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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】
[8] -25 -50 

1: ゆったりペースになりますが! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:09:52 ID:N4jwCkModw
1スレ

少年「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10

2スレ

カロル「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10

―――あらすじ―――

それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました

しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました

そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです

戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました

布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました

それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします


772: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/10(水) 22:58:19 ID:kh6s4Xhrmc
ラキア「…できません!」プイッ

副官「なんだ、なんだ。君は期待を大いに裏切ってくれるなぁ〜?」

ラキア「訓練なのに命を奪えなんてめちゃくちゃだ…!」

副官「めちゃくちゃ?」

ラキア「無抵抗の相手を一方的に刺し殺せと言われて、はいそうですかと出来ますか…!?」

副官「そういうお仕事ですよ?」キョトン

ラキア「……!そ、それではただの人殺しだ!?」

副官「はい、そうです。人殺しです。大正解!」ウンウン

ラキア「違う!!我々は国を守り、民を!土地を!文化を保護する誇り高き守護者だ!?」

副官「違わない、違わない。個人か集団か、はたまた国かの違いだけで大まかに言えば我々は大量殺人の実行者でしかございません」

ラキア「ふざけるな!!そんな…そんなものじゃない!俺達は正義の為に…!」

副官「いや、君の言う事も最もだよ?本当はそう教えなきゃいけない?」

ラキア「本当はだと…!?」
773: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/10(水) 22:59:24 ID:kh6s4Xhrmc
副官「しかしだね?いざという時に初めての戦場で相手をそう易々と殺せるか?」

ラキア「そ、それは…正義の為ですから!」

副官「正義か?立派な志だねぇ?じゃあその鞘に納めたままの剣を抜いてごらんよ?」

ラキア「で、ですから…!?」

副官「じゃあ柄を握るだけで構わないから?」

ラキア「っ…?こ、こうですか?」グッ

副官「そのまま抜いて?」

ラキア「……!」プルプル スラッ

副官「重いだろう?身体が自由に動かないだろう?」

ラキア「は、はいっ…!」プルプル

副官「そうだろう、そうだろう?普通の感覚じゃそうなる?」

ラキア「(いつも使っている剣とそんなに変わらない筈なのに…!どうして…ここまで重く感じるんだ…!?)」ダラダラ

副官「えぇ、なにせ君たちは普段の訓練において、その剣で人を殺すとこまで想像出来てないからだ?」

ラキア「……?」ダラダラ

副官「重いよ。人の命を預かると?だから慣れが必要なんだ?」

ラキア「…っ…はぁ!」ガクンッ

副官「誰が膝を着いていいと言った?立ちなさい?」

ラキア「うぅ……」ヨロッ
774: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/10(水) 23:04:05 ID:SfPoNrhlRE
副官「正義感で剣は持ち上がりません。何しろ慣れが肝心です」

ラキア「〜〜〜!」ダラダラ

兵長「いい加減にしろ!キサマぁああ!!」ギシギシ

副官「そら、兵長殿もお待ちかねだ?」クイッ

兵長「そ、そういう意味では…!?」ギシギシ

ラキア「(た、確かに戦場に立てば血が流れるのは当たり前だ。命を奪うのにためらっちゃいけない…!)」プルプル

ラキア「(だけど…それはあくまで守るべき物があっての事!揺るがぬ正義を信じて戦うから…意味があるんじゃないのか!?)」ワナワナ

ラキア「なんでもかんでもただ殺せなんて…そんな事がしたくて、この腕を磨いてきたんじゃない…!!」ウルウル

副官「…そうだねぇ。いきなりはキツい、か」ウンウン

ラキア「……!?」ガバッ

副官「兵長殿を解放して差し上げなさい」

騎兵1「はっ!」シュルッ

兵長「おぉっ…!く、くっ…!よ、よくも!?」ヒリヒリ

副官「兵長殿、よく聞きなさい」

兵長「あぁ…!?」ギロッ

副官「これからラキア君とサシの勝負をしてもらう。真剣で、真剣に、なんちゃって。ぶふっ!」プークスクス

兵長「なんだとぉ…!?」ギリギリ

副官「やらないという選択肢はない。生き残るには殺るしかない?お分かり?」

騎兵's「」ザザッ

兵長「……!?」ブルッ

ラキア「な、なにを…!?」

副官「どうするね?」

兵長「……剣を寄越せ!?」

騎兵2「どうぞ」つ【剣】

兵長「」ガッ スラッ

副官「やはり経験は大事だ。いざという時がいつなのかをよく心得ておられるよ?」ニヤリ
775: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/10(水) 23:06:34 ID:kh6s4Xhrmc
副官「先ほどフィクサー様のお言葉を聞かせてあげたのは覚えてるかな?ご両人?」

兵長「余計な雑念は持たぬべき…か?」ギロッ

副官「そうだ。その意味、分かる?」

兵長「知るかっ!!」ペッ

ラキア「……」

副官「ラキア君はもう分かってるよなぁ?そう、まさに今思い知った筈だ?」

ラキア「な、なんの事ですか…!?」ギリッ

副官「何事もやってみなけりゃ分からない…って事をさ?」

ラキア「分かりませんよ…!?」

副官「緊張が必要だとか集中を研ぎ澄ませだとか事前に意識したってしょうがない。
どうせ命懸けの場面に出くわせば身体が勝手に意識するのだから?」

兵長「…だぁぁあ!やかましい!!やるなら、さっさとしろ!!こんな状況…もうたくさんだ!?」クワッ

ラキア「へ、兵長殿…!落ち着いてください!俺達が戦う理由なんて……」アセアセ

副官「戦わないと死ぬ。これ以上ない理由だ?」

ラキア「だ、黙れっ!?そんな横暴がまかるか!?」

副官「まかるよ。訓練中に起きた不慮の事故、3日もすれば忘れられる小事だ」

ラキア「…みんなは!?なんとも思わないのか!?こんなの間違ってるだろ!?」バッ

新兵's「」モゴモゴ

ラキア「…おい!なんとか言えよ!?」

シーン

ラキア「なんっ…でだよ!?」ギリッ
776: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/10(水) 23:08:22 ID:kh6s4Xhrmc
副官「皆、気付き始めてるんだよ」

ラキア「なにっ…!?」

副官「自分達がどういうものになろうとしているか…。この短いやりとりで学んだんだ?」

ラキア「自分達が…なろうとしている物……それが正義も何もない殺人鬼だって言うのか!?」

副官「殺人鬼になんかならなくていい。人を殺めるという行為に慣れてくれれば?」

ラキア「俺達は殺しがしたいんじゃない!?正義を守れる力が欲しいんだ!?」

副官「正義を守るには一線を越える覚悟が必要だ。
この訓練の目的はその覚悟を持たせる意味もある」

ラキア「〜〜〜!!」ワナワナ

兵長「うがああああ!!!!」ブンッ

ラキア「!?」ジャキッ

ガキィィィン!!

兵長「俺は兵長だぞ…!兵の育成を任された上級教官だ…!?なのに…なんでこんな目にぃ…!?」ギギギッ

ラキア「へぃ…ちょう…!?」ギギギッ

副官「さぁ、敵兵は容赦なく君を殺めようと剣を振るうぞ?
そうなっても君は正義を語り、剣を振るわずにいられるのか?」

ラキア「……!」グググッ

兵長「死ねぇええい!!!」バッ

ガンッ キキンッ ギャリンッ
777: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/10(水) 23:10:14 ID:kh6s4Xhrmc
兵長「らぁあああ!!!」ブンッ

ラキア「(どうしたらいい…!どうしたら…!?)」ガキンッ

ヒュッ シュバッ ギンッ

ラキア「(確かにオドアイル副官の言う事も分かる!俺だって、"そこ"を意識せすに兵を目指した訳じゃない!)」ザッ

兵長「くっ…青二才が!こざかしい!」ギリッ

ラキア「(分かってはいた…!でもそこに正義があるから…覚悟出来たんだ!)」ススッ

兵長「俺はお前の上官だぞ!部下なら上官の為におとなしく死ねぇっ!!」ガァーッ

ラキア「なんて言い種だ…!兵長殿こそ、人の上に立つ身なら保身に眩む前に冷静な判断をされてはいかがか!?」

兵長「生意気に口答えしおって…!死罪だぁあああ!!」バッ

ガキンッ ギャリンッ

兵長「ナメるな!!雑魚が!?」ブンッブンッ

ズカァァァン!

ラキア「くっ…!」ザッ

兵長「しぶとい奴め…ええいっ!命令だ!死ね!?」グッ

ラキア「」チラッ

ジロジロ ジロジロ

ラキア「(なんだよ、これ…)」

兵長「」フシューッフシューッ

ラキア「(目の前の上官は命を惜しんで味方の俺を殺そうとしてる…。
あの副官は俺を利用して皆を扇動してる…。皆は…ただ見てる)」

ラキア「なんなんだよ、これは…!?」ムカムカ
778: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/10(水) 23:11:47 ID:SfPoNrhlRE
ガンッガンッ キキンッ ギギギッ

副官「そろそろ、か」

騎兵1「副官も人が悪い?なにもああまでさせなくとも?」

副官「私も入隊当初、フィクサー様にやらされたよ。通過儀礼ってやつさ」

騎兵1「ははは…しかしあそこまで粘ったのは初めてでは?」

副官「あぁ、よほど純粋なんだろうね。正義感の塊みたいな男だ」

騎兵1「新兵らも見入ってますよ」

副官「それでいいんだ。このあからさまに不条理な状況を受け入れる事こそが今回の訓練に通ずるのだから」

兵長「んっ…!ぐっ…!?」キキンッ

騎兵1「お、防戦一方だったラキアが攻めに転じましたね?」

副官「あぁ、来るよ。覚醒の時だ」

兵長「ちっ……クソがぁあああああ!!!!」ブンッ

ラキア「」バッ

新兵's「」ハッ

バシュッ!

ドバァァァァァァァ
779: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/10(水) 23:12:56 ID:kh6s4Xhrmc
兵長「っ…っ……っ…」ピクッ

ラキア「……」ヒュッ ピシュッ

兵長「」バタァァァ

ラキア「……」スッ チャキッ

新兵's「」ブルブル

ラキア「……」ボーッ

スタスタ スタスタ

ラキア「……?」チラッ

副官「お見事?いぃ〜い一太刀だった?」ポンッ

ラキア「……」

副官「諸君、ラキア君の勇気ある行いに惜しみない拍手を?」パチパチ

パチパチ パチパチ

ラキア「……」

副官「さて、次は皆にもやってもらうぞ?用意するので待っててくれ?」
780: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/10(水) 23:15:55 ID:SfPoNrhlRE
谷のホビット's「」ワァーワァーギャーギャー

マドラス「うがああああ!!!やめてくれぇぇえ!!!」ギシギシ

副官「では前列の者から号令に従い、彼らを刺しなさい」

新兵's「」ゴクリッ

副官「あぁ、ラキア君。君はもう帰っていいよ。ご苦労様?」

ラキア「」ボーッ

副官「…城下まで送り届けてやれ」

騎兵1「はっ!ほら、立て!馬屋まで歩けよ!俺の背に乗せてやるから!」グイッ

ラキア「」ボケーッ

騎兵1「ちっ!」グイッ スタスタ

ラキア「」トボトボ

副官「…では訓練開始!!」

ダッ ダダダダダダダダダッ

ドスッ ズブッ ガシュッ ドバッ

ギャアアアアアアアア

ブシャアアアアアアアア

副官「…うんうん。やはりフィクサー式訓練法は間違いない?
では列を交代し、同様にやりなさい」

ザザザザザッ

副官「何事も実践に限る?今日の訓練は明日の君たちを生かす鎧となるよ?」ニヤリ
781: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/10(水) 23:18:49 ID:SfPoNrhlRE
〜〜〜夜〜〜〜

―――城下町(裏通り)―――

ラキア「ひっく…ひっ…うえっ…」ポロポロ

ラキア「(最低だ、俺は……激情のままに殺人をした…悪人だ!)」グズグズ

ジロジロ ヒソヒソ

ラキア「な…んだよ」キッ

ザワッ

ラキア「そんな目で俺を見るなぁっ!?」バッ

バラバラ バラバラ

ラキア「はぁ…はっ……う……ふぅぅ…!」ガバッ

ラキア「わあああああああああ……!!!」ポロポロ

ポンッ

ラキア「俺にさわっ……」バッ

裏通りのホビット1「わっ!ご、ごめんなさい!」ビクッ

ラキア「…君は」グスッ

裏通りのホビット1「覚えてて…くれました?」ニコッ

ラキア「なんか…用か?」グシッ

裏通りのホビット1「…恩人が路地で蹲って子供のように泣いてるのを見たら誰だって気になりますよ」

ラキア「…構わないでくれ!」プイッ

裏通りのホビット1「ず、ずっとお礼がしたかったんです!」

ラキア「礼なんかいらない!!消えてくれ!?」

裏通りのホビット1「…悩みが晴れるかは分からないけど、もしよかったらお話、聞きますよ?」

ラキア「いらないって言ってるだろ!?」バッ

裏通りのホビット1「きゃっ」ドンッ

ラキア「あ…ご、ごめ……」ハッ

裏通りのホビット1「いたた…」サスサス
782: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/10(水) 23:21:11 ID:SfPoNrhlRE
ラキア「わ、悪かったよ。大丈夫か?」スッ

裏通りのホビット1「大丈夫。ちょっとびっくりしただけです?」パシッ

ラキア「」グイッ

裏通りのホビット1「相変わらずお優しいですね」ムクッ

ラキア「…優しくなんかないよ」

裏通りのホビット1「…実はあなたに助けていただいた後、同族から強盗に遭いました」

ラキア「え…?」

裏通りのホビット1「僕達は弱い種族ですから…更に弱い者から奪うしかないんです」

ラキア「そ、それなら…俺のした事はなんの意味も…!」

裏通りのホビット1「いいえ、すごく意味ありました!」

ラキア「慰めはよせよ…!ここでも俺は…正義を守れなかった!」ワナワナ

裏通りのホビット1「あなたが助けてくれたから…僕は人間を恨まずにいられました」

ラキア「……?」

裏通りのホビット1「あなたはいい人です。すごく。だから自分をけなさないで?」

ラキア「……」

裏通りのホビット1「あなたがどんなに悪い行いをしても…僕はあなたが優しい人間だと知ってます」

ラキア「……!」ジワァ
783: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/10(水) 23:27:16 ID:kh6s4Xhrmc
裏通りのホビット1「…あなたみたいに強くて、優しい人間でもがむしゃらに泣きたくなるんですね。最初は人違いかと思いました?」ニコッ

ラキア「ありがとう…」ポロッ

裏通りのホビット1「?」

ラキア「君のおかげで…少しだけ…自分を取り戻せた気がするよ」グシッ

裏通りのホビット1「してきた事って自分に返ってくるんですよ?」ニコニコ

ラキア「……?」

裏通りのホビット1「良いことも悪いことも?」

ラキア「そうだな…」シュン

裏通りのホビット1「あなたには良いことがたくさん返ってきますよ?元気出しましょう?」ポンポン

ラキア「うん…元気、出たよ」ニコッ

裏通りのホビット1「…じゃあ…さようなら」スッ

ラキア「待って!」ガシッ

裏通りのホビット1「え?」

ラキア「お、俺の名はラキア…父は憲兵団の団長だ」

裏通りのホビット1「えぇっ!そうだったんですか!?」

ラキア「もし困ったら…遠慮なく頼ってくれ!俺は絶対に…正義を曲げない!!」

裏通りのホビット1「……!?」

ラキア「俺は正義を守り続けるよ。君たちを見捨てはしない!
だから…君たちも人を見限らないでほしい。どんなに辛い日々でも…いつか必ず変えてみせるから!」

裏通りのホビット1「……分かりました!」ニコッ

ラキア「……!」パァァ
784: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/10(水) 23:29:35 ID:SfPoNrhlRE
―――団長の屋敷―――

ラキア「ただいま」ガチャッ

団長の妻「あ、おかえりなさい?兵営に戻らなくてよかったの?」フキフキ

ラキア「う、うん。父上達は?」ソワソワ

団長の妻「出掛けてますよ。国王様が戻られたから、お昼からお城に行きました」キュッキュッ

ラキア「国王が!?」

団長の妻「えぇ、昼間は城下がすごく賑わってたそうよ?数ヶ月ぶりのご帰還だそうですから?」

ラキア「し、知らなかった…」

団長の妻「ラキアは朝から王都を離れて軍事演習に行ってたから?」

ラキア「ま、まぁ…そうだよね」

団長の妻「ご飯、食べていく?兵営の寮にはどれぐらいで戻るの?」

ラキア「あ、あの…その事なんだけど、さ」シドロモドロ

団長の妻「なに?」

ラキア「やめようと…思ってる」

団長の妻「なにを?」

ラキア「へ、兵士に…なるのを」

団長の妻「どうして?お父さんのような勇敢な兵士になりたいって、昔からの夢だったんでしょう?」

ラキア「…うん。今日の演習で改めて父上のすごさが分かった」

団長の妻「?」

ラキア「父上は何度も私情を噛み砕きながら…自分の出来る範囲で正義を守ろうとしてたんだなって」

団長の妻「…そうですよ。お父さんは誰より頑張ってきたんだから?」

ラキア「俺もそうしようと思う」

団長の妻「?」

ラキア「俺、憲兵になるよ」

団長の妻「…!?」
785: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/10(水) 23:32:57 ID:kh6s4Xhrmc
ラキア「独りよがりな正義感はもう捨てる。
なんだかんだ、どこかカッコつけたかったんだ、俺は」

ラキア「…正義を口にしたって、その場かぎりの行動じゃなにも解決出来ない。
一度に変化を起こせなくても…長い目で正していける道を探したいんだ」

ラキア「だから俺は今から猛勉強して憲兵を目指す!兵営は辞退するんだ!」グッ

団長の妻「…そう。好きにしなさい。貴方が決める事なんだから」

ラキア「ごめん、母さん…それでもう一つ相談なんだけど」

団長の妻「なに?」

ラキア「また…ここに住んでもいいかな」

団長の妻「……」

ラキア「ご、ごめん、やっぱりちゃんと借りられる部屋を探して……」アセアセ

団長の妻「バカね、どうして許可がいるの?ここは貴方の家でしょう?」ニコッ

ラキア「……!」

団長の妻「部屋、貴方が出た時のままだから?」ニコニコ

ラキア「あ、ありがとう…母さん!」パァァ

団長の妻「…その話、お父さんにもしなさいね?」

ラキア「え?う、うん?」

団長の妻「あの人…きっと泣いて喜ぶから?」ニコッ

ラキア「…?」
786: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/14(日) 22:13:03 ID:reOEUJ6NnU
〜〜〜時間は遡り、昼〜〜〜

―――城下町―――

ワァーワァーキャーキャー

ゾロゾロ ゾロゾロ

カロル「すごーい!人間がたくさん集まってるよ?」

母「そうね。人混みにまざるとはぐれちゃいそうだから迷子にならないようにしっかり手を繋いでおきましょ?」ギュッ

カロル「うん!」ギュッ

団長「先に城に入って待ってもいいのだぞ?この中にいては窮屈だろう?」

カロル「ううん、いいの!王子さまが帰ってくるとこ見たいんだ!」

団長「そうしたいなら構わんが…くれぐれもはしゃいで先走ったりせんようにな?
この人混みではぐれたら探すのが大変だ?」

カロル「うん、わかった!」

母「ま、また拐われたりしないでしょうか…?」

団長「ご心配には及びません。不審な動きを防ぐべく部下達にも細心の注意を払って警戒に当たるよう呼び掛けてあります」

母「そ、そうですよね?」ホッ

団長「陛下の帰還を狙ってなにか企む輩がいるとも限りませんしな。警備も厳重に行っております」ジロッ

ワイワイガヤガヤ

団長「…いざとなればワシが付いております。不安は入りませんぞ」

母「(とてつもない安心感)」
787: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/14(日) 22:14:37 ID:tCV0j5N4Sw
カロル「あっ!」

母「きゃっ…?ど、どうしたの?急に?」ビクッ

カロル「あそこ!」ビッ

団長「ん?あぁ、出店のテントや手売りの花屋、果物屋などが賑わっておるな?」

母「見てみたいの?」

カロル「ううん。すごいなーと思って?王子さまが帰ってくるの、みんなが喜んでるんだもの?」ニコッ

団長「はは!当然だ?陛下が玉座に着いて2年、民を慮った政策が進められてきたからな。皆、信頼しておるよ」

母「あたし達の同族も一緒に働いたり、お客さんに混じってるわね。なんだか嬉しくなるわ?」クスッ

カロル「ホントだね」ニコニコ

母「普通にお買い物してるだけなのに…みんな、とてもキラキラと笑ってる。きっと今がなにより楽しいのね」

カロル「ねー!」ニコニコ

団長「(小童が陛下と友情を結ばねばありえなかった光景だ。
誰も差別を疑わず、この国は闇に侵されたままだったろう)」

母「…どれも感動しちゃうわよね。どれだけ望んでも手に入らなかった日常が目の前にあるんだもの」

団長「……」

カロル「ずーっとこのままだったらいいね!」

母「……うん、そう信じてるわ?」ニコッ
788: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/14(日) 22:16:50 ID:tCV0j5N4Sw
ゴゴゴゴゴゴゴゴ

団長「おぉ、門が開くぞ。いよいよだ?」

カロル「!」ワクワク

母「あんなに大きな扉から入ってくるのねぇ?」シゲシゲ

ワアアアアアアアアア!!!

母「っ……!?」ビリビリ

団長「耳が張り裂けんばかりの歓声だな…!」ビリビリ

カロル「ふふ!王子さま、人気者だね?」ニコニコ

ドドドドドッ

母「お、お買い物してた人達まで来ましたよ!?」ギュウギュウ

団長「ま、まるで突進だな…!二人とも絶対にワシから離れるなよ!?」ググッ

カロル「きゃっ!」ベシャッ

母「ぼ、坊や!?大丈夫!?」グイッ

カロル「う、うん…ごめんなさい?」ムクッ

団長「き、君の場合ははぐれる以前に踏み潰されかねんな?」アセアセ

カロル「うー…」シュン
789: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/14(日) 22:17:49 ID:reOEUJ6NnU
ガラガラガラガラ

団長「お、入ってきたぞ!最前列の馬車に乗っているのが陛下に違いない!?」

カロル「ど、どこ?見えないよ?」ググーッ

団長「まっすぐ先だ?見えんの…か?」ギョギョッ

カロル「うわーん!おっきい人間がいっぱい前にいて見えないよー!」エーン

団長「(いや、君が小さすぎるだけだ…というのはさすがに酷だろうか)」

母「一生懸命、背伸びしてるんですけど…ちょっと背が足りないみたいで?」クスクス

カロル「ボクも見たいっ!」ピョンピョン

団長「…分かった、分かった。肩を貸してやろう」ガシッ

カロル「ひゃっ!?」グンッ

団長「どうだ、見えるか?」グッ

カロル「わー!たかーい!ありがとう、団長さん?」ヒョコッ

母「すみません…。疲れるようでしたら下ろしてくださって構いませんから?」ペコリ

団長「礼には及ばんよ。疲れるどころか、この軽さなら片手で持ち上がる?」

カロル「王子さまが顔出したよ!手振ってる!?」キャッキャッ

団長「ほう…!無愛想な陛下が民衆に笑顔を振り撒き、手まで振ってみせるとは…成長なされましたな!」ホロリ

母「(実はあたしも見えないんだけど…ちょっぴり疎外感)」ググーッ
790: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/14(日) 22:20:06 ID:tCV0j5N4Sw
バラバラ バラバラ

カロル「すごかったねー?」ニコニコ

団長「うむ!堂々たる立ち振舞いであった!」ホクホク

母「…あら、人々も散り散りに離れていきましたね?」キョロキョロ

団長「そうだな。ではこのまま城に向かうとしよう」

カロル「その前にアイスキャンディー買っていこうよ!」

団長「おう、そうだった!忘れてはならんな!」

母「じゃあ市場に寄ってからにしましょっか?」

カロル「うん!」

スタスタ スタスタ
791: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/14(日) 22:21:57 ID:reOEUJ6NnU
―――城(王宮)―――

ザザザザザザザッ

ヒメ「出迎えご苦労。皆、楽にしていいぞ」スタスタ

家臣's「ハハーッ!!」ザッ

ヒメ「この玉座に腰を下ろすのも数ヶ月ぶりになるな」ストッ

政務官「長い間、まことにお疲れ様でした。無事のご帰還、心より祝福申し上げます」ザッ

ヒメ「僕の不在中、変わりなかったか?」

政務官「…良い報告、悪い報告がそれぞれ一つございます」

ヒメ「そうか…。僕もだ?」

政務官「休む間もなく大変恐縮ではございますが…親善交流の手応えをお聞かせ願えますか?」

ヒメ「概ね順調…って事でいいのかな」

政務官「好感触を得られましたか!それは何よりの朗報!」

ヒメ「これから取り組まなければならない事、市民が旅行用に行き来出来る陸路、航路の開通等、様々な協議を提案してきた。
おかげで予定より、かなり時間が掛かった。連絡を怠って悪かったな」

政務官「問題ありません。むしろ話が早い?
初の親善交流とは思えぬ程の手際のよさですな!」

ヒメ「子供のおつかいじゃないんだぞ?
事前に話し合う内容くらい想定して臨んでた?」ジトッ

政務官「ハハハ…それは失礼しました?」
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名前:
sage:


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うpろだ
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