【プロローグ】
暑い・・・
ワイシャツを指でつまみパタパタと扇いで体に風を送り込み火照った体を冷まそうとする
クーラーの聞いた教室から一転、廊下は地獄かと錯覚するような暑さだ
級友達はそれなり休みを満喫したようで、肌の色も小麦色なのがちらほら見えた
さて、俺は今どこに向かってるかと言われれば、生徒会室である
理由はもちろん、呼び出しをくらったからだ
別に何も悪いことはしていないが、半ば自主的に生徒会室へは足を運んでいる
男「・・・暑いな」
独り言のように紡がれたそれは今の心情をそのまま表していた
八月は終わったというのに、太陽は遠慮という言葉を知らないらしい
クーラーが効いている事を願い、俺は生徒会室の戸に手を掛けた
二学期が…始まる
101: 1:2012/9/6(木) 20:54:37 ID:Iin4jnaMs6
周りが慌ただしく動き始める中、友が近づいてきた
友「準備は?」
男「もちろんだ」
伊達にこの数週間思わず悶絶したくなるようなセリフを吐き続けたわけではない。女はノリノリだったが
友「そう、ならいいんだ」
友が納得したような顔をした時
幼「い、いらっしゃいましぇ!!あ、噛んだ!!」
泣きそうな顔でセリフを必死に練習している幼の姿が目に入る。そういえばセリフを暗記していないのは幼だけだったな
幼「友君〜やっぱり私には無理だよう〜」
捨てられそうな子犬を見てるかのような錯覚に陥るのは俺だけか?
102: 1:2012/9/6(木) 23:13:34 ID:QiE5ZH/akU
友「大丈夫だよ。幼さん」
友が優しく微笑みながら幼を励ますように
友「それが幼さんの魅力なんだよ。自信をもっていい。少なくとも僕には魅力的に見えるよ」
幼「そ、そうかな…//」
近距離で微笑まれて思わず赤面をする幼。相変わらず乙女な反応だ
女「乙女な反応だな」
男「音もなく近寄るな。心を読むな」
女「ふふ、すまない」
しっかり燕尾服を着こなした女が俺の隣立つ
幼を羨ましげに見ながら
女「やはり、お前もあんな反応がいいのか?」
男「いや、そうでもない」
あの反応は幼にのみ許された反応であり友の言葉を借りるなら、幼の魅力というやつだ
男「それに、お前があんな反応したら俺は全力で逃げる」
女「なら、私は全力でお前を捕まえる」
実際にやりそうな答えを出しながら笑う女
相変わらず有言実行の塊みたいな奴だ
103: 1:2012/9/6(木) 23:18:48 ID:pc/9dJv9U.
幼「わー!!女ちゃん格好いいね!!」
先ほどまでの子犬はどこへやら、友に諭された(説得された?)幼はこちらにトコトコと近より歓声をあげている
幼「女ちゃんはいいなぁ…美人さんだし、スタイルいいし」
女「そんなことはないさ、私には幼みたいな可愛さは出せないよ」
幼「そ、そんなことないよ!!」
女「謙遜を」クイッ
幼「あ…//」
友「どう思う?」
男「どうって…」
体格に差がある二人が並び、あまつさえ女が幼の顎を掴み上に向かせるという構図…
男「あれ、お前の指示?」
友「まさか、幼さんと女さんの化学反応とでも言っておこうか」
あんな化学反応は…ありと言えばありだが、無しと言えば無しだろう…
個人的にはありだが
104: 1:2012/9/6(木) 23:24:21 ID:pc/9dJv9U.
友「まあ良いもの見れたでしょ?」
あからさまに計画通りみたいな顔されながら言われたら説得力がない
しかし、反論するのも疲れるので、黙って頷く
友「問題は彼女達をいつ前線に出すかだよね…」
男「別々じゃ駄目なのか?」
友「別々でも集客率はあるけど、二人でセットなら性別問わず集客率があがるよ」
男「・・・まあな」
チラリと二人を見ながら頷く。確かに集客はできそうだ
友「ただ問題は二人を出すことにより集客しすぎるということなんだよね」
男「いいんじゃないか?」
友「良くないよ。君は女さんと回るんだろ?」
男「・・・」
全く、こいつにはいつも頭が上がらない
俺が考えてる二手三手先を見据えているからだ
今はその配慮がとても助かるが
105: 1(投下終了):2012/9/6(木) 23:30:01 ID:QiE5ZH/akU
男「構わねーよ。女にはなんとか言う」
友「でも…」
男「あいつの事だ。大事なのはやった事じゃなくて俺と回る事だろうよ」
友「随分わかったような口振りだね?」
男「・・・」
実は全然分かっていない。完璧なでまかせだ
だが、それでも俺は女を説得出来る自信があった…後はどうやるか、だが
男「ともかく、お前は喫茶の事を考えてろ」
友「・・・わかった」
渋々というような感じで頷く友。あいつの行為を無下にするようで少し心苦しいが、あいつの実行委員としての頑張りを見ているので応援したくなってしまったのだ
男「さて…どうするかね」
どうやって女を説得するか、それを考えながら女達に近づいた
106: 1:2012/9/7(金) 15:19:40 ID:x3YWRW.2Kw
男「なあ…女」
女「私と幼をセットで出れば集客出来そうだな」
全てを見透かした様子で呟く女。本当にこいつは質が悪い
男「気づいてたのか」
女「当然だ。お前の声ならどんな雑音の中でも聞き取れる自信がある」
どんな自信だよと突っ込みたかったが、本題に入る事にする
男「でだ、その件なんだが」
女「構わない。しかし条件がある」
こいつの出す条件はろくなのが無いが、ここは黙って聞くことにする
107: 1:2012/9/7(金) 15:42:12 ID:n.HpD09wVY
男「で、なんなんだ?」
女「・・・」
女はゆっくりとこちらを振り向き、口を開いた
女「文化祭直後の振替休日…私に監禁されろ」
一瞬時が止まったような気がした
近くで聞いていた幼は唖然とした顔をしているし、聞こえていたのか、友は複雑な表情をしていた
そしてこの条件にはいそうですかと言えるわけがない
男「おいおい、それは勘弁してくれよ」
女「少し言葉が悪かったな…お前の1日を私にくれ」
108: 1:2012/9/7(金) 15:46:21 ID:x3YWRW.2Kw
男「1日?」
女「1日」
男「俺の?」
女「お前の」
男「お前が?」
女「私が」
端から見ればアホ丸出しの会話だが、本人はいたって真剣である
現に女の目はこれまでに数回したみたことないくらいに真剣に輝いている
男「・・・わかった」
女「よし!!」
盛大にガッツポーズをしながら
女「では、友と最後の調整をしてくる」
そういって行ってしまった
あそこまで喜ばれるなら、1日くらいならいいか
109: 1:2012/9/8(土) 12:32:20 ID:08c30a87cE
文化祭当日
男「校長の話及び今までのを全カットで」
友「うん…もう何も言わないよ…」
幼「つ、ついに…だね…」
女「これまでの準備の成果を見せるときだな」
友「うん。じゃあ各自配置について」
友「絶対に、成功させるよ」
男「おう!!」
110: 1:2012/9/8(土) 12:37:08 ID:08c30a87cE
客「ねえ!!見てみて!!執事喫茶だって!!」
客「えー、どうせブサメン揃いでしょ?止めた方がいいって」
客「でも中見なくちゃわからなくない?」
客「どうせ期待外れよ…」
ガラガラ
幼「い、いらっしゃいませ!!お嬢様!!」
客「「・・・」」
111: 1:2012/9/8(土) 12:40:20 ID:08c30a87cE
客「(なにこれ!?新種のプレイ!?いじめ!?)」
客「(わ、わからない!!)」
幼「お、お席へご案内いたします!!」
客「あ、あの…せっかくですけど…」
幼「あ…お帰りに…なっちゃいますか?」
客「!!」ズキューン!!
客「ま、まあ入ったんだしね…うん」
客「冷やかしだと思われたくないからね…」
幼「ありがとうございます!!」
客「(完璧な子犬だわ…)」
112: 1:2012/9/8(土) 12:46:15 ID:08c30a87cE
客「しっかし…あれもアリっちゃアリなのかな…」
客「男装させてるってことは、男の子が少ないのかな?」
客「うーん…パッと見共学の男子寄りだと思ったんだけd」
女「お待たせいたしましたお嬢様、メニューをお持ちしました。どうぞごゆっくり吟味なさってください」ニコ
客「「・・・」」
客「(ちょ!?なにこれ!?)」
客「(この子も執事なの!?ていうか男装してるの!?)」
客「(にしても格好よすぎでしょ!!)」
113: 1:2012/9/8(土) 12:49:58 ID:.aIZMltCmw
男「・・・あれ、どうなんだ?」
友「ばっちりクリティカル」
幼「女ちゃん凄いね…」
友「いやいや、幼さんがいなくちゃあれは成り立たないんだよ」
幼「そうなの?」
友「うん」
男「ま、お前はお迎えさえしてくれりゃいいんだ」
幼「皆頑張ってるのに…私だけそんな楽でいいのかな…」
友「何を言ってるの、幼さんの動きしだいでこの喫茶に人が来るかどうか決まるんだよ?」
男「つまり、この喫茶の存続はひとえにお前にかかっている」
幼「お、脅かさないでよ〜」
114: 1:2012/9/8(土) 12:56:42 ID:.aIZMltCmw
友「ほら、次のお客さん来たよ」
幼「あ、行かなくちゃね」
友「今度は僕がサポートするから」
幼「ありがとう♪」
友「どういたしまして」
友「男、ここは任せたよ?」
男「任された」
115: 1:2012/9/8(土) 14:12:45 ID:MkT7bHZ.jk
幼「い、いらっしゃいませ〜!!」
友「いらっしゃいませ」
客「お、かわいー」
客「ねえねえ、ここ執事喫茶なんでしょ?サービスしてよ〜」
幼「え、えーと…」
友「・・・」
客「ね、ね?少しだけ…」
友「旦那様。失礼でございますが、休憩に来られたのですよね?」
客「あ?」
友「他のお嬢様方の迷惑になるようでしたら…旦那様といえどご退室願います」
客「あのなぁ…こちとら客なん…いてて!!」
女「迷惑だというのがわからんのか?」
客「な、なにしやがる!?」
女「見てわからないか?腕を捻ってるんだ」
客「は、離しやがれ!!」
116: 1:2012/9/8(土) 14:17:38 ID:MkT7bHZ.jk
幼「お、女ちゃん…私は何もされてないから」
女「・・・そうか」パッ
客「てめぇら…この店を悪く言いふらしてやるからな!!客に暴力を振るう店だって!!」
女「勝手にしろ」
客「は!?」
女「私は大事な友人を守っただけだ。何も悪いことはしていない」
客「っ!!ふざけ…」
パチパチパチパチパチ
客「凄い!!格好いい!!」
客「自分の店も気にせずに友達を助けるなんて…」
客「ただ格好いいだけなんじゃなくて、心が綺麗なのね!!」
女「・・・お嬢様方、大変お見苦しい所をお見せしまして、深くお詫び申し上げます」ペコリ
客「・・・ちっ!!」
ガラガラ
117: 1:2012/9/8(土) 14:21:39 ID:MkT7bHZ.jk
幼「女ちゃん…」
女「すまない友、私はとりかえしのつかない事をしてしまったかもしれん…」
友「・・・いや、寧ろいいかもしれない」
女「?」
友「いつの時代も、物事を動かすのは個人より大衆だからね」
友「あのお客には悪いけど、いいスケープゴートになってもらおうか」
幼「え?えーと…よくわからないんだけど…」
男「女が身も心も綺麗で格好いいという印象を持たせるため、だろ?」
118: 1:2012/9/8(土) 14:28:57 ID:eCvMu14NRk
友「その通り」
男「少なくとも、あん時あの場所にいた客は全員女の印象を覚えたはずだからな…後はクチコミで広がってくれればいいんだが…」
女「だが…あまり許された事ではないだろう」
男「まあな、だからお前は少し執事を休憩」
男「気にするなと言っても、お前は気にするんだろうな」
女「・・・」
男「だから、気分転換に少し回ろうぜ」
女「!!」
119: 1:2012/9/8(土) 14:32:56 ID:MkT7bHZ.jk
女の手を取り扉に行く
男「じゃ、一時間か二時間ちょいでてくる」
友「はい、いってらっしゃい」
誰にも言ってなかったはずだが、やはりこいつは全てを見越してるらしい…
幼「リフレッシュもたまにはいいからね、女ちゃん」
女「ああ」
幼と友、それから厨房や執事数人に見送られながら俺は扉に手をかけた
120: 1:2012/9/8(土) 14:40:01 ID:eCvMu14NRk
男「さて…どこいくか」
パンフレットを見ながら女に問いかける
女「そうだな…そういえば」
女がスカートのポケットを探った後に二枚の紙切れを取り出した
その紙にはアイス半額と書いてあるが…
女「後輩からもらった物だ。後輩のクラスでは特製のアイスを販売しているらしい」
男「そうだな。じゃあそこにいくか」
女と手を繋いで歩き始める。そういえば公共の場でこんな風に手を繋ぐのは初めてだ
そう考えたらなんだか恥ずかしくなり、女の方を見る。くそっ、涼しい顔をしてやがる
女「ん?どうした?」
視線に気づいた女が聞いてくる
男「なんでも」
特に何も返答することがないからはぐらかしておく。女は微妙な表情をしたが何も聞いてこなかった
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