とある森。
光を浴びた小さな草むら。
花の香りの染み付いた、朽ちた梯子は木にもたれ、その脇近くの土の上には虫が群がる。そこから少しの距離置いて、またも群がる小さな虫。
静かな森に二つの羽音が広がった。
157: 1:2012/8/18(土) 16:25:23 ID:EaS5gRLqBQ
少年はその音を聞いたことがあります
ついさっきの出来事です
この不快な音は、
虫が頭上に落ちてきた音です
少年の足の自由を奪う、芋虫の
少年の足が勝手に動き出します
光の差し込む花畑
まばゆい光りに驚いたのかその虫が
頭上で動く気配がしました
操られた少年の足がもつれます
足はそのままぐるりと方向転換し
少女に背を向け、
また暗い世界へ進み出しました
158: 1:2012/8/18(土) 16:26:23 ID:EaS5gRLqBQ
少年は焦りました
少女はもうすぐ近くにいたのに、
やっと見つけることが出来たはずなのに、
足はそれと逆方向に進むのです
待って、待って、お願い、戻って
叫びたいのに、声はでません
足だけがせわしく動き続けます
159: 1:2012/8/18(土) 16:28:55 ID:EaS5gRLqBQ
とにかく早くあの場所に戻りたい少年は
虫を食べる鳥を探します
その鳥は意外と早く見つかりました
少年の正面、
高い木の枝に一匹、
羽を休めてとまっています
しかし鳥は少年にも虫にも気づきません
虚空にむかって狂ったように
声を震わせているだけです
このままでは気づかれないまま
その木を通り過ぎてしまいます
160: 1:2012/8/18(土) 16:30:37 ID:EaS5gRLqBQ
少年は何かないかと周りを探りましたが何もありません
次にポケットに手を入れて
固く丸い何かを見つけます
ポケットから何かを出して見てみると
それは錆び付いた瓶の金口、
いわゆる王冠でした
何故それがポケットに入っているのか、少年には思い出せません
しかし今はそんなことどうでもいいのです
少年は異様に重い腕を振りかぶり
鳥にめがけ王冠を投げつけました
161: 1:2012/8/18(土) 16:35:27 ID:EaS5gRLqBQ
王冠は高く弧をえがき、鳥の羽に当たりました
驚いた鳥は光る目をこちらに向けます
そして羽を広げ、少年の頭にまっすぐ飛んで来ます
少年の頭をかすめたと思えば、
一瞬で鳥は飛び去りました
虫が潰れる、不快な音と共に
少年はまためまいに襲われ、
自分の体が虫から解放されたことがわかりました
それがわかるとくるり体の向きを変え
休む間もなく花畑へ、
体を引きずり走り出します
162: 1:2012/8/18(土) 16:37:02 ID:EaS5gRLqBQ
少年は急いでの場所に戻って来ました
そして、愕然とします
そこには壁
真っ白なかべ
ついさっき見たはずの光景はどこにもありません
淡い光の花畑も、
幼い少女の後ろ姿も、
何も、かも
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