ユクモ村
自然溢れるこの村は周囲に緑が多い
俺の名前はセネル=ボルアス
一応この村のハンターだ…新米だけど
今俺はハンターの基礎を教わるべく訓練所に訪れている。もちろん村長からのいいつけもあるが、それ以前に両親との約束で、ハンターになるなら必ず訓練所にいけと言われていた
両親は二人ともハンターだった。ただ…この世にはもういない
ヤマツカミ討伐中に飛竜に襲われて死んだらしい
その場にいたハンターの証言と、遺品が送られてきたからまず間違いないだろう。ハンターは死と隣り合わせの職業だといつも父さんが言っていたし、覚悟はしていたつもりだった
それに悲しみに暮れるよりも、ハンターとなって父さんと母さんの意思を受け継ぐ事が、俺に出来る一番の弔いなんだと思っていた
596: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/1/21(月) 20:01:21 ID:vGr4fxBIqI
>>595
もったいなきお言葉
私の作品が高クオリティなら、他の方のは神クオリティですね
いや、比べるのもおこがま…
肉支援感謝です♪
597: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/1/21(月) 20:08:39 ID:vGr4fxBIqI
「・・・よろしいでしょうか?」
「あ、ごめん…」
二人の世界に入り込みそうになるのをルークが止めてくる
「ともかく、なんらかの形でお二人にもお触れが来るかもしれません。注意をしてください」
「ありがとう。ルーク」
「いえいえ、それでは私はこの辺りで…あ、そうそう」
玄関に歩いていくルークが急に振り向き、ここ一番の笑顔で親指を立てながら
「今晩は、お楽しみですね」
「なっ!?」
「では」
俺が問い詰めようとするとルークは風のように去っていってしまった
浴場でのやりとりもばっちり聞かれていたらしい
598: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/1/21(月) 20:16:08 ID:vGr4fxBIqI
残された俺達は顔を見合わせる
ルーはいっそ清々しいくらいの無表情である
くそ、俺にもあのポーカーフェイスが出来れば…
「まあ…ルークの言ったことは留めておいた方がいいかもしれないな」
それは何を指して言っているのか。もしもお楽しみだったとしたら俺は全力で遠慮させてもらう
・・・いや、お楽しみが嫌なわけじゃないよ?寧ろ俺だって男なんだからそういう欲求もあるよ?でもさ、あれだよ、うん
「セネル…聞いているか?」
「ひゃい!!」
我に返り声が裏返る
突然声をかけられびっくりした
「もしも私とルークがこの村を離れたら…ユクモ村を頼む」
「え!?」
ルーの表情は真剣だった
「・・・うん」
俺はその迫力に思わず頷いてしまう
聞きたい事は山ほどあるのに聞けない
くそ、俺のヘタレめ
599: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/1/21(月) 20:21:25 ID:vGr4fxBIqI
「さて…風呂に入ってくる」
「また!?」
ルーが立ち上がり浴室に向かう
「・・・ほんと、女の子って綺麗好きだよな」
「そうじゃない。集会浴場だと入った気にならんのだ」
ルーは腰に手を当てながら呆れたように呟く
残念ながら、俺にはよくわからん
「おい、セネル」
「なに?」
ルーに声をかけられ振り返る
「背中を流せ」
「は!?なんでよ!?」
「集会浴場で流してやっただろうが」
「あれはほぼ無理やりだろうが!!」
「知るか」
ルーに腕を掴まれ引きずられる
「ちょ!?やめ、離せぇぇ!!」
こうして俺は風呂場に無理矢理連れ込まれた
その後どうなったかは皆さんのご想像におまかせする
600: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/1/21(月) 20:28:01 ID:vGr4fxBIqI
翌日、俺はルーと砂漠に立っていた
「うぅ…ちくしょう」
「まだ言うか、いい加減腹を括れ」
「お前が言うなよ!!」
俺は両手を振り上げ怒りを露にする。あんな目に合わされて泣き言の一つも言いたくなるものだ
「くそ…なんでだよ…」
「私は楽しめたから別に構わないがな」
「ルーはだろ!?俺なんか…うぅ…」
ルーは満足そうに頷く
結婚してから妙に大胆になってる気がする
「さあ、泣き言はもう終わりだ…来るぞ」
ルーが言ったとほぼ同時に目の前が砂に包まれる
砂埃の先には黄土色の甲殻に二本の巨角
砂漠の暴君と呼ばれる角竜 ディアブロスが猛々しく現れた
601: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/1/21(月) 22:41:42 ID:HxQMLvgrOM
「よし…いくぜ!!」
ディアブロスの起こした砂塵に突入する
幸いディアブロスは俺達に気づいてないみたいだ
「うぉぉぉぉ!!」
火事場を発動して角を蹴りつける
「グガア!?」
突然の痛みに驚き仰け反ったディアブロスの背後にルーが回り込み、槍を突き立てる
「ガアッ!!」
ディアブロスが俺達を発見して臨戦体制をとる
「遅いんだよ!!」
剣を一閃し足を切りつける
「ガアウッ!!」
「うわっ!!」
「くっ!!」
ディアブロスは突然尻尾を振り回し、俺達を凪ぎ払う
「大丈夫か!?ルー!!」
「問題な…っ!!くあっ!!」
ルーが体制を立て直すと同時にディアブロスの角がルーに襲いかかる
ルーは防御できず弾き飛ばされてしまう
「ルー!?てめぇぇ!!」
剣をしまいディアブロスに飛びかかる
角を掴み力任せに手折る
「グギャアアアア!!」
角を折られ激痛に絶叫するディアブロス
「ルー!?大丈夫か!?」
「大丈夫だ…それより、前の敵に集中しろ!!」
602: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/1/21(月) 22:48:53 ID:HxQMLvgrOM
「グルルルルル…」
角を折られたディアブロスは黒煙を吹き出し怒る
「どうやら相手は相当ご立腹みたいだな…」
ルーが槍を構え直す
「関係ない。ただ狩るだけだ」
俺は剣を構えディアブロスを見据える
ほんの一瞬が永遠に感じた
「「はあああっ!!」」
「グガアアアアア!!」
俺達とディアブロスは同時に駆け出した
603: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/1/21(月) 22:54:23 ID:HxQMLvgrOM
ルーの槍がディアブロスの心の臓を貫き、俺の剣が両目を穿つ
だが、ディアブロスはそれでも止まらなかった
「なんて生命力だ!!」
ルーが忌々しげに叫ぶ
だが、俺には解っていた もう、あのディアブロスは死ぬと
俺は剣を捨てて走り出す
「セネル!?」
ルーが驚愕の声をあげる ディアブロスは俺に気づくと俺を貫かんと角をつきだした
「ふっ!!」
俺は体を捻りながら飛び上がる
「でぇぇい!!」
そのまま急降下し、ディアブロスの残った角を踏みつける
「グギャアア…アア…」
ディアブロスは断末魔をあげてその場に崩れ落ちた
604: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/1/21(月) 22:57:15 ID:HxQMLvgrOM
皆様こんばんは
さぎしです
安定と信頼のバトルシーンカットです
とにもかくにも投下を終了します
中々本編が進まないな…ちくせう
見てくださった方々ありがとうございました!!
ここまでのご回覧
乙狩れ様でした♪
605: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/1/22(火) 18:30:31 ID:b4dYJxAukI
「・・・終わったか」
ルーが槍をしまい警戒を解く
俺も警戒を解いて地面に座り込んだ
「はぁ…疲れた…」
「全く…あんな無茶をして…死ぬ気か?」
「仕方ないだろ?ルーが吹き飛ばされた時にはもうあれだったんだから」
「・・・やれやれ」
ルーは俺の言葉を聞き流しながら剥ぎ取りにかかる。俺もルーに習って剥ぎ取りを始めた
「こんなんでいいか?」
「問題ない。帰還しよう」
ルーが歩きだすのに着いていく
・・・このとき、もう少し村に帰るの遅くしていたら、あんなことにはならなかったのかもしれない
606: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/1/22(火) 18:35:41 ID:y4tJpZ5ZuI
「なんだ?騒がしいな…」
村に着くと村長さんが数人の男と話していた
村長さんは何やら語気を強めている
「ただごとじゃないらしいな…ルー、見てく…」
俺が見てくると言おうとした瞬間、既にルーは村長さんの元に歩き始めていた
「ですから!!そんなこと知りもしませんし、ルー様はそんなことなさいませんわ!!」
「しかしですね。目撃者が多数いるのですよ」
「証拠はおありなんでしょうね?」
「それは村長を勤めているあなたが一番よくお分かりでしょう。ハンターの目の良さを」
男の一人が村長さんに詰め寄り厳しい口調で問いかける
「隠してもあなたの立場が悪くなる一方ですよ。ルー・シフォンはどこですか?」
「知りません」
「狩りに出たのですか?なんの!?」
「存じません」
「村長!!あなたは…」
607: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/1/22(火) 18:41:38 ID:b4dYJxAukI
「私に何か用か?」
「!!」
その場を制するような凛とした声に男が全員こちらを振り向く
先程威圧していた男がルーに詰め寄る
「貴様がルー・シフォンか?」
「そうだが…だったらなんだ?」
「うう…」
ルーの眼光が鋭く光り男を圧倒する
「止めなよ。君が敵う相手じゃない」
「イオン殿!!しかし…」
「いいから黙って…ね?」
「・・・」
イオンと呼ばれた男が俺達の前に出てくる
中性的な顔立ちをしていて小柄な体つきである
「はじめまして。ルー・シフォン。僕はイオン。よろしく」
イオンは笑顔でルーに手を差しのべる。だがルーは
「馴れ合いに来たわけでは無いだろう?早く用件を言え」
「怖いなぁ…泣いちゃいそうだよ…」
イオンが困ったように笑う
俺には分かる。このイオンという奴。かなり強い
608: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/1/22(火) 18:48:53 ID:b4dYJxAukI
「僕達は…まあ、服を見ればわかるかな…」
イオンは服を引っ張って俺達に見せる
イオン達が来ているのはギルドバードスーツといって、ギルドナイツに所属している者だけが着れる特別な物である。さらに、イオンの胸に光るバッジは…
「私に用があるだけでわざわざ隊長殿がご足労か…」
「僕はそんな偉い地位にいないよ」
イオンが笑顔で訂正する
どうでもいいかもしれないが、笑顔というのはひとそれぞれだ
ルーみたいにあんま笑わない奴もいれば、カエデさんやルークみたいに笑顔を使い分けてる奴もいる
だが、このイオンは笑顔にさせちゃいけない気がする
「さて…用件なんだけど」
「ルー・シフォン。君に殺害の容疑がかけられている」
609: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/1/22(火) 18:54:46 ID:y4tJpZ5ZuI
「・・・」
「はぁ!?」
ルーが反応するよりも早く俺が声を出す
「今朝の事だよ。孤島でハンターの死体が出てきた。腹部を槍で貫かれ即死らしい」
「や、槍だけで疑うのかよ!?」
「孤島の近辺に住む人や、ハンターに聞き込みをした…皆、黄金の鎧に身を包んだハンターが黒槍を携えて逃げたって言うんだ…」
「た、たまたま同じ装備だった…」
「殺されたのはHR9のハンターだ。生半可なハンターじゃ返り討ちだよ」
イオンは笑顔を見せながら
「というわけで、ルー・シフォン。君をドンドルマのギルドナイツに連行する」
数名の男がルーを取り囲んだ
ルーは何もせずに黙ってイオンを睨み付ける
一人の男の手がルーの肩に手を伸ばす
「っ!!ルー!!」
610: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/1/22(火) 18:59:04 ID:b4dYJxAukI
素早くルーと男の間に割って入り手をはね除ける
「貴様!!」
他の男が俺に掴みかかろうとしたが
「遅い!!」
俺は男達の腹に拳を沈ませ気絶させる
「へぇ…凄いね君。名前は?」
イオンが拍手をしながら俺の名を聞いてくる
「セネル=ボルアス」
「…ボルアス?」
イオンの表情に変化が現れる
「正真正銘、あの双炎の覇者の息子だよ。そして私の夫でもある」
ルーのフォローでようやくイオンの表情に笑顔が戻る
「ああ、あの二人の…どうりでお強いわけだ」
611: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/1/22(火) 19:02:27 ID:y4tJpZ5ZuI
「さっきから黙って聞いてれば!!好き放題言いやがって!!」
俺はイオンに指を突きつけながら
「ルーが今朝に人を殺したとか言いやがって!!ルーは今朝は俺とクエストに行った!!俺が証人だし!!ギルドにも記録が残ってる!!」
「彼女は優秀なハンターだ。ギルドぐるみで庇う可能性も否定できない」
「さらに言うなれば身内の証言は一番あてにならないんだよ?…でもいい情報を聞けたな」
「君も連行だな。重要参考人とし…」
612: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/1/23(水) 21:53:29 ID:x3KWHfBD2A
イオンがそこまでいいかけたとき、ルーは剥ぎ取りナイフをイオンの首元に突きつけていた
「・・・」
「ル、ルー…」
あまりの速さに俺は何が起こったかを理解するのに少しかかった
だが、イオンはナイフを突きつけられているのに全く動じず
「いいの?ここで殺したら罪が出来るよ?」
「殺害容疑がかけられているんだ。今さら一人二人増えた所で構いやしない」
「ま、それもそうか」
イオンは納得したように頷く
「だ、駄目だ!!ルー!!」
このままでは本当にイオンを刺しかねないルーに制止の声を出す
「こいつの言ってる事はでたらめなんだから!!ここでこいつを殺したら思うツボだ!!」
「・・・」
ルーはゆっくりとナイフを降ろす。その様子を見ていたイオンは驚愕する
「へぇ?彼の言うことは聞くんだ?てっきり刺すかと思ったのに」
「セネルの命令を無視するわけにはいかんからな」
ルーはナイフをしまいながら言った
613: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/1/23(水) 22:00:29 ID:04i3aITIXg
「ふぅ〜ん…なるほど」
イオンは俺達二人を面白そうに見比べながら
「セネル君だよね?…ゲームをしないかい?僕と」
「は?」
イオンは疲れたようにため息をつきながら
「というより、僕は別にルーが人を殺してるか殺してないかなんてどうでもいいんだよ。ただ連れてこいとしか言われてないから」
「それが…なんだよ」
「まだわからないかなぁ…」
イオンはやれやれといった感じで首を振る
「今からやるゲームに君が勝てば、君たち二人を見逃すって事」
「・・・ギルドナイツが許すのか?」
ルーが信じられないという風に聞いてくる
「そのときは僕が出る事になるかな…ま、構わないけど」
「ゲームって…どんなの?」
「お、やる気になった?」
イオンはにこやかに笑いながら
「ルールは簡単。君は30分間何をしてもいいから僕に触れる事。もちろん僕は反撃はしない。ね?簡単でしょ?」
614: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/1/23(水) 22:05:02 ID:x3KWHfBD2A
「それだけか?」
「うん」
イオンは素直に頷く
見たところ嘘はついてないみたいだが…
どうしようか迷いルーを見る
「受けてみたらどうだ?ギルドナイツ所属のハンターと一戦交えるなんて滅多にない機会だぞ」
「一戦って…」
「僕のことなら気にしなくていいよ。日常訓練でいつもやってるし」
イオンはニコニコとしながら
「さあ、やろう」
「・・・」
俺はイオンにゆっくりと近づいていく。まずはどんな動きをするのかな
「おや、意外に慎重だね」
イオンはまだ笑顔である そうこうしてる内に手を伸ばせば触れる距離まで近づいていた
「あはは、こんなに近づかれちゃったなぁ」
イオンはまだ余裕だ
615: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/1/23(水) 22:12:24 ID:x3KWHfBD2A
俺は手を伸ばしてイオンに触れようとする
「おっと」
イオンは肩を軽く動かしてかわす
「いいの?そんな悠長にしてて…時間ないんじゃない?」
俺はイオンの言葉に焦りを感じ…はしなかった
これも俺を焦らすための話術だ
「何をしてもいいんだよな?」
「いいよ。殴っても蹴っても斬っても」
「そうか」
俺はイオンから少し離れて地面を見つめる
「はっ!!」
地面を踵落としをして大地を割る
「凄いね。それで蹴られたら死んじゃうかも」
イオンは素直に感嘆の声を出す。だが、まだどこか余裕そうだった
俺は浮き出た土塊を手に持つ
「・・・」
イオンはそれを注意深く見ていた
俺は手にした土塊を真上に放り投げる
イオンは一瞬目で土塊を追ったがすぐに俺に視線を戻す
「・・・はあっ!!」
降ってきた土塊に拳を当てる
土塊は細かく砕け散ってイオンに飛散した
「・・・」
イオンは素早く横に避けたが、俺はそれを捉えていた
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