ユクモ村
自然溢れるこの村は周囲に緑が多い
俺の名前はセネル=ボルアス
一応この村のハンターだ…新米だけど
今俺はハンターの基礎を教わるべく訓練所に訪れている。もちろん村長からのいいつけもあるが、それ以前に両親との約束で、ハンターになるなら必ず訓練所にいけと言われていた
両親は二人ともハンターだった。ただ…この世にはもういない
ヤマツカミ討伐中に飛竜に襲われて死んだらしい
その場にいたハンターの証言と、遺品が送られてきたからまず間違いないだろう。ハンターは死と隣り合わせの職業だといつも父さんが言っていたし、覚悟はしていたつもりだった
それに悲しみに暮れるよりも、ハンターとなって父さんと母さんの意思を受け継ぐ事が、俺に出来る一番の弔いなんだと思っていた
933: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/2/21(木) 20:13:17 ID:3MiYLEePlw
【守護神 セネル=ボルアス】
「んーっ、いい天気だなぁ…」
ユクモ農場のシーソーに寝そべり空を見上げながら俺は呟く
雲一つない青空だった
「旦那さん…シーソー使えないニャ」
「別にいいよ、虫は今は必要ないし…」
「そんなことないニャ!!ロワーガやファルメルを侮辱する気かニャ!?」
「別に侮辱してはないけど…」
「そもそも旦那さんはレウスSを使いすぎニャ!!たまには他の装備を使うニャ!!アシラSもすっかり誇りを被ってるニャ!!シルソルくらい装備するニャ!!」
「悪いけど、俺はシルソルを装備する気はないよ」
「ニャ!?」
「俺は父さんを尊敬してはいるけど、父さんと同じようにはなりたくない」
「ニャ…でも、ルーさんはゴルナニャよ?その方がお揃いなんニャ…」
「いいんだよ。レウスで」
俺はシーソーから飛び降りてユクモ農場を後にする
「あ、今日の特訓は全員休憩で」
「了解ニャ!!」
934: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/2/21(木) 20:21:21 ID:X69mGgi7ZY
「お帰り、どこに行ってたんだ?」
「ユクモ農場」
自宅に帰りベッドに寝転がる。今日は狩りの予定はなく、ルーも俺もラフな格好をしていた
「確かに、今日は日差しが柔らかいからな…出かけるには最適だな」
「渓流にでもいくか?」
「アシラに邪魔されるぞ」
それもそうかと思い俺は肩をすくめてまた体を横にする
「・・・」
「ん?」
ふと、後ろに気配を感じて振り返ると、ルーがすぐそばに立っていた
「ルー?どうし…」
どうしたと言おうとした瞬間、ルーが覆い被さり口を塞いでくる
舌を絡ませながら数分くらいねっとりと交わしあい口を離す
「なんか、積極的だな」
「火竜の番は、雌が雄を打ち負かし無理矢理性交に至るらしい」
「・・・マジで?」
「冗談だ。だが私は責めるのは嫌いではない」
935: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/2/21(木) 20:30:14 ID:zZ0LLNhnzs
ルーが妖艶に微笑みまた顔を近づけてくる
「まあ…確かにルーにはあわないけどさ…」
俺は呆れたように溜め息をつきながら
「三日前にしたばっかだろ?もう我慢出来ないのか?」
「・・・仕方ないだろ。君が欲しくてたまらないんだから」
ルーは顔を赤くしてそっぽを向いてしまう
それが可愛くて、どつぼにハマってると自覚しつつも俺はそっとルーを抱き寄せる
「わかった…俺も、ルーを感じたい」
「セネル…」
ルーが嬉しそうに俺を抱き寄せた
「羨ましいですねぇ、私もそんな風に愛されたかったですよ…」
「・・・いいところで邪魔するな、ルーク」
「申し訳ありません。いつもなら温かく見守るのですが…」
ルークが肩をすくめて溜め息をつく
・・・ん?いつもなら?
936: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/2/21(木) 20:49:23 ID:0fd8NEJ9sQ
ルークの気になる発言に突っ込みたかったが、それ以上に気になる事があった
「ルーク。それは?」
ルークが左手に指で挟むように持っている封筒
俺の勘が正しければ…
「ご察しの通り、依頼です。それも私達全員にね」
ルークは険しい顔をして封筒を開け中身を取り出す
中からはギルドの判子が押された書類が現れた
ルークはそれを広げ読み上げる
「ギルドからの正式依頼です。場所は煉獄場、討伐対象は…」
「アルバトリオンです」
「アルバ…トリオン」
初めて聞く名前だった
父さん達のモンスターリストにもそんな名前は無かった
「聞き慣れてないのも無理はありません。アルバトリオンとは、つい最近発見された新種の古龍なのですから」
ルークはてにしていた封筒を俺に渡す
そこにはアルバトリオンの資料があったが、それは資料とは呼べないものだった
生息地は不明。生態も不明。能力、姿形、何もかもが不明と記載されていたのだ
937: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/2/21(木) 21:05:41 ID:0fd8NEJ9sQ
「もちろん、ギルドもふざけているわけではありません。本当に分からないのです」
ルークも流石に冷静ではないのか、やや険しい表情をしている
「知り合いの古龍観測隊から聞いた噂ですが…その強大な力は町一個を滅ぼすのも容易いだそうです」
「・・・」
言葉を失った。以前戦ったアマツマガツチと同じような敵…しかも、何も分からない、情報がない敵と戦うなんて…
「敵の情報が分からないだけなのだろう?取り越し苦労にもならん」
しかし、ルーだけはきっぱりと強気な発言をする
「敵の能力が未知数なら、我々も全力を出し切ればいいだけだ」
「ルー…男前過ぎる」
「分からないからと恐れていては何も始まらんからな」
938: さぎし(投下終了) ◆CmqzxPj4w6:2013/2/22(金) 00:11:11 ID:oaV8sFVAmA
「確かに、ルーさんの言う通りかもしれませんね」
ルークも頷きながら
「戦う前から気持ちが負けていては勝てる戦いも勝てませんからね。要は気の持ちようです」
「そっか…うん、そうだな」
ルークの言葉にも一理ある
「それでは、三日後にギルドで会いましょう。それではまた」
ルークが去っていくと、部屋に静寂が溢れる
「ルー…アルバトリオンの情報を集めないか?」
「私もそう思っていた所だ。手分けして探そう」
「俺はギルドナイツとかの王立図書館を探して見るよ」
「私は狩り仲間から情報を聞いてくる」
ルーが荷物をまとめ速やかに出発する。相変わらず早いな
「あ、そうだ」
ルーが出ていく直前に俺に向き直り
「先程の続きは、落ち着いたら必ずやるからな」
ニヤリと笑いながら足早に去っていく
ルーにはいつまで経っても勝てそうにない
939: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/2/22(金) 16:05:31 ID:qf2Xyjydl2
「ふーん…アルバトリオンねぇ…」
イオンは図鑑をめくりながら呟く
今俺たちがいる場所は機密案件しか収納されていない王立図書館の最深部である
「駄目だね…全く記録にないよ」
「そうか…」
俺は肩を落として溜め息をつく。ここなら何かあると思ったんだが…
「しかし…妙だな…」
「妙って?」
「ここは王立図書館だよ?ギルドナイツの人間でも滅多に立ち入らない場所だし…何より」
「何より?」
「ここから本を持ち出す事はおろか、処分することさえ不可能なんだ…ギルドナイツのマスターなら可能だけど」
「つまり…前にアルバトリオンの記録はあったんだけど…前のギルドナイツが隠蔽した?」
「その可能性は高いと思う。とにかく僕は三日間の内にできるだけ情報を集めておくから、君はしっかりと体を休めておいて」
「ありがとう。イオン」
「礼なんていらないよ」
940: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/2/22(金) 16:10:23 ID:qf2Xyjydl2
「アルバトリオン?いや、知らないな…」
「そうか…」
これで30人目、皆名の通ったハンターなのだが…ここまで知らないとは…
「ルー。お前さんの挑む相手がそのアルバトリオンかい?」
「ああ、ギルドでさえ情報が足りないらしいからな」
「ギルドでさえわかんないのに、俺達がわかるわけないだろ」
豪快に笑い飛ばす大剣使い
そのあと、目付きを厳しくして
「ギルドナイツが情報操作をしてない限り…な」
「・・・」
それに関しては私も薄々感づいていた。だから、セネルにギルドナイツに行くことを許可したのだ
「とりあえず、俺の方でもそのアルバトリオンについて調べてみるわ」
「ありがとう」
「礼をするくらいなら、また狩りに付き合ってくれよ」
「時間があったらな」
「ちぇ、フラれちまった」
941: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/2/22(金) 16:15:13 ID:MD.Og/oBiw
「あ、お帰りルー」
家に帰ると、既にセネルは帰宅していた
「ただいま。そっちはどうだった?」
「図書館やイオンに話を聞いてみたけど、全く手がかりなし」
「そうか…」
「ただ、イオンが言うには先代のギルドナイツが情報を隠した可能性があるかもしれないんだって」
「・・・」
セネルが調べてきた事
私の知り合いハンターの誰一つ知らなかった事
ギルドでさえ把握していないモンスター…
私の中である仮説が生まれた
「セネル。恐らくアルバトリオンは…」
「うん。多分新種じゃないと思う…でも、なんでギルドはそれを隠すんだ?」
「知られたくないから…だろうな」
942: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/2/22(金) 16:20:30 ID:MD.Og/oBiw
「そうだ、これ」
「ん?」
ルー宛に届いていた手紙を差し出す。知らない名前だったからかつての狩り仲間だったのだろう…
・・・別に嫉妬なんかしてないからな?
「・・・」
ルーが手紙を読み終えて複雑そうな顔をする
「どうしたんだ?ルー?」
「いや…」
ルーにしては珍しく歯切れが悪く、言おうかどうか迷っているらしかったが
「セネル、ルークとムゥを呼んできてくれ」
943: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/2/22(金) 16:27:34 ID:MD.Og/oBiw
「どうされました?ルーさん。何やら話があるとか」
数分後、アルバトリオンに挑むメンバーが俺の家に集結していた
「ルーク。アルバトリオンの依頼は私達全員なのか?」
「はぁ…そう書かれてますが…」
「アルバトリオンは…過去に何度か討伐されている」
「最後の討伐記録は、受注者はアレンという名前のハンターらしい」
「・・・記録を見る限り、あまり遠くないですね」
「ああ、問題はなぜこの記録が公表されなかったかだ」
「可能性としては…ギルドに問題があった…かな?」
「もしくは受注したハンターに何か事情があったか…」
「事情?」
「ええ、多額の金額を出せば、狩りの記録を無くせる事が出来るんです。もっとも、払えるのはごくわずかですが…」
944: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/2/22(金) 16:32:42 ID:MD.Og/oBiw
「ただ…これを見る限り私にある仮説が生まれた」
「仮説?」
ルーの真剣な表情にただごとではないと感じとったのか、ルークも真剣になる
「私達に送られたこのアルバトリオンの討伐依頼な…罠かもしれない」
「罠!?」
ムゥがすっとんきょうな声を出すが、俺も同じ気持ちだった
誰が?何のために?
「証拠もありませんから、完全にそうだとは言い切れませんが…」
しかし、ルークとルーはなんらかの確証があるのか考え込んでいる
俺とムゥはすっかり置いてきぼりにされていた
「もーっ!!罠だとして!!いくの!?いかないの!?」
空気に耐えきれずムゥが喚く
「ムゥ、貴女はここに残りなさい」
「セネル。君もだ」
945: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/2/22(金) 16:37:27 ID:qf2Xyjydl2
「は!?」
「どういうことだよ!?」
俺とムゥは立ち上がって二人に詰め寄る
「危険だから…です」
「お前達を失いたくはない」
二人は多くは語らなかった
「なんでよ…お兄ちゃん!!どうして!?」
ムゥが泣きながらしゃがみこんでしまった
「また…一緒にいれるって…思ったのに…ひぐ、ぐす」
「・・・すいません」
「ルー、せめて理由を教えてくれよ」
「・・・恐らくだが、アルバトリオン討伐で疲弊しきった私達を何者かが止めを刺す…そういう算段だろうな」
「それじゃあ…俺が」
「疲弊しているとはいえ、私達二人を殺す腕前だ。間違いなく巻き込まれるぞ」
946: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/2/22(金) 16:43:35 ID:qf2Xyjydl2
「じゃあ俺がアルバトリオンを倒す!!二人が元気なら返り討ちに出来るだろ?」
「確かに…それは可能です」
ルークは頷くが、それと同時に
「ですが…君にできますか?たった一人で古龍と戦い私達を疲弊させる事なく倒すことが…」
「・・・」
言葉を詰まらせた
アマツマガツチや、前に戦ったテオテスカトルのような奴とたった一人で…しかもルーとルークを守りながら…
「可能性は絶望的です」
「嫌だ…俺は諦めない。諦めたくない!!」
「ムゥ。俺と一緒に戦ってくれるか?一人じゃ厳しいけど…二人なら」
「うん…私、頑張る」
ムゥは涙を堪えながらも呟く
「お前達…」
ルーが呆れたように呟いたが
「こうなったら意地でもいくからな?なあ、ムゥ?」
「うん!!お兄ちゃんの弓にしがみついてでもいくからね!!」
947: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/2/22(金) 19:30:31 ID:tII4jXRnG2
「・・・こうなったら、言うことを聞かないのが妹の悪い癖ですよ」
ルークが呆れながら、しかし嬉しそうに呟く
「こちらもだ。自分の身さえ危ういというのに…何も省みずに守る為に戦うのが私の夫の悪い癖だ」
「じゃあ…いいんだな?」
「負けましたよ。ただし、絶対に死なないで下さい」
ルークが真剣な表情で俺達に釘を刺す
「分かってるよ。俺達は死なない。ルー達も死なせない」
「・・・ありがとう」
ルーが安心したように呟いて俺も安心する
決めたんだ。ルーを守るって
948: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/2/22(金) 19:33:01 ID:tII4jXRnG2
「さて、大体の事は決まりましたし…当日に備えるとしましょうか」
「うん!!」
「ムゥ。しっかり調整しとくように。当日になって撃てないなんて事態は勘弁ですからね?」
「ひっどーい!!大丈夫だもん!!」
「ははは、それではまた後程」
ルークとムゥが家から出ていくのを見送ってから俺達も体を休めた
949: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/2/23(土) 11:08:33 ID:KdRzS59wow
三日後、俺達は装備を整えてギルドに集まっていた
「ルー。準備出来たか?」
「問題ない」
「いよいよですね」
「大丈夫!全力を出すから!!」
それぞれが違う表情で己を叱咤する
「本当に行くの?」
見送りに来ていたイオンが再度確認といった風に聞いてくる
「当たり前だろ?俺がいかなきゃ誰がいくんだよ」
「僕とか?」
「なんでだよ」
「それは冗談だけど…ルー、ルーク。ちょっといい?」
イオンが二人を呼び少し離れた所で話始める
「ムゥ。俺達も」
「うん」
三人は何やら話があるらしいので、俺達も作戦会議みたいなのをすることにした
「あー、わかってるとは思うが…」
「全力で殺る!!」
「うん。字がな、怖いんだな」
950: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/2/23(土) 11:14:26 ID:KdRzS59wow
「お待たせ」
「もう終わったのか」
「伝えたい事があっただけだからね」
「・・・」
ルークとルーは凄く複雑そうな顔をしていた
一体何を話されたのだろうか…
「さて、そろそろ僕もギルドナイツに戻らなきゃね」
「ありがとう。イオン」
「そんなことないよ。しっかり守るんだよ?」
「おう!!」
イオンに見送られながら俺達はギルドを出発した
951: 名無しさん@読者の声:2013/2/23(土) 11:35:05 ID:OSGANJ/Nfc
あぁー続きが気になる木ーwktk
つCCCC
952: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/2/23(土) 14:31:37 ID:gP4JtfV4Ig
煉獄場
その名の通り火山の奥地に位置する場所で、周りを溶岩が囲み、マグマが吹き出すまさに地獄のような場所
「こんな所にいるのか…」
「これだけ厳しい環境に耐え抜いているのだ…相当に強いぞ」
「分かってる」
「・・・」
ふと、ルークが一点を見つめ注意をそこに向ける
皆がそこを見ると
「・・・来ます」
ルークが呟くと同時に空から巨大な龍がゆっくりと降り立つ
黒の体に紫色に煌めく鱗 特徴的な角を振りかざすと近くのマグマが吹き出す
「あれが…アルバトリオン?」
アルバは俺達を見つけると、天高く仰ぎ巨大な咆哮を放った
「グオオオオオ!!」
「うわっ!!」
「きゃっ!!」
「くっ!!」
咆哮と同時に全員が耳を抑えすくんでしまう
こんなに離れているのに聞こえるなんて…
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