる。そこから少しの距離置いて、またも群がる小さな虫。

静かな森に二つの羽音が広がった。




142: :2012/8/9(木) 21:46:21 ID:Ow7SAWLc86

そして少年はもう一つ、思い出しました

ぎゃあぎゃあ喚く、
あの向こうにいる鳥達が
暗い暗い洞窟で
男の子を操っていたのと同じ虫を食べていた姿を

――それならば、一か八か


143: :2012/8/9(木) 21:51:37 ID:oGncu4DJc6

少年は鳥達のいる場所を確認しました

鳥は少年の背丈より少し高い所にいます
跳躍すれば頭が届く程度の高さです

少年はふらふら進む自分の膝を無理矢理に
ぐぐぐ、と屈め
ごろごろ口を開く鳥達の所まで飛び跳ねました

無理に跳んだその姿
非道く不格好な跳躍です
しかし少年は確かに高く跳躍し
頭は鳥達に近づきました

144: :2012/8/9(木) 21:52:45 ID:oGncu4DJc6

鳥の声が一層近くに聞こえます
頭上でぷち、と何かが潰れる音も聞こえました


145: :2012/8/9(木) 22:01:30 ID:Ow7SAWLc86

その瞬間、少年はまためまいに襲われました
視界が歪み、力は抜けて
受け身も取れず、体は固い岩の地面へと

少年は尻餅をついた痛みにたえながら、
ゆっくり腕を頭へやります
体はしっかり少年の言うことをきくようです

頭を触れば、虫はいない代わりに
ぬるりとした液体が手につきました

嫌なものを触ってしまったとばかりに、少年の皮膚は粟立ちました

146: :2012/8/9(木) 22:07:20 ID:oGncu4DJc6

少年は地面に液体をなすりつけ
何かを振り払うように頭を振り
ゆっくりゆっくり、
立ち上がります

操られていた体を無理に動かしたせいでしょうか
足はいやに重たく感じます
鉛のように重たく感じます

それでも、
足は自分の意志で動きます
少年にはそれだけで十分なのです
147: :2012/8/9(木) 22:09:02 ID:oGncu4DJc6

少年はほ、と息をつき
再び足を動かし始めました


自分の意志で、妹のために、

ただ、前へ


148: :2012/8/9(木) 22:22:31 ID:oGncu4DJc6
寄生虫編
>>134-137>>140-147
寄生虫さんの話は短くする予定だったのですが無駄に長くなってしまいました。申し訳ないです。

それでは、ここまで読んでくださりありがとうございました。次回もどうぞよろしくお願いいたします!
149: 名無しさん@読者の声:2012/8/10(金) 10:07:36 ID:96tNzcvs.g
支援です
150: :2012/8/13(月) 20:24:06 ID:yYWADHzeSc
>>149
支援ありがとうございます!嬉しいですウェヒヒ(^ω^=^ω^)

更新が遅れてしまい申し訳ありません。次↓から再開します。
151: :2012/8/13(月) 20:33:33 ID:nOovXXZ/0c

静かな静かな森の中
聞こえる音はじゃりりさくさく、
少年の足音進む音
森のなかにいるけれど
木々のざわめき一つ聞こえません

とぼとぼ歩く少年は
暗く重いモノクロームに包まれて
体引きずりひた進む

152: :2012/8/13(月) 20:41:32 ID:nOovXXZ/0c

その道はただただ暗く、
先を見据えても
ずっと平坦な道が続いていました

この道に終わりなど無いのではないか、という不安が
少年の体をむしばみます

それでも少年は、
足を前に、前に出す


153: :2012/8/13(月) 20:47:39 ID:yYWADHzeSc

どのくらい歩いた頃でしょう
ふと、少年の前方から
光が差し込んできました

地面を見ていた暗い顔を上げれば
目に入ったのは光を浴びた花畑

そこにはぽつり、
せっせと花を摘む女の子がいました

それは、少年が
少年がずっと探していた、
大切な大切な――


そこまで考えると、
少年は胸いっぱいに走り出しました

疲れなど、何処かへ吹き飛びました


154: :2012/8/13(月) 20:50:01 ID:nOovXXZ/0c

あと数歩進めば少女に触れる、
そんな距離まで来たときでした
目の前の木の枝をくぐったときでした、


べちゃり、


頭上に、聞き覚えのある音が落ちてきたのです



155: 名無しさん@読者の声:2012/8/17(金) 12:23:02 ID:96tNzcvs.g
面白くなってきた

支援です
156: :2012/8/18(土) 16:23:04 ID:EaS5gRLqBQ
>>155
いつも支援感謝です。
面白いと言っていただけて嬉しいです。ありがとうございます!

更新遅くなってすみません!それでは次から再開いたします
157: :2012/8/18(土) 16:25:23 ID:EaS5gRLqBQ

少年はその音を聞いたことがあります
ついさっきの出来事です
この不快な音は、
虫が頭上に落ちてきた音です

少年の足の自由を奪う、芋虫の


少年の足が勝手に動き出します
光の差し込む花畑
まばゆい光りに驚いたのかその虫が
頭上で動く気配がしました
操られた少年の足がもつれます

足はそのままぐるりと方向転換し

少女に背を向け、
また暗い世界へ進み出しました


158: :2012/8/18(土) 16:26:23 ID:EaS5gRLqBQ

少年は焦りました
少女はもうすぐ近くにいたのに、
やっと見つけることが出来たはずなのに、

足はそれと逆方向に進むのです


待って、待って、お願い、戻って

叫びたいのに、声はでません
足だけがせわしく動き続けます


159: :2012/8/18(土) 16:28:55 ID:EaS5gRLqBQ

とにかく早くあの場所に戻りたい少年は
虫を食べる鳥を探します

その鳥は意外と早く見つかりました

少年の正面、
高い木の枝に一匹、
羽を休めてとまっています

しかし鳥は少年にも虫にも気づきません
虚空にむかって狂ったように
声を震わせているだけです

このままでは気づかれないまま
その木を通り過ぎてしまいます

160: :2012/8/18(土) 16:30:37 ID:EaS5gRLqBQ

少年は何かないかと周りを探りましたが何もありません

次にポケットに手を入れて
固く丸い何かを見つけます

ポケットから何かを出して見てみると
それは錆び付いた瓶の金口、
いわゆる王冠でした
何故それがポケットに入っているのか、少年には思い出せません

しかし今はそんなことどうでもいいのです

少年は異様に重い腕を振りかぶり
鳥にめがけ王冠を投げつけました
161: :2012/8/18(土) 16:35:27 ID:EaS5gRLqBQ

王冠は高く弧をえがき、鳥の羽に当たりました

驚いた鳥は光る目をこちらに向けます
そして羽を広げ、少年の頭にまっすぐ飛んで来ます
少年の頭をかすめたと思えば、
一瞬で鳥は飛び去りました

虫が潰れる、不快な音と共に

少年はまためまいに襲われ、
自分の体が虫から解放されたことがわかりました

それがわかるとくるり体の向きを変え
休む間もなく花畑へ、
体を引きずり走り出します


162: :2012/8/18(土) 16:37:02 ID:EaS5gRLqBQ

少年は急いでの場所に戻って来ました

そして、愕然とします


そこには壁
真っ白なかべ
ついさっき見たはずの光景はどこにもありません

淡い光の花畑も、
幼い少女の後ろ姿も、
何も、かも


163: :2012/8/18(土) 16:49:59 ID:EaS5gRLqBQ
少年、身も心もズタボロ編
>>151-154>>157-162

さて、とうとうこのお話の書き溜めが最後まで終わりました。明日からほぼ毎日更新する予定です。きっと来週には完結するはず。
LIMBOをプレイしたことがある方はわかるかと思いますが、ここから怒涛の捏造&シーンカットが始まります。

それでは、ここまで目を通してくださりありがとうございました!
あともう少しの間、お付き合い頂ければ幸いです。
それでは、また。
164: 名無しさん@読者の声:2012/8/18(土) 21:05:13 ID:P9bsPKuybc
LIMBOをやってみたくなりましたが、ゲームよりこちらの更新を楽しみにしたいのでもうちょい我慢します
更新楽しみに待ってますCCC
165: :2012/8/18(土) 22:52:09 ID:MMsYPQ7HG.
>>164
うわあああこっちを優先して下さってありがとうございます!すっごく嬉しいです…!!>>164さんに早くLIMBOを楽しんで頂くためにも更新頑張りますね!
支援感謝です。

完結してからいっぱい語ろうと思ってたのですが、ちょっとだけゲームについて語らせて下さい。
LIMBOはとにかくのグラフィックが綺麗です。エフェクトもサウンドも細かいし、この話ではカットしたギミックも結構あるので沢山楽しめると思います!ちなみにLIMBOはPCかXboxでプレイできます。
ただ、これいわゆる残酷描写満載の死にゲーで、17歳以上対象なんです。そこだけご注意くださいね。
対象年齢以上でやってみたいと思う方は、体験版で一度試してみると良いかもしれません!

長くなってしまいました。それでは、また明日。

166: 名無しさん@読者の声:2012/8/19(日) 07:29:05 ID:96tNzcvs.g
頑張って下さい

支援しています
167: :2012/8/19(日) 08:39:12 ID:SW8nJ9Dce2
>>166
いつも支援くださり本当にありがとうございます。
最後まで頑張って突っ走りますね!

それでは次から更新いたします
168: :2012/8/19(日) 08:42:39 ID:SW8nJ9Dce2

足の力が抜けました
疲れた体を動かしていた
原動力が、妹が

かげろうの様に消え去ったのです
白い壁になったのです

ふらり、
少年はその場に崩れ落ちます


169: :2012/8/19(日) 08:45:13 ID:SW8nJ9Dce2

ふと、蝶々が少年を横切り
その壁に寄ってきました

花の香りに
引き寄せられるように

花などないのに、それを探そうとする姿は滑稽に見えました
しかしその姿は蝶々のあるべき姿に見えました

花を探すのは、
蝶々にとって当然なのです

170: :2012/8/19(日) 08:50:04 ID:KNnaoH5aVo

進もう、
少年は思いました

少年は進まなければなりません
たとえ壁があっても
前に進まなければいけません

妹はこの森のどこかで待っているはずなのです


体は重いままですが、まだ足は動きます
大丈夫、先に進めます


171: :2012/8/19(日) 08:51:45 ID:KNnaoH5aVo

白くて固いその壁に
手をつく少年
先程の風景を思い出します

ここに少女がいたのは
本当に、ただの幻覚
だったのでしょうか

そのとき、脳裏に何かの情景が

――暗い大きな森の中
光を浴びた小さな草むら
妹は花を片手に寝そべって、
少年の目に広がるは――



172: :2012/8/19(日) 08:55:27 ID:SW8nJ9Dce2

それは色の付いた記憶でした
モノクロームに包まれて
色彩を忘れていた少年の

いつかのどこかの、その記憶
もう少しで届きそうなのに届かない


その記憶


必死でその記憶を探っていると、
いつの間にか少年が手をついていた壁は無くなっていました
代わりに、真っ暗で先の見えない
洞窟のような穴が目の前にありました
173: 早いですがこれで更新終了です:2012/8/19(日) 09:01:01 ID:SW8nJ9Dce2

少年は虚をつかれ、
ただ奥の暗闇を見据えることしかできません

ふいに吹いた突風が
少年を穴の奥へいざなって

その姿は暗闇に消えて行きました


174: :2012/8/19(日) 23:52:14 ID:ei5XHQhyKM
つい先程知ったのですが、なんとこの話が今回のSSランキングに入っているようです!
まさかランクインしているとは思っていなかったので、とても驚きました。

投票して下さった皆さん、ありがとうございます!!
自分が思っていたよりもこの話を読んで下さっている方がいると判り、ちょっと舞い上がっております。

改めて、この話に目を通して下さった皆さんに最大級の感謝を。本当にありがとうございます。
もしよければ、あともう少しの間お付き合い頂ければと思います。

それでは、また明日。失礼いたします。

175: :2012/8/20(月) 19:30:52 ID:pBtoJZVKDU

少年が飲み込まれた真っ暗な穴
その奥には森が広がっていました

突風に押されたその体は、ひんやり冷たい土の上
勢い良く叩きつけられます
その強い衝撃に、少年は意識を手放しました

気を失っていくばくか、


少年は目を覚まします

ぽつり、草むらに四肢を投げ出して
目を数度しばたかせ
土と草の冷たい感触を手に感じ
少年は一人、立ち上がります

視界にひろがるモノクロームのこの森は
少年がはじめに目覚めたあの景色と同じものでした
まったく同じものでした


176: :2012/8/20(月) 19:34:09 ID:fJfrMk8NYA

少年は振り出しに戻って来たのです

何故、どうして、
そんな疑問よりも真っ先に、少年の瞳には絶望の色が浮かびます


しかし少年はもう止まりません

だって、だって、
少年は妹に会いたいのです


177: :2012/8/20(月) 19:44:03 ID:pBtoJZVKDU

さわりと揺れる空気に包まれ
帽子のつばをくいとひき
ぱきり小枝を足で踏み
輝き変わらぬそのまなこは前見据え

数時間前と同じ景色の中
とにかく前へ前へと進みます


壁の前で一度見た、
脳裏にこびりついて離れない
でも思い出せないあの景色が何なのか
心の隅で考えながら

178: :2012/8/20(月) 19:52:48 ID:fJfrMk8NYA

少年はもう、初めの様に身軽に障害物を乗り越えて進むことは出来ませんでした
慎重に坂を下り、木々の凹凸を歩きます

小さな障害物を進んで行けば
もうすぐあの大きな川が見えるはずでした

しかし進めども進めども、数時間はあったはずのあの川にあたることはありません

同じ道を進んでいるはずなのに
段々と数時間前とは掛け離れた風景が広がっていくのです

そして、
進んだ先にあったのは、



179: :2012/8/20(月) 20:00:19 ID:pBtoJZVKDU

蝶々がはらりと飛び回り
花の香りがふらり漂う、
光を浴びた草むらです

そこには少女がいました

あそこで一度見かけた幻覚と同じ風景でした

木漏れ日にきらきら髪を輝かせ
綺麗な梯子のかかったその脇で
せっせと花つむ小さな少女

今度は幻ではないだろうか、消えてしまわないだろうか
少年は少し疑います

あの幻想は少なからず少年の恐怖になっていたのですから


180: :2012/8/20(月) 20:02:03 ID:pBtoJZVKDU

しかし花の香りは本当です
少女が動く度にさわりと揺らぐ、草の音も本当です

間違えるはずがありません

あれは、確かに
本当に探していた妹だ


大切な大切な、妹だ



181: 1 本日の更新はここまでです:2012/8/20(月) 20:04:25 ID:fJfrMk8NYA

踏みしめるように、

一歩、
また一歩と妹の元へ歩み寄ります

ふいに少女が、頭を上げました
驚いて少年は、立ち止まります


そして、少年は思い出しました



182: :2012/8/21(火) 19:06:00 ID:bEGGp0MEuA

      * * *


少年には妹がいます
無邪気で少し泣き虫な、大切な妹です

あるとき少年と妹は絵本を読みました
少年と少女が森を冒険するお話です

絵本の中の冒険に憧れた二人は目を輝かせ
いつか森へ行くことを指切りしました

183: :2012/8/21(火) 19:07:59 ID:nomryNie92

それから少しの時が経ち

二人はありったけのお小遣いを持ち合わせ
遠くを目指してバスへ乗り込みました

二人の家はコンクリートに囲まれた都会の真ん中
近くに森などないのです

幼い二人はこのささやかな遠出を冒険に見立て
綺麗な瞳を輝かせます

バスの終点、
大きな森のそのふもと
お金は何とか足りました


184: :2012/8/21(火) 19:08:51 ID:bEGGp0MEuA

今から始まる冒険に、
二つの小さなその胸は期待でいっぱいに膨らんで


これから起きる出来事を予期など、出来たはずがないのです



185: :2012/8/21(火) 19:10:06 ID:nomryNie92

木々が鬱蒼と生い茂る森の中
少年と妹は仲良く手を繋ぎ
さくさく地面をならしながら森の奥へと進みます

木の葉がそよぐその音が
青葉の間から漏れる光が
土から漂うひんやりとした空気が、匂いが

全てが二人には新しく
疲れも忘れて歩を進めます


186: :2012/8/21(火) 19:13:25 ID:bEGGp0MEuA

ふと少女が小さく悲鳴をあげました
少女の足に大きな蜘蛛が這い寄ってきていたのです

このままでは妹が泣いてしまう、

少年も虫が苦手でしたが
妹のために勇気を振り絞り、足元にあった太い木の棒を拾い振りかぶって
真っ黒な蜘蛛をめった打ちにしました


ばらばらになった後、
ぴくり、と一度動いた蜘蛛の足が不気味だったのを少年は覚えています

もはや粉々になった蜘蛛は見向きもせず、二人はまた手を繋いで歩きだしました



187: :2012/8/21(火) 19:16:02 ID:bEGGp0MEuA

少女は歩いては立ち止まり、森に落ちているものを珍しそうに拾い上げます

拾った物の一つの王冠を、嬉しそうに少年に手渡します
少年はそれを受け取ると大切そうにポケットにしまいました


はらり、白い蝶々が少年と少女を追い越して行きました
二人は森の随分奥に進んだようでした

二人は蝶々を追って走り出します

188: :2012/8/21(火) 19:25:07 ID:nomryNie92

少年が妹を引っ張り走って行くと、色とりどりの花々が目に入りました

気づくと二人は木漏れ日眩しい小さな花畑に出ていました

少女は少年の手を離しその中に駆け出します
花畑の真ん中でしゃがみ、にこにこしながら花を摘み始めます


花摘みに夢中になった妹が面白くない少年は、
その花畑の脇にある大木に近づくと木登りすることにしました

189: :2012/8/21(火) 19:30:07 ID:bEGGp0MEuA

ごつごつした幹の突起につかまり上へ、上へ
とても高い所まで登ります

少年は、分岐した枝の一つが妹のいる花畑の方に伸びている事に気づきました
元々身軽な少年はしなる細い木の枝を平均台のように渡り、
妹のちょうど真上に立ったのです

見下ろすと、下にいる妹がただの豆粒の様に見えてなんだか楽しくなりました
こんなに高い所まで来たのだと、妹を驚かそうと声を上げかけた時です


190: :2012/8/21(火) 19:33:02 ID:nomryNie92

みし、木の枝が嫌な音を立てました

少年は危機を察して枝の付け根に走って戻りました

少年が走ったその拍子
木の枝は少年の足場を残し、ばきり折れてしまいました


191: :2012/8/21(火) 19:34:01 ID:bEGGp0MEuA

折れた木の枝は真っ逆さま
太く鋭いその棘は
加速し静かに落ちてゆく
幼い少女はそれに気づかず花を摘む


少年ぱちりと瞬きをした、その瞬間


折れた木の枝少女を貫く


一拍おいて少女は倒れる
その手にあるのは赤一色の花二つ


192: :2012/8/21(火) 19:34:52 ID:nomryNie92

少年は声が出ませんでした

妹が赤に染まって横たわる姿を木の上から見ていることしか出来ませんでした

ただ、とにかく、

妹の元へ急がなくてはと思いました



193: :2012/8/21(火) 19:36:23 ID:nomryNie92

そして少年は足場から一歩歩き出し、足は空気を虚しく切って

体はぐるり、
真っ逆さまに妹の元へ


地面にたたき付けられた少年は妹から少し離れた場所にありました

痛みで視界が真っ赤に染まるその中に
木漏れ日と共にさされた
綺麗な梯子を見た気がしました



194: :2012/8/21(火) 19:37:21 ID:bEGGp0MEuA


      * * *

とある森。

光を浴びた小さな草むら。
花の香りの染み付いた、朽ちた梯子は木にもたれ、その脇近くの土の上には虫が群がる。そこから少しの距離置いて、またも群がる小さな虫。


誰に気づかれることもなく

静かな森に二つの羽音が広がった。



195: :2012/8/21(火) 19:39:26 ID:exBrIqN2oI

――――Fin.―


196: :2012/8/21(火) 19:49:48 ID:c68JX5smes

あっけないですが、お話はここで終わりです。200レス内に終わって良かった良かった。

短めのお話でしたが、完結までに約半年もかけてしまいました。
その間、長期にわたり更新を停止したりがありましたが、ランキングに何度もランクインしたり完結までもってこれたのは、偏に皆さんからの暖かい支援があったからです。
ここまでお付き合い下さった皆さんにありったけの感謝を。
ありがとうございました。

http://j2.upup.be/szNfjtiyZj


197: :2012/8/21(火) 20:10:04 ID:c68JX5smes

LIMBOについて、SSでは語れなかったことが少しだけあるので、それをちょっと補足してから削除依頼をしようと思います。

この作品へのご意見ご感想、また、腑に落ちない所や疑問などがございましたらお気軽に書き込みくださいませ!

それでは、また。
198: 名無しさん@読者の声:2012/8/21(火) 21:45:02 ID:3JGiE5H9x6
お疲れ様でした!ハッピーエンドになるのかと思いきや・・・。陰鬱なのに幻想的な世界観とテンポの良い文章の流れが好きでした。
ホントお疲れ様でした。
これで心置きなくゲーム探して購入してみようと思います!

199: 名無しさん@読者の声:2012/8/22(水) 12:35:26 ID:TELsTb9SoU
乙!
冒頭の文章が最後のシーンだったのか!面白かった。
削除しちゃうのか?
200: 名無しさん@読者の声:2012/8/22(水) 16:54:20 ID:96tNzcvs.g
200get

お疲れさまでした
ずっと応援させてもらっていましたがとても面白かったです。
乙でした
201: :2012/8/22(水) 22:54:44 ID:exBrIqN2oI
ふおおおご感想ありがとうございます!今日は時間があまりないので、LIMBO語りは明日からさせて頂きます。

>>198
暖かいお言葉をありがとうございます!
ハッピーエンドにしてあげたい気持ちもあったのですが、どうにも思いつかなくてこうなっちゃいました(^ω^ω^)
陰欝で幻想的な雰囲気はゲームのテーマなので、それが伝わっていたようで嬉しいです。
ゲーム楽しんでくださいね。そしていつか機会がありましたら語り合いましょう!

>>199
乙ありがとうございます!
そうなんです。ここら辺の構成もゲームに準じているという理由もあるのですが、一番は私が最初の文章で最後を締めるという演出に憧れていたもので。
なんだか保管庫はおこがましいかな…と思っていまして。削除じゃなくてもいいのでしょうか?

>>200
200getおめでとうございます!
>>200さんがいつも支援してくださっていたことが、とても心の支えになりました。面白いと感じて頂けて良かったです。
本当にありがとうございました!

皆さん嬉しいお言葉をありがとうございます。それでは一旦失礼いたします。
202: 名無しさん@読者の声:2012/8/23(木) 09:09:08 ID:maXqPY7hds
おつおつ
203: :2012/8/23(木) 19:32:15 ID:cIxHiF6d1.
>>202
うへへへー乙ありがとうございます!ここまでお付き合いくださり感謝です。


さて、次からLIMBOについての解説垂れ流しです。ぶっちゃけこれがやりたかった!


204: :2012/8/23(木) 19:33:33 ID:UPlzZm4aIQ
先ずは
・LIMBOという名前の意味
LIMBOとは日本語で辺獄、天国と地獄の間、ローマ・カトリックにおいて洗礼を受けず死んだ幼児の行き着く所とされています。更に詳しくはWikipediaにて。
この説明を聴くと、何故少年は無彩色の世界にいたのか納得がいきますね。幼い兄弟は命を落としこの辺獄に迷い込んでしまったのでしょう。
更に、少年を迎えた数々の悪意(例えばとらばさみ、巨大蜘蛛等)を見るに、限りなく地獄に近い場所なのかもしれません。
今回、物語の中に組み込まなかった描写が山ほどあります。その中に、少年が巨大な看板の上を渡るシーンがあります。その看板のスペルを(矢印も文字のLとして)入れ替えると、実はとある文章になるんです。その文章を見ると、ここは限りなく地獄に近い場所なのだと確信を持てるはず。このゲームは本当に細かい所まで凝ってます。

205: :2012/8/23(木) 19:48:30 ID:cIxHiF6d1.
・水について
この物語で水は立派な障害物になりました。少年は身軽で運動神経がありそうな印象なのに、何故か水に入ると沈んでしまうのです。これは私の仮説なのですが、少年はLIMBOに居ながらまだ生きていたからだと想像します。この仮説ならば、少年がこの世界で受けた数々の攻撃にも説明がつきます。
なんたって居てはいけない存在なのですから。殺しにかかる、ということは生きているということですしね。

次に続く
206: :2012/8/23(木) 19:58:11 ID:UPlzZm4aIQ
また、>>5で少年が渡った大きな川。他の場所とは違い、ここには綺麗な船がありました。これは日本で言う三途の川というやつでしょうかね。ここを渡ってしまえばもう、後戻り出来ませんでしたし。
しかしLIMBOは日本のゲームではありません。ので、川がどんな意味を持つのか調べてみました。なんだかそれっぽいのを見つけました。褒めて!
詩人として有名なダンテが、神曲の中でLIMBOをアケローン川(死者の魂を流す川の支流)の先として描いたそうです。正にこんな感じですね。

ちなみゲームではこの、水に入った時のサウンドがとにかく凄い!これは是非聞いてみて欲しいです。少年死んじゃうけども。

さて、今日はこの辺で。ここまでお付き合いくださりありがとうございます!
それでは、また。
207: :2012/8/25(土) 11:08:43 ID:ZI4.WP1J.c
・ギミックについて
このお話では舞台はずっと森でしたが、ゲーム自体はそんな訳でもありません。舞台は森から移動します。また、後半に行くにつれパズル要素が増していきます。
こちらでそれを省いたのは物語が単調になるのを防ぐためと、やっぱりこれからLIMBOをやる方に全部ネタバレしてしまったらつまらないと思ったからです。ので、このお話で登場した障害達の攻略法も一部改変してしまってます。あしからず。

208: 名無しさん@読者の声:2012/8/25(土) 12:51:10 ID:96tNzcvs.g
遭・遇・・?できたのかな?
関係ないけど保管庫希望です
支援
209: :2012/8/25(土) 22:02:43 ID:EaS5gRLqBQ
>>208
またお会いしましたね!わーい
保管庫希望してくださってありがとうございます!私も色々迷ったのですが、やっぱり初めて書いた作品だし残しておこうかな…と思っています。どうも、意思が弱い作者です。
支援感謝です!

210: :2012/8/25(土) 22:15:28 ID:EaS5gRLqBQ
・妹の側にあった梯子

何度か描写した梯子について。この梯子、明らかにその風景から浮いているんですよね。森の奥深くの場所に人工物があるんですから。
これは調べなくても想像がつきますよね。梯子は上へ行く道具。死後の世界を暗示している気がします。天国への階段とか言いますが、こちらでは天国への梯子でしょうか。
しかしこの梯子、ちょっと高い所にあるんです。少年が少女を肩車してようやく届く位の高さだと思います。
しかも梯子はボロボロなんです。二人も登れるとは思えません。

これはつまり、どういうことを意味するのでしょうかね。

211: :2012/8/25(土) 22:16:27 ID:EaS5gRLqBQ
・残る謎

LIMBOは>>2に書いた通り、台詞が一つもありません。与えられる情報はただ二つ。LIMBOというタイトルと、少年は妹を探していること。
多くが語られないからこそ謎があり憶測が飛び交います。正解はきっとありません。
どうとらえるかはプレイヤー次第。ここまでの話は全て私の憶測です。皆さんが当たっていると思っても違うと思ってもその通りです。
謎が謎のまま終わる、これもLIMBOの魅力です。人間、憶測とか大好きですからね!

少年は何故妹のためにここまで出来るのか?あの男の子達は何者なのか?あの罠達はどうしてそこにあったのか?妹の側にあった梯子は一体何の意味があるのか?
二人はちゃんと、ハッピーエンドを迎えられたのか?

ここからは、皆さんが考える番です。

212: :2012/8/25(土) 22:19:02 ID:EaS5gRLqBQ
・あとがき
本音を言うと、読者さんがちゃんといて、更にはランキング入りしたりして、初投稿したSSの割になんだか出来過ぎている気がします。これはLIMBO効果でしょうか。LIMBO万歳。

完結させることが出来た達成感ってすごいですね。書きつづけて本当に良かった。
くどいようですが、この作品を完結まで持ってこれたのは皆さんの暖かい支援があったからです。
改めてもう一度お礼を言わせてください。本当にありがとうございました。

213: :2012/8/25(土) 22:22:02 ID:EaS5gRLqBQ
後書きと言う名の自分語り乙。退屈させてしまってすみません。

長い後書きになりました。作者からは以上です。9月に入ったら保管庫依頼をさせて頂く予定です。
書き込みはどうぞ、お好きなように。

皆さん、ここまでお付き合い下さり本当にありがとうございました。
これにて、LIMBO好きのLIMBO好きによるLIMBO好きのためのお話はおしまいです。

それでは、また。
お会いするときまで。

214: 名無しさん@読者の声:2012/8/30(木) 19:17:42 ID:Ow7SAWLc86
何という出遅れ感……!

後れ馳せながら、お疲れ様でした。暗澹な雰囲気の中で、テンポのいい文章が詩を詠んでいるような気分にさせてくれる素晴らしいSSでした。
ラストに冒頭の文章が書かれていたのには鳥肌が立ちましたw

素敵なSSを読ませて下さってありがとうございました!また>>1さんの書くSSが読める日を楽しみにしています!
215: :2012/8/31(金) 18:02:16 ID:l.uGI75lzk
>>214
ふおお嬉しい感想をありがとうございます…!
文章のリズムの事も物語のラストもかなり意識していた部分だったので、そう感じて頂けて嬉しいです。

こちらこそ、ここまでお付き合い下さり本当にありがとうございました!またSSを書くことがありましたら、どうぞよろしくお願いいたします。
216: 真・スレッドストッパー:停止
停止しますた。ニヤリ・・・( ̄ー ̄)
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