とある森。
光を浴びた小さな草むら。
花の香りの染み付いた、朽ちた梯子は木にもたれ、その脇近くの土の上には虫が群がる。そこから少しの距離置いて、またも群がる小さな虫。
静かな森に二つの羽音が広がった。
2: 1:2012/3/13(火) 20:47:18 ID:JCMcRY0PdY
皆さん初めまして
このSSは「LIMBO」という、台詞が一つも無いゲームのシナリオに個人的解釈を加えたお話となります
そこでいくつかのご注意を
・このお話自体が重大なネタバレです
・グロ、鬱に耐性の無い方はお気をつけ下さい
・横スクロールのアクションゲームなので、ご都合主義なアイテムや罠が登場します。悪しからず
・ゲームのイメージを崩壊させてしまうかもしれません
・あくまで自分の解釈であり、これが正解というわけではありません
こんな感じで進めていきます
それではよろしくお願いします
3: 1:2012/3/13(火) 20:50:31 ID:JCMcRY0PdY
* * *
少年は目を覚ましました。
ぽつんと一人、草むらに四肢を投げ出した幼い少年が。
彼のまなこに広がるは暗い暗いモノクロームの森。
さわりと揺れる空気に包まれて、
数度目をしばたいて
草と土の冷たい感触を手に感じ
ぱきりと小枝を足で踏み
少年は一人立ち上がる。
ある日突然ぽつりと消えた、妹を探しに。
4: 1:2012/3/13(火) 20:54:13 ID:dfutephwdY
あてなんてありません。
あるはずがありません。
だってこんな森、少年には見覚えがないのです。
しかし進むしかありません。
大切な妹に会うために、前へ前へ。
モノクロームの森の中
背中についた土を払い
きらきら光るその瞳で前見据え
帽子のつばをくいと引き、
歩き出すはLIMBOの世界。
5: 1:2012/3/13(火) 20:58:49 ID:dfutephwdY
巨大な木の脇くぐり抜け
折れた大木飛び越えて
下る坂道小さなトンネル暗い道。
抜けるとそこに船がありました。
その船には帆がありません。しかしそれ以外には何も問題の見受けられない、綺麗な木製の船でした。
少年は迷わず船に飛び乗って、
小さく見える向こう岸を目指し
じゃぶりじゃぶりと緩い流れの川を進みました。
大きな大きな川でした。
白く光る不思議な川でした。
向こう岸まで渡って船を降り、坂道滑って反る崖登り。身軽な少年ひょいひょい進む。
6: 1:2012/3/13(火) 21:03:04 ID:dfutephwdY
虫がわんわん飛んでいます。
風がふうふう吹いています。
歩を進めると草や砂利や小枝と靴がぶつかってじゃりりさくさく、音がします。
するときらり、森の中に無機質な光が見えました。
鮫の牙の様な鋭いとげを携えた、大きな金属の口がありました。
獲物を飲み込むのを今か今かと待っているかの如く
それは大口をあけています。
7: 1:2012/3/13(火) 21:06:15 ID:dfutephwdY
所謂とらばさみ、というものでした。
少年にはそれが何だかわかりませんでした。
危ない機械であることは、牙を見ればわかります。
しかし少年にはやはり、それがどんな風に危ない機械なのかはわからないのです。
気になった少年は足元の小石を拾い上げ
ひょいとそこに投げ入れてみました。
がしゃあん!!と金属のぶつかる音がしました
8: 1:2012/3/13(火) 21:07:13 ID:JCMcRY0PdY
静かな静かな森の中。
大きな大きな金属音が鳴り響く。
耳が痛くなる程のその音は純粋で真っ黒な
悪意があるように感じられました。
もし彼がそれを踏むならば、挟まれた部分を境目に、身体は二つになるでしょう。
そんな予感か確信か、
そんなものが顔を出す音でした。
だから少年は牙を踏まないように慎重に、しかし身軽に飛び越えます。
着地した振動に反応したのか、後ろでがしゃん、先程と同じと大きな音がしました。
9: 1:2012/3/13(火) 21:58:29 ID:Y94rLx4y/E
どうにかこうにか罠を抜けたことに安心し、さくさく進む少年の
目の前立ちはだかる小さな崖。
小さくとも崖は崖。
手を伸ばしてもへりに届きそうにありません。
仕方なく少年は何か崖を登るためのとっかかりを探し
ぐるりと周りを見渡しました。
すると崖に沿って生えた木々の中
とある木の枝しなる枝
そこには縄が垂れています
そこには何かが吊されいます
10: 1:2012/3/13(火) 22:03:39 ID:EkZRbngOOM
モノクロームの森の中
しかし少年はその“何か”が何なのか
鼻をつく腐臭でわかりました
わかってわからぬふりをしました
“何か”を吊した縄を登り
向かいの崖に飛び乗って
少年は続く坂道へ
知らんぷりして進みます。
11: 名無しさん@読者の声:2012/3/13(火) 22:07:11 ID:EkZRbngOOM
坂道を越えるとそこは大きな水溜まり
足をついて進むことは不可能そうです
泳いで進もうとした少年はざぶりと光る水へ足をいれました。
しかしなんだかおかしいのです。
なんだか水に入ったら力が抜けてゆくのです。
まるで水が、魂を吸い取るかのように。
不安になった少年は泳ぐのを諦め、なんとか渡る方法を探しました
12: 1:2012/3/13(火) 22:12:56 ID:EkZRbngOOM
ぐるりと見渡し何も見つからず
次は上を見上げると
大きな木の枝その先が
今にも折れそうになっていました。
少年は小さな枝を伝って
木の上へ上へと登りました。
そうしてその折れそうな枝へ辿り着くと
勢いよくそれを押し
その枝は下へ落ちてゆきました。
少年もまた下へと下りて落ちた枝を水辺に押して浮き島変わりにして
ようやく水溜まりを抜けました。
13: 1:2012/3/13(火) 22:47:18 ID:ss50EpOVDo
中々見やすいレイアウトにできない…
書きながら精進しようと思います
とりあえず今日はここまで!
少しでもこのゲームの雰囲気を伝えられるよう頑張りますので、明日からもよろしくお願いします
14: 1:2012/3/14(水) 19:14:35 ID:0yvaffDDhE
少年は何となく、上を見遣りました。
足元ばかりを気にして歩いていたので空を見たくなったのです。
見上げた空もまた
ただのモノクロームだったけれど
少年は見上げた視線のその端に
何かが枝に乗っていることに気がつきました
しっかり確認すれば、それはいつぞや道で見たのと同じ
凶暴な牙のとらばさみでした
15: 1:2012/3/14(水) 19:15:42 ID:0yvaffDDhE
今にもこちらへ落下してきそうで恐ろしく
少年は小走りにその枝をくぐってそこを後にしました
どんどん先に進もうとしました。
しかし進もうとしたとき
大きな針のような鋭い棒が
少年目掛けて突いてきました。
16: 1:2012/3/14(水) 19:17:43 ID:cm06SJ0Ur2
間一髪、
少年は尻餅ついて針から逃れ
どすりと鋭いそれは少年の脇
深く深く土に突き刺さります
鈍い音が地に響き
同時に軽い振動が
土から彼の身体へ広がりました
17: 1:2012/3/14(水) 19:19:46 ID:cm06SJ0Ur2
少年の背丈の何倍か
そこらの木の枝に負けず劣らず太い足
それを八本携えた
岩を彷彿とさせる丸い胴には
分厚く毛が生えおぞましい。
少年の目の前
道の真ん中
そこには巨大な
化け物蜘蛛が構えていました
18: 1:2012/3/15(木) 18:24:02 ID:XqHl8YDW7A
ここを進むには蜘蛛を退かすしかないようです
しかし今の少年に
自分の何倍もの大きさの
鋭い武器を八つ持った化け物に抗う手だてはどこにもない
少年は震える身体を叱咤して
武器を探しに踵を返し駆け出しました
幸い蜘蛛に、少年を追う様子はありませんでした
19: 1:2012/3/15(木) 18:31:45 ID:XqHl8YDW7A
先程少年が空を見上げたあたりに戻ってきました
そこには、
その時まで枝に乗っていたはずの
とらばさみ落ちていました
きっとあの振動の拍子に落ちたのでしょう
しめたと思って少年は
とらばさみを引きずり揚々と
巨大蜘蛛の元へ戻りました
20: 1:2012/3/15(木) 18:34:01 ID:5Mr.6/17SY
戻るとすぐさま鋭い足
少年目掛けてやってくる
少年は素早く身体を動かして
蜘蛛の足が落ちるであろうその場所へ
とらばさみ引きずり照準を合わせる
ひゅん、太い足が風を切る音がする
次にがきぃんと金属のぶつかる激しい音
同時にぐしゃり、何かが砕ける篭った音
それらが全て、一緒くたに
少年の耳に届いた
21: 1:2012/3/15(木) 18:43:31 ID:5Mr.6/17SY
見ると蜘蛛の鋭い針が一本
金属の牙に飲み込まれ
蜘蛛はがたがた足を動かします
しばらくするとようやくに
とらばさみの牙ぱかり開く
開いた中からあらわるは
おかしな所でぐにゃり曲がった黒い足
不自然に曲がったその足からは
液体がどろりと流れ、まずは一本
蜘蛛の足が落ちました。
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