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駆け出しハンターと愉快な狩人達
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1: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2012/12/16(日) 00:56:15 ID:LEiceYsiw.
ユクモ村

自然溢れるこの村は周囲に緑が多い
俺の名前はセネル=ボルアス
一応この村のハンターだ…新米だけど
今俺はハンターの基礎を教わるべく訓練所に訪れている。もちろん村長からのいいつけもあるが、それ以前に両親との約束で、ハンターになるなら必ず訓練所にいけと言われていた

両親は二人ともハンターだった。ただ…この世にはもういない
ヤマツカミ討伐中に飛竜に襲われて死んだらしい
その場にいたハンターの証言と、遺品が送られてきたからまず間違いないだろう。ハンターは死と隣り合わせの職業だといつも父さんが言っていたし、覚悟はしていたつもりだった
それに悲しみに暮れるよりも、ハンターとなって父さんと母さんの意思を受け継ぐ事が、俺に出来る一番の弔いなんだと思っていた


101: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2012/12/20(木) 20:14:06 ID:g38IDIgMhs
「お父さん、お父さん!!」

「どうした?セネル」

「お父さん、またかりにいくのー?」

「うん。行ってくるよ」

「お母さんもー?」

「そうだねー、セネルは寂しいかい?」

「だいじょうぶだよー!!ぼく強いから!!」

「そうかそうか、セネルは立派なハンターになれるな」

「お父さん…お父さんとお母さんはどうしてはんたぁなの?」

「・・・それはね」
102: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2012/12/20(木) 20:22:23 ID:2k.durce8E
目を覚ますと自宅のベッドの上だった
うたた寝をしていたつもりが随分を深く眠っていたらしい…窓から見える外はすっかり暗くなっていた

「また…昔の夢を…はは」

体を起こして頭を覚醒させる。体にかけられていた布団がずり落ちた

ん?俺はベッドに倒れ込んだはずなのに、なんで布団かけられてんだ?

「起きたのか」

声の方向に振り向くと、ルーが座っていた

「布団、ルーがかけてくれたのか?ありがとう」

「風邪を引かれては困るからな」

そう言いながらルーが立ち上がる

「っ!?ル、ルー!?なんだよその格好!!」

「部屋着だが?」

ルーはインナーにシャツを羽織っただけの姿だった

思わず顔を逸らす
色々と目のやり場に困ったからだ
103: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2012/12/20(木) 20:25:57 ID:g38IDIgMhs
「何故顔を逸らす」

「格好見てから言え!!」

「・・・ああ、なるほど」

ルーは納得したのか、そのまま俺のベッドに入り込み…

「って、何してんだー!?」

「見ればわかるだろう。布団に入ってるんだ」

「なんで入ってくるんだよ!!自分の家で寝ろよ!!」

「君は…まだ気づかないのか?」

ルーに言われて部屋を見回す
ようやく俺は眠りにつく前の違和感に気づいた
104: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2012/12/20(木) 20:32:39 ID:2k.durce8E
「物が多い?」

「そうだ」

ルーは俺にくっつきながら話を続ける

「私の装備や私物、道具が全てここに運び込まれた。つまり君の家にご厄介になるということだ」

「せ、狭いだろ!!」

「改築は既に終わってるらしい。どうやったかは知らんがな」

ルーの体温が肌着越しに伝わってくる
正直これは色々とまずい

「君に迷惑はかけないようにするが…嫌なら言ってくれ。私は外で寝るから」

「は?」

ルーのあり得ない提案に即座に反応する

「なに言ってんだよ、ルーを、ていうか師匠を、そもそも女性を外で寝かせられるわけないだろ」

「だが家主は君だ。君に迷惑はかけられない」

「いや、ルーが使えよ!!俺は床とかで寝るし!!」
105: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2012/12/20(木) 20:37:10 ID:2k.durce8E
「それこそ駄目だ家主を床には…」

「ああもう!!じゃあどうしろって言うんだよ!?」

「・・・今の状態がベストだと思うんだが」

「へ?」

思わず固まってしまう
ルーは上目遣いのまま俺を見つめて動かない

えーと、今のままということは…所謂一緒に寝るという奴で…

「でも…君は私と寝るのは嫌そうだし…」

「嫌!?嫌じゃないけど…」

「・・・」

ルーがじっと見つめてくる
わかったよ。結論出すよ だから急かさないでくれよ

「じゃあ…一緒に寝る…で、いいんだな?」

「ああ」
106: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2012/12/20(木) 20:44:02 ID:2k.durce8E
ルーは俺に背を向ける

本当に分かってるのか? 俺も一応男なんだし、ルーは魅力的な女性で、ランスを振るってる時は格好いいって思うし、今のように意外と丸い背中とかは可愛いと思うし…って、なに考えてんだ俺!?

「セネル、明日の事だが」

ルーが背を向けたまま俺に話しかける

「明日はリオレイアに挑む」

「・・・」

リオレイア その名前を聞いた途端さっきまでの慌てようが嘘みたいに静まる
明日はいよいよ、飛竜と戦うんだ…

「私は君なら出来ると信じてる…だから、君も自分の力を信じてくれ」

ルーは振り向き俺と視線を合わす
その時だけ、酷くルーが幼く見えた
107: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2012/12/20(木) 20:48:13 ID:g38IDIgMhs
「俺さ…勝てるよな」

「・・・勝てるよ」

ルーはまた俺に背を向ける
俺は立ち上がり家を出た

「あら、ハンター様。こんばんは」

村長さんが俺に挨拶をしてくれる

「村長さん。悪いんだけど依頼受けれる?」

「こんな夜中にですか?まあ、構いませんが…ルーさんは?」

「いいんだ。あいつは休んでるから」

「そうでございましたか。こちらが依頼になります」

「これでいいよ」

俺は依頼書を受け取り村に出た
108: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2012/12/20(木) 20:52:20 ID:2k.durce8E
クエストを終えて村に戻った時にはすっかり朝になっていた
依頼内容は特産キノコの納品
途中ドスファンゴに襲われたが撃退しながらキノコを採取した
家に入るとルーはすっかり準備万端という格好だった

「準備運動は済ませたか?」

「もちろん」

「いくぞ、今日は長い戦いになる」

「・・・ああ」
109: さぎし(誤字多発) ◆CmqzxPj4w6:2012/12/20(木) 21:02:07 ID:2k.durce8E
「おはよう!!セネル君!!歯は磨いたかね?勉強したかね?」

相変わらず騒がしいコノハだが、この時ばかりは少しだけ気分が解れたような気がした

「リオレイアのクエスト、受けたいんだけど」

「・・・うん」

コノハもこの言葉の意味が分かったのだろう
やや不安気な表情で依頼書を渡す

「ここに…参加者の名前を書いてね」

コノハからペンを受け取り自分とルーの名前を記入する

「確かに受け取りました…それでは、お気をつけて…」

コノハに背を向けてギルドを出ようとする

「セネル君!!死なないで!!帰ってきて!!」

俺はコノハには向き直らずただ片手をあげて答えた
110: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2012/12/20(木) 21:07:48 ID:2k.durce8E
ネコタクに揺られて到着したのは渓流

ベースキャンプで支給品を取ってる間、ずっと無言だった

「セネル…」

ルーも、今回ばかりは不安を隠せないのだろう
声にいつもの覇気がない

「・・・」

俺だって不安だった
もしかしたら死ぬかもしれないのだ
もしも俺が死んだらルーは悲しんでくれるだろうか?

いつものらしくない考えに俺は自嘲気味にため息を漏らす
ルーと出会ってからハンターとしては成長した
でも、俺自身も変わってしまったのかもしれない

「やるだけやってみるよ」

ルーにはそれだけしか告げなかった
しかし、ルーはそれで理解してくれたのか何も言わなかった
111: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2012/12/20(木) 22:23:44 ID:5VSlvvt1jc
リオレイアが目撃された場所にルーと辿り着く
そこには既にジャギィ達がいた

「ジャギィがいるな…倒しておくか…」

俺は剣を抜き、ジャギィ達に斬りかかろうとした瞬間

巨大な気配を上空から感じとり見上げると

「グオオオオオ!!」

緑色の甲殻に大きな翼
尻尾に棘がありその体はまさに飛竜
リオレイアが姿を表したのだ

リオレイアは地面に降り立つと、尻尾を振り回し一撃でジャギィ達を蹴散らした
勇敢な一匹がリオレイアの足に噛みつくも、巨大な足で蹴られ絶命した
残された一匹は逃げようとリオレイアから背中を向けた瞬間

「ピギャアアア!!」

リオレイアの口から巨大な火球が吐かれジャギィに直撃した
ジャギィは断末魔をあげ、黒こげになって命を落とした
112: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2012/12/20(木) 22:28:34 ID:5VSlvvt1jc
「あれが、リオレイアだ」

岩場の影から見ていた俺達はリオレイアに気づかれていなかった
ルーの言葉が重くのし掛かる

「無理そうならクエストリタイアをしろ」

再度ルーが問いかける

「しないよ…クエストリタイアはしない」

「父さんと母さんの仕事だから…俺は諦めない。こんなところで諦めてたまるか!!」

岩場から飛び出してリオレイアの背後を取る
そのまま足に切りつける

「グアアア!!」

血が飛び散り、肉を切ったのに、リオレイアは全く意に介さない
それどころか俺を蹴ろうとこちらに突進してきた

「くっ!!」

なんとか回避するも、またこちらに向かって突進をしてくる
113: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2012/12/20(木) 22:35:09 ID:5VSlvvt1jc
「遠ざかったら突進で距離を詰められる…だったら接近すれば!!」

俺は駆け出しリオレイアの足元に潜り込み数回切りつけて離脱する
いつもの戦法でいこうとしたが…

「グアアッ!!」

「何!?ぐはっ!!」

リオレイアは体を勢いよく回転させ、棘のついた尻尾をぶつけてきた
遠心力が加わり凄まじい破壊力のそれを無防備な俺を襲う
大きく吹き飛ばされ地面を転がる

「はぁ…はぁ…なんて威力だ…」

急いで立ち上がるも先程の衝撃が体に残っており上手く立てない

「グアッ!?」

いきなりリオレイアが大きくよろめいた
見るとルーがリオレイアの足を貫いていたのだ

「早くしろセネル!!モンスターは待ってはくれないぞ!!」

ルーに叱咤され、ようやく体が動き始める

「分かってる!!これからだ!!」

俺は剣を抜き放ち、リオレイアに向かって駆け出した
114: 名無しさん@読者の声:2012/12/20(木) 23:03:23 ID:AJxqyGrjXk
だがリオレイアの尻尾には・・・
115: 114:2012/12/20(木) 23:04:12 ID:AJxqyGrjXk
大事なもの忘れてた

支援
116: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2012/12/21(金) 00:15:22 ID:LEiceYsiw.
>>114

ファンタグレープにはお世話になってます
支援感謝です♪

すいません!!ちょっと色々諸事情で今日は投下ここまでとなります!!
明日はかなり大量にするのでご容赦下さい!!

ここまでのご回覧
乙狩れ様でした♪
117: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2012/12/21(金) 17:16:38 ID:x.G53gS2Po
戦い始めてから数分後
俺はある異変に気づく

「体が…上手く動かせない…?」

先程の回転攻撃を食らってから妙に体が重い

「セネル!?君は解毒したか!?」

「解毒…?」

「リオレイアの尻尾には毒が含まれているんだ!!」

ルーが叫ぶと同時にリオレイアが一歩後ろに下がりまたあの回転攻撃をルーに仕掛けた

「っ!!ルー!!」

だが、ルーは寸での所で盾で受け止めていた
ルーが気を引いている間に俺はポーチから解毒薬を取りだし飲む
先程までの異変は収まり、体も動かせるようになった
118: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2012/12/21(金) 17:23:07 ID:7yUYKTB.9o
リオレイアが俺に標的を変える
リオレイアと視線が交差した瞬間、俺は言い様のない気持ちになった
リオレイアがまっすぐこちらに突っ込んでくる
俺はそれをギリギリまで引き付け右に飛び退いた

「グギャウ!!」

リオレイアは急停止を出来るわけもなく、俺の後ろにあった石柱に頭から突っ込んだ

リオレイアの突進により石柱はガラガラと崩れ落ちる
その音に紛れて俺はリオレイアに近づき足を切りつけた

「でやぁぁぁぁ!!」

己の全体重を込めた斬撃はさしものリオレイアでもひとたまりもないだろう
思った通りにリオレイアは大きくのけぞった
119: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2012/12/21(金) 17:29:33 ID:x.G53gS2Po
「いい調子だセネル!!このまま押すぞ!!」

「ああ!!」

ルーと息を合わせリオレイアに攻撃をしようとしたとき

「ガアアアアアア!!」

リオレイアは口に炎を溜めて怒りの咆哮をした

「うわっ!!」

思わず耳を押さえてしゃがみこむ
だが、それと同時にこの咆哮に少しだけ違和感を感じた

まるで、何かに必死なように…

そして俺はしゃがみこんだ時に見てしまった
リオレイアの足元にある卵を

「っ!!」

リオレイアがこちらに振り向き口に炎を溜める
だが、俺は卵を凝視したまま動けなかった

「何してる!!セネル!!避けろ!!」

ルーが何かを叫んでるが上手く聞き取れない
リオレイアの放った火球が俺に襲いかかった

「っ!?セネル!!」

120: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2012/12/21(金) 22:44:43 ID:FHkqZRTKjo
「ん…んあ?」

目が覚めた時、ベースキャンプのベッドに寝ていた
体を起こそうとして全身に激痛が走る

・・・そうだ、確かリオレイアのブレスが直撃して

体が焼かれる感覚を思い出して身震いしてると、ベッドの外に人の気配がした
顔を出して覗いて見ると、ルーが肉を焼いていた

「ルー…」

俺の呟きに反応してルーが即座に振り向く
俺を見た途端驚愕と安堵の表情をしたが、すぐに険しい顔に戻る

「ルー…俺…ごめ」

パァン!!
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