【プロローグ】
暑い・・・
ワイシャツを指でつまみパタパタと扇いで体に風を送り込み火照った体を冷まそうとする
クーラーの聞いた教室から一転、廊下は地獄かと錯覚するような暑さだ
級友達はそれなり休みを満喫したようで、肌の色も小麦色なのがちらほら見えた
さて、俺は今どこに向かってるかと言われれば、生徒会室である
理由はもちろん、呼び出しをくらったからだ
別に何も悪いことはしていないが、半ば自主的に生徒会室へは足を運んでいる
男「・・・暑いな」
独り言のように紡がれたそれは今の心情をそのまま表していた
八月は終わったというのに、太陽は遠慮という言葉を知らないらしい
クーラーが効いている事を願い、俺は生徒会室の戸に手を掛けた
二学期が…始まる
721: 1:2012/11/28(水) 19:56:59 ID:qf2Xyjydl2
副会長「大体、過保護じゃないか?そんなに後の代が心配かよ」
女「彼らならよくやってくれると信じてるさ」
副会長「どのみち、後少しで俺達とこの学校の関係は無くなるさ」
女「・・・」
副会長「冷たいような事言うけど、現実なんだよ」
女「わかっているさ」
ガラガラ
副会長「わかってる…か、半分は自分に言い聞かせてたんだけどねぇ」
副会長「お前以上に最高の生徒会長はいないよ」
722: 1:2012/11/28(水) 20:00:37 ID:MD.Og/oBiw
体育館
男「・・・」
男「・・・」
男「(なげぇ!!)」
男「(この卒業式特有の喋っちゃいけない感。たとえ練習だとわかってても従わざるを得なくなっちまう)」
男「(かといって眠くなるわけもなく…っておい!!あいつ寝てるぞ!!)」
男「(くっ、友や幼と話したいのに二人とも微妙に遠いから話しかけづらい…ていうか、あの二人は隣同士かよこんちくしょう!!)」
司会「続いて、生徒代表の言葉。女さん、お願いします」
女「はい」
男「・・・」
723: 1:2012/11/28(水) 20:06:13 ID:MD.Og/oBiw
女「・・・本番では恐らく、私が壇上で何かを話すだろう」
女「よって、私からは控える。しかし、練習とはいえ、本番と同じ気持ちでやってほしい」
女「終わります」
男「(やっぱあいつ壇上に上がると様になるよな…)」
男「(でも、いくら女でも本番と同じようにって言ったって直るわけ…)」
男「(全員キチンとしてるーー!?)」
男「(馬鹿な!?さっきまで涎を垂らして寝ていた奴でさえ寝てたのが嘘みたいなお目目ぱっちりだぞ!?)」
男「(なんつーか…こいつは本当に凄い奴だって改めて思うよな…)」
724: 1:2012/11/28(水) 20:10:42 ID:qf2Xyjydl2
先生「あー、お前ら。お疲れさん。楽にしていいぞ」
先生「まあ、これは練習だから本番は倍くらいかかると思えよ」
先生「で、だ。今週末にはいよいよ卒業式だ」
先生「俺を含める先生方がお前らガキに勉学を教える最後の週でもある」
先生「卒業すんのに今更勉強とか、かったりーよなんて思ってる奴。覚悟しとけよ」
先生「とにかく、先生からの話は以上だ。他に何もないならクラス毎に教室戻れー」
725: 1:2012/11/29(木) 00:09:42 ID:Jf7QBBD9R6
男「今週末には卒業ね、なんか実感沸かないわ」
女「皆、似たような気持ちだろう」
男「でも、卒業式してから実感するんだろうな」
友「当事者だと、中々わからない事もあるしな」
幼「・・・私、卒業したくないな」
友「幼さん?」
男「まーたお前は中学校の二の舞か?」
幼「・・・」
726: 1:2012/11/29(木) 00:13:42 ID:Jf7QBBD9R6
幼「皆と離ればなれになっちゃうんだよ?そんなの寂しいよ…」
友「幼さん…」
男「大丈夫だって。幼」
男「俺達はたとえ離ればなれになっても、ずっとずっと今のままさ」
幼「・・・」
男「それに、今ならお前を支えてくれる大事な奴がいるだろ?」
幼「・・・」
友「え?そこで僕に振る?」
友「えっと…僕じゃ役に立たないかもしれないけど…幼さんが寂しくならないように頑張るから…」
友「だから…えっと」
幼「…ありがとう。友君」
友「・・・うん」
727: 1(投下終了):2012/11/29(木) 00:18:27 ID:Jf7QBBD9R6
男「おうおう、見せつけてくれるねぇ」
女「うむ。実に妬くな」
友「君達、たちの悪いチンピラかなんか?」
友「だいたい、君達もいちゃつけばいいじゃないか」
男「残念ながら卒業するまでは無しだ」
幼「え?」
女「昨日、男と誓約を交わした。卒業までは一切手を出さない代わりに、卒業したら好き放題していいと」
男「・・・な?」
友「ああ…そう」
女「だから私ははやる心を抑えつつ、男をどうしようかずっと考えているのさ。そうだな…軽く20はあるか」
男「そんなにあんのかよ!?」
女「当然だ」
幼「やっぱり…二人はお似合いだね」ヒソヒソ
友「誰もこの二人の真似は出来ないだろうね」
728: 1:2012/11/29(木) 18:13:05 ID:Ou70Vp7aU.
産婦人科
医師「次の方、どうぞ」
ガチャ
男「おいーす」
医師「なんだ。君か」
男「なんだは無いだろ」
医師「何のようかな?一応こちらも職務に勤しんでいるのだが」
男「とか言いながらコーヒーを用意するその手はなんだ」
医師「仕事合間の一服だよ。案外暇でね」
男「職務に勤しんでるんじゃなかったのか」
医師「今はな、君も飲むか?」
男「ああ」
729: 1:2012/11/29(木) 18:20:28 ID:Ou70Vp7aU.
男「インスタントなのに旨いっていう不思議」
医師「淹れ方ににコツがあるのさ。それで?何の用かな?冷やかしなら警備員を呼ぶんだが」
男「女、特殊な体質なんだってな」
医師「ああ、聞いたの?」
男「まあ…一応」
医師「そっか…」
男「なんか、今更だけど良かったわ…俺の体質に感謝したの初めてかもしれない」
医師「どう解釈するかは人の勝手だから口を挟む必要はないけど、人間含む生物の基本行動は子孫を残す事だから、その点から言えば君は人より劣ってると言えるね」
医師「でも、今回ばかりは君がその体質で良かったよ」
730: 1:2012/11/29(木) 18:25:23 ID:2f6ATVrpfk
男「やっぱり、俺や女みたいな体質の奴って少ないのか?」
医師「君の場合家系によるものが大きいからなんとも言えないけど、女のは少ないよ。一万人に1人位の確率さ」
男「そんなに…か」
医師「でも、そんなと女と巡り会えた君はこれも運命なんだろうね」
医師「本来なら子沢山に恵まれそうだけど…果たしてどうかな?」
医師「ま、アタシから言えるのはこれぐらい」
男「サンキュ」
医師「もうすぐ卒業だっけか?」
男「ああ」
医師「しっかり責任取んなかったら、アタシがぶっ飛ばしにいくからね」
男「怖いな、そりゃ」
731: 1:2012/11/29(木) 18:29:06 ID:2f6ATVrpfk
卒業式当日
男「・・・いよいよか」
幼「えぐっ、ずるる…うぇっ、ひっく…」
友「幼さん。水飲む?」
幼「ありがど…どもぐん…ずるる」
男「泣きすぎだろ」
女「だが、これが幼らしさだからな」
友「まあね…ほらほら、涎も出てるじゃない」
幼「うう〜〜〜」
友「(嘗めとりたいなぁ…)」
先生「おーう、お前ら。さっさと準備しやがれー」
先生「・・・頑張れよ」ボソッ
732: 1:2012/11/29(木) 18:33:02 ID:2f6ATVrpfk
男「(やっぱり流石に本番じゃ誰も寝ないな…つーより、なんか凄く緊張するんだが…)」
男「(あ〜あ、幼の奴顔がぐしゃぐしゃだよ…って友!?殺気周りに向けんな!!)」
司会「続いて、生徒代表の言葉。女さん。お願いします」
女「はい」
男「(・・・来たか)」
733: 1:2012/11/29(木) 18:44:08 ID:Ou70Vp7aU.
女「三年前、私達はこの学舎で出会い、三年間を過ごしてきた。時間にしてみれば途方もなく長く感じるが、私にとってはあっというまの三年間だった。この中で千差万別、多種多様。様々な学園生活を送って来ただろう」
女「部活に精を出した者。学業に精を出した者。スポーツに精を出した者。行事に精を出した者」
女「私は二年で生徒会に入り、三年生で生徒会長を勤めさせてもらい、この学園の為に力を尽くした」
女「皆、私を支持してくれて、様々な行事や政に協力してもらった」
女「私は本当に感謝している。本当にありがとう」
女「今、私達はこの学園から巣立ち、社会に出ようとしている」
女「社会は苦しく、厳しく、誰もが一度は心を折られてしまうだろう」
女「だが、そんなときには思い出してほしい。共に過ごしたこの時間を、共に泣き、共に笑いあったこの時を」
女「私達は1人ではないことを、離れていても強い絆で結ばれていることを」
女「さよならは言わない。きっとまた出会えるから、だから私はこの言葉を皆に送る」
女「また会おう!!」
734: 1:2012/11/29(木) 18:52:12 ID:Ou70Vp7aU.
司会「・・・」パチパチ
先生「・・・」パチパチ
生徒「・・・」パチパチ
パチパチパチパチパチパチ
男「全く…最後の最後でかっこつけやがって…」
幼「ぶぇぇぇぇん!!」
友「ちょ!?幼さん!!」
司会「ありがとうございました。」
司会「卒業生が退場します。皆様、拍手でお見送りしてください」
735: 1:2012/11/29(木) 19:42:01 ID:YvGSKaKD7o
男「この学校ともおさらばか…なんか悲しいな」
幼「ふぇぇぇぇん!!」
友「もうハンカチないんだけど…」
女「友、すまないが幼を送ってやってくれないか?」
友「言われなくても。じゃあ、またね。二人とも」
幼「ま、まだ、まだね〜」
男「呂律が回ってねぇぞ…」
女「・・・」
男「心残りか?」
女「まさか、私はこの学園に甘えすぎていたのだぞ?」
女「ただ…思い出が多すぎる…」
男「ちょっと、着いてきてくれ」
女「?」
736: 1:2012/11/29(木) 19:56:17 ID:O9oYtu06ZI
公園
女「・・・ここは」
男「そ、俺とお前が出会って、お前が俺に告白した場所」
女「ふふ、あの時のお前のテンパり具合といったら…」
男「しょうがないだろ。あの時は初めてだったんだから」
女「確か、お前は返事は考えると言っていたが…結局返事はもらえなかったな」
男「お前の勢いに圧されたんだよ」
男「・・・でも、もう圧されない」スッ
女「え?・・・っ!?」
男「婚約だから、正式ではないけど…それでも形として残したいしさ…」
男「俺と、結婚してくれますか?」
女「・・・」
男「・・・」
女「・・・はい」
737: 1:2012/11/29(木) 21:49:38 ID:9T.4e7jXrM
【エピローグ】
学校
先生「はい。では皆?宿題の作文をやって来たかな?」
「「はーい!!」」
先生「はい。それでは少年君から」
少年「はい!!」
少年「ぼくのかぞく」
少年「ぼくのかぞくはさんにんかぞくです」
少年「お父さんとお母さんはとってもなかよしで、いつもニコニコしています」
少年「お母さんはお父さんの事がすごく大好きで、1日5回は抱きついています」
少年「ぼくは、そんなお父さんとお母さんがとっても大好きです!!」
先生「はい、よく読めましたね」
738: 1:2012/11/29(木) 21:53:12 ID:vjov.GZqPA
少年「せんせい、さようなら」
先生「はい。さようなら」
少年「あ、お母さん!!」
少年「おかあさーん!!」タッ
女「こらこら、あまり走ると転んでしまうぞ」
少年「きょうはね、お父さんとお母さんのおはなしをしたよ」
女「私達の?」
少年「うん。さんにんかぞくでなかよしだって!!」
女「そうか…それを聞いたら男も喜ぶだろうな」
少年「お父さんは?」
女「今日は早番で早く帰ってくるらしい」
少年「やったぁ!!」
739: 1:2012/11/29(木) 21:58:24 ID:vjov.GZqPA
家
少年「ただいまー」
男「おー、お帰り。早かったな」
女「お前こそ、一体どうしたんだ?」
男「先方の都合が合わないとかでドタキャン。いい迷惑だよ」
少年「お父さん!!きょうはね、お父さんとお母さんのおはなしをしたよ!!」
男「どんなお話?」
少年「とってもなかよしっておはなし!!」
男「仲良し…まあ、仲良しだな」
少年「えへへ〜」
男「ほら、手洗いうがいをしっかりな」
少年「うん!!」タタター
740: 1:2012/11/29(木) 22:06:48 ID:9T.4e7jXrM
男「仲良し…ね、まあ曇りなき子供の目からみたらそうなるのか」
女「ならお前はどんな風に映っているのだ?」
男「いつ喰われるか、戦々恐々」
女「・・・私と結婚して、後悔してるか?」
男「ばーか」グイッ
女「んむ!?」
男「後悔なんて、とっくの昔に捨てたよ」
女「ふふ、腹を括ったか」
男「当たり前だ」
少年「なんのおはなししてるのー?」
男「なんでもないよ。先に部屋に戻ってなさい」
少年「はーい」
この小さな幸せを守る
それが今の俺がやるべき事
苦悩なんてしてられない。俺の…いや、俺達の旅路は始まったばかりなのだから
変態女と苦悩男と天然幼と真面目友2
fin
373.12 KBytes
[4]最25 [5]最50 [6]最75
[*]前20 [0]戻る [#]次20
【うpろだ】
【スレ機能】【顔文字】