ユクモ村
自然溢れるこの村は周囲に緑が多い
俺の名前はセネル=ボルアス
一応この村のハンターだ…新米だけど
今俺はハンターの基礎を教わるべく訓練所に訪れている。もちろん村長からのいいつけもあるが、それ以前に両親との約束で、ハンターになるなら必ず訓練所にいけと言われていた
両親は二人ともハンターだった。ただ…この世にはもういない
ヤマツカミ討伐中に飛竜に襲われて死んだらしい
その場にいたハンターの証言と、遺品が送られてきたからまず間違いないだろう。ハンターは死と隣り合わせの職業だといつも父さんが言っていたし、覚悟はしていたつもりだった
それに悲しみに暮れるよりも、ハンターとなって父さんと母さんの意思を受け継ぐ事が、俺に出来る一番の弔いなんだと思っていた
958: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/2/24(日) 17:43:53 ID:Jf7QBBD9R6
「はああああああ!!」
ルーが気合いと共に槍を繰り出すと、アルバの角が音を立てて砕ける
「よっし!!」
「安心するな!!まだ奴は生きている!!」
アルバが起き上がり軽く頭を振って覚醒する
「セネル君!!作戦なんてもういいから!!いつもみたいに戦おう!!」
「いつも…みたいに」
アルバの爪が俺に向かって振り降ろされる
「セネル!!」
ルーが悲鳴に近い声を出したが
「大丈夫だよ。ルー」
俺はアルバの爪に深々と剣を突き刺して答える
「ありがとうムゥ!!ようやく戦えるよ!!」
そうだ…ルーやルークを守る必要なんて無かったんだ
二人は十分強い。それに…
「俺の戦いは、守る事だ!!」
959: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/2/24(日) 17:47:03 ID:Jf7QBBD9R6
全力で腕を振り上げ前足から第一関節辺りを切り裂く
「グギャアアアア!!」
アルバは痛みにもんどり打って転がる
「ルー!!頼む!!」
俺の合図に合わせてルーが盾を上に構える
俺はその盾を足場にして高く飛び上がった
「「はああああ!!」」
タイミングを合わせ、ルーが地上から、俺が上から武器を突き刺した
「グガアア…アアア…」
アルバは弱々しい声を出して動かなくなった
960: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/2/24(日) 17:51:12 ID:Jf7QBBD9R6
「やったか…?」
ルーの問いかけにルークが頷く
「ほぼ間違いなく。見事な連携でした。お二人共」
「すごかったよ!!息ぴったりだった!!」
「やったな…セネル…セネル?」
ルーが俺の肩を叩く
まだ…終わってない…
「グガアア…アアアア!!」
「!?」
息をしていないはずのアルバが再び立ち上がり咆哮をあげる
「ぐっ!!」
その場にいる全員が耳を抑えしゃがみこむ。アルバは口に火球を溜めて俺達に向かって放った
「しまっ!!」
「くっ!!間に合いませんよ!!」
「きゃあああああ!!」
961: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/2/24(日) 17:55:45 ID:S5h0xcTTFg
『大切な人を守りたい?』
『ははーん。セネルも言うようになったなぁ…さては好きな人でも出来たか?』
『あ、ミラは渡さないからね!?ミラは僕の物だから!!』
『物じゃない?分かってるよ!!』
『守る方法?そんなの簡単。守ればいいんだよ』
『死に物狂いで、大事な人を守ればいいんだよ』
『理屈じゃないんだ。きっと、凄く強くて…暖かい…』
『セネル。僕と約束してくれるかい?』
『セネルにとって、大事な人が出来たら…必ずその人を守り抜いて、側にいてあげること』
分かったよ。父さん
962: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/2/24(日) 18:01:47 ID:Jf7QBBD9R6
全員が目を瞑りしゃがみこむ。しかし、いつまで経っても灼熱が私達を焼き焦がす感覚は訪れなかった
私はゆっくりと目を開ける
「っ!!セネ…ル」
「ルー、皆大丈夫?」
そこには火球を片手で抑えながらこちらを微笑むセネルがいた
「セネル君…君は…」
「前に言ってくれたよね?守る物がある人は強いって…父さんも」
セネルが力を込めて振り払うと、火球は消散した
「俺は皆を守るから…だから、負けないよ」
「ガアアアア!!」
確実に仕留めた攻撃
それをこんなちっぽけな存在に消されてアルバは怒りに震える
「遠慮はしない。お前を弱く見てるわけじゃない。お前は強かった。だから、手加減したら失礼だから…全力で倒す!!」
963: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/2/24(日) 18:07:22 ID:Jf7QBBD9R6
「ガアアアア!!」
「はああああ!!」
アルバの角が俺の右腕目掛けて繰り出される
俺はそれを紙一重で避けて顔を切りつけた
「うおおおお!!」
背に乗って、翼を滅多刺しにする。アルバは苦痛に呻くが俺は止めない
角を叩き折り、尻尾を切り落とし、翼に穴を開ける
前足を全力で蹴って、倒れたところに踵を落とす
アルバはフラフラとしながらも立ち上がり俺を睨み付ける
しかし、限界なのは一目瞭然だった
「止めだ!!」
俺はアルバの爪を避けてから首を切りつけ最後に顔に深々と突き刺す
アルバは痛みに絶叫をして地面に倒れ込み息絶えた
964: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/2/25(月) 22:46:49 ID:VtaVdMdf4E
「やったんだな…」
「ああ」
ルーが俺の肩に手を置いて微笑む
「やれやれ…いいとこ全部取られちゃいましたね」
ルークがやや残念そうに肩をすくめた
「お兄ちゃん倒す気だったの!?」
「G級ハンターをなめないでください。時間さえ貰えれば倒せますよ。時間があれば…の話ですが」
「まあ、戦い慣れない相手だったからな…」
お互いの健闘を称えあうように雑談に花を咲かせた三人だが、俺はまだ周囲の警戒を解いてはいなかった
「どしたのセネル君。そんなにピリピリして」
「いや…いつ仕掛けてくるのかなって…」
俺の言葉に思い出したようにムゥも辺りを警戒する
「あー、二人とも…その事なんですが…」
ルークが何やら言いにくそうに俺達に話しかける
「いつまでもこんなところにはいられないだろう。ギルドに戻ろう」
ルーの提案によりギルドに戻ることになった
ルークの話もその時聞けばいいだろう
965: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/2/25(月) 22:52:43 ID:vmIGY5yfM.
「はああああああ!?」
「勘違い!?」
「いや…まあ、勘違いというか…まあ、勘違いなんですが…」
ギルドに戻った俺達に向かって真っ先にルークが放ったのは、自分達の命を狙う者などいなく、自分達の思い込みだったということだった
「なんだ…いつもより周りに気を配ってたのにぃ…」
ムゥがヘナヘナと座り込む
俺も安堵からか、体制を楽にした
「申し訳ありません。過去に一度命を狙われてますから…疑心暗鬼になってしまうのですよ…」
「とはいえ、お前たちに余計な心配をかけてしまったな。すまない」
「余計なんかじゃないよ!!お兄ちゃんもルーも狙われてなくて良かったよ!!」
966: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/2/25(月) 22:57:29 ID:VtaVdMdf4E
「出発の時、イオンと話してたのはそれだったのか?」
「ああ…安心して戦えと…だが、その必要も無かったな」
「ええ、我らが守護神が頑張りましたからね」
「守護神?」
「そうだよ。セネル=ボルアス」
「イオン!!」
ギルドの入り口にイオンが立っていてにこやかに手を振っていた
「なんでここに!?というより、守護神ってどういう事だよ!?」
「ごめんね?騙すつもりは…あったけど」
「あったのかよ!!」
「簡単に言うと、今回の依頼は出来レースだったんだよ」
967: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/2/25(月) 23:03:18 ID:vmIGY5yfM.
イオンは俺に今回の顛末を話始めた
アルバトリオンのクエストから今まで全てギルドが、イオンが仕組んだ事らしい
アルバトリオンの情報が無かったのも、記録が消されていたのも全部イオンの仕業で、クエストはギルドが監視していたらしい
「なんで、そんなことする必要があるんだよ」
「君の為だよ?」
「俺の?」
イオンはそうと前置きをしてから話始める
ここ最近、ギルドでは度々俺の名前が上がっているらしいが、特に何の通り名も無く、双炎の覇者の息子だからって過大評価し過ぎなのでは?というのが頻繁に起こっていたらしい
それならばと、イオンが俺に通り名を付ける事を提案
そしてそれが認められて肝心の通り名が守護神になったわけだ
イオン曰く、アマツマガツチの時から決めていたらしい
968: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/2/25(月) 23:08:32 ID:vmIGY5yfM.
「それで、今回のクエストの内容次第で君に守護神が相応しいかだったんだけど…結果は予想以上だったよ」
「セネル=ボルアス。君は今から守護神 セネル=ボルアスと名乗る事を許します」
「守護神…」
イオンはにっこりと笑いかけながら
「君にぴったりだと思うよ」
「でも…俺…」
「セネル。君は私達を一度ならず何度も、そしてこの村を救ってくれた。守護神と名乗るには相応だと思うぞ?」
「ルー…」
「それに、私も誇らしいからな。私の自慢の夫は守護神だと」
ルーは誇らしげに俺を見る
「まあ、通り名は辞退することも可能だからね、無理には薦めないけど…どうする?」
969: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/2/25(月) 23:15:53 ID:vmIGY5yfM.
「・・・俺、貰うよ。通り名」
「うん」
イオンは納得したような顔をしてから
「なら、今日からよろしく。守護神 セネル=ボルアス」
「ああ」
「さーて、今度からドンドン難しい依頼回そうかな〜」
「なっ!?」
「冗談だよ。僕にそんな権限ないからね〜」
イオンは笑いながらギルドを後にする。去る間際に一度だけ振り返り
「期待してるよ。セネル」
それだけ言ってギルドを後にした
「セネル。通り名というのは非常に重いものだ」
ルーが俺を抱き締めながら囁く
「何を言っても後の祭りだが…君には重い選択をさせてしまったかもしれない。だが、君なら必ずこの重圧に勝てると信じてる」
「・・・大丈夫。俺は頑張るよ」
「この通り名に…恥じないように…守って見せる。この手で守れるもの…全て」
【守護神 セネル=ボルアス】
fin
970: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/2/25(月) 23:18:48 ID:vmIGY5yfM.
皆様こんばんは
さぎしです
・・・やべぇ!!30近く余っちゃった!!
こんなことならもっと話を盛れば良かったと後悔しております…
はい、というわけで、後もう少しだけ続きます
くそ…最終回チックに仕上げたのに…
本日の投下は終了しますが、次回の投下は未定です
気長に舞ってて下さい
見てくださった方々ありがとうございました!!
ここまでのご回覧
乙狩れ様でした♪
971: 名無しさん@読者の声:2013/2/25(月) 23:52:46 ID:OXmxEE5H02
ゞ(^o^ゝ)≡(/^_^)/"o(^-^o)(o^-^)o
支援の舞を踊っときます
972: 名無しさん@読者の声:2013/2/26(火) 03:21:33 ID:7ZmvR.FKR.
余しちゃうさぎしたんも可愛い//
乙狩れ様♪
つCCCCCCCCCCCCCC
973: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/2/28(木) 17:38:39 ID:TjuDwVsXHM
>>971
舞わないでくだ…いや、やっぱり舞っててください
>>972
か、可愛くねーし!!///
えー、はい。ようやく話が半分くらいまとまったので投下します
974: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/2/28(木) 17:46:30 ID:ITpyHk7dP2
【金銀夫妻の試練】
「火竜の紅玉が欲しい?」
「はい」
ルーと簡単なクエストを終わらせ、装備を着たままで寛いでいると、ルークが訪ねてきて話を切り出してきた
「私もそろそろ武具防具を見直そうかと思いまして…」
「ふーん。でも、リオレウスだろ?ルークなら俺達に頼まなくても余裕なんじゃないのか?」
「それはもちろんなんですが…理由がありましてね」
「理由?」
ルークは深刻そうな顔をしながら、取り出した神にペンを走らせる
「通常のリオレウスからの紅玉は報酬で2%、尻尾からでも同じくらいの確率なのですよ」
「つまり…100匹狩って二個しか出ないってことか?」
「50匹狩って一個のほうでいいだろ」
「しかし…報酬で紅玉確率が15%のクエストがあるんですよ」
「15%!?」
大きな数字に俺は思わず身を乗り出す
「ええ…ですが、やはり難しいクエストでして…」
一転してルークの顔が曇る
そんなに難しいクエストなのだろうか
975: さぎし(神×紙○) ◆CmqzxPj4w6:2013/2/28(木) 17:57:44 ID:ITpyHk7dP2
「つまり、私達に協力を求めると?」
ルーがルークに本題を切り出すと、ルークは素直に頷いた
「このクエストにはお二人の力が必要なのです」
「わかったよ。ルーク。俺、頑張るからさ」
「セネルがいくなら行くしかないが…いったいなんのクエストなんだ」
「はい。王族の招宴というクエストです」
ルークが笑顔で答えた瞬間、ルーが飲んでいたお茶を盛大に吹き出した
「ごほっ!!ごほっ!!ルーク!!貴様…竜王の悲劇を生み出すつもりか!?」
「私も考えはしました…ですが、後はもうこれしかないんですよ」
ルークは神妙な顔でルーを見つめる。ルーは何やら納得しきってないらしく、でもや、しかし…などを繰り返している
「お願いします!!ついてきてください!!」
遂にルークは頭を床に擦り付け土下座する
俺は慌ててルークを起こしながら
「ルー!!頼むよ!!クエストに行こうよ!!」
「・・・いくらお前でも、これは本当に死ぬぞ?」
「今まで誰だって命の保証なんかしてくれなかったよ」
「・・・」
ルーは考え込むように腕を組む
「わかった…ルーク。一緒にいこう。ただし条件がある」
「なんでしょうか?」
「セネルの安全が絶対条件だ。手段は選ばん」
「煙閃光はアリって事ですね」
「ああ、確実に一体一体潰していくぞ」
976: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/2/28(木) 20:43:03 ID:gWo5pRD/ec
「一体一体って…複数なのか?」
「会えば分かる。君も絶対に突撃だけはするな。引き気味でいけ」
「わ、わかった…」
ルーの気迫に気圧され思わず頷いてしまう
これじゃ守れないのにな…
「最近。やけに過保護ですが…心境の変化ですか?」
「・・・」
ルーはなにも答えずに家を出ていってしまった
「なんなんだ…ルー」
「ああ…なるほど」
ルークはニヤニヤしながら俺を見る
「な、なんだよ…」
「いやいや…想われてますねぇ…」
「は?」
「乙女心って奴ですよ。さ、我々も行きましょう」
977: さぎし ◆CmqzxPj4w6:2013/2/28(木) 20:50:30 ID:gWo5pRD/ec
「闘技場か…」
ギルドから出発した俺達は闘技場に来ていた
「おや?初めてですか?」
「ん…まあな」
基本的に大連続狩猟をやらない俺としては闘技場にいくというのは初めてだった
「地図を見る限りじゃ、あんまし広くはないんだな」
「そうか…いっそのことセネルはベースキャンプ待機で…」
「ルー。流石にそれは…」
「わかっている…」
「まあ、ご安心下さい。私がいる限りそのような事態にはなりませんよ。あっはははは…」
「へぶしっ!!」
ルークは力尽きた
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