2chまとめサイトモバイル

2chまとめサイトモバイル 掲示板
幼い兄、進むはモノクローム
[8] -25 -50 

1: :2012/3/13(火) 20:41:31 ID:JCMcRY0PdY

とある森。

光を浴びた小さな草むら。

花の香りの染み付いた、朽ちた梯子は木にもたれ、その脇近くの土の上には虫が群がる。そこから少しの距離置いて、またも群がる小さな虫。

静かな森に二つの羽音が広がった。




180: :2012/8/20(月) 20:02:03 ID:pBtoJZVKDU

しかし花の香りは本当です
少女が動く度にさわりと揺らぐ、草の音も本当です

間違えるはずがありません

あれは、確かに
本当に探していた妹だ


大切な大切な、妹だ



181: 1 本日の更新はここまでです:2012/8/20(月) 20:04:25 ID:fJfrMk8NYA

踏みしめるように、

一歩、
また一歩と妹の元へ歩み寄ります

ふいに少女が、頭を上げました
驚いて少年は、立ち止まります


そして、少年は思い出しました



182: :2012/8/21(火) 19:06:00 ID:bEGGp0MEuA

      * * *


少年には妹がいます
無邪気で少し泣き虫な、大切な妹です

あるとき少年と妹は絵本を読みました
少年と少女が森を冒険するお話です

絵本の中の冒険に憧れた二人は目を輝かせ
いつか森へ行くことを指切りしました

183: :2012/8/21(火) 19:07:59 ID:nomryNie92

それから少しの時が経ち

二人はありったけのお小遣いを持ち合わせ
遠くを目指してバスへ乗り込みました

二人の家はコンクリートに囲まれた都会の真ん中
近くに森などないのです

幼い二人はこのささやかな遠出を冒険に見立て
綺麗な瞳を輝かせます

バスの終点、
大きな森のそのふもと
お金は何とか足りました


184: :2012/8/21(火) 19:08:51 ID:bEGGp0MEuA

今から始まる冒険に、
二つの小さなその胸は期待でいっぱいに膨らんで


これから起きる出来事を予期など、出来たはずがないのです



185: :2012/8/21(火) 19:10:06 ID:nomryNie92

木々が鬱蒼と生い茂る森の中
少年と妹は仲良く手を繋ぎ
さくさく地面をならしながら森の奥へと進みます

木の葉がそよぐその音が
青葉の間から漏れる光が
土から漂うひんやりとした空気が、匂いが

全てが二人には新しく
疲れも忘れて歩を進めます


186: :2012/8/21(火) 19:13:25 ID:bEGGp0MEuA

ふと少女が小さく悲鳴をあげました
少女の足に大きな蜘蛛が這い寄ってきていたのです

このままでは妹が泣いてしまう、

少年も虫が苦手でしたが
妹のために勇気を振り絞り、足元にあった太い木の棒を拾い振りかぶって
真っ黒な蜘蛛をめった打ちにしました


ばらばらになった後、
ぴくり、と一度動いた蜘蛛の足が不気味だったのを少年は覚えています

もはや粉々になった蜘蛛は見向きもせず、二人はまた手を繋いで歩きだしました



187: :2012/8/21(火) 19:16:02 ID:bEGGp0MEuA

少女は歩いては立ち止まり、森に落ちているものを珍しそうに拾い上げます

拾った物の一つの王冠を、嬉しそうに少年に手渡します
少年はそれを受け取ると大切そうにポケットにしまいました


はらり、白い蝶々が少年と少女を追い越して行きました
二人は森の随分奥に進んだようでした

二人は蝶々を追って走り出します

188: :2012/8/21(火) 19:25:07 ID:nomryNie92

少年が妹を引っ張り走って行くと、色とりどりの花々が目に入りました

気づくと二人は木漏れ日眩しい小さな花畑に出ていました

少女は少年の手を離しその中に駆け出します
花畑の真ん中でしゃがみ、にこにこしながら花を摘み始めます


花摘みに夢中になった妹が面白くない少年は、
その花畑の脇にある大木に近づくと木登りすることにしました

189: :2012/8/21(火) 19:30:07 ID:bEGGp0MEuA

ごつごつした幹の突起につかまり上へ、上へ
とても高い所まで登ります

少年は、分岐した枝の一つが妹のいる花畑の方に伸びている事に気づきました
元々身軽な少年はしなる細い木の枝を平均台のように渡り、
妹のちょうど真上に立ったのです

見下ろすと、下にいる妹がただの豆粒の様に見えてなんだか楽しくなりました
こんなに高い所まで来たのだと、妹を驚かそうと声を上げかけた時です


190: :2012/8/21(火) 19:33:02 ID:nomryNie92

みし、木の枝が嫌な音を立てました

少年は危機を察して枝の付け根に走って戻りました

少年が走ったその拍子
木の枝は少年の足場を残し、ばきり折れてしまいました


191: :2012/8/21(火) 19:34:01 ID:bEGGp0MEuA

折れた木の枝は真っ逆さま
太く鋭いその棘は
加速し静かに落ちてゆく
幼い少女はそれに気づかず花を摘む


少年ぱちりと瞬きをした、その瞬間


折れた木の枝少女を貫く


一拍おいて少女は倒れる
その手にあるのは赤一色の花二つ


192: :2012/8/21(火) 19:34:52 ID:nomryNie92

少年は声が出ませんでした

妹が赤に染まって横たわる姿を木の上から見ていることしか出来ませんでした

ただ、とにかく、

妹の元へ急がなくてはと思いました



193: :2012/8/21(火) 19:36:23 ID:nomryNie92

そして少年は足場から一歩歩き出し、足は空気を虚しく切って

体はぐるり、
真っ逆さまに妹の元へ


地面にたたき付けられた少年は妹から少し離れた場所にありました

痛みで視界が真っ赤に染まるその中に
木漏れ日と共にさされた
綺麗な梯子を見た気がしました



194: :2012/8/21(火) 19:37:21 ID:bEGGp0MEuA


      * * *

とある森。

光を浴びた小さな草むら。
花の香りの染み付いた、朽ちた梯子は木にもたれ、その脇近くの土の上には虫が群がる。そこから少しの距離置いて、またも群がる小さな虫。


誰に気づかれることもなく

静かな森に二つの羽音が広がった。



195: :2012/8/21(火) 19:39:26 ID:exBrIqN2oI

――――Fin.―


196: :2012/8/21(火) 19:49:48 ID:c68JX5smes

あっけないですが、お話はここで終わりです。200レス内に終わって良かった良かった。

短めのお話でしたが、完結までに約半年もかけてしまいました。
その間、長期にわたり更新を停止したりがありましたが、ランキングに何度もランクインしたり完結までもってこれたのは、偏に皆さんからの暖かい支援があったからです。
ここまでお付き合い下さった皆さんにありったけの感謝を。
ありがとうございました。

http://j2.upup.be/szNfjtiyZj


197: :2012/8/21(火) 20:10:04 ID:c68JX5smes

LIMBOについて、SSでは語れなかったことが少しだけあるので、それをちょっと補足してから削除依頼をしようと思います。

この作品へのご意見ご感想、また、腑に落ちない所や疑問などがございましたらお気軽に書き込みくださいませ!

それでは、また。
198: 名無しさん@読者の声:2012/8/21(火) 21:45:02 ID:3JGiE5H9x6
お疲れ様でした!ハッピーエンドになるのかと思いきや・・・。陰鬱なのに幻想的な世界観とテンポの良い文章の流れが好きでした。
ホントお疲れ様でした。
これで心置きなくゲーム探して購入してみようと思います!

199: 名無しさん@読者の声:2012/8/22(水) 12:35:26 ID:TELsTb9SoU
乙!
冒頭の文章が最後のシーンだったのか!面白かった。
削除しちゃうのか?
70.85 KBytes

名前:
sage:


[1] 1- [2] [3]最10

[4]最25 [5]最50 [6]最75

[*]前20 [0]戻る [#]次20

うpろだ
スレ機能】【顔文字